(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】成形機洗浄用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 33/72 20060101AFI20240408BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240408BHJP
B29C 48/27 20190101ALI20240408BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240408BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20240408BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240408BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240408BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B29C33/72
B29C45/17
B29C48/27
C08L23/06
C08L23/12
C08L91/06
C08L101/00
C11D7/22
(21)【出願番号】P 2024505645
(86)(22)【出願日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2023029645
【審査請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2022131350
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023041384
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】政木 大典
(72)【発明者】
【氏名】黒須 友紀
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218540(JP,A)
【文献】特開平02-308838(JP,A)
【文献】特開平04-246443(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167829(WO,A1)
【文献】特開2023-031305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/72
B29C 48/27
B29C 45/17
C08L 23/00
C08L 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)を少なくとも含み、前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ
(A)と前記合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ
(B)との差の絶対値が2.0(cal/cm
3)
1/2以上7.0(cal/cm
3)
1/2以下であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の配合量が0.1質量%超10質量%未満であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)のガラス転移点が-150℃超40℃未満である、成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項2】
前記
熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート系樹脂である、請求項1に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項3】
前記合成ワックス(B)がホモポリマーのポリエチレンワックス、又はホモポリマーのポリプロピレンワックスである、請求項1又は2に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項4】
前記合成ワックス(B)の重量平均分子量が1000~50,000である、請求項1又は2に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項5】
前記合成ワックス(B)の含有量が0.1~20質量%である、請求項1又は2に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項6】
第1の熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ
(A)と、前記合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ
(B)と、第2の熱可塑性樹脂(C)の溶解度パラメータδ
(C)との関係がδ
(A)>δ
(C)≧δ
(B)である、請求項1又は2に記載の成形
機洗浄用樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ
(A)と前記ポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ
(C
)との差の絶対値が2.0(cal/cm
3)
1/2以上、7.0(cal/cm
3)
1/2以下である、請求項1又は2に記載の成形
機洗浄用樹脂組成物。
【請求項8】
滑り速度V
s(mm/s)と真のせん断応力τ
correct(kPa)をプロットした散布図グラフの線形近似線から求めた傾きαが0.10mm/(s・kPa)以上である、請求項1又は2に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項9】
カールフィッシャー法にて測定される水分量が5000ppm以下である、請求項1又は2に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【請求項10】
300℃における加熱重量減少率が3質量%以下である、請求項1又は2に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機洗浄用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の着色、混合、成形等の作業のために押出成形機、射出成形機等の樹脂成形加工機械が用いられるが、この種の加工機械においては、所定の作業終了時に、当該樹脂そのものや成形材料中に含まれている染顔料等の添加剤のほか、樹脂等から生成される劣化物(熱分解生成物、焼け焦げ、炭化物等)が成形加工機械内に残留する場合がある。この残留物を放置すると、以降に行われる樹脂の成形加工時に残留物が成形品中に混入し、製品外観不良の原因となり得る。特に、透明樹脂の成形を行う場合、微小の炭化物等の混入でも容易に視認されるため、成形品の外観不良となり、成形品不良の発生率を増大させるという問題を生じる。そのため、残留物を成形機内から完全に除去することが望まれている。
【0003】
従来、残留物を成形加工機械内から除去するため、(1)人手により成形加工機械の分解掃除をする方法、(2)成形加工機械を停止せずにそのまま次の成形に使用する成形材料を成形加工機械に充填し、これにより残留物を徐々に排出して行く方法、(3)洗浄剤を用いる方法等が採られている。
上記(1)の方法は、成形加工機械を停止する必要があるため効率的でなく、且つ人手により物理的に除去作業をするため、成形加工機械を傷つけやすいという問題がある。上記(2)の方法は、残留物を除去するために多量の成形材料を必要とする場合が多く、作業が完了するまでに時間を要し、更に廃棄物が多量に発生するという問題がある。そこで近年では、上記(3)の洗浄剤を用いる方法が、成形加工機械内の残留物を除去する洗浄力に優れることから、好まれて用いられるようになっている。
また、上記(3)の洗浄剤を用いる方法は、作業者の経験や技量によって洗浄の程度にバラつきが生じやすく、洗浄作業自体が作業者の負担になってしまうという問題がある。そこで近年では、成形加工機には計量射出を自動で繰り返す計量パージ、又はオートパージと呼ばれる機能(以降、計量パージとする)が付帯され、洗浄工程ではこの機能を用いることが多い。
上記計量パージは、作業者の経験や技量に依らずに洗浄効果の促進や均一化、洗浄工程の簡便さに優れることから、好まれて用いられるようになっている。
【0004】
洗浄剤の効果を高めることを目的として、洗浄剤の洗浄力を高める手法が提案されている。例えば、特許文献1では、メルトフローレイトの異なる少なくとも2種の造粒体と滑剤とを含有する洗浄用造粒体混合物が記載されており、優れた洗浄力と後続の樹脂組成物への効率良い置換性を有する組成物であることが記載されている。
特許文献2では、熱可塑性樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び無機充填剤を含む、洗浄用樹脂組成物が記載されており、優れた洗浄効果と作業性を有することが記載されている。
特許文献3では、スチレン系樹脂とポリアルキレンオキシドグリコール、アルキル硫酸塩、脂肪族の金属塩を含む、洗浄用樹脂組成物が記載されており、前材に対する優れた洗浄力と後材への優れた置換性を有する組成物であることが記載されている。
特許文献4では、熱可塑性樹脂、無機質充填剤、及び滑剤からなる成形機の洗浄剤組成物が記載されており、すぐれた洗浄力を有する組成物であることが記載されている。
特許文献5では、ポリオレフィン樹脂、無機フィラー、界面活性剤、極性官能基含有ポリオレフィンワックス、及び脂肪酸金属塩を含む、樹脂成形機用洗浄剤が記載されており、染料や顔料などの着色剤に対する洗浄性に優れ、また、樹脂成形機内での浸透性に優れることが記載されている。
特許文献6では、ポリプロピレン樹脂、界面活性剤を含む、成形加工機用洗浄剤が記載されており、成形加工機洗浄性が良く、洗浄後に残留する組成物の除去性が良いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-246626号公報
【文献】特開2017-218540号公報
【文献】国際公開第00/056514号
