(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】遮断器用ばね操作機構の状態監視システム、および遮断器用ばね操作機構の監視方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/00 20060101AFI20240408BHJP
H02B 13/065 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01H33/00 A
H02B13/065 A
(21)【出願番号】P 2023567444
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046564
(87)【国際公開番号】W WO2023112266
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸島 敬
(72)【発明者】
【氏名】小川 慧
(72)【発明者】
【氏名】内田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010873(JP,A)
【文献】特開2016-225262(JP,A)
【文献】国際公開第2021/100188(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/104910(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113460122(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112147494(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30 - 9/52
H01H 33/00 - 33/59
H01H 33/70 - 33/99
H02B 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断器の可動接点を往復駆動して、前記遮断器を遮断状態と投入状態との間で相互に移行させる遮断器用ばね操作機構の状態監視システムであって、
前記ばね操作機構は、
前記可動接点に連結された出力ロッドと、
前記投入状態で蓄勢状態にロックされ、前記遮断器を前記投入状態から前記遮断状態に移行させるときに放勢される遮断ばねと、
前記遮断状態で蓄勢状態にロックされ、前記遮断器を前記遮断状態から前記投入状態に移行させるときに放勢されるとともに前記遮断ばねを蓄勢する投入ばねと、
前記投入ばねを蓄勢する電動機と、
前記投入状態で蓄勢状態の前記遮断ばねのロックを解除する遮断用電磁ソレノイドと、
前記遮断状態で蓄勢状態の前記投入ばねのロックを解除する投入用電磁ソレノイドと、
を備え、
前記出力ロッドの変位を測定する変位センサと、
前記遮断用電磁ソレノイド、前記投入用電磁ソレノイドおよび前記電動機それぞれに流れる電流を測定する電流センサと、
前記変位センサおよび前記電流センサの測定結果を測定値データとして記憶装置に記録する測定値記録部と、
前記ばね操作機構の1次元等価回路網モデルであって、コンポーネントごとのパラメータとコンポーネント間の相互作用関係が規定された1次元等価回路網モデルに前記測定値データを適用することで、前記ばね操作機構の状態を表す計算値データを算出する1次元等価回路網演算部と、
前記測定値データと、前記1次元等価回路網演算部により正常状態のパラメータで算出された正常時計算値データとの比較結果に基づいて、前記ばね操作機構のいずれかのコンポーネントの状態が異常であるか否かを判断する状態判断部と、
前記状態判断部が、いずれかのコンポーネントの状態が異常であると判断した場合に、前記測定値データと前記計算値データとの差が予め設定した範囲内となるように前記パラメータを変更し、前記パラメータを変更した時点で、前記正常状態のパラメータに比して基準以上に異なるパラメータが対応付けられたコンポーネントが異常個所であると特定する異常個所特定部と、
を備える遮断器用ばね操作機構の状態監視システム。
【請求項2】
前記異常個所特定部は、前記状態判断部が、いずれのコンポーネントの状態も異常でないと判断した場合にも、前記測定値データと前記計算値データとの差が近づくように前記パラメータを変更し、
前記変更された前記パラメータの履歴データに基づいて、前記正常状態のパラメータに比して基準以上に異なるものとなることが予想されるタイミングをコンポーネントごとに特定し、前記タイミングに基づいて前記コンポーネントの寿命を推定する寿命推定部をさらに備える、
請求項1に記載の遮断器用ばね操作機構の状態監視システム。
【請求項3】
前記ばね操作機構の周辺温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記1次元等価回路網演算部は、前記周辺温度をさらに前記1次元等価回路網モデルに入力することで、前記計算値データを算出する、
請求項1または請求項2に記載の遮断器用ばね操作機構の状態監視システム。
【請求項4】
前記異常個所特定部は、最適値探索手法による演算手段を備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遮断器用ばね操作機構の状態監視システム。
【請求項5】
状態監視システムが、遮断器の可動接点を往復駆動して、前記遮断器を遮断状態と投入状態との間で相互に移行させる遮断器用ばね操作機構の監視方法であって、
前記ばね操作機構は、
前記可動接点に連結された出力ロッドと、
前記投入状態で蓄勢状態にロックされ、前記遮断器を前記投入状態から前記遮断状態に移行させるときに放勢される遮断ばねと、
前記遮断状態で蓄勢状態にロックされ、前記遮断器を前記遮断状態から前記投入状態に移行させるときに放勢されるとともに前記遮断ばねを蓄勢する投入ばねと、
前記投入ばねを蓄勢する電動機と、
前記投入状態で蓄勢状態の前記遮断ばねのロックを解除する遮断用電磁ソレノイドと、
前記遮断状態で蓄勢状態の前記投入ばねのロックを解除する投入用電磁ソレノイドと、
を備え、
前記出力ロッドの変位を測定する第1測定ステップと、
