(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】適応型自動車前照灯の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/02 20060101AFI20240408BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B60Q1/02 C
B60Q1/14 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023036667
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブルナー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マイヤー
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008062640(DE,A1)
【文献】特開2016-199083(JP,A)
【文献】特開平07-246873(JP,A)
【文献】特開2014-102583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0239746(US,A1)
【文献】国際公開第2019/198604(WO,A1)
【文献】特開2021-127071(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102020121001(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/02
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応型自動車前照灯の制御方法であって、
前記適応型自動車前照灯(2)には第1データ記憶装置(3)が割り当てられていること、
前記適応型自動車前照灯(2)は少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、そのために、複数のセグメント(2a)に配置された複数の光源(2aa)を有すること、
各セグメント(2a)は少なくとも1つのLED光源を含むこと、
前記方法は、以下のステップ:
a)前記適応型自動車前照灯(2)及び前記第1データ記憶装置(3)を提供し、前記第1データ記憶装置(3)に複数のデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)を記憶すること、但し、各データセットは各セグメント(2a)について該適応型自動車前照灯(2)から放射されるべき光分布(LVa1、LVa2、LVa3、LVa4、LVb1、LVb2、LVb3)を変更するための光強度値(IsegmLV)を予め設定し、該複数のデータセットはデータセットについての少なくとも2つのグループ(3a、3b)、即ち、減光ライト用データセット(3a1、3a2、3a3、3a4)についての第1グループ(3a)と遠方ライト用データセット(3b1、3b2、3b3、3b4)についての第2グループ(3b)とを含み、各グループ(3a、3b)は少なくとも1つのデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)を含み、各減光ライト用データセット(3a1、3a2、3a3、3a4)は減光ライト用光分布を生成するよう構成され、各遠方ライト用データセット(3b1、3b2、3b3)は遠方ライト用光分布を生成するよう構成されており、複数の異なるデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)についての夫々の光分布(複数)の構成(複数)は(互いに)異なっている、
b)前記適応型自動車前照灯(2)
と自動車(1)を結合すること、但し、前記自動車(1)は前記適応型自動車前照灯(2)の制御のための制御データ(1a)を出力するよう構成されている、
c)前記制御データ(1a)を前記自動車(1)によって前記適応型自動車前照灯(2)へ送信すること、但し、前記適応型自動車前照灯(2)は内部計算ユニット(2c)を有し、前記内部計算ユニット(2c)は前記制御データ(1a)を受信し、該制御データ(1a)に依存して前記第1データ記憶装置(3)に記憶された、以下においてアクティブデータセットとも称される、データセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3)を選択し及び呼び出す、
d)前記複数のセグメント(2a)に配された前記複数の光源(2aa)を前記内部計算ユニット(2c)によって、ステップc)による複数のアクティブデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3)に従い、設定(変更)可能な平滑化機能(Fg)を用いて制御すること、但し、前記適応型自動車前照灯(2)は内部データ記憶装置(2d)を有し、該内部データ記憶装置(2d)には、光分布移行(変更)制御アルゴリズム(LV-AL)が記憶されており、該光分布移行制御アルゴリズム(LV-AL)は前記内部データ記憶装置(2d)に対する外部からのアクセスを可能にするインタフェイス(4)を介して予め設定可能であり、前記設定可能な平滑化機能(Fg)は前記光分布移行制御アルゴリズム(LV-AL)によって規定され、前記設定可能な平滑化機能(Fg)の使用は、何れにせよ(jedenfalls)、以下の制御を順守して行われる:
d1)前記複数のアクティブデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3)を決定すること、但し、前記制御データ(1a)によって、各アクティブデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3)には1つのパーセント個別重み(wab1、wab2、wab3、wab4、wfern1、wfern2、wfern3)が割り当てられる、
d2)夫々の重みを考慮して、前記複数のアクティブデータセット(3a1、3a2、3a3、3b1、3b2、3b3)から導出可能な複数の光強度値(IsegmLV)を重ね合わせることにより、各セグメント(2a)の出力されるべき目標光強度(IsegmZ)を決定すること、
d3)夫々のセグメント(2a)によって放射される光強度の予め設定可能な許容最大時間変化率を考慮して、各セグメント(2a)について目標光強度(IsegmZ)を出力すること、但し、前記設定可能な平滑化機能(Fg)によって予め設定可能な許容最大時間変化率(Var_max)が超過される場合、前記目標光強度(IsegmZ、IsegmZ’)は、前記許容最大時間変化率(Var_max)が超過されないよう、一時的に操作される、
を有すること
を特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
各グループ(3a、3b)における前記パーセント個別重み(wab1、wab2、wab3、wfern1、wfern2、wfern3)の和は、値100%を超えないこと、及び、
各グループ(3a、3b)にはグループ重み値(wab_ges、wfern_ges)も割り当てられていること、グループ重み値の和は値100%を超えないこと、ステップd2)による各セグメント(2a)の前記目標光強度の決定は、前記パーセント個別重み(wab1、wab2、wab3、wab4、wfern1、wfern2)と割り当てられたグループの夫々のグループ重み値(wab_ges、wfern_ges)が乗算され、その結果として得られる重み値(wab1_res、wab2_res)が計算されることによって、実行されること、
前記複数のアクティブデータセットから導出可能な複数の光強度値(IsegmLV)と結果として得られる夫々の重み値(wab1_res、wab2_res)が乗算され、各アクティブデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)の各セグメント(2a)についてそれから生じる複数の光強度値が合算され、この和が各セグメント(2a)についての目標光強度として決定されること
を特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
すべての重み値は、結果として得られる複数の重み値(wab1_res、wab2_res)の和が値100%になるよう、選択されること
を特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の方法において、
減光ライト用データセット(3a1、3a2、3a3、3a4)についての前記第1グループ(3a)は、以下の複数の異なる減光ライト用光分布(LVa1、LVa2、LVa3、LVa4):
I)標準減光ライト用光分布として使用できる第1減光ライト用光分布(LVa1)
、
II)歩行者認識を改善するために車道の右脇において照明到達範囲の増大を可能にするために、光分布の右半分側において前記第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第2減光ライト用光分布(LVa2)、
III)前記第1減光ライト用光分布と比べて幅広にされておりかつ水平な明暗境界を有する第3減光ライト用光分布(LVa3)、
IV)第1光分布と比べて少なくとも1°の角度だけ垂直方向上方へシフトされることによって、前記第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第4減光ライト用光分布(LVa4)、