【文献】特開平6-134770号公報
【文献】特開昭59-124999号公報
【文献】特開2018-69473号公報
【文献】特開2010-95625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1~7に記載されている洗浄剤を使用した場合、洗浄性能が不十分であり、前の成形で使用した成形材料から洗浄剤へ置換、及び洗浄剤から次の成形で使用する成形材料へ置換するための樹脂量が多くかかってしまう課題があった。また、成形機の設定温度が比較的高温に設定されるエンジニアリングプラスチック等を洗浄する際に洗浄用樹脂組成物が成形機の原料ホッパーからシリンダー内部に供給されず原料噛み込み不良が発生し計量時間が長くかかってしまう、又は計量不良が生じてしまい計量パージできないという課題があった。さらに、耐熱性の高い材料を高温で洗浄した場合、洗浄性能が不十分であり、前の成形で使用した成形材料から洗浄剤へ置換、及び洗浄剤から次の成形で使用する成形材料へ置換するための樹脂量及び時間が多くかかってしまう課題があった。また、特許文献2、4、5及び6に記載されている滑剤や界面活性剤を配合した場合、洗浄作業中に成形機からの洗浄剤の噴出しによる火傷の危険性や発煙が生ずるなど作業性の課題があった。
【0007】
従って、洗浄剤には、洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と、洗浄後に成形加工する材料への易置換性、さらに、洗浄温度に関わらず安定した原料噛み込み性を有し計量パージに対応できることや噴出しによる火傷の危険性や発煙を抑制し安全に使用できる作業性が要求される。
【0008】
そこで、本発明は、洗浄温度に関わらずに洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性とを両立するとともに、安定した原料噛み込み性を有し計量パージに対応でき、洗浄作業中の成形機からの噴出しや発煙を抑制し作業性を改善した成形機洗浄用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂と合成ワックスのレオロジー特性に着目し、特定の樹脂組成物にすることで洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力を発現し、且つ洗浄用樹脂組成物が成形機内に滞留せずに容易に洗浄後に成形加工する材料に置換できること、及び洗浄作業中の成形機からの噴出しや発煙を抑制し作業性を改善できることを見出した。さらに、原料噛み込み性については特定の熱可塑性樹脂を配合することで、原料ホッパーからシリンダー内への原料噛み込み性が改善できることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)を少なくとも含み、前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と前記合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)との差の絶対値が2.0(cal/cm3)1/2以上7.0(cal/cm3)1/2以下であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の配合量が0.1質量%超10質量%未満であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)のガラス転移点が-150℃超40℃未満である、成形機洗浄用樹脂組成物。
[2]
前記熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート系樹脂である、[1]に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[3]
前記合成ワックス(B)がホモポリマーのポリエチレンワックス、又はホモポリマーのポリプロピレンワックスである、[1]又は[2]に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[4]
前記合成ワックス(B)の重量平均分子量が1000~50,000である、[1]~[3]のいずれかに記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[5]
前記合成ワックス(B)の含有量が0.1~20質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[6]
熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と、前記合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)と、オレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ(C)との関係がδ(A)>δ(C)≧δ(B)である、[1]~[5]のいずれかに記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[7]
前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と前記ポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ(C)との差の絶対値が2.0(cal/cm3)1/2以上、7.0(cal/cm3)1/2以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[8]
滑り速度Vs(mm/s)と真のせん断応力τcorrect(kPa)をプロットした散布図グラフの線形近似線から求めた傾きαが0.10mm/(s・kPa)以上である、[1]~[7]に記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[9]
カールフィッシャー法にて測定される水分量が5000ppm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
[10]
300℃における加熱重量減少率が3質量%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の成形機洗浄用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄温度に関わらずに洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性とを両立するとともに、洗浄作業中の成形機からの噴出しや発煙を抑制し作業性を改善し、さらに原料噛み込み適性と計量パージ適性を有する成形機洗浄用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[成形機洗浄用樹脂組成物]
本実施形態の成形機洗浄用樹脂組成物(以下、「洗浄用樹脂組成物」ともいう。)は、熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)を少なくとも含み、前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と前記合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)との差の絶対値が2.0(cal/cm3)1/2以上7.0(cal/cm3)1/2以下であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の配合量が0.1質量%超10質量%未満である。
【0014】
(熱可塑性樹脂(A))
本実施形態に用いる熱可塑性樹脂(A)としては、一般の射出成形や押出成形等に用いられる熱可塑性樹脂であって、前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と後述する合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)との差の絶対値(|δ(A)-δ(B)|)が2.0(cal/cm3)1/2以上であるものであれば、広く用いることができ、同時に2種以上の樹脂を使用することもできる。
【0015】
前記熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、例えば、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン等のポリブテン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの中でもスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましい。
【0016】
前記スチレン系樹脂とは、ポリスチレン、又はスチレンと1種若しくは2種以上の他の単量体との共重合体であって、スチレンの含有量が50質量%以上のものをいう。
スチレンと共重合させる他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、ブタジエン等が挙げられる。
このスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。これらの中でもスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体が好ましく、特にアクリロニトリル含量が5質量%以上50質量%未満のスチレン-アクリロニトリル共重合体が、洗浄前に成形加工した材料に対する洗浄力、及び洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性に優れることから好ましい。
【0017】
前記メタクリル酸エステル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
前記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)等の半芳香族ポリアミド、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
【0019】
前記ポリエステル系樹脂とは、主鎖の繰り返し単位中にエステル結合を持つ共重合体であり、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート等が好適に使用できる。