前記遮断用電磁ソレノイド、前記投入用電磁ソレノイドおよび前記電動機それぞれに流れる電流を測定する第2測定ステップと、
前記測定した前記出力ロッドの変位と前記電流とを測定値データとして記憶装置に記録する測定値記録ステップと、
前記ばね操作機構の1次元等価回路網モデルであって、コンポーネントごとのパラメータとコンポーネント間の相互作用関係が規定された1次元等価回路網モデルに前記測定値データを適用することで、前記ばね操作機構の状態を表す計算値データを算出する1次元等価回路網演算ステップと、
前記測定値データと、前記1次元等価回路網演算ステップにおいて正常状態のパラメータで算出された正常時計算値データとの比較結果に基づいて、前記ばね操作機構のいずれかのコンポーネントの状態が異常であるか否かを判断する状態判断ステップと、
前記状態判断ステップにおいていずれかのコンポーネントの状態が異常であると判断した場合に、前記測定値データと前記計算値データとの差が予め設定した範囲内の条件を満たすように前記パラメータを変更し、前記パラメータを変更した時点で、前記正常状態のパラメータに比して基準以上に異なるパラメータが対応付けられたコンポーネントが異常個所であると特定する異常個所特定ステップと、
を備える遮断器用ばね操作機構の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、遮断器用ばね操作機構の状態監視システム、および遮断器用ばね操作機構の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所、変電所および開閉所には、遮断器、および遮断器を開閉操作する遮断器用操作装置が設置されている。近年では、遮断器用操作装置は、ばね操作機構を採用するものが主流になっている。ばね操作機構には、遮断器の固定接点に接触可能な可動接点を、開路位置である遮断位置と、閉路位置である投入位置と、の間で高速に移動させることが要求される。
【0003】
しかしながら、ばね操作機構は、筐体内部に収納されているため、外観から部品の欠陥を発見することは極めて困難である。このため、ばね操作機構の異常を自動的に検出し、異常個所を特定可能な監視システムが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ばね操作機構の異常を自動的に検出し、かつ異常個所の特定が可能な遮断器用ばね操作機構の状態監視システム、および遮断器用ばね操作機構の監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の遮断器用ばね操作機構の状態監視システムは、遮断器の可動接点を往復駆動して、遮断器を遮断状態と投入状態との間で相互に移行させる遮断器用ばね操作機構の状態監視システムである。ばね操作機構は、出力ロッドと、遮断ばねと、投入ばねと、電動機と、遮断用電磁ソレノイドと、投入用電磁ソレノイドと、を持つ。出力ロッドは、可動接点に連結されている。遮断ばねは、投入状態で蓄勢状態にロックされ、遮断器を投入状態から遮断状態に移行させるときに放勢される。投入ばねは、遮断状態で蓄勢状態にロックされ、遮断器を遮断状態から投入状態に移行させるときに放勢されるとともに遮断ばねを蓄勢する。電動機は、投入ばねを蓄勢する。遮断用電磁ソレノイドは、投入状態で蓄勢状態の遮断ばねのロックを解除する。投入用電磁ソレノイドは、遮断状態で蓄勢状態の投入ばねのロックを解除する。状態監視システムは、変位センサと、電流センサと、測定値記録部と、1次元等価回路網演算部と、状態判断部と、異常個所特定部と、を持つ。変位センサは、出力ロッドの変位を測定する。電流センサは、遮断用電磁ソレノイド、投入用電磁ソレノイドおよび電動機それぞれに流れる電流を測定する。測定値記録部は、変位センサおよび電流センサの測定結果を測定値データとして記憶装置に記録する。1次元等価回路網演算部は、ばね操作機構の1次元等価回路網モデルであって、コンポーネントごとのパラメータとコンポーネント間の相互作用関係が規定された1次元等価回路網モデルに測定値データを適用することで、ばね操作機構の状態を表す計算値データを算出する。状態判断部は、測定値データと、1次元等価回路網演算部により正常状態のパラメータで算出された正常時計算値データとの比較結果に基づいて、ばね操作機構のいずれかのコンポーネントの状態が異常であるか否かを判断する。異常個所特定部は、状態判断部が、いずれかのコンポーネントの状態が異常であると判断した場合に、測定値データと計算値データとの差が予め設定した範囲内となるようにパラメータを変更し、パラメータを変更した時点で、正常状態のパラメータに比して基準以上に異なるパラメータが対応付けられたコンポーネントが異常個所であると特定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る遮断器および遮断器用ばね操作装置を示す図。
【
図2】実施形態に係る遮断器用ばね操作機構の投入状態を示す展開図。
【
図3】実施形態に係る遮断器用ばね操作機構を+Y方向から見た図。
【
図4】実施形態に係る遮断器用ばね操作機構の遮断状態を示す展開図。
【
図5】実施形態に係る遮断器用ばね操作機構において投入動作が完了した直後の状態を示す展開図。
【
図6】
図1~
図5で説明した遮断器用ばね操作機構の1次元等価回路網モデルの一例を示す図。
【
図7】実施形態に係る状態判断部が行う処理について説明するための図。
【
図8】実施形態の第1変形例に係る遮断器および遮断器用ばね操作装置を示す図。
【
図9】実施形態の第2変形例に係る遮断器および遮断器用ばね操作装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の遮断器用ばね操作機構の状態監視システム、および遮断器用ばね操作機構の監視方法を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る遮断器および遮断器用ばね操作装置を示す図である。
図1に示すように、遮断器用ばね操作装置1は、遮断器90を開閉操作する操作装置である。例えば、遮断器90は、ガス遮断器である。遮断器90は、固定接点91と、固定接点91に対して接触および離間可能な可動接点92と、を備える。遮断器用ばね操作装置1は、可動接点92が固定接点91から離間して遮断器90を開極する遮断位置と、可動接点92が固定接点91に接触して遮断器90を閉極する投入位置と、の間で可動接点92を移動させる。遮断器用ばね操作装置1は、遮断器90に機械的に連係した遮断器用ばね操作機構2と、遮断器用ばね操作機構2の状態監視システム100と、を備える。
【0010】
遮断器用ばね操作機構2は、遮断器90の可動接点92を往復駆動して、遮断器90を可動接点92が遮断位置にある遮断状態と可動接点92が投入位置にある投入状態との間で相互に移行させる。遮断器用ばね操作機構2は、可動接点92に連結された出力ロッド4と、可動接点92を投入位置から遮断位置に移動させる駆動源である遮断ばね部10と、遮断ばね部10の作動に連動して駆動される遮断ばね連動部20と、可動接点92を遮断位置から投入位置に移動させる駆動源である投入ばね部30と、投入ばね部30の作動に連動して駆動される投入ばね連動部40と、遮断器用ばね操作機構2の主要な可動部を収容または支持するフレーム6と、を備える。なお、以下の遮断器用ばね操作機構2の構成に関する説明では、特に記載のない限り、投入状態にある遮断器用ばね操作機構2について説明する。
【0011】
ここで、説明の便宜上、+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向、および-Z方向について定義する。-X方向は、+X方向とは反対方向である。+X方向と-X方向とを区別しない場合は、単に「X方向」と称する。+Y方向および-Y方向は、X方向とは直交する方向である。-Y方向は、+Y方向とは反対方向である。+Y方向と-Y方向とを区別しない場合は、単に「Y方向」と称する。+Z方向および-Z方向は、X方向およびY方向とは直交する方向である。-Z方向は、+Z方向とは反対方向である。+Z方向と-Z方向とを区別しない場合は、単に「Z方向」と称する。なお、各図中において、矢印が指向する方向が+方向である。本実施形態では、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向は水平方向である。また、本実施形態では、+Z方向は鉛直上方であり、-Z方向は鉛直下方である。また、以下の説明において、Y方向に延びる軸線回りに回転する回転体の回転方向について、+Y方向から見た回転方向で説明する。
【0012】
フレーム6は、遮断器90の+X方向に配置されている。フレーム6は、遮断器90のタンク93等の不動部に対して固定的に配置されている。
【0013】
出力ロッド4は、X方向に延在している。出力ロッド4の-X方向の第1端部は、遮断器90のタンク93内で可動接点92に連結されている。出力ロッド4は、遮断器90のタンク93をX方向に変位可能に貫通している。出力ロッド4は、+X方向に変位することで可動接点92を投入位置から遮断位置に向けて移動させる。出力ロッド4は、-X方向に変位することで可動接点92を遮断位置から投入位置に向けて移動させる。
【0014】
図2は、実施形態に係る遮断器用ばね操作機構の投入状態を示す展開図である。
図2に示すように、遮断ばね部10は、圧縮コイルばねである遮断ばね11と、遮断ばね11の可動端を受ける遮断ばね受け12と、遮断ばね連動部20に接続された遮断ばねリンク13と、遮断ばね受け12に支持されたダンパ14と、を備える。遮断ばね11は、フレーム6の+Z方向に配置されている。遮断ばね11は、伸縮方向がZ方向に一致するように配置されている。遮断ばね11の下端部は、固定端としてフレーム6に支持されている。遮断ばね11の上端部は、可動端として設けられている。遮断ばね11は、後述する遮断ばねロック機構60によって蓄勢(圧縮)状態にロックされている。遮断ばね受け12は、遮断ばね11の伸縮に伴って遮断ばね11の上端と一体に上下動する。遮断ばねリンク13は、遮断ばね受け12に対して上下動不能に配置されている。遮断ばねリンク13は、フレーム6内に向けて下方に突出している。ダンパ14は、シリンダ15、およびシリンダ15内に並進摺動可能に配置されたピストン16を有する。シリンダ15は、遮断ばね受け12に固定されている。シリンダ15は、遮断ばね11の内側を遮断ばね受け12から下方に突出している。シリンダ15は、遮断ばねリンク13の上端に接続され、遮断ばね受け12と遮断ばねリンク13とを連結している。ピストン16は、シリンダ15および遮断ばね受け12から上方に突出している。ピストン16は、シリンダ15に対して上下動可能とされている。ピストン16の上端は、フレーム6に固定されたストッパ6aに対して下方から対向している。
【0015】
遮断ばね連動部20は、出力ロッド4に連結されたメインリンク21と、遮断ばね部10およびメインリンク21に連結されたメインレバー22と、メインレバー22に連結された主副連結リンク23と、フレーム6に回転可能に支持された第1シャフト24と、第1シャフト24に固定されたサブレバー25、ラッチレバー26およびカムレバー27と、を備える。
【0016】
メインリンク21は、出力ロッド4の+X方向の端部に回動可能に接続された第1接続部21aと、第1接続部21aよりも+X方向の位置でメインレバー22に回動可能に接続された第2接続部21bと、を備える。これにより、メインリンク21は、出力ロッド4およびメインレバー22を連結している。第1接続部21aは、フレーム6の外側に配置されている。第2接続部21bは、フレーム6内に配置されている。
【0017】
メインレバー22は、フレーム6内に配置されている。メインレバー22は、後述する第2シャフト41に軸受を介して支持されている。メインレバー22は、第2シャフト41のY方向に延びる中心軸線Q回りに回動可能に配置されている。メインレバー22は、メインリンク21の第2接続部21bに回動可能に接続された第1アーム22aと、遮断ばねリンク13の下端に回動可能に接続された第2アーム22bと、主副連結リンク23に回動可能に接続された第3アーム22cと、を備える。第1アーム22aは、中心軸線Qよりも+Z方向の位置でメインリンク21の第2接続部21bに接続されている。第2アーム22bは、中心軸線Qよりも-X方向、かつ第1アーム22aとメインリンク21との接続部よりも-Z方向の位置で遮断ばねリンク13に接続されている。第3アーム22cは、中心軸線Qよりも-Z方向、かつ第2アーム22bと遮断ばねリンク13との接続部よりも+X方向の位置で主副連結リンク23に接続されている。メインレバー22は、遮断ばね部10によって右回り方向に付勢されているとともに、遮断ばねロック機構60によって右回り方向の回動を規制されている。
