IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許7467776少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法
<>
  • 特許-少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法 図1
  • 特許-少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法 図2
  • 特許-少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法 図3
  • 特許-少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法 図4
  • 特許-少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/10 20060101AFI20240408BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20240408BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B22F5/10
H02K15/12 A
H02K15/02 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023529119
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021081690
(87)【国際公開番号】W WO2022112038
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】20209854.7
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】シュー,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ソレル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー,ロルフ
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-157910(JP,A)
【文献】特開2008-199831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00 - 8/00
H02K 1/00 - 1/16
H02K 1/18 - 1/26
H02K 1/28 - 1/34
H02K 15/00 - 15/02
H02K 15/04 - 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーン体(52)から少なくとも1つの空隙部(32)を有する材料層(16)を製造する方法であって、
少なくとも1つのバインダ剤を含む第1の懸濁液(36)を、第1のテンプレート(40)の第1の開口部(38)を通して塗布するステップ(34)と、
バインダ剤と第2の材料の固体微粒子とを含有する第2の懸濁液(46)を第2のテンプレート(50)の第2の開口部(48)を通して塗布するステップ(44)であって、塗布された前記第1の懸濁液(36)が前記第2のテンプレート(50)の前記第2の開口部(48)内に完全に収容され、前記第2の懸濁液(46)が前記第1の懸濁液(36)を完全に取り囲んでいる、ステップ(44)と、
前記懸濁液(36、46)を含有するグリーン体(52)を焼結するステップ(54)であって、該焼結するプロセスによって前記第1の懸濁液(36)が蒸発されて、前記空隙部(32)が利用可能となり、前記第2の懸濁液(46)中の固体微粒子の永久的な結合が得られる、ステップ(54)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の懸濁液(36)を塗布するステップ(34)の後に、及び/又は、前記第2の懸濁液(46)を塗布するステップ(44)の後に、前記グリーン体(52)が熱供給により乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のテンプレート(40)が略円形の開口部(38)を有し、前記焼結するステップ(54)中に前記第1の懸濁液(36)の蒸発により前記材料層(16)内に略円形の空隙部(32)が形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の懸濁液(36)が前記第1のテンプレート(40)を通して塗布されるよりも厚く、前記第2の懸濁液(46)が前記