(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20240408BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B3/00 M
B66B1/06 G
(21)【出願番号】P 2023127687
(22)【出願日】2023-08-04
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 良祐
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173381(JP,A)
【文献】特開2012-184050(JP,A)
【文献】特開2010-208726(JP,A)
【文献】特開2019-156504(JP,A)
【文献】特開2019-156577(JP,A)
【文献】特開2013-113824(JP,A)
【文献】特開2021-084779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0133851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00 - 3/02
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降移動するかごと、
前記かご内に設けられて、前記かご内の乗員に対して情報を提供する情報提供部と、
前記かごの床面の一部に設けられ、特定車両を利用する特定利用者が優先的に使用可能な領域であることを示す優先領域と、
前記かご内に設置されて、前記かご内の利用者の有無及び前記利用者が前記特定利用者か非特定利用者かを判定するための乗車情報を収集するかご内情報収集部と、
各階床の乗場に設置されて、前記乗場で乗車待ちをするための乗場待機領域における前記特定利用者の有無を判定するための乗車待ち情報を収集する乗場情報収集部と、
前記かごが前記乗場に到着して前記かごの開閉扉を戸開状態にした際に、前記乗場の前記乗場待機領域に前記特定利用者が存在する場合で、前記かご内の前記優先領域内に前記非特定利用者が存在する場合に、前記情報提供部を介して前記優先領域の外に移動するように通知すると共に、前記特定利用者が前記乗場の前記乗場待機領域の外へ移動したことを検出するまで、または一定期間経過するまで、前記かごを停止したまま前記戸開状態を継続する優先運転モード制御を実行する制御部と、
を備え得る、エレベータシステム。
【請求項2】
前記優先領域は、前記かご内に複数設定され、
前記制御部は、前記かごが前記特定利用者の存在する前記乗場に停止した場合に、前記特定利用者の人数に応じて空き状態の前記優先領域の数を確保するように、前記優先領域に存在し得る前記非特定利用者に前記優先領域の外へ移動することを促す通知を実行する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記かご内の上部位置に前記優先領域を照射する照明部を備え、
前記制御部は、前記かごが前記特定利用者の存在する前記乗場に停止した場合に前記優先領域に前記非特定利用者が存在する場合、前記照明部の照明態様を変化させて、前記非特定利用者に前記優先領域の外へ移動することを促す、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記乗場には戸閉ボタンが設けられ、
前記制御部は、前記かごが前記特定利用者の存在する乗場に停止した場合で、前記かご内の前記優先領域に前記非特定利用者が存在することが検出されている場合でも、前記戸閉ボタンが操作されたことを示す戸閉要求情報を取得した場合、前記特定利用者が前記乗場待機領域の外に移動していない場合でも、前記開閉扉を戸閉して前記かごの昇降移動を可能な状態に移行させるキャンセル処理を実行する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記かご内情報収集部は、前記乗車情報の一つとして、前記利用者の身体情報を収集可能とし、
前記制御部は、前記優先領域に存在する前記非特定利用者が、所定の前記身体情報を有することを検出した場合、前記乗場で前記特定利用者が前記かごを待つ場合でも、前記優先運転モード制御を非実行とする、請求項1に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータには、車椅子利用者等のように一般利用者より広い利用スペースを必要とする特定利用者が安全かつスムーズにエレベータのかごを利用できるように、戸開期間を延長する等の専用のかご呼びボタンを備える機種がある。また、特定利用者が乗車する階床の手前までに、車椅子等の利用スペースを事前に確保するようにして、特定利用者の乗車を可能にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6529603号公報