【0018】
主副連結リンク23は、メインレバー22の第3アーム22cに回動可能に接続された第1接続部と、第1接続部よりも-X方向、かつメインレバー22の回動中心(中心軸線Q)寄りの位置でサブレバー25に接続された第2接続部と、を備える。これにより、主副連結リンク23は、メインレバー22およびサブレバー25を連結している。
【0019】
第1シャフト24は、フレーム6に回動可能に支持されている。第1シャフト24は、Y方向に延びる中心軸線Pを有する。中心軸線Pは、メインレバー22の回動中心(中心軸線Q)よりも-X方向に位置している。
【0020】
サブレバー25は、中心軸線P回りを第1シャフト24と一体的に回動する。サブレバー25は、中心軸線Pよりも+方向の位置で、主副連結リンク23に接続されている。
【0021】
ラッチレバー26は、中心軸線P回りを第1シャフト24と一体的に回動する。ラッチレバー26は、サブレバー25よりも-Y方向の位置に配置されている。ラッチレバー26の先端には、ローラ26aが設けられている。ローラ26aは、Y方向に延びる軸線回りを自転可能とされている。
【0022】
カムレバー27は、中心軸線P回りを第1シャフト24と一体的に回動する。カムレバー27は、Y方向においてサブレバー25とラッチレバー26との間に配置されている。カムレバー27の先端には、ローラ27aが設けられている。ローラ27aは、Y方向に延びる軸線回りを自転可能とされている。
【0023】
投入ばね部30は、圧縮コイルばねである投入ばね31と、投入ばね31の可動端を受ける投入ばね受け32と、を備える。投入ばね31は、フレーム6の+Z方向に配置されている。投入ばね31は、遮断ばね11よりも+X方向に配置されている。投入ばね31は、伸縮方向がZ方向に一致するように配置されている。投入ばね31の下端部は、固定端としてフレーム6に支持されている。投入ばね31の上端部は、可動端として設けられている。投入ばね31は、後述する投入ばねロック機構80によって蓄勢(圧縮)状態にロックされている。投入ばね受け32は、投入ばね31の伸縮に伴って投入ばね31の上端と一体に上下動する。投入ばね受け32には、ピン33が配置されている。ピン33には、後述する投入リンク43が回動可能に接続されている。なお、投入ばね部30は、複数の投入ばねを備えていてもよく、この場合には投入ばね受けは全ての投入ばねの可動端をまとめて受けるように構成される。
【0024】
投入ばね連動部40は、フレーム6に回転可能に支持された第2シャフト41と、第2シャフト41に固定された投入レバー42と、投入ばね部30および投入レバー42を連結した投入リンク43と、第2シャフト41に固定された投入カム44と、を備える。
【0025】
第2シャフト41は、フレーム6に回動可能に支持されている。第2シャフト41は、Y方向に延びる中心軸線Qを有する。中心軸線Qは、第1シャフト24の中心軸線Pよりも+X方向に位置している。第2シャフト41は、軸受を介してメインレバー22を回動可能に支持している。
【0026】
投入レバー42は、中心軸線Q回りを第2シャフト41と一体的に回動する。投入レバー42は、ラッチレバー26よりも-Y方向の位置に配置されている。
【0027】
投入リンク43は、投入ばね31の伸縮に伴って投入ばね受け32と一体に上下動する。投入リンク43は、フレーム6の-Y方向に配置されている。投入リンク43は、投入ばね受け32のピン33に回動可能に接続された第1接続部43aと、投入レバー42に回動可能に接続された第2接続部43bと、を備える。投入リンク43は、投入ばね受け32に対してY方向に延びる軸線回りに回動可能とされている。投入リンク43は、第1接続部43aから下方に延びている。第2接続部43bは、第1接続部43aよりも-Z方向、かつ中心軸線Qよりも+X方向の位置に配置されている。投入リンク43は、投入ばね31の弾性復帰力を受けて、投入レバー42を左回り方向に付勢している。
【0028】
投入カム44は、中心軸線Q回りを第2シャフト41と一体的に回動する。投入カム44は、Y方向においてカムレバー27に対応する位置に配置されている。投入カム44は、カム面44aを有する。カム面44aは、右回り方向に向かうに従い中心軸線Qから離れるように延びている。カム面44aには、カムレバー27のローラ27aが転動する。
【0029】
図3は、実施形態に係る遮断器用ばね操作機構を+Y方向から見た図である。
図3に示すように、遮断器用ばね操作機構2は、投入ばね部30に弾性エネルギーを付与する蓄勢機構50をさらに備える。
【0030】
蓄勢機構50は、放勢された投入ばね31を蓄勢する。蓄勢機構50は、駆動源である電動機51と、電動機51の出力を受けて投入レバー42を回転させるレバー駆動部52と、電動機51の出力をレバー駆動部52に伝達する伝達部53と、を備える。電動機51は、フレーム6に固定されている。例えば、伝達部53は、スプロケットおよびローラーチェーンを有するチェーン式の伝達機構である。レバー駆動部52は、減速機等を有する。
【0031】
図2に示すように、遮断器用ばね操作機構2は、遮断ばね11を蓄勢状態で解除可能にロックする遮断ばねロック機構60と、投入ばね31を蓄勢状態で解除可能にロックする投入ばねロック機構80と、をさらに備える。
【0032】
遮断ばねロック機構60は、遮断ばね連動部20の変位を規制することで、メインレバー22の右回り方向の回動、および遮断ばね11の放勢を規制している。遮断ばねロック機構60は、ラッチレバー26を係止する係止レバー61と、係止レバー61の回転を解除可能に規制するレバー規制部71と、を備える。
【0033】
係止レバー61は、レバー本体62およびラッチ63を備える。レバー本体62は、軸受を介して第2シャフト41に支持されている。レバー本体62は、フレーム6に対して中心軸線Q回りを回動可能とされている。レバー本体62は、Y方向においてラッチレバー26に対応する位置に配置されている。レバー本体62は、右回り方向の回動を規制された状態で、圧縮状態の復帰ばね64によって右回り方向に付勢されている。