第2のテンプレート(50)を通して塗布される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結するステップの前に、前記懸濁液(36、46)の一部が、切り取られる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の材料が磁性金属材料を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の懸濁液(46)の塗布(44)の後に、前記第1の懸濁液(36)を第3のテンプレート(66)の第3の開口部(64)を介して再塗布するステップ(62)であって、前記第2のテンプレート(50)の前記第2の開口部(48)が前記第3のテンプレート(66)の前記第3の開口部(64)内に少なくとも部分的に含まれており、前記第3のテンプレート(66)を用いて塗布された前記第1の懸濁液(36)が、前記第2のテンプレート(50)を用いて塗布された前記第2の懸濁液(46)を少なくとも部分的に取り囲んでいる、ステップ(62)と、
第5のテンプレート(80)の第5の開口部(78)を通して前記第2の懸濁液(46)を再塗布するステップ(76)であって、前記第3のテンプレート(66)の前記第3の開口部(64)が前記第5のテンプレート(80)の前記第5の開口部(78)内に少なくとも部分的に含まれており、前記第5のテンプレート(80)を用いて塗布された前記第2の懸濁液(46)が前記第3のテンプレート(66)を用いて塗布された前記第1の懸濁液(36)を少なくとも部分的に取り囲んでいる、ステップ(76)と、
を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第3のテンプレート(66)が、前記第1の懸濁液(36)の蒸発によって前記空隙部(32)の周りに他の複数の空隙部(58)が同心状に配置されて形成されるように、作られている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の懸濁液(36)を再塗布するステップ(62)の後に、バインダ剤と第3の材料の固体微粒子とを含む第3の懸濁液(70)を第4のテンプレート(74)の第4の開口部(72)を通して塗布するステップであって、前記第3の材料は前記第2の材料とは異なるものであり、前記第4のテンプレート(74)の前記第4の開口部(72)が前記第3のテンプレート(66)の前記第3の開口部(64)内に少なくとも部分的に含まれており、前記第4のテンプレート(74)を用いて塗布された前記第3の懸濁液(70)が前記第3のテンプレート(66)を用いて塗布された前記第1の懸濁液(36)を少なくとも部分的に取り囲んでいる、ステップと、
前記複数の懸濁液(36、46、70)を含むグリーン体(52)を焼結するステップであって、焼結するプロセスによって、前記第2の懸濁液(46)及び前記第3の懸濁液(70)の固体微粒子の永久的な結合が得られ、前記第2の懸濁液(46)の固体微粒子を有する領域と、これに隣接する前記第3の懸濁液(70)の固体微粒子を有する領域と、が材料結合的に接続される、ステップと、
を有する請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の材料が非磁性金属材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
10μm~300μmの層厚を有する材料層(16)が製造される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの層側面(28)に電気絶縁コーティング(30)が塗布される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの層側面(28)に電気絶縁ラッカーが塗布される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
回転電気機械(2)のロータ(6)又はステータ(8)用の材料層構造体の製造方法であって、複数の材料層(16)の製造を含む方法において、
前記複数の材料層(16)のうち少なくとも1つが請求項1から13のいずれか1項に従って製造され、前記複数の材料層(16)が積層されて形成される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーン体から少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、回転電気機械のロータまたはステータ用の材料層構造体の製造方法に関する。
【0003】
