(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 21/14 20060101AFI20240409BHJP
B65G 21/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B65G21/14 C
B65G21/20 A
(21)【出願番号】P 2018068266
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】今泉 幸三
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-306575(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123044(JP,U)
【文献】実開昭58-41714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 21/00
B65G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直線状で一定の長さを有し、荷物をトレイに載置された状態で搬送するためのコンベヤベルトを駆動する駆動ローラーと、
前記駆動ローラーを駆動する駆動モーターと、
前記駆動モーターを制御する制御部と、
前記コンベヤベルトの搬送路面に一定の角度を持たせる傾斜保持機構
であって搬送路における状況により角度変更が可能な傾斜保持機構と
を有し、前記コンベヤベルトには低摩擦ベルトを使用
したことを特徴とするコンベヤベルト装置。
【請求項2】
前記搬送路面の片側または両側に手荷物または物品の搬送用ガイドを備えたことを特徴とする請求項1記載のコンベヤベルト装置。
【請求項3】
前記コンベヤベルトによる搬送路面の傾斜角度が略0度から略45度の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載のコンベヤベルト装置。
【請求項4】
前記コンベヤベルトによる搬送路面の傾斜角度を略0度から略45度の範囲で変更することが可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンベヤベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば搬送システムに係り、特に空港などで搭乗顧客の手荷物を搬送する為の搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空港などでは搭乗顧客の手荷物などは、搭乗前に顧客より運搬を委託された後、ユニークID(航空会社などの枠を超えた唯一無二のID)を付与されコンベヤなど搬送ラインに流される。その後仕分け装置を経てメイク(搭乗便担当の取り扱い場所)に到着し、航空機専用コンテナに積み込む等により搭乗便に載せられる。その後、航空機によって目的地まで空輸された手荷物はコンテナから下ろされ、乗客が待機している場所へのベルトコンベヤラインに流される。
【0003】
これら全ての手荷物は前記ユニークIDに便名情報を紐づけし、搬送システムによって振り分けられて搭乗機まで搬送される。航空機により空輸後は、到着空港にて下ろされコンベヤベルトライン等によって乗客の待つ場所へ搬送される。
【0004】
近年では空港での手荷物搬送において、搬送用通い箱(以下「トレイ」と称する。)に載せて搬送するシステムも用いられ搬送する手荷物をトレイに載せモーターで駆動するコンベヤベルトやローラー及び無駆動のローラーとで構成された搬送路を使って移動させたり、自走式台車に荷物を載せ移動させる手荷物搬送システムなども用いられている。
【0005】
このような搭乗顧客の手荷物搬送システムでは従来、手荷物が空港にて下ろされコンベヤベルトなどによる搬送ラインで所定の場所まで搬送された後に乗客の待つ周回コンベヤラインに載せられる場合や、搬送路の途中で搬送ラインを変更する場合などにおいて、傾斜角度を持ったシューターなどにより重力を利用して滑り落とされるのが一般的である。しかし重力を使って滑り落とす方法では傾斜角度が大きめに設定されている場合には滑り落ちるスピードが大きく荷物が乱暴に取り扱われて損傷することや、加速度がついて周回コンベヤに衝突する衝撃で手荷物の外形ばかりでなく手荷物内部の荷物にまで損傷を与えてしまう可能性がある。傾斜角が逆に小さめに設定されている場合には荷物が滑り落ちずに途中で止まって滞留してしまうことなどにより、トラブルが発生することが問題となっていた。
【0006】