【0034】
ラッチ63は、レバー本体62に支持されている。ラッチ63は、レバー本体62に対してY方向に延びる軸線回りを回動可能とされている。ラッチ63は、右回り方向の回動を規制された状態で、圧縮状態の復帰ばね65によって右回り方向に付勢されている。ラッチ63は、Y方向から見てレバー本体62から突出している。ラッチ63は、ラッチレバー26のローラ26aに中心軸線Pを中心とした左回り方向から接触している。ラッチ63は、ラッチレバー26によって右回り方向に押圧されている。レバー本体62は、ラッチレバー26の左回り方向の力によって、ラッチ63を介して左回り方向に押圧されている。レバー本体62は、レバー規制部71によって左回り方向の回転を規制されている。これにより、係止レバー61は、ラッチレバー26の左回り方向の回動を規制している。
【0035】
レバー規制部71は、遮断用規制レバー72と、復帰ばね73と、遮断用電磁ソレノイド74と、を備える。遮断用規制レバー72は、フレーム6に対してY方向に延びる軸線回りに回動可能とされている。遮断用規制レバー72は、遮断用規制レバー72の回動中心を中心とする横断面扇形状(半月状)の係止部75を備える。係止部75の外周面75aは、係止レバー61のレバー本体62に設けられた爪62aに中心軸線Qを中心とした左回り方向から接触してレバー本体62に係止されている。復帰ばね73は、遮断用規制レバー72を右回り方向に付勢している。遮断用電磁ソレノイド74は、駆動部であるプランジャ74aを備える。遮断用電磁ソレノイド74は、プランジャ74aを遮断用規制レバー72に接触させることで遮断用規制レバー72の右回り方向の回動を規制している。遮断用電磁ソレノイド74は、遮断器90等からの指令に基づいてプランジャ74aを突出させることで、遮断用規制レバー72を左回り方向に回動させる。
【0036】
投入ばねロック機構80は、投入ばね連動部40の変位を規制することで、投入レバー42の左回り方向の回動、および投入ばね31の放勢を規制している。投入ばねロック機構80は、投入レバー42の回動を解除可能に規制するレバー規制部81を備える。
【0037】
レバー規制部81は、投入用規制レバー82と、復帰ばね83と、投入用電磁ソレノイド84と、を備える。投入用規制レバー82は、フレーム6に対してY方向に延びる軸線回りに回動可能とされている。投入用規制レバー82は、投入用規制レバー82の回動中心を中心とする横断面扇形状(半月状)の係止部85を備える。係止部85の外周面85aは、投入レバー42に設けられた爪42aに中心軸線Qを中心とした左回り方向から接触して投入レバー42に係止されている。復帰ばね83は、投入用規制レバー82を右回り方向に付勢している。投入用電磁ソレノイド84は、駆動部であるプランジャ84aを備える。投入用電磁ソレノイド84は、プランジャ84aを投入用規制レバー82に接触させることで投入用規制レバー82の右回り方向の回動を規制している。投入用電磁ソレノイド84は、遮断器90等からの指令に基づいてプランジャ84aを突出させることで、投入用規制レバー82を左回り方向に回動させる。
【0038】
本実施形態の遮断器用ばね操作機構2の動作について、
図2、
図4および
図5を参照して説明する。
図4は、実施形態に係る遮断器用ばね操作機構の遮断状態を示す展開図である。
図5は、実施形態に係る遮断器用ばね操作機構において投入動作が完了した直後の状態を示す展開図である。
【0039】
遮断器90を投入状態から遮断状態に移行させる遮断動作について説明する。
図2に示すように、遮断器90の投入状態において、遮断器90等から遮断指令が発せられると、遮断ばねロック機構60の遮断用電磁ソレノイド74が作動する。遮断用電磁ソレノイド74は、プランジャ74aを突出させて、復帰ばね73の付勢力に抗しつつ遮断用規制レバー72を左回り方向に回動させる。遮断用規制レバー72が左回り方向に回動すると、係止部75の外周面75aが係止レバー61のレバー本体62の爪62aに摺動する。レバー本体62は、爪62aが係止部75の外周面75aにおける右回り方向の端縁を乗り越えると、係止部75から離脱して左回り方向に回動可能となる。
【0040】
ここで、ラッチレバー26は、遮断ばね11の弾性復帰力により係止レバー61を左回り方向に押圧している。このため、ラッチレバー26は、係止レバー61のレバー本体62が係止部75から離脱することで、復帰ばね64の付勢力に抗しつつ中心軸線Qを中心とする左回り方向に係止レバー61を押し退け、係止レバー61から離脱する。これにより、遮断ばね連動部20の変位の規制が解除され、蓄勢状態の遮断ばね11のロックが解除されて遮断ばね11が放勢される。これに伴い、メインレバー22が右回り方向に回動し、出力ロッド4を介して可動接点92を投入位置から遮断位置に移動させる。このとき、遮断ばね部10のダンパ14のピストン16がストッパ6aに下方から接触してダンパ14の制動力が発生するので、可動接点92は減速しながら遮断位置に到達する。以上により、遮断器90が
図4に示す遮断状態になる。
【0041】
次に、遮断器90を遮断状態から投入状態に移行させる投入動作について説明する。
図4に示すように、遮断器90の遮断状態において、遮断器90等から投入指令が発せられると、投入ばねロック機構80の投入用電磁ソレノイド84が作動する。投入用電磁ソレノイド84は、プランジャ84aを突出させて、復帰ばね83の付勢力に抗しつつ投入用規制レバー82を左回り方向に回動させる。投入用規制レバー82が左回り方向に回動すると、係止部85の外周面85aが投入レバー42の爪42aに摺動する。投入レバー42は、爪42aが係止部85の外周面85aにおける右回り方向の端縁を乗り越えると、係止部85から離脱して左回り方向に回動可能となる。これにより、投入ばね連動部40の変位の規制が解除されるとともに、蓄勢状態の投入ばね31のロックが解除されて投入ばね31が放勢される。これに伴い、第2シャフト41および投入カム44は、左回り方向に回動する。
【0042】
投入カム44は、左回り方向に回動すると、カムレバー27のローラ27aに中心軸線Pを中心とした左回り方向からカム面44aを接触させる。カムレバー27は、ローラ27aに投入カム44のカム面44a上を転動させつつ、カム面44aの形状に倣って中心軸線Qからローラ27aが離間するようにカムレバー27を右回り方向に回動する。すると、第1シャフト24とともにサブレバー25およびラッチレバー26が右回り方向に回動する。
【0043】
サブレバー25が右回り方向に回動すると、主副連結リンク23を介してメインレバー22が左回り方向に押圧される。その結果、
図5に示すように、遮断ばねリンク13を介して遮断ばね受け12が下方変位して遮断ばね11が蓄勢される。
【0044】
ラッチレバー26が右回り方向に回動すると、ローラ26aが復帰ばね65の付勢力に抗しつつ係止レバー61のラッチ63を左回り方向に回転させて、ラッチ63を乗り越える。その結果、ラッチレバー26は、中心軸線Pを中心とした右回り方向からラッチ63に接触し、左回り方向の回動を規制された状態となる。以上により、
図5に示すように投入ばね31を蓄勢状態にロックすることができる。
【0045】
投入ばね31の蓄勢動作について説明する。上述した投入動作が完了すると、蓄勢機構50が駆動され、投入レバー42を左回り方向に回動させる。これにより、投入リンク43を介して投入ばね受32けが下方に変位するので、
図2に示すように、投入ばね31が蓄勢される。
【0046】
以下、状態監視システム100について説明する。状態監視システム100は、例えば、変位センサ110と、電流センサ120-1~120-3と、測定値記録部130と、状態監視装置150とを備える。測定値記録部130は、状態監視装置150の内部構成であってもよい。
【0047】
変位センサ110は、出力ロッド4のX方向の変位量を測定し、測定結果を測定値記録部130に出力する。
【0048】
電流センサ120-1は、電動機51に流れる電流を測定し、測定結果を測定値記録部130に出力する。電流センサ120-2は、投入用電磁ソレノイド84に流れる電流を測定し、測定結果を測定値記録部130に出力する。電流センサ120-3は、遮断用電磁ソレノイド74に流れる電流を測定し、測定結果を測定値記録部130に出力する。
【0049】
測定値記録部130は、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を含む。測定値記録部130は、変位センサ110、電流センサ120-1~120-3のそれぞれから入力された測定結果(測定値データ)を記憶装置に記録する。
【0050】
状態監視装置150は、例えば、1次元等価回路網演算部152と、状態判断部154と、異常個所特定部156と、寿命推定部158とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0051】
1次元等価回路網演算部152は、予め想定された遮断器用ばね操作機構2の1次元等価回路網モデル200(後述)に測定値データを適用することで、遮断器用ばね操作機構2の状態を表す計算値データを算出する。1次元等価回路網モデル200とは、コンポーネントごとのパラメータと方程式、およびコンポーネント間の相互作用関係が規定されたものであり、例えば、1DCAEなどのモデル支援ソフトウェアを使用して作成することができる。コンポーネントには、回転レバー、リンク、ばね、ダンパ、モーター、電磁ソレノイドといったものが含まれる。例えば、ばねに関しては、ばね定数や自然長といったものがパラメータとして付与されており、回転レバーに関しては、回転中心の位置、各連結点の位置、慣性モーメント、摩擦、復帰ばね、ストッパ、材料特性などのパラメータが付与されている。そして、互いに影響し合うコンポーネント同士の間では、一方のコンポーネントの所定箇所の変位量が他方のコンポーネントの所定箇所の変位量に影響するといった相互作用関係が規定されている。
【0052】
図6は、
図1~
図5で説明した遮断器用ばね操作機構2の1次元等価回路網モデル200の一例を示す図である。図中の符号は、
図1~
図5の符号に200を加算して示している。例えば、符号231で示すコンポーネントは、投入ばね31に対応する。なお、符号301は、ばねの固定点を表す固定コンポーネントであり、符号302~308は係合関係を表す接触コンポーネントである。符号302~308で示される接触コンポーネントは、第1の側の部材と第2の側の部材との距離がゼロになると係合して作用し合い、ゼロを超えると離間して作用し合わなくなることを表すフラグで構成されている。接触コンポーネントは、ある状態の離間距離や接触摩擦、反発係数などをパラメータとして設定するので、異常箇所推定時には変化させるパラメータを有している。固定コンポーネントは調整されるパラメータを有さないものである。
【0053】
出力ロッド4に対応するリンクコンポーネント204は、軸方向のみ可動の拘束が付与されており、メインリンク21に対応するリンクコンポーネント221と回転自由で連結されている。
【0054】
メインレバー22に対応する回転レバーコンポーネント222は、3か所の連結点を有しており、それぞれ、リンクコンポーネント221、遮断ばねリンク13に対応するリンクコンポーネント213、および、主副連結リンク23に対応するリンクコンポーネント223に回転自由で連結されている。
【0055】
遮断ばね受け12に対応するリンクコンポーネント212は、3か所の連結点を有しており、そのうちの2点は、ばねコンポーネント211、および、リンクコンポーネント213と回転自由で連結されており、残りの1点は、接触コンポーネント302に連結されている。ばねコンポーネント211の一端は固定コンポーネント301に連結されている。
【0056】
ダンパ14に対応するダンパコンポーネント214の一端は、固定コンポーネント301に連結されており、もう一端は接触コンポーネント302に連結されている。
【0057】
サブレバー25に対応する回転レバーコンポーネント225は、3か所の連結点を有しており、1点はリンクコンポーネント223に回転自由で連結されており、残りの2点は、それぞれ接触コンポーネント303、および、接触コンポーネント304に連結されている。