回転電気機械では、渦電流の伝搬を抑制するために、積層された電気鉄板で作られた積層コアが使用されるのが普通である。そのような回転電気機械は、例えば、モータ及び発電機である。例えば、軟磁性材料、特に鉄を含む電気鉄板は、通常、大きな圧延シートから切り出されるか又は打ち抜かれる。次いで、このシートをパッケージし、積層コアを形成する。現在のところ、この種の従来の製造方法を用いて100μm未満の層厚を有するシートを工業的規模で製造することは不可能である。また、大きなシートからこれらのシートを切り取ったり打ち抜いたりすると、廃棄物が発生する。
【0004】
特許文献1には、材料層の層中心に配置された回転軸を中心とする回転方向を有する発電回転機械のロータ用の材料層が記載されており、該材料層は層の略中心に配置された材料空隙部を有し、該材料層は第1の領域を有し、該第1の領域は第1の強度を有する第1の材料を有し、該材料層は該層中心に対して同心状に配置された略環状の第2の領域を有し、該第2の領域は第1の強度よりも強い第2の強度を有する第2の材料を有し、該第1の材料と該第2の材料とは材料結合により接続されている。この発明は、さらに、材料層構造体および材料層の製造方法に関する。
【0005】
特許文献2には、第1のグリーン体が第1の材料から付加製造法で作られ、この第1のグリーン体が第1の熱プロセスによって熱的に前処理される製造方法が記載されている。第2のグリーン体は、第1の材料とは異なる第2の材料から付加製造法で作られる。熱的に前処理された第1のグリーン体及び第2のグリーン体が第2の熱的プロセスを用いて一緒に処理されて、金属の対象物が得られる。
【0006】
特許文献3には、0.5~500μmの層厚を有する材料層を製造するための方法が記載されており、少なくとも1つのバインダ剤及び固体微粒子を有する懸濁液を、グリーン体を得るためにテンプレートを通してベース面上に塗布するステップと、特にバインダ除去によってグリーン体からバインダを追い出すステップと、加熱によって、及び/又は、加圧によって、特に焼結によって固体微粒子の永久的な結合を得るステップと、を有する。
【0007】
特許文献4には、ステータ及びロータ及び/又は電気コイルを備えた電気エネルギー変換器が記載されている。このステータ及び/又はロータ及び/又は少なくとも1つの電気コイルは、3次元のモノリシック要素として形成されており、互いに焼結された導電性の、透磁性の、非透磁性の、非導電性の、磁性の、及び/又は、磁化可能な材料で作られている。
【0008】
少なくとも1つの開口部により材料層に印刷するには、例えばスクリーンとして形成された複雑に構造化されたテンプレートが必要である。このようなテンプレートは高価であり、製造が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2020/011821A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第3725435A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3595148A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011109129A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の課題は、従来技術よりもコスト的に有利な、少なくとも1つの空隙部を有する材料層の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、グリーン体から少なくとも1つの空隙部を有する材料層を製造するための、少なくとも1つのバインダ剤を含む第1の懸濁液を第1のテンプレートの第1の開口部を通して塗布するステップと、バインダ剤と第2の材料の固体微粒子とを含む第2の懸濁液を第2のテンプレートの第2の開口部を通して塗布するステップであって、この場合、第1のテンプレートの第1の開口部は第2のテンプレートの第2の開口部に完全に含まれており、その面内で第2の懸濁液は第1の懸濁液を完全に囲んでいる、ステップと、これらの懸濁液を含むグリーン体を焼結するステップであって、ここで、この焼結ステップにより第1の懸濁液が蒸発されて、空隙部が利用可能となり、第2の懸濁液内の固体微粒子の永久的な結合が得られる、ステップと、を有する方法により解決される。
【0012】
さらに、この課題は本発明により、回転電気機械のロータまたはステータ用の材料層構造体を製作するための複数の材料層を製造することを含む方法によって解決され、この場合、前記複数の材料層のうちの少なくとも1つは上述の方法によって製造され、これらの材料層が積層して構成される。
【0013】
前記材料層の製造方法に関して以下に記載される利点および好ましい実施形態は、材料層構造体の製造方法にも適用することができる。
【0014】