を生成するためのデータセットを含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
標準減光ライトはグレアフリー減光ライトであること
を特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
遠方ライト用データセット(3b1、3b2、3b3)についての前記第2グループ(3b)は、以下の複数の異なる遠方ライト用光分布(LVb1、LVb2、LVb3、LVb4):
I)標準遠方ライト用光分布として使用できる第1遠方ライト用光分布(LVb1)、
II)前記第1遠方ライト用光分布(LVb1)と比べて低減された光強度を有するが、更に、少なくとも最小の法定条件を満たすよう作動される第2遠方ライト用光分布(LVb2)、
III)自動車の速度が大きい場合に
、前記第1遠方ライト用光分布と比べて光強度ないし照明到達範囲を大きくする第3遠方ライト用光分布(LVb3)、
を生成するためのデータセットを含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記第3遠方ライト用光分布(LVb3)は自動車前照灯によって生成される光錐(Lichtkegel)を持ち上げることによって生成されること
を特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
前記複数のデータセットは、減光ライト用光分布にも遠方ライト用光分布にも対応しない特殊光分布(複数)に関するデータセットについての第3グループ(3c)を含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
前記目標光強度(IsegmZ)の前記許容最大時間変化率(Var_max)は、取得された制御データ(1a)に依存して予め設定された上限と下限の範囲内で変化されること、
実際の変化率(Var)は、何れにせよ、0%から100%までの目標光強度の変化が0.1秒から5秒の時間以内に実行されるよう、選択されること
を特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法において、
危機的な交通状況が認識された場合、前記許容最大時間変化率(Var_max)は正常運転の場合と比べて増大されること
を特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
前記適応型自動車前照灯(2)は、制御データ(1a)を妥当性について試験するよう構成されており、この試験を常時ないし運転中に実行すること、
エラーのある制御データ(1a)を確認した場合
、安全運転への復帰が実行されること
を特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記安全運転においては、第1減光ライト用光分布(LVa1)が放射されること
を特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
前記制御データ(1a)は自動車(1)の周囲において認識(検出)される他の交通関与者についての情報を含むこと、及び、
前記アクティブデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)が遠方ライト用データセット(3a1、3a2、3a3、3a4)を含む場合、これらの遠方ライト用光分布は、その活性化によりこの交通関与者の眩惑を引き起こすことが想定されるセグメント(2a)がより小さい強度で制御されるように
、操作されること
を特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記遠方ライト用光分布は、前記セグメント(2a)が完全に減光されるように、操作されること
を特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
エフェクトを出力するために、各セグメント(2a)についての目標光強度(IsegmZ)は、ステップd3)に従って計算された目標光強度(IsegmZ)がエフェクト光強度によって置換されるよう、ステップd3)の後一時的に操作されることが可能であること
を特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1~
3の何れかに記載の方法において、
ステップd3)による前記目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光分布が自動車(1)のステアリング角に依存して水平方向においてシフトされるよう(move_hor)、自動車(1)のステアリング角に依存して操作されること
を特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項1~
3の何れかに記載の方法における使用のために構成された適応型自動車前照灯であって、
前記適応型自動車前照灯(2)は、少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、このために、複数のセグメント(2a)に配置された複数の光源(2aa)を有し、
各セグメント(2a)は少なくとも1つのLED光源を含むこと
を特徴とする、適応型自動車前照灯。
【請求項18】
請求項
17に記載の適応型自動車前照灯(2)と、前記適応型自動車前照灯(2)に割り当てられた第1データ記憶装置(3)とを含む、自動車であって、
前記第1データ記憶装置(3)には、複数のデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)が記憶されていること、
各データセットは、各セグメント(2a)について、前記適応型自動車前照灯(2)から放射されるべき光分布(LVa1、LVa2、LVa3、LVa4、LVb1、LVb2、LVb3)の変更のための光強度値(IsegmLV)を予め設定していること、
前記複数のデータセットは、データセットについて少なくとも2つのグループ(3a、3b)、即ち、減光ライト用データセット(3a1、3a2、3a3、3a4)についての第1グループ(3a)と遠方ライト用データセット(3b1、3b2、3b3、3b4)についての第2グループ(3b)とを含むこと、
各グループ(3a、3b)は少なくとも1つのデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)を含むこと、
各減光ライト用データセット(3a1、3a2、3a3、3a4)は減光ライト用光分布を生成するよう構成され、かつ、各遠方ライト用データセット(3b1、3b2、3b3)は遠方ライト用光分布を生成するよう構成されていること、
複数の異なるデータセット(3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4)についての夫々の光分布の構成は異なっていること、
前記自動車(1)は周囲検出を行うよう及び制御データ(1a)を前記適応型自動車前照灯へ伝送するよう構成されていること
を特徴とする、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年3月16日に出願された欧州特許出願第22162541.1号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、適応型自動車前照灯の制御方法であって、前記適応型自動車前照灯には(第1)データ記憶装置が割り当てられており、前記適応型自動車前照灯は少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、そのために、複数のセグメントに配置された複数の光源を有し、各セグメントは少なくとも1つのLED光源を含む、方法に関する。
【0003】
更に、本発明は、本発明の方法の使用のために構成された自動車前照灯に関する。
【背景技術】
【0004】
適応型光分布(配光パターン)の放射を可能にする前照灯は従来技術から既知である。そのような前照灯は業界では時にピクセルモジュールとも称される。光セグメント(ピクセル;以下においては「セグメント」とも略称される)は個別に明滅及び減光可能であり、各光セグメントには1つの強度値が割り当てられる。
【0005】
複数の光セグメント(ピクセル)から構成されるそのような適応型光分布を実現する可能性は極めて多様に存在する。既知かつ効率的な方法として、マトリックスに配置された多数のLEDの使用が挙げられるが、この場合、個別LEDは、夫々、各別に明滅及び減光可能であり得、そのため、放射された光分布中に1つのピクセルないし1つの光セグメントを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE 10 2008 062640 A1