前記ポリカーボネート系樹脂とは、主鎖の繰り返し単位中に炭酸エステル結合を持つ共重合体であって、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応せしめる方法、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えば、ホスゲン)とを水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えば、ホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えば、ジフェニルカーボネート等)とを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法又は溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法等で得られる共重合物が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂は、スーパーエンジニアリングプラスチック等の耐熱性の高い材料を高温(例えば、300℃以上)で洗浄する際に、高い洗浄力を発揮することができるため好適である。
【0020】
前記熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、10万~40万が好ましく、より好ましくは11万~35万、さらに好ましくは12万~30万である。
なお、本実施形態において、重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)、あるいは他の方法により測定した値である。重量平均分子量は、具体的には、例えば、後述する実施例に記載する定性定量分析方法により、あるいは他の方法により、測定することができる。
【0021】
また、前記熱可塑性樹脂(A)のメルトフローレイト(MFR)は、使用のし易さから0.5g/10分以上であることが好ましく、洗浄効果の点から40g/10分以下であることがより好ましく、0.5/10分以上30g/10分以下であることがさらに好ましい。
尚、本明細書におけるメルトフローレイトは、ASTM-D1238に準じて測定した値をいう。測定条件は、熱可塑性樹脂(A)が非晶性樹脂、又は融点が220℃以下の結晶性樹脂(例えばAS樹脂)の場合は、測定温度220℃、荷重10kgfの条件下で測定した値をいう。熱可塑性樹脂(A)の融点が220℃を超える場合はその樹脂の標準測定条件で測定した値をいう。例えば、ポリアミド66は融点が265℃程度であり、測定温度275℃、荷重5kgfで測定を行い、PETは融点が255℃程度であり、測定温度285℃、荷重2.16kgfで測定した値をいう。
【0022】
熱可塑性樹脂(A)の含有量は、洗浄用樹脂組成物100質量%に対して、1~99質量%の範囲であることが好ましく、5~98質量%の範囲であることがより好ましく、10~97質量%の範囲であることがさらに好ましい。
なお、熱可塑性樹脂(A)の含有量は、例えば、GPC、あるいは他の方法により測定することができ、具体的には、例えば、後述する実施例に記載する定性定量分析方法により、あるいは他の方法により、測定することができる。
【0023】
(合成ワックス(B))
一般的に、ワックスとは、常温で固体又は半固体のもので、融点が40℃以上であり、加熱すると分解することなく溶けて、粘度の低いものと定義される。また、様々な原料から構成され、大別すると天然ワックス、半合成ワックス、合成ワックスに分類される。
本実施形態では、成形機からの洗浄用樹脂組成物の噴出しや発煙を抑制できる洗浄作業性の観点から、合成ワックスを使用する。
本実施形態の合成ワックス(B)としては、一般の射出成形や押出成形等に用いられる合成ワックスを広く用いることができ、同時に2種以上の合成ワックスを使用することもできる。
【0024】
前記合成ワックス(B)の具体例としては、ホモポリマーのポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス、コポリマーのエチレン酢酸ビニルワックス、エチレンアクリル酸ワックス、極性官能基含有ポリオレフィンワックス等が挙げられる。洗浄作業中の成形機からの噴出しや発煙を抑制する観点から、吸湿性を有さず、熱安定性が良好なホモポリマーのポリエチレンワックス、又はホモポリマーのポリプロピレンワックスが好ましい。
【0025】
前記合成ワックス(B)の分子量は、重量平均分子量で1,000~60,000であることが好ましく、より好ましくは3,000~55,000、さらに好ましくは5,000~50,000である。
前記合成ワックス(B)の融点は、100~165℃であることが好ましく、より好ましくは102~163℃、さらに好ましくは105~160℃である。
前記合成ワックス(B)として、特に種類を限定するものではないが、分子量が重量平均分子量で5,000~50,000、融点が105~160℃であるものが最も洗浄効果が得られやすい。
なお、合成ワックス(B)の重量平均分子量は、例えば、GPC、あるいは他の方法により測定することができ、具体的には、例えば、後述する実施例に記載する定性定量分析方法により、あるいは他の方法により、測定することができる。
【0026】
合成ワックス(B)の含有量は、洗浄用樹脂組成物100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下であり、0.3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。合成ワックス(B)の含有量が0.1質量%未満の場合、合成ワックス(B)のブリードアウトが不十分となり洗浄効果が発現し難い。一方で、合成ワックス(B)の含有量が20質量%を超える場合、成形機に洗浄用樹脂組成物を投入する際に過剰なブリードアウトによってスクリューへの噛み込み不良が生じるため不適である。
なお、合成ワックス(B)の含有量は、例えば、GPC、あるいは他の方法により測定することができ、具体的には、例えば、後述する実施例に記載する定性定量分析方法により、あるいは他の方法により、測定することができる。
【0027】
(ポリオレフィン系樹脂(C))
本実施形態に用いるポリオレフィン系樹脂(C)としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂が好ましい。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体、又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体であって、エチレンの含有量が50質量%以上のものを示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体であって、プロピレンの含有量が50質量%以上のものを示す。更に、ポリブテン系樹脂とは、ブテンの単独重合体又はブテンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体であって、ブテンの含有量が50質量%以上のものを示す。
【0028】
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE、ULDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等が挙げられる。
【0029】
上記エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることが好ましく、エチレンと、炭素数3~12のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることがより好ましい。上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。
【0030】
また、上記エチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレンと、プロピレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
【0031】
上記ポリエチレン系樹脂は、クロム系触媒、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、洗浄性能の観点から、分子量分布が広いクロム系触媒、又はチーグラー系触媒が好ましく、炭素数が6以上からなる分子鎖の長鎖分岐を有するクロム系触媒、又はメタロセン触媒がより好ましい。
また、上記ポリエチレン系樹脂は、洗浄性能の観点から、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kgfの条件でASTM-D1238に準じて測定)が0.01~30g/10minであることが好ましく、0.05~25g/10minであることがより好ましく、0.1~20g/10minであることが更に好ましい。
【0032】
上記超高分子量ポリエチレンとは、分子量100万以上の、エチレンの単独重合体、又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。なお、共重合体は、エチレンに由来する構造単位の含有量が50質量%以上であるものを指す。分子量の上限は特に限定されないが、1000万以下であることが実用上好ましい。
上記他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコサン等のα-オレフィン;酢酸ビニル等のビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル等の脂肪族不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。上記超高分子量ポリエチレンの中でも、熱安定性の観点からエチレンの単独重合体が好ましい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂(C)の重量平均分子量は、例えば、GPC、あるいは他の方法により測定することができ、具体的には、例えば、後述する実施例に記載する定性定量分析方法により、あるいは他の方法により、測定することができる。