本発明の基本的な考え方は、回転電気機械用の積層コアに使用することができる、少なくとも1つの空隙部を有する材料層が、例えば、安価で簡単なテンプレートを用いた改善されたスクリーン印刷法によって製造される、ということにある。このスクリーン印刷は少なくとも2つのテンプレートを用いて実施され、これらのテンプレートはそれぞれ材料層のための懸濁液を塗布するための開口部を有する。まず最初に、少なくとも1つのバインダ剤を含む第1の懸濁液を塗布する。この第1の懸濁液は位置マーカー材料として機能し、例えば、特に有機のバインダポリマを含有する。オプション的に、この第1の懸濁液は、さらに、例えば、例えば100℃~250℃の低温で分離可能で、したがって蒸発させることができる有機ポリマで生成された第1の材料からなる固体微粒子を含有している。これに代えて、第1の懸濁液の第1の材料は、少なくとも焼結しにくい材料、例えば、グラファイト粉末、酸化イットリウム、AlN、YAGまたは酸化マグネシウムから製造され、この場合、この少なくとも焼結しにくい固体微粒子の永久的な結合が形成されていないので、この少なくとも焼結しにくい材料は、バインダ剤を追い出すことによって蒸発させることができる。その次のステップでは、バインダ剤と第2の材料の固体微粒子とを含む第2の懸濁液が塗布される。第2の懸濁液の、第2の材料で作られた固体微粒子は、例えば強磁性材料、特に鉄または磁性鉄合金を含有している。
【0015】
第1の懸濁液は第1のテンプレートの第1の開口部を通して塗布され、一方、第2の懸濁液は第2のテンプレートの第2の開口部を通して塗布される。第1のテンプレートの第1の開口部は、第2の懸濁液が第1の懸濁液を完全に取り囲むように、第2のテンプレートの第2の開口部内に完全に収容されている。第1のテンプレートの第1の開口部が第2のテンプレートの第2の開口部内に完全に収容されているということは、第1の開口部が完全に第2の開口部の面内に存在することを意味する。特に、それぞれのテンプレートは、印刷される各材料層に対してただ一つの開口部を有する。1つのベース面上で、複数の特に同一の開口部を有する1つのテンプレートを用いて、複数の特に同一の材料層を同時に印刷することができる。
【0016】
次のステップではこれら複数の懸濁液を含むグリーン体を焼結する、この場合、第1の懸濁液を焼結プロセスによって蒸発させ、第2の懸濁液中の固体微粒子の永久的な結合が得られる。この関連において、特に、この焼結には、第1の懸濁液のバインダ剤、及び、場合によっては別の蒸発性成分を追い出すためのバインダ除去プロセスと、それに続く本来の焼結プロセスとが含まれる。このバインダ除去は、例えば300℃~600℃の温度で行われ、一方、本来の焼結プロセスは、例えば700℃~1350℃の温度で行われる。
【0017】
このような印刷方法により、製造が容易であり、したがって安価なテンプレートの使用が可能となる。さらに複数のテンプレートを追加することにより、複数の材料からなる複数の材料層を容易かつ安価に製造することができる。
【0018】
別の実施形態では、第1の懸濁液の塗布の後に、特に直後に、及び/又は、第2の懸濁液の塗布の後に、特に直後に、グリーン体が熱供給により乾燥される。この乾燥は、例えば、加熱ランプによって行われる。例えば、個々の印刷ステップの間ではそれぞれ例えば最大で60秒の短時間の乾燥が行われ、一方、懸濁液の塗布後にはより長時間の例えば最大で60分の乾燥ステップが行われる。特に、このような短い乾燥時間により、新しく塗布された懸濁液が固定され、後続の印刷ステップにおける塗りつぶしが防止され、一方、最終のより長時間の乾燥ステップにより、例えば、残留しているかもしれない溶媒が追い出される。
【0019】
別の実施形態では、第1のテンプレートが略円形の開口部を有し、この場合、焼結中に、第1の懸濁液の蒸発によりその材料層内に略円形の空隙部が形成される。このような略円形の開口部は、例えば、シャフトを収容するのに好適である。蒸発性の懸濁液により開口部を形成することにより、例えばシャフトを収容する際に、高い精度と、それによる正確な嵌め合いが可能になる。
【0020】
別の実施形態では、第1の懸濁液が第1のテンプレートを通して塗布されるよりも厚く、第2の懸濁液が第2のテンプレートを通して塗布される。特に、テンプレートの高さは、予め存在する印刷パターンがベース領域から削り取られるのを防止するために、例えば1%から10%の範囲で、特に1%から5%の範囲で、部分印刷から部分印刷まで逐次増加する。
【0021】