【文献】特開2015-51853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術の場合、車椅子等の特定車両の利用スペースが確保できない場合、状況によっては、かごが特定利用者の呼び出し階床を止まらずに一度通過して、戻ってくるまで待機する必要がある場合があった。そのため、特定利用者にスムーズなサービスが提供できなかったり、特定利用者の呼び出し階床以外で利用スペースの確保動作を行うため、特定利用者以外の一般利用者に違和感や不便感を与えてしまったりする等の不具合が生じる場合があった。したがって、特定利用者のための利用スペースの確保をスムーズにできると共に、一般利用者に違和感や不便感を与え難くして、それぞれの利用者の利用効率を向上することができるエレベータシステムが提供できれば、有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエレベータシステムは、かごと、情報提供部と、優先領域と、かご内情報収集部と、乗場情報収集部と、制御部と、を備える。かごは、昇降路内を昇降移動する。情報提供部は、前記かご内に設けられて、前記かご内の乗員に対して情報を提供する。優先領域は、前記かごの床面の一部に設けられ、特定車両を利用する特定利用者が優先的に使用可能な領域であることを示す。かご内情報収集部とは、前記かご内に設置されて、前記かご内の利用者の有無及び前記利用者が前記特定利用者か非特定利用者かを判定するための乗車情報を収集する。乗場情報収集部は、各階床の乗場に設置されて、前記乗場で乗車待ちをするための乗場待機領域における前記特定利用者の有無を判定するための乗車待ち情報を収集する。制御部は、前記かごが前記乗場に到着して前記かごの開閉扉を戸開状態にした際に、前記乗場の前記乗場待機領域に前記特定利用者が存在する場合で、前記かご内の前記優先領域内に前記非特定利用者が存在する場合に、前記情報提供部を介して前記優先領域の外に移動するように通知すると共に、前記特定利用者が前記乗場の前記乗場待機領域の外へ移動したことを検出するまで、または一定期間経過するまで、前記かごを停止したまま前記戸開状態を継続する優先運転モード制御を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態のエレベータシステムを適用可能なエレベータの全体構成を示す例示的かつ模式的な構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態のエレベータシステムのかごが階床に到着した際に、開閉扉を戸開状態にした場合を示す例示的かつ模式的な構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態のエレベータシステムのかごの内部を天井側から見た場合を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のエレベータシステムの機能を説明する例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態のエレベータシステムの動作の流れを説明する例示的なフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態のエレベータシステムの他のかごの内部を天井側から見た場合を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態に係るエレベータシステムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態のエレベータシステム100を適用可能なエレベータ10の全体構成を示す模式図である。エレベータ10は、建物(ビルやマンション等)に設置される昇降路12をかご14が昇降し、各階床16に設けられた乗場18の間を移動する。このエレベータ10は、かご14と、カウンターウェイト20とをメインロープ22で連結した、いわゆるつるべ式のエレベータとして構成されている。
【0009】
昇降路12は、エレベータ10を備える建物の鉛直方向に沿って設けられており、鉛直方向が昇降方向になるように建物内の複数の階床16に渡って設けられている。また、昇降路12の昇降方向上側には、かご14を昇降移動させる巻上機24(モータ26、メインシーブ28等を含む)やそらせシーブ30等を設置する機械室32が設けられている。また、昇降路12には、かご14が昇降する際のガイドとなる昇降方向に延びるガイドレール(図示省略)が設置されている。
【0010】
昇降路12の各階床16の乗場18に対応する位置には、例えば長方形の乗場開口部12mが設けられ、かご14が各階床16の乗場18に移動して停止する場合、かご14のかご扉34(開閉扉ともいう)が乗場開口部12mの位置と一致する。各乗場18には、乗場開口部12mを塞ぐように、開閉自在な乗場扉36が設けられている。乗場扉36は、通常は閉鎖状態になっており、ロック機構(図示省略)により、開状態への動作が規制されている。これにより、乗場扉36は、通常時は乗場18側と昇降路12側との間を遮っている。乗場扉36は、かご14が目的階に到着して、かご扉34が閉状態から開状態に動作するのに連動して、ロック機構によるロックを解除すると共に、閉状態から開状態となる。
【0011】
また、各乗場18には、制御盤42と無線や有線のネットワークを介して接続された乗場操作盤38が設けられている。この乗場操作盤38は、利用者がかご14を、当該利用者がいる乗場18に呼ぶ際に操作する入力装置である。同様に、かご14には、かご内操作盤40が設けられている。かご内操作盤40は、かご14に乗り込んだ利用者が、行先階を指定したり、かご扉34を開閉したりする際に用いる入力装置である。
【0012】
かご14は、利用者や荷物を乗せることが可能な例えば箱形状であり、かご14の内部と乗場18との間で、利用者や荷物の出入りを可能にするかご開口部14mが形成されている。そして、かご開口部14mを塞ぐように開閉自在なかご扉34が設けられている。
【0013】
