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特許7467766光ファイバセンサの形状を表す方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光ファイバセンサの形状を表す方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240408BHJP
   G01B 11/255 20060101ALI20240408BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B11/255 G
G02B6/02 A
G02B6/02 461
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023516760
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2021074637
(87)【国際公開番号】W WO2022058207
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】20196405.3
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドッショテン アンナ ヘンドリカ
(72)【発明者】
【氏名】ホリックス イェルン ヤン ランベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ト ホーフト ゲルト ウィム
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0250050(US,A1)
【文献】特表2013-505441(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/085878(JP,A1)
【文献】特表2014-500497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G02B 6/00-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各コアが1以上の感知エレメントを備えた中心コア及び複数の外側コアを有する光ファイバセンサの形状を表す方法であって、前記方法は、
(a)前記1以上の感知エレメントの共振波長を中心とする波長範囲にわたって入射光波により前記光ファイバセンサのコアに光学的に問い合わせるステップであって、前記波長範囲が前記光ファイバセンサに沿う最小曲率半径に制限される検出に関連するステップと、
(b)前記コアの前記光学的問い合わせから受信される干渉計信号の処理を含む前記光ファイバセンサの形状を再構成するステップであって、前記最小曲率半径よりも小さい曲率半径を持つ区間である前記光ファイバセンサに沿った少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する処理を含み、該少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する処理が前記少なくとも1つの範囲外区間における前記光ファイバセンサの曲率を該少なくとも1つの範囲外区間における前記中心コアの問い合わせから受信された干渉計信号から計算する処理を含む、ステップと、
(c)前記少なくとも1つの範囲外区間を含む前記光ファイバセンサの形状を表示するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する処理が、更に、前記少なくとも1つの範囲外区間における1以上の量を、該少なくとも1つの範囲外区間に隣接する少なくとも1つの区間における同じタイプの1以上の量から補間する処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上の量が、前記範囲外区間に沿ってゆっくり変化する1以上の量を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1以上の量が、曲げ角、捻れ角及びコモンモード歪のうちの1以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、前記少なくとも1つの範囲外区間における前記中心コアの光学的問い合わせにより位置依存歪を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの範囲外区間における前記光ファイバセンサの曲率を計算する処理が、歪と曲率との間の非線形関係を使用して曲率を計算する処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの範囲外区間における前記光ファイバセンサの曲率を計算する処理が、歪と二乗された曲率との間の線形関係を使用して曲率を計算する処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)の前に、前記光ファイバセンサを較正して、歪と二乗された曲率との間の比例係数を決定するステップを更に有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光ファイバセンサを較正するステップが、前記光ファイバセンサを該光ファイバセンサの長さに沿った短い長さの領域において前記最小曲率半径以上の複数の異なる曲げ半径に曲げる処理、前記コアに光学的に問い合わせて前記光ファイバセンサに沿った複数の位置から前記コアからの干渉計信号を取得する処理、前記光ファイバセンサに沿った前記干渉計信号からコモンモード歪及び曲率を計算する処理、及び前記コモンモード歪及び二乗された曲率から前記比例係数を計算する処理を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、前記少なくとも1つの範囲外区間の開始及び終了のうちの少なくとも一方を識別する処理を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記識別する処理が、曲率の閾値、及び前記問い合わせから受信された信号における2つの連続するサンプル点間の位相差の絶対値の閾値の少なくとも一方を設定する処理を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの範囲外区間の開始を識別する処理が、何時前記曲率及び前記位相差の絶対値の少なくとも一方が増加し、前記曲率の閾値及び前記位相差の絶対値の閾値の少なくとも一方に近づき始めるかを識別する処理を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの範囲外区間の終了を識別する処理が、何時前記曲率及び前記位相差の絶対値の少なくとも一方が減少し、前記曲率の閾値及び前記位相差の絶対値の閾値の少なくとも一方を下回り始めるかを識別する処理を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