別の実施形態では、焼結前に、懸濁液の一部が、グリーン体が載置されている平坦なベース面に対して特に平行に切り取られる。例えば、グリーン体の上部領域は切除法によって除去される。この上部領域はグリーン体の全厚さの例えば最大20%、特に最大50%である。この切除法は、例えば、サーマルソーイング(Thermosaegen)とも呼ばれるホットワイヤ切断、ドライグラインディング、ビブラトーム(Vibratomie)とも呼ばれる振動切断、または凍結切断によって実現される。あるいは、この切除は、加熱された、階段状の「ドクターブレード(Doctor Blades)」によって、又は、エッチングとそれに続く拭き取りによって行われる。特に平行な切除により、非常に薄い層厚を達成することが可能となる。
【0022】
別の実施形態では、第2の材料が磁性金属材料、特に磁性鉄または磁性鉄合金を含む。このような材料は、特に焼結に有利であることが経験的に示されている。
【0023】
別の実施形態では、本方法が以下の別のステップ、すなわち第2の懸濁液の塗布後に、第3のテンプレートの第3の開口部を通して、第1の懸濁液を再塗布するステップであって、この場合、第2のテンプレートの第2の開口部は第3のテンプレートの第3の開口部内に少なくとも部分的に含まれており、第3のテンプレートを用いて塗布された第1の懸濁液は第2のテンプレートを用いて塗布された第2の懸濁液を少なくとも部分的に取り囲んでいる、ステップと、第5のテンプレートの第5の開口部を通して第2の懸濁液を再塗布するステップであって、この場合、第3プレートの第3の開口部は第5のテンプレートの第5の開口部内に少なくとも部分的に含まれており、第5のテンプレートを用いて塗布された第2の懸濁液は第3のテンプレートを用いて塗布された第1の懸濁液を少なくとも部分的に取り囲んでいる、ステップと、を含む。このような印刷方法により、製造が簡単で、したがって安価なテンプレートの使用が可能である。
【0024】
別の実施形態では、第1の懸濁液の蒸発によってその空隙部の周りに他の複数の空隙部が同心状に配置されて形成されるように、第3のテンプレートが製作されている。このような複数の他の空隙部内に、同期機として運転するための永久磁石、又は、非同期機として運転するための短絡リングのバーを配置することができる。このような印刷方法により、様々なロータアーキテクチャのための複数の材料層をフレキシブルに付加製造法で製造することができる。
【0025】
別の実施形態では、本方法が以下のさらなるステップ、すなわち第1の懸濁液を再塗布した後に、バインダ剤と第3の材料の固体微粒子とを含む第3の懸濁液を第4のテンプレートの第4の開口部を通して塗布するステップであって、この場合、第3の材料は第2の材料とは異なるものであり、さらにこの場合、第4のテンプレートの第4の開口部は第3のテンプレートの第3の開口部内に少なくとも部分的に含まれており、第4のテンプレートを用いて塗布された第3の懸濁液は第3のテンプレートを用いて塗布された第1の懸濁液を少なくとも部分的に取り囲んでいる、ステップと、これらの複数の懸濁液を含むグリーン体を焼結するステップであって、この場合、この焼結プロセスによって、第2の懸濁液及び第3の懸濁液の固体微粒子の永久的な結合が得られ、第2の懸濁液の固体微粒子を有する領域と、これに隣接する第3の懸濁液の固体微粒子を有する領域とが材料結合的に接続される、ステップと、を有する。第2及び第3の材料は例えば金属材料として作られており、これらの電気伝導度及び/又は熱伝導度及び/又は磁気特性は異なっている。このような材料結合的な接続により、材料層内部における高い機械的安定性が得られる。複数のテンプレートを追加することにより、複数の材料からなる複数の材料層を容易かつ安価に製造することができる。
【0026】
別の実施形態では、第3の材料が非磁性金属材料、特に非磁性鉄又は非磁性鉄合金を含む。例えば、第3の材料はオーステナイトを含む。特にこの第3の材料は、ロータ積層コアに用いる場合に、例えば他の複数の空隙部内に配置された複数の永久磁石間の磁気的短絡を防止するように、材料層内に配置される。複数の異なる材料から構成される材料層を、この種の方法で容易かつ安価に製造することができる。
【0027】
別の実施形態では、10μm~300μm、特に10μm~100μmの層厚を有する材料層が製造される。このような層厚では、例えば回転電気機械に用いられる場合に十分な渦電流抑制効果が得られる。
【0028】
別の実施形態では、少なくとも1つの層側面に電気絶縁コーティングが塗布される。このような絶縁コーティングは、例えば陽極酸化、すなわち、制御された酸化変換によって生成され、この場合、この絶縁コーティングにより、ある材料層から別の材料層への電気伝導が防止される。
【0029】
別の実施形態では、層の少なくとも1つの側面に電気絶縁ラッカーが塗布される。このラッカー、特に焼付ワニスは、絶縁性が良好であり、薄く塗布することができるので、高い積層率が達成できる。
【0030】
以下では、図面に示された実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】回転電気機械の断面模式図