【0034】
上記ポリエチレン系樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα-オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。
【0036】
上記プロピレン-α-オレフィン共重合体とは、プロピレンとα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体を示す。上記プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体が好ましく、プロピレンと、エチレン及び炭素数4~8のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体がより好ましい。ここで、炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれの形態でもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体である。上記プロピレン-α-オレフィン共重合体としては、プロピレンと、エチレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
【0037】
上記プロピレンとエチレンとα-オレフィンとの3元共重合体としては、プロピレンと、エチレンと、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィンとの3元共重合体等が好適に使用できる。これらの3元共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれの形態でもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとブテンとのランダム共重合体である。
【0038】
上記ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒のような触媒で重合された樹脂だけでなく、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて重合された樹脂でよく、例えば、シンジオタクチックポリプロピレンや、アイソタクティックポリプロピレン等も使用できる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、洗浄性能の観点から、MFR(測定温度230℃、荷重2.16kgfの条件でASTM-D1238に準じて測定)が0.01~30.0g/10minであることが好ましく、0.05~25g/10minであることがより好ましく、0.1~20g/10minであることが更に好ましい。
【0039】
上記ポリブテン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が特に優れるため、溶融粘度の調整を目的として、上記ポリプロピレン系樹脂と併用することが好ましい。
【0040】
上記ポリブテン系樹脂としては、結晶性であり、ブテンと、エチレン、プロピレン及び炭素数5~8のオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種からなる共重合体が好適に使用できる。
【0041】
ガラス転移点は、DSCにより測定することができ、具体的には後述する実施例に記載する方法により測定することができる。また、ガラス転移点は、ASTM-D-3418に準拠して測定される値であり、中点法により算出することができる。また、共重合体などでガラス転移点が複数存在する場合はベースラインシフトの最も大きい転移点をガラス転移点とする。
【0042】
上記ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、洗浄用樹脂組成物100質量%に対して、0.1質量%超10質量%未満であることが好ましく、0.2質量%以上9質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量が0.1質量%未満の場合、原料噛み込み改善効果が発現し難いため不適である。一方で、ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量が10質量%以上の場合、原料噛み込み改善効果は良好だが、ポリオレフィン系樹脂(C)自体が成形機内に滞留しやすくなり洗浄後に成形加工する材料への置換性が悪化するため不適である。
なお、ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、例えば、GPC、あるいは他の方法により測定することができ、具体的には、例えば、後述する実施例に記載する定性定量分析方法により、あるいは他の方法により、測定することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂(C)は、作業性と原料調達容易性の観点から融点が80℃以上、260℃以下であることが好ましく、90℃以上、250℃以下であることがより好ましく、100℃以上、240℃以下であることがさらに好ましい。上記効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、融点が80℃未満の場合はべたつきが大きくなりシリンダーやスクリューなどの金属に接着しやすい傾向のため作業性が悪く、融点260℃を超えると入手困難になるため不適である。
融点は、DSCにより測定することができ、具体的には後述する実施例に記載する方法により測定することができる。また、融点は、JIS-K-7210に準拠して測定されるピーク値であり、共重合体などで融点が複数存在する場合は最も高いピーク値を融点とする。
【0043】
(添加剤)
本実施形態の洗浄用樹脂組成物には、その本来の特性を損なわない範囲で、上記合成ワックス(B)以外の滑剤、界面活性剤、酸化防止剤などの添加剤を添加してもよく、添加の方法は各添加剤の効果が発揮できるように公知の方法で樹脂に導入すればよい。
添加剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
添加剤の含有量は、生産安定性の観点から洗浄用樹脂組成物100質量%に対して10質量%以下であることが好ましい。
以下に添加剤について説明する。
【0044】
(滑剤)
前記合成ワックス(B)以外の滑剤としては、有機酸、有機酸金属塩、有機酸アミド、有機酸エステル等の有機酸誘導体、各種エステルワックス、フッ素系樹脂、ミネラルオイル等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
滑剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0045】
上記有機酸としては、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸等が挙げられる
【0046】
上記有機酸金属塩における金属としては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、バリウム等が挙げられる。
上記有機酸金属塩における炭化水素部位としては、上述の有機酸と同じく、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸等が挙げられる。
【0047】
上記有機酸アミドとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。
【0048】
上記有機酸エステル、エステルワックスとしては、炭素数9~28の飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、硬化油等のポリオールエステル等が挙げられる。
【0049】
上記フッ素系樹脂としては、PTFEやPFA、PVDF、PVDF系共重合体、ETFE、PFE等が挙げられる。
【0050】
上記ミネラルオイルとは、石油を精製して得られる油であり、鉱物油、潤滑油、流動パラフィン等とも呼ばれるナフテン、イソパラフィン等も含む飽和炭化水素系のオイルが挙げられる。
【0051】
(界面活性剤)
上記界面活性剤の例としては、陰イオン活性剤、陽イオン活性剤、非イオン活性剤、両性表面活性剤等が挙げられる。
陰イオン活性剤としては、具体的には、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等が例示できる。
陽イオン活性剤としては、具体的には、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩等が例示できる。
非イオン活性剤としては、具体的には、ポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等が例示できる。
両性表面活性剤としては、具体的には、アミノ酸等を例示する事ができる。
界面活性剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0052】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等が挙げられる。
上述の酸化防止剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0053】
本実施形態の洗浄用樹脂組成物は、洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力を発現するため、無機フィラーや無機発泡剤等を含んでもよい。無機フィラー等の洗浄力に対する効果は必ずしも明らかではないが、スクラブ剤として汚れに対する掻き取り効果によって洗浄力を向上させると考えられる。
無機フィラー、無機発泡剤の合計含有量は、洗浄前に成形加工した材料に対する洗浄力と洗浄後に成形加工する材料に対する置換性のバランスの観点から、洗浄用樹脂組成物100質量%に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
以下に無機フィラー等について説明する。
【0054】
(無機フィラー)
