(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】バスバー診断装置、バッテリパック、エネルギー貯蔵システム及びバスバー診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20240409BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240409BHJP
G01R 31/36 20200101ALN20240409BHJP
【FI】
G01R31/54
H02J7/00 Q
G01R31/36
(21)【出願番号】P 2022575457
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2022001154
(87)【国際公開番号】W WO2022158909
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008928
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ヨン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ナク-チューン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ム-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジュ-ヨン
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078658(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0055065(KR,A)
【文献】特開2005-134154(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069390(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143280(WO,A1)
【文献】特表2021-511494(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0137389(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 31/36-31/396
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列連結された複数のバッテリセルを含む第1バッテリモジュールのプラス端子と直列連結された複数のバッテリセルを含む第2バッテリモジュールのマイナス端子との間に連結されたバスバーを含むバッテリパックのためのバスバー診断装置において、
複数の電圧センシングピンを含み、隣接した2つの電圧センシングピンごとの電位差を用いて、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧を検出するように構成されるバッテリ監視回路と、
前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの正極及び負極を前記複数の電圧センシングピンに連結する複数の電圧センシングラインを含む電圧センシングチャネルと、
前記複数の電圧センシングピンのうち、第1電圧センシングピン及び第2電圧センシングピンを通じて前記バスバーに連結されるが、前記第1電圧センシングピンは、前記複数の電圧センシングラインのうち、1つを通じて前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの正極に連結され、前記第2電圧センシングピンは、前記複数の電圧センシングラインのうち、他の1つを通じて前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの負極に連結されるバイパスユニットと、
前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧に基づいて、前記バスバーを診断するように構成される制御回路と、
を含
み、
前記制御回路は、
前記バッテリパックが設定時間以上、放電モードに保持していると判定される場合、所定の診断時間ごとに、
前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルの平均電圧を決定し、
前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差、及び前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差が両方とも基準電圧差よりも大きな場合、診断カウントを所定値ほど増加させ、
増加した診断カウントが基準カウント以上である場合、前記バスバーが異常状態を有していることを示す診断フラグを設定するように構成される、バスバー診断装置。
【請求項2】
直列連結された複数のバッテリセルを含む第1バッテリモジュールのプラス端子と直列連結された複数のバッテリセルを含む第2バッテリモジュールのマイナス端子との間に連結されたバスバーを含むバッテリパックのためのバスバー診断装置において、
複数の電圧センシングピンを含み、隣接した2つの電圧センシングピンごとの電位差を用いて、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧を検出するように構成されるバッテリ監視回路と、
前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの正極及び負極を前記複数の電圧センシングピンに連結する複数の電圧センシングラインを含む電圧センシングチャネルと、
前記複数の電圧センシングピンのうち、第1電圧センシングピン及び第2電圧センシングピンを通じて前記バスバーに連結されるが、前記第1電圧センシングピンは、前記複数の電圧センシングラインのうち、1つを通じて前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの正極に連結され、前記第2電圧センシングピンは、前記複数の電圧センシングラインのうち、他の1つを通じて前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの負極に連結されるバイパスユニットと、