図2】材料層の第1の実施形態の模式図
図3】材料層を製造する第1の方法の模式図
図4】材料層の第2の実施形態の模式図
図5】材料層を製造する第2の方法の模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下で説明する複数の実施例は本発明の好ましい実施形態である。これらの実施例において、各実施形態の記載された構成要素は、それぞれが個別の、互いに独立していると見なすべき本発明の個々の特徴を表し、これらの特徴も互いに独立して本発明を発展させるものであり、したがって、個別にも、又は、示された組み合わせ以外でも、本発明の構成要素と見なすことができる。さらに、記載された実施形態は、本発明の上述の特徴のさらなる特徴によっても補完することができる。同じ参照記号は異なる図において同じ意味を有する。
【0033】
図1は、回転電気機械2の断面模式図である。モータ及び/又は発電機として構成することができる回転電気機械2は、回転軸線4を中心に回転することができるロータ6と、ステータ8とを有し、このステータ8は、一例として、ロータ6の半径方向外側に配置されている。回転軸線4は、軸方向、半径方向および周方向を規定する。ロータ6とステータ8との間には流体ギャップ10が形成されており、特にエアーギャップとして作られている。
【0034】
ロータ6は、シャフト12とロータ積層コア14とを有し、ロータ積層コア14は、シャフト12に回り止めして結合されている。ロータ積層コア14は、積層され互いに電気的に絶縁された多数の材料層16を有し、これらの材料層は10μm~300μm、特に10μm~100μmの範囲の第1の層厚d1を有し、強磁性材料、例えば鉄または鉄合金から製造されている。また、ロータ6は同期機として運転するためにロータ積層コア14に接続された複数の永久磁石18を備える。ロータ6は非同期機として運転するために、特に、永久磁石18の代わりに、短絡ケージまたは励磁巻線を有することができる。ロータ6のシャフト12はベアリング20を介して回転可能に配置されている。
【0035】
ステータ8は、ステータ巻線24が収容されたステータ積層コア22を備える。ステータ積層コア22は互いに電気的に絶縁された多数の材料層16を有し、これらの材料層は10μm~300μm、特に10μm~100μmの範囲の第2の層厚d2を有し、強磁性材料、例えば鉄または鉄合金で製造されている。ロータ6及びステータ8は、閉じられたハウジング26内に収容されている。
【0036】
図2は材料層16の第1の実施形態の模式図であり、この材料層は10μm~300μm、特に10μm~100μmの範囲の層厚dを有し、スクリーン印刷により、さらにその次に行われる焼結によって製造されている。図2の材料層16は、ロータ積層コア14またはステータ積層コア22用に構成することができ、少なくとも8mS/mの電気伝導度を有する強磁性材料、例えば鉄または鉄合金から製造される。材料層16の層側面28は電気絶縁コーティング30を有し、これは、例えば積層コア14、22に使用される場合、複数の積層された材料層16を互いに電気的に絶縁するのに適している。電気絶縁コーティング30は、例えば、電気絶縁ラッカー、特に焼付ワニスで製造されている。さらに、電気絶縁コーティング30の最大層厚sは1μmである。さらに、材料層16の重心Sには略円形の空隙部32があり、これは、例えば、シャフト12を収容するのに適している。特に、材料層16は、重心Sに対して回転対称であり、材料層16は、オプションとして、このようなシャフト12の嵌め合い結合のための手段を有しており、この手段は例えばフェザーキーを収容するための溝として製作されている。図2の材料層16の詳細は図1のものと同じである。
【0037】
図3は、略円形の空隙部32を有する材料層16を製作するための第1の方法を模式的に示す。一例として、図2による材料層16の第1の実施形態が実行される。この製造方法には、第1のテンプレート40の円形の第1の開口部38を通して平坦なベース面42上への、少なくとも1つのバインダ剤を含む第1の懸濁液36の塗布34が含まれる。第1の懸濁液36の塗布34の後に、第1の懸濁液36を固定し、従って後続のステップにおける塗りつぶしを防止するために、例えば最大で60秒の短い乾燥ステップが続く。この乾燥は、例えば、熱を加えることによって、特に加熱ランプによって行われる。
【0038】
第1の懸濁液36の塗布34および第1の懸濁液36の短時間の乾燥の後、この製造方法では、バインダ剤と第2の材料の固体微粒子とが含まれた第2の懸濁液46の塗布44が行われる。第2の懸濁液46は、例えば、第2のテンプレート50の円形の第2の開口部48を通して塗布される。この場合、第1のテンプレート40の第1の開口部38は、第2のテンプレート50の第2の開口部48の内部に完全に含まれているので、第2の懸濁液46は第1の懸濁液36を完全に取り囲んでいる。