カウンターウェイト20は、メインロープ22を介してかご14に連結された釣り合いおもりであり、昇降路12内でかご14と連動して昇降する。カウンターウェイト20は、ウェイト用ガイドレール(図示省略)に沿って昇降する。このカウンターウェイト20は、かご14が所定積載量(例えば、最大積載量に対して1/2程度)の場合に、機械室32に配設される巻上機24を挟んで、かご14と釣り合うように重量が設定されている。メインロープ22は、昇降路12の上部に設けられた巻上機24のメインシーブ28やそらせシーブ30等に掛けられて、一端にかご14が接続され、他端にカウンターウェイト20が接続されることにより、双方を連結している。
【0014】
巻上機24は、例えばモータ26と、モータ26に連結されたメインシーブ28を有し、モータ26で発生する動力でメインロープ22を巻き上げる。巻上機24は、機械室32内に配置された制御盤42により駆動制御が可能になっている。
【0015】
制御盤42(制御部ともいう)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された参照データ、エレベータ10の仕様等の情報を記憶するバックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路等を備える。制御盤42は、種々のセンサ、検出器やエレベータ10の各部と電気的に接続され、各部の動作を統括的に制御する。なお、エレベータ10の仕様によっては、機械室32がない場合もある。この場合、制御盤42は、昇降路12の壁面や三方枠等に設置されることがある。制御盤42(制御部)の詳細は後述する。
【0016】
図2は、実施形態のエレベータシステム100(エレベータ10)のかご14が階床16の乗場18に到着した際に、開閉扉を戸開状態にした場合を示す例示的かつ模式的な構成図である。エレベータシステム100は、車椅子やベビーカー等のような特定車両がかご14に乗車する際に広いスペースを必要とする利用者(以下、特定利用者という)が、スムーズに乗車できるように配慮された運転モードを備える。以下、エレベータシステム100の詳細を説明する。
【0017】
箱形状のかご14は、かご側壁14a,14b,14e、かご床14c、かご天井14dを備える。かご側壁14a,14bには、かご14に乗車した乗員(利用者)に対して、エレベータ10を利用するにあたり有用な情報を提供するかご内情報提供部44を備える。かご内情報提供部44は、例えば、メッセージ画像等を表示する表示装置44aおよびメッセージ画像に対応した音声メッセージ等を出力するスピーカ44b等が配置されている。
図2の場合、スピーカ44bは、かご側壁14aのみに配置されている例が示されている。なお、表示装置44aやスピーカ44bは、エレベータ10の運行に関係のない情報、例えば広告やニュース等を出力するようにしてもよい。また、かご内情報提供部44は、かご14内で、乗員が情報を認識できる位置であれば設置位置は限定されない。
【0018】
かご床14cの一部(例えば、かご14の左右方向の略中央部で、かご扉に近い側)には、車椅子やベビーカー等の特定車両を利用する特定利用者が優先的に使用可能(乗車可能)な優先領域46が設けられている。優先領域46は、かご床14cにピクトグラムや色分け等のペイントで表示されているものでもよいし、LED(Light Emitting Diode)等の発光装置によって表示されるものでもよい。また、優先領域46は、後述する照明部50によって、投影される領域であってもよい。その結果、優先領域46を視覚的に明示して、かご14の利用者に当該優先領域46の存在を認識し易くしている。
【0019】
図3は、かご14の内部を天井側から見た場合を示す例示的かつ模式的な平面図である。
図3に示されるように、かご床14cには、優先領域46が設けられ、例えば、特定利用者が優先的に利用できる領域であることが表示されている。優先領域46には、一例として、「優先」の文字と共に、車椅子利用者を示すマークやベビーカー利用者を示すマークが示されている。また、上述したように、かご側壁14a,14bには、かご内情報提供部44である表示装置44aが設置されている。また、かご扉34の片側の側方には、かご内操作盤40が配置されている。なお、
図3は、左右に開閉可能なかご扉34および当該かご扉34の開閉動作に連動して開閉する乗場扉36が、戸閉状態になっている状態で示されている。
【0020】
また、かご14の上方領域、例えばかご天井14dの一部に、かご14内の利用者の有無及び利用者が前述した特定利用者か非特定利用者(一般利用者)かを判定するための乗車情報を収集するかご内情報収集部48が配置されている。かご内情報収集部48は、例えば、かご14内の全域を撮像可能な撮像装置(可視カメラ、赤外線カメラ等)が利用可能である。また、かご内情報収集部48は、乗車情報として、利用者の身体情報を収集可能としてもよい。利用者の身体情報とは、例えば、利用者の身長情報を含んでもよい。身体情報を取得することにより、利用者が大人であるか、子どもであるか等の判定に用いることができる。また、身体情報として、利用者の外形情報を取得し、利用者が、例えば松葉杖を利用しているか否かや、大きな荷物を持っているか否か等の判定に用いることができる。後述するが、身体情報は、特定利用者が優先領域46を利用するために、優先領域46の存在する(立っている)利用者に対して、優先領域46外への移動を依頼したり降車を依頼したりする対象になり得るか否かの判定に利用することができる。なお、かご14内の利用者の存在や利用者の識別が可能であれば、他のセンサも利用可能である。かご内情報収集部48は、例えば、超音波等を用いたセンサやレーダ等でもよい。
【0021】
