IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハーヴェー ハイドローリック エスイーの特許一覧

特許7467796油圧トリム装置、ボートモータ及びボート
<>
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図1
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図2
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図3
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図4
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図5
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図6
  • 特許-油圧トリム装置、ボートモータ及びボート 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】油圧トリム装置、ボートモータ及びボート
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/08 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B63H20/08 510
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022138167
(22)【出願日】2022-08-31
(65)【公開番号】P2023084654
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】10 2021 213 912.4
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518097316
【氏名又は名称】ハーヴェー ハイドローリック エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フランツ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】オステルリート, ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュテグミュラー, ミヒャエル
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-166192(JP,A)
【文献】特開2020-124996(JP,A)
【文献】特開2006-143066(JP,A)
【文献】実開昭62-100297(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0305586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 5/125,20/00,20/08,
21/12- 21/17,25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのトリムシリンダ(2)と、前記トリムシリンダ(2)内において第1の端部位置(EP1)と第2の端部位置(EP2)との間で軸線方向に移動可能なピストンロッド(3)と、トリムプレート(5)と、油圧ユニットとを有するボートモータ(100)用の油圧トリム装置(1)であって、
前記トリムシリンダ(2)が前記油圧ユニットを通して加圧されて前記ピストンロッド(3)を伸長させることができ、
前記ピストンロッド(3)が接触部(4,4’)を有し、前記トリムプレート(5)が接触面(6)を有し、
前記接触部(4,4’)が前記接触面(6)と接触し、
前記接触部(4,4’)が、前記第1の端部位置(EP1)と前記第2の端部位置(EP2)との間での前記ピストンロッド(3)の移動中に前記接触面(6)に沿って前記接触面(6)に対して移動する、油圧トリム装置(1)において、
前記接触面(6)が、前記ピストンロッド(3)の方向で凸の湾曲を少なくとも部分的に有し、
前記接触部(4,4’)が、前記ピストンロッド(3)の前記第1の端部位置(EP1)で前記接触面(6)上の第1の接触位置(AP1)にあり、前記ピストンロッド(3)の前記第2の端部位置(EP2)で前記接触面(6)上の第2の接触位置(AP2)にあり、前記第1の接触位置(AP1)と前記第2の接触位置(AP2)との間の前記接触面(6)の前記凸の湾曲が非対称であることを特徴とする、油圧トリム装置(1)。
【請求項2】
前記ピストンロッド(3)が中心中間軸線(MA)を有し、前記凸の湾曲が、前記第1の端部位置(EP1)と前記第2の端部位置(EP2)との間の前記ピストンロッド(3)の任意の位置における前記ピストンロッド(3)の前記中心中間軸線(MA)が前記トリムプレート(5)に対して直交する又は前記トリムプレート(5)上で力導入方向(KE)に対して最大6°傾斜されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧トリム装置(1)。
【請求項3】
前記ピストンロッド(3)の前記中心中間軸線(MA)が前記トリムプレート(5)上で力導入方向(KE)に対して1.5°~4.5°傾斜されることを特徴とする、請求項に記載の油圧トリム装置(1)。
【請求項4】
前記ピストンロッド(3)は、前記第2の接触位置にあるときに、前記第1の接触位置にあるときよりも伸長されており、
前記ピストンロッド(3)の前記中心中間軸線(MA)が前記第1の接触位置(AP1)の方向に力導入方向(KE)に対して傾斜されることを特徴とする、請求項に記載の油圧トリム装置(1)。
【請求項5】
前記接触部(4)が球面接触部であることを特徴とする、請求項1に記載の油圧トリム装置(1)。
【請求項6】
前記接触部(4’)が平面接触部であることを特徴とする、請求項1に記載の油圧トリム装置(1)。
【請求項7】
ボートドライブ(105)と請求項1~のいずれか一項に記載の油圧トリム装置(1)とを備えるボートモータ(100)であって、前記トリムプレート(5)が前記ボートドライブ(105)上に配置されている、ボートモータ(100)。
【請求項8】
船体(102)と請求項に記載のボートモータ(100)とを有するボート(100)であって、前記ボートドライブ(105)が前記油圧トリム装置(1)によって前記船体(102)上に回動可能に配置される、ボート(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボートモータ用の油圧トリム装置、かかるトリム装置を備えるボートモータ、及び、かかるボートモータを備えるボートに関する。本発明によるボートモータは、通常、ボートドライブ、例えば船外機又は船尾ドライブを備える。ボートドライブは、トリム装置によってボートの船体上に回動可能に配置される。
【背景技術】
【0002】
前述したようなボートモータ用の油圧トリム装置は、従来技術、例えば米国特許第5,597,333号明細書又は国際公開第01/98142号パンフレットから知られている。通常、これらの油圧トリムシステムは、油圧リフト装置と組み合わせて使用される。これらの複合装置は、一方では、ボートドライブ、例えば船外機を、リフト装置の少なくとも1つのリフトシリンダを介して、ドライブのプロペラが水中からほぼ完全に又は完全に持ち上げられる休止位置に回動させるために使用される。
【0003】
また、トリム装置の少なくとも1つのトリムシリンダは、ボートの走行中にいわゆるパワートリムを行なうために用いられる。ここで、ボートドライブは、移動中の水面に対するボートの船体の最適な位置合わせ又は位置決めを得るためにボートの横方向軸線を中心とした回転によって微調整される。船体と水面との間の次善最適な位置合わせは、プロペラのキャビテーションに起因する推進力の損失、並びに、誤った動力入力方向、不安定な取り扱い、及び、燃料消費の増大をもたらす。
【0004】
この目的のために、油圧トリム装置は、少なくとも1つのトリムシリンダに加えて、油圧ユニット及びトリムプレートを有する。トリムシリンダは、第1の端部位置と第2の端部位置との間でトリムシリンダ内で軸線方向に移動可能なピストンロッドを備える。本発明の意味において、第1の端部位置は最小トリム位置に対応することができ、この位置はピストンロッドの完全収縮位置に対応することができる。第2の端部位置は、最大トリム位置に対応することができ、これは、ピストンロッドの完全に伸長位置に対応することができる。ピストンロッドを第2の端部位置の方向に伸長させるために、トリムシリンダは、油圧ユニットを通して既知の態様で加圧される。
【0005】
ピストンロッドは、トリムプレートの接触面と接触する接触部を有する。トリムプレートは、ピストンロッドを伸縮させることによってボートドライブが船体に対して回動されるようにボートドライブ上に配置される。ピストンロッドが第1の端部位置と第2の端部位置との間で移動するとき、接触部は接触面に沿って接触面に対して移動する。
【0006】
既知のトリム装置において、接触部と接触面との間の移動は、例えばトリムシリンダのガイドブッシュの摩耗を増大させる横方向力をもたらし得る。特に、接触部と接触面との間の摩擦もまた、ピストンロッドを停止させて交互に移動させ、これも振動の形態で顕著である。この現象は、スリップスティック効果とも称される。結果として、それ自体が一種のがたつきとして現れる望ましくないノイズ形成もある。一般的な解決策として、接触面又は接触部を定期的に潤滑することが提案され、これはまた、接触面と接触部との間の摩耗にプラスの効果を有する。
【0007】
更に、米国特許第5,597,333号明細書は、トリムプレートがボールベアリングの性質を帯びていてもよいこと、又は、接触面が対称的に凹状に湾曲されてもよい、すなわち、接触部から離れるように内側に向けて湾曲されてもよいことを示唆する。
【0008】