【文献】DE 10 2005 041234 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、この種のライトシステムは極めて任意の光像の形成を可能にし、例えば、基本光分布は、例えば他の交通関与者(例えば歩行者又は車両等)に対し目標を定めて減光するか又は照射するために、何時でも適応(適合化)されることができる。この場合、複数の異なるライト機能間での切換えは記憶装置から相応のデータセットを呼び出し、次いで、光放射の役割を担うライトユニットへデータを送信することによって実現されることができる。この場合、異なる自動車メーカーは、しばしば、数、種類及び異ったライト機能間での切換えについて異なる要求を有する。ライト機能ないし光分布の切替えの際、円滑な移行の達成が望まれることがしばしばある。これに関し、とりわけ、コーナリング(曲がり道(角)走行)中に光像の適応(適合化)を行うことが望まれる場合、法定の条件を満たすことも部分的に重要である。コーナリングの際、走行路(道路)の照明をより良好にするために、光像の焦点ないし中心(Schwerpunkt)はステアリング角に依存して(従って)大きく又は少なくシフトされることができる。従って、光像の跳躍的(急激)な変化は例外的状況のみに限られることが望まれる。というのは、このような変化は、不快なものとして知覚され、また、自動車運転者の注意を不所望に制限ないし誘導し得るからである。複数の異なる光分布間での切換えによる光像における跳躍的変化を回避するための従来技術から既知の方策は、境界(限界)値(複数)を考慮してすべての個別ピクセルの個別強度値を計算することによってもたらされるが、これは、とりわけピクセルの個数が多くなるほど、計算ユニットの計算量に対し大きな要求を課すことになる。
【0008】
それゆえ、本発明の課題は、上記の欠点を克服可能な適応型自動車前照灯の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、本発明の第1の視点により、適応型自動車前照灯の制御方法であって、前記適応型自動車前照灯には第1データ記憶装置が割り当てられており、前記適応型自動車前照灯は少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、そのために、複数のセグメントに配置された複数の光源を有し、各セグメントは少なくとも1つのLED光源を含む、方法によって解決される。本発明に応じ、該方法は以下のステップ:
a)前記適応型自動車前照灯及び前記第1データ記憶装置を提供し、前記第1データ記憶装置に複数のデータセットを記憶すること、但し、各データセットは各セグメントについて該適応型自動車前照灯から放射されるべき光分布を変更するための光強度値を予め設定し、該複数のデータセットはデータセットについての少なくとも2つのグループ、即ち、減光ライト用データセットについての第1グループと遠方ライト用データセットについての第2グループとを含み、各グループは少なくとも1つのデータセットを含み、各減光ライト用データセットは減光ライト用光分布を生成するよう構成され、各遠方ライト用データセットは遠方ライト用光分布を生成するよう構成されており、複数の異なるデータセットについての夫々の光分布(複数)の構成(複数)は(互いに)異なっている、
b)前記適応型自動車前照灯と自動車を結合すること、但し、前記自動車は前記適応型自動車前照灯の制御のための制御データを出力するよう構成されている、
c)前記制御データを前記自動車によって前記適応型自動車前照灯へ送信すること、但し、前記適応型自動車前照灯は内部計算ユニットを有し、前記内部計算ユニットは前記制御データを受信し、該制御データに依存して前記第1データ記憶装置に記憶された、以下においてアクティブデータセットとも称される、データセットを選択し及び呼び出す、
d)前記複数のセグメントに配された前記複数の光源を前記内部計算ユニットによって、ステップc)による複数のアクティブデータセットに従い、設定(変更)可能な(konfigurierbar)平滑化機能を用いて制御すること、但し、前記適応型自動車前照灯は内部データ記憶装置を有し、該内部データ記憶装置には、光分布移行(変更)制御アルゴリズムが記憶されており、該光分布移行制御アルゴリズムは前記内部データ記憶装置に対する外部からのアクセスを可能にするインタフェイスを介して予め設定可能であり、前記設定可能な平滑化機能は前記光分布移行制御アルゴリズムによって規定され、前記設定可能な平滑化機能の使用は、何れにせよ(jedenfalls)、以下の制御を順守して行われる:
d1)前記複数のアクティブデータセットを決定すること、但し、前記制御データによって、各アクティブデータセットには1つのパーセント個別重みが割り当てられる、
d2)夫々の重みを考慮して、前記複数のアクティブデータセットから導出可能な複数の光強度値を重ね合わせることにより、各セグメントの出力されるべき目標光強度を決定すること、
d3)夫々のセグメントによって放射される光強度の予め設定可能な許容最大時間変化率(変化速度)を考慮して、各セグメントについて目標光強度を出力すること、但し、前記設定可能な平滑化機能によって予め設定可能な許容最大時間変化率が超過される場合、前記目標光強度は、前記許容最大時間変化率が超過されないよう、一時的に操作される、
を有すること
を特徴とする(形態1)。
上記の課題は、本発明の第2の視点により、本発明の方法における使用のために構成された適応型自動車前照灯によって解決される。本発明に応じ、前記適応型自動車前照灯は、少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、このために、複数のセグメントに配置された複数の光源を有し、各セグメントは少なくとも1つのLED光源を含むことを特徴とする(形態17)。
上記の課題は、本発明の第3の視点により、本発明の適応型自動車前照灯と、前記適応型自動車前照灯に割り当てられた第1データ記憶装置とを含む、自動車によって解決される。本発明に応じ、前記第1データ記憶装置には、複数のデータセットが記憶されていること、
各データセットは、各セグメントについて、前記適応型自動車前照灯から放射されるべき光分布の変更のための光強度値を予め設定していること、
前記複数のデータセットは、データセットについて少なくとも2つのグループ、即ち、減光ライト用データセットについての第1グループと遠方ライト用データセットについての第2グループとを含むこと、
各グループは少なくとも1つのデータセットを含むこと、
各減光ライト用データセットは減光ライト用光分布を生成するよう構成され、かつ、各遠方ライト用データセットは遠方ライト用光分布を生成するよう構成されていること、
複数の異なるデータセットについての夫々の光分布の構成は異なっていること、
前記自動車は周囲検出を行うよう及び制御データを前記適応型自動車前照灯へ伝送するよう構成されていることを特徴とする(形態18)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1に記載の方法において、
各グループにおける前記パーセント個別重みの和は、値100%を超えないこと、及び、
各グループにはグループ重み値も割り当てられていること、グループ重み値の和は値100%を超えないこと、ステップd2)による各セグメントの前記目標光強度の決定は、前記パーセント個別重みと割り当てられたグループの夫々のグループ重み値が乗算され、その結果として得られる重み値が計算されることによって、実行されることが好ましく、
更に、前記複数のアクティブデータセットから導出可能な複数の光強度値と結果として得られる夫々の重み値が乗算され、各アクティブデータセットの各セグメントについてそれから生じる複数の光強度値が合算され、この和が各セグメントについての目標光強度として決定されることが好ましい。
(形態3)形態2に記載の方法において、
すべての重み値は、結果として得られる複数の重み値の和が値100%になるよう、選択されることが好ましい。
(形態4)形態1~3の何れかに記載の方法において、
減光ライト用データセットについての前記第1グループは、以下の複数の異なる減光ライト用光分布:
I)標準(基準)減光ライト用光分布として使用できる第1減光ライト用光分布、
II)歩行者認識(検出)を改善するために車道の右脇において照明到達範囲の増大を可能にするために、光分布の右半分側において前記第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第2減光ライト用光分布、
III)前記第1減光ライト用光分布と比べて幅広にされておりかつ水平な明暗境界(線)を有する第3減光ライト用光分布、
IV)第1光分布と比べて少なくとも1°の角度だけ垂直方向上方へシフトされることによって、前記第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第4減光ライト用光分布、
を生成するためのデータセットを含むことが好ましい。
(形態5)形態4に記載の方法において、
標準減光ライトはグレアフリー減光ライトであることが好ましい。
(形態6)形態1~3の何れかに記載の方法において、
遠方ライト用データセットについての前記第2グループは、以下の複数の異なる遠方ライト用光分布:
I)標準(基準)遠方ライト用光分布として使用できる第1遠方ライト用光分布、
II)前記第1遠方ライト用光分布と比べて低減された光強度を有するが、更に、少なくとも最小の法定条件を満たすよう作動される第2遠方ライト用光分布、
III)自動車の速度が大きい場合に、前記第1遠方ライト用光分布と比べて光強度ないし照明到達範囲を大きくする第3遠方ライト用光分布、
を生成するためのデータセットを含むことが好ましい。
(形態7)形態6に記載の方法において、
前記第3遠方ライト用光分布は自動車前照灯によって生成される光錐(Lichtkegel)を持ち上げることによって生成されることが好ましい。
(形態8)形態1~3の何れかに記載の方法において、
前記複数のデータセットは、減光ライト用光分布にも遠方ライト用光分布にも対応しない特殊光分布(複数)に関するデータセットについての第3グループを含むことが好ましい。
