(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】軸受装置及び水車発電機
(51)【国際特許分類】
F16C 33/10 20060101AFI20240408BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20240408BHJP
F16C 17/26 20060101ALI20240408BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20240408BHJP
F03B 11/06 20060101ALI20240408BHJP
F16N 7/18 20060101ALI20240408BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F16C33/10 Z
F16N31/00 B
F16C17/26
F16C37/00 A
F03B11/06
F16N7/18
F16C17/04 Z
(21)【出願番号】P 2023018682
(22)【出願日】2023-02-09
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 貴裕
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-85090(JP,A)
【文献】特開2001-107969(JP,A)
【文献】特開2002-372048(JP,A)
【文献】国際公開第2004/94848(WO,A1)
【文献】特開2016-84912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00
-11/08
F16C 17/00
-17/26
F16C 33/00
-33/28
F16C 33/66
F16C 35/00
-39/06
F16C 43/00
-43/08
F16C 17/26
F16C 37/00
F16N 7/14
F16N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スラストカラー及び潤滑油を汲み上げるオイルディスクである第2スラストカラーを含む回転軸を支持する軸受装置であって、
前記潤滑油を収容し、前記回転軸の一部が配置され、前記第1スラストカラーが一端側に設けられ、前記第2スラストカラーが他端側に設けられる油槽と、
前記油槽内に設けられ、前記第1スラストカラーに当接し、前記回転軸の軸方向の荷重を受ける第1スラスト軸受と、
前記油槽内で前記第1スラスト軸受から離間して設けられ、前記第2スラストカラーに当接し、前記回転軸から前記第1スラスト軸受に加わる荷重とは逆向きの軸方向の荷重を受ける第2スラスト軸受と、
前記第1スラスト軸受及び前記第2スラスト軸受の間に配置され、前記回転軸の径方向の荷重を受けるジャーナル軸受と、
軸方向で前記第1スラスト軸受と前記第2スラスト軸受との間に設けられる給油口、前記給油口から前記第1スラスト軸受及び前記第2スラスト軸受それぞれが設けられるスラスト室に連通するとともに前記ジャーナル軸受と前記回転軸との間の隙間に連通する主給油路、並びに、前記ジャーナル軸受よりも上側に上側開口を有し前記ジャーナル軸受に連通し前記上側開口を通した前記潤滑油を前記ジャーナル軸受に給油するオイルディスク給油路を有し、前記第1スラスト軸受、前記第2スラスト軸受、及び、前記ジャーナル軸受を保持し、前記回転軸が貫通される筒状のホルダーと、
前記ホルダーの上側に設けられ、前記オイルディスクの回転により前記油槽から汲み上げた前記潤滑油を前記オイルディスク給油路の前記上側開口に向けて集油する集油部と、
前記ホルダーに設けられ、前記ホルダーの外側と前記第2スラスト軸受の前記スラスト室に連通し、前記主給油路を通して送られる前記潤滑油により前記第2スラスト軸受の前記スラスト室内のエアを前記ホルダーの外側に排出する気抜き路と、
前記集油部と前記オイルディスク給油路の前記上側開口との間に設けられ、前記集油部で集めた前記潤滑油を前記オイルディスク給油路の前記上側開口に案内するとともに、前記気抜き路の前記エアの出口とを区画するガイドと、
前記主給油路を通して前記第1スラスト軸受、前記第2スラスト軸受、及び、前記ジャーナル軸受に前記潤滑油を送る粘性ポンプと、
を備える、軸受装置。
【請求項2】
前記ガイドは、前記集油部から前記オイルディスク給油路に向かって下がるように傾斜する傾斜面を有する板材で形成される、
請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記ホルダーは、前記ホルダーの外周面のうち、前記第2スラストカラー側の上部の一部において、前記オイルディスクの外周面位置よりも前記回転軸の中心軸に近い位置に前記気抜き路の前記エアの前記出口を含む面を有し、
前記ガイドは、前記面の上側に設けられ、前記集油部と、前記オイルディスク給油路とを流体的に接続する、請求項1又は請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記ガイドは、前記気抜き路の前記出口の直上に離間し、
前記ガイドは、前記気抜き路の前記出口から排出される前記エアを前記ホルダーの外側に通すための切欠部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記気抜き路は、前記第2スラスト軸受の前記スラスト室に対して複数箇所で連通する、複数の連通路を有する、請求項1又は請求項2に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記複数の連通路は、前記スラスト室のうち前記第2スラスト軸受の摺動面側に近い側に対して、前記摺動面側とは離れた側の方が大きい、請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記第1スラスト軸受に連通し、前記主給油路に送られる前記潤滑油により前記第1スラスト軸受の前記スラスト室内のエアを排出する、別の気抜き路を有する、請求項1又は請求項2に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記粘性ポンプから前記潤滑油が圧送され、前記潤滑油を冷却するオイルクーラをさらに備え、
前記オイルクーラ及び前記給油口は、流体的に接続される、
請求項1又は請求項2に記載の軸受装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の軸受装置と、
前記ホルダーを貫通する前記回転軸と、
前記回転軸の両端にそれぞれ設けられる2つの水車と、
前記回転軸の回転により発電する発電機と、
を備える、水車発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及び水車発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電機として、回転軸が水平方向に設置されるとともに、回転軸の両端に水車が設けられた横軸両掛け水車発電機が知られている。横軸両掛け水車発電機の軸受装置として、1つの軸受台に、発電機軸に加わるラジアル荷重を受けるジャーナル軸受とともに2基のスラスト軸受を収容したものが知られている。軸受装置は、2基のスラスト軸受及びジャーナル軸受の潤滑のため、軸受台内に油槽を備え、油槽内の潤滑油を粘性ポンプで圧送して2基のスラスト軸受及びジャーナル軸受に給油する。
【0003】
軸受装置は、粘性ポンプにより2基のスラスト軸受及びジャーナル軸受に潤滑油を圧送する経路として、油槽から2基のスラスト軸受を経てオイルクーラに圧送する経路の一部が、2基のうち一方のスラスト軸受から分流し、ジャーナル軸受を経て油槽に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受装置の運転の停止時には、軸受装置のスラスト軸受のスラスト室には、エアが充満する。運転によりスラスト室内のエアが高温となり、スラスト室内が高温になることを防止するため、エアを排出しながら潤滑油でスラスト室を充満させる必要がある。
【0006】
本発明は、スラスト室内のエアを排出可能な軸受装置、及び、水車発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、軸受装置は、第1スラストカラー及び潤滑油を汲み上げるオイルディスクである第2スラストカラーを含む回転軸を支持する。軸受装置は、油槽と、第1スラスト軸受と、第2スラスト軸受と、ジャーナル軸受と、回転軸が貫通される筒状のホルダーと、集油部と、気抜き路と、ガイドと、粘性ポンプとを有する。油槽は、潤滑油を収容し、回転軸の一部が配置され、第1スラストカラーが一端側に設けられ、第2スラストカラーが他端側に設けられる。第1スラスト軸受は、油槽内に設けられ、第1スラストカラーに当接し、回転軸の軸方向の荷重を受ける。第2スラスト軸受は、油槽内で第1スラスト軸受から離間して設けられ、第2スラストカラーに当接し、回転軸から第1スラスト軸受に加わる荷重とは逆向きの軸方向の荷重を受ける。ジャーナル軸受は、第1スラスト軸受及び第2スラスト軸受の間に配置され、回転軸の径方向の荷重を受ける。ホルダーは、軸方向で第1スラスト軸受と第2スラスト軸受との間に設けられる給油口と、給油口から第1スラスト軸受及び第2スラスト軸受それぞれが設けられるスラスト室に連通するとともにジャーナル軸受と回転軸との間の隙間に連通する主給油路と、ジャーナル軸受よりも上側に上側開口を有し、ジャーナル軸受に連通し、上側開口を通した潤滑油をジャーナル軸受に給油するオイルディスク給油路とを有する。ホルダーは、第1スラスト軸受、第2スラスト軸受、及び、ジャーナル軸受を保持する。集油部は、ホルダーの上側に設けられ、オイルディスクの回転により油槽から汲み上げた潤滑油をオイルディスク給油路の上側開口に向けて集油する。気抜き路は、ホルダーに設けられ、ホルダーの外側と第2スラスト軸受のスラスト室に連通し、主給油路を通して送られる潤滑油により第2スラスト軸受のスラスト室内のエアをホルダーの外側に排出する。ガイドは、集油部とオイルディスク給油路の上側開口との間に設けられ、集油部で集めた潤滑油をオイルディスク給油路の上側開口に案内するとともに、気抜き路のエアの出口とを区画する。粘性ポンプは、主給油路を通して第1スラスト軸受、第2スラスト軸受、及び、ジャーナル軸受に潤滑油を送る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る軸受装置を備える横軸両掛け水車発電機の構成を示す正面図。
【
図4】同軸受装置の初期潤滑に関する要素について、
図3の一部の構成を拡大して示す図。
【
図5】
図4中の矢印Vで示す方向から見た同軸受装置の構成を示す上面図。
【
図6】同軸受装置の運転開始時の初期潤滑に関する要素の構成を示す斜視図。
【
図7】同軸受装置の初期潤滑に関する要素の一部構成を示す斜視図。
【
図8】同軸受装置の初期潤滑に関する要素の一部構成を示す斜視図。
【
図9】同軸受装置の初期潤滑における潤滑油の流路の構成を示す説明図。
【
図10】同軸受装置のオイルディスク及び潤滑油ガイド部の構成を従来技術と比較して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態に係る軸受装置1を、
図1乃至
図10を用いて説明する。
図1は、軸受装置1を備える横軸両掛け水車発電機200の構成を示す正面図である。
図2は、軸受装置1の構成を一部断面で示す側面図である。
図3は、軸受装置1の構成を概念的に示す図である。
図4は、