これの欠点は、ボールベアリングの形態の解決策が非常に複雑であり、したがって製造に費用がかかることである。また、凹状に湾曲された接触面による解決策も、潤滑油の定期的な塗布によってのみ満足に機能するにすぎず、それにより、横方向力は、ピストンロッドの位置に応じて、完全に平坦な接触面を有する場合よりも更に高くなる。潤滑油のかなりの割合がボートモータでのその水中使用に起因して水路に排出されるため、潤滑油の使用の増大も環境上の理由から望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、潤滑油の使用を低減しつつ、望ましくない横方向力及び望ましくない騒音の発生を効果的に防止することができる、ボートモータ用の油圧トリム装置を提供することである。上記課題は、請求項1に記載の油圧トリム装置によって解決される。好ましい実施形態が従属請求項に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る油圧トリム装置は、接触面がピストンロッドの方向で凸の湾曲を少なくとも部分的に有するという点で、従来技術で知られているトリム装置に優る特徴を持つ。換言すれば、接触面は、ピストンロッド又は接触部の方向で外側に少なくとも部分的に湾曲される。このようにして、横方向力が大幅に最小化されるようにすることができ、それにより、潤滑油の使用も顕著に低減することができる。本出願人による試験によれば、平坦な接触面を有する従来のトリム装置と比較して、同じ潤滑油の使用で最大5倍の移動回数を達成できることが分かった。
【0011】
好ましくは、接触部は、ピストンロッドの第1の端部位置で第1の接触位置にあり、ピストンロッドの第2の端部位置で第2の接触位置にある。好ましくは、第1の接触位置と第2の接触位置との間の接触面の凸の湾曲は非対称である。言い換えると、トリムプレートは、それにより、第1の端部位置と第2の端部位置との間で第1の仮想平面に沿って対称であるが、第1の平面に対して垂直な第2の平面に沿って非対称である。したがって、トリムプレートは、トリム又はパワートリムに関してボートドライブの対応する動態に個別に適合され得る。
【0012】
好ましくは、第1の接触位置と第2の接触位置との間の接触面は、ピストンロッドの方向で完全に凸の湾曲を有する。このことは、接触面が部分的に又は断面で凸状に湾曲されるだけでなく、完全に湾曲されることを意味する。
【0013】
好ましくは、ピストンロッドは中心中間軸線を有し、接触面の凸の湾曲は、第1の端部位置と第2の端部位置との間のピストンロッドの任意の位置におけるピストンロッドの中心中間軸線がトリムプレート又は接触面に対して直交する或いはトリムプレート又は接触面に対して最大6°傾斜されるようになっている。ピストンロッドの中心中間軸線がトリムプレート又は接触面に対して傾斜される場合、中心中間軸線は、トリムプレート又は接触面に対して1.5°~4.5°、好ましくは2°~4°、特に好ましくは3°傾斜されることが有用である。完全に直交する配置は、最も低い横方向力をもたらし、その結果、最も低い摩耗をもたらす。特定の傾斜により、スリップスティック効果を大幅に抑制することができ、出願人による試験では、3°の傾斜で横方向力の低減とスリップスティック効果の低減との間の最良の妥協点を達成できることが分かっている。
【0014】
好ましくは、中心中間軸線は、第1の接触位置の方向に傾斜される。中心中間軸線を第1の接触位置の方向に傾けることによって、特にピストンロッドが伸長されるときにスリップスティック効果が著しく低減される。
【0015】
接触部は、球状の接触部であることが好ましい。これは、接触部と接触面との間の点接触をもたらす。或いは、接触部が平面接触部であってもよい。これは線接触をもたらし、それにより、面圧が低下する。また、平坦な接触部は製造し易い。勿論、接触部の他の形状、例えば、半円筒形、部分円筒形又は円錐台形も考えられる。
【0016】
更に、この問題の解決は、請求項8に記載のボートモータによって達成される。本発明によれば、ボートモータは、前述のトリム装置及びボートドライブを備える。トリムプレートは、ボートドライブに取り付けられる。ボートドライブは、特に船外機又は船尾ドライブであってもよい。
【0017】
更に、課題の解決は、ボート、特にスポーツボートで成功する。本発明に係るボートは、船体と前述したボートモータとを有し、ボートドライブは、油圧トリム装置によって船体に回動可能に配置される。
【0018】
以下、図に示される典型的な実施形態を参照して本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】船外機を有するボートの第1の側面図を概略的に示す。
図2図1に示されるボートの第2の側面図を概略的に示す。
図3】トリムシリンダと第1の端部位置に配置されたピストンロッドとを有する第1の実施形態に係る油圧トリム装置の側面図を概略的に示す。
図4】ピストンロッドが中間位置にある図3に示される油圧トリム装置を概略的に示す。
図5】ピストンロッドが第2の端部位置にある図3に示される油圧トリム装置を概略的に示す。
図6図3に示される油圧トリム装置の詳細を概略的に示す。