また、かご14の上部位置、例えば、かご天井14dには、優先領域46を照射する照明部50が配置されている。照明部50は、例えば、かご14が特定利用者の存在する乗場18に停止した場合で、優先領域46に非特定利用者(優先領域46外に移動を依頼する利用者)が存在する場合に、照明態様を変化させて、非特定利用者に注意喚起する。例えば、優先領域46の領域色を変化させたり、優先領域46の境界線等を点滅させたりすることにより、非特定利用者に優先領域46の外へ移動することをより明確に認識させることを促すようにする。
【0022】
また、かご14のかご側壁14eには、鏡52は配置されている。鏡52は、例えば、かご14に乗車していた車椅子利用者がバックで降車する際に、周囲の状況を把握しやすくするために設置されている。
【0023】
かご14が到着する各階床16の乗場18において、かご開口部14mの前方には、乗場待機領域54が形成されている。なお、乗場待機領域54は、かご14の到着を待つ利用者のための領域であり、特定車両(車椅子やベビーカー等)を利用する特定利用者や特定利用者ではない非特定利用者(一般利用者)を検出する領域である。なお、乗場待機領域54の広さは、一例であり、適宜変更可能である。また、乗場待機領域54は、前述したように、乗場18に、かご14を待つ特定利用者や非特定利用者が存在するか否かを検出するための領域であり、ペイント等で領域を明示してもよいし、特に明示することなくシステム上の認識領域として設定されてもよい。
【0024】
各階床16の乗場18の上方位置、例えば、天井面には、乗場情報収集部56が配置されている。乗場情報収集部56は、乗場18で乗車待ちをするための乗場待機領域54における利用者の有無および特定利用者の有無を判定するための乗車待ち情報を収集する。乗場情報収集部56は、かご内情報収集部48と同様に、撮像装置を利用可能であり、例えば、乗場18において、少なくとも乗場待機領域54の全域を撮像可能な可視カメラや赤外線カメラ等が利用可能である。なお、乗場情報収集部56は、乗場待機領域54における利用者の存在や利用者の識別が可能であれば、他のセンサも利用可能である。乗場情報収集部56は、例えば、超音波等を用いたセンサやレーダ等でもよい。
【0025】
各階床16の乗場18の壁面の一部には、乗場操作盤38が配置されている。乗場操作盤38は、非特定利用者用(一般利用者用)の上り乗場呼びボタン38a、下り乗場呼びボタン38b、乗場表示部38c、乗場スピーカ38d、特定利用者用の上り乗場呼びボタン38e、下り乗場呼びボタン38fおよび、戸閉ボタン38g等が含まれる。
【0026】
上り乗場呼びボタン38aと下り乗場呼びボタン38bは、非特定利用者(一般利用者)が利用可能で、乗場18からかご14を呼ぶためのボタンである。上り乗場呼びボタン38eと下り乗場呼びボタン38fは、特定利用者が利用可能で、乗場18からかご14を呼ぶためのボタンである。特定利用者用の上り乗場呼びボタン38eや下り乗場呼びボタン38fが操作された場合、乗場18に到着したかご14のかご扉34および連動する乗場扉36は、非特定利用者用の上り乗場呼びボタン38aや下り乗場呼びボタン38bが操作された場合より長時間戸開状態が維持され、特定利用者の乗降が余裕をもって行えるようになっている。なお、上り乗場呼びボタン38eや下り乗場呼びボタン38fは、上り乗場呼びボタン38aや下り乗場呼びボタン38bより低い位置に配置されて特定利用者が操作しやすいようにされている。
【0027】
乗場表示部38cや乗場スピーカ38dは、乗場情報提供部の一例である。乗場表示部38cや乗場スピーカ38dからは、かご14の運行状況に関する運行情報や特定利用者が優先領域46に優先的に乗車できるように、非特定利用者に協力を求める場合の協力情報を出力することができる。なお、乗場表示部38cや乗場スピーカ38dは、かご14の休止時や乗場情報提供部が設置された階床16から所定階離れた位置にかご14が存在する場合等、運行情報や協力情報の出力の必要性が低い場合に、かご内情報提供部44と同様に、広告情報等を出力してもよい。
【0028】
戸閉ボタン38gは、エレベータシステム100において特定利用者によりかご14の利用が要求され、優先領域46にいる非特定利用者を当該優先領域46の外に移動すること促す制御(優先運転モード制御)が実行されている場合、その制御をキャンセルするためのボタンである。戸閉ボタン38gは、例えば、特定利用者により特定利用者用の上り乗場呼びボタン38eや下り乗場呼びボタン38fが操作された後、何らかの理由により乗車を取り止める場合(辞退する場合)等に利用される。その結果、優先運転モード制御は、キャンセルされ、かご14は通常運転モード制御に戻り、通常運転が継続される。
【0029】
図4は、エレベータシステム100の機能を説明する例示的かつ模式的なブロック図である。
【0030】
制御盤42(制御部)に含まれるCPUは、例えば、ROMやSSD等の不揮発性の記憶部にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって、かご14を運行するために機能する各種モジュールを実現する。CPUは、例えば、かご内情報取得部42a、乗場情報取得部42b、モード制御部42c、身体特徴検出部42d、提供情報制御部42e、照明制御部42f、キャンセル処理実行部42g、扉制御部42h、運行制御部42i等のモジュールを実現する。また、モード制御部42cは、詳細モジュールとして、通常モード制御部42c1、優先モード制御部42c2を含む。
【0031】