各コアが1以上の感知エレメントを備えた中心コア及び複数の外側コアを有する光ファイバセンサの形状を表すシステムであって、前記システムは、
(a)前記1以上の感知エレメントの共振波長を中心とする波長範囲にわたって入射光波により前記光ファイバセンサのコアに光学的に問い合わせる問い合わせモジュールであって、前記波長範囲が前記光ファイバセンサに沿う最小曲率半径に制限される検出に関連する問い合わせモジュールと、
(b)前記コアの前記光学的問い合わせから受信される干渉計信号の処理を含んで前記光ファイバセンサの形状を再構成する再構成モジュールであって、前記最小曲率半径よりも小さい曲率半径を持つ区間である前記光ファイバセンサに沿った少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する動作を含み、前記少なくとも1つの範囲外区間の形状を、該少なくとも1つの範囲外区間における前記光ファイバセンサの曲率を該少なくとも1つの範囲外区間における前記中心コアの問い合わせから受信された干渉計信号から計算することに基づいて再構成する、再構成モジュールと、
(c)前記少なくとも1つの範囲外区間を含む前記光ファイバセンサの形状を表示する表示ユニットと
を有する、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステム上で実行された場合に、該システムに請求項1に記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは光ファイバセンサの形状を表す方法に関する。より具体的には、本発明は、各コアが1以上の感知エレメントを備えた中心コア及び複数の外側コアを有する光ファイバセンサの形状を表す方法に関する。本発明は、更に、光ファイバセンサの形状を表すシステムに関する。更に、本発明は、該システムに上述した方法を実行させるのに適したコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
光学式形状感知(OSS)は、特殊な光ファイバセンサの三次元形状を該ファイバセンサ内の光の反射から再構成できる技術である。この技術は、例えばカテーテル及びガイドワイヤのような医療装置等の装置の全体形状のリアルタイムな3D視覚化を可能にする。医療装置の形状は、X線画像又は術前CTスキャン上に重ねることができる。このようにして、医師は処置中に当該装置を、X線追跡を要せずにナビゲーションできる。
【0003】
光学式形状感知においては、干渉計を組み込んだインテロゲータ(質問器)システムにより得られた後方散乱スペクトルから、分布された歪及び温度信号が得られる。このことは光ファイバセンサに関して行われ、該光ファイバセンサは、例えば、該ファイバセンサの中心にある第4目のコアの周りに螺旋状に巻かれた3つの外側コアを備える。歪及び温度に対する上記コアの応答が、当該ファイバセンサに沿った位置の関数としての干渉計からの光信号の位相差として測定される。これら位相差は、当該ファイバセンサが明確な形状(例えば、完全に真っ直ぐな形状)にある基準測定値に対して取得される。該位相差から、各コアに関する歪及び温度の差が推定され得る。歪信号は、2つの直交する方向の曲げ歪、並びに捻れ歪及び当該ファイバセンサの長手方向の歪である軸歪の合計であろう。これらの4つの位置依存性の量から、ファイバセンサの形状を再構成できる。形状感知技術の詳細な説明は、米国特許第8,773,650号及び米国特許第9,784,569号に記載されている。高精度の形状感知には、形状再構成モデルに正確なファイバセンサ特性が必要である。これらの特性は、個々のファイバセンサに関して較正過程において決定され得る。
【0004】
医療装置の管腔内に挿入されたOSSファイバセンサは、さまざまな曲率半径を呈し得る。当該医療装置は予め形状をつけられたものとされ得、該装置の取り扱い中に形状を変化させる。ファイバセンサが受ける最小曲率半径は、当該装置の設計、ファイバセンサ自体及び該ファイバセンサが使用されている環境に依存する。例えば、人間の血管系は非常に曲がりくねったものであり得る。この種の血管にアクセスできるようにするためには、より柔軟な装置が使用されるであろう。更に、取り扱い中に、医療器具が捩れる、すなわち局所的な非常に鋭い曲げを受ける可能性がある。したがって、これらの装置内のOSSファイバセンサは小さな曲率半径に耐えられる必要がある。曲率半径の限界がゼロになると、ファイバセンサは簡単に壊れる。しかしながら、光学形状感知技術は、ファイバセンサの最小の測定可能な曲げ半径に関連する他の限界ももたらす。
【0005】
ファイバセンサの該最小の測定可能な曲げ半径は、外側コアのファイバセンサ中心からのコア距離に比例し、コアに質問する(問い合わせる)ために使用される光のスキャン波長範囲に反比例する。このように、センサの最小測定可能曲げ半径を減少させるためには、スキャン波長範囲を増大させるか、又は外側コア距離を減少させることが素直であると思われる。外側コア距離を減少させることは、曲げ歪に対する感度を低下させるのみならず、捻れ歪に対する感度も低下させる。捻れ歪に対する感度は、外側コア距離の2乗に比例するからである。捻れに対して必要とされる精度は非常に高いため、外側コア距離を減少させることは好ましくない。スキャン波長範囲を増大させることは、他の理由で不利である。このことは信号対雑音比を減少させる。共振ピークがスペクトルを相対的に少なくしか満たさないからである。更に、2つの連続するノード(ファイバセンサ上の位置の関数としてのデータ点)間の遅延の長さが減少され、ファイバセンサの同じ物理的長さに対してデータ点の増加を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、再構成された形状の精度を改善する、光ファイバセンサの形状を表す方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、光ファイバセンサの形状を表す方法であって、高精度の形状再構成を達成するためにファイバセンサのファイバセンサコアの数の冗長性を必要とすることがない方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、光ファイバセンサの形状を表す方法であって、小さな最小曲げ半径の形状を高精度で表わすことを可能にする方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、光ファイバセンサの形状を表すための対応するシステムを提供することである。