(形態9)形態1~3の何れかに記載の方法において、
前記目標光強度の前記許容最大時間変化率は、取得された制御データに依存して予め設定された上限と下限の範囲内で変化されること、
実際の変化率は、何れにせよ、0%から100%までの目標光強度の変化が0.1秒から5秒の時間以内に実行されるよう、選択されることが好ましい。
(形態10)形態9に記載の方法において、
危機的な(重大な)交通状況が認識された場合、前記許容最大時間変化率は正常運転の場合と比べて増大されることが好ましい。
(形態11)形態1~3の何れかに記載の方法において、
前記適応型自動車前照灯は、制御データを妥当性について試験するよう構成されており、この試験を常時ないし運転中に実行すること、
エラーのある制御データを確認した場合、安全運転への復帰が実行されることが好ましい。
(形態12)形態11に記載の方法において、
前記安全運転においては、第1減光ライト用光分布が放射されることが好ましい。
(形態13)形態1~3の何れかに記載の方法において、
前記制御データは自動車の周囲において認識(検出)される他の交通関与者についての情報を含むこと、及び、
前記アクティブデータセットが遠方ライト用データセットを含む場合、これらの遠方ライト用光分布は、その活性化によりこの交通関与者の眩惑を引き起こすことが想定されるセグメントがより小さい強度で制御されるように、操作されることが好ましい。
(形態14)形態13に記載の方法において、
前記遠方ライト用光分布は、前記セグメントが完全に減光されるように、操作されることが好ましい。
(形態15)形態1~3の何れかに記載の方法において、
エフェクト(特殊映像)を出力するために、各セグメントについての目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光強度がエフェクト光強度によって置換されるよう、ステップd3)の後一時的に操作されることが可能であることが好ましい。
(形態16)形態1~3の何れかに記載の方法において、
ステップd3)による前記目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光分布が自動車のステアリング角に依存して水平方向においてシフトされるよう、自動車のステアリング角に依存して操作されることが好ましい。
(形態17)上記本発明の第2の視点参照。
(形態18)上記本発明の第3の視点参照。
【0011】
セグメントの最小の個数は24であり、2行12列からなるマトリックスを含む。現在、LEDを使用するこの技術によって、200セグメントまでの解像度が経済的に製造可能であるが、原理的には、より多くの個数のセグメントの使用も考えられ得るであろう。尤も、セグメントの個数が多くなる程、個々の目標光強度を計算するための計算量も多くなる。そのため、将来GPUを使用することなく経済的に駆動可能であるセグメントの最大の個数として、例えば値400を挙げることができる。なお、これらのセグメントは複数の行及び複数の列を有するマトリックスに分散配置される。その代わりに、格別に多数のピクセルの場合、ピクセルの複数のグループは、共通に制御される複数のクラスターにグループ分けされるが、これによって、アルゴリズムの計算量は減少され得るであろう。光強度は、例えばセグメント(複数)の点灯時間(期間)ないし点灯消灯時間(期間)比のクロック制御によって調節可能である(デューティー比(Duty-Cycle)に対応)。
【0012】
第1データ記憶装置は前照灯の外部に配設可能である。その代わりに、前照灯の内部に配設することも可能である。
【0013】
制御データは自動車から前照灯へ伝送されるデータである。これは、一方では、(例えばユーザがライト機能を自ら選択する場合に)ユーザによってアクティブに(予め)設定され、(例えばカーブ(ないしコーナー)へのハンドルの切り込みないしそれによって引き起こされるステアリング角のような)ユーザ挙動に依存して生成されるデータであり得、又は、ユーザ挙動に依存せずかつ例えば自動車によってないし自動車に配設され自動車周囲を認識(検出)するよう構成された周囲検出(認識)装置によって生成されるデータでもあり得る。
【0014】
本発明は、LED光源での適用の代わりに、そのセグメント化がLEDの制御を介して行われない他の(タイプの)前照灯でも適用可能である。これに関し、例えばデジタルマイクロミラー装置(DMD)、レーザスキャナ、液晶ディスプレイ(LCD)又はその他の空間光変調器システム(SLMシステム)の技術が挙げられる。
【0015】
強度値(複数)は、記憶装置に格納されることができ、共同して、基本光分布を記述することができる。この場合、基本光分布として減光ライト、遠方ライト、悪天候ライト、市街地ライト等のような複数の異なる基本光分布がデータセット(複数)の形で記憶装置に格納されることができる。今現実に、各ピクセルがデータセットにおける専用の値として記憶装置に存在するか、又は通常のごとく、空間的に離隔(分離)した複数のピクセルの値間で補間が行われるかは、本発明にとって重要ではない。
【0016】
とりわけ、各グループにおけるパーセント個別重みの和は値100%を超えないこと、各グループにはグループ重み値も割り当てられており、グループ重み値の和は値100%を超えないこと、ステップd2)による各セグメントの目標光強度の決定は、パーセント個別重みと割り当てられたグループの夫々のグループ重み値が乗算され、その結果として得られる重みが計算されることによって、実行されることが可能であり、更に、
複数のアクティブデータセットから導出可能な複数の光強度値と結果として得られる夫々の重み値が乗算され、各アクティブデータセットの各セグメントについてそれから生じる複数の光強度値が合算され、この和が各セグメントについての目標光強度として決定されることが可能である。
【0017】
更に、すべての重み値は、結果として得られる複数の重み値の和が値100%になるよう、選択されることが可能である。その代わりに、一般的により低出力での運転、即ち合計で100%未満の結果として得られる重みによる運転が維持され得ることも考えられる。
【0018】
とりわけ、減光ライト用データセットについての第1グループは、以下の複数の異なる減光ライト用光分布:
I)標準(基準)減光ライト用光分布として使用できる第1減光ライト用光分布、但し、これは好ましくはグレアフリー減光ライトである、
II)歩行者認識(検出)を改善するために車道(走行路)の右脇において照明到達範囲の増大を可能にするために、光分布の右半分側において第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第2減光ライト用光分布、
III)第1減光ライト用光分布と比べて幅広にされておりかつ水平な明暗境界(線)を有する第3減光ライト用光分布、
IV)第1光分布と比べて少なくとも1°の角度だけ垂直方向上方へシフトされることによって、第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第4減光ライト用光分布、
を生成するためのデータセットを含むことができる。
【0019】
上記Iについていえば、眩惑(グレア)は除去されたと見なされる、ないしは減光ライトの際に各個別前照灯の前方25mの所の道路に垂直な面における前照灯中央部以上の高さでの照明強度が1ルクス(lx)以下である場合、グレアフリー減光ライトであるということができる。前照灯の照明面の最高点が道路上1200mmより高い場合、同じ条件での照明強度は高さ1000mmより高いところで1ルクスを超えてはならない。その取付高さ(Anbringungshoehe)が1400mmを超える前照灯の場合、前照灯の前方15mの所での明暗境界(線)は前照灯中央部の高さの半分のみであるべきである。非対称減光ライト用の前照灯の場合、例えば法令上の理由から他の規定がなされていない限り、1ルクス境界は前照灯中央部に対応する点から角度15°右方へ上昇することは許される。前照灯は、前照灯の前方25mの所の照明強度が入射光に対して垂直に道路(路面)から150mmの高さの所で少なくとも予定された(vorgesehen)値を達成するよう、道路を照明することができる。遠方ライト(ハイビーム)及び減光ライト(ロービーム)のためにペアで使用される前照灯は、同時にかつ一様にのみ減光できるように、構成されることができる。
【0020】
上記IIについていえば、上記項目Iによる光分布と比べてより大きな照明レンジ及び場合によりより高い光強度が提供される。即ち、歩行者をより早期に認識(検出)するために、(運転者から見て)道路(走行路)の右脇においてより大きな照明到達範囲(レンジ)を有する減光ライト用光分布を有する光分布を提供することができる。このために、例えば、個々のセグメントにより高い光強度を与えることができ、或いは、上記事項Iによる光分布においてアクティブではない(inaktiv)セグメント(複数)もアクティブ(aktiv)に切り替えることができる。
【0021】
上記IIIについていえば、例えば、明暗境界(線)は、他の交通関与者の眩惑が一層良好に阻止されるよう、とりわけ自動車の前方の領域がより幅広に照明されるよう、水平に構成されることができる。
【0022】
上記IVについていえば、そのような光分布は、例えば自動車前照灯によって生成される光錐(円錐ないしコーン状の光:Lichtkegel)を持ち上げることによって提供されることができ、これは例えば走行速度が大きくされる場合(例えば80km/h超)に実行されることができる。
【0023】