前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧に基づいて、前記バスバーを診断するように構成される制御回路と、
を含み、
前記制御回路は、
前記バッテリパックが休止モードまたは充電モードから放電モードに切り替えられたと判定される場合、
診断時間にわたった、前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧降下量、前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧降下量及び前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルの平均電圧降下量を決定し、
前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧降下量と前記平均電圧降下量との差、及び前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧降下量と前記平均電圧降下量との差が両方とも基準電圧降下量よりも大きな場合、前記バスバーが異常状態を有していることを示す診断フラグを設定するように構成される、バスバー診断装置。
【請求項3】
前記バイパスユニットは、ダイオードを含み、
前記ダイオードのアノード及びカソードは、それぞれ前記第1電圧センシングピン及び前記第2電圧センシングピンに連結される、請求項1
または請求項2に記載のバスバー診断装置。
【請求項4】
各電圧センシングラインは、所定の抵抗値を有する保護抵抗体を含む、請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載のバスバー診断装置。
【請求項5】
前記バッテリ監視回路は、
前記バッテリパックの電流経路に連結される一対の電流センシングピンをさらに含み、
前記一対の電流センシングピン間の電位差を用いて、前記電流経路を通じて流れる電流を検出するように構成される、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のバスバー診断装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差、及び前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差のうち少なくとも1つが、前記基準電圧差以下である場合、前記診断カウントを前記基準カウント未満の初期値と同様に設定するように構成される、請求項
1に記載のバスバー診断装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記バッテリパックが休止モードまたは充電モードから放電モードに切り替えられたと判定される場合、
前記診断時間にわたった電流変化量に所定の変換係数を乗算して、前記基準電圧降下量を決定するように構成される、請求項
2に記載のバスバー診断装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7の何れか一項に記載のバスバー診断装置を含む、バッテリパック。
【請求項9】
請求項
8に記載のバッテリパックを含む、エネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
請求項1から請求項
7の何れか一項に記載のバスバー診断装置によって実行可能なバスバー診断方法において、
前記バッテリ監視回路が、前記複数の電圧センシングピンのうち、隣接した2つの電圧センシングピンごとの電位差を用いて、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧を検出する段階と、
前記制御回路が、前記バッテリ監視回路によって検出された、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧に基づいて、前記バスバーを診断する段階と、
を含む、バスバー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年1月21日付の大韓民国特許出願番号第10-2021-0008928に対する優先権主張出願であって、当該出願の明細書及び図面に開示されたあらゆる内容は、引用によって本出願に援用される。
【0002】
本発明は、2つのバッテリモジュール間の直列連結に用いられるバスバーの異常を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、ノート型パソコン、ビデオカメラ、携帯用電話機のような携帯用電子製品の需要が急激に増大し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化されることによって、反復的な充電・放電が可能な高性能バッテリについての研究が活発に進められている。
【0004】
現在、商用化されたバッテリとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリなどがあるが、そのうち、リチウムバッテリは、ニッケル系のバッテリに比べてメモリ効果がほとんど起こらず、充電・放電が自在であり、自己放電率が非常に低く、エネルギー密度が高いという長所によって脚光を浴びている。
【0005】
最近、高電圧を提供するために、それぞれ複数のバッテリセルの直列接続体である2つ以上のバッテリモジュールをバスバーを通じて直列連結した構造のバッテリパックに対する需要が増大しつつある。
【0006】
ところで、外部からの衝撃やバスバー自体の老朽化などによって、バスバーに異常が発生する。バスバーが異常である場合、バッテリパックの安全性が低下するので、バスバーの異常を適切に診断できる方案が要求される。
【0007】