【0010】
本発明の更に他の目的は、光ファイバセンサの形状を表すシステムが上述した方法を実行することを可能にするコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様によれば、各コアが1以上の感知エレメントを備えた中心コア及び複数の外側コアを有する光ファイバセンサの形状を表す方法が提供され、該方法は:
(a)1以上の感知エレメントの共振波長を中心とする波長範囲にわたって入射光波によりファイバセンサのコアに光学的に問い合わせる(質問する)ステップであって、波長範囲が光ファイバセンサに沿う最小曲率半径に制限される検出に関連する、ステップと;
(b)前記コアの光学的問い合わせから受信される干渉計信号の処理を含むファイバセンサの形状を再構成するステップであって、最小曲率半径よりも小さい曲率半径を持つ区間である当該ファイバセンサに沿った少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する処理を含み、該少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する処理が少なくとも1つの範囲外区間における当該ファイバセンサの曲率を該少なくとも1つの範囲外区間における中心コアの問い合わせから受信された干渉計信号から計算する処理を含む、ステップと;
(c)少なくとも1つの範囲外区間を含む当該ファイバセンサの形状を表示するステップと;
を有する。
【0012】
本発明は、ファイバセンサの曲率半径が最小測定可能曲げ半径よりも小さい該ファイバセンサに沿った区間においてさえも、光ファイバセンサの形状を表現することを可能にする。曲率半径が最小測定可能曲げ半径よりも小さい当該ファイバセンサに沿った区間は、本開示では「範囲外区間」と呼ばれる。範囲外区間における光ファイバセンサの形状を表すことができるようにするために、本発明は、外側コアの数の冗長性を必要とすることはなく、スキャン波長範囲を増加させることも、中心からの外部コアの距離を減少させることも必要としない。範囲外区間において、ファイバセンサの1以上の外側コアは、問い合わせに際して干渉計信号を提供することはない。1以上の外側コアにおける形状感知エレメントの波長シフトが、範囲外区間においてスキャン波長範囲の限界を超えるからである。このように、範囲外区間において、形状の再構成は、外側コアにおける測定歪に基づくことはできない。本発明は、範囲外区間における歪を、該範囲外区間における中心コアの光学的問い合わせから受信される信号から導出すると共に、中心コアにおける該曲げ誘起歪から曲率を計算することを提案する。少なくとも1つの範囲外区間におけるファイバセンサの曲率を計算する処理は、該範囲外区間に沿った複数の位置におけるファイバセンサの曲率を計算する処理を含み得る。
【0013】
好ましい実施形態として、本発明は、曲げにより加えられる応力と歪との間の関係には非線形効果が存在するという洞察に基づき得る。この非線形効果は少ない量の歪に対しては取るに足らないものであるが、曲率半径が非常に小さい範囲外区間においてそうであるように、大きな歪値に対しては観察可能なものとなる。結果として、中心コアの信号は曲率による歪の測定可能な寄与分を提供し、これから、外側コアの1以上の共振波長がスキャン波長範囲の限界を超えてシフトされる(ズレる)という事実にもかかわらず、曲率半径(曲げ半径)を推定することができる。大きな曲げ半径の区間においては、中心コアは歪信号に目に見えて寄与しないが、このことは、曲げ半径又は複数の半径が非常に小さい範囲外区間においては異なるものである。
【0014】
本発明による方法で使用される光ファイバセンサは、3つの外側コア及び1つの中心コアを有する標準的な光ファイバセンサであり得る。外側コアは中心コアの周りに螺旋状に巻回され得る。当該コアの感知エレメントは、ファイバブラッググレーティング(FBG)とすることができる。外側コアの数及び感知エレメントのタイプは、先に示したものとは異なる場合があり得る。
【0015】
本発明による方法は、形状を表す従来の方法がし損なう1以上の範囲外区間においても、光ファイバセンサの形状を高い精度で表すことを可能にする。
【0016】
本発明による方法はファイバセンサコアの数の冗長性を必要としないので、コストも節約できる。
【0017】
好ましい実施形態は、従属請求項に記載されるか、又は当該詳細な説明の後続の部分に記載される。
【0018】
一実施形態において、前記少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する処理は、更に、少なくとも1つの範囲外区間における1以上の量を、該少なくとも1つの範囲外区間に隣接する少なくとも1つの区間における同じタイプの1以上の量から補間する処理を含むことができる。
【0019】
範囲外区間に隣接する区間、すなわち曲率半径が最小測定可能曲げ半径を下回らない箇所において、歪測定は通常どおり高精度で実行できる。これらの測定値から、隣接する区間(又は複数の区間)におけるのと同じタイプの1以上の量を、範囲外区間において補間する、特に線形補間することができる。範囲外区間の前後の2つの隣接する区間における位相測定値を、該補間のために使用することができる。
【0020】
好ましくは、上記1以上の量は、範囲外区間に沿ってゆっくり変化する1以上の量を含むことができる。
【0021】
これらの量は、曲率又は曲げ半径を除く、形状再構成に必要とされる如何なる量とすることもできる。曲げ半径は範囲外区間では小さ過ぎるであろうが、例えば当該ファイバセンサがUターン又は捻れ(キンク)よりも大幅に大きくない角度で曲げられる場合、この区間の長さも限られる。したがって、この区間では殆どの量(曲率を除く)がわずかな量の変化を示すと仮定することは妥当である。このように、これらの量の補間、特に線形補間は、正確な形状再構成にとり十分であろう。
【0022】
範囲外区間において典型的に緩やかに変化する1以上の量は、曲げ角度(曲げの方向)、捻れ角、及び/又はコモンモード歪であり得る。コモンモード歪は、全てのコアに共通な歪であり、通常は温度歪及び軸方向歪を含む。
【0023】
一実施形態において、ステップ(a)は、少なくとも1つの範囲外区間における中心コアの光学的問い合わせにより位置依存歪を測定するステップを含み得る。
【0024】
前述したように、曲げ半径が非常に小さい場合、曲げにより印加される応力と歪との間には無視できない非線形効果が存在する。このように、ファイバセンサ中心からの比較的大きなコア距離の観点から、外側コアは形状再構成に役立つ歪信号は提供しないが、中心コアは、対照的に、曲率による歪の測定可能な寄与分を提供する。この歪への寄与分を測定し、光ファイバセンサの範囲外区間の形状再構成に使用できる。この実施形態において、光ファイバセンサの曲率は、中心コアから受信される干渉計からの信号の位置依存性位相差の微分(導関数)から計算することができる。
【0025】
一実施形態において、少なくとも1つの範囲外区間におけるファイバセンサの曲率を計算する処理は、歪と曲率との間の非線形関係を使用して曲率を計算する処理を含み得る。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つの範囲外区間におけるファイバセンサの曲率を計算する処理は、歪と二乗された曲率との間の線形関係、又は、言い換えると、歪と曲率との間の自乗的関係を使用して曲率を計算する処理を含む。
【0027】
このように、歪と自乗された曲率との間の線形関係を使用することは、加えられた応力と歪との間の非線形関係の最も低い次数を利用する、すなわち、非線形効果の第2次数を利用する。歪と曲率との間の非線形関係の2次よりも高い次数を使用することも可能であるが、2次の(自乗の)関係を使用すると、高い精度を達成しながら、計算の複雑さが低減される。
【0028】
歪と自乗曲率との間の比例係数を見つけるために、他の実施形態においては、光ファイバセンサを較正することによって、ファイバセンサに問い合わせる前に比例係数を決定することができる。
【0029】
光ファイバセンサを較正するステップは、光ファイバセンサを該光ファイバセンサの長さに沿った短い長さの領域において最小曲率半径以上の複数の異なる曲げ半径に曲げる処理、コアに光学的に問い合わせてファイバセンサに沿った複数の位置からコアからの干渉計信号を取得する処理、ファイバセンサに沿った干渉計信号からコモンモード歪及び曲率を計算する処理、及びコモンモード歪及び二乗された曲率から前記比例係数を計算する処理を有し得る。
このようにして、比例係数を高い精度で決定することができる。
【0030】
範囲外区間における位置依存性曲率が該範囲外区間における中心コアの分布歪測定から分かる場合、外側コアの位相差(歪)の位置依存性微分を、範囲外区間において、該既知の位置依存性曲率を使用して計算できる。
【0031】
他の実施形態において、ステップ(b)は少なくとも1つの範囲外区間の開始及び終了のうちの少なくとも一方を識別する処理を更に含むことができる。
【0032】
少なくとも1つの範囲外区間の開始及び/又は終了を識別することは、本発明による方法を更に改善する。少なくとも1つの範囲外区間における1以上の量を補間するステップ及び/又は加えられた応力と歪との間の非線形効果に基づいて中心コアからの歪測定値を使用するステップをファイバセンサに沿った正しい位置で開始及び/又は終了することができる一方、非範囲外区間では形状測定及び再構成を通常のように高い精度で実行できるからである。
【0033】
前記識別するステップは、曲率の閾値、及び前記問い合わせから受信された信号における2つの連続するサンプル点間の位相差の絶対値の閾値の少なくとも一方を設定する処理を含み得る。
【0034】
この実施形態は、範囲外区間の直前のファイバセンサの部分において、曲率は増加し、最大達成可能値に近づき始めるという概念を利用する。また、2つの連続するサンプル点間の位相差の絶対値は、ファイバセンサの同じ部分でπradまで増加し始める。同様の概念が、範囲外区間を超えたファイバセンサの部分にも当てはまる。本実施形態においては、範囲外区間の開始及び/又は終了の位置をマークするために、曲率及び位相差の両方に対して閾値を有利に設定することができる。
【0035】
少なくとも1つの範囲外区間の開始を識別するステップは、何時曲率及び位相差の絶対値の少なくとも一方が増加し、曲率の閾値及び位相差の絶対値の閾値の少なくとも一方に近づき始めるかを識別する処理を含み得る。少なくとも1つの範囲外区間の終了を識別するステップは、何時曲率及び位相差の絶対値の少なくとも一方が減少し、曲率の閾値及び位相差の絶対値の閾値の少なくとも一方を下回り始めるかを識別する処理を含み得る。
【0036】
第2の態様によれば、各コアが1以上の感知エレメントを備えた中心コア及び複数の外側コアを有する光ファイバセンサの形状を表すシステムが提供され、該システムは:
(a)前記1以上の感知エレメントの共振波長を中心とする波長範囲にわたって入射光波により前記光ファイバセンサのコアに光学的に問い合わせるように構成された問い合わせモジュールであって、前記波長範囲がファイバセンサに沿う最小曲率半径に制限される検出に関連する、問い合わせモジュールと;
(b)前記コアの光学的問い合わせから受信される干渉計信号の処理を含んでファイバセンサの形状を再構成するように構成された再構成モジュールであって、最小曲率半径よりも小さい曲率半径を持つ区間であるファイバセンサに沿った少なくとも1つの範囲外区間の形状を再構成する動作を含み、少なくとも1つの範囲外区間の形状を、該少なくとも1つの範囲外区間におけるファイバセンサの曲率を該少なくとも1つの範囲外区間における中心コアの問い合わせから受信された干渉計信号から計算することに基づいて再構成するように構成された、再構成モジュールと;
(c)少なくとも1つの範囲外区間を含むファイバセンサの形状を表示するように構成された表示ユニットと;
を有する。
【0037】
請求項に記載されるシステムは、請求項に記載の方法、特に従属請求項で定義され、本明細書に開示される方法と同様及び/又は同一の好ましい実施形態を有し得ると理解されたい。
【0038】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様によるシステム上で実行された場合に、該システムに第1の態様による方法のステップを実行させるプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0039】
本発明のこれら及び他の態様は、後述される実施形態から明らかになり、斯かる実施形態を参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、光ファイバセンサの形状を表すシステムを図示したブロック図を示す。
図2図2は、図1のシステムで使用するための光ファイバセンサの斜視図を示す。
図3図3は、図2における光ファイバセンサの断面図を示す。
図4図4は、a)に光ファイバセンサに沿った位置の関数としての例示的な曲率のグラフを示し、b)にa)における曲率に対する光ファイバセンサの種々のコアの曲げ信号のグラフを示す。
図5図5は、a)に湾曲される光ファイバセンサの断面を示し、b)に印加された応力と歪との間の非線形関係を示す。
図6図6は、光ファイバセンサに沿った位置の関数としての測定された位相微分及び曲率のグラフを示す。
図7図7は、図6に基づく、二乗曲率の関数としての位相微分のグラフを示す。
図8図8は、高曲率領域における光ファイバセンサの様々なコアの位相微分のグラフを示す。
図9図9は光ファイバセンサの形状を表すグラフを示すもので、a)は、光ファイバセンサが16.7mmの曲率半径のループを有すると共に形状再構成が従来の方法で実行された場合を示し、b)は、光ファイバセンサがa)と同じループを有すると共に形状再構成が本発明による方法で実行された場合を示し、c)は、光ファイバセンサが従来の方法により測定可能な最小半径よりも小さい半径の曲率を有する場合を示し、d)は、光ファイバセンサがc)におけるのと同じ曲率を有する一方、形状再構成が本発明による方法で実行された場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、光ファイバセンサ12の形状を表すように構成されたシステム10の部分を概略的に示している。
【0042】
システム10は、光ファイバセンサ12に質問し(問い合わせ)て該ファイバセンサ12の形状を再構成するための、マルチチャネル光周波数領域反射測定法(OFDR)ベースの分布歪検知システムとして構成され得る。該光ファイバセンサは、複数のファイバコア14、16、18、20を、本実施形態においては1つの中心コア16及び3つの外側コア14、18、20を有する4つのコアを埋め込んだものであり得る。光ファイバセンサ12は、光学形状感知の分野で知られている標準的なファイバセンサであり得る。
【0043】
図2は、光ファイバセンサ12の一部の長さ及びコア14、16、18、20を示す。図3は、光ファイバセンサ12の長手方向中心軸に垂直な平面における該光ファイバセンサ12の断面を示す。外側コア14、18、20は、中心コア16の周りに螺旋状に巻かれている。中心コア16は、当該光ファイバセンサ12の中心軸上に配置されている。外側コア14、18、20は、光ファイバセンサ12の長手方向中心軸の周りにおいて方位角方向に互いに角度的に隔てられている。該長手方向中心軸は中心コア16と一致する。本実施形態における4つのコアの数によれば、隣接する外側コア間の角度間隔は120°であろう。図3において、aは中心からの外側コアの距離を示す。距離aは、全ての外側コア14、18、20について同じであってもよいが、異なってもよい。
【0044】
再び図1を参照すると、システム10は質問ユニット21及び再構成ユニット23を備える。質問ユニット21及び再構成ユニット23は、図1に示されるように1つの装置として統合することができる。質問ユニット21は調整可能な光源22を有することができ、該調整可能光源は或る範囲の光周波数(スキャン波長範囲とも呼ばれる)を介して掃引され得る。光源22により放出された光は、光ファイバセンサ12のファイバコア14、16、18、20の数に従った光チャネル24a、24b、24c、24dを有する光干渉ネットワーク24に導入される。光ファイバセンサ12が3以下又は5以上のコアを有する場合、光干渉ネットワーク24は、対応する一層少ない又は一層多い数の光チャネルを有し得る。
【0045】
調整可能光源22が光周波数の或る範囲にわたって掃引される場合、各チャネル24a、24b、24c、24d、したがって光ファイバセンサ12の各ファイバコア14、16、18、20は工学的に同時且つ独立に質問され(問い合わさ)、ファイバコア14、16、18、20の各々から戻された反射スペクトルに基づく干渉計信号が、対応する光検出器25を介して処理ユニット又はデータ取得ユニット26に送られる。該処理ユニットは、更に、コア14、16、18、20からの分布歪測定値からファイバセンサ12の3D形状を再構成することができる。該再構成された形状は、ディスプレイユニット27上に視覚的に表示され得る。システム10は、特に、本開示による方法を実行するように構成される。
【0046】
光ファイバセンサ12の一実施形態において、ファイバセンサコア14、16、18、20は、屈折率の周期的変化により形成されるファイバセンサブラッググレーティング(FBG)を有することができる。説明を簡単にするために、ここでは、単一の共振(共鳴)波長を有するFBGが考察される。FBGは、該FBGのグレーティング周期に依存する特定の波長(共振波長)の光を反射する一方、全ての他の波長を透過する。光ファイバセンサ12の曲がりにより、グレーティング周期は歪の影響を受け、当該ファイバセンサに沿う如何なる位置の反射波長の測定値も、ファイバセンサ12の局所的な歪を決定することを可能にする。
【0047】
光ファイバセンサ12の形状を表す方法において、該ファイバセンサ12のコア14、16、18、20は、光源22により供給される入射光波により光学的に質問される。光ファイバセンサ12の光学的質問は、原則として、ファイバセンサ12全体の三次元形状をリアルタイムで再構成するために必要とされる情報を提供する。適切な基準歪が与えられた場合、ファイバセンサ12全体の正確な向き及び位置をリアルタイムで知ることが可能である。
【0048】
歪及び温度に対するコアの応答は、システム10により、干渉計ネットワーク24からの光信号の位相差として、光ファイバセンサ12に沿った遅延(位置)の関数として測定される。これら位相差は、当該光ファイバセンサが明確に定まった形状、例えば完全に真っ直ぐな形状にある場合の基準測定値に対して取得される。該基準測定値に対するコア14、16、18、20の位相差から、各コアに関して歪及び温度差を推定することができる。歪信号は、2つの直交する方向における曲げ歪、並びに捻れ歪及びファイバセンサ12の長手方向の歪である軸歪の和であろう。これらの4つの位置依存性の量から、ファイバセンサ12は再構成することができる。
【0049】
このように、光ファイバセンサ12の形状は、該ファイバセンサ12内部の幾つかのコア14、16、18、20に関して測定された位置依存性の歪信号から計算できる。ファイバセンサ12を或るコア及び該ファイバセンサ12の中心により定められる面内で曲げると、該コアがファイバセンサ12の中心から或る距離に配置されている場合、該コアには:
【数1】
なる歪が生じ、ここで、εは当該ファイバセンサの中心から距離aにある該コアが、rなる半径の曲げにより受ける歪である。該曲げ歪は、ここでは、ファイバセンサ12の真っ直ぐで歪のない状態に対して測定される。該歪の大きさは、ファイバセンサ12のコアから受光される反射光のスペクトルシフトの量から推定できる。ファイバセンサ12が検知エレメントとしてFBGを含む場合、該FBGの周期的性質により、このファイバセンサ12は1つの特定の波長、すなわち共振波長の光を反射するであろう。ファイバセンサコアが基準測定値に対して引き伸ばされる(正に歪まされる)場合、FBG の周期性は増加し、共振波長が増加する。圧縮的な(負の)歪の場合、FBGの周期性は減少し、共振波長が減少する。曲率半径が小さいほど、共振波長のシフトδλ(当該曲げにおけるコアの位置に依存して、正又は負の何れかの方向)は大きくなる:
【数2】
ここで、λは歪のない状況におけるFBGの共振波長であり、ξは、ブラッグ周期と波長との間の関係に影響を与える屈折率の歪による変化を考慮する歪光学数(例えば、約0.8であり得る)である。式(2)におけるsin関数は、ファイバセンサ中心の周りに螺旋状に巻き付けられるにつれての外側コア14、18、又は20の変化する位置を記述する。zはファイバセンサ12の長さに沿った位置である。θtwistは各々のコアの累積的捻り角であり、紡がれたファイバセンサにおける本来的に存在する捻れ及び外部から加えられた捻れの和である。例えば、メートル当たり50巻のファイバセンサの場合、dθtwist/dz=314rad/mである。φは、曲げ平面の向き及び基準位置におけるコアの角度に関係するオフセット角度である。明確にするために、式(2)では曲げによる歪のみが仮定されている。
【0050】
光ファイバセンサ12のような光ファイバセンサが、例えばカテーテル又はガイドワイヤ等の医療装置において使用される場合、該装置は、その取り扱い中に形状を変化させるであろう。例えば、当該装置が人間の脈管構造に導入するためのカテーテルである場合、該装置、したがって光ファイバセンサ12は自身の長さに沿って曲げを受け、該曲げは非常に小さくなり得る曲率半径を有する可能性がある。しかしながら、光学的形状感知技術では、光ファイバセンサ12の最小の測定可能曲げ半径に関係する限界が存在する。曲率半径が外側コアを質問することにより測定できる最小曲率半径よりも小さくなるファイバセンサ12に沿う区間は、本開示では範囲外区間と称される。
【0051】
測定されるスペクトル内に依然として共振を有し、したがって測定することができる当該光ファイバセンサの最小曲げ半径rminは、
【数3】
により与えられる。
【0052】
例えば、Δλ=17nmのスキャン範囲及びλ=1545nm、ξ=0.8、a=35μmの外側コアの場合、測定できる最小曲率半径は5.1mmであろう。ファイバセンサ12が小さい曲率半径に曲げられる場合、所与のスキャン波長範囲及び中心からの所与のコア距離に対して、曲げ面にある外側コアについて信号は測定されない。
【0053】
図4は、ファイバセンサ12が短い距離にわたってスキャン波長範囲内で検出するには小さすぎる曲率半径で曲げられる状況の一例を示している。図4のa)は、当該光ファイバセンサの該ファイバセンサに沿う曲率を示している。図4のb)は、ここではコア0から3として示される様々なコアの対応する曲げ信号を示し、ここでコア0は中心コアであり、コア1、2及び3は外側コアである。図4のb)における点線はスキャン波長範囲Δλを超えた測定不可能な信号を表し、ここでは波長シフトδλが該スキャン波長範囲を超える。当該スキャン波長範囲は、図4のb)において灰色の背景で示されている。図4のb)からわかるように、外側コア1、2、3から受信された信号の正弦波挙動は、鋭い曲がりが延在する距離が小さいため、有限の範囲の位置にわたってしか存在しない。更に、歪が波長範囲を超える場合、信号は不連続になる。
【0054】
式(3)から、スキャン波長範囲を増加させ、及び/又は中心からの外側コアの距離aを減少させることが素直であろう。しかしながら、本開示は、スキャン波長範囲を増加させ及び中心からの外側コアの距離を減少させることとは異なるアプローチを提供して、全長にわたり、したがってファイバセンサ12の曲率半径が最小測定可能曲率半径よりも小さい該ファイバセンサに沿う範囲外区間においてもファイバセンサ12の高精度形状再構成を可能にする。本開示による方法は、外側コアの数の冗長性も必要とせず、例えば、1つの中心コア及び3つの外側コアを有する標準的な光ファイバセンサに対しても機能する。本開示は、標準的な光ファイバセンサ設計の使用に限定されるものではないと理解されたい。
【0055】
本開示による光ファイバセンサ12等の光ファイバセンサの形状を表す方法は、ファイバセンサに沿った範囲外区間の形状を、ファイバセンサ(12)の曲率を好ましくは少なくとも1つの範囲外区間に沿う複数の位置において該範囲外区間内の中心コアの光学的質問から受信される干渉計信号から計算することに基づいて、再構成するステップを含む。形状再構成は、更に、当該範囲外区間に隣接する1つ又は2つの区間からの同じタイプの1以上の量を補間することから得られる1以上の量に基づくものとすることができる。
【0056】
以下の説明では、範囲外区間におけるファイバセンサ12の形状再構成のために、該範囲外区間内の中心コアの光学的質問から受信された信号から得られる量を使用することが、より詳細に説明されるであろう。
【0057】
曲げにより印加される応力と歪との間の関係には、二次非線形効果が存在する。小さな量の歪の場合、この影響は無視できるが、歪値が大きい場合は、該効果は良好に観察され得る。結果として、中心コアの信号は曲率による歪の測定可能な貢献度をもたらし、このことから、コア14、18、20等の外側コアの共振波長がスキャン波長範囲を超えてシフトされるという事実にもかかわらず曲げ半径を推定できる。このことは、以下のように説明できる。
【0058】
少量の応力σ(単位断面積当たりの力の量)の場合、結果として生じる歪(相対伸張)との関係は、ヤング率と呼ばれる比例定数Eに対して線形である。大きな歪の場合、ヤング率は次式で与えられる歪に依存する:
【数4】
【0059】
量Eは、小さな歪値に対するヤング率である。非線形項γε/2はヤング率の歪依存性を記述し、γは比例定数である。定常状態において、断面にわたる応力σ=E(ε+γ/2ε/2)は常にゼロでなければならず、そうでないと、当該ファイバセンサは変形及び/又は移動するであろう。曲げを伴うファイバセンサの場合、線形項のみを考慮すると、ゼロの積分応力の要件は、断面の正確に半分が負の(圧縮)歪を有する一方、他方の半分が正の(伸張)歪を有する場合に満たされる。ゼロ歪は、断面の丁度中間である。非線形項を含めることは、伸張部分における応力の絶対値を増加すると共に圧縮部分における応力の絶対値を減少させる二次項を補償するために、ゼロ歪の中立線を伸張部分に向かってシフトさせる(γ>0)。これらの側面のグラフ的表示が、図5のa)及びb)に示されている。中立線のシフトdは曲率に依存する:d=(1/8)γκR。ここで、量Rはファイバセンサの半径であり、κは曲率である。曲げにより、ファイバセンサの中心における歪はゼロに等しくはならず、ε(0)=κd=(1/8)γκとなる。このことは、ファイバセンサの中心コアが曲率に2次で依存する歪を受けることを意味する。この信号を測定し、スキャン波長範囲を超える領域、すなわち図4のb)に点線で示した範囲外区間における外部コアの信号を復元するために使用できる。次いで、ファイバセンサ12の形状を、過度に高い曲率(すなわち、最小測定可能曲げ半径未満の曲げ半径)の領域においても計算することができる。
【0060】
中心コア上の信号から曲率を評価できるようにするには、二乗された曲率とコモンモード歪との間の比例定数β、すなわち係数(1/8)γRを知る必要がある。係数βは、当該光ファイバセンサに対して実行される較正手順により見つけることができる。該較正は以下のように実行され得る。当該ファイバセンサは、小さな関心領域にわたって、結果として生じる信号が波長スキャン範囲内、すなわち外側コアに対しても維持されるように種々の曲げ半径に曲げられる。合計で4つのコアの信号から、コモンモード歪及び曲率が計算される。このような測定の一例が、図6に示されている。図6では、形状の曲率及びコモンモード位相微分(導関数)が、ファイバセンサに沿う位置に対してプロットされている。この例においては、小さな半径の曲げにより、曲率は2.15mの位置の周辺で150m-1に達する。図6は、コモンモード歪を算出できるコモンモード位相微分を示している。コモンモード歪と位相微分との間の比例定数は、実際の例において、約-0.106με/(rad/m)であり得る。図6によると、約2.15mの位置において、曲率は150m-1のピークに達し、この例において、位相微分は550rad/mに達する。
【0061】
図7は、図6に示された干渉信号の位相微分、対、図6に示された曲率の2乗として表されたコモンモード歪を示している。図7からわかるように、該グラフはβ=0.025radxmの傾斜と線形である。このことは、5.4のヤング率の歪依存性のγ値に対応する。
【0062】
曲率に線形な曲げ歪だけでなく、曲率に自乗的な二次の曲げ誘起コモンモード歪も考慮すると、ファイバセンサコアに対する歪を表す対応する位相微分は、以下のように書くことができる:
【数5】
【0063】
式(5)において、Δφは当該ファイバセンサの実際の形状の測定値と基準形状(通常は直線形状)との間の位相の差であり、aは該ファイバセンサの中心から各々のコアまでの距離である。SFは曲率と位相微分との間の関係を記述する定数であり、θbendは曲げの方向を示し、θhelixはファイバセンサに固有の外側コアのらせん巻きの角度を表し、θtwistは外部トルクによるファイバセンサの捻れによる付加的角度であり、Δは基準軸に対するファイバセンサの断面における各々のコアの角度的(方位的)位置を表す。式(5)の右辺の第2項は軸方向及び温度歪(すなわち、コモンモード歪)を表す一方、式(5)の最後の項は、曲率の2乗に比例する非線形曲げ誘起歪である。量a、SF、θfelix及びΔは、当該各光ファイバセンサに適用される通常の較正手順で決定され得る。
【0064】
同じ半径Rを持つセンサの場合、比例係数β(上記を参照)は、通常、光ファイバセンサごとに大きく変化することはないであろう。応力/歪の非線形性は、ガラス材料の特性を表すからである。光ファイバセンサにおける種々のコア(例えば、図1及び図2に示されるような4つのコア)の各々について、式(5)のような方程式は、a及びΔの値が、該式(5)の左辺の測定される位相微分と同様に、各コアで異なるであろうという考えで書くことができる。
【0065】
ここで、図8を参照して、コア14、18、20等の外側のコアが所与のスキャン波長範囲内で測定可能であるには大きすぎる歪を受けるような高曲率を有するファイバセンサの領域z<z<zを考察する。該領域z<z<z内において、外側コアの位相は復元される必要がある。点線で示されるように、この領域には測定可能な曲げ信号が存在しないからである。領域z<z1及びz>z2の領域では、外側コアの分布歪の測定値(位相微分)から形状を再構成するための全ての情報は存在する。すなわち、曲げ角度θbend、捻れ角θtwist及び曲率κは、軸方向歪と及び温度によるコモンモード効果d△φcommon/dzと同様に、ファイバセンサに沿った距離の関数として既知である。