かご内情報取得部42aは、かご内情報収集部48が収集したかご14内部の状況を示す乗車情報を逐次取得し、モード制御部42cや身体特徴検出部42d等に取得した乗車情報を提供する。乗車情報は、かご14内に利用者が存在するか否かの情報や、利用者が特定利用者(例えば、車椅子やベビーカーの利用者)か非特定利用者(一般利用者)か否かの識別情報、非特定利用者が優先領域46に存在するか否かの乗車位置情報等を含む。利用者の有無や特定利用者か非特定利用者かの判別は、例えば周知のパターン認識等の画像認識技術を用いて実施することができる。また、乗車情報は、例えば、身長情報を含み、非特定利用者が優先領域46に存在する場合(立っている場合)に、該当者が例えば、大人であるか、子どもであるか、怪我をしているか、大きな荷物を持っているか等の識別を行う際に利用する情報である。
【0032】
乗場情報取得部42bは、乗場情報収集部56が収集した乗場18の状況を示す乗車待ち情報を逐次取得し、モード制御部42cに取得した乗車待ち情報を提供する。乗車待ち情報は、乗場18でかご14の乗車待ちをするための乗場待機領域54における利用者の有無および特定利用者の有無を判定するための情報である。利用者の有無や特定利用者か非特定利用者かの判別は、例えば周知のパターン認識等の画像認識技術を用いて実施することができる。
【0033】
モード制御部42cは、乗場18における特定利用者のかご14のかご呼び状況やかご14内の優先領域46の空き状況、かご14の現在位置や運行方向等に応じて、かご14の運転モードの切り替えを行う。運転モードには、通常運転モードと優先運転モードがある。つまり、モード制御部42cは、かご14の待ち状況に応じて、通常モード制御部42c1と優先モード制御部42c2との切換を行う。
【0034】
通常運転モードは、通常モード制御部42c1の制御によって実行される。通常モード制御部42c1は、乗場18の乗場操作盤38で、特定利用者用の上り乗場呼びボタン38eや下り乗場呼びボタン38fが操作されていない場合に、通常運転モードを実行する。通常運転モードは、乗場18の乗場操作盤38による乗場呼び登録やかご14のかご内操作盤40によるかご呼び登録に従い、かご14を登録(要求)された階床16に運行させるモードである。
【0035】
一方、優先運転モードは、優先モード制御部42c2の制御によって実行される。優先モード制御部42c2は、乗場18の乗場操作盤38で、特定利用者用の上り乗場呼びボタン38eや下り乗場呼びボタン38fが操作された場合に、優先運転モードを実行する。優先運転モードは、特定利用者が乗場操作盤38を用いて乗場呼び登録を行った場合、特定利用者がかご14を優先的にスムーズに利用できるようにするモードである。つまり、優先領域46を空けるようにかご14に乗車している利用者(特に優先領域46に立っている非特定利用者)に協力を求める運転モードである。具体的には、特定利用者がかご14の利用を希望した場合で、かご14が乗場18に到着して、開閉扉(かご扉34および乗場扉36)が戸開状態になった際に、乗場18の乗場待機領域54に特定利用者が存在する場合に実行される。この場合、かご14内の優先領域46に非特定利用者が存在する場合に、非特定利用者に対してかご内情報提供部44を介して優先領域の外に移動するように通知する。例えば、かご14内で優先領域46以外の空いている領域に移動したり、かご14から降車したりするように協力メッセージを通知する。そして、特定利用者が乗場18の乗場待機領域54の外へ移動したことを検出するまで、または一定期間経過するまで、かご14を停止させたまま戸開状態を継続する。つまり、特定利用者が、かご14の優先領域46に移動したり、かご14への乗車を辞退して乗場18から離れたりするまで、かご14の運行を一時的に停止して、特定利用者のための乗車スペースを確保する運転モードである。
【0036】
身体特徴検出部42dは、かご内情報収集部48が収集した乗車情報に含まれる利用者の身体情報に基づき、かご14に乗車している利用者の身体的特徴の情報を検出する。身体情報は、例えば、利用者の身長情報が含まれ、利用者の実身長を推定することができる。利用者の実身長を検出することにより利用者が、例えば大人か子どもかの判別を行うことができる。例えば優先運転モードの実行時に、特定利用者が優先領域46を利用できるようにするために、非特定利用者を優先領域46から移動してもらう際に、その対象から子供を除外することができる。大人と子どもの区別は、所定の身長(例えば、140cm)を閾値として、閾値未満を子ども、閾値以上を大人と識別することができる。また、身体特徴検出部42dは、乗車情報の身体情報に含まれる利用者の外形情報に基づき、利用者が、例えば松葉杖を利用しているか(怪我をしているか)否か、大きな荷物を持っているか否か、高齢者であるか否か等の判定を行ってもよい。身体情報は、特定利用者が優先領域46を利用できるようにする場合、非特定利用者に対して、優先領域46外に移動することを依頼したり降車を依頼したりする対象になり得るか否かの判定に利用することができる。つまり、移動依頼対象から子ごもや高齢者、怪我をしている人、大きな荷物を持っている人等を除外することができる。このように優先領域46に依頼除外者が存在する場合、例外的に特定利用者にかご14への乗車を待ってもらう場合もある。
【0037】
提供情報制御部42eは、かご内情報提供部44(表示装置44a、スピーカ44b)および乗場情報提供部である乗場表示部38cや乗場スピーカ38dから出力する情報の制御を行う。例えば、かご14内の表示装置44aには、特定利用者が乗車するため優先領域46の外に移動することを促すメッセージが表示される。特定利用者が待つ階床16に移動中には、例えば、「5階で車椅子をご利用のお客様がいらっしゃいます。車椅子のお客様が、エレベータをご利用できるようにご協力をお願いします。」等のメッセージを表示する。また、特定利用者が待つ階床16に到着した際またはその直前には、「車椅子を利用するお客様が乗車を希望しています。恐れ入りますが足元の優先領域の外に移動していただくか、エレベータから一度降車して、お譲りいただけるようご協力をお願いします。」等の依頼メッセージを表示する。また、同様の内容の音声メッセージをスピーカ44bからも出力して、かご14の乗車している利用者の周知を図り易くする。また、この場合、表示装置44aに、優先領域46や依頼対象者を表示するようにしてもよい。その結果、優先領域46の外に移動してもらう依頼対象者を明示可能となり、より協力を得やすくすることに寄与できる。また、乗場表示部38cには、エレベータ10(かご14)が特定利用者の利用を優先させるための優先運転モードを実行であることを示すメッセージを表示する。例えば、「5階で車椅子をご利用のお客様がお二人いらっしゃいます。車椅子のお客様が、エレベータをご利用できるように一時的に特別運転を行っております。」等の通知メッセージを表示する。また、同様の内容の音声メッセージを乗場スピーカ38dからも出力して、乗場18にいる利用者の周知を図り易くする。
【0038】
提供情報制御部42eは、かご14が通常運転モードで運行されている場合で、特に運行に関する連絡が必要ない場合に、任意の情報、例えば、広告情報やイベント情報、ニュース等を出力するようにしてもよい。
【0039】
照明制御部42fは、かご14内に配置された照明部50を制御して、優先領域46の外に移動を促す場合に優先領域46の表示態様を変化させて強調表示を行うようにしてもよい。例えば、優先領域46の領域色を変化させたり、優先領域46の境界線等を点滅させたりすることにより優先領域46の内外の区別を視覚的により明確にできるようにすることができる。なお、照明部50は、LED等で構成され、かご床14cに設置されてもよい。この場合、かご床14cにおいて、LEDの発光等により優先領域46を形成するようにしてもよい。
【0040】
キャンセル処理実行部42gは、優先運転モードの実行中に戸閉ボタン38gが操作された場合、例えば、特定利用者用の上り乗場呼びボタン38eや下り乗場呼びボタン38fが操作された後に、特定利用者が乗車をキャンセルすることを可能にする。その結果、優先運転モード制御の実行時に、特定利用者が乗場待機領域54から領域外に移動しない場合でも、モード制御部42cは、運転モードを通常運転モードに切り替え、開閉扉(かご扉34、乗場扉36)を戸閉状態にして、かご14を呼び登録に従って通常運転させることができる。なお、キャンセル処理実行部42gが操作された場合、キャンセル処理実行部42gは、提供情報制御部42eを介して、通常運転モードに戻ったことを、かご14内や乗場18にアナウンスするようにしてもよい。また、キャンセル処理実行部42gは、戸閉ボタン38gが操作された場合、特定利用者による操作か否かを確認する確認メッセージを、提供情報制御部42eを介して、乗場18に提供するようにしてもよい。この場合、例えば戸閉ボタン38gの2連続操作等により、操作を正式受付するようにしてもよい。
【0041】
扉制御部42hは、かご14が乗場18に到着した場合に扉駆動部58を動作させて開閉扉(かご扉34および乗場扉36)を戸開動作させる。また、戸開から所定期間経過した場合に開閉扉を戸閉動作させる。なお、戸閉動作中に挟み込み防止センサ等の安全装置が作動した場合、扉制御部42hは、戸閉動作を中止し、戸開動作を行う。また、戸閉動作中に、上り乗場呼びボタン38a,38e、下り乗場呼びボタン38b,38fのいずれかが操作された場合も、扉制御部42hは、戸閉動作を中止し、戸開動作を行う。また、扉制御部42hは、かご14のかご内操作盤40の開ボタン、閉ボタンの操作があった場合も開閉扉の開閉動作を実行することができる。
【0042】
運行制御部42iは、かご14の走行方向や走行速度、走行および停止の制御を通常運転モードの実行時および優先運転モードの実行時に行う。運行制御部42iは、乗場操作盤38の上り乗場呼びボタン38a,38e、下り乗場呼びボタン38b,38fによる乗場呼び登録やかご内操作盤40のかご呼び登録に応じて、かご14の運行制御を行う。
【0043】
このように構成されるエレベータシステム100の動作の流れを
図5の例示的なフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
まず、エレベータシステム100が起動すると、モード制御部42cは、通常モード制御部42c1の制御に基づき、通常運転モードでかご14の運行を行う(S100)。すなわち、運行制御部42iは、乗場操作盤38の上り乗場呼びボタン38a,38eや下り乗場呼びボタン38b,38fによる乗場呼び登録やかご内操作盤40のかご呼び登録に応じた、かご14の走行方向や走行速度等の運転制御を可能にする。そして、運行制御部42iは、乗場呼び登録の有無の監視を行う(S102)。乗場呼び登録がない場合(S102のNo)、S102の処理を継続して待機状態となる。乗場呼び登録があった場合(S102のYes)、乗場情報取得部42bが収集する乗車待ち情報に基づき、乗場呼び登録がなされた呼び登録階に特定利用者が存在するか否かを確認する(S104)。モード制御部42cは、乗場情報取得部42bの収集した乗場待ち情報に基づき、乗場呼び登録がなされた呼び登録階に特定利用者が存在することを検出した場合(S104のYes)、かご14の現在の進行方向と、乗場呼び登録がなされた乗場呼出階の方向が一致しているか否か判定する(S106)。かご14の現在の進行方向と乗場呼出階の方向が不一致の場合(S106のNo)、運行制御部42iは、現在のかご14の進行方向の既登録の乗場呼び登録やかご呼び登録に応答して(S108)、かご14の昇降移動を行う。かご14が、目的の階床16に到着したら、扉制御部42hは、開閉扉(かご扉34、乗場扉36)の開閉を行い、利用者の乗降を可能にする。そして、S102の処理に移行し、かご14の運行を継続する。なお、S104の処理において、乗場呼び登録がなされた呼び登録階に特定利用者が存在しない場合(S104のNo)、つまり、呼び登録階に非特定利用者(一般利用者)のみが存在する場合である。この場合もS108の処理に移行する。つまり、通常運転モードによるかご14の運転制御を継続する。
【0045】
一方、S106の処理において、かご14の現在の進行方向と乗場呼出階の方向が一致している場合(S106のYes)、モード制御部42cは、運転モードを優先運転モードに切り替え(S110)、優先モード制御部42c2によりかご14の運転制御を実行する。
【0046】
優先運転モードに切り替えられると、優先モード制御部42c2は、かご内情報取得部42aが取得したかご内情報収集部48からの乗車情報および乗場情報取得部42bが取得した乗場情報収集部56からの乗場待ち情報に基づき、かご14内の利用者の状況および乗場18の利用者の状況を確認する。そして、かご14内の状況および乗場18の状況に応じて、提供情報制御部42eは、かご14内および乗場呼出階に特定利用情報を通知する(S112)。特定利用情報は、例えば、かご14のかご内情報提供部44および乗場18の乗場情報提供部(乗場表示部38cや乗場スピーカ38d等)を介して、特定利用者が存在することやその人数の通知、かご14が特定利用者の乗車を優先させるモードに移行したことを示す通知等である。特定利用情報の通知により、エレベータ10の利用者は、特定利用者の存在を認識した上で、かご14の利用(乗降)が判断し易くなる。
【0047】
そして、運行制御部42iは、既登録の乗場呼びやかご呼びに応答しつつ(S114)、かご14を特定利用者が待つ乗場18に移動する。そして、優先モード制御部42c2は、かご14が到着した停止階床が特定利用者の乗車階床であるか確認する(S116)。停止階床が特定利用者の乗車階床ではない場合(S116のNo)、停止階床に特定利用情報を通知する(S118)。例えば、特定利用者の乗車予定階床や乗車台数等を乗場表示部38cや乗場スピーカ38d等介して通知する。この場合、停止階において、非特定利用者のかご14に対する乗降は可能である。そして、S114の処理に移行して、運行制御部42iは、かご14の特定利用者が待つ乗場18への移動制御を継続する。
【0048】
S116の処理で、かご14が到着した停止階床が特定利用者の乗車階床の場合(S116のYes)、特定利用者が乗場待機領域54から離れたか否か確認する(S120)。例えば、特定利用者がかご14への乗車を辞退して乗場待機領域54の外に移動した場合やかご14に乗り込んだため乗場待機領域54の外に移動した場合等である。この場合、モード制御部42cは、優先運転モードを終了し(S122)、優先モード制御部42c2による制御から通常モード制御部42c1による通常運転モード制御に切り替え、一旦このフローを終了し、エレベータシステム100が起動状態の場合、S100の処理に戻り通常運転モードの実行を継続する。
【0049】
S120の処理で、特定利用者が乗場待機領域54から離れていない場合(S120のNo)、つまり、特定利用者がかご14への乗車意思を継続している場合である。この場合、優先モード制御部42c2は、かご14の優先領域46に非特定利用者が存在するかの判定を、かご内情報取得部42aが取得したかご内情報収集部48の取得した乗車情報に基づいて行う(S124)。優先領域46に非特定利用者が存在しない場合(S124のNo)、つまり、優先領域46が空いていて、特定利用者が乗車可能の場合である。この場合、S120に移行し、特定利用者がかご14に乗り込むのを待つ。一方、優先領域46に非特定利用者が存在する場合(S124のYes)、優先モード制御部42c2は、扉制御部42hおよび運行制御部442iにより、かご14の戸開状態を維持したまま、特定利用者の乗車階床に停止させる。また、優先モード制御部42c2は、提供情報制御部42eにより、優先領域46に存在する非特定利用者に対して優先領域46の外に移動することを促す通知をかご内情報提供部44から出力する。例えば、「車椅子を利用するお客様が乗車を希望しています。恐れ入りますが足元の優先領域の外に移動していただくか、エレベータから一度降車して、お譲りいただけるようご協力をお願いします。」等のメッセージを表示装置44aやスピーカ44bから出力する。また、優先モード制御部42c2は、照明制御部42fにより、優先領域46を強調表示して、非特定利用者に協力の必要性を認識し易いようにしてもよい。そして、S120の処理に移行して、優先領域46が利用可能な状態になり特定利用者が乗場待機領域54を離れて乗り込むのを待ち、乗り込みが完了した場合、S122の処理(優先運転モード終了処理)を実行する。
【0050】
なお、S124の処理において、優先モード制御部42c2は、身体特徴検出部42dの検出結果に基づき、優先領域46に存在する非特定利用者が子どもや高齢者であったり、怪我をしている人であったり、大きな荷物を持っている人であると判定した場合、乗車待ちをしている特定利用者に対して、事情を説明するメッセージを提供し、次回かご14が到着するまで待機するように依頼してもよい。この場合、優先モード制御部42c2は、一旦、開閉扉を戸閉状態にして、かご14を既登録に従い運転する。そして、優先モード制御部42c2は、再度、特定利用者の乗車階床に向かうようにかご14を運転制御する。
【0051】
また、S120の処理において、戸閉ボタン38gが操作された場合、特定利用者は乗車を辞退したと見なして、S122に移行して優先運転モード終了させる。つまり、かご14が特定利用者の存在する乗場18に停止した場合で、かご14内の優先領域46に非特定利用者が存在することが検出されている場合でも、戸閉ボタン38gの操作を示す戸閉要求情報をキャンセル処理実行部42gが取得した場合である。この場合、キャンセル処理実行部42gは、特定利用者が乗場待機領域54の外に移動していない場合でも、開閉扉を戸閉してかご14の昇降移動を可能な状態に移行させるキャンセル処理を実行する。したがって、モード制御部42cは、通常モード制御部42c1に制御を切り替え、通常運転モード制御を実行するようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施形態のエレベータシステム100によれば、特定利用者のための利用スペースである優先領域46を視覚的に明示すると共に、特定利用者が待つ乗場に到着した際に、それ以外の乗場で待つ非特定利用者に対する影響を最小限にしつつ、優先領域46の空きスペースの確保をスムーズに行うことができる。また、優先領域46の空きスペースの確保の際に、非特定利用者である一般利用者に違和感や不便感を与え難くして、それぞれの利用者の利用効率を向上することができる。
【0053】
図6は、エレベータシステム100の他のかご14の内部を天井側から見た場合を示す例示的かつ模式的な平面図である。なお、
図6の例の場合、開閉扉(かご扉34、乗場扉36)が戸開状態になっている状態である。
【0054】
図6のかご14の場合、大型のかご14に優先領域46が複数(例えば、第1優先領域46a、第2優先領域46bの2個)が設定されている例である。この場合、優先モード制御部42c2が、優先領域46を利用する特定利用者が複数存在する場合、利用者の人数に応じて空き状態の優先領域46の数を確保するように、優先領域46に存在し得る非特定利用者に優先領域46の外へ移動することを促す通知を実行する。例えば、かご14を待っている特定利用者が1人の場合、第1優先領域46aと第2優先領域46bのいずれか一方に対して、移動協力を依頼する。なお、優先モード制御部42c2は、いずれか一方の優先領域46が既に空き状態になっている場合、移動協力を依頼することなく、空き状態の優先領域46に特定利用者を受け入れることを提供情報制御部42eによりかご内情報提供部44(例えば、スピーカ44b)から通知する。また、優先モード制御部42c2は、いずれの優先領域46にも非特定利用者が存在する場合、所定の優先順位に従って、いずれかの優先領域46を選択し、移動協力を依頼する。この場合、優先順位は予め決まられていいてもよし、優先領域46の利用状態によって、その都度決定してもよい。例えば、身体特徴検出部42dの検出結果に基づき、より移動リスクの少ない方の優先領域46に対して、移動協力を依頼するようにしてもよい。この場合、提供情報制御部42eは、移動協力を依頼する優先領域46に近い方のかご内情報提供部44(表示装置44a)に移動協力依頼のメッセージを出力するようにしてもよい。その結果、非特定利用者に移動の必要を認識させ易くすることができる。また、この場合、表示装置44aに、移動を依頼する方の優先領域46や依頼対象者を表示するようにしてもよい。この場合、優先領域46の外に移動してもらう依頼対象者をより明確にすることが可能となり、より協力を得やすくすることに寄与できる。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
10…エレベータ、14…かご、14a,14b,14e…かご側壁、14c…かご床、14d…かご天井、14m…かご開口部、16…階床、18…乗場、34…かご扉、36…乗場扉、38…乗場操作盤、38g…戸閉ボタン、40…かご内操作盤、42…制御盤(制御部)、42a…かご内情報取得部、42b…乗場情報取得部、42c…モード制御部、42c1…通常モード制御部、42c2…優先モード制御部、42d…身体特徴検出部、42e…提供情報制御部、42f…照明制御部、42g…キャンセル処理実行部、42h…扉制御部、42i…運行制御部、44…かご内情報提供部、46…優先領域、48…かご内情報収集部、50…照明部、54…乗場待機領域、56…乗場情報収集部、58…扉駆動部、100…エレベータシステム。
【要約】
【課題】特定利用者のための利用スペースの確保をスムーズにできると共に、一般利用者に不都合を与え難くして、それぞれの利用者の利用効率を向上することができるエレベータシステムが提供する。
【解決手段】エレベータシステムは、かごと、情報提供部と、優先領域と、かご内情報収集部と、乗場情報収集部と、制御部と、を備える。制御部は、かごが乗場に到着してかごの開閉扉を戸開状態にした際に、乗場の乗場待機領域に特定利用者が存在する場合で、かご内の優先領域内に非特定利用者が存在する場合に、情報提供部を介して優先領域の外に移動するように通知すると共に、特定利用者が乗場の乗場待機領域の外へ移動したことを検出するまで、または一定期間経過するまで、かごを停止したまま戸開状態を継続する優先運転モード制御を実行する。
【選択図】
図4