【0039】
第1の懸濁液36は位置マーカーとして機能し、例えば、バインダ剤ポリマ、特に有機バインダ剤ポリマを含む。この第1の懸濁液は、オプションとして、例えば有機ポリマで作られた第1の材料の固体微粒子を追加的に含有する。このようなポリマは、特に低温、例えば100℃~250℃での熱処理によって分解可能であり、したがって完全に除去することができる。あるいは、第1の懸濁液36内の第1の材料は、少なくとも焼結しにくい材料、例えば、グラファイト粉末、酸化イットリウム、AlN、YAGまたは酸化マグネシウムとして作られ、この場合、この少なくとも焼結しにくい固体微粒子の永久的な結合は形成することができないので、この少なくとも焼結しにくい材料は、バインダ剤を追い出すことによって蒸発させることができる。第2の懸濁液46中の、第2の材料から作られた固体微粒子は、例えば強磁性材料、特に鉄または磁性鉄合金を含有する。第2の懸濁液46の塗布44に続いて、例えば最大で60分のより長い乾燥ステップが行われ、残っている溶媒を追い出し、懸濁液36、46を固定し、グリーン体52を得ることができる。
【0040】
その次のステップにおいて、懸濁液36、46を含むグリーン体52は、略円形の空隙部32を有する材料層16を得るために焼結され、ここで、第1の懸濁液36はこの焼結プロセスによって蒸発され、第2の懸濁液46中の固体微粒子の永久的な結合が得られる。この関連において、焼結には、特に、バインダ剤および場合によっては第1の懸濁液36のような更なる蒸発性成分を追い出すためのバインダ除去、及び、それに続く本来の焼結プロセスが含まれる。バインダ除去は、例えば300℃~600℃の温度で行われ、一方、本来の焼結プロセスは、例えば700℃~1350℃の温度で行われる。バインダ除去は、例えば、300℃~600℃の温度で行われ、一方、本来の焼結プロセスは、例えば700℃~1350℃の温度で行われる。
【0041】
特に、第2の懸濁液46は、第1の懸濁液36が第1のテンプレート40を通して塗布されるよりも厚く第2のテンプレート50を通して塗布され、第2のテンプレート50は、第1のテンプレート40よりも厚く作られている。例えば、第2のテンプレート50は、第1の懸濁液36の平坦なベース面42による切り取りを防止するために、第1のテンプレート40よりも1%から10%の範囲、特に1%から5%の範囲で厚い。例えば、焼結54の前に、懸濁液36、46の一部は、特にグリーン体52が載置される平坦なベース面42に平行に切除される。特に、グリーン体52の上部領域は、ある切除方法によって除去される。この上部領域は、例えば、グリーン体52の全厚の20%まで、特に50%までである。この切除方法は、例えば、サーマルソーイングとも呼ばれるホットワイヤ切断、ドライグラインディング、ビブラトームとも呼ばれる振動切断、または凍結切断によって実現される。あるいは、軟質エラストマー状のグリーン体52の切除は、加熱された階段状の「ドクターブレード」によって、又は、エッチングとそれに続く拭き取りによって行われる。
【0042】
複数の、特に同一の材料層16を、各々が複数の、特に同一の開口部38、48を有するテンプレート40、50を用いて、ベース面42上に同時に印刷することができる。同時に印刷された、特に同一の複数の材料層16を有するそのような構成はN-up印刷(Drucknutzen)と呼ばれる。特に、各テンプレート40、50は、各材料層16に対して周回する輪郭を有する1つの単一の開口部38、48を有する。
【0043】
図4は、略円形の空隙部32を有する材料層16の第2の実施形態の模式図である。ほゞ円形の空隙部32の外側輪郭56が材料層16の重心Sの周りを等距離に走るように配置されている。材料層16はロータ積層コア14のために構成され、金属、特に鉄ベースの材料から製造されている。さらに、一例として、さらに4つの空隙部58が空隙部32の周囲に同心円状に配置され、ここで、4つの空隙部58は、例えば、永久磁石を収容するように構成されている。これら4つの空隙部58の間に、例えば4つの非磁性領域60が空隙部32の周りに同様に同心状に配置されている。非磁性領域60は、複数の別の空隙部58内に配置された永久磁石間の磁気的な短絡を防止するために、これらの別の空隙部58を互いに分離している。材料層16の非磁性領域60は非磁性金属材料、特に非磁性鉄合金、例えばオーステナイトで製造されている。図4の材料層16の詳細は図2のものと同じである。
【0044】