更に、遠方ライト用データセットについての第2グループは、以下の複数の異なる遠方ライト用光分布:
I)標準(基準)遠方ライト用光分布として使用できる第1遠方ライト用光分布、
II)第1遠方ライト用光分布と比べて低減された光強度を有するが、更に、少なくとも最小の法定条件を満たすよう作動される第2遠方ライト用光分布、
III)自動車の速度が大きい場合に(例えば80km/h超)、例えば自動車前照灯によって生成される光錐を持ち上げることによって、第1遠方ライト用光分布と比べて光強度ないし照明到達範囲を大きくする第3遠方ライト用光分布、
を生成するためのデータセットを含むことができる。
【0024】
上記Iについていえば、この光分布は、暗い走行条件の場合に、視野到達範囲(Sichtweite)を大きくすることを可能にする。視野到達範囲とは、暗い走行条件の場合に自動車の前照灯による相応の照明によって路面付近の物体を認識(検出)することを可能にする最大水平方向距離に関するものである。
【0025】
上記IIについていえば、第2遠方ライト用光分布はエコ(Eco)遠方ライト(ハイビーム)であり得る。
【0026】
光分布は全て、これらが適用される法定条件に対応する(を満たす)ことができるように、実用上当業者によって当然に設計される。
【0027】
とりわけ、
複数のデータセットは、減光ライト用光分布にも遠方ライト用光分布にも対応しない特殊光分布(複数)に関するデータセットについての第3グループを含むことができる。これは、例えば、減光ライト機能も遠方ライト機能も示さない特殊光分布であり得る。これらの特殊光分布は、地域(ないし国)依存的又は天候依存的にも構成可能である。
【0028】
更に、目標光強度の最大時間変化率は、取得された制御データに依存して予め設定された上限と下限の範囲内で変化されること、実際の変化率は、何れにせよ、0%から100%までの目標光強度の変化が0.1秒から5秒の時間以内に実行されるよう、選択されることが可能である。
【0029】
実用上、例えば、0%から100%への変化に対し1秒の値は好都合であることが分かった。変化は線形的に又は非線形的にも実行可能である。設定可能な平滑化機能によって予め決定可能な許容最大時間変化率(変化速度)によって、目標光強度は、許容最大時間変化率が超過されないように、一時的に(暫定的に)操作される。最大時間変化率という用語は、(1つの)セグメントの放射(された)強度の変化率として理解されるものである。(1つの)セグメントが例えばフル運転(即ち100%出力(稼働率))で200lm(ルーメン)の光束を放射する場合、許容最大変化率が正確に維持される限りにおいては、許容最大時間変化率が200lm/sの場合、0%から100%までの変化は1秒の時間を必要とするであろう。実際の変化率は、勿論、より小さいものであり得るが、とりわけより速い変化がライト機能のその都度の変更又は重みの変化によって何れにせよ必要とされない場合により小さいものであり得る。この最大変化率は、顕著により大きいものであり得、例えば0.1秒以内での0%から100%への光強度の変更を可能にすることができる。その都度適用可能な最大変化率は走行条件(ないし状況)に依存して決定されることができる。
【0030】
とりわけ、危機的な(重大な)交通状況が認識された場合、最大時間変化率は正常運転の場合と比べて増大されることが可能である。この許容最大変化率は制御データに依存することも可能である。かくして、最大許容変化率は交通上危機的な状況の際に増大されること、正常な交通状況の際には、運転者の注意を誤った方向に導かないようにするために、低下されることが可能である。平滑化は各セグメントについて個別に実行可能であり、即ち、例えば、或る(1つの)セグメントが平滑化され、他の(1つの)セグメントが、そこで最大変化率が超過されない場合は、平滑化されないことが可能である。
【0031】
更に、適応型自動車前照灯は、制御データを妥当性について試験するよう構成されており、この試験を運転中(走行中)に実行すること、エラーのある(壊れた)制御データを確認した場合、好ましくは第1減光ライト用光分布が放射される安全運転への復帰が実行されることが可能である。
【0032】
とりわけ、制御データは自動車の周囲において認識(検出)される他の交通関与者についての情報を含むこと、及び、アクティブデータセットが遠方ライト用データセットを含む場合、これらの遠方ライト用光分布は、その活性化(アクティブ化)によりこの交通関与者の眩惑を引き起こすことが想定されるセグメントがより小さい強度で制御されるように、好ましくは完全に減光(暗く)される(ausgeblendet)ように、操作されることができる。これは、自動車前照灯は他の交通関与者に対する眩惑が阻止されるよう構成されることが好ましいことを意味する。
【0033】
更に、エフェクト(特殊映像)を出力するために、各セグメントについての目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光強度がエフェクト光強度によって置換されるよう、ステップd3)の後一時的(暫定的)に操作されることができる。この一時的(暫定的)な操作は、エフェクトないしアニメーション(例えば「ウェルカムライト」)の時間(期間)を限定するが、典型的には、5秒未満である。
【0034】
とりわけ、ステップd3)による目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光分布が自動車のステアリング角に依存して水平方向においてシフトされるよう、自動車のステアリング角に依存して操作されることができる。かくして、例えば左折する場合に光分布を左方へシフトすることによって、カーブ(コーナリング)ライトを実現することができる。即ち、目標光強度は水平方向において隣り合うセグメント間で移動する。このプロセスは「ベンディング(Bending)」と称することも可能である。
【0035】
更に、本発明は、本発明の方法において使用されるよう構成された適応型自動車前照灯に関する。該適応型自動車前照灯は、少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、このために、複数のセグメントに配置された複数の光源を有し、各セグメントは少なくとも1つのLED光源を含む。
【0036】
更に、本発明は、本発明の適応型自動車前照灯と該適応型自動車前照灯に割り当てられた第1データ記憶装置を含む、自動車に関する。第1データ記憶装置には、複数のデータセットが記憶されており、各データセットは、各セグメントについて、適応型自動車前照灯から放射されるべき光分布の変更のための光強度値を予め設定し、複数のデータセットは、データセットについて少なくとも2つのグループ、即ち、減光ライト用データセットについての第1グループと遠方ライト用データセットについての第2グループとを含み、各グループは少なくとも1つのデータセットを含み、各減光ライト用データセットは減光ライト用光分布を生成するよう構成され、各遠方ライト用データセットは遠方ライト用光分布を生成するよう構成されており、複数の異なるデータセットについての夫々の光分布の構成は異なっており、自動車は周囲検出を行うよう及び制御データを適応型自動車前照灯へ伝送するよう構成されている。
【0037】
周囲検出(認識)(Umfelderfassung)という用語は、例えば光学カメラ、超音波センサ、ライダ(Lidar)、レーダ等のようなセンサによって実行可能な自動車の周囲の検出(認識)のことをいう。
【0038】
本発明は以下において図面に示されている例示的かつ非限定的な実施形態(実施例)を用いて詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の適応型自動車前照灯の一例を有する本発明の自動車の一例の模式図。
【
図4】本発明の方法の一例のフローチャートの一例。
【
図5】本発明の方法によって放射可能な光分布(複数)の例((a)~(c))。
【実施例】
【0040】
以下の図面において―別段の定めがない限り―同じ図面参照符号は同じ特徴を表す。
【0041】
図1は本発明の適応型自動車前照灯2の一例を有する本発明の自動車1の一例を模式的に示す。
【0042】
図2は本発明の適応型自動車前照灯の一例を示す。この自動車前照灯は光分布(複数)を放射するためのライトモジュール2’を含む。ライトモジュール2’は、この実施例では、2つの行(横列)と12の列(縦列)に配置された24個のLEDの形での光源(複数)2aaのマトリックスを含む。適応型自動車前照灯2には、第1データ記憶装置3が割り当てられている。従って、適応型自動車前照灯2は、少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、このために、セグメント(複数)2aに配置された光源(複数)2aaを有し、各セグメント2aは少なくとも1つのLED光源、この例では丁度1つのLED光源を含む。適応型自動車前照灯2は、制御データ1aを受信するよう構成された内部計算ユニット2cを有する。制御データ1aは、自動車1の周囲において検出される他の交通関与者(道路使用者)についての情報又は該自動車についての情報を含むことができる。制御データ1aは、同様に、ユーザないし自動車運転者によって予め与えられることないしユーザないし自動車運転者によって影響を及ぼされることが可能である。とりわけ、制御データ1aは、自動車1の周囲において検出される他の交通関与者についての情報を含むこと、及び、アクティブなデータセットが遠方ライト用データセット3b1~3b4を含む場合、これらの遠方ライト用光分布LVb1~LVb4が、当該セグメント2aの活性化によって交通関与者が眩惑されることが想定されるセグメント2aがより小さい強度で制御されるよう、有利には完全に減光される(暗くされる)よう、操作されることが可能である。これは、自動車前照灯2は、他の交通関与者の眩惑が阻止されるよう、構成されることが好ましいことを意味する。この機能は、