図7】第2の実施形態に係る油圧トリム装置の側面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2には、本発明に係るボートモータ100を有するボート101が示される。この実施形態では、ボートはレクリエーションボートであり、ボートモータ100は船外機105の形態のボートドライブを有する。既知の態様において、船外機105は、プロペラ104を備えるとともに、下降位置(図1参照)と上昇位置(図2参照)との間においてジョイント103を介してボート101の船体102に対して回動可能である。この目的のため、ボート101は、複合油圧トリムリフト装置110の一部として本発明に係る油圧トリム装置1を有する。
【0021】
油圧トリムリフト装置110は、リフトシリンダ106と、この実施形態では油圧トリム装置1の一部としてのトリムシリンダ2とを有する。勿論、2つ以上のリフトシリンダ及び2つ以上のトリムシリンダを有する実施形態も考えられる。更に、油圧ユニット(より詳細には図示せず)が設けられ、該油圧ユニットを通してリフトシリンダ106及びトリムシリンダ2を既知の態様で加圧することができる。
【0022】
トリムシリンダ2は、トリムシリンダ2内の第1の端部位置EP1と第2の端部位置EP2との間で軸線方向に移動され得るピストンロッド3を有し、これについては図3図5も参照されたい。油圧ユニットを通してトリムシリンダ2を加圧することにより、従来のようにピストンロッド3が伸長される。ピストンロッド3の軸線方向端部には、船外機105に配置されているトリムプレート5に面する接触部4,4’が設けられる。接触部4,4’は、トリムプレート5の接触面6と接触している。
【0023】
ボート101が移動している間のパワートリミング中に、トリムシリンダ2が伸長して、トリムシリンダ2のピストンロッド3の接触部4,4’がトリムプレート5の接触面6に沿って移動し、ボート101の横方向軸線を中心に船外機105をジョイント103に沿って船体102に対して回動させて、下降位置(図1)と上昇位置(図2)との間で微調整する。船体102と水面との間の次善最適な位置合わせは、プロペラ104のキャビテーションに起因する推進力の損失、並びに、誤った力印加方向、不規則な取り扱い、及び、燃料消費の増大をもたらす。
【0024】
図3には、第1の実施形態に係る複合油圧トリムリフト装置110の一部として油圧トリム装置1が示される。明確にするために船外機105は示されない。図3に示される状態は、船外機105が完全に下げられ、したがって微調整されない図1に示される状態に本質的に対応する。トリムシリンダ2のピストンロッド3は第1の端部位置EP1にあり、ピストンロッド3の接触部4はトリムプレート5の接触面6上の第1の接触位置AP1にある。
【0025】
この実施形態では、ピストンロッド3の接触部4が球形であるため、接触部4と接触面6との間に点接触が存在する。図示のように、トリムプレート5の接触面6は、以下でより詳細に説明するように、ピストンロッド3又は接触部4の方向で凸の湾曲を有する。
【0026】
パワートリムを行なうために、トリムシリンダ2が従来のように油圧ユニットによって加圧され、ピストンロッド3が伸長する。ここでは、船外機105がジョイント103を介して船体102に対して移動又は回動されるように、ピストンロッド3の接触部4がトリムプレート5の接触面6に沿って移動し、トリムプレート5を介して船外機105に力が加えられる。
【0027】
図4は、トリムプレート5の接触面6に対するピストンロッド3の接触部4の中間位置を示し、また、図5は、図2に示される状態に本質的に対応する状態を示しており、最大パワートリムに対応している。図5に示される状態では、ピストンロッド3が第2端部位置EP2にあり、ピストンロッド3の接触部4がトリムプレート5の接触面6上の第2の接触位置AP2にある。
【0028】
図6図3からの詳細を示し、この場合、ピストンロッド3の接触部4がトリムプレート5の接触面6上の第1の接触位置AP1に配置されている。ピストンロッド3は中心中間軸線MAを有する。トリムプレート5の接触面6の湾曲は、中心中間軸線MAが第1の接触位置AP1と第2の接触位置AP2との間で接触面6に沿って移動する最中に破線矢印で示す力導入方向KEに対して常に所定の角度αだけ傾斜されるように選択される。この典型的な実施形態では、α=3°である。換言すると、ピストンロッド3はトリムプレート5の接触面6に対して直交していないが、中心中間軸線MAは、力導入方向KEに対して角度α=3°だけ第1の接触位置APの方向に傾斜される。接触面6又は接触面6の湾曲はそれぞれ、接触面7に対する接触部4の全ての位置に関して角度αが同じままであるように構成される。
【0029】
ピストンロッド3の中心中間軸線MAがトリムプレート5又は接触面6に対して完全に直交している場合、α=0°及びMA=KEが適用される。この場合、横方向力は、直交力印加に起因して最小になるが、顕著なスリップスティック効果が発生し得る。α≦6°により、特に1.5°≦α≦4.5°の範囲では、導入された横方向力とスリップスティック効果の発生との間の最適な妥協を達成できることが分かってきた。
【0030】