図3に示す軸受装置1の潤滑油ガイド部50の構成を拡大して示す図である。なお、
図3及び
図4において、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12の断面ハッチングを省略する。
図5は、軸受装置1の潤滑油ガイド部50の構成を
図4中の矢印Vで示す方向から見た上面図である。
図6は、軸受装置1の潤滑油ガイド部50の構成を示す概略的な斜視図である。
図7は、
図6中の軸受装置1のホルダー16の平面16a及びその近傍のオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49の構成を示す概略的な斜視図である。
図8は、
図6中の軸受装置1の集油部51、支持部材53及びガイド54の構成を示す概略的な斜視図である。
図9は、軸受装置1の潤滑油の流路の構成を示す説明図である。
図10は、軸受装置1のオイルディスク15及び潤滑油ガイド部50の構成を従来技術である特許文献1の技術と比較して示す説明図である。
【0010】
まず、
図1を用いて、軸受装置1を備える横軸両掛け水車発電機200について説明する。
図1に示すように、横軸両掛け水車発電機200は、回転軸211と、軸受装置1と、ジャーナル軸受装置212と、発電機213と、回転軸211の両端にそれぞれ設けられる2つの水車214と、ブレーキ装置215と、を備える。
【0011】
回転軸211は、第1スラストカラー211aと、第2スラストカラー211bと、を有する。また、回転軸211の両端には、水車214の羽根車214bが取り付けられる。回転軸211は、軸受装置1及びジャーナル軸受装置212により水平に支持される。
【0012】
第1スラストカラー211aは、回転軸211と同軸の円板状に形成され、回転軸211に固定される。
【0013】
第2スラストカラー211bは、回転軸211と同軸の円板状に形成され、回転軸211に固定される。第2スラストカラー211bは、第1スラストカラー211aに対し、回転軸211の軸方向に所定の距離を隔てて配置される。ここで、所定の距離は、後述する軸受装置1の軸受台10内に回転軸211の一部が配置された際に、第1スラストカラー211aが軸受台10内の回転軸211の一端側に位置し、第2スラストカラー211bが軸受台10内の回転軸211の他端側に位置する距離である。
【0014】
軸受装置1は、2基のスラスト軸受11,12と、1基のジャーナル軸受13と、を備える。軸受装置1は、2基のスラスト軸受11,12により、回転軸211の軸方向に生じる正方向及び負方向それぞれのスラスト荷重を支持する。また、軸受装置1は、ジャーナル軸受13により、回転軸211の径方向に生じるラジアル荷重を支持する。なお、軸受装置1の具体的な構成については後述する。
【0015】
ジャーナル軸受装置212は、軸受台に内蔵したジャーナル軸受により、回転軸211の径方向に生じるラジアル荷重を支持する。ジャーナル軸受装置212は、軸受装置1と併せて、回転軸211を水平に支持する。
【0016】
発電機213は、回転軸211の回転により発電可能に構成される。発電機213は、例えば、回転軸211に固定された回転子213aと、自励用の励磁機の回転子213bと、を備える。
【0017】
水車214は、供給管(図示せず)と、ケーシング214aと、羽根車214bと、放流管214cと、を備える。羽根車214bは、回転軸211に固定される。水車214は、供給管から供給された水により、羽根車214bがケーシング214a内で回転することで、回転軸211を回転させる。
【0018】
ブレーキ装置215は、回転軸211の回転を停止させる。ブレーキ装置215は、回転軸211に固定されたブレーキリング215aと、ブレーキリング215aの回転を停止させる電磁ブレーキ215bと、を備える。
【0019】
このような横軸両掛け水車発電機200は、水車214において、供給管から放流管214cに向かって流れる水の圧力によって羽根車214bを回転することで、回転軸211を回転させて発電機213により発電させる、発電設備である。
【0020】
次に、軸受装置1について説明する。
図2から
図5に示すように、軸受装置1は、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bを含む回転軸211の一部と、軸受台10と、第1スラスト軸受11と、第2スラスト軸受12と、ジャーナル軸受13と、粘性ポンプ14と、オイルディスク15と、ホルダー16と、支持部17と、オイルクーラ18と、第1送油管19と、第2送油管20と、を備える。
【0021】
軸受装置1は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12により、回転軸211の軸方向に生じる荷重を受け、回転軸211の水平方向の移動を制限する。第2スラスト軸受12は、回転軸211の第1スラスト軸受11に加わる荷重とは逆向きの軸方向の荷重を受ける。また、軸受装置1は、ジャーナル軸受13により、回転軸211の径方向に生じる荷重を受け、ジャーナル軸受装置212と併せて回転軸211を水平に支持する。
【0022】
軸受台10は、オイルクーラ18を除く、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bを含む回転軸211の一部及び軸受装置1の各構成を収容する。また、軸受台10は、内側に潤滑油100を溜める油槽を構成する。また、軸受台10は、軸受台10の内側及び外側を連通し、第1送油管19が挿通される第1挿通孔10aと、軸受台10の内側及び外側を連通し、第2送油管20が挿通される第2挿通孔10bと、を有する。
【0023】
油槽である軸受台10は、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13に給油可能、且つ、油面が粘性ポンプ14により汲み上げられる高さとなる量の潤滑油100を貯留する。例えば、軸受台10内に貯留される潤滑油100の油面は、第1スラスト軸受11の最頂点及び第2スラスト軸受12の最頂点よりも低く設定される。また、軸受台10内に貯留される潤滑油100の油面は、粘性ポンプ14により圧送可能であって、加えて、オイルディスク15により汲み上げ可能な高さに設定される。
【0024】
第1スラスト軸受11は、第1スラストカラー211aに対して軸方向に隣接し、且つ、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bの間に設けられる。具体例として、第1スラスト軸受11は、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bの間であって、且つ、第1スラストカラー211a及びホルダー16の間に設けられる。第1スラスト軸受11は、ホルダー16に形成される第1スラスト室116aに保持される。第1スラスト軸受11は、例えば、最頂点が軸受台10内に貯留される潤滑油100の油面の上側に位置する。第1スラスト軸受11は、第1スラストカラー211aに対して摺動可能に当接する、複数の第1軸受部11aを有する。第1スラスト軸受11は、第1スラストカラー211aの回転に対して摺動可能に回転軸211の主面に当接する。第1スラスト軸受11は、第1スラストカラー211aに当接することで、回転軸211の軸方向に生じる2方向のスラスト荷重の一方を受け、スラスト荷重の方向への回転軸211の移動を規制する。
【0025】
第2スラスト軸受12は、回転軸211の第2スラストカラー211bに対して軸方向に隣接し、且つ、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bの間に設けられる。具体例として、第2スラスト軸受12は、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bの間であって、且つ、第2スラストカラー211b及びホルダー16の間に設けられる。第2スラスト軸受12は、回転軸211の第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bが隔てる所定の距離に応じ、第1スラスト軸受11から離間して設けられる。第2スラスト軸受12は、ホルダー16に形成される第2スラスト室116bに保持される。第2スラスト軸受12は、例えば、最頂点が軸受台10内に貯留される潤滑油100の油面よりも高く位置する。第2スラスト軸受12は、第2スラストカラー211bに対して摺動可能に当接する、複数の第2軸受部12aを有する。第2スラスト軸受12は、第2スラストカラー211bの回転に対して摺動可能に回転軸211の主面に当接する。第2スラスト軸受12は、第2スラストカラー211bに当接することで、回転軸211の軸方向に生じる2方向のスラスト荷重の他方を受け、スラスト荷重の方向への回転軸211の移動を規制する。
【0026】
なお、第1スラストカラー211aは、ホルダー16の一端の内側に設けられ、第2スラストカラー211bは、ホルダー16の他端の外側に設けられる。第2スラストカラー211bとホルダー16の他端との間の間隔は例えば2mmから3mm程度である。
【0027】
ジャーナル軸受13は、回転軸211の軸方向で第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12の間に設けられ、ホルダー16に保持される。具体例として、ジャーナル軸受13は、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211b間の中心に設けられる。ジャーナル軸受13は、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211b間の回転軸211の一部を径方向で保持する。また、ジャーナル軸受13は、例えば複数の孔部13aを有する。孔部13aは、ジャーナル軸受13の上方に設けられる。孔部13aは、ジャーナル軸受13の回転軸211との接触面からジャーナル軸受13の上方に貫通する。3つの孔部13aが形成される場合、そのうちの1つは、例えば、ジャーナル軸受13の軸方向で中央に形成され、残りの2つは1つの孔部13aに対して対称の位置に等間隔に設けられることが好適である。
【0028】
図3中、二点鎖線で示すように、粘性ポンプ14は、粘性ポンプ回転部21と、粘性ポンプ固定部22と、を備える。
【0029】
粘性ポンプ回転部21は、第1スラストカラー211aである。粘性ポンプ回転部21は、回転軸211と同軸の円板状に形成され、回転軸211に固定される。粘性ポンプ回転部21の下端は、軸受台10内に溜められた潤滑油100内に位置する。
【0030】
粘性ポンプ固定部22は、内側に粘性ポンプ回転部21の外周縁を配置可能な円環状に形成され、ホルダー16に保持される。また、粘性ポンプ固定部22は、内周面に形成され、周方向に沿って粘性ポンプ回転部21の外周面と所定の隙間を構成する溝部22aを有する。粘性ポンプ固定部22の溝部22aの内径は、粘性ポンプ回転部21の外径よりも若干大きく形成される。粘性ポンプ固定部22は、溝部22aの内側に粘性ポンプ回転部21の外周縁が配置される。即ち、粘性ポンプ固定部22は、溝部22aが形成された内周面が粘性ポンプ回転部21の外周面と微小な間隙を介して対向する。
【0031】
また、粘性ポンプ固定部22は、粘性ポンプ取込口22bと、粘性ポンプ吐出口22cと、を有する。粘性ポンプ取込口22bは、例えば、粘性ポンプ固定部22の下端から、粘性ポンプ固定部22の溝部22aが形成された内周面に連続する。粘性ポンプ取込口22bは、軸受台10に溜められた潤滑油100の油面よりも下側の位置に形成される。粘性ポンプ吐出口22cは、粘性ポンプ取込口22bと同様に、例えば、粘性ポンプ固定部22の下端から、粘性ポンプ固定部22の溝部22aが形成された内周面に連続する。