本実施形態において、無機フィラーとは、後述の無機発泡剤以外の無機化合物をいい、天然物及び人工合成物のいずれも示す。このような無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ウォラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、硫酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ケイソウ土、ガラス粉末、ガラス球、ガラス繊維、シラスバルーン等が挙げられる。
【0055】
無機フィラーの含有量は、洗浄後に成形加工する材料への易置換性の観点から、洗浄用樹脂組成物100質量%に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。無機フィラーの含有量の下限は、特に限定されない。
【0056】
(無機発泡剤)
本実施形態において、無機発泡剤とは、加熱により分解し、発泡、すなわち気体を発生する無機化合物を指す。無機発泡剤の具体例としては、水等の無機物理発泡剤、炭酸水素ナトリウム(以下「重曹」とも記す。)、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、ホウ水素化ナトリウム等の水素化物、アジ化カルシウム等のアジド化合物、マグネシウム、アルミニウム等の軽金属、炭酸水素ナトリウムと酸との組合せ、過酸化水素とイースト菌との組合せ、アルミニウム粉末と酸との組合せ等の公知の無機化学発泡剤が挙げられる。
【0057】
無機発泡剤の含有量は、洗浄用樹脂組成物100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。無機発泡剤の含有量の下限は、特に限定されない。
【0058】
本発明の洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性は、熱可塑性樹脂(A)と合成ワックス(B)との組み合わせを用いることで実現できる。この理由は定かではないが、熱可塑性樹脂(A)と合成ワックス(B)の極性差が大きいと、合成ワックス(B)が洗浄用樹脂組成物の表面にブリードアウトし、成形機シリンダー内部の壁面近傍における洗浄用樹脂組成物の流動が促進されることによって洗浄効果が発現していると推測される。
上述のブリードアウトの観点から、熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)との差の絶対値(|δ(A)-δ(B)|)は2.0(cal/cm3)1/2以上であることが好ましく、2.2(cal/cm3)1/2以上であることがより好ましく、2.4(cal/cm3)1/2以上であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂(A)と合成ワックス(B)の溶解度パラメータの差(極性差)が大きいほど洗浄力と易置換性の効果が優れる傾向にある。一方で、溶解度パラメータの差の絶対値が7.0(cal/cm3)1/2を超えると相溶性が著しく悪化し、洗浄用樹脂組成物の製造が困難になるため、7.0(cal/cm3)1/2以下であることが好ましく、より好ましくは6.5(cal/cm3)1/2以下、さらに好ましくは6.0(cal/cm3)1/2以下である。
なお、熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)、合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ(C)は、熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)の構造式からFedorsの推算法(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)、以下、単に「Fedorsの論文」という。)に基づき下記式により計算されるものである。
Fedorsの式:溶解度パラメータδ[(cal/cm3)1/2]=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
Ev:蒸発エネルギー[cal/mol]
v:モル体積[cm3/mol]
Δei:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー[cal/mol]
Δvi:各成分の原子又は原子団のモル体積[cm3/mol]
ここで、上記式で算出される溶解度パラメータδ(SP値)に使用される蒸発エネルギー及びモル体積は、上記Fedorsの論文中では25℃での値である。熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)、合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ(C)は、25℃で算出した値とする。
なお、熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)の構造式は、IR、NMR及びマススペクトルなどの通常の構造分析手法を用いて決定することができる。
【0059】
合成ワックス(B)が2種以上の合成ワックスを使用する場合、本発明で規定する溶解度パラメータδ(A)、δ(B)、及びδ(C)の関係は、合成ワックス(B)が含む少なくとも1種の成分について満たしていればよく、合成ワックス(B)全量に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上を占めるいずれかの成分について満たしていればよく、合成ワックス(B)中の全成分について満たしていることが特に好ましい。
【0060】
また、上述のとおり、合成ワックス(B)は、洗浄作業中の成形機からの噴出しや発煙を抑制する観点から、吸湿性を有さず、熱安定性が良好なホモポリマーのポリエチレンワックス、又はホモポリマーのポリプロピレンワックスが好ましい。一方で、無水カルボン酸基やカルボニル基を含有するポリエチレンワックスや無水マレイン酸基を含有するポリプロピレンワックス等の極性官能基含有ポリオレフィンワックスは吸湿性を有するため、洗浄作業中に成形機から噴出しや発煙が生じやすい。
洗浄用樹脂組成物の流動を促進させる方法としては、上述の合成ワックス(B)の他に滑剤や界面活性剤をさらに配合する手段が挙げられるが、有機酸金属塩、有機酸アミドは熱安定性が悪く、界面活性剤は吸湿性を有するものが多く、例えば、飽和脂肪酸ビスアミドのエチレンビスステアリン酸アミドや陰イオン活性剤のアルキルスルホン酸塩、ステアリン酸ナトリウムなどを含むと、洗浄作業中に成形機から噴出しや発煙が生じやすくなる。
【0061】
一方で、合成ワックス(B)の滑性付与による流動促進は洗浄用樹脂組成物の噛み込み不良を引き起こしやすく、特に計量パージと呼ばれる洗浄工程において洗浄用樹脂組成物の噛み込み不良によって成形機の原料ホッパーからシリンダー内部へ供給されず計量時間が長くかかる、又は計量不良が生じてしまい計量パージできないという課題があった。これはブリードアウトした合成ワックス(B)とスクリューや成形機シリンダー内壁金属との摩擦低減が原料噛み込み不良を引き起こしていると考えられ、本発明では洗浄用樹脂組成物にポリオレフィン系樹脂(C)を配合することで原料噛み込み性が改善されることを見出した。この理由は定かではないが、一般的にエンジニアリングプラスチック等の成形条件では成形機のホッパー下の雰囲気温度は10~40℃であることが多いため、洗浄用樹脂組成物が噛み込む際にガラス転移点が40℃未満であるポリオレフィン系樹脂(C)が軟化することでスクリューやシリンダー内壁金属との摩擦が増加し原料噛み込み性が改善したと考えられる。ポリオレフィン系樹脂(C)のガラス転移点は原料調達容易性の観点から-150℃より高いことが好ましく、ホッパー下の雰囲気温度で軟化できるようガラス転移点は40℃未満であることが好ましく、30℃未満であることがより好ましく、20℃未満であることがさらに好ましい。
【0062】
また、合成ワックス(B)の滑性付与による流動促進効果とポリオレフィン系樹脂(C)の軟化成分付与による摩擦増加効果を両立させるためには、溶解度パラメータが熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)>ポリオレフィン系樹脂(C)のδ(C)≧熱可塑性樹脂(B)のδ(B)であることが好ましく、δ(A)>δ(C)>δ(B)であることがより好ましい。あるいは、溶解度パラメータδ(A)、δ(B)、及びδ(C)の関係は、|δ(A)-δ(B)|>|δ(C)-δ(B)|であることが好ましく、|δ(A)-δ(B)|>|δ(C)-δ(B)|>0であることがより好ましい。
【0063】
さらに、洗浄性能と計量パージ適性の両立の観点から、ポリオレフィン系樹脂(C)と合成ワックス(B)は非相溶であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ(C)と合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)との差の絶対値(|δ(C)-δ(B)|)は0.3(cal/cm3)1/2以上であることが好ましく、0.4(cal/cm3)1/2以上であることがより好ましく、0.5(cal/cm3)1/2以上であることがさらに好ましい。
【0064】
原料噛み込み性の観点では、熱可塑性樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(C)は非相溶であることが好ましく、熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)とポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータδ(C)との差の絶対値(|δ(A)-δ(C)|)は2.0(cal/cm3)1/2以上であることが好ましく、2.2(cal/cm3)1/2以上であることがより好ましく、2.4(cal/cm3)1/2以上であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(C)の溶解度パラメータの差(極性差)が上記範囲内にあると原料噛み込み性の効果が優れる傾向にある。一方で、溶解度パラメータの差の絶対値が7.0(cal/cm3)1/2を超えると相溶性が著しく悪化し、洗浄用樹脂組成物の製造が困難になるため、7.0(cal/cm3)1/2以下であることが好ましく、より好ましくは6.5(cal/cm3)1/2以下、さらに好ましくは6.0(cal/cm3)1/2以下である。
【0065】
本実施形態の洗浄用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と合成ワックス(B)との組み合わせによって、Y軸に壁面滑り速度Vs(mm/s)を、X軸に真のせん断応力τcorrect(kPa)をプロットした散布図グラフの線形近似線から求めた傾きαが0.10mm/(s・kPa)以上に制御されると、洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と、洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性の両立がさらに容易となる。傾きαは0.13mm/(s・kPa)以上に制御することがより好ましく、0.16mm/(s・kPa)以上に制御することがさらに好ましい。この理由は定かではないが、ニュートンの粘性法則としてニュートン流体は円管内部に比べて壁面付近は流速が遅いことが知られており、本実施形態の洗浄用樹脂組成物は流速が遅く置換困難と考えられる壁面近くでの流動が促進されることによって洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と、洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性が容易になると推測される。傾きαの上限は、特に限定されないが、2.00mm/(s・kPa)以下であることが好ましく、より好ましくは1.95mm/(s・kPa)以下、さらに好ましくは1.90mm/(s・kPa)以下である。
なお、壁面滑り速度Vs(mm/s)や傾きα(mm/(s・kPa))は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0066】
本実施形態の洗浄用樹脂組成物のメルトフローレイトは、洗浄効果の観点から、0.5g/10分以上であることが好ましく、100g/10分以下であることがより好ましく、1~80g/10分であることがさらに好ましい。
尚、本明細書におけるメルトフローレイトは、ASTM-D1238に準じて測定した値をいう。測定条件は、熱可塑性樹脂(A)が非晶性樹脂、又は融点が220℃以下の結晶性樹脂(例えばAS樹脂)の場合は測定温度220℃、荷重10kgfで測定を行った。熱可塑性樹脂(A)の融点が220℃を超える場合はその樹脂の標準測定条件で測定を行った。例えば、ポリアミド66は融点が265℃程度であり、測定温度275℃、荷重5kgfで測定を行い、PETは融点が255℃程度であり、測定温度285℃、荷重2.16kgfで測定した値をいう。
【0067】
本実施形態の洗浄用樹脂組成物は、熱重量分析装置を用いて30℃から400℃まで10℃/分で昇温した際に測定される300℃での加熱重量減少率が、3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.8質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。加熱重量減少率をこの範囲にすることで、加熱された場合でも添加剤等が分解することがなく、作業性が十分担保され好ましい。また、加熱重量減少率の下限は、特に限定されない。
なお、加熱重量減少率は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0068】
本実施形態の洗浄用樹脂組成物は、カールフィッシャー法にて測定される水分量が、5000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは4,800ppm以下、さらに好ましくは4,500ppm以下である。水分量をこの範囲にすることで、洗浄作業中に成形機からの噴出しを抑制することができ、作業性が十分担保され好ましい。また、水分量の下限は、特に限定されないが、50ppm以上であることが好ましく、より好ましくは80ppm以上、さらに好ましくは100ppm以上である。
なお、水分量は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0069】
(洗浄用樹脂組成物の製造方法)
本実施態様の洗浄用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記各成分を混合機で予備混合した後、押出機で混練押出し、ペレタイズする方法等により製造することができる。
【0070】
(洗浄用樹脂組成物の形状)
本実施形態の洗浄用樹脂組成物の形状は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、円柱状、球状、フレーク状、パウダー状等の形状が挙げられる。
【0071】
(成形機の洗浄方法)
本実施形態に係る成形機(樹脂成形加工機械)の洗浄方法は、上述の成形機洗浄用樹脂組成物を用いる。
また、本実施形態に係る樹脂成形加工機械の洗浄方法は、上述の洗浄用樹脂組成物を樹脂成形加工機械内に滞留させる工程を有してもよい。
上記樹脂成形加工機械の具体例としては、射出成形機、押出成形機等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形加工機械の洗浄方法は、洗浄前に成形加工した材料を効率的に排出させることができるだけでなく、洗浄後に成形加工する材料に容易に置換することができ、さらに洗浄後に樹脂成形加工機械を休止する場合、洗浄用樹脂組成物を樹脂成形加工機械内に充満させた状態で滞留させることにより、万が一洗浄不足で洗浄前に成形加工した材料が樹脂成形加工機械内に残っている場合でも、残った材料の熱劣化を防止できる利点がある。
【0072】
洗浄力が弱い洗浄剤を使用した場合、洗浄前に成形加工した材料が樹脂成形加工機内に残存して洗浄後に成形加工する材料に異物となって混入するだけでなく、成形加工機械を休止する時には残存した成形材料が劣化し、再度成形加工機械を立ち上げる時に劣化物となって混入するという問題が生じやすくなる。そのため、この問題を回避する目的で洗浄剤の洗浄力を高める方法として、基材となる熱可塑性樹脂に、洗浄力を高めるための無機フィラーや無機発泡剤等が配合されることが多いが、これらの洗浄成分は洗浄後に成形加工する材料への置換性が低いため、樹脂成形加工機内の洗浄に使用した場合、次に使用する成形材料による置換に長時間を要し、かつ成形材料のロスが多くなり、生産の効率が低下しやすいという課題があった。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
実施例及び比較例の洗浄用樹脂組成物の測定法・評価法は、以下のとおりである。
【0075】
<溶解度パラメータδ測定>
熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)の構造式において、Fedorsの推算法を用いて下記式からそれぞれの溶解度パラメータδ(A)、δ(B)、及びδ(C)(25℃で算出した値)を求めた。
Fedorsの式:溶解度パラメータδ[(cal/cm3)1/2]=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
Ev:蒸発エネルギー[cal/mol]
v:モル体積[cm3/mol]
Δei:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー[cal/mol]
Δvi:各成分の原子又は原子団のモル体積[cm3/mol]
なお、熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)の構造式は、IR、NMR及びマススペクトルなどの通常の構造分析手法を用いて決定した。
[溶解度パラメータδ(A)とδ(B)の差の絶対値評価基準]
A:δ(A)とδ(B)の差の絶対値が2.4(cal/cm3)1/2以上であり、洗浄性が特に良好
B:δ(A)とδ(B)の差の絶対値が2.2(cal/cm3)1/2以上2.4(cal/cm3)1/2未満であり、洗浄性がより良好
C:δ(A)とδ(B)の差の絶対値が2.0(cal/cm3)1/2以上2.2(cal/cm3)1/2未満であり、洗浄性が良好
D:δ(A)とδ(B)の差の絶対値が2.0(cal/cm3)1/2未満であり、洗浄が困難
[溶解度パラメータδ(C)とδ(B)の差の絶対値評価基準]
A:δ(C)とδ(B)の差の絶対値が0.5(cal/cm3)1/2以上であり、原料噛み込み性が特に良好
A’:δ(C)とδ(B)の差の絶対値が0.4(cal/cm3)1/2以上0.5(cal/cm3)1/2未満であり、原料噛み込み性がさらに良好
B:δ(C)とδ(B)の差の絶対値が0.3(cal/cm3)1/2以上0.4(cal/cm3)1/2未満であり、原料噛み込み性がより良好
C:δ(C)とδ(B)の差の絶対値が0(cal/cm3)1/2以上0.3(cal/cm3)1/2未満であり、原料噛み込み性が良好
【0076】
<ガラス転移点測定>
熱分析装置(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて、ASTM-D-3418に準拠して測定を行い、中点法により算出した。また、共重合体などでガラス転移点が複数存在する場合はベースラインシフトの最も大きい転移点をガラス転移点とした。
<融点測定>
熱分析装置(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて、JIS-K-7210に準拠して測定を行い、融点を算出した。樹脂の熱履歴をキャンセルするために昇温速度10℃/minの条件で0℃~300℃まで昇温、及び降温速度10℃/minの条件で300℃から0℃まで降温を行った後、再び昇温速度10℃/minの条件で0℃から300℃まで昇温した際の融点を測定・評価した。
【0077】
<壁面滑り速度Vsと真のせん断応力τcorrectとの傾きα測定>
ツインキャピラリーレオメータ(Malvern社製RH10)を用い、温度220℃にて、下記(i)~(iii)に示す3種のロングダイ(キャピラリーダイ)とショートダイ(オリフィスダイ)の組合せを使用し、バーグレー補正により真のせん断応力τcorrectを求めた。なお、Rabinowitsch補正は使用しなかった。
オリフィスダイ組合せとピストン押出速度条件