【0066】
本開示による形状を表す方法は、範囲外区間における当該ファイバセンサの形状を再構成する場合に、該範囲外区間に隣接する1つ又は2つの区間からの同じタイプの1以上の量を補間することから得られる1以上の量も利用し得る。本例において、当該範囲外区間はzとzとの間の領域である。該補間領域において、曲げ半径は小さく、したがって、当該ファイバセンサが例えばUターン又は捩れ(キンク)よりも大幅には大きくない角度で曲げられる場合、補間の長さも制限されるであろう。したがって、この領域では殆どの量(曲率を除く)は小さな変化を示し、ゆっくりとしか変化しないであろうと仮定することは正当化される。このように、本開示による方法は、z=zとz=zとの間の領域における曲げ角θbend、捻れ角θtwist、及び/又はコモンモード信号d△φcommon/dzを、zの前及び/又はzの後の領域における曲げ角θbend、捻れ角θtwist、及び/又はコモンモード信号d△φcommon/dzから線形補間(特に、線形に補間)することを提案する。ここで、曲げ角度を曲率と混同してはならないことに注意すべきである。
【0067】
式(5)における位相微分は中心コア(図8におけるコア0)については測定できるので、式(5)の全ての量は、曲率κ以外は、測定、較正又は線形補間のいずれかにより分かる。このように、式(5)は、中心コアの領域z<z<z内の全てのノードにおける曲率κについて解くことができる。
【0068】
外側コア(図8におけるコア1、2及び3)に関して、式(5)の全ての量は、該式(5)の左辺の位相微分を除いて、今や既知となる。しかしながら、外側コアに関して、式(5)の右辺の全ての量は、中心コアの歪測定から分かる曲率を含み、既知となるので、式(5)の左辺の位相微分は、領域z<z<zにおける各外側コアについて、前のステップで得られた右辺の量を使用して算出できる。必要に応じて、位相及びその微分が十分に連続するものとなるようにオフセットを追加することができる。
【0069】
かくして、全てのコアの全ての位相が分かるので、当該範囲外区間において形状再構成のための標準的手順を適用できる。
【0070】
本開示による方法は、範囲外区間の開始及び/又は終了を識別するステップも含み得る。範囲外区間の開始及び/又は終了の識別は、以下のように実行され得る。範囲外区間の前の光ファイバセンサの部分において、曲率は増加し、到達可能な最大値に近づき始めるであろう。典型的な質問器の場合、この値は約200m-1であろう。更に、2つの連続するサンプル点の間の位相差の絶対値は、当該光ファイバセンサの同じ部分においてπradまで増加し始める。同様の考察が、当該関心領域を超える光ファイバセンサの部分、すなわち、範囲外区間の終わり以降にも当てはまる。
【0071】
曲率及び位相差の両方に関する、各々、例えば180m-1及び2.8radへの閾値を、位相外れ領域の開始及び終了位置をマークするために都合良く設定することができる。
【0072】
図9を参照して、本開示による方法の有効性を示す実験を説明する。図9のa)及びb)による第1の実験においては、光ファイバセンサが準備され、該光ファイバセンサの先端が、ループが形成されるように該ファイバセンサ上に折り返された。該光ファイバセンサの形状が、本開示による形状再構成において、小さな曲げ半径の補正なしで1回、及び小さな曲げ半径の補正を伴って1回の、2回再構成された。該小さな曲げ半径の補正は、前述したように、曲げに加えられた応力と歪との間の関係における二次非線形効果に基づくものであった。図9のa)及び9b)は、当該ファイバセンサ上に折り返された先端を有する光ファイバセンサの形状の表示を示している。当該ループの領域に存在する最小曲率半径は16.7mmであったので、本開示による小曲げ半径補正なし(図9のa))及び小曲げ半径補正あり(図9のb))の形状表示は差を示さなかった。
【0073】
第2の実験においては、光ファイバセンサの先端が、第1の実験におけるよりも遙かに鋭い曲率で、すなわち2.7mmの最小曲率半径で該ファイバセンサ上に折り返された。図9のd)によれば、当該光ファイバセンサの形状は、本開示による方法を使用する場合に正確に再構成することができた。本開示による方法を使用しない場合、実際の形状は正しく表されず、誤った結果をもたらした。本開示による方法によれば、2.7mmまでもの小さい曲げ半径(最小測定可能曲率半径より約2倍小さい)を持つ光ファイバセンサの形状を、スキャン波長範囲を増加させることなく、中心からの外側コアの距離を減少させることなく、且つ、外側コアの数の冗長性もなしで、高い精度で表すことができる。
【0074】
コンピュータプログラムは、該コンピュータプログラムがシステム10上で実行された場合に、該システム10に本開示による方法のステップを実行させるプログラムコード手段を含む。該コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記憶媒体若しくはソリッドステート媒体等の適切な一時的媒体により記憶/配布することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように、他の形式で配布することもできる。
【0075】
本発明は、図面及び上記記載において詳細に図示及び説明されてきたが、そのような図示及び説明は、解説的又は例示的なものであり、限定するものではないと見なされるべきである。すなわち、本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示及び添付請求項の精査から、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解され、実行され得るものである。
【0076】
請求項において、「有する(含む)」という文言は他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形は複数を除外するものではない。単一の要素又は他のユニットは、請求項に記載されている幾つかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0077】
請求項における如何なる参照記号も、当該範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9