【0032】
オイルディスク15は、第2スラストカラー211bである。オイルディスク15は、基部31と、潤滑油かき上げ部32と、を備える。オイルディスク15は、例えば、基部31の回転に伴う潤滑油かき上げ部32の回転により、軸受台10の油槽から潤滑油100を潤滑油かき上げ部32の上側の頂部まで汲み上げ可能に構成される。
【0033】
基部31は、回転軸211と同軸の円板状に形成され、回転軸211に一体に設けられる。基部31は、例えば、軸材を削り出すことで形成される。
【0034】
潤滑油かき上げ部32は、基部31よりも軸方向に薄い略円環状に形成され、基部31に固定される。具体例として、潤滑油かき上げ部32は、基部31よりも薄い鋼材で円環状に形成され、基部31に焼き嵌めされる。潤滑油かき上げ部32の下端は、軸受台10内に溜められた潤滑油100内に位置する。潤滑油かき上げ部32は、基部31とともに軸材を削り出すことで形成されることも好適である。
【0035】
ホルダー16は、回転軸211が軸方向に貫通する筒状に形成される。ホルダー16は、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12、ジャーナル軸受13及び粘性ポンプ固定部22を保持する。ホルダー16は、支持部17により軸受台10に固定される。また、ホルダー16は、粘性ポンプ14により圧送される潤滑油100が第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13に供給される流路を形成する。ホルダー16は、潤滑油取込口41と、潤滑油吐出口42と、給油口43と、排油口44と、オイルディスク給油口45と、給油口43から第1スラスト軸受11の第1スラスト室116a及び第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bに連通する主給油路47と、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12から排油口44に連通する排油路48と、ジャーナル軸受13の孔部13aからオイルディスク給油口45に連通するオイルディスク給油路49と、を備える。
【0036】
潤滑油取込口41は、軸受台10に溜められた潤滑油100に浸かる位置に形成され、ホルダー16の外周面と粘性ポンプ固定部22の粘性ポンプ取込口22bに連通する。潤滑油取込口41は、例えば、ホルダー16の下端から粘性ポンプ固定部22を保持する部位に貫通し、ホルダー16の外周面と粘性ポンプ取込口22bに連通する。潤滑油取込口41は、粘性ポンプ取込口22bに連通することで、軸受台10に溜められた潤滑油100が粘性ポンプ回転部21の下端に到達する流路を形成する。
【0037】
潤滑油吐出口42は、粘性ポンプ固定部22の粘性ポンプ吐出口22cとホルダー16の外周面に連通する。潤滑油吐出口42は、第1送油管19が接続される。潤滑油吐出口42は、例えば、ホルダー16の粘性ポンプ固定部22を保持する部位からホルダー16の外周面に連通し、粘性ポンプ吐出口22cとホルダー16の外周面とに連通する。潤滑油吐出口42は、粘性ポンプ吐出口22cに連通することで、粘性ポンプ14により圧送された潤滑油100が第1送油管19に流入する流路を形成する。
【0038】
給油口43は、軸方向で第1スラスト軸受11と第2スラスト軸受12との間の中心でホルダー16の外周面に形成される開口である。給油口43には、第2送油管20が接続される。給油口43は、第1スラスト軸受11と第2スラスト軸受12の中間に位置する。給油口43は、潤滑油100が第2送油管20から主給油路47に流入する流路を形成する。
【0039】
排油口44は、ホルダー16の外周面に形成される開口である。排油口44は、軸受台10の油槽に開口する。排油口44は、第1スラスト軸受11の最頂点、第2スラスト軸受12の最頂点及びジャーナル軸受13の最頂点よりも高い位置に形成される。排油口44は、潤滑油100が排油路48からホルダー16の外側に流出される流路を形成する。
【0040】
図4及び
図5に示すように、オイルディスク給油口45は、ホルダー16の第2スラストカラー211b側の上側の外周面に形成される開口である。オイルディスク給油口45は、オイルディスク15によりオイルディスク給油口45の上側から供給される潤滑油100が流し入れられる、例えば、凹状(バスタブ状)に形成される。オイルディスク給油口45は、ジャーナル軸受13よりも高い位置に形成される。オイルディスク給油口45は、オイルディスク給油路49を通して潤滑油100をジャーナル軸受13に供給するとともに、オイルディスク給油路49を通して潤滑油100をホルダー16の外側に流出させる流路を形成する。本実施形態では、オイルディスク給油口45は、傾斜面45aと、傾斜面45aの下側に設けられる凹部45bとを有する。傾斜面45a及び凹部45bは連続する。傾斜面45aは、ホルダー16の後述する平面16aに連続し、第2スラストカラー211b側(平面16a側)から第1スラストカラー211a側に向かって下がるように傾斜する。傾斜面45aは、後述するガイド54の傾斜面54aよりも傾斜が大きいことが好適であるが、ガイド54の傾斜面54aの傾斜と同じ傾斜、又は、ガイド54の傾斜面54aの傾斜よりも小さい傾斜であってもよい。凹部45bは、傾斜面45aに対して第2スラストカラー211bに対して離間する第1スラストカラー211a側に形成される。
【0041】
オイルディスク給油口45が凹状(バスタブ状)に形成される場合、オイルディスク給油路49の上側開口49aは、オイルディスク給油口45の凹部45bの底部又はその近傍に形成されることが好適である。オイルディスク給油路49の上側開口49aは、ジャーナル軸受13よりも高い位置に形成される。
【0042】
主給油路47は、ホルダー16内部に形成され、給油口43から第1スラスト室116aの第1スラスト軸受11へ、そして、給油口43から第2スラスト室116bの第2スラスト軸受12へ、それぞれ流体的に連通する流路である。具体的には、主給油路47は、ホルダー16内部に、給油口43から第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12が配置された高さまで延設され、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12それぞれに向かって分岐する形状に形成された孔により構成される。
【0043】
また、主給油路47は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12の一次側のそれぞれからジャーナル軸受13及び回転軸211の間に流体的に連通する。具体的には、主給油路47は、第1スラスト軸受11と回転軸211との間の隙間と、第2スラスト軸受12と回転軸211との間の隙間と、ジャーナル軸受13と回転軸211との隙間と、により構成される。
【0044】
排油路48は、ホルダー16内部に形成され、第1スラスト軸受11から排油口44へ、そして、第2スラスト軸受12から排油口44へ、それぞれ流体的に連通する流路である。具体的には、排油路48は、ホルダー16内部に、第1スラスト軸受11側からホルダー16の中央に向かって延設される孔と、第2スラスト軸受12側からホルダー16の中央に向かって延設される孔とが、ホルダー16の中央で連通し、排油口44に延設される形状に形成された孔により構成される。
【0045】
オイルディスク給油路49は、ホルダー16内部でジャーナル軸受13よりも上側に形成される。オイルディスク給油路49は、ジャーナル軸受13の孔部13a及びオイルディスク給油口45を流体的に連通する。オイルディスク給油路49は、例えば、ジャーナル軸受13の孔部13aと対向して設けられた中空部と、中空部からオイルディスク給油口45を流体的に連通する孔と、を含む。オイルディスク給油路49は、例えば、オイルディスク給油路49の孔の下端がジャーナル軸受13の孔部13aと対向して設けられる。
【0046】
ホルダー16は、ホルダー16の外側と第1スラスト室116aとの間をそれぞれ連通する、第1-1気抜き路(連通路)118a、及び、第1-2気抜き路(連通路)118bを有する。第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bは、エア自体の浮力により、第1スラスト室116a内のエアをホルダー16の外側に排出するとともに、第1スラスト室116a内の潤滑油100をホルダー16の外側に排出する。第1-1気抜き路118aは、第1スラストカラー211aに隣接する位置に設けられる。本実施形態では、第1-1気抜き路118aはホルダー16の上方を通して第1スラスト室116aとホルダー16の外側とを連通するように形成されるが、第1スラスト室116aよりも高い位置であれば、ホルダー16の側方等であってもよい。第1-2気抜き路118bは、第1-1気抜き路118aよりも第1スラストカラー211aに離間する位置に設けられる。本実施形態では、第1-2気抜き路118bはホルダー16の上方を通して第1スラスト室116aとホルダー16の外側とを連通するように形成されるが、第1スラスト室116aよりも高い位置であれば、ホルダー16の側方等であってもよい。
【0047】
第1-1気抜き路118aの流路断面積は、第1-1気抜き路118aの一端と他端との間で一定であるとする。また、第1-2気抜き路118bの流路断面積は、第1-2気抜き路118bの一端と他端との間で一定であるとする。このとき、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aのうち第1スラスト軸受11の摺動面側に近い側の第1-1気抜き路118aの出口は、摺動面側とは離れた側の第1-2気抜き路118bの出口よりも小さいことが好適である。このため、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116a内のエア及び潤滑油100は、第1スラスト軸受11の摺動面側に近い側の第1-1気抜き路118aよりも、第1スラスト軸受11の摺動面側とは離れた側の第1-2気抜き路118bの方が、抜けやすい。このため、第1-1気抜き路118aに近い、第1スラスト軸受11の複数の第1軸受部11aと、第1スラストカラー211aとの間に潤滑油100を充満させながら、第1-2気抜き路118bから、潤滑油100を排出しやすくする。この場合も、第1-2気抜き路118bよりも少ないが、第1-1気抜き路118aからも、潤滑油100を排出する。したがって、第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bは、単位時間当たりの流量差を設けて潤滑油100を排出し、第1スラスト軸受11に潤滑油100を供給しながら第1スラスト軸受11のスラスト室116aにおける潤滑油100の圧力損失を低下させ、第1スラスト軸受11を効果的に冷却することができる。
【0048】
図4から