図4では、グレアフリーハイビームマスク(GFHB-Mask)の記号で示されているが、この機能から、重み付けされた(gewichtet)いわゆるグレアフリーハイビーム用光分布、即ち、制御データ1aを考慮してグレア(眩惑)フリーに(眩惑を引き起こさないよう)構成されている遠方ライト用光分布が生成される。更に、目標光分布を自動車1のステアリング角に依存して水平方向においてシフトする機能move_horを備えることができる。なお、完全を期すために、機能move_horも機能GFHB-Maskも任意的であり、本発明の方法はこれらの機能を使用しなくても実行可能であることについて留意すべきである。
【0043】
図2から、更に、留意すべきことは、適応型自動車前照灯2は光分布移行(変更)制御アルゴリズムLV-ALが記憶されている内部データ記憶装置2dを更に有し、光分布移行制御アルゴリズムLV-ALは内部データ記憶装置2dに対する外部からのアクセスを可能にするインタフェイス4を介して予め設定可能であり、設定(変更)可能な(konfigurierbar)平滑化(スムージング)機能Fgは光分布移行制御アルゴリズムLV-ALによって規定されることである。
【0044】
図3は本発明の個々の視点ないし要素の一例示を示す。本発明は適応型自動車前照灯2を制御するための方法に関するが、該適応型自動車前照灯2には第1データ記憶装置3が割り当てられており、該適応型自動車前照灯2は、少なくとも2×12の解像度で複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、そのために、既述のように、セグメント(複数)2aに配された光源(複数)2aaを有し、各セグメント2aは少なくとも1つのLED光源を含み、本方法は以下のステップa)~d)を有する。
【0045】
a)上記の適応型自動車前照灯2及び上記の第1データ記憶装置3を提供し、該第1データ記憶装置3に複数のデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4を記憶すること。但し、各データセットは各セグメント2aについて該適応型自動車前照灯2から放射されるべき光分布LVa1、LVa2、LVa3、LVa4、LVb1、LVb2、LVb3を変更するための光強度値IsegmLVを予め設定し、該複数のデータセットはデータセットについての少なくとも2つのグループ3a、3b、即ち、減光ライト用データセット3a1、3a2、3a3、3a4についての第1グループ3aと遠方ライト用データセット3b1、3b2、3b3、3b4についての第2グループ3bとを含み、各グループ3a、3bは少なくとも1つのデータセット3a1、3a2、3a3、3a4;3b1、3b2、3b3、3b4を含み、各減光ライト用データセット3a1、3a2、3a3、3a4は減光ライト用光分布を生成するよう構成され、各遠方ライト用データセット3b1、3b2、3b3は遠方ライト用光分布を生成するよう構成されており、複数の異なるデータセット3a1、3a2、3a3、3a4;3b1、3b2、3b3、3b4についての夫々の光分布(複数)の構成(複数)は(互いに)異なっている。
【0046】
b)適応型自動車前照灯2と自動車1を結合すること。但し、自動車1は該適応型自動車前照灯2の制御のための制御データ1aを出力するよう構成されている。
【0047】
c)制御データ1aを自動車1によって適応型自動車前照灯2へ送信すること。但し、適応型自動車前照灯2は内部計算ユニット2cを有し、該内部計算ユニット2cは制御データ1aを受信し、該制御データ1aに依存して(従って)第1データ記憶装置3に記憶された、以下においてアクティブデータセットとも称される、データセット3a1、3a2、3a3、3a4;3b1、3b2、3b3[、3b4]を選択し及び呼び出す。
【0048】
d)セグメント(複数)2aに配された光源(複数)2aaを計算ユニット2cによって、ステップc)による複数のアクティブデータセット3a1、3a2、3a3、3a4;3b1、3b2、3b3に従い、設定可能な平滑化機能Fgを用いて制御すること。但し、適応型自動車前照灯2は内部データ記憶装置2dを有し、該内部データ記憶装置2dには、光分布移行制御アルゴリズムLV-ALが記憶されており、該光分布移行制御アルゴリズムLV-ALは内部データ記憶装置2dに対する外部からのアクセスを可能にするインタフェイス4を介して予め設定可能であり、設定可能な平滑化機能Fgは光分布移行制御アルゴリズムLV-ALによって規定され、設定可能な平滑化機能Fgの使用は、何れにせよ(必ず:jedenfalls)、以下の制御を順守して行われる(
図4参照)。
【0049】
d1)複数のアクティブデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3を決定(確認)すること。但し、制御データ1aによって、各アクティブデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3には(1つの)パーセント個別重みwab1、wab2、wab3、wab4、wfern1、wfern2、wfern3が割り当てられる(与えられる)。
【0050】
d2)夫々の重みを考慮して、複数のアクティブデータセット3a1、3a2、3a3、3b1、3b2、3b3から導出可能な複数の光強度値IsegmLVを重ね合わせることにより、各セグメント2aの出力されるべき目標光強度IsegmZを決定すること。
【0051】
d3)夫々のセグメント2aによって放射される光強度の予め設定可能な許容最大時間変化率を考慮して、各セグメント2aについて目標光強度IsegmZを出力すること。但し、設定可能な平滑化機能Fgによって予め設定可能な許容最大時間変化率Var_maxが超過される場合、目標光強度IsegmZは、許容最大時間変化率Var_maxが超過されないよう、一時的に操作される。従って、必要に応じ、目標光強度IsegmZから、本来的な目標光強度IsegmZより一時的により低い操作された目標光強度IsegmZ’が、それも、許容最大時間変化率Var_maxが直ちに超過されないような程度(範囲ないし大きさ)で、しかも、操作されていない目標光強度IsegmZが達成されるまでの期間について、生成される。
【0052】
原理的には、非アクティブデータセットも計算ユニット2cによって取得されるが、アクティブデータセット、即ち、その重みが0に等しくないデータセットのみが取得される場合、データ削減のために好都合であり得る。
【0053】
有利には、各グループ3a、3bにおけるパーセント個別重みwab1、wab2、wab3、wfern1、wfern2、wfern3の和が値100%を超えないことが可能であるが、この場合、各グループ3a、3bには(1つの)グループ重み値wab_ges、wfern_gesも割り当てられており、グループ重み値の和は値100%を超えず、ステップd2)による各セグメント2aの目標光強度の決定は、パーセント個別重みwab1、wab2、wab3、wab4、wfern1、wfern2と割り当てられたグループの夫々のグループ重み値wab_ges、wfern_gesが乗算され、その結果として得られる重み値wab1_res、wab2_resが計算されることによって、実行され、アクティブデータセット(複数)から導出可能な光強度値IsegmLVと結果として得られる夫々の重み値wab1_res、wab2_resが乗算され、各アクティブデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4の各セグメント2aについてそれから生じる光強度値(複数)が合算され、この和が各セグメント2aについての目標光強度として決定される。
【0054】
本発明の一実施形態についての簡単な一例を以下に与える:グループ減光ライト用光分布は60%の大きさの重み、即ちwab_ges=0.6を有し、グループ遠方ライト用光分布は40%の大きさの重み、即ちwfern_ges=0.4を有するものとする。そして、例えば減光ライト用光分布が同じ重みが付けられた(即ちwab1=0.5かつwab2=0.5)2つのアクティブ光分布を含むとすると、重みwab_gesとの乗算によって夫々の減光ライト用光分布wab1_res及びwab2_resの結果として得られる強度が得られる、即ち、夫々0.5×0.6=0.3=wab1_res=wab2_res 全体重みとなるであろう。遠方ライト用光分布の重みの場合、同様に、結果として得られる全体重みが値1を超えないように、行われる。このようにして、個々の光分布(複数)はエレガントかつ僅かな計算量で重ね合わせられることができる。重ね合わせ及びあるライト機能から次のライト機能への移行の程度(Ausmass)は、平滑化機能Fgの決定によって、個々の自動車メーカーの要望に簡単に適合化されることができ、その際、自動車前照灯のライト機能(複数)について本質的な変更が加えられる必要はない。
【0055】
とりわけ、全重み値(複数)は、結果として得られる重み値wab1_res、wab2_resの和が値100%に達するよう、選択されることができる。その代わりに、一般的により弱い(低い)運転、即ち100%未満の運転が維持可能であることも考えられる。
【0056】