図5は、材料層16を製造する第2の方法の模式図である。材料層16のこの第2の実施形態は例えば図4に基づく。第1の懸濁液36の塗布34及び第2の懸濁液46の塗布44は、図3の製造方法と同様に行われる。図5の製造方法は、第2の懸濁液46の塗布44とその後の例えば最大で60sの短時間の乾燥の後、第1の懸濁液36を再塗布62することを含む。第1の懸濁液36の再塗布62は、第3のテンプレート66の第3の開口部64を通して行われ、この場合、第2のテンプレート50の第2の開口部48は第3のテンプレート66の第3の開口部64の中に部分的に含まれているので、第3のテンプレート66を用いて塗布された第1の懸濁液36が第2のテンプレート50を用いて塗布された第2の懸濁液46を部分的に取り囲んでいる。第3のテンプレート66は、第1の懸濁液36の第1の材料の固体微粒子の蒸発により、空隙部32の周りに同心状にさらなる複数の空隙部58が形成されるように作られており、これら複数のさらなる空隙部は例えば永久磁石を収容するために設けられている。
【0045】
図5の製造方法は、第1の懸濁液36の再塗布62、及び、その後の例えば最大で60秒の短時間の乾燥の後、バインダ剤と第3の材料の固体微粒子とを含有する第3の懸濁液70を塗布68することを含む。第3の懸濁液70の塗布68は、第4のテンプレート74の第4の開口部72を通して行われ、この場合、第3の材料は第2の材料とは異なっている。第3の材料は特に非磁性金属材料、特に非磁性鉄合金、例えばオーステナイトである。第4のテンプレート74の第4の開口部72は第3のテンプレート66の第3の開口部64の中に部分的に含まれているので、第4のテンプレート74を用いて塗布された第3の懸濁液70は、第3のテンプレート66を用いて塗布された第1の懸濁液36を部分的に囲んでいる。特に、第4のテンプレート74によって塗布された第3の懸濁液70は、第3のテンプレート66を用いて塗布された第1の懸濁液36及び第2のテンプレート48を用いて塗布された第2の懸濁液46と接触している。
【0046】
さらに、図5の製造方法は、第3の懸濁液70の塗布68とその後の例えば最大で60秒の短時間の乾燥の後、第5のテンプレート80の第5の開口部78を通した第2の懸濁液46の再塗布76を含む。第4のテンプレート74の第4の開口部72は第5のテンプレート80の第5の開口部78内に部分的に含まれているので、第5のテンプレート80を用いて塗布された第2の懸濁液46は、第4のテンプレート74を用いて塗布された第3の懸濁液70を部分的に囲んでいる。特に、第5のテンプレート80を用いて塗布された第2の懸濁液46は、第4のテンプレート74を用いて塗布された第3の懸濁液70及び第3のテンプレート66を用いて塗布された第1の懸濁液36と接触している。第5のテンプレート80を用いた第2の懸濁液46の再塗布76に続いて、例えば最大で60分のより長い乾燥が行われ、これによって、残った溶媒を追い出し、懸濁液36、46、70を固定し、グリーン体52を得ることができる。
【0047】
これに続いて、図4に記載の材料層16を得るために、懸濁液36、46、70を含有するグリーン体52の焼結54が行われる。ここで、この焼結プロセスによって第1の懸濁液36は蒸発され、第2の懸濁液46および第3の懸濁液70の固体微粒子の永久的な結合が得られる。さらに、この焼結プロセスによって、第2の懸濁液46の固体微粒子を有する領域と、第3の懸濁液70の固体微粒子を有する隣接する領域が材料結合的に接続される。図5の製造方法の詳細は図3のものと同じである。
【0048】
あるいは、図5に記載の製造方法により、かご形ロータのバーを収容するためのさらなる複数の空隙部58を有する材料層16を製造することができる。かご型ロータ用のこのような材料層16の製造においては、第3の懸濁液70の塗布68を省略することができ、この場合には、第2の懸濁液46の再塗布76は第1の懸濁液36の再塗布62の後に行われる。
【0049】
要約すると、本発明は、グリーン体52から少なくとも1つの空隙部32を有する材料層16を製造する方法に関する。従来技術よりも有利なコスト競争力を達成するために、この製造方法が、第1のテンプレート40の第1の開口部38を通して少なくとも1つのバインダ剤を含有する第1の懸濁液36を塗布するステップ34と、第2のテンプレート50の第2の開口部48を通してバインダ剤と第2の材料の固体微粒子とを含有する第2の懸濁液46を塗布するステップ44であって、この場合、第1のテンプレート40の第1の開口部38が第2のテンプレート50の第2の開口部48内に完全に含まれているので、第2の懸濁液46が第1の懸濁液36を完全に囲んでいる、ステップと、懸濁液36、46を含有するグリーン体2を焼結するステップ54であって、この場合、この焼結プロセスによって、第1の懸濁液36が蒸発し、第2の懸濁液46内の固体微粒子の永久的な結合が得られる、ステップと、を備えることが提案される。

図1
図2
図3
図4
図5