特許文献1は、バスバー自体の両端にわたった電圧またはバスバーとバッテリセルとの直列接続体の両端にわたった電圧の検出値に基づいて、バスバーの異常を検出している。しかし、バッテリセルに対する電圧測定とは独立してバスバーの電圧を測定しなければならないという点で、非効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0080315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題点を解決するために案出されたものであって、バスバーの電圧を測定する手続きなしでも、バスバーの両端に1つずつ接続された2つのバッテリセルの電圧履歴に基づいて、バスバーの異常を診断するバスバー診断装置、バッテリパック、エネルギー貯蔵システム及びバスバー診断方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解され、本発明の実施例によってより明らかになるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に表われた手段及びその組み合わせによって実現可能であるということを容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によるバスバー診断装置は、直列連結された複数のバッテリセルを含む第1バッテリモジュールのプラス端子と直列連結された複数のバッテリセルを含む第2バッテリモジュールのマイナス端子との間に連結されたバスバーを含むバッテリパックのために提供される。前記バスバー診断装置は、複数の電圧センシングピンを含み、隣接した2つの電圧センシングピンごとの電位差を用いて、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧を検出するように構成されるバッテリ監視回路;前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの正極及び負極を前記複数の電圧センシングピンに連結する複数の電圧センシングラインを含む電圧センシングチャネル;前記複数の電圧センシングピンのうち、第1電圧センシングピン及び第2電圧センシングピンを通じて前記バスバーに並列連結されるが、前記第1電圧センシングピンは、前記複数の電圧センシングラインのうち、1つを通じて前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの負極に連結され、前記第2電圧センシングピンは、前記複数の電圧センシングラインのうち、他の1つを通じて前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの正極に連結されるバイパスユニット;及び前記バッテリ監視回路によって検出された、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧履歴に基づいて、前記バスバーを診断するように構成される制御回路;を含む。
【0012】
前記バイパスユニットは、ダイオードを含みうる。前記ダイオードのアノード及びカソードは、それぞれ前記第1電圧センシングピン及び前記第2電圧センシングピンに連結される。
【0013】
各電圧センシングラインは、所定の抵抗値を有する保護抵抗体を含みうる。
【0014】
前記バッテリ監視回路は、前記バッテリパックの電流経路に連結される一対の電流センシングピンをさらに含みうる。前記一対の電流センシングピン間の電位差を用いて、前記電流経路を通じて流れる電流を検出するように構成することができる。
【0015】
前記制御回路は、前記バッテリパックが設定時間以上、放電モードに保持していると判定される場合、所定の診断時間ごとに、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルの平均電圧を決定し、前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差、及び前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差が両方とも基準電圧差よりも大きな場合、診断カウントを所定値ほど増加させ、増加した診断カウントが基準カウント以上である場合、前記バスバーが異常状態を有していることを示す診断フラグを設定するように構成することができる。
【0016】
前記制御回路は、前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差、及び前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧と前記平均電圧との差のうち少なくとも1つが、前記基準電圧差以下である場合、前記診断カウントを前記基準カウント未満の初期値と同様に設定するように構成することができる。
【0017】
前記制御回路は、前記バッテリパックが休止モードまたは充電モードから放電モードに切り替えられたと判定される場合、前記診断時間にわたった、前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧降下量、前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧降下量及び前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルの平均電圧降下量を決定し、前記第1バッテリモジュールの最上流に位置するバッテリセルの電圧降下量と前記平均電圧降下量との差、及び前記第2バッテリモジュールの最下流に位置するバッテリセルの電圧降下量と前記平均電圧降下量との差が両方とも基準電圧降下量よりも大きな場合、前記バスバーが異常状態を有していることを示す診断フラグを設定するように構成することができる。
【0018】
前記制御回路は、前記バッテリパックが休止モードまたは充電モードから放電モードに切り替えられたと判定される場合、前記診断時間にわたった電流変化量に所定の変換係数を乗算して、前記基準電圧降下量を決定するように構成することができる。
【0019】
本発明の他の側面によるバッテリパックは、前記バスバー診断装置を含む。
【0020】
本発明の他の側面によるエネルギー貯蔵システムは、前記バッテリパックを含む。
【0021】
本発明のさらに他の側面によるバスバー診断方法は、前記バスバー診断装置によって実行可能に提供される。前記バスバー診断方法は、前記バッテリ監視回路が、前記複数の電圧センシングピンのうち、隣接した2つの電圧センシングピンごとの電位差を用いて、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧を検出する段階;及び前記制御回路が、前記バッテリ監視回路によって検出された、前記第1バッテリモジュールの複数のバッテリセル及び前記第2バッテリモジュールの複数のバッテリセルのそれぞれの電圧履歴に基づいて、前記バスバーを診断する段階;を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施例のうち少なくとも1つによれば、バスバーの電圧を測定する手続きなしでも、バスバーの両端に1つずつ接続された2つのバッテリセルの電圧履歴に基づいて、バスバーの異常有無を診断することができる。