図8に示すように、ホルダー16は、ホルダー16の外側と第2スラスト室116bとの間をそれぞれ連通する、第2-1気抜き路(連通路)119a、及び、第2-2気抜き路(連通路)119bを有する。第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bは、エア自体の浮力により、第2スラスト室116b内のエアをホルダー16の外側に排出するとともに、第2スラスト室116b内の潤滑油100をホルダー16の外側に排出する。第2-1気抜き路119aは、第2スラストカラー211bに隣接する位置に設けられる。本実施形態では、第2-1気抜き路119aはホルダー16の上方の後述する平面16aを通して第2スラスト室116bとホルダー16の外側とを連通するように形成されるが、第2スラスト室116bよりも高い位置であれば、ホルダー16の側方等であってもよい。第2-2気抜き路119bは、第2スラストカラー211bに離間する位置に設けられる。本実施形態では、第2-2気抜き路119bはホルダー16の上方の平面16aを通して第2スラスト室116bとホルダー16の外側とを連通するように形成されるが、第2スラスト室116bよりも高い位置であれば、ホルダー16の側方等であってもよい。
【0049】
例えば、第2-1気抜き路119aは、略円形状の貫通孔として形成される。例えば、第2-2気抜き路119bは、略楕円状又は長穴の貫通孔として形成される。第2-1気抜き路119aの流路断面積は、第2-1気抜き路119aの一端と他端との間で一定であるとする。また、第2-2気抜き路119bの流路断面積は、第2-2気抜き路119bの一端と他端との間で一定であるとする。このとき、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bのうち第2スラスト軸受12の摺動面側に近い側の第2-1気抜き路119aの出口は、摺動面側とは離れた側の第2-2気抜き路119bの出口よりも小さい。このため、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116b内のエア及び潤滑油100は、第2スラスト軸受12の摺動面側に近い側の第2-1気抜き路119aよりも、第2スラスト軸受12の摺動面側とは離れた側の第2-2気抜き路119bの方が抜けやすい。このため、第2-1気抜き路119aに近い、第2スラスト軸受12の複数の第2軸受部12aと、第2スラストカラー211bとの間に潤滑油100を充満させながら、第2-2気抜き路119bから、潤滑油100を排出しやすくする。この場合も、第2-2気抜き路119bよりも少ないが、第2-1気抜き路119aからも、潤滑油100を排出する。したがって、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bは、単位時間当たりの流量差を設けて潤滑油100を排出し、第2スラスト軸受12に潤滑油100を供給しながら第2スラスト軸受12のスラスト室116bにおける潤滑油100の圧力損失を低下させ、第2スラスト軸受12を効果的に冷却することができる。
【0050】
ホルダー16は、ホルダー16の外周面のうち、第2スラストカラー211b側の上部の一部において、オイルディスク15の潤滑油かき上げ部32の外周面位置(頂部を含む外周面位置)よりも回転軸211の中心軸に近い位置に第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bのエア排出出口を含む面16aを有する。面16aは、回転軸211の中心軸に平行であることが好適であり、水平面に平行な平面であることがさらに好適である。
【0051】
本実施形態では、ホルダー16のうち、第2スラストカラー211b側の上側の面の一部は、例えば水平面に平行な平面16aとして形成されるものとする。すなわち、ホルダー16の第2スラストカラー211b側の上側の面の外周面には、例えば円筒状の外周面としての曲面が削られるなどして、平面16aが形成される。平面16aは、ホルダー16のうち、オイルディスク15である第2スラストカラー211b側の端面から第1スラストカラー211a側に向かって延びている。
【0052】
ここで、
図6は、ホルダー16の平面16aに対する潤滑油ガイド部50の取り付け状態を示す斜視図である。
図7は、ホルダー16の平面16aに対するオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49の位置関係を示す斜視図である。ホルダー16の平面16aに対して、オイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49は
図7に示す位置関係に形成される。このため、オイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49は、平面16aに対して下側で、ジャーナル軸受13の上側に形成される。また、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bのそれぞれの出口は、平面16aに形成される。
【0053】
そして、ホルダー16の平面16aには、潤滑油ガイド部50が設けられる。このため、平面16aは、潤滑油ガイド部50が設けられる領域として形成される。
【0054】
潤滑油ガイド部50は、オイルディスク15の潤滑油かき上げ部32によりかき上げた潤滑油100をオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49の上側開口49aに誘導可能に構成される。具体的には、
図4から
図6、
図8に示すように、潤滑油ガイド部50は、オイルディスク15の潤滑油かき上げ部32に隣接して配置される集油部51と、集油部51の上部を覆うカバー52(
図5及び
図6には図示せず)と、オイルディスク給油口45に隣接してホルダー16の外周面の例えば平面16aに固定される支持部材53と、スロープ状に傾斜する傾斜面54aを有するガイド54とを備える。集油部51、カバー52、支持部材53、及び、ガイド54は、例えばSS材等の金属材により形成される。
【0055】
潤滑油ガイド部50の支持部材53に対してガイド54は例えば溶接やボルト止め等により固定される。また、
図8に示すように、ガイド54が固定された支持部材53には、集油部51が例えば溶接やボルト止め等により固定される。そして、集油部51、支持部材53及びガイド54が一体化された潤滑油ガイド部50は、ホルダー16の平面16aに対して、例えば溶接やボルト止め等により固定される。このため、本実施形態に係る潤滑油ガイド部50の集油部51、支持部材53及びガイド54は、簡単に接続することができる。
【0056】
図4から
図6に示すように、集油部51は、ホルダー16の上側に設けられ、オイルディスク15の回転により油槽から汲み上げた潤滑油100をオイルディスク給油路49の上側開口49aに向けて集油する。このため、集油部51は、例えば、潤滑油かき上げ部32に付着した潤滑油100に接触可能な位置に設けられる。集油部51は、オイルディスク給油口45の開口に向かい、オイルディスク15の回転方向に対して傾斜する傾斜面51aを有する。集油部51は、潤滑油かき上げ部32に付着した潤滑油100を傾斜面51aで受け、傾斜面51aで受けた潤滑油100を傾斜面51aに沿ってオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49へ誘導する。
【0057】
集油部51は、ホルダー16に対して、ガイド54の傾斜面54aの幅方向の例えば中央付近を、潤滑油かき上げ部32側からオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49に向かって潤滑油100が流れ下るように誘導するように設けられることが好適である。
【0058】
集油部51の傾斜面51aが平面である場合、集油部51の傾斜面51aは、オイルディスク15の径方向に平行に形成されることが好適である。または、集油部51の傾斜面51aは、ガイド54側を向くように傾斜するように形成されることが好適である。集油部51の傾斜面51aの傾斜角度β(
図5参照)は、潤滑油かき上げ部32に対して90°よりも大きい鈍角であることが好適であり、
図5では135°程度として図示した。集油部51の傾斜面51aの傾斜角度βは、集油部51の取り付け位置等に応じて適宜に設定可能である。集油部51の傾斜面51aは、傾斜面51aに対向する側に曲率中心がある曲面として形成されることも好適である。この場合、集油部51の傾斜面51aは、ガイド54の傾斜面54a上に潤滑油100を誘導するように形成される。
【0059】
集油部51は、傾斜面51aで誘導する潤滑油100がガイド54の傾斜面54aから上側に外れることを防止する鍔部51bを有する。鍔部51bは、集油部51の上部からガイド54の傾斜面54aの上方に突き出すように形成される。鍔部51bにより、集油部51の傾斜面51aで移動方向を偏向した潤滑油100を効率的にガイド54の傾斜面54aに誘導することができる。
【0060】
カバー52は、集油部51の上側に設けられる。カバー52は、例えば支持部材53に溶接又はボルト止め等により固定される。集油部51の傾斜面51aから潤滑油100の上方への移動を規制する。カバー52は、例えば、集油部51の傾斜面51aの上方及び、潤滑油ガイド部50とは反対側を覆う板状に形成される。カバー52は、カバー52に付着する潤滑油100を集油部51の傾斜面51aに誘導する。
【0061】
支持部材53は、集油部51及びガイド54を固定するフレームとして形成される。本実施形態では、支持部材53は、略コ字状又は略U字状に形成される。支持部材53は、潤滑油かき上げ部32に付着した潤滑油100に集油部51が接触可能な高さ位置に集油部51を支持する。また、支持部材53は、集油部51で集油した潤滑油100をガイド54の傾斜面54aに誘導するようにガイド54を支持する。
【0062】
ガイド54は、集油部51とオイルディスク給油路49の上側開口49aとの間に設けられ、集油部51で集めた潤滑油100をオイルディスク給油路49の上側開口49aに案内するとともに、気抜き路119a,119bのエアの出口とを区画する。
【0063】
ガイド54はホルダー16に対して固定される。ガイド54は、集油部51とオイルディスク給油口45との間に設けられ、オイルディスク給油口45を介して、集油部51とオイルディスク給油路49とを流体的に接続する。ガイド54の傾斜面54aは、潤滑油かき上げ部32側が高く、回転軸211の軸方向に沿ってオイルディスク給油路49側に向かうにつれて徐々に低くなるように、水平面に対する傾斜角度α(0°<α<90°)(
図4参照)がつけられている。このため、ガイド54の傾斜面54aは、集油部51からオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49に向かって連続的に下がるように傾斜する。
【0064】
ガイド54の傾斜面54aは、平面で形成されていてもよく、曲面で形成されていてもよい。ガイド54は板材で形成されることが好適である。ガイド54の傾斜面54aが曲面で形成される場合、傾斜面54aは、ガイド54の上方に中心がある例えば円弧状の下に凸の曲面として形成されることが好適である。また、ガイド54の傾斜面54aは、集油部51側よりもオイルディスク給油路49側に向かうにつれて潤滑油100の流路を狭く形成し、潤滑油100の一部を直接オイルディスク給油路49に供給することも好適である。
【0065】
ガイド54は、平板や曲面板等の板材で形成されるほか、ブロック状部材で形成されていてもよい。ガイド54は、1つの部材で形成されるほか、2つなど、複数の部材が連結されて形成されていてもよい。ガイド54の傾斜面54aの傾斜角度αは、一定であってもよく、一定でなく、途中で変化していてもよい。ガイド54の傾斜面54aの傾斜角度αが途中で変化する場合、ガイド54の傾斜面54aの傾斜度合は、オイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49側よりも集油部51側の傾斜が大きいと、潤滑油100の重力により、潤滑油100をより早期にオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49に向かって流すことができる。ガイド54の傾斜面54aが曲面で形成される場合、傾斜面54aの表面の接線と水平面との間の傾斜角度αは、集油部51からオイルディスク給油口45及びオイルディスク給油路49に向かって連続的に小さくなるように傾斜する。
【0066】
また、ガイド54の傾斜面54aは、ガイド54の傾斜面54aの幅方向の集油部51の傾斜面51a側(
図5の紙面の上側)が高く、集油部51から離れた側(
図5の紙面の下側)が低くなっていてもよい。この場合のガイド54の傾斜面54aの傾斜角度は、オイルディスク15の想定回転速度、潤滑油100の油量等に応じて調整される。
【0067】
ガイド54は、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bのエアの出口を傾斜面54a上を流れ下る潤滑油100の流路と区画する。ガイド54は、第2-1気抜き路119aの出口及び第2-2気抜き路119bの出口の直上に離間する。このため、ガイド54の傾斜面54a上を上側から下側に流れ下る潤滑油100が第2-1気抜き路119aの出口及び第2-2気抜き路119bの出口には直接到達しない。そして、ガイド54は、ガイド54の傾斜面54aとは反対側の下面54bと平面16a上の第2-1気抜き路119aの出口及び第2-2気抜き路119bの出口との間に、第2-1気抜き路119aの出口及び第2-2気抜き路119bの出口からエアがエア自体の浮力により排出されるときに、エアの排出空間、すなわち、エアの排出流路を確保する。
【0068】
ガイド54は、水車発電機200の軸受装置1の運転開始直後の初期潤滑が終了した定常運転時において潤滑油100を通してエアをエア自体の浮力により排出するため、上下に貫通する切欠部55a,55bを有する。なお、初期潤滑が終了した定常運転時は、主給油路47を通して潤滑油100が必要箇所に充満し、運転停止時に入り込んだエアがホルダー16の外側に排出された状態とする。
【0069】
切欠部55a,55bは、ガイド54の位置が最も高いオイルディスク15側に設けられ、第2-1気抜き路119aの出口及び第2-2気抜き路119bの出口とガイド54の下面54bとの間に溜まるエアをホルダー16の外側に排出しやすくする。
図5中、切欠部55a,55bを矩形として図示する。切欠部55a,55bは、矩形であってもよく、円形等であってもよい。また、
図5中の切欠部55a,55bは、それぞれ例えば5mm角に形成されるが、切欠部55a,55bの大きさは適宜に設定される。切欠部55a,55bの大きさ及び形状が互いに異なっていてもよい。
【0070】
なお、ガイド54の下面54bは、エアを切欠部55a,55bに誘導するため、切欠部55a,55b側が高く、ガイド54の幅方向中央付近が低い曲面状や、略V字状に形成されていてもよい。この場合、エアを効率的に切欠部55a,55bに誘導することができる。
【0071】
図3に示すように、支持部17は、軸受台10内部に固定されるとともに、ホルダー16の軸方向で中央の外周面に当接し、ホルダー16を保持する。また、支持部17は、支持部排油口61と、支持部排油口61及び排油口44に連通する支持部排油路62と、を備える。
【0072】
支持部排油口61は、支持部17の外面に設けられ、軸受台10内に開口する。支持部排油口61は、例えば、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13よりも高い位置に形成される。
【0073】
支持部排油路62は、支持部17内部に形成され、ホルダー16の排油口44から支持部排油口61に連通する孔である。支持部排油路62は、排油口44と流体的に連通し、排油口44から排出された潤滑油100をホルダー16の外側へ排出する流路を形成する。
【0074】
図2に示すように、オイルクーラ18は、軸受台10の外側に配置される。オイルクーラ18は、内部の潤滑油100を冷却する。オイルクーラ18は、内部に潤滑油100を流入する流入口18aと、潤滑油100を流出する流出口18bと、を有する。流入口18aは、オイルクーラ18の下方に設けられ、第1送油管19が接続される。流出口18bは、オイルクーラ18の上方に設けられ、第2送油管20が接続される。
【0075】
第1送油管19は、ホルダー16の潤滑油吐出口42とオイルクーラ18の流入口18aとを流体的に接続する。第1送油管19は、軸受台10の第1挿通孔10aを通して、軸受台10内のホルダー16の潤滑油吐出口42と軸受台10外のオイルクーラ18の流入口18aとを接続する。
【0076】
第2送油管20は、オイルクーラ18の流出口18bとホルダー16の給油口43とを流体的に接続する。第2送油管20は、軸受台10の第2挿通孔10bを通して、軸受台10外のオイルクーラ18の流出口18bと軸受台10内のホルダー16の給油口43とを接続する。
【0077】
このような軸受装置1は、粘性ポンプ14によって潤滑油100を圧送することにより、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13を潤滑する。
【0078】
以下、
図2乃至
図5を用いて、軸受装置1における潤滑油100の圧送経路について説明する。なお、
図2乃至
図5は、図中矢印によって運転開始直後の潤滑油100の初期潤滑の経路を示している。
【0079】
水車発電機200の運転が停止しているものとする。このとき、オイルディスク給油口45において、ホルダー16の外側の潤滑油100の油面よりも上側には潤滑油100は溜まっていない。また、粘性ポンプ14からオイルディスク給油口45への潤滑油100の供給もない。第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12のそれぞれのスラスト室116a,116bにおいて、ホルダー16の外側の潤滑油100の油面よりも上側には潤滑油100は溜まっていない。すなわち、それぞれのスラスト室116a,116bには、エアがある。なお、オイルディスク15のうち、ホルダー16の外側の潤滑油100の油面よりも上側の最頂部は潤滑油100の油面よりも常時上側にあり、最下部は常時潤滑油100に浸かっている。
【0080】
水車発電機200の運転開始時、供給管から供給され放流管214cに向かって流れる水により、水車214の羽根車214bがケーシング214a内で回転することで、回転軸211を回転させる。軸受台10内の潤滑油100は、回転軸211の回転に伴う基部31及び潤滑油かき上げ部32の回転により、潤滑油かき上げ部32に付着した状態で上方にかき上げられる。潤滑油100は、潤滑油100が付着した潤滑油かき上げ部32が集油部51に対して相対的に移動することで、集油部51の傾斜面51aによって受けられ、集油部51の傾斜面51aに沿って移動する。集油部51の傾斜面51aに沿って移動する潤滑油100は、自重によって、ガイド54の傾斜面54aに載せられる。潤滑油100は、ガイド54の傾斜面54aの傾斜に沿って、自重により、オイルディスク給油口45に誘導される。このため、潤滑油100は、オイルディスク給油口45の凹部45bに設けられるオイルディスク給油路49の上側開口49aを通してオイルディスク給油路49を通過する。オイルディスク給油路49を通過した潤滑油100は、ジャーナル軸受13の孔部13aを通過し、ジャーナル軸受13と回転軸211との間に供給される。
【0081】
このように、水車発電機200の運転開始直後、すなわち、回転軸211の回転開始直後の初期潤滑において、軸受台10内の潤滑油100は、回転軸211の回転に伴うオイルディスク15の回転により、上方からジャーナル軸受13に供給される。このため、水車発電機200の運転開始直後の初期潤滑において、ジャーナル軸受13に潤滑油100が供給され、ジャーナル軸受13と回転軸211との間が潤滑される。
【0082】
このとき、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口の上方には、ガイド54が離間して配置されている。このため、水車発電機200の運転開始直後の初期潤滑において、集油部51で集油した潤滑油100は、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口に向かうことない。したがって、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口を介して潤滑油100が入り、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bのエアの経路が塞がれることを防止することができる。
【0083】
オイルディスク15によってかき上げられ、ジャーナル軸受13と回転軸211との間に供給された潤滑油100の一部は、ジャーナル軸受13と回転軸211との間から第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12それぞれ向かって移動し、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12に供給される。即ち、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12は、粘性ポンプ14により圧送される潤滑油100が到達するまでの間、オイルディスク15により供給された潤滑油100によって初期潤滑がなされる。
【0084】
このように、水車発電機200の運転開始直後、すなわち、回転軸211の回転開始直後、ジャーナル軸受13には、主給油路47を経て潤滑油100が供給されるまでの初期潤滑として、オイルディスク15により上方から潤滑油100が供給される。
【0085】
水車発電機200の運転開始直後の初期潤滑において、軸受台10内に溜められた潤滑油100は、粘性ポンプ14により、第1送油管19に圧送される。具体的に説明すると、潤滑油100の油面が粘性ポンプ回転部21の下端よりも高く位置することで、潤滑油100は、ホルダー16の潤滑油取込口41及び粘性ポンプ取込口22bを通過し、粘性ポンプ回転部21の外周面及び溝部22aが為す間隙に入り込む。ここで、回転軸211の回転に伴い粘性ポンプ回転部21が回転すると、潤滑油100は、粘性により、粘性ポンプ回転部21と粘性ポンプ固定部22の間隙に沿って圧送される。粘性ポンプ14により圧送された潤滑油100は、粘性ポンプ吐出口22c及び潤滑油吐出口42を通過し、第1送油管19に流入する。ここで、
図9に示すように、粘性ポンプ14により圧送される潤滑油100は、粘性ポンプ回転部21と粘性ポンプ固定部22の間隙を通過する際に摩擦熱が生じることで加熱される。
【0086】
潤滑油100は、粘性ポンプ14によりさらに圧送されることで、第1送油管19を通過し、第1送油管19が接続された下方からオイルクーラ18に流入する。ここで、
図9に示すように、潤滑油100は、オイルクーラ18内で冷却される。オイルクーラ18内の潤滑油100は、油面が上方に接続された第2送油管20の高さに至ると、第2送油管20を通過する。第2送油管20を通過した潤滑油100は、第2送油管20と接続された給油口43からホルダー16内に流入する。
【0087】
給油口43に流入した潤滑油100は、主給油路47を通過する。潤滑油100は、主給油路47の分岐に沿って、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12それぞれに向かってホルダー16内を通過する。このため、主給油路47を通過した潤滑油100は、第1スラスト軸受11と粘性ポンプ回転部21との間の第1スラスト室116a、及び、第2スラスト軸受12と基部31との間の第2スラスト室116bにそれぞれ供給される。
【0088】
潤滑油100は、第1スラスト軸受11と粘性ポンプ回転部21の間、及び、第2スラスト軸受12と基部31の間に、それぞれ油膜を形成する。そして、潤滑油100は、各スラスト室116a,116b内に充満し、各スラスト室116a,116b内のエアをスラスト室116a,116b内から押し出す。このため、第1スラスト軸受11のスラスト室116aの第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bの出口からそれぞれエアがエア自体の浮力により排出される。また、第2スラスト軸受12のスラスト室116bの第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口からそれぞれエアがエア自体の浮力により排出される。
【0089】
第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aの第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bの出口からそれぞれエアが排出されるとき、潤滑油100は第1スラスト軸受11の第1スラスト室116a内のエアの排出出口に干渉しない。このため、エアは、ホルダー16の外側に排出され、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aには、潤滑油100が充満する。
【0090】
第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aの第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bの出口からそれぞれエアが排出された後、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aの第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bの出口からは、潤滑油100が排出される。
【0091】
第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bの第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口からそれぞれエアが排出されるとき、集油部51で集めた潤滑油100をガイド54によりオイルディスク給油路49に案内することとなる。この場合、潤滑油100は例えば板状のガイド54の上側の傾斜面54aを通るため、ガイド54の直下の第2スラスト軸受12の第2スラスト室116b内のエアの排出出口に干渉しない。このため、エアは、ホルダー16の平面16aとガイド54の下面54bとの間の空間を通して、ホルダー16の外側に排出され、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bには、潤滑油100が充満する。
【0092】
第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bの第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口からそれぞれエアが排出された後、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bの第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口からは、潤滑油100が排出される。このため、ホルダー16の平面16aとガイド54の下面54bとの間の一部は、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bから排出された潤滑油100で満たされる。
【0093】
ここで、
図9に示すように、潤滑油100は、第1スラスト軸受11に対する粘性ポンプ回転部21の摺動摩擦、及び、第2スラスト軸受12に対する基部31の摺動摩擦によってそれぞれ加熱される。
【0094】
第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12を通過した潤滑油100は、それぞれ排油路48に流入する。第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12それぞれから排油路48に流入した潤滑油100は、ホルダー16の中央で合流し、排油口44へ流入する。排油口44へ流入した潤滑油100は、排油口44に連通する支持部17の支持部排油路62を通過し、支持部排油口61から排出され、軸受台10内に戻る。
【0095】
また、主給油路47を通過する潤滑油100の一部は、第1スラスト軸受11と回転軸211との間、及び、第2スラスト軸受12と回転軸211との間のそれぞれから、ジャーナル軸受13と回転軸211との間に供給される。潤滑油100は、ジャーナル軸受13と回転軸211との間で油膜を形成する。このため、潤滑油100は、ジャーナル軸受13と回転軸211との間に充満し、ジャーナル軸受13と回転軸211との間のエアを押し出す。ジャーナル軸受13と回転軸211との間のエアは、エア自体の浮力により、例えばジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45を通してホルダー16の外側に排出される。このため、エアは、ジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45の空間を通して、ホルダー16の外側に排出され、ジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45には、潤滑油100が充満する。
【0096】
ジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45からエアが排出された後、ジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45からは、潤滑油100が排出される。このため、ジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45は、潤滑油100で満たされる。
【0097】
主給油路47を経た潤滑油100がジャーナル軸受13に供給されると、粘性ポンプ14による潤滑油100の圧送により、ジャーナル軸受13に供給された潤滑油100は、孔部13aを上方に通過し、オイルディスク給油路49を経て、オイルディスク給油口45から軸受台10内へ排出される。
【0098】
このため、ホルダー16内の間隙の必要箇所からは、エアがエア自体の浮力により排出され、潤滑油100が充満する。また、オイルディスク給油路49及びオイルディスク給油口45に潤滑油100が満たされ、オイルディスク給油路49を経て、オイルディスク給油口45から潤滑油100が排出される。この状態では、潤滑油100が必要箇所に充満し、水車発電機200の軸受装置1は、運転開始直後の初期潤滑が終了し、定常運転状態となる。
【0099】
ここで、
図9に示すように、潤滑油100は、ジャーナル軸受13に対する回転軸211の摺動摩擦によって加熱される。
【0100】
加熱され、軸受台10内に排出された潤滑油100は、オイルクーラ18により冷却される。軸受装置1は、オイルクーラ18及びホルダー16の給油口43が流体的に接続されることで、オイルクーラ18で冷却された潤滑油100を第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13に供給する。
【0101】
このようにして、水車発電機200の軸受装置1の定常運転状態において、すなわち、回転軸211の回転継続中において、大部分の潤滑油100はスラスト室116a,116bから排油路48を通じてホルダー16の外側に排出される。また、ジャーナル軸受13を満たした潤滑油100の一部はオイルディスク通路である、ジャーナル軸受13の孔部13a及びオイルディスク給油路49を逆流してオイルディスク給油口45を満たし、ホルダー16の外側に排出される。また、第1スラスト室116a内の潤滑油100の一部は、第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bから排出される。また、第2スラスト室116b内の潤滑油100の一部は、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bから排出される。
【0102】
本実施形態では、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aには、第1スラスト室116aの上側に、ホルダー16の外側に連通する第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bが設けられている。このため、第1スラスト室116a内の内圧は、回転軸211の低回転時は低くなり、回転軸211の高回転時は高くなるといった回転軸211の回転数等、運転条件に依存することがない。したがって、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aの第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bにより、第1スラスト室116a内の内圧は回転軸211の回転数に依存することが防止される。そして、水車発電機200の回転軸211の定常運転状態において、軸受装置1の第1スラスト室116a内にエアがある場合、第1スラスト室116a内の内圧によらず、第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bを通してエアがエア自体の浮力により潤滑油100中を上側に移動して排出される。したがって、水車発電機200の運転中、軸受装置1の第1スラスト軸受11と粘性ポンプ回転部21との間には、エアが残り続けることを防止し、第1スラスト軸受11と粘性ポンプ回転部21との間に潤滑油100を充満させることができる。このため、軸受装置1の第1スラスト室116a内のエアの存在により、第1スラスト軸受11と粘性ポンプ回転部21との間が高温化することを防止することができる。
【0103】
本実施形態では、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bには、第2スラスト室116bの上側に、ホルダー16の外側に連通する第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bが設けられている。このため、第2スラスト室116b内の内圧は、回転軸211の低回転時は低くなり、回転軸211の高回転時は高くなるといった回転軸211の回転数等、運転条件に依存することがない。したがって、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bの第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bにより、第2スラスト室116b内の内圧は回転軸211の回転数に依存することが防止される。そして、水車発電機200の回転軸211の定常運転状態において、軸受装置1の第2スラスト室116b内にエアがある場合、第2スラスト室116b内の内圧によらず、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bを通してエアがエア自体の浮力により潤滑油100中を上側に移動して排出される。したがって、水車発電機200の運転中、軸受装置1の第2スラスト軸受12と基部31との間には、エアが残り続けることを防止し、第2スラスト軸受12と基部31との間に潤滑油100を充満させることができる。このため、軸受装置1の第2スラスト室116b内のエアの存在により、第2スラスト軸受12と基部31との間が高温化することを防止することができる。
【0104】
このとき、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bは潤滑油100で満たされている。この場合、第2スラスト室116b内のエアは、第2スラスト室116b内に充満する潤滑油100により、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bを通じてホルダー16の外側に排出される。このとき、オイルディスク給油口45は潤滑油100で満たされており、また、オイルディスク給油口45よりも上側のガイド54の少なくとも一部も潤滑油100に浸かっている。そして、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bを通じてホルダー16の外側に排出されたエアは、ガイド54の少なくとも一部を浸す潤滑油100を通し、ガイド54に設けられた切欠部55a,55bを通して潤滑油100の外側である、ホルダー16の外側に排出される。
【0105】
このように、本実施形態に係る軸受装置1では、粘性ポンプ14側の第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aの上部には、第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bが設けられている。このため、第1スラスト軸受11のスラスト室116aのエアは、エア自体の浮力により、これら第1-1気抜き路118a及び第1-2気抜き路118bを通してホルダー16の外側に排出される。したがって、水車発電機200の運転中の第1スラスト軸受11の第1スラスト室116a内のエアにより、第1スラスト軸受11の第1スラスト室116aが異常な高温となることを抑制することができる。
【0106】
同様に本実施形態に係る軸受装置1では、オイルディスク15側の第2スラスト軸受12のスラスト室116bの上部には、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bが設けられている。このため、第2スラスト軸受12のスラスト室116bのエアは、エア自体の浮力により、これら第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bを通してホルダー16の外側に排出される。これら第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bは、第2スラスト室116bの上部に設けられ、ガイド54により初期潤滑における給油に用いるオイルディスク15の給油経路と干渉しない。したがって、本実施形態では、ガイド54を用いてオイルディスク15からオイルディスク給油路49への給油経路と、第2-1気抜き路119a及び第2-2気抜き路119bの出口からのエアの排出経路とを区分けすることができる。このため、初期潤滑において、第2スラスト室116bの上方を通して供給される潤滑油100との干渉を防止しながら、第2スラスト室116bの上部からエアを排出する気抜き路119a,119bを設けることができる。また、定常運転状態において、回転軸211の回転数等の運転状況に基づく第2スラスト室116b内の内圧ではなく、エア自身に働く浮力によって第2スラスト室116b内のエアを第2スラスト室116bの外側である、ホルダー16の外側に気抜き路119a,119bを通して排出することができる。したがって、水車発電機200の軸受装置1の定常運転状態における第2スラスト軸受12の第2スラスト室116b内のエアにより、第2スラスト軸受12の第2スラスト室116bが異常な高温となることを抑制することができる。
【0107】
また、ジャーナル軸受13の近傍にエアが存在していたとしても、そのエアは、エア自体の浮力により、これらジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、及び、オイルディスク給油口45を通してホルダー16の外側に排出される。したがって、水車発電機200の運転中のジャーナル軸受13の近傍のエアにより、ジャーナル軸受13と回転軸211との間が異常な高温となることを抑制することができる。
【0108】
本実施形態では、ホルダー16に対して、オイルディスク給油口45をオイルディスク給油路49とは別に設ける例について説明した。オイルディスク給油口45は必ずしも必要ではなく、ガイド54の傾斜面54a上に流れる潤滑油100が、直接、オイルディスク給油路49に流されることも好適である。この場合、ガイド54は、オイルディスク給油口45を介することなく、集油部51と、オイルディスク給油路49とを流体的に接続する。
【0109】
本実施形態では、ホルダー16が、第1スラスト室116aに対して、エアを排出するとともに潤滑油100を通す、第1-1気抜き路118a、及び、第1-2気抜き路118bを有する例について説明した。気抜き路は、第1-2気抜き路118bの1つであってもよい。又は、第1-1気抜き路118a、及び、第1-2気抜き路118bに加えて、第1スラスト室116aとホルダー16の外側とを連通する別の気抜き路があってもよい。
【0110】
同様に、本実施形態では、ホルダー16が、第2スラスト室116bに対して、エアを排出するとともに潤滑油100を通す、第2-1気抜き路119a、及び、第2-2気抜き路119bを有する例について説明した。気抜き路は、第2-1気抜き路119aがなく、第2-2気抜き路119bの1つであってもよい。又は、第2-1気抜き路119a、及び、第2-2気抜き路119bに加えて、第2スラスト室116bとホルダー16の外側とを連通する別の気抜き路があってもよい。
【0111】
したがって、本実施形態によれば、スラスト室116a,116b内のエアを排出可能な軸受装置1、及び、そのような軸受装置1を有する水車発電機200を提供することができる。
【0112】
ここで、流体中を回転する円板側面の摩擦抵抗を考える。半径Rのある円板が密度ρの流体中を角速度ωで回転し、円板の側面には、粘性に基づく境界層が発達し、摩擦トルクTが生じるとする。このとき、回転円板の軸中心からの半径rに微小長さdrを取ると、円環状の微小面積dAは、式(1)として表すことができる。
【0113】
【0114】
微小面積dAに働く摩擦力dFは、角速度U=rωを用いて表すと、式(2)として表すことができる。
【0115】
【0116】
ここで、Cfは円板の摩擦抵抗係数である。この円板の片側面の摩擦トルクTは、この摩擦抵抗dFに半径rをかけ、回転軸の半径r=rOから回転円板の半径をr=Rまで積分すると、以下の式(3)が得られる。
【0117】
【0118】
円板の半径Rが軸半径rOに比べて十分に大きいならば、R5>rO
5であるので、以下の式(4)が得られる。なお、CTは、摩擦損失係数である。
【0119】
【0120】
このため、回転する円板の摩擦トルクTは、円板の半径rの5乗に比例する。したがって、半径rが小さければ小さいほど、摩擦トルクを減らすことができる。
【0121】
図10の左図には、特許文献1のオイルディスク給油口の近傍の拡大図を示し、
図10の右図には、本実施形態に係るオイルディスク給油口45の近傍の拡大図を示す。なお、
図10中の左図には、便宜的に、
図10の右図に示す本実施形態に係る軸受装置1と同じ部材及び同じ機能を有する部材には同じ符号を付す。
【0122】
ここで、特許文献1のオイルディスク15の半径をROとし、本実施形態のオイルディスク15の半径をRとする。このため、本実施形態に係るオイルディスク15は、ホルダー16の平面16aに潤滑油ガイド部50を設けることによって、特許文献1のオイルディスク15に比べて、径方向に沿ってΔR(=RO-R)で示す分、オイルディスク15の半径を小さくすることができる。したがって、本実施形態のオイルディスク15にかかるトルクを、特許文献1の例のオイルディスク15を用いる場合に比べて、半径の5乗に比例して減らすことができる。言い換えると、本実施形態に係るオイルディスク15の回転効率を、特許文献1のオイルディスク15の回転効率に比べて、向上させることができる。
【0123】
なお、オイルディスク15の潤滑油かき上げ部32からジャーナル軸受13に潤滑油100を供給することが要求されるのは、例えば運転開始直後、すなわち、回転軸211の回転開始直後であり、回転軸211の回転し始めから5秒程度である。そして、オイルディスク15の半径が小さくなると、ジャーナル軸受13への潤滑油100の供給が多少減る可能性がある。しかしながら、潤滑油100がジャーナル軸受13に供給され、かつ、潤滑油かき上げ部32からジャーナル軸受13に潤滑油100を供給する時間は上述した5秒程度など、短い。また、運転開始から5秒程度経過した以後は、潤滑油かき上げ部32からジャーナル軸受13に潤滑油100を供給することに加えて、ジャーナル軸受13から第1スラスト室116a及び第2スラスト室116bに潤滑油100が供給され、また、粘性ポンプ14により主給油路47等からジャーナル軸受13に潤滑油100が供給され始めるため、オイルディスク15の径を小さくすることに問題は生じないと想定される。
【0124】
また、本実施形態に係る軸受装置1によれば、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12を保持するホルダー16に、軸方向で第1スラスト軸受11と前記第2スラスト軸受12との間の中心に設けられる給油口43、給油口43から第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12それぞれに連通し、さらには第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12を通してジャーナル軸受13に潤滑油100を供給する主給油路47、軸受台10の油槽に開口する排油口44、及び、第1スラスト軸受11及び前記第2スラスト軸受12それぞれから合流し排油口44に連通する排油路48を備えることで、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12を均等に冷却することができる。具体的に説明すると、給油口43が軸方向で第1スラスト軸受11と前記第2スラスト軸受12との間の例えば中心に位置することで、給油口43に連通する主給油路47は、給油口43から第1スラスト軸受11への流路と、給油口43から第2スラスト軸受12への流路とが対称に形成される。これにより、給油口43から流入した潤滑油100が、分岐した主給油路47を通過し、同等の流れで第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12に到達する。また、排油路48は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12を通過した潤滑油100が合流して、排油口44に連通する。これにより、軸受装置1は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12に供給する潤滑油100の条件を同等にすることができる。即ち、軸受装置1は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12の冷却条件を同等にすることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る軸受装置1は、軸受台10内から潤滑油100を汲み上げるオイルディスク15、及び、オイルディスク15で汲み上げた潤滑油100をジャーナル軸受13に給油するオイルディスク給油路49を備え、オイルディスク給油路49がジャーナル軸受13に連通する。これにより、水車発電機200の運転開始直後、すなわち、回転軸211の回転開始直後の初期潤滑において、回転軸211の回転に伴い軸受台10内からオイルディスク15で汲み上げられた潤滑油100が、オイルディスク給油路49からジャーナル軸受13に供給される。よって、軸受装置1は、回転軸211が回転を始めた運転初期に、オイルディスク給油路49を通過した潤滑油100がジャーナル軸受13に到達させる初期潤滑を行うことができる。
【0126】
また、本実施形態に係る軸受装置1は、主給油路47が、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12の一次側のそれぞれからジャーナル軸受13及び回転軸211の間に流体的に接続されることで、ジャーナル軸受13の油切れが生じるリスクがない。具体的に説明すると、主給油路47を通過する潤滑油100は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12へ供給される他、第1スラスト軸受11と回転軸211との間の第1スラスト室116a、及び、第2スラスト軸受12と回転軸211との間の第2スラスト室116bのそれぞれから、ジャーナル軸受13と回転軸211との間に供給される。よって、ジャーナル軸受13は、回転軸211が回転を始めた運転初期から適宜の時間が経過した定常運転状態において、主給油路47から供給される潤滑油100によって潤滑され続ける。また、主給油路47から供給されジャーナル軸受13を潤滑した潤滑油100は、初期潤滑に用いられるオイルディスク給油路49から軸受台10内へ排出することができる。これにより、軸受装置1は、回転軸211が回転を始めた運転初期には、オイルディスク給油路49から供給される潤滑油100によってジャーナル軸受13を潤滑し、運転初期から適宜の時間が経過した後には、主給油路47から供給される潤滑油100によって潤滑するため、ジャーナル軸受13の油切れが生じるリスクがない。
【0127】
また、本実施形態に係る軸受装置1は、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12が、第1スラストカラー211a及び第2スラストカラー211bの間に設けられることで、ホルダー16の疲労限度の低下を防止することができる。具体的に説明すると、第1スラスト軸受11が第1スラストカラー211aに当接することで受ける荷重、及び、第2スラスト軸受12が第2スラストカラー211bに当接することで受ける荷重は、それぞれ軸方向で中心向きとなる。よって、第1スラスト軸受11及び第2スラスト軸受12を保持するホルダー16が受ける、異なる2方向のスラスト荷重は、いずれもホルダー16の軸方向で中央向きとなる。即ち、ホルダー16には、異なる2方向のスラスト荷重いずれによっても、圧縮力が生じる。ホルダーは、例えば、ホルダーに軸方向で外向きの引張力が生じ、さらに回転軸の変位等による荷重が加わると、ホルダーに生じる引張応力により疲労限度が低下する虞がある。このため、従来においては、ホルダーは、疲労強度の向上の為、大型に設計される必要があった。しかし、本実施形態に係る軸受装置1によれば、スラスト荷重によってホルダー16に圧縮力が加わる構成とすることで、このような疲労限度の低下が防止される。これにより、軸受装置1に設けられるホルダー16は、小型化することができる。
【0128】
また、本実施形態に係る軸受装置1は、潤滑油100を冷却するオイルクーラ18、及び、オイルクーラ18に潤滑油100を圧送する粘性ポンプ14を備えることで、粘性ポンプ14により圧送した潤滑油100を、オイルクーラ18で冷却することができる。
【0129】
また、本実施形態に係る軸受装置1は、オイルクーラ18及びホルダー16の給油口43が流体的に接続されることで、オイルクーラ18で冷却された潤滑油100を第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13に供給することができる。これにより、軸受装置1は、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13に供給する潤滑油100の温度が低くなることから、各軸受に供給する潤滑油100の粘度を高くすることができる。よって、軸受装置1は、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13において、潤滑油100による安定した油膜形成が可能となり、各軸受11,12,13の寿命を向上することができる。加えて、軸受装置1は、潤滑油100が低温で各軸受11,12,13を潤滑することから、潤滑油100の寿命も向上することができる。
【0130】
さらに、本実施形態に係る軸受装置1は、潤滑油100の圧送経路における潤滑油100の温度について、オイルクーラ18に流入するときの潤滑油100の温度が最も高くなる。具体的には、潤滑油100は、主給油路47を通過し第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12及びジャーナル軸受13の潤滑によって加熱された後、排油路48を通過し軸受台10内へ排出され、軸受台10内から粘性ポンプ14による圧送時にさらに加熱された状態で、温度が最も高くなる。よって、軸受装置1は、粘性ポンプ14により圧送され最も高い温度となった潤滑油100がオイルクーラ18に流入することからも、潤滑油100とオイルクーラ18の冷媒との平均温度差及び熱通過率が向上する。これにより、軸受装置1は、オイルクーラ18の放熱面積を小さくするか、または、粘性ポンプ14によって圧送する油量を小さくすることができ、即ち、オイルクーラ18の小型化、または、粘性ポンプ14の小型化が可能である。
【0131】
また、軸受装置1は、排油口44が第1スラスト軸受11の最頂点、第2スラスト軸受12の最頂点及びジャーナル軸受13の最頂点よりも高い位置に設けられることから、簡素な構成で各軸受に潤滑油100を充満することができる。具体的には、ホルダー16内における潤滑油100は、主給油路47、第1スラスト軸受11、第2スラスト軸受12、ジャーナル軸受13及び排油路48に充満し、ホルダー16内の潤滑油100の油面が排油口44に到達することで軸受台10内へ排出される。よって、軸受装置1は、排油口44を第1スラスト軸受11の最頂点、第2スラスト軸受12の最頂点及びジャーナル軸受13の最頂点よりも高い位置に設ける簡素な構成によって、潤滑油100が各軸受11,12,13を全て潤滑した後に軸受台10内へ排出される構造とすることができる。
【0132】
また、上述した例では、ホルダー16に排油口44が設けられ、排油路48が第1スラスト軸受11側からホルダー16の中央に向かって延設される孔と、第2スラスト軸受12側からホルダー16の中央に向かって延設される孔とが、ホルダー16の中央で連通し、排油口44に延設される形状に形成された孔により構成される例を説明したが、これに限定されない。例えば、排油路48は、オイルディスク給油路49に連通する構成であってもよい。具体的には、排油路48は、第1スラスト軸受11側からホルダー16の中央に向かって延設される孔と、第2スラスト軸受12側からホルダー16の中央に向かって延設される孔とが、それぞれオイルディスク給油路49に連通する構成であってもよい。このような排油路48を備える軸受装置1によれば、排油路48を通過する潤滑油100は、排油路48に流体的に連通するオイルディスク給油路49を経て、オイルディスク給油口45から軸受台10内へ排出される。よって、軸受装置1は、ホルダー16の排油口44、並びに、支持部17の支持部排油口61及び支持部排油路62を省略することができ、構造を簡素化することができる。
【0133】
また、上述した例では、主給油路47から供給され、ジャーナル軸受13を潤滑した潤滑油100は、ジャーナル軸受13の孔部13a、オイルディスク給油路49、オイルディスク給油口45を通過し、軸受台10内へ排出される例を説明したが、これに限定されない。例えば、軸受装置1は、ジャーナル軸受13を潤滑した潤滑油100が、オイルディスク給油路49とは別に設けられた流路を通過して軸受台10内へ排出される構成であってもよい。このように構成された軸受装置1によれば、ジャーナル軸受13を潤滑した潤滑油100は、ジャーナル軸受13の孔部13aからオイルディスク給油路49の中空部を経て、軸受台10内に排出される。即ち、軸受装置1は、ジャーナル軸受13を潤滑でき、ジャーナル軸受13を潤滑した潤滑油100が軸受台10内に排出される構成であれば、ジャーナル軸受13から軸受台10内に潤滑油100を排出する流路は、適宜設定可能である。
【0134】
以上説明した実施形態によれば、スラスト室116a,116b内のエアを排出可能な軸受装置1、及び、そのような軸受装置1を有する水車発電機200を提供することができる。
【0135】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0136】
1…軸受装置、10…軸受台(油槽)、11…第1スラスト軸受、11a…第1軸受部、12…第2スラスト軸受、12a…第2軸受部、13…ジャーナル軸受、13a…孔部、14…粘性ポンプ、15…オイルディスク、16…ホルダー、17…支持部、18…オイルクーラ、21…粘性ポンプ回転部、22…粘性ポンプ固定部、31…基部、32…潤滑油かき上げ部、41…潤滑油取込口、42…潤滑油吐出口、43…給油口、44…排油口、45…オイルディスク給油口、45a…傾斜面、45b…凹部、47…主給油路、48…排油路、49…オイルディスク給油路、50…潤滑油ガイド部、51…集油部、51a…傾斜面、52…カバー、53…支持部材、54…ガイド、54a…傾斜面、54b…下面、61…支持部排油口、62…支持部排油路、100…潤滑油、118a…第1-1気抜き路、118b…第1-2気抜き路、119a…第2-1気抜き路、119b…第2-2気抜き路、200…水車発電機、211…回転軸、211a…第1スラストカラー、211b…第2スラストカラー。
【要約】
【課題】スラスト室内のエアを排出可能な軸受装置を提供すること。
【解決手段】軸受装置は、第1スラストカラー及び潤滑油を汲み上げるオイルディスクである第2スラストカラーを含む回転軸を支持する。軸受装置は、油槽と、第1スラスト軸受と、第2スラスト軸受と、ジャーナル軸受と、回転軸が貫通される筒状のホルダーと、集油部と、気抜き路と、ガイドと、粘性ポンプとを有する。気抜き路は、ホルダーに設けられ、ホルダーの外側と第2スラスト軸受のスラスト室に連通し、ホルダーの主給油路を通して送られる潤滑油により第2スラスト軸受のスラスト室内のエアをホルダーの外側に排出する。ガイドは、集油部とオイルディスク給油路の上側開口との間に設けられ、集油部で集めた潤滑油をホルダーのオイルディスク給油路の上側開口に案内するとともに、気抜き路のエアの出口とを区画する。
【選択図】
図4