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  • 特許-スラブ搬送用クレーンの制御方法 図1
  • 特許-スラブ搬送用クレーンの制御方法 図2
  • 特許-スラブ搬送用クレーンの制御方法 図3
  • 特許-スラブ搬送用クレーンの制御方法 図4
  • 特許-スラブ搬送用クレーンの制御方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】スラブ搬送用クレーンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/18 20060101AFI20240409BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20240409BHJP
   B66C 1/44 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B66C13/18
B66C13/46 H
B66C1/44 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020201227
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022089020
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000866(US,A1)
【文献】実開昭57-178079(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/18
B66C 13/46
B66C 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ掴み装置でスラブを掴んで巻き上げた時に、スラブの両端に発生する垂れ下がりに反してスラブ中央が盛り上がる状態を検出する、スラブ中央のスラブ高さ位置の検出装置をスラブ掴み装置に装備し、スラブを降ろして掴みを解放する際に、前記スラブ高さ位置の検出装置の検出値が、前記スラブ高さ位置の検出装置により予め検出、記憶しておいたラブ中央が盛り上がる前のスラブが載置状態の値に戻るまで、スラブ掴み装置をスラブの荷重が掛かった状態に保持しつつ、徐々に巻き下げるように制御し、スラブ中央付近の盛り上がりが小さく又は無くなってから掴みを解放するようにすることを特徴とするスラブ搬送用クレーンの制御方法。
【請求項2】
スラブの荷重をスラブ掴み装置の爪に受けることにより爪がせり出し、スラブ掴み装置の掴み力を発生する構造のスラブ掴み装置に、爪の出入り状態を検出する検出装置を装備し、爪に掛かるスラブの荷重が掛かった状態を保持するように制御することを特徴とする請求項1に記載のスラブ搬送用クレーンの制御方法。
【請求項3】
クレーン又はクレーン吊具に荷重検出器を装備し、該荷重検出器の検出値により、スラブ掴み装置にスラブの荷重が掛かった状態を保持するように制御することを特徴とする請
求項1に記載のスラブ搬送用クレーンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼工場で連続鋳造され、所定長さに切断されたスラブをクレーンの自動運転で掴み、次工程に搬送し積み降ろす工程において、専用のスラブ掴み装置を装備した自動クレーンの掴みと解放を自動制御するスラブ搬送用クレーンの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼工場で鋳造されたスラブは、次の熱延工程や厚板工程にスラブを流すために、スラブ搬送用の専用のスラブ掴み装置を装備した有人クレーンを用いて、ストックヤードに搬送したり、次工程への搬送台車に積載するなどの有人作業を行っている。
近年では、このクレーン搬送工程の効率化を図るため、クレーンの自動化技術が求められ、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1~5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-20795号公報
【文献】特開2013-220898号公報
【文献】特開2019-189398号公報
【文献】実開昭59-46979号公報
