(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/10 20060101AFI20240409BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20240409BHJP
【FI】
F24F3/10
F24F11/65
(21)【出願番号】P 2018237482
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2020-12-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】室 淳二郎
(72)【発明者】
【氏名】園田 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勇亮
(72)【発明者】
【氏名】川上 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輝
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】竹下 和志
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-63086(JP,A)
【文献】特開2006-258409(JP,A)
【文献】特開平3-244946(JP,A)
【文献】特開昭63-96433(JP,A)
【文献】特開2009-162411(JP,A)
【文献】特開2015-7495(JP,A)
【文献】米国特許第4142574(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/10
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルを備えた第1空調機と、
第2コイルを備えた第2空調機と、
低温冷水が流れる低温冷水流路から前記第1コイルの上流側に接続される第1流路と、前記第1コイルの下流側に接続され、前記低温冷水流路の熱源機器へ戻る流路に接続された第2流路と、前記低温冷水流路から第2コイルの上流側に接続される第3流路と、前記第2コイルの下流側に接続され、前記低温冷水流路の熱源機器へ還流する流路に接続された第4流路とを備え、
前記第1流路には、第1流量調整弁が、前記第2流路には、第2流量調整弁が、前記第3流路には、第3流量調整弁が、前記第4流路には、第4流量調整弁が設けられた、
低温冷水用の循環路と、
高温冷水が流れる高温冷水流路から前記第1コイルの上流側に接続される第5流路と、前記第2コイルの上流側に接続される第6流路と、前記第2コイルの下流側に接続され、前記高温冷水流路の熱源機器へ還流する流路に接続された第7流路とを備え、
前記第5流路には、第5流量調整弁が、前記第6流路には、第6流量調整弁が、前記第7流路には、第7流量調整弁が設けられた、
高温冷水用の循環路と、
前記第1空調機と前記第2空調機でそれぞれ熱交換された空気を合流し、又は一方の空気を空調対象室へ供給する供給通路と、
前記空調対象室の空気を前記第1空調機及び前記第2空調機へ還流させる還流通路と、
を備え、
前記第1流量調整弁~前記第7流量調整弁を操作して前記第1コイルに前記低温冷水用の循環路により低温冷水を循環させて空気を潜熱及び顕熱処理し、前記第2コイルに前記高温冷水用の循環路により高温冷水を循環させて空気を顕熱処理し、前記供給通路で空気を合流して前記空調対象室へ供給する第1モードを有する空調システム。
【請求項2】
前記第1空調機又は前記第2空調機の何れか一方を停止し、前記第1空調機又は前記第2空調機の他方のみを動作させて空気を前記供給通路に供給し、前記空調対象室を空調する第2モードを有し、
前記第2モードでは、
前記第1空調機を動作させる場合、前記第1空調機の前記第1コイルに、低温冷水を循環させる請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、混合気が流入する空調チャンバ内に配置された第1コイルと、空調チャンバ内において第1コイルの下流側に配置された第2コイルと、空調チャンバ内において第2コイルの下流側に配置されると共に空調室に向けて給気を送り出す送風機と、を有する空調システムが開示されている。この空調システムでは、第1コイルには高温冷水が供給され、第2コイルには、高温冷水よりも低温の低温冷水、又は温水のいずれか一方が供給される。
【0003】