このような物品の搬送装置において、搬送ラインから物品を下ろしたり搬送ラインを変更したりする場合の先行技術を調査する為に、搬送とライン変更あるいは搬送方向変更などをキーワードとして特許検索を行ったところ、下記に挙げるような先行技術文献によって幾つかの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-350147号公報
【文献】特開2008-174318号公報
【0008】
特許文献1は、搬送路の途中に短い回転可能なユニットを入れて搬送方向を変更すること関するものであって、前記の様に搬送路から物品や手荷物を下ろす場合の問題を解決することとは関係が無い。
【0009】
特許文献2は、搬送路が交差する地点にモーター内臓ローラーが回転して搬送方向を切り替えること関するものであって、前記の様に搬送路から物品や手荷物を下ろす場合の問題を解決することとは関係が無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
搭乗顧客の手荷物搬送システムでは、大事な顧客手荷物に搬送時の事故によって損傷を与えてはならない。また、手荷物外形への損傷ばかりでなく、搬送中の振動や衝撃によって手荷物中の荷物への損傷を与えてはならず、手荷物にやさしい搬送、即ちソフトタッチ搬送とすることは手荷物搬送システムの絶対的な課題である。
【0011】
また、手荷物が空港にて下ろされコンベヤベルトなどによる搬送ラインで所定の場所まで搬送された後に乗客の待つ周回コンベヤラインに載せられる場合や、搬送路の途中で搬送ラインを変更する場合などにおいて、傾斜角度を持ったシューターなどにより重力を使って滑り落とす方法が用いられるが、荷物が乱暴に取り扱われたり、手荷物が滑り落ちずに途中で止まって滞留してしまったりすることなどにより、トラブルが発生することが問題となっていた。
【0012】
本発明はこうした従来技術の問題点に鑑み、手荷物の搬送において滞留が発生しない確実な搬送システムや、手荷物を丁寧に扱うことの可能な搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するべく、本発明に係る搬送システムにおける搬送ラインからの手荷物の取り出しや搬送ラインの変更方法においては、傾斜角を持ち比較的長さの短いベルトコンベヤに手荷物を載せ、その先で手荷物を人手によって取り出したり別の搬送ラインに乗せたりする方法を用いることとした。これにより、手荷物が前記短いベルトコンベヤに移された時、制動が掛かる上、速度コントロールされているので扱いやすくなり、また別の搬送路に乗せる場合には手荷物の滞留や逆に速度が速すぎることによる手荷物の飛び出し等は無くなり、手荷物に損傷を与えること無いソフトタッチ搬送を行うことができる。
【0014】
本発明は、従来技術で搬送ラインから手荷物などを取り出す場合や別の搬送ラインに乗せる場合に傾斜角を持ったシューターなどにより重力を使って滑り落とす場合に手荷物の速度が重量などにより制御されないことによるトラブルの発生という課題を解決し、安定的かつ確実な手荷物の取り扱いを可能にするものである。
【0015】
<発明の実施態様>
本発明の第1の態様として、略直線状で一定の長さを有するコンベヤベルトの装置であってコンベヤベルトを駆動する駆動ローラーと駆動源となる駆動モーター及び駆動モーターなどを制御する制御部、コンベヤベルトの搬送路面がある角度を保ちつつ駆動することを可能とする傾斜保持機構及びこれらの装置を安定的に動作させる基礎部分の架台とを有する態様とした。
【0016】
さらに本発明の第2の態様として、前記第1の態様に加えて搬送路面の片側または両側に、搬送する手荷物の搬送方向を誘導するガイドを有する態様とした。
【0017】
また本発明の第3の態様として、前記第1及び第2の態様において、搬送路面の傾斜角度が水平面に対して略0度~略45度の範囲にあることを特徴とする態様とした。
【0018】
さらにまた本発明による第4の態様として、前記第1及び第2の態様において、搬送路面の傾斜角が水平面に対して略0度~略45度の範囲で変更可能であって、稼働時には傾斜角が安定的に保持される態様とした。
【0019】
本発明に係る一定の長さを有し、搬送路面が傾斜角を保持するコンベヤベルト装置において、その長さは1~3m、その搬送路面での幅は0.8~2m、手荷物ガイドの搬送路面からの高さは0.2~0.8mが好ましいが、本発明はこれらの範囲に限定されない。
【0020】
本発明におけるコンベヤベルトの材質は、手荷物の搬送に適するある程度の硬さを持ったゴム製または樹脂製が好ましく、目的を達成するためにコンベヤベルト装置は、様々な付属機能のパーツを加えて製作することが可能であるが、それらは全て本発明の技術思想の範囲であることは言うまでもない。またコンベヤベルトには低摩擦ベルトを使用すれば、トレイと手荷物の摩擦係数の差によって落下速度が変化しても手荷物の横転を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、航空機を利用する顧客の手荷物を搬送する空港における搬送システムに用いられる一定の傾斜を有するコンベヤベルト装置によって、搬送路から手荷物を取り出したり、搬送路を変更する場合などにおいて、手荷物の扱われる速度が制御されて丁寧に扱われ、また速度がつきすぎて搬送路から飛び出したり逆に速度が落ちて搬送路上で滞留するといったトラブルも防止され、手荷物に損傷を与えることの無い、いわゆるソフトタッチ搬送を実現することができる。その上、重力が利用できない高低差の少ない場合においてもスムースな手荷物の搬送が可能な搬送路システムが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る傾斜を有するコンベヤベルト装置の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る傾斜を有するコンベヤベルト装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明の一実施形態に係る傾斜を有するコンベヤベルト装置について説明する。図面に示される構成や形状などは本発明の実施形態の例であるので、本発明は図面において図示されたものに限定されない。
【0024】
図1は本発明の代表的な実施形態の斜視図である。同図に示されるように、略直線状で一定の長さを持った傾斜式コンベヤベルト装置100は、搬送方向に一定の長さL、搬送路の幅W、を有した金属製等によって構成されたフレームに搬送方向にコンベヤベルト30を有し、コンベヤベルト30は駆動ローラーを介して駆動モーターにより駆動される。この駆動されるコンベヤベルトは、傾斜保持機構50により一定の傾斜角を持ちながら駆動されるが、搬送される手荷物は搬送路から飛び出さないよう片側または両側の高さHを有する手荷物ガイド40により誘導される。装置全体は、安定的に稼働するよう架台70によって保持されている。
【0025】
コンベヤベルトの傾斜角は、搬送路における状況により簡単に設定・角度変更ができるようにしておくことが好ましいが、それによって稼働中に傾斜部が意図しない変化をしたりしないよう傾斜保持機構50にはしっかりした方式が採用されることは言うまでもない。
【0026】
図2は本発明の代表的な実施形態における側面図であり、コンベヤベルト30は駆動ローラー20、駆動モーター10によって駆動される。制御部60がモーター制御ケーブル23を介して駆動モーター10の回転数及び運転・停止などを制御する。
【0027】
なお本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更した形態においても実施することが可能である。これらはすべて、本技術思想の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述したように本願に係る発明によれば、顧客の手荷物を搬送路から取り出す場合や搬送路内で搬送路を変更する場合などで、コンベヤベルトにより手荷物の速度を制御しながら丁寧に扱われるため重力を利用したシューターなどで扱う場合に比べてトラブルが少なく、また高低差が少ない場合にも搬送路からの取り出しや搬送路変更が可能な搬送システムが実現される。
【0029】
さらに本願に係る発明によれば、空港における手荷物に限定されず、様々な物品の搬送システムにおいても同様に物品が丁寧に扱われトラブルが少なく、高低差の少ない場合でも搬送路からの取り出しや搬送路変更が可能な搬送システムを提供できる。
【0030】
よって本願発明は、空港での手荷物搬送システムの他、倉庫などの物品搬送システムをはじめ、製造業、建設業など、あらゆる産業における物品の搬送システムに対して大きな有益性をもたらすことができるから、産業上の利用性があると言うことができる。
【0031】
また、本発明の特徴であるソフトタッチ搬送により、今まで搬送時の損傷が心配で自動搬送が難しかった物品の搬送を、ソフトタッチ搬送することにより自動搬送することができ、産業上の広い応用が期待できる。
【符号の説明】
【0032】
10 駆動モーター
20 駆動ローラー
21 非駆動ローラー
23 モーター制御ケーブル
30 コンベヤベルト
40 手荷物ガイド
50 傾斜保持機構
60 制御部
70 架台
100 傾斜式コンベヤベルト装置