【0058】
ラッチ63に対応するリンクコンポーネント263は、2か所の連結点を有しており、1点は接触コンポーネント303に連結されており、もう1点は係止レバー61に対応するリンクコンポーネント261に回転自由で連結されている。
【0059】
遮断用規制レバー72に対応する回転レバーコンポーネント272は、2か所の連結点を有しており、それぞれ、接触コンポーネント305、および、接触コンポーネント306に連結されている。
【0060】
プランジャ74aに対応するリンクコンポーネント274aは、2か所の連結点を有しており、それぞれ、接触コンポーネント306、および、遮断用電磁ソレノイド74に対応する電磁ソレノイドコンポーネント274に連結されている。
【0061】
第2シャフト41に対応する回転レバーコンポーネント241は、3か所の連結点を有しており、1点は投入リンク43に対応するリンクコンポーネント243に回転自由で連結されており、残りの2点は接触コンポーネント304、および、接触コンポーネント307に連結されている。
【0062】
投入用規制レバー82に対応する回転レバーコンポーネント282は、2か所の連結点を有しており、それぞれ、接触コンポーネント307、および、接触コンポーネント308に連結されている。
【0063】
プランジャ84aに対応するリンクコンポーネント284aは、2か所の連結点を有しており、それぞれ、接触コンポーネント308、および、投入用電磁ソレノイド84に対応する電磁ソレノイドコンポーネント284に連結されている。
【0064】
投入ばね受け32に対応するリンクコンポーネント232は、2か所の連結点を有しており、それぞれ、リンクコンポーネント243、および、投入ばね31に対応するばねコンポーネント231に回転自由で連結されている。ばねコンポーネント231の他端は固定コンポーネント301に連結されている。
【0065】
伝達部53に対応する伝達部コンポーネント253は、電動機51に対応する電動機コンポーネント251に連結されており、蓄勢動作中にのみ第2シャフト41に対応する回転レバーコンポーネント241の回転軸に連結される。
【0066】
このような構成の1次元等価回路網モデル200に対して、1次元等価回路網演算部152は、測定値データのうち例えば電流のデータを入力し、電流によって生じる電動機コンポーネント251、電磁ソレノイドコンポーネント274、および電磁ソレノイドコンポーネント284の動作を波及的に全てのコンポーネントに作用させ、リンクコンポーネント204の変位量を計算値データとして出力する。
【0067】
1次元等価回路網演算部152は、予め定められた正常状態のパラメータを用いて、測定値記録部130に測定値データが記録される度に(時間差はあってもよい)、測定値データに含まれる電流のデータを1次元等価回路網モデル200に入力することで、リンクコンポーネント204の変位量を正常時計算値データとして算出しておく。
【0068】
状態判断部154は、測定値データと、正常時計算値データとの比較結果に基づいて、遮断器用ばね操作機構2のいずれかのコンポーネントの状態が異常であるか否かを判断する。具体的に、状態判断部154は、測定値データに含まれるリンクコンポーネント204の変位量と、正常時計算値データに含まれるリンクコンポーネント204の変位量とを比較し、差分が所定の範囲内(差分の絶対値が閾値以下)であれば遮断器用ばね操作機構2のいずれのコンポーネントの状態も異常でないと判断し、所定の範囲を逸脱する場合(差分の絶対値が閾値を超える場合)は遮断器用ばね操作機構2のいずれかのコンポーネントの状態が異常であると判断する。なお、直接的に差分と閾値を比較する方法に代えて、各種の統計値を使用するなど、他の方法が用いられてもよい。
【0069】
図7は、状態判断部154が行う処理について説明するための図である。図中、変位S1はリンクコンポーネント204の変位量、電流S2は電流センサ120-1によって測定された測定値データ、電流S3は電流センサ120-2によって測定された測定値データ、電流S4は電流センサ120-3によって測定された測定値データをそれぞれ表している。変位S1のグラフにおける実線が正常時計算値データ、破線が測定値データに含まれるリンクコンポーネント204の変位量を表している。その他の測定値データは不変である。変位S1のグラフにおいて生じている実線と破線の乖離が状態判断部154によって差分として認識される。なお
図7は、遮断動作時の各種データを示している。
【0070】
異常個所特定部156は、状態判断部154が、遮断器用ばね操作機構2のいずれかのコンポーネントの状態が異常であると判定した場合、1次元等価回路網モデル200のパラメータを色々と変えながら、測定値データに含まれる電流を入力値として1次元等価回路網演算部152にリンクコンポーネント204の変位量を計算させることを、測定値データに含まれるリンクコンポーネント204の変位量と、計算値データに含まれるリンクコンポーネント204の変位量との差分が所定の範囲内となるまで繰り返し実行する。そして、異常個所特定部156は、差分が所定の範囲内となった時点での1次元等価回路網モデル200のパラメータを、正常状態のパラメータと比較し、正常状態のパラメータとの差分がパラメータごとに定められた規定範囲を超える(基準以上に異なることの一例)パラメータを抽出する。異常個所特定部156は、抽出したパラメータに対応するコンポーネントが表す部品が、異常個所であると特定する。なお、パラメータには、コンポーネントの種類に応じた取り得る値の範囲が規定されており、それによって探索範囲が制限される。異常個所特定部156は、正常状態のパラメータとの差分をコンポーネントに応じて正規化した値が最も大きいパラメータに対応するコンポーネントが表す部品を、異常個所であると特定してもよい。異常個所特定部156は、単に網羅的にパラメータを探索するのでは無く、局所解に陥ることを避けるため遺伝的アルゴリズムなどの最適値探索手法を用いてパラメータを探索してもよい。この場合、異常個所特定部156は、パラメータを並べたベクトル(遺伝子)に対して交差、突然変異などの処理を行うことで最適なパラメータ列を求める。
【0071】