【文献】実開昭62-203185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、長尺のスラブをスラブリフター或いはスラブトングなどのスラブ掴み装置を装着したクレーンでスラブ中央付近を掴み持ち上げると、スラブの両端が自重で下に垂れ下がり、それに反して中央部が盛り上がる現象が発生する。
スラブ掴み装置は、掴んだスラブの自重で掴み力が出る構造をしているが、スラブの両端が垂れ下がった状態でスラブを降ろそうとすると、掴んだスラブの両端の垂れ下がり部分が着床した時に、スラブ掴み装置に掛かるスラブの荷重が無くなり、それによりスラブの掴み力が無くなり掴んでいるスラブを解放してしまう。
この時、スラブ両端の垂れ下がりに反して中央部が盛り上がっているため、その中央の盛り上がり部分と下段との隙間を解放したスラブが一気に落下し、解放されたスラブの下面が下段スラブと衝突し、過大な衝撃と音が発生する。
【0005】
本発明は、上記スラブの両端が垂れ下がった状態でスラブを降ろす際に生じる問題点に鑑み、過大な衝撃と衝突音が発生しないように掴みスラブを降ろすことができるスラブ搬送用クレーンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のスラブ搬送用クレーンの制御方法は、スラブ掴み装置でスラブを掴んで巻き上げた時に、スラブの両端に発生する垂れ下がりに反してスラブ中央が盛り上がる状態を検出する、スラブ中央のスラブ高さ位置の検出装置をスラブ掴み装置に装備し、スラブを降ろして掴みを解放する際に、前記スラブ高さ位置の検出装置の検出値が、前記スラブ高さ位置の検出装置により予め検出、記憶しておいたラブ中央が盛り上がる前のスラブが載置状態の値に戻るまで、スラブ掴み装置をスラブの荷重が掛かった状態に保持しつつ、徐々に巻き下げるように制御し、スラブ中央付近の盛り上がりが小さく又は無くなってから掴みを解放するようにすることを特徴とする。
【0007】
この場合において、スラブの荷重をスラブ掴み装置の爪に受けることにより爪がせり出し、スラブ掴み装置の掴み力を発生する構造のスラブ掴み装置に、爪の出入り状態を検出する検出装置を装備し、爪に掛かるスラブの荷重が掛かった状態を保持するように制御することができる。
【0008】
また、クレーン又はクレーン吊具に荷重検出器を装備し、該荷重検出器の検出値により、スラブ掴み装置にスラブの荷重が掛かった状態を保持するように制御することができる。
【0009】
本発明のスラブ搬送用クレーンの制御方法の作用は、以下のとおりである。
スラブ両端が垂れ下がるとスラブ中央部分が盛り上がる。
掴み装置の中央部分に装備したスラブの上面位置を検出するセンサーの値を管理し、スラブの地切り時にスラブの中央部分が盛り上がった量を、該センサーにより検出しコンピューターに記憶する。
【0010】
スラブを置場に降ろす際は、荷重計或いは掴み装置の爪に取り付けたスイッチでスラブの重量がクレーンに掛かっていることを監視しながら、該重量が完全に無くならないように、かつ前記で検出のスラブ中央部の盛り上がり量が無くなるまで少しずつゆっくりと巻き下げる。
これにより、スラブ中央部の盛り上がりが無くなり下段のスラブと密着した状態でスラブの掴みが解放されるので、下段スラブとの当りによる衝撃や音が解消される。
【発明の効果】
【0011】
スラブのクレーン搬送にはトングやリフターと言ったスラブ掴み装置を用いて搬送をするが、その掴み装置によるスラブの掴み、解放操作がベテランのクレーン運転士の手動運転技量によるところが大きくスラブ運搬用クレーンによる荷役作業の自動化が困難な状況であった。
従来、ベテランの手動運転技量に頼っていたスラブの掴みと解放部分を、自動制御を可能とした本発明は、スラブ搬送クレーン全工程の自動化を可能とするもので、その意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スラブリフターにより搬送台車にスラブを降ろす状態を示す説明図である。
図2】スラブリフターのアーム部位の詳細図である。
図3】スラブリフターを用いてスラブを掴み解放する工程を示すフロー図である。
図4】スラブトングでスラブを釣り上げた状態を示す説明図である。
図5】スラブトングを用いてスラブを掴み解放する工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の自動クレーンによる高温スラブの掴み解放方法について、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図2及び図4に、本発明のスラブ搬送用クレーンの制御方法に使用するスラブ運搬用のクレーンに装備するスラブ把握用の掴み装置の一例としてスラブリフターSLとスラブトングSTを示す。
【0015】
製鉄所の連続鋳造機により排出された鉄は一定長さに切断され、図1に示すスラブリフターSLや図4に示すスラブトングSTなどのスラブ掴み装置を装備した専用のクレーンCRによりスラブを把握し、ストックヤードなどに運搬したり、次工程の運搬台車TCなどに運搬する。
【0016】
図1図2に示すスラブリフターSL方式のスラブ掴み装置は、スラブリフターSLの中央付近にスラブ上面高さ検出用にスラブ接触用重錘WTがスラブ高さ測定用ワイヤーSWにより吊り下げられ、スラブ高さ測定用ワイヤーはセルシンモーターSMにより巻き取られ該ワイヤーSWが緊張された状態にある。これにより、セルシンモーターSMの位相検出で該ワイヤーSWの長さを測定し、爪TAとスラブSBの上面との相関距離を把握しクレーンの巻上位置を調節し、爪TAの高さ位置を合わせた後に掴み動作に移行する。
【0017】
掴み動作では、左右のアーム部位ABを図2に示すアームスライドAS方向に動かしてスラブの側面に爪TAを接触させ押し込む。
この状態で巻ドラムDRにワイヤーロープWLを巻き取りスラブリフターSLを巻き上げると、爪TAがスラブSBの自重により、スプリングSPの力に勝って斜め方向である爪の出入り方向TSに出てくる。これによりスラブSBの自重により爪TAがスラブSBに押さえ込まれ、把握力が出る構造となっている。
【0018】
このスラブ掴み動作を自動で行う場合は、爪TAの出入り状態を、爪出入り検出器LSで検出し、この値を管理することで掴んでいる状態か否かが把握でき、自動運転の情報として使用する。
自動運転時に掴んでいる状態か否かを把握する方法は、クレーンCR上のロードセルLCの荷重値を管理する方法でもできるが、検出の応答性はロードセルLCよりも爪TAの検出値の方が確実なので、爪出入り検出器LSが検出器として使用できるのであれば、爪出入り検出器LSを用いる方が良い。
【0019】
クレーンCRの巻ドラムDRでワイヤーロープWLを巻き取り高温のスラブSBを低速で巻き上げると、爪出入り検出器LSにより爪が出たことが確認され、その時のセルシンモーターSMの値をコンピューターにA値として記憶しておく。(図3の0004の工程)更に巻き上げると高温のスラブSBは、スラブリフターSLの2か所の掴み点を支点とし、スラブSBの両側が垂れ下がりDP、スラブリフターSLの2か所の掴み点の内側は盛り上がりRSが発生する。この盛り上がり量をセルシンモーターSMの値で確認する。
【0020】
ロードセルLCの読み取り値でスラブの地切りが完全に行われたことが確認されると、高速でスラブを巻き上げ、クレーンCRの横行、走行を行い、運搬台車TC等のスラブの卸し位置に位置決め停止し、巻ドラムDRのワイヤーロープWLを解き巻下げを開始し、着床位置手前で巻下げ速度を低速に切り替える。
【0021】
スラブSBを着床手前から低速で巻き下げていくと、先ず垂れ下がりDPが生じているスラブSBの両端が着床する。そして更に低速巻下げをすると湾曲したスラブが突っかかって、爪TAに掛かるスラブSBの荷重が抜けて爪出入り検出器が爪の戻りを検出する。そこで巻下げを一旦止めると、中央の盛り上がりRSが小さくなり爪にスラブの重量が掛かり爪出入り検出器LSが爪が出た状態を再び検出する。それを受けてクレーンCRの定速巻下げを再び行い爪出入り検出器LSが引っ込み出したことを検出すると再び巻下げを停止する。この低速巻下げと停止を繰り返した後(図3の0007~0010)にセルシンモーターSMの読み取り値がコンピューターに記録したA値に戻ったことを確認し(図3の0010から0011への移行工程)、爪出入り検出器LSが爪が完全に引っ込んだ状態を検出するところまで低速巻下げを行い、巻下げを停止し、アームAMをアームスライドASさせてアームAMを完全に開く。
【0022】
スラブSBの盛り上がりRSが残ったままでアームAMを開放してしまうと、盛り上がりRS部分が、その下の置場上面或いは下段スラブ上に落下衝突し、衝突音や衝撃が発生してしまうが、前記のとおりセルシンモーターSMの読み取り値からスラブSBの盛り上がりRSが解消されるまで爪TAをスラブSBに引っ掛けるように制御することで、衝突音や衝撃を解消することができる。
【0023】
図4に示すスラブトングSTは、パンタグラフ状にアームAMを組まれた構造のスラブ掴み装置で、巻上ワイヤーHWを巻き上げて、上フレームHFと下フレームBFとの寸法を広げると爪TAがスラブSBに食い込んで、掴み力が出る構造である。また開閉ワイヤーCWを巻き上げて、上フレームと下フレームの寸法を縮めると爪TAを解放できる構造である。
【0024】
スラブトングSTのスラブ高さ検出は、スラブリフターSLと同様にスラブ接触用重錘WTを吊るすスラブ高さ測定用ワイヤーSWを巻き取るセルシンモーターSMにより検出可能であるが、スラブトングSTの爪TAの構造は、スラブリフターSLの様な構造は困難であることから、爪の出入り検出ではなく、クレーンCR上のロードセルLCを用いて爪の掛かり具合を図5の工程に従って制御する。
【0025】
クレーン横行走行を行い、掴みスラブSB上に停止すると、巻下げを行いセルシンモーターSMの値で位置決め停止する。続いて、開閉ワイヤーを巻下げてスラブトングSTの爪TAをスラブSBに接触させる。(図5の0101~0103)
この状態で巻上ワイヤーHWを巻き上げてスラブトングに掴み力を発生させスラブSBを低速で巻き上げる。この時、クレーン上のロードセルLCが荷重が掛かり出したことを検出ところでセルシンモーターSMの値を読み取り、コンピューターにその時のセルシンモーターSMの値をA値として記憶する。(図5の0104)
記憶が終わると巻上速度を上げて移動高さまで巻き上げ、横行、走行をしてスラブ降ろし位置上方まで移動する。
【0026】
スラブSBの卸し位置でクレーンの巻下げを行い、着床手前で減速し低速に切り替え巻き下げる。(図5の0106)この時、最初に両側の垂れ下がり部分が着床し、クレーン上のロードセルLCの値が下がってくる。このロードセルLCの読み取り値が規定値のB値以下になった時、巻下げを停止する。するとスラブSBの垂れ下がりが解消されるにつれて、スラブトングSTの爪TAに掛かる重量が重くなり、ロードセルLCの値がB値を超えてくる。すると巻下げを入れて、B値より超えたところで巻下げを停止する。
これを繰り返すうちにスラブ中央部の盛り上がりが解消されてきてセルシンモーターSMの値がA値に近づいてくる。なお、B値は、セルシンモーターSMの値がA値に近づくにつれて数値を小さく変化させる変数である。
最後にセルシンモーターSMの値がA値に戻った時、開閉ワイヤーCWを巻き上げ、スラブを完全に解放する。
【0027】
ここで、スラブリフターSLについては、爪TAの出入り状態で制御し、スラブトングSTについては、爪TAの出入り状態をロードセルLCの値で制御することで説明したが、何れの掴み装置に対しても、これに限定したものではない。
【0028】
以上、本発明のスラブ搬送用クレーンの制御方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のスラブ搬送用クレーンの制御方法は、今までベテランクレーン運転士による手動運転でスラブの掴み解放操作を行っていたものを、手動のスラブ搬送用クレーンに一般的に装備されている機構を活用し、自動クレーンに必要とされる最低限の機器の追加で、スラブの掴み解放を自動で制御できるようにしたもので、スラブ搬送用クレーン運転の無人化、省人化の目的で良好に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
CR クレーン
DR 巻ドラム
LC ロードセル
WL ワイヤーロープ
SL スラブリフター(スラブ掴み装置)
SB スラブ
WT スラブ接触用重錘
SW スラブ高さ測定用ワイヤー
SM セルシンモーター
AB アーム部位
AM アーム
TA 爪
RS 盛り上がり
DP 垂れ下がり
TC 運搬台車
SK 積み重ね
BM スライドガイドビーム
SP スプリング
LS 爪出入り検出器
AS アームスライド
TS 爪の出入り方向
ST スラブトング(スラブ掴み装置)
CW 開閉ワイヤー
HW 巻上ワイヤー
HF 上フレーム
BF 下フレーム
図1
図2
図3
図4
図5