減光ライト用データセット3a1、3a2、3a3、3a4についての第1グループ3aが以下の複数の異なる減光ライト用光分布LVa1、LVa2、LVa3、LVa4を生成するためのデータセットを含むことも可能である:
I 標準減光ライト用光分布として使用できる第1減光ライト用光分布LVa1。これは好ましくはグレアフリー減光ライト(ロービーム)である;
II 歩行者認識(検出)を改善するために車道(走行路)の右脇について照明到達範囲(Reichweite)の増大を可能にするために、光分布の右半分側において第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第2減光ライト用光分布LVa2。
III 第1減光ライト用光分布と比べて幅広にされておりかつ水平な明暗境界(HDライン)を有する第3減光ライト用光分布LVa3。
IV (当該第4減光ライト用光分布が)第1光分布と比べて少なくとも1°の角度だけ垂直方向上方へシフトされることによって、第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第4減光ライト用光分布LVa4。
【0057】
更に、遠方ライト用データセット3b1、3b2、3b3についての第2グループ3bが以下の複数の異なる遠方ライト用光分布LVb1、LVb2、LVb3、LVb4を生成するためのデータセットを含むことも可能である:
I 標準遠方ライト用光分布として使用できる第1遠方ライト用光分布LVb1。
II 第1遠方ライト用光分布LVb1と比べて低減された光強度を有するが、更に、少なくとも最小の法定条件を満たすよう作動される第2遠方ライト用光分布LVb2。
III 自動車の速度が大きい場合に、例えば自動車前照灯によって生成される光錐(Lichtkegel)を持ち上げることによって、第1遠方ライト用光分布と比べて光強度ないし照明到達範囲を大きくする第3遠方ライト用光分布LVb3。
【0058】
光分布はすべて、実用上、これらが使用可能な法定条件に対応可能であるよう、当業者に行って設定されることは勿論である。
【0059】
図3を参照すると、上記の複数のデータセットは、減光ライト用光分布にも遠方ライト用光分布にも対応しない特殊光分布(複数)に関するデータセットについての第3グループ3cを含むことが説明されている。
【0060】
更に、目標光強度IsegmZの最大時間変化率Var_maxが取得された制御データ1aに依存して(従って)予め設定された上限と下限の範囲内で変化されること、この場合、実際の変化率Varは、何れにせよ(jedenfalls:該変化の(上下限内での)大きさに拘わらず)、0%から100%までの目標光強度の変化が0.1秒から5秒の時間(期間)以内に実行されるよう、選択されることが可能である。その際、とりわけ、危機的な(重大な)交通状況が認識(検出)された場合、許容最大時間変化率Var_maxが正常運転の場合と比べて増大されることも可能である。許容最大変化率Var_maxは、例えば制御データの考慮によっても変更可能であり得る。交通上危機的な一状況においては、許容最大変化率が極めて大きいように選択される場合、好都合であり得る。これは、例えば対向車による眩惑、道路脇における野生動物の認識/教示(注意)、歩行者の認識等であり得る。
【0061】
更に、自動車前照灯2は、制御データ1aを妥当性について試験するよう構成されており、この試験を運転中に実行すること、その際、エラーのある制御データを確認した場合、好ましくは第1減光ライト用光分布LVa1が放射される安全運転への復帰が実行されることも可能である。
【0062】
とりわけ、制御データ1aは自動車1の周囲において認識(検出)される他の交通関与者についての情報を含むこと、及び、アクティブデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4が遠方ライト用データセット3a1、3a2、3a3、3a4を含む場合、これらの遠方ライト用光分布は、その活性化によりこの交通関与者の眩惑を引き起こすことが想定されるセグメント(複数)2aがより小さい強度で制御されるように、好ましくは完全に減光される(ないし暗くされる)ように、操作されることが可能である。
【0063】
更に、エフェクト(特殊映像)を出力する(生成する)ために、各セグメント2aについての目標光強度IsegmZは、ステップd3に従って計算された目標光強度IsegmZがエフェクト光強度によって置換されるよう、ステップd3の後一時的に操作されることが可能であり得る。この一時的操作は、エフェクト/アニメーションの時間(期間)を限定するが、典型的には、例えばウェルカムライトの場合、5秒未満である。
【0064】
更に、ステップd3による目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光分布が自動車1のステアリング角に依存して水平方向においてシフトされるよう、自動車1のステアリング角に依存して操作されることが可能である。この機能は
図4にはmove_horで示されている。かくして、例えば左折する場合に光分布が左方へシフトされることによって、カーブ(コーナリング)用ライトを実現することができる。即ち、目標光強度は水平方向において隣り合うセグメント間で移動する。このプロセスは「ベンディング(Bending)」と称することも可能である。
【0065】
更なる一視点において、本発明は、方法の請求項の何れかに記載された方法における使用のために構成された適応型自動車前照灯2に関するが、該適応型自動車前照灯2は、少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、このために、セグメント(複数)2aに配置された光源(複数)2aaを有し、各セグメント2aは少なくとも1つのLED光源を含む。
【0066】
更に、本発明は、本発明の適応型自動車前照灯2と該適応型自動車前照灯2に割り当てられた第1データ記憶装置3を含む自動車1に関し、第1データ記憶装置3には複数のデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4が記憶されており、各データセットは各セグメント2aについて該適応型自動車前照灯2から放射されるべき光分布LVa1、LVa2、LVa3、LVa4、LVb1、LVb2、LVb3[、LVb4]を変更するための光強度値IsegmLVを予め設定しており、該複数のデータセットはデータセットについて少なくとも2つのグループ3a、3b、即ち、減光ライト用データセット3a1、3a2、3a3、3a4についての第1グループ3aと遠方ライト用データセット3b1、3b2、3b3、3b4についての第2グループ3bとを含み、各グループ3a、3bは少なくとも1つのデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4を含み、各減光ライト用データセット3a1、3a2、3a3、3a4は減光ライト用光分布を生成するよう構成され、各遠方ライト用データセット3b1、3b2、3b3[、3b4]は遠方ライト用光分布を生成するよう構成されており、複数の異なるデータセット3a1、3a2、3a3、3a4、3b1、3b2、3b3、3b4についての夫々の光分布(複数)の構成(複数)は(互いに)異なっており、自動車1は周囲検出をするよう及び制御データ1aを自動車前照灯へ伝送するよう構成されている。
【0067】
図5(a)~
図5(c)は、本発明の方法によって放射されることができる光分布(複数)の例を模式的に示す。ここで、各平面図には、平らな水平面上へ、典型的には道路上へ投影された夫々1つの光分布が示されている。詳細には、例えば、
図5(a)は、他の光分布が重ねられていない光分布LVa1を示す。重みwab1_resは、従って、この例では100%であり得るであろう。
図5(c)は、例えば100%の大きさのwfern1_resの重みを有する光分布LVb1の一例を示す。
図5(b)は光分布LVa1とLVb1の重ね合わせを示し、重みwfern1_res及びwab1_resは夫々50%であり得る。
【0068】
本発明は図示の実施形態(実施例)に限定されず、(特許)請求の範囲の全保護範囲によって規定される。更に、本発明ないし実施形態(複数)の個々の側面は個別に考えることも互いに組み合わせることも可能である。(特許)請求の範囲における任意的な図面参照符号は例示的なものであり、(特許)請求の範囲を限定することなく、(特許)請求の範囲をより読み易くするためにのみ役立つ。
【0069】
本発明は以下の付記のように与えることができる。
[付記1]適応型自動車前照灯の制御方法。
前記適応型自動車前照灯には第1データ記憶装置が割り当てられている。
前記適応型自動車前照灯は少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、そのために、複数のセグメントに配置された複数の光源を有する。
各セグメントは少なくとも1つのLED光源を含む。
前記方法は、以下のステップ:
a)前記適応型自動車前照灯及び前記第1データ記憶装置を提供し、前記第1データ記憶装置に複数のデータセットを記憶すること、但し、各データセットは各セグメントについて該適応型自動車前照灯から放射されるべき光分布を変更するための光強度値を予め設定し、該複数のデータセットはデータセットについての少なくとも2つのグループ、即ち、減光ライト用データセットについての第1グループと遠方ライト用データセットについての第2グループとを含み、各グループは少なくとも1つのデータセットを含み、各減光ライト用データセットは減光ライト用光分布を生成するよう構成され、各遠方ライト用データセットは遠方ライト用光分布を生成するよう構成されており、複数の異なるデータセットについての夫々の光分布(複数)の構成(複数)は(互いに)異なっている、