トリムプレート5の接触面6の湾曲を構成する場合、これは、それがトリム又はパワートリムに関してボートモータ100の対応する動態に個別に適合されるように最初に選択される。ここで、理論上、トリムプレート5又は接触面6に対するピストンロッド3の中心中間軸線MAの直交位置合わせが常に達成されるようになっていると仮定する。続いて、必要に応じて、トリムプレート5の接触面6が最大6°の角度αだけ回転される。これは、第1の接触位置AP1と第2の接触位置AP2との間でのトリムプレート5の接触面6の非対称で凸の湾曲をもたらす。
【0031】
図7には、第2の実施形態に係る複合油圧トリムリフト装置110の一部として油圧トリム装置1が示される。油圧トリム装置1の第2実施形態は、ピストンロッド3の接触部4’の形態においてのみ、図3図6に示される第1の実施形態とは異なる。
【0032】
図示のように、この第2の実施形態におけるピストンロッド3の接触部4’は、平坦面として設計される。したがって、第1の実施形態に係る接触部の球形形態とは対照的に、ピストンロッド3の接触部4’とトリムプレート5の接触面6との間に線接触がある。この実施形態では、角度α=0°である。全体として、これは、スリップスティック効果を最小限に抑えた低い表面圧力をもたらす。
【0033】
典型的な実施形態
既に説明したように、本明細書に記載の技術は、様々な方法で実施されてもよい。その点に関して、前述の開示は、以下の典型的な実施に記載されるシステム、方法、並びに、それらの組み合わせ及び部分的組み合わせを含むがこれらに限定されないことが意図される。好ましい実施形態は、以下の段落に記載される。
【0034】
A)少なくとも1つのトリムシリンダ(2)と、トリムシリンダ(2)内において第1の端部位置(EP1)と第2の端部位置(EP2)との間で軸線方向に移動可能なピストンロッド(3)と、トリムプレート(5)と、油圧ユニットとを有するボートモータ(100)用の油圧トリム装置(1)であって、トリムシリンダ(2)が油圧ユニットを通して加圧されてピストンロッド(3)を伸長させることができ、ピストンロッド(3)が接触部(4,4’)を有し、トリムプレート(5)が接触面(6)を有し、接触部(4,4’)が接触面(6)と接触し、接触部(4,4’)が、第1の端部位置(EP1)と第2の端部位置(EP2)との間でのピストンロッド(3)の移動中に接触面(6)に沿って接触面(6)に対して移動し、接触面(6)が、ピストンロッド(3)の方向で凸の湾曲を少なくとも部分的に有する、油圧トリム装置(1)。
【0035】
B)接触部(4,4’)が、ピストンロッド(3)の第1の端部位置(EP1)で第1の接触位置(AP1)にあり、ピストンロッド(3)の第2の端部位置(EP2)で第2の接触位置(AP2)にあり、第1の接触位置(AP1)と第2の接触位置(AP2)との間の接触面(6)の凸の湾曲が非対称である、段落Aに記載の油圧トリム装置(1)。
【0036】
C)ピストンロッド(3)が中心中間軸線(MA)を有し、凸の湾曲が、第1の端部位置(EP1)と第2の端部位置(EP2)との間のピストンロッド(3)の任意の位置におけるピストンロッド(3)の中心中間軸線(MA)がトリムプレート(5)に対して直交する又はトリムプレート(5)に対して最大6°傾斜されるようになっている、段落A又はBに記載の油圧トリム装置(1)。
【0037】
D)ピストンロッド(3)の中心中間軸線(MA)が、トリムプレート(5)に対して1.5°~4.5°、好ましくは2°~4°、特に好ましくは3°傾斜される、段落Cに記載の油圧トリム装置(1)。
【0038】
E)ピストンロッド(3)の中心中間軸線(MA)が第1の接触位置(AP1)の方向に傾斜される、段落C又はDに記載の油圧トリム装置(1)。
【0039】
F)接触部(4)が球面接触部である、段落A~Eのいずれか1つに記載の油圧トリム装置(1)。
【0040】
G)接触部(4’)が平面接触部である、段落A~Eのいずれか1つに記載の油圧トリム装置(1)。
【0041】
H)ボートドライブ(105)と段落A~Gのいずれか1つに記載の油圧トリム装置(1)とを備えるボートモータ(100)であって、トリムプレート(5)がボートドライブ(105)上に配置される、ボートモータ(100)。
【0042】
I)船体(102)と段落Hに記載のボートモータ(100)とを有するボート(100)、特にスポーツボートであって、ボートドライブ(105)が油圧トリム装置(1)によって船体(102)上に回動可能に配置される、ボート(100)。
【符号の説明】
【0043】
1 油圧トリム装置
2 トリムシリンダ
3 ピストンロッド
4,4’ 接触部
5 トリムプレート
6 接触面
100 ボートモータ
101 ボート
102 船体
103 ジョイント
104 プロペラ
105 ボートドライブ
106 リフトシリンダ
110 油圧式トリムリフト装置
AP1 第1の接触位置
AP2 第2の接触位置
EP1 第1の端部位置
EP2 第2の端部位置
KE 力導入方向
MA 中央中心軸線
α 角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7