(i)ロングダイ(L/d=20、直径0.5mm、流入角90°)、及び
ショートダイ(L/d=0.5、直径0.5mm、流入角90°)
ピストン速度(mm/min)は0.05,0.1,0.2,0.3,0.5,1,2,3,5,7.5,10,15,20,30
(ii)ロングダイ(L/d=16、直径1mm、流入角90°)、及び
ショートダイ(L/d=0.25、直径1mm、流入角90°)
ピストン速度(mm/min)は0.5,1,2,3,5,7.5,10,15,20,30,50,75,100
(iii)ロングダイ(L/d=16、直径2mm、流入角90°)、及び
ショートダイ(L/d=0.125、直径2mm、流入角90°)
ピストン速度(mm/min)は1,3,5,7.5,10,15,20,30,50,75,100,150,300
下記式(1)を用いて流入圧損P0を算出し、得られた流入圧損P0と式(2)から補正された真のせん断応力τcorrectを求めた。
P0=(Ps・LL-PL・LS)/(LL-LS) …式(1)
τcorrect[kPa]=(PL-P0)d/4LL …式(2)
(式中、P0:ショートダイの流入圧損、或いはPL-Psの値から外挿して得られるL/D=0の圧力(ロングダイの圧力計算値PLからショートダイの圧力計測値Psを結んだ線を長さ0の点まで延伸し圧力Y軸と交わる点の圧力)、Ps:ショートダイ側で生じる圧力損失、PL:ロングダイ側で生じる圧力損失、LS:ショートダイの長さ(mm)、LL:ロングダイの長さ(mm)、d:ダイの細管直径(mm))
滑り速度VsはMoony法に基づき式(3)を用い、y=ax+bと見立て解析した。解析したせん断応力τcorrectは3水準以上とした。ここで、マイクロソフト社製Excelを用いて、X軸に1/R、Y軸にγaの散布図グラフを作成し、線形近似から求めた傾きを1/4倍した値がVs、切片がγTである。
γa=γT+4Vs/R …式(3)
(式中、γa:見かけのせん断速度(1/s)、γT:真のせん断速度(1/s)、Vs:滑り速度(mm/s)、R:ダイの半径(mm))
さらに、マイクロソフト社製Excelを用いて、X軸に補正された真のせん断応力τcorrect、Y軸に壁面滑り速度Vsの散布図グラフを作成し、線形近似から求めた直線の傾きα(mm/(s・kPa))を算出した。解析した真のせん断応力τcorrectは3水準以上、近似曲線のR-2乗値は0.8以上とした。
[傾きα評価基準]
A:傾きαが0.16mm/(s・kPa)以上であり、滑り速度効果が発現、洗浄性が特に良好
B:傾きαが0.13mm/(s・kPa)以上0.16mm/(s・kPa)未満であり、滑り速度効果が発現、洗浄性がより良好
C:傾きαが0.10mm/(s・kPa)以上0.13mm/(s・kPa)未満であり、滑り速度効果が発現、洗浄性が良好
D:傾きαが0.10mm/(s・kPa)未満であり、滑り速度効果が不十分、洗浄が困難
【0078】
<加熱重量減少率測定>
熱重量・示差熱同時測定計(ブルカー社製TGA-DTA2000SR)を用い、Air下で30℃から400℃まで昇温速度10℃/minで測定実施し、300℃における重量減少率(質量%)を測定した。
[加熱重量減少評価基準]
A:加熱重量減少率が3質量%以下であり、洗浄作業中に成形機からの発煙なし、作業性が良好
D:加熱重量減少率が3質量%より多く、洗浄作業中に成形機から発煙が生じた、作業性が悪い
【0079】
<水分量測定>
カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製MKC-510N)を用い、JIS K7251-B法(水分気化法)に準拠し、気化温度185℃、時間20分、キャリアガスとして窒素ガス(200mL/min±10mL/min)、測定数n=2で測定し、水分量(ppm)の平均値を得た。
[水分量評価基準]
A:水分量が5000ppm以下であり、洗浄作業中に成形機からの噴出しなし、作業性が良好
D:水分量が5000ppmより多く、洗浄作業中に成形機からの噴出しの危険性有り、作業性が悪い
【0080】
<熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)の定性定量分析>
樹脂組成物中に含まれる熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)の定性定量分析(樹脂種・分子量の定性分析及び成分含有比率の定量分析)は、溶媒分別、及びFT-IR、高温GPC-IR、Thermal Gradient Interaction Chromatography(以下、TGIC)、Crystalization Elution Fractionation(以下、CEF)、クロス分別クロマトグラフ(以下、CFC)を組み合わせて行った。
熱可塑性樹脂(A)がスチレン-アクリロニトリル共重合体の場合、下記フロースキームに従い溶媒分別によって定性定量分析を行った。(1)アセトンによってアセトン不溶分と可溶分に分別し、(2)アセトン不溶分をクロロホルムによってクロロホルム不溶分と可溶分に分別した。樹脂組成物、アセトン可溶分、アセトン不溶分、クロロホルム可溶分、クロロホルム不溶分はFT/IR-4100(日本分光社製)を用い、FR-IT/透過法/分解能4cm-1/積算回数16回にてプレスフィルムを測定し定性分析を行った。プレスフィルムは熱プレス温度180℃、プレス時間180秒、又は上記樹脂組成物、各可溶分と各不溶分が溶融するプレス温度とプレス時間で作製した。
合成ワックス(B)とポリオレフィン系樹脂(C)の定性定量分析は、上記クロロホルム不溶分、及び/又は上記アセトン不溶分を用いて下記手順で行った。
(3)-1:合成ワックス(B)とポリオレフィン系樹脂(C)が同樹脂種の場合、GPC-IRとして装置内蔵のIR6 MCT赤外線検出器(Polymer Char社製)を装備したGPC-IR型ゲル浸透クロマトグラフ(Polymer Char社製)を用い、移動溶媒はo-ジクロロベンゼンODCB(酸化防止剤BHT添加)、カラムはカラム温度140℃で2x TSKgel GMH6-HT + 2x TSKgel GMH6-HTL(東ソー社製、長さ7.5 I.D.x 30cm、検出波長はメチレンセンサCH2 3.42μm(2920cm-1)、メチルセンサーCH3 3.38μm(2960cm-1)、カルボニルセンサC=O 5.75μm(1740cm-1)を用いた。試料濃度は8mg/8mL、溶解条件は150℃、60min、N2雰囲気化とし、試料ろ過は10μmインラインフィルターを用いた。注入量は0.4mLとし、カラム校正は単分散ポリスチレン(東ソー社製、TSKgel標準ポリスチレン)、分子量換算は標品換算法(ポリスチレン換算)を用いた、但し、高温GPC法は、構成曲線に基づく相対法であり、標準物質の分解に伴う分子量低下の影響を考慮していない。また、校正曲線用単分散ポリスチレン標準資料(分子量590万から2060万)の領域から外れる場合は校正曲線を外挿して分子量計算を行った。得られた微分分子量分布曲線Derivativeと積分強度% Cumulativeから定量分析を行った。合成ワックス(B)とポリオレフィン系樹脂(C)のピークが重なる場合は、微分分子量分布曲線のピークの谷に相当する位置を算出、又は谷が見られない場合は傾きが変化していき平坦に近くなる点で垂直分割によって定量分析を行い、上記溶媒分別とFT-IR、GPC-IRより算出された成分含有比率から樹脂組成物に対する各成分含有比率を求めた。
(3)-2:合成ワックス(B)とポリオレフィン系樹脂(C)異樹脂種の場合、TGICとして装置内蔵のIR5 MCT赤外線検出器(Polymer Char社製)を装備したハイスループット組成分布分析装置(Polymer Char社製)を用い、移動溶媒はo-ジクロロベンゼンODCB(酸化防止剤BHT添加)、カラムは多孔性グラファイトカーボンカラム、Hypercarb高温対応型(THERMO社製、内径4.6mm、長さ100mm、粒子径5μm)を用い、検出波長はメチレンセンサCH2 3.42μm(2920cm-1)、メチルセンサーCH3 3.38μm(2960cm-1)、を用いた。試料濃度は8mg/8mL、溶解条件は150℃、60min、N2雰囲気下とし、試料ろ過は10μmインラインフィルターを用いた。注入量は0.2mLとし、降温条件は140℃から-20℃、2℃/min、流量0.0mL/min、昇温条件は-20℃から165℃、2℃/min、流量0.5mL/minとした。上記溶媒分別とFT-IR、TGICより算出された成分含有比率から樹脂組成物に対する各成分含有比率を求めた。
【0081】
<原料噛み込み性測定>
PPE樹脂の黒色着色成形材料を、シリンダー及びノズル温度を280℃に昇温した射出成形機を用い、表1~2に示す成形機洗浄用樹脂組成物を射出成形機に1kg投入して、計量ストローク50mm、背圧2MPaの条件で計量パージ操作(計量射出操作)を行った。1ショットの計量に要した平均時間、洗浄完了までのショット数を測定した。その結果を表1~2に示す。計量時間が短いほど原料噛み込み性が安定しているとし、以下の評価基準で評価した。
[原料噛み込み性評価基準]
A:1ショットの計量に要した時間が10秒以下であり、原料噛み込み性が特に良好
B:1ショットの計量に要した時間が10秒超20秒以下であり、原料噛み込み性がより良好
C:1ショットの計量に要した時間が20秒超30秒以下であり、原料噛み込み性が良好
D:1ショットの計量に要した時間が30秒より長く、計量不良となり洗浄が困難
[計量パージ適正評価基準]
A:洗浄完了までに要した時間(1ショットに要した平均時間とショット数合計の積)が150秒未満であり、計量パージ適性が特に良好
B:洗浄完了までに要した時間(1ショットに要した平均時間とショット数合計の積)が200秒未満であり、計量パージ適性がより良好
C:洗浄完了までに要した時間(1ショットに要した平均時間とショット数合計の積)が250秒未満であり、計量パージ適性がより良好
D:洗浄完了までに要した時間(1ショットに要した平均時間とショット数合計の積)が250秒以上であり、計量パージ適性不良となり洗浄が困難
【0082】
<洗浄力評価と置換性評価>