b)前記適応型自動車前照灯と前記自動車を結合すること、但し、前記自動車は前記適応型自動車前照灯の制御のための制御データを出力するよう構成されている、
c)前記制御データを前記自動車によって前記適応型自動車前照灯へ送信すること、但し、前記適応型自動車前照灯は内部計算ユニットを有し、前記内部計算ユニットは前記制御データを受信し、該制御データに依存して前記第1データ記憶装置に記憶された、以下においてアクティブデータセットとも称される、データセットを選択し及び呼び出す、
d)前記複数のセグメントに配された前記複数の光源を前記内部計算ユニットによって、ステップc)による複数のアクティブデータセットに従い、設定(変更)可能な平滑化機能を用いて制御すること、但し、前記適応型自動車前照灯は内部データ記憶装置を有し、該内部データ記憶装置には、光分布移行(変更)制御アルゴリズムが記憶されており、該光分布移行制御アルゴリズムは前記内部データ記憶装置に対する外部からのアクセスを可能にするインタフェイスを介して予め設定可能であり、前記設定可能な平滑化機能は前記光分布移行制御アルゴリズムによって規定され、前記設定可能な平滑化機能の使用は、何れにせよ(jedenfalls)、以下の制御を順守して行われる:
d1)前記複数のアクティブデータセットを決定すること、但し、前記制御データによって、各アクティブデータセットには1つのパーセント個別重みが割り当てられる、
d2)夫々の重みを考慮して、前記複数のアクティブデータセットから導出可能な複数の光強度値を重ね合わせることにより、各セグメントの出力されるべき目標光強度を決定すること、
d3)夫々のセグメントによって放射される光強度の予め設定可能な許容最大時間変化率を考慮して、各セグメントについて目標光強度を出力すること、但し、前記設定可能な平滑化機能によって予め設定可能な許容最大時間変化率が超過される場合、前記目標光強度は、前記許容最大時間変化率が超過されないよう、一時的に操作される、
を有する。
[付記2]上記の、とりわけ付記1に記載の方法において、
各グループにおける前記パーセント個別重みの和は、値100%を超えない。及び、
各グループにはグループ重み値も割り当てられている;グループ重み値の和は値100%を超えない;ステップd2)による各セグメントの前記目標光強度の決定は、前記パーセント個別重みと割り当てられたグループの夫々のグループ重み値が乗算され、その結果として得られる重み値が計算されることによって、実行される。
前記複数のアクティブデータセットから導出可能な複数の光強度値と結果として得られる夫々の重み値が乗算され、各アクティブデータセットの各セグメントについてそれから生じる複数の光強度値が合算され、この和が各セグメントについての目標光強度として決定される。
[付記3]上記の、とりわけ付記2に記載の方法において、
すべての重み値は、結果として得られる複数の重み値の和が値100%になるよう、選択される。
[付記4]上記の、とりわけ付記1~3の何れかに記載の方法において、
減光ライト用データセットについての前記第1グループは、以下の複数の異なる減光ライト用光分布:
I)標準減光ライト用光分布として使用できる第1減光ライト用光分布、但し、これは好ましくはグレアフリー減光ライトである、
II)歩行者認識を改善するために車道の右脇において照明到達範囲の増大を可能にするために、光分布の右半分側において前記第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第2減光ライト用光分布、
III)前記第1減光ライト用光分布と比べて幅広にされておりかつ水平な明暗境界を有する第3減光ライト用光分布、
IV)第1光分布と比べて少なくとも1°の角度だけ垂直方向上方へシフトされることによって、前記第1減光ライト用光分布と比べて増大された照明到達範囲を有する第4減光ライト用光分布、
を生成するためのデータセットを含む。
[付記5]上記の、とりわけ付記1~4の何れかに記載の方法において、
遠方ライト用データセットについての前記第2グループは、以下の複数の異なる遠方ライト用光分布:
I)標準遠方ライト用光分布として使用できる第1遠方ライト用光分布、
II)前記第1遠方ライト用光分布と比べて低減された光強度を有するが、更に、少なくとも最小の法定条件を満たすよう作動される第2遠方ライト用光分布、
III)自動車の速度が大きい場合に、例えば自動車前照灯によって生成される光錐(Lichtkegel)を持ち上げることによって、前記第1遠方ライト用光分布と比べて光強度ないし照明到達範囲を大きくする第3遠方ライト用光分布、
を生成するためのデータセットを含む。
[付記6]上記の、とりわけ付記1~5の何れかに記載の方法において、
前記複数のデータセットは、減光ライト用光分布にも遠方ライト用光分布にも対応しない特殊光分布(複数)に関するデータセットについての第3グループを含む。
[付記7]上記の、とりわけ付記1~6の何れかに記載の方法において、
前記目標光強度の前記許容最大時間変化率、取得された制御データに依存して予め設定された上限と下限の範囲内で変化される;
実際の変化率は、何れにせよ、0%から100%までの目標光強度の変化が0.1秒から5秒の時間以内に実行されるよう、選択される。
[付記8]上記の、とりわけ付記7に記載の方法において、
危機的な交通状況が認識された場合、前記許容最大時間変化率は正常運転の場合と比べて増大される。
[付記9]上記の、とりわけ付記1~8の何れかに記載の方法において、
前記適応型自動車前照灯は、制御データを妥当性について試験するよう構成されており、この試験を常時ないし運転中に実行する;
エラーのある制御データを確認した場合、好ましくは前記第1減光ライト用光分布が放射される安全運転への復帰が実行される。
[付記10]上記の、とりわけ付記1~9の何れかに記載の方法において、
前記制御データは自動車の周囲において認識(検出)される他の交通関与者についての情報を含む;及び、
前記アクティブデータセットが遠方ライト用データセットを含む場合、これらの遠方ライト用光分布は、その活性化によりこの交通関与者の眩惑を引き起こすことが想定されるセグメントがより小さい強度で制御されるように、好ましくは完全に減光されるように、操作される。
[付記11]上記の、とりわけ付記1~10の何れかに記載の方法において、
エフェクトを出力するために、各セグメントについての目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光強度がエフェクト光強度によって置換されるよう、ステップd3)の後一時的に操作されることが可能である。
[付記12]上記の、とりわけ付記1~11の何れかに記載の方法において、
ステップd3)による前記目標光強度は、ステップd3)に従って計算された目標光分布が自動車のステアリング角に依存して水平方向においてシフトされるよう、自動車のステアリング角に依存して操作される。
[付記13]上記の、とりわけ付記1~12の何れかに記載の方法における使用のために構成された適応型自動車前照灯。
前記適応型自動車前照灯は、少なくとも2×12の解像度を有する複数の異なるセグメント化光分布を放射するよう構成されており、このために、複数のセグメントに配置された複数の光源を有する;
各セグメントは少なくとも1つのLED光源を含む。
[付記14]上記の、とりわけ付記13に記載の適応型自動車前照灯と、前記適応型自動車前照灯に割り当てられた第1データ記憶装置とを含む、自動車。
前記第1データ記憶装置には、複数のデータセットが記憶されている;
各データセットは、各セグメントについて、前記適応型自動車前照灯から放射されるべき光分布の変更のための光強度値を予め設定している;
前記複数のデータセットは、データセットについて少なくとも2つのグループ、即ち、減光ライト用データセットについての第1グループと遠方ライト用データセットについての第2グループ(3b)とを含む;
各グループは少なくとも1つのデータセットを含む;
各減光ライト用データセットは減光ライト用光分布を生成するよう構成され、かつ、各遠方ライト用データセットは遠方ライト用光分布を生成するよう構成されている;
複数の異なるデータセットについての夫々の光分布の構成は異なっている;
前記自動車は周囲検出を行うよう及び制御データを前記適応型自動車前照灯へ伝送するよう構成されている。
【0070】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0071】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0072】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【符号の説明】
【0073】
1 自動車
2 自動車前照灯
2’ ライトモジュール
2a セグメント
2aa 光源
2c 計算ユニット
2d 内部データ記憶装置
3 データ記憶装置
3a-3b データセットグループ
3a1-3a4 減光ライト用データセット
3b1-3b4 遠方ライト用データセット
Fg 平滑化(スムージング)機能
IsegmLV 光強度値
IsegmZ 目標光強度
LV-AL 光分布移行制御アルゴリズム
LVa1-LVa4 減光ライト用光分布
LVb1-LVb4 遠方ライト用光分布