寿命推定部158は、パラメータの変化を追跡することで、後どれ位の時間が経過したら、コンポーネントの状態が異常になるのかを推定する。例えば、寿命推定部158は、異常個所特定部156に、測定値データと計算値データとの差が近づくようにパラメータを変更させる。「差が近づくように」とは、例えば、状態判断部が判断に用いる「所定の範囲内」よりも狭い範囲内に収まることをいう。寿命推定部158は、変更されたパラメータの履歴を記憶装置に記録しておき、変更されたパラメータの履歴データに基づいて、正常状態のパラメータに比して基準以上に異なるものとなることが予想されるタイミングをコンポーネントごとに特定し、特定したタイミングがコンポーネントの寿命が尽きるタイミングであるとして、コンポーネントの寿命を推定する。例えば、寿命推定部158は、最小二乗法などを用いてパラメータの時間的な変化を直線あるいは曲線等でフィッティングし、フィッティングした直線あるいは曲線が、正常時のパラメータに比して基準以上に異なる値に到達するタイミングを、上記タイミングとして特定する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、ばね操作機構2の異常を自動的に検出し、異常個所を特定できる。その結果、ばね操作機構2を修復するにあたりばね操作機構2の部分的な部品交換で済む。このため、ばね操作機構2の修復作業の省力化、および遮断器90の停止時間の短縮が可能となる。
【0073】
また、1次元等価回路網解析は、各部品を様々なパラメータや方程式が含まれたコンポーネントとして設定し、コンポーネント同士を連結して、システム全体をモデル化する手法である。したがって、異なる構造の操作機構であっても、モデル作成が容易であり、様々な操作機構への対応が容易である。
【0074】
また、1次元等価回路網解析は、1条件の解析時間が非常に短いため、多数回の繰り返し解析においても、短時間で異常個所を特定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、寿命推定部158によりばね操作機構2の各部の寿命診断も可能となるので、機器状態に即して、優先順位を付けた計画的な部品交換が可能となる。
【0076】
また、状態判断部154、1次元等価回路網演算部152、異常個所特定部156、および寿命推定部158は書き換え可能であり、運用に即した機能へ変更することができる。
【0077】
なお、異常個所特定部156では、1次元等価回路網モデル200に多数のパラメータが存在するため、全ての組み合わせを計算し、異常個所を特定するには多大な時間を要する場合がある。そこで、計算値データと測定値データとの差が最小となる最適解を導出する最適値探索手法を用いる演算手段を異常個所特定部156に搭載することにより、短時間での異常個所特定が可能となる。
【0078】
図8は、実施形態の第1変形例に係る遮断器および遮断器用ばね操作装置を示す図である。なお、本変形例において上記実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0079】
図8に示すように、第1変形例では、状態監視システム100Aが温度センサ140をさらに備える。温度センサ140は、ばね操作機構2の筐体内に配置されている。温度センサ140は、ばね操作機構2の周辺温度を測定する。温度センサ140は、ばね操作機構2内の遮断用電磁ソレノイド74、投入用電磁ソレノイド84、電動機51、ダンパ14、並びに各部品の連結部および摺動部の温度を間接的に測定する。温度センサ140は、測定結果を測定値記録部130に出力する。測定値記録部130は、温度センサ140から入力された測定結果(測定値データ)を記憶装置に記録する。
したがって、本変形例によれば1次元等価回路網モデル200に温度センサ140の測定結果を反映することで、高精度の計算が可能となる。よって、より一層精度の高い状態監視システム100Aを提供することができる。
【0080】
図9は、実施形態の第2変形例に係る遮断器および遮断器用ばね操作装置を示す図である。なお、本変形例において上記第1変形例と同一の構成には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0081】
図9に示すように、第2変形例では複数のばね操作機構2それぞれの各部を測定する上記センサ類から出力された測定結果を1つの測定値記録部130に集約している。
したがって、本変形例によれば、1つの異常個所特定部156で、変電所全体又は複数の変電所のばね操作機構2の状態監視を行うことが可能になる。
【0082】
なお、状態監視システム100,100Aに組み合わされるばね操作機構は、上記実施形態の構成に限定されない。
【0083】
また、上記実施形態およびその変形例では、状態監視システム100が変位センサ110、電流センサ120-1~120-3および温度センサ140を用いているが、この構成に限定されない。状態監視システムは、変位センサ、電流センサおよび温度センサ以外のセンサ(荷重センサや加速度センサなど)の測定結果も記録することにより、さらに高精度な異常個所の特定、および寿命診断が可能となる。
【0084】
また、上記実施形態では、遮断動作時の処理の例を
図7に示しているが、投入動作、及び投入ばねの蓄勢動作の監視処理についても同様に可能である。
【0085】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、測定値データと1次元等価回路網演算部により正常状態のパラメータで算出された正常時計算値データとの比較結果に基づいて、ばね操作機構のいずれかのコンポーネントの状態が異常であるか否かを判断する状態判断部と、状態判断部がいずれかのコンポーネントの状態が異常であると判断した場合に、測定値データと計算値データとの差が予め設定した範囲内となるようにパラメータを変更し、パラメータを変更した時点で、正常状態のパラメータに比して基準以上に異なるパラメータが対応付けられたコンポーネントが異常個所であると特定する異常個所特定部と、を持つので、ばね操作機構の異常を自動的に検出し、異常個所を特定できる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。