ABS樹脂の黒色着色成形材料を、シリンダー及びノズル温度を220℃に昇温した射出成形機内に1kg投入し充填後、射出操作により排出して成形機内を空にした。次に、表1~2に示す成形機洗浄用樹脂組成物を射出成形機に1kg投入して射出操作(洗浄射出操作)を行い、ABS黒着色品の影響がなくなるまでに要した成形機洗浄用樹脂組成物のパージ屑量(表1~2の洗浄必要質量)を測定した。最後に、成形機洗浄用樹脂組成物の置換を行う為に、GPPS透明成形材料を2kg投入し射出操作(置換射出操作)を行って、残留物の影響(透明性を損なう異物や着色等)がないことが確認されるまでに使用したGPPS透明成形材料のパージ屑量(表1~2の置換必要質量)を測定した。その結果を表1~2に示す。
ABS黒着色品から成形機洗浄用樹脂組成物のパージ屑量が少ないほど、洗浄力に優れるとし、以下の評価基準で評価した。
[洗浄力評価基準]
A:パージ屑量が0.3kg以下であり、洗浄性が特に良好
B:パージ屑量が0.3kg超0.4kg以下であり、洗浄性がより良好
C:パージ屑量が0.4kg超0.5kg以下であり、洗浄性が良好
D:パージ屑量が0.5kgより多く、洗浄が困難
また、成形機洗浄用樹脂組成物からGPPS透明成形材料のパージ屑量が少ないほど、置換性に優れるとし、以下の評価基準で評価した。
[置換性評価基準]
A:パージ屑量が1.0kg以下であり、置換性が特に良好
B:パージ屑量が1.0kg超1.5kg以下であり、置換性が良好
D:パージ屑量が1.5kgより多く、洗浄用樹脂組成物からの置換が困難
【0083】
熱可塑性樹脂(A)の融点が200℃以上、又はガラス転移温度が130℃以上の場合は、シリンダー及びノズル温度を330℃に昇温した射出成型機内に洗浄評価にPPSの黒色着色原料を1kg投入し充填後、射出操作により排出して成形機内を空にした。次に表1~2に示す成形機洗浄用樹脂組成物を射出成型機に1kg投入して射出操作(洗浄射出操作)を行い、PPS黒着色品の影響がなくなるまでに要した成形機洗浄用樹脂組成物のパージ屑量(表1~2の洗浄必要質量)を測定した。最後に、成形機洗浄用樹脂組成物の置換を行う為に、PC透明成形材料を2kg投入し射出操作(置換射出操作)を行って、残留物の影響(透明性を損なう異物や着色等)がないことが確認されるまでに使用したPC透明成形材料のパージ屑量(表1~2の置換必要質量)を測定した。その結果を表1~2に示す。
PPS黒着色品から成形機洗浄用樹脂組成物のパージ屑量が少ないほど、洗浄力に優れるとし、以下の評価基準で評価した。
[洗浄力評価基準]
A:パージ屑量が0.5kg以下であり、洗浄性が特に良好
B:パージ屑量が0.5kg超0.6kg以下であり、洗浄性がより良好
C:パージ屑量が0.6kg超0.7kg以下であり、洗浄性が良好
D:パージ屑量が0.7kgより多く、洗浄が困難
また、成形機洗浄用樹脂組成物からPC透明成形材料のパージ屑量が少ないほど、置換性に優れるとし、以下の評価基準で評価した。
[置換性評価基準]
A:パージ屑量が1.5kg以下であり、置換性が特に良好
B:パージ屑量が1.5kg超2.0kg以下であり、置換性が良好
D:パージ屑量が2.0kgより多く、洗浄用樹脂組成物からの置換が困難
【0084】
実施例及び比較例において使用した原材料は、以下のとおりである。
【0085】
[熱可塑性樹脂(A)]
AS1:スチレン-アクリロニトリル系樹脂(旭化成製スタイラック、重量平均分子量:130,000、MFR=13g/10min;220℃、10kgf)
AS2:スチレン-アクリロニトリル系樹脂(INEOS製LURAN、重量平均分子量:180,000、MFR=12g/10min;220℃、10kgf)
PA:ナイロン66樹脂(旭化成製レオナ、MFR=7g/10min;275℃、5kgf)
PC:ポリカーボネート樹脂(台湾国旭美化成有限公司製ワンダーライト、10g/10min;220℃、10kgf)
PET:ポリエステル系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック製レマペット、30g/10min;285℃、2.16kgf)
HD:高密度ポリエチレン樹脂(旭化成製サンテック、4g/10min;220℃、10kgf)
PP:ポリプロピレン系樹脂(サンアロマー製ホモPP、6g/10min;220℃、10kgf)
PS:ポリスチレン樹脂(PSジャパン製GPPS、16g/10min;220℃、10kgf)
EEA:エチレンエチルアクリレート樹脂(三井デュポンポリケミカル製エルバロイAC、20g/10min;220℃、10kgf)
EMMA:エチレンメチルメタクリレート樹脂(三井デュポンポリケミカル製アクリフト1、18g/10min;220℃、10kgf)
酸変性ポリエチレン(三井デュポンポリケミカル製ニュクレル、14g/10min;220℃、10kgf)
酸変性ポリプロピレン(三菱ケミカル製モディック、16g/10min;220℃、10kgf)
【0086】
[合成ワックス(B)]
PP wax:ホモポリマーのポリプロプレンワックス(重量平均分子量:40000、融点:145℃)
PE wax1:ホモポリマーのポリエチレンワックス(重量平均分子量:13,000、融点:127℃)
PE wax2:ホモポリマーのポリエチレンワックス(重量平均分子量:4,300、融点:122℃)
PE wax3:ホモポリマーのポリエチレンワックス(重量平均分子量:1,100、融点:116℃)
MAH-PE wax:無水マレイン酸変性PEワックス(三井化学製ハイワックス、重量平均分子量:24000、融点:142℃)
MAH-PP wax:無水マレイン酸変性PPワックス(三洋化成工業製ユーメックス、重量平均分子量:30000、融点:135℃)
なお、上記合成ワックス(B)の重量平均分子量は、超高温GPC(株式会社センシュー科学製)を用い、溶離液として1-クロロナフタレン、標準物質としてポリスチレンを用い、カラム温度210℃にて測定した。検出器としてはRI(示差屈折)検出器を用いた。
【0087】
[ポリオレフィン系樹脂(C)]
PE1:超高分子量ポリエチレン樹脂(旭化成製サンファインUH950)、
ガラス転移点-120℃
PE2:低密度ポリエチレン樹脂(旭化成製サンテックM2102)、
ガラス転移点-120℃
PE3:高密度ポリエチレン樹脂(旭化成製サンテックB770)、
ガラス転移点-119℃
PP1:ポリプロピレン系樹脂(サンアロマー製PB170A)
ガラス転移点0℃
PP2:ポリプロピレン系樹脂(サンアロマー製PL500A)
ガラス転移点2℃
ABS:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(東レ製トヨラック)、
ガラス転移点104℃
【0088】
[無機フィラー]
ガラス繊維(日本電気硝子社製チョップドストランド)
ウォラストナイト(NYCO Minerals Inc.製NYGLOS)
タルク(日本タルク社製MICRO ACE)
[その他添加剤]
PEO:ポリエチレンオキサイド(明成化学工業製アルコックス)
流動パラフィン(MORESCO社製モレスコホワイト)
非イオン系界面活性剤:ポリオキシエチレン及びジイソデシルアジペート
陰イオン系界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
ステアリン酸亜鉛
EBS:エチレンビスステアリン酸アミド
【0089】
[実施例1]
表1に示す各成分を混合し、押出機を用いて溶融混練した後、溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断し、ペレット状の成形機洗浄用樹脂組成物を得た。混練条件は、シリンダー温度270℃、押出レート200kg/時間とした。
得られた成形機洗浄用樹脂組成物について、評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例2~28]
組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の成形機洗浄用樹脂組成物を得た。
得られた成形機洗浄用樹脂組成物について、評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例29~31]
熱可塑性樹脂(A)の融点が200℃以上、又はガラス転移温度が130℃以上の場合の混練条件は、シリンダー温度330℃、押出レート200kg/時間とした。得られた成形機洗浄用樹脂組成物について、評価結果を表1に示す。
【0092】
[比較例1~21]
組成を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ペレット状の成形機洗浄用樹脂組成物を得た。
得られた成形機洗浄用樹脂組成物について、評価結果を表2に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
上記の結果から、実施例1~31で得られた成形機洗浄用樹脂組成物は、良好な洗浄性と易置換性を有し、計量パージ適性や作業性にも優れていることが分かる。
一方で、上記の結果から、比較例1~21で得られた成形機洗浄用樹脂組成物は、洗浄力及び/又は置換性が十分でないこと、又は、原料噛み込み性及び/又は計量パージ適性や作業性が適さないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の成形機洗浄用樹脂組成物は、優れた洗浄性能及び置換性を発揮するほか、計量パージ適性や作業性にも優れており、熱可塑性樹脂の洗浄、特に、射出成形加工機械や押出成形加工機械用の洗浄剤組成物として有用である。
【要約】
本発明は、洗浄前に成形加工した材料に対する高い洗浄力と洗浄後に成形加工する材料に対する易置換性とを両立するとともに、原料噛み込み性を改善し計量パージ適性を有し、洗浄作業中の成形機からの噴出しや発煙を抑制し作業性を改善した成形機洗浄用樹脂組成物を提供することを目的とする。上記目的を達成するべく、本発明は、熱可塑性樹脂(A)、合成ワックス(B)、及びポリオレフィン系樹脂(C)を少なくとも含み、前記熱可塑性樹脂(A)の溶解度パラメータδ(A)と前記合成ワックス(B)の溶解度パラメータδ(B)との差の絶対値が2.0(cal/cm3)1/2以上7.0(cal/cm3)1/2以下であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の配合量が0.1質量%超10質量%未満であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)のガラス転移点が-150℃超40℃未満である、成形機洗浄用樹脂組成物であることを特徴とする。