【0023】
本発明の実施例のうち少なくとも1つによれば、経時的に変化するバッテリパックの電流に基づいて、バスバーの異常有無の判定に用いられる基準(例えば、後述した基準電圧降下量)を調節することにより、バスバーの異常有無をより正確に診断することができる。
【0024】
本発明の効果は、前述した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を行うものなので、本発明は、そのような図面に記載の事項のみに限定されて解釈されてはならない。
【0026】
【
図1】本発明によるエネルギー貯蔵システムの構成を例示的に示す図面である。
【
図2】
図1に示されたバスバーの異常状態とバッテリセルの電圧の検出エラーとの関係の説明に参照される図面である。
【
図3】本発明によるバスバー診断方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図4】
図3の段階S320を具現するための第1実施例による異常検出プロセスを概略的に示すフローチャートである。
【
図5】
図3の段階S320を具現するための第2実施例による異常検出プロセスを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常の、または辞書的な意味として限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則を踏まえて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0028】
したがって、本明細書に記載の実施例と図面とに示された構成は、本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をいずれも代弁するものではないので、本願の出願時点において、これらを代替しうる多様な均等物及び変形例があるということを理解しなければならない。
【0029】
第1、第2のように序数を含む用語は、多様な構成要素のうち何れか1つを残りと区別する目的として使われるものであり、そのような用語によって構成要素を限定するために使われるものではない。
【0030】
明細書の全体において、ある部分が、ある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含みうるということを意味する。また、明細書に記載の「制御回路」のような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現可能である。
【0031】
また、明細書の全体において、ある部分が、他の部分と「連結」されているとする時、これは、「直接連結」されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。
【0032】
図1は、本発明によるエネルギー貯蔵システムの構成を例示的に示す図面である。
【0033】
図1を参照すれば、エネルギー貯蔵システム1は、バッテリパック10、リレー20及び電力変換システム30を含む。
【0034】
バッテリパック10は、第1バッテリモジュール11、第2バッテリモジュール12、バスバー13及びバスバー診断装置100を含む。
【0035】
第1バッテリモジュール11、バスバー13及び第2バッテリモジュール12の直列回路は、リレー20を通じて電力変換システム30に電気的に連結可能である。
【0036】
第1バッテリモジュール11は、直列連結された複数のバッテリセル(C1~Cm、mは、2以上の自然数)を含む。第2バッテリモジュール12は、直列連結された複数のバッテリセル(Cm+1~Cm+n、nは、2以上の自然数)を含む。
【0037】
複数のバッテリセル(C1~Cm)と複数のバッテリセル(Cm+1~Cm+n)は、互いに同じ電気化学的仕様を有するように製造されたものである。以下、バッテリパック10に含まれたあらゆるバッテリセル(C1~Cm+n)の共通した内容を説明するに当って、参照符号「C」をバッテリセルを称するものと使用する。
【0038】
バッテリセル(C)は、例えば、リチウムイオンセルのように、反復的な充電・放電が可能なものであれば、その種類は、特に限定されるものではない。
【0039】
第1バッテリモジュール11において、複数のバッテリセル(C1~Cm)のそれぞれは、正極リードと負極リードとを有し、隣接した2つのバッテリセル(例えば、C1、C2)のうち、1つ(例えば、C1)の正極リードと他の1つ(例えば、C2)の負極リードとが溶接などに通じて接合されている。これにより、バッテリセル(C1)の負極リードからバッテリセル(Cm)の正極リードまでの直列接続体が、第1バッテリモジュール11内に配される。
【0040】
第2バッテリモジュール12において、複数のバッテリセル(Cm+1~Cm+n)のそれぞれは、正極リードと負極リードとを有し、隣接した2つのバッテリセル(例えば、Cm+1、Cm+2)のうち、1つ(例えば、Cm+1)の正極リードと他の1つ(例えば、Cm+2)の負極リードとが溶接などに通じて接合されている。これにより、バッテリセル(Cm+1)の負極リードからバッテリセル(Cm+n)の正極リードまでの直列接続体が、第2バッテリモジュール12内に配される。
【0041】
以下、バッテリセル(C)の正極リードと負極リードとを、それぞれ「正極」及び「負極」とも称する。
【0042】
第1バッテリモジュール11のプラス端子は、バスバー13を通じて第2バッテリモジュール12のマイナス端子に連結される。一例として、バスバー13の一端は、第1バッテリモジュール11のプラス端子に、バスバー13の他端は、第2バッテリモジュール12のマイナス端子に、それぞれボルトなどを通じて固着される。
【0043】
バッテリモジュール11、12のそれぞれにおいて、相対的に低い電位の電気的位置を「下流」と、その反対を「上流」と称することができる。例えば、バッテリセル(Cm)は、第1バッテリモジュール11の最上流に位置しており、バッテリセル(Cm+1)は、第2バッテリモジュール12の最下流に位置している。第1バッテリモジュール11のプラス端子は、バッテリセル(Cm)の正極と同一電位を有し、第2バッテリモジュール12のマイナス端子は、バッテリセル(Cm+1)の負極と同一電位を有しうる。xは、2以上m+n以下の自然数であるとする時、バッテリセル(Cx)は、バッテリセル(Cx-1)の上流に位置すると言い、バッテリセル(Cx-1)は、バッテリセル(Cx)の下流に位置すると言う。
【0044】
リレー20は、バッテリパック10の充電・放電のための電流経路として提供される電力ラインに設けられる。リレー20がオンになっている間に、バッテリパック10と電力変換システム30とのうち何れか1つから他の1つへの電力伝達が可能である。リレー20は、機械式コンタクタ、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)のような公知のスイッチングデバイスのうち何れか1つまたは2つ以上を組み合わせることで具現可能である。制御回路140は、後述するバスバー13に対する診断結果などによってリレー20をオン/オフ制御することができる。
【0045】
電力変換システム(power conversion system)30は、上位コントローラ2を通じてバスバー診断装置100に動作可能に結合される。電力変換システム30は、電気系統40によって供給される交流電力からバッテリパック10の充電のための直流電力を生成することができる。電力変換システム30は、バッテリパック10からの直流電力から交流電力を生成することができる。
【0046】
バスバー診断装置100は、バスバー13の異常を監視するように提供される。バスバー13の異常とは、(i)バスバー13自体の欠陥(例えば、クラック)、(ii)第1バッテリモジュール11のプラス端子との締結不良、及び(iii)第2バッテリモジュール12のマイナス端子との締結不良のうち少なくとも1つによって、バスバー13の両端間の総抵抗が所定の初期値から許容値以上増加した状態を称する。
【0047】
バスバー診断装置100は、電圧センシングチャネル110、バッテリ監視回路120、バイパス素子130及び制御回路140を含む。バスバー診断装置100は、シャント抵抗体150及び通信回路160のうち少なくとも1つをさらに含みうる。
【0048】
バッテリ監視回路120は、複数の電圧センシングピン(P0~Pm+n+1)を含む。複数の電圧センシングピン(P0~Pm+n+1)は、電圧センシングチャネル110を通じて、複数のバッテリセル(C1~Cm+n)のそれぞれの正極リードと負極リードとに電気的に連結可能に提供される。バッテリ監視回路120は、ハードウェア的にASICs(application specific integrated circuits)を用いて具現可能である。例えば、BQ76940がバッテリ監視回路120として用いられる。
【0049】
電圧センシングチャネル110は、複数の電圧センシングライン(L0~Lm+n+1)を含みうる。複数の電圧センシングライン(L0~Lm+n+1)のそれぞれは、所定の抵抗を有する保護抵抗体(R)を含みうる。保護抵抗体(R)は、それが含まれた電圧センシングラインを通じた過電流を防止するように提供される。
【0050】
電圧センシングライン(L0)の一端及び他端は、バッテリセル(C1)の負極とバッテリ監視回路120の電圧センシングピン(P0)とにそれぞれ連結される。
【0051】
iは、m以下の自然数であるとする時、電圧センシングライン(Li)の一端及び他端は、バッテリセル(Ci)の正極とバッテリ監視回路120の電圧センシングピン(Pi)とにそれぞれ連結される。
【0052】
電圧センシングライン(Lm+1)の一端及び他端は、バッテリセル(Cm+1)の負極とバッテリ監視回路120の電圧センシングピン(Pm+1)とにそれぞれ連結される。
【0053】
jは、m+2以上m+n+1以下の自然数であるとする時、電圧センシングライン(Lj)の一端及び他端は、バッテリセル(Cj)の正極とバッテリ監視回路120の電圧センシングピン(Pj)とにそれぞれ連結される。
【0054】
バッテリ監視回路120は、複数の電圧センシングピン(P0~Pm+n+1)のうち、隣接した2つの電圧センシングピンごとの電位差を用いて、複数のバッテリセル(C1~Cm+n)のそれぞれの両端にわたった電圧を検出する。
【0055】
すなわち、iは、m以下の自然数、jは、m+2以上m+n+1以下の自然数であるとする時、2つの電圧センシングピン(Pi-1、Pi)間の電位差がバッテリセル(Ci)の電圧として検出され、2つの電圧センシングピン(Pj-1、Pj)間の電位差がバッテリセル(Cj-1)の電圧として検出される。一例として、バッテリ監視回路120は、互いに隣接した2つの電圧センシングピン(Pm-1、Pm)間の電位差をバッテリセル(Cm)の電圧として検出することができる。他の例として、バッテリ監視回路120は、互いに隣接した2つの電圧センシングピン(Pm+1、Pm+2)間の電位差をバッテリセル(Cm+1)の電圧として検出することができる。
【0056】
制御回路140は、設定時間(例えば、0.001秒)ごとに、バッテリ監視回路120から電圧信号を収集して、アナログ-デジタル変換を通じて、複数のバッテリセル(C1~Cm+n)のそれぞれの電圧を示す値を決定することができる。
【0057】
バイパス素子130は、一対の電圧センシングライン(Lm、Lm+1)を通じて、バスバー13に並列連結される。詳細には、バイパス素子130の一端及び他端は、一対の電圧センシングピン(Pm、Pm+1)に1つずつ接続される。これにより、バイパス素子130、電圧センシングピン(Pm+1)、電圧センシングライン(Lm+1)、バスバー13、電圧センシングライン(Lm)及び電圧センシングピン(Pm)で構成される閉回路が形成される。バイパス素子130に対する所定の条件(例えば、バッテリパックの放電モード)が満足される間に、2つの電圧センシングピン(Pm、Pm+1)は、バイパス素子130を通じて電気的に連結される。一方、バイパス素子130に対する所定の条件が満たされない間に、2つの電圧センシングピン(Pm、Pm+1)間でバイパス素子130を通じた電流経路は遮断される。
【0058】
図1では、バイパス素子130がバッテリ監視回路120の外部に配されたと示されているが、代案としてバイパス素子130は、バッテリ監視回路120の一構成要素としてバッテリ監視回路120内に集積化される。
【0059】
バスバー13が正常である場合には、バスバー13の抵抗が2つの電圧センシングライン(Lm、Lm+1)に含まれた保護抵抗体(R)の抵抗よりも遥かに小さいので、バッテリパック10を通じて流れる電流の全部またはほとんどは、バスバー13を通過し、バイパス素子130には、0Aまたは無視できる程度に非常に小さな電流のみが流れる。
【0060】
一方、バスバー13が異常である場合には、(i)バスバー13自体の抵抗、(ii)バスバー13の一端と第1バッテリモジュール11のプラス端子との接触抵抗(contact resistance)、及び/または(iii)バスバー13の他端と第2バッテリモジュール12のマイナス端子との接触抵抗が正常レベルから増加する。したがって、バスバー13の異常が深まるほど、バッテリパック10を通じて流れる電流の総量のうちからバイパス素子130を通過する電流の量が次第に増加する。
【0061】
制御回路140は、リレー20、バッテリ監視回路120、シャント抵抗体150、及び/または通信回路160に動作可能に結合される。
【0062】
制御回路140は、ハードウェア的に、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサ(microprocessors)、その他の機能遂行のための電気的ユニットのうち少なくとも1つを用いて具現可能である。
【0063】
制御回路140には、メモリが内蔵される。メモリには、後述する実施例によるバッテリ管理方法の実行に必要なプログラム及び各種のデータがあらかじめ保存することができる。メモリは、例えば、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、SSDタイプ(Solid State Disk type)、SDDタイプ(Silicon Disk Drive type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、RAM(random access memory)、SRAM(static random access memory)、ROM(read-only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)、PROM(programmable read-only memory)のうち少なくとも1つのタイプの記録媒体を含みうる。
【0064】
シャント抵抗体150は、前記電力ラインを通じて第1バッテリモジュール11、バスバー13及び第2バッテリモジュール12の直列回路に電気的に直列連結される。バッテリ監視回路120は、一対の電流センシングピンを通じてシャント抵抗体150の一端と他端とにそれぞれ連結される。バッテリ監視回路120は、一対の電流センシングピン間の電位差に基づいて、バッテリパック10を通じて流れる電流を検出し、該検出された電流を示す電流信号を制御回路140に出力するように構成される。
【0065】
通信回路160は、エネルギー貯蔵システム1の上位コントローラ2と通信可能に結合されうる。通信回路160は、上位コントローラ2からのメッセージを制御回路140に伝送し、制御回路140からのメッセージを上位コントローラ2に伝送しうる。制御回路140からのメッセージは、バスバー13の異常及び/またはバッテリセル(C)の電圧を通知するための情報を含みうる。通信回路160と上位コントローラ2との通信には、例えば、LAN(local area network)、CAN(controller area network)、デイジーチェーンのような有線ネットワーク及び/またはブルートゥース(登録商標)、ジグビー(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などの近距離無線ネットワークが活用されうる。通信回路160は、制御回路140及び/または上位コントローラ2から受信された情報をユーザが認識可能な形態に提供する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー)を含みうる。上位コントローラ2は、バスバー診断装置100との通信を通じて収集される情報に基づいて、電力変換システム30を制御することができる。
【0066】
図2は、
図1に示されたバスバーの異常状態とバッテリセルの電圧の検出エラーとの関係の説明に参照される図面である。
【0067】
図2では、ダイオードがバイパス素子130として用いられることを例示している。ダイオードのアノード及びカソードは、それぞれ電圧センシングピン(P
m)及び電圧センシングピン(P
m+1)に連結される。この場合、バッテリパック10の放電中にバスバー13の両端にわたった電圧が純方向電圧としてダイオードに印加されて、ダイオードがオン(導通)状態になる。すなわち、ダイオードは、バッテリパック10が放電モードにある間に導通可能であり、ダイオードが導通状態である間に、バスバー13に並列的な電流経路を構成する。放電モードとは、第1バッテリモジュール11及び第2バッテリモジュール12を通じて放電電流が流れながらバッテリパック10から電力変換システムに電力が供給される状態を称する。
【0068】
図2を参照すれば、何らかの原因によってバスバー13が異常状態を有する場合、前述したように、バスバー13の総抵抗が初期値から許容値以上増加する。バスバー13の総抵抗とは、(i)バスバー13自体の抵抗、(ii)バスバー13の一端と第1バッテリモジュール11のプラス端子との接続部分(Q
A)での接触抵抗、及び(iii)バスバー13の他端と第2バッテリモジュール12のマイナス端子との接続部分(Q
B)での接触抵抗の和である。
【0069】
この場合、バッテリパック10の電流(IP)は、バスバー13を通じて流れる電流(IA)及びバイパス素子130を通じて流れる電流(IB)の和と同一である。バイパス素子130がオン(導通)になっている場合、バスバー13とバイパス経路との抵抗比によって、バスバー13の総抵抗が大きいほど、バスバー13を通じて流れる電流(IA)に対するバイパス素子130を通じて流れる電流(IB)の比率(IB/IA)が大きい。バイパス経路は、電圧センシングライン(Lm)、バイパス素子130及び電圧センシングライン(Lm+1)の直列接続経路である。すなわち、電流(IB)がバイパス素子130を通じて流れるということは、一対の電圧センシングライン(Lm、Lm+1)を通じても電流(IB)が流れるということを意味する。
【0070】
電圧センシングライン(Lm)を通じて電流(IB)が流れる場合、バッテリセル(Cm)の正極と電圧センシングピン(Pm)との間で電流(IB)と保護抵抗体(R)の抵抗の積に対応する電圧降下(VD)が起こる。また、電圧センシングライン(Lm+1)を通じて電流(IB)が流れる場合、電圧センシングピン(Pm+1)とバッテリセル(Cm+1)の負極との間で電流(IB)と保護抵抗体(R)の抵抗の積に対応する電圧降下(VD)が起こる。
【0071】
これにより、バッテリ監視回路120によって検出されるバッテリセル(Cm)の電圧は、バッテリセル(Cm)の実際電圧から電圧センシングライン(Lm)での電圧降下(VD)ほど減少する。また、バッテリ監視回路120によって検出されるバッテリセル(Cm+1)の電圧も、バッテリセル(Cm+1)の実際電圧から電圧センシングライン(Lm+1)での電圧降下(VD)ほど減少する。すなわち、第1バッテリモジュール11の最上流に位置するバッテリセル(Cm)の電圧及び第2バッテリモジュール12の最下流に位置するバッテリセル(Cm+1)の電圧に対する検出結果にエラーが発生する。
【0072】
図3は、本発明によるバスバー診断方法を例示的に示すフローチャートであり、
図4は、
図3の段階S320を具現するための第1実施例による異常検出プロセスを概略的に示すフローチャートであり、
図5は、
図3の段階S320を具現するための第2実施例による異常検出プロセスを概略的に示すフローチャートである。
図3から
図5の方法は、バスバー診断装置100によって所定の診断時間ごとに周期的に繰り返して実行可能である。診断時間は、前記所定時間と同一であるか、前記所定時間の整数倍であらかじめ定められる。
【0073】
図1から
図3を参照すれば、段階S310において、バッテリ監視回路120は、複数の電圧センシングピン(P
0~P
m+n+1)のうち、隣接した2つの電圧センシングピン(例えば、P
0、P
1)ごとの電位差を用いて、第1バッテリモジュール11の複数のバッテリセル(C
1~C
m)及び第2バッテリモジュール12の複数のバッテリセル(C
m+1~C
m+n)のそれぞれの電圧を検出する。制御回路140は、バッテリ監視回路120によって検出された複数のバッテリセル(C
1~C
m+n)のそれぞれの電圧を示すアナログ信号を収集して、該収集されたアナログ信号をデジタル信号に変換した後、電圧履歴を示す時系列の最新値としてメモリに記録することができる。バッテリセル(C)の電圧履歴を示す時系列は、以前周期から検出された電圧の値と現周期から検出された電圧の値とを含む。段階S320において、バッテリ監視回路120は、一対の電流センシングピンを用いて、バッテリパック10の電流を追加的に検出することができる。すなわち、制御回路140は、バッテリパック10の電流を示すアナログ信号を収集して、該収集されたアナログ信号をデジタル信号に変換した後、電流履歴を示す時系列の最新値としてメモリに記録することができる。
【0074】
段階S320において、制御回路140は、バッテリ監視回路120によって検出された、第1バッテリモジュール11の複数のバッテリセル(C1~Cm)及び第2バッテリモジュール12の複数のバッテリセル(Cm+1~Cm+n)のそれぞれの電圧履歴に基づいて、バスバー13を診断する。
【0075】
図4を参照すれば、第1実施例による段階S320は、段階S410~段階S470を含む。段階S410において、制御回路140は、バッテリ監視回路120によって検出された電流に基づいて、バッテリパック10が設定時間(例えば、1秒)以上、放電モードを保持しているか否かを判定する。すなわち、制御回路140は、バッテリパック10の電流の変化履歴を示す時系列をメモリに記録し、該記録された電流の時系列に基づいてバッテリパック10が設定時間以上持続的に放電しているか否かを判定する。一例として、バッテリパック10の充電電流は、正の値に、放電電流は、負の値にメモリに記録されるようにプログラムされている場合、制御回路140は、現時点から設定時間前から現時点までの時間帯で記録された電流の時系列が負の値として記録されている場合、段階S410の値が「はい」であると判定し、それ以外には、段階S410の値が「いいえ」であると判定する。段階S410の値が「はい」である場合、段階S420が進行する。段階S410の値が「いいえ」である場合、段階S470が進行する。
【0076】
段階S420において、制御回路140は、第1バッテリモジュール11の複数のバッテリセル(C1~Cm)及び第2バッテリモジュール12の複数のバッテリセル(Cm+1~Cm+n)の平均電圧を決定する。段階S420での平均電圧は、次の数式1または数式2によって決定される。
【0077】
【0078】
【0079】
数式1及び数式2において、tは、現時点、Vy[t]は、バッテリ監視デバイスによって検出された現時点でのバッテリセル(Cy)の電圧、VAV[t]は、現時点での平均電圧である。数式2は、バスバー13の状態に依存する2つのバッテリセル(Cm、Cm+1)の電圧Vm[t]、Vm+1[t]を除いて平均電圧を算出するという点で数式1と異なる。
【0080】
段階S430において、制御回路140は、(i)第1バッテリモジュール11の最上流に位置するバッテリセル(Cm)の電圧Vm[t]と平均電圧VAV[t]との差VAV[t]-Vm[t]、及び(ii)第2バッテリモジュール12の最下流に位置するバッテリセル(Cm+1)の電圧Vm+1[t]と平均電圧VAV[t]との差VAV[t]-Vm+1[t]が両方とも基準電圧差よりも大きいか否かを判定する。基準電圧差(例えば、0.3V)は、バスバー13及び複数のバッテリセル(C1~Cm+n)がいずれも正常である場合には、VAV[t]-Vm[t]及びVAV[t]-Vm+1[t]よりも大きいように、バッテリ監視回路120の電圧分解能などを考慮してあらかじめ定められたものである。段階S430の値が「はい」であることは、バスバー13が異常状態を有している可能性が基準値以上であることを示す。段階S430の値が「はい」である場合、段階S440が進行する。段階S430の値が「いいえ」である場合、段階S470が進行する。
【0081】
段階S440において、制御回路140は、診断カウントを所定値(例えば、1)ほど増加させる。診断カウントは、段階S430の値が「はい」であると連続して判定された回数を示す。
【0082】
段階S450において、制御回路140は、診断カウントが基準カウント(例えば、3)以上であるか否かを判定する。段階S450の値が「はい」である場合、段階S460が進行する。
【0083】
段階S460において、制御回路140は、バスバー13が異常状態を有していることを示す診断フラグを設定する。制御回路140は、診断フラグが設定されたことに応答して、所定の保護動作を実行することができる。一例として、制御回路140は、バスバー13が異常状態を有していることを示すフォールトメッセージを上位コントローラ2に伝送しうる。上位コントローラ2は、フォールトメッセージに応答して、電力変換システム30を中止させることができる。他の例として、制御回路140は、リレー20をターンオフさせることができる。他の例として、制御回路140は、バッテリセル(Cm)及びバッテリセル(Cm+1)のそれぞれの電圧の検出値Vm[t]、Vm+1[t]を複数のバッテリセル(C1~Cm+n)の平均電圧VAV[t]と同様に設定することができる。
【0084】
段階S470において、制御回路140は、診断カウントを基準カウント未満の初期値(例えば、0)として設定する。
【0085】
図5を参照すれば、第2実施例による段階S320は、段階S510~段階S550を含む。段階S510において、制御回路140は、バッテリ監視回路120によって検出された電流に基づいて、バッテリパック10が充電モードまたは休止モードから放電モードに切り替えられたか否かを判定する。休止モードとは、リレー20がオフになるか、電力変換システム30が止められて、第1バッテリモジュール11及び第2バッテリモジュール12を通じて充電電流及び放電電流が両方とも流れていない状態を称する。充電モードとは、電力変換システムからバッテリパック10に電力が供給されて、第1バッテリモジュール11及び第2バッテリモジュール12を通じて充電電流が流れる状態を称する。
【0086】
例えば、制御回路140は、バッテリパック10の電流の変化履歴を示す時系列をメモリに記録し、該記録された電流の時系列に基づいて現時点から診断時間前の電流が0または正の値として記録されており、現時点で電流は負の値として記録されている場合、段階S510の値が「はい」であると判定することができる。それ以外には、段階S510の値が「いいえ」であると判定される。段階S510の値が「はい」である場合、段階S520が進行する。
【0087】
段階S520において、制御回路140は、診断時間にわたった、第1バッテリモジュール11の最上流に位置するバッテリセル(Cm)の電圧降下量、第2バッテリモジュール12の最下流に位置するバッテリセルの電圧降下量(Cm+1)及び第1バッテリモジュール11の複数のバッテリセル(C1~Cm)及び第2バッテリモジュール12の複数のバッテリセル(Cm+1~Cm+n)の平均電圧降下量を決定する。段階S520での平均電圧降下量は、次の数式3または数式4によって決定される。
【0088】
【0089】
【0090】
数式3及び数式4において、tは、現時点、ΔVy[t]は、バッテリセル(Cy)の電圧降下量、ΔVAV[t]は、平均電圧降下量である。ΔVy[t]は、Vy[t-tD]-Vy[t]と同一であり、tDは、前記診断時間である。すなわち、Vy[t-tD]は、バッテリパック10が休止モードまたは充電モードで運用中に検出されたバッテリセル(Cy)の電圧であり、Vy[t]は、バッテリパック10が休止モードまたは充電モードから放電モードに切り替えられた以後に初めて検出されたバッテリセル(Cy)の電圧である。
【0091】
数式4は、バスバー13の状態に依存する2つのバッテリセル(Cm、Cm+1)の電圧降下量ΔVm[t]、ΔVm+1[t]を除いて平均電圧降下量を算出するという点で数式3と異なる。
【0092】
段階S530において、制御回路140は、診断時間にわたった、電流変化量に所定の変換係数を乗算して、基準電圧降下量を決定する。電流変化量は、IP[t-tD]-IP[t]と同一である。IP[t-tD]は、バッテリパック10が休止モードまたは充電モードで運用中に検出されたバッテリパック10の電流であり、IP[t]は、バッテリパック10が休止モードまたは充電モードから放電モードに切り替えられた以後に初めて検出されたバッテリパック10の電流である。変換係数は、バッテリセル(C)が正常である時の内部抵抗範囲などを考慮して、既定の値である。
【0093】
段階S540において、制御回路140は、(i)第1バッテリモジュール11の最上流に位置するバッテリセル(Cm)の電圧降下量ΔVm[t]と平均電圧降下量ΔVAV[t]との差ΔVm[t]-ΔVAV[t]、及び(ii)第2バッテリモジュール12の最下流に位置するバッテリセル(Cm+1)の電圧降下量ΔVm+1[t]と平均電圧降下量ΔVAV[t]との差ΔVm+1[t]-ΔVAV[t]が両方とも基準電圧降下量よりも大きいか否かを判定する。段階S540の値が「はい」であることは、バスバー13が異常状態を有していることを示す。段階S540の値が「はい」である場合、段階S550が進行する。
【0094】
段階S550において、制御回路140は、バスバー13が異常状態を有していることを示す診断フラグを設定する。制御回路140は、診断フラグが設定されたことに応答して、所定の保護動作を実行することができる。一例として、制御回路140は、バスバー13が異常状態を有していることを示すフォールトメッセージを上位コントローラ2に伝送しうる。上位コントローラ2は、フォールトメッセージに応答して、電力変換システム30を中止させることができる。他の例として、制御回路140は、リレー20をターンオフさせることができる。
【0095】
前述した本発明の実施例は、装置及び方法を通じてのみ具現されるものではなく、本発明の実施例の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じて具現されることもあり、このような具現は、前述した実施例の記載から当業者ならば、容易に具現することができる。
【0096】
以上、本発明は、たとえ限定された実施例と図面とによって説明されたとしても、本発明は、これによって限定されず、当業者によって本発明の技術思想と下記に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということはいうまでもない。
【0097】
また、前述した本発明は、当業者において、本発明の技術的思想を外れない範囲内でさまざまな置換、変形及び変更が可能なので、前述した実施例及び添付図面によって限定されるものではなく、多様な変形が行われるように、各実施例の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:エネルギー貯蔵システム
10:バッテリパック
11、12:バッテリモジュール
C:バッテリセル
20:リレー
30:電力変換システム
100:バスバー診断装置
110:電圧センシングチャネル
L:電圧センシングライン
120:バッテリ監視回路
P:電圧センシングピン
130:バイパス素子
140:制御回路
160:通信回路