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  • 特許-土木機械の高さ安全装置 図1
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  • 特許-土木機械の高さ安全装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】土木機械の高さ安全装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/00 20060101AFI20240409BHJP
   E02D 11/00 20060101ALI20240409BHJP
   E21B 15/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E21B19/00
E02D11/00
E21B15/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020118414
(22)【出願日】2020-07-09
【出願変更の表示】U 2020001838の変更
【原出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021183796
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士光
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博徳
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-102990(JP,A)
【文献】特開昭62-146321(JP,A)
【文献】特開平09-041355(JP,A)
【文献】実開昭63-161294(JP,U)
【文献】特開2001-220984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02D 1/00- 3/12
E02D 7/00-13/10
B66C 23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工時に鉛直に固定可能なリーダと、
前記リーダ上を移動自在に設けられたスライドと、
前記スライドを前記リーダ上で移動自在に駆動するためのスライド駆動手段と、
前記スライド上を移動自在に駆動され、下端に設けられた工具を回転駆動する工具回転手段を備えた回転ヘッドと、
前記回転ヘッドを前記スライド上で移動自在に駆動するための回転ヘッド駆動手段と
を備えた土木機械において、
前記リーダ上の前記スライドの絶対位置を検出するためのスライド位置検出手段と、
前記スライドの高さ制限位置を予め設定できる高さ制限設定手段と、
前記スライドの高さを表示する表示手段とを有し、
前記工具は、アースオーガー、掘削ヘッド、撹拌翼、及び、既成杭から選択される一つであり、
前記スライド位置検出手段は、前記リーダと前記スライドの間にワイヤーをかけ渡して計測し、前記スライドの絶対位置を検知するワイヤー式アブソリュート・エンコーダであり、
前記高さ制限設定手段は、前記スライドの最上端の高さ位置を設定するものであり、
前記スライド駆動手段は、チェーンと油圧モータ、又は油圧シリンダであり、
前記設定された高さ位置に前記スライドが達したとき、前記油圧モータ又は油圧シリンダへの圧油を電磁弁で遮断するものである
ことを特徴とする土木機械の高さ安全装置。
【請求項2】
請求項に記載の土木機械の高さ安全装置において、
前記表示手段は、前記リーダ又は前記スライドに配置した傾斜計で検知した傾斜角度で補正した地表から前記スライドの最上端までの鉛直高さを表示するものである
ことを特徴とする土木機械の高さ安全装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の土木機械の高さ安全装置において、
前記高さ制限設定手段は、前記スライドの前記最上端の高さ位置が所定の高さ制限位置の時に、タッチパネルの設定ボタンを押して、前記スライドの高さ制限位置を所定の設定高さに設定するものである
ことを特徴とする土木機械の高さ安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木機械の高さ安全装置に関する。更に詳しくは、土木機械の削孔機械、地盤改良機等のリーダに搭載されているスライドが上方向に伸長するとき、障害物と干渉しないようにする土木機械の高さ安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン車、高所作業車等の機械において、ブーム、リーダ、アームを備えたものは、上部に障害物があると、施工中、又は移動中に干渉する。特許文献1には、クレーンブームの高さ制限警報装置が開示されている。クレーンブームの傾き、伸長を計測して、記憶された高さ制限値に達すると警告するものである。また、特許文献2には、ブーム伸長量、ブーム起伏角、車体傾斜角から作業台の位置を計算し、作業台の揚程を超えることがない高所作業車の作業台規制装置が開示されている。
【0003】
前述した特許文献に記載された高さ制限、又は警報装置は、何れも作業中にブームを揺動させるクレーン車、高所作業車に向けたものである。即ち、削孔機、地盤改良機のように、鉛直に固定したリーダ上を上下に移動するアースオーガー、掘削ヘッド、撹拌翼、既成杭等を有した土木機械に向けたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-161294号公報
【文献】実開平6-63599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような背景により以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、鉛直に固定したリーダ上を上下に移動可能なスライドを備えた削孔機、又は地盤改良機等において、スライドの高さ制限、又は警報可能な土木機械の高さ安全装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、鉛直に固定したリーダ上を上下に移動可能なスライドを備えた削孔機、又は地盤改良機等において、スライドの高さ制限、又は警報位置を任意に変更できる土木機械の高さ安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は以下の手段によって解決される。
すなわち、本発明1の土木機械の高さ安全装置は、
施工時に鉛直に固定可能なリーダと、
前記リーダ上を移動自在に設けられたスライドと、
前記スライドを前記リーダ上で移動自在に駆動するためのスライド駆動手段と、
前記スライド上を移動自在に駆動され、下端に設けられた工具を回転駆動する工具回転手段を備えた回転ヘッドと、
前記回転ヘッドを前記スライド上で移動自在に駆動するための回転ヘッド駆動手段と
を備えた土木機械において、
前記リーダ上の前記スライドの絶対位置を検出するためのスライド位置検出手段と、
前記スライドの高さ制限位置を予め設定できる高さ制限設定手段と、
前記スライドの高さを表示する表示手段とを有し、
前記工具は、アースオーガー、掘削ヘッド、撹拌翼、及び、既成杭から選択される一つであり、
前記スライド位置検出手段は、前記リーダと前記スライドの間にワイヤーをかけ渡して計測し、前記スライドの絶対位置を検知するワイヤー式アブソリュート・エンコーダであり、
前記高さ制限設定手段は、前記スライドの最上端の高さ位置を設定するものであり、
前記スライド駆動手段は、チェーンと油圧モータ、又は油圧シリンダであり、
前記設定された高さ位置に前記スライドが達したとき、前記油圧モータ又は油圧シリンダへの圧油を電磁弁で遮断するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明2の土木機械の高さ安全装置は、本発明1において、前記表示手段は、前記リーダ又は前記スライドに配置した傾斜計で検知した傾斜角度で補正した地表から前記スライドの最上端までの鉛直高さを表示するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明3の土木機械の高さ安全装置は、本発明1又は2において、前記高さ制限設定手段は、前記スライドの前記最上端の高さ位置が所定の高さ制限位置の時に、タッチパネルの設定ボタンを押して、前記スライドの高さ制限位置を所定の設定高さに設定するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土木機械の高さ安全装置は、スライドの最上端の高さ制限位置を任意に設定可能で、かつ、高さ制限位置を任意に変更可能である。従って、土木機械の上部に高さ制限がある施工現場において、土木機械の上部を監視する必要がなくなるため、土木機械の施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態の土木機械を示す全体正面図である。
図2図2は、図1のスライドの絶対位置を検出するためのスライド位置検出手段を示す拡大正面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の土木機械の高さ安全装置の制御ブロックである。
図4図4は、スライドの高さ制限位置を設定した土木機械を示す全体正面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の土木機械の高さ安全装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態の土木機械を示す全体正面図、図2図1のスライドの絶対位置を検出するためのスライド位置検出手段を示す拡大正面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態の土木機械1は、クローラ装置11によって走行する車体12と、車体12に起立及び傾倒可能に取り付けられた柱状のリーダ13を有している。リーダ13には柱状のスライド2が移動可能に取り付けられ、リーダ13の上端のスライド駆動油圧モータ14によって昇降される。スライド2は、スライド駆動油圧モータ14に連結されたスプロケットとチェーン(図示せず)よって昇降される。スライド2には回転ヘッド21が移動自在に取り付けられ、スライド2の上端の回転ヘッド駆動油圧モータ22によって昇降される。回転ヘッド21の下端のチャック23には工具24が取り付けられ、工具回転モータ25によって工具24を回転駆動する。工具24としては、アースオーガー、掘削ヘッド、撹拌翼、杭打機のチャック、治具等に保持される既成杭等が使用可能である。なお、既成杭は、一般的には工具に含まれないが、本発明では工具に含める。
【0013】
図1図2に示すように、スライド駆動油圧モータ14の上面には、ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ3が取り付けられている。ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ3は、ロータリエンコーダにワイヤーボックスを取り付けた構造を有し、ワイヤー引き出し長さに応じたアブソリュート信号を出力する。ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ3と回転ヘッド駆動油圧モータ22の筐体との間には、ワイヤー31がかけ渡されていて、ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ3によってスライド2の絶対位置を検知することが可能である。
【0014】
図3は、本発明の実施の形態の土木機械の高さ安全装置の制御ブロックである。図3に示すように、高さ制限アシスト装置4には、ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ3からのスライド2の絶対位置信号が入力される。高さ制限アシスト装置4には、スライド2の最上端の高さ制限機能をON、OFFするための高さ制限ON、OFFスイッチが取り付けられている。高さ制限アシスト装置4は、ソレノイドバルブ16を操作して、油圧ポンプ15からスライド駆動油圧モータ14に供給される圧油を遮断して、設定された高さ位置にスライド2が達した時に、スライド2の上昇を停止する。高さ制限アシスト装置4は、管理装置5に接続されている。管理装置5にはタッチパネル51が付属しており、タッチパネル51の設定ボタン52でスライド2の最上端の高さ制限位置を設定可能である。管理装置5には、リーダ13の傾斜角度を検出するリーダ傾斜計6が接続されている。
【0015】
図4は、タッチパネル51で、スライド2の高さ制限位置を設定した土木機械1を示す全体正面図である。例えば、図4に示すスライドの制限位置が2000mmの時に、図3のタッチパネル51の設定ボタン52を押せば、タッチパネル51にスライドの制限位置が2000mmに設定される。また、図4のスライドの制限高さ(設定されたスライド2の最上端の高さ制限位置)は、図3に示すように、本例では、スライド2が鉛直として、8.13mに設定される。図3のタッチパネル51には、スライド最大ストローク、スライドの現在位置、残りスライドストローク、スライドの鉛直角(リーダ傾斜計6のリーダ13の傾斜角度)、例えば、スライドの鉛直角95.0度で補正(cos5°)した数値が、スライド上端の実制限鉛直高さ(見かけ上ではなく、実際の鉛直高さ8.10m)として、また、スライドの実現在鉛直高さ(現在の鉛直高さ7.11m)も補正(cos5°)して表示される。リーダ傾斜計6は、リーダ13に配置したものであったが、傾斜計はスライド2に配置されたものでも良い。
【0016】
図5は、本発明の実施の形態の土木機械1の高さ安全装置の動作を示すフローチャートである。ステップS10で土木機械1のエンジンを起動すると、高さ制限アシスト装置4が起動する。ステップS20で管理装置5が起動する。ステップS30で、スライド2の最上端の高さ位置が所定の高さ制限位置の時に、タッチパネル51の設定ボタン52を押して、スライド2の高さ制限位置を所定の設定高さに設定する。高さ制限アシスト装置4の高さ制限ON、OFFスイッチをONにして、スライド2の最上端の高さ制限機能をONにする。
【0017】
ステップS40で土木機械1の運転中にスライド2が上昇して、ステップS50で高さ制限ON、OFFスイッチがONであれば、ステップS60で、ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ3からスライド2の現在位置を絶対位置信号として読み込む。ステップS70で、スライド2の現在位置がスライド2の制限位置以上になれば、ステップS80に示すように、高さ制限アシスト装置4でソレノイドバルブ16を操作して、油圧ポンプ15からスライド駆動油圧モータ14に供給される圧油を遮断して、スライド2の上昇を停止する。図示はしないが、タッチパネル51にスライド2の高さ制限中であることを表示することが可能である。ステップS70で、スライド2の現在位置がスライド2の制限位置以下であれば、ステップS90に示すように、スライド2の上昇を継続することが可能となる。
【0018】
本発明の実施の形態の土木機械の高さ安全装置は、スライドの最上端の高さ制限位置を任意に設定可能で、かつ、高さ制限位置を任意に変更可能である。従って、土木機械の上部に高さ制限がある施工現場において、土木機械の上部を監視する必要がなくなるため、土木機械の施工性が向上する。
[他の実施の形態]
前述した実施の形態のスライド2は、スライド駆動油圧モータ14とスプロケットとチェーン(図示せず)よって昇降されるものであったが、油圧シリンダ(図示せず)で昇降されるものでも本発明は適用できる。油圧シリンダの作動を停止させるときは、油圧ポンプ15からの圧油の供給をソレノイドバブル16で遮断して停止するものである。
【符号の説明】
【0019】
1…土木機械
11…クローラ装置
12…車体
13…リーダ
14…スライド駆動油圧モータ
15…油圧ポンプ
16…ソレノイドバルブ
2…スライド
21…回転ヘッド
22…回転ヘッド駆動油圧モータ
23…チャック
24…工具
25…工具回転モータ
3…ワイヤー式アブソリュート・エンコーダ
31…ワイヤー
4…高さ制限アシスト装置
5…管理装置
51…タッチパネル
52…設定ボタン
6…リーダ傾斜計
図1
図2
図3
図4
図5