また、下記特許文献2には、空調機枠体内に外気又は還気を取り込んで給気する第1空気通路と第2空気通路を設け、第1空気通路に第1コイルを第2空気通路に第2コイルをそれぞれ配置した空調システムが開示されている。この空調システムでは、第1コイルに低温冷水を供給して第1空気通路の空気を冷房し、第1コイルから排出された中温冷水を第2コイルに供給して空気を冷房して排水する。さらに、空調機枠体内で冷房された第1空気通路と第2空気通路との空気を混合して給気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-7484号公報
【文献】特開2015-59692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、空調チャンバ内で空気の流れ方向下流側に向かって第1コイルと第2コイルが直列に並んでいるので、空気抵抗が大きく、ファンの負担が大きい。
【0006】
また、特許文献2では、第1コイルに低温冷水を供給して第1空気通路の空気を冷房し、第1コイルから排出された中温冷水を第2コイルに供給して空気を冷房して排水し、空調機枠体内で冷房された第1空気通路と第2空気通路との空気を空調機枠体内で混合して給気する。このため、常に低温冷水を供給する必要があり、省エネルギー化を実現するために改善の余地がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、ファンの負担が小さく、簡単な構成で潜熱・顕熱(すなわち潜熱及び顕熱、以下、「潜熱・顕熱」という場合がある。)と顕熱を分離して処理することができる空調システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る空調システムは、第1コイルを備えた第1空調機と、第2コイルを備えた第2空調機と、前記第1コイルと前記第2コイルへ選択的に低温冷水を循環させる低温冷水循環路と、前記第1コイルと前記第2コイルへ選択的に高温冷水を循環させる高温冷水循環路と、前記第1コイルと前記第2コイルでそれぞれ熱交換された空気を合流し、又は一方の空気を空調対象室へ供給する供給通路と、前記空調対象室の空気を前記第1空調機及び前記第2空調機へ還流させる還流通路と、を備え、前記第1コイルに低温冷水を循環させて空気を潜熱及び顕熱処理し、前記第2コイルに高温冷水を循環させて空気を顕熱処理し、前記供給通路で合流して前記空調対象室へ供給する第1モードを有する。
【0009】
第1態様に記載の空調システムによれば、第1コイルを備えた第1空調機と、第2コイルを備えた第2空調機とが設けられており、低温冷水循環路によって第1コイルと第2コイルへ選択的に低温冷水を循環させる。また、高温冷水循環路によって第1コイルと第2コイルへ選択的に高温冷水を循環させる。そして、供給通路によって、第1空調機の第1コイルと第2空調機の第2コイルでそれぞれ熱交換された空気を合流し、又は一方の空気を空調対象室へ供給する。第1モードでは、第1コイルに低温冷水を循環させて空気を潜熱及び顕熱処理し、第2コイルに高温冷水を循環させて空気を顕熱処理し、供給通路で合流して空調対象室へ供給する。これにより、空調対象室の空気の温度及び湿度が調整される。さらに、還流通路によって、空調対象室の空気を第1空調機及び第2空調機へ還流させることで、第1空調機及び第2空調機と空調対象室との間で空気を循環させる。このため、簡単な構成で潜熱・顕熱(すなわち潜熱及び顕熱)と顕熱を分離して処理することができる。
【0010】
第2態様に係る空調システムは、第1態様に記載の空調システムにおいて、前記第1空調機又は前記第2空調機の何れか一方を停止して前記空調対象室を空調する第2モードを有する。
【0011】
第2態様に記載の空調システムによれば、第2モードにより、第1空調機又は第2空調機の何れか一方を停止して空調対象室を空調する。このため、例えば、第1空調機又は第2空調機の何れか一方が故障したときに、第1空調機又は第2空調機の他方のみを動作させて空調対象室を空調することで、故障時のバックアップとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空調システムによれば、ファンの負担が小さく、簡単な構成で潜熱・顕熱と顕熱を分離して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の空調システムを示す構成図である。
【
図2】第1実施形態の空調システムにおいて、第1空調機の第1コイルに低温冷水を循環させて空気を潜熱・顕熱処理し、第2空調機の第2コイルに高温冷水を循環させて空気を顕熱処理する第1モードの状態を示す構成図である。
【
図3】第1実施形態の空調システムにおいて、第2空調機を停止して、第1空調機のみを動作させて空調対象室を空調する第2モードに切り替えた状態を示す構成図である。
【
図4】第1実施形態の空調システムの第1モードにおける空気の状態変化を説明する空気線図である。
【
図6】比較例における空気の状態変化を説明する空気線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、各図は模式的なものであり、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。
【0015】
〔第1実施形態〕
第1実施形態の空調システムについて
図1~
図4を参照して説明する。
【0016】
(空調システムの構成)
図1は、空調システムを示す構成図である。
図1に示されるように、空調システム10は、第1空調機12と、第2空調機14と、第1空調機12と第2空調機14により空気の温度及び相対湿度を調整する部屋である空調対象室16と、を備えている。第1空調機12は、筐体18と、筐体18内に配置される第1コイル20と、筐体18内に配置されて空気を送風するファン34と、を備えている。第2空調機14は、筐体22と、筐体22内に配置される第2コイル24と、筐体22内に配置されて空気を送風するファン36と、を備えている。
【0017】
また、空調システム10は、第1コイル20と第2コイル24へ選択的に低温冷水を循環させる低温冷水循環路26と、第1コイル20と第2コイル24へ選択的に高温冷水を循環させる高温冷水循環路28と、を備えている。さらに、空調システム10は、第1空調機12からの空気と第2空調機14からの空気を合流して空調対象室16へ供給する供給通路30と、空調対象室16の空気を第1空調機12及び第2空調機14へ還流させる還流通路32と、を備えている。
【0018】
高温冷水は、低温冷水よりも高い温度の冷水を意味する。高温冷水は、例えば、10℃以上20℃以下に設定されている。低温冷水は、例えば、5℃以上10℃未満に設定されている。
【0019】
第1空調機12の筐体18は、略矩形状の箱体とされている。筐体18の長手方向の一方の端部側には、還流通路32の後述する第1還流通路32Eの下流側端部が接続されている。筐体18の長手方向の他方の端部側には、供給通路30の後述する第1供給通路30Aの上流側端部が接続されている。筐体18内では、空気の流れ方向における第1コイル20より下流側にファン34が配置されており、ファン34により第1コイル20で熱交換された空気が吸引され、第1供給通路30Aに向けて送り出される。
【0020】
第2空調機14の筐体22は、略矩形状の箱体とされている。筐体22の長手方向の一方の端部側には、還流通路32の後述する第2還流通路32Fの下流側端部が接続されている。筐体22の長手方向の他方の端部側には、供給通路30の後述する第2供給通路30Bの上流側端部が接続されている。筐体22内には、筐体22内の空気の流れ方向における第2コイル24より下流側にファン36が配置されており、ファン36により第2コイル24で熱交換された空気が吸引され、第2供給通路30Bに向けて送り出される。
【0021】
供給通路30は、第1供給通路30Aと、第2供給通路30Bと、第1供給通路30Aの下流側と第2供給通路30Bの下流側で合流部30Cを介して接続される1本の本体通路30Dと、を備えている。さらに、供給通路30は、本体通路30Dから複数(本実施形態では、2つ)に分岐される分岐通路30E、30Fを備えている。分岐通路30E、30Fは、空調対象室16に配置された空気の吹出口40にそれぞれ接続されている。
【0022】
空調システム10では、第1空調機12の第1コイル20で熱交換された空気が第1供給通路30Aに供給され、第2空調機14の第2コイル24で熱交換された空気が第2供給通路30Bに供給される。そして、第1供給通路30Aに供給された空気と第2供給通路30Bに供給された空気とが、合流部30Cで合流されて本体通路30Dを流れ、本体通路30Dから空気が分岐通路30E、30Fに分流されて空調対象室16に供給される。
【0023】
還流通路32は、複数(本実施形態では、2つ)の空気通路32A、32Bと、空気通路32A、32Bが合流部を介して接続される1本の本体通路32Cと、を備えている。空気通路32A、32Bは、空調対象室16に配置された空気の吸込口42にそれぞれ接続されている。また、還流通路32は、本体通路32Cが分岐部32Dを介して2つに分岐された第1還流通路32E及び第2還流通路32Fを備えている。上記のように、第1還流通路32Eは、第1空調機12の筐体18に接続されており、第2還流通路32Fは、第2空調機14の筐体22に接続されている。
【0024】
これにより、空調対象室16内の空気は、空気通路32A、32Bに導入され、空気が合流部で合流されて1本の本体通路32Cを流れる。そして、本体通路32Cから空気が分岐部32Dを介して第1還流通路32Eと第2還流通路32Fに分流され、さらに第1還流通路32Eと第2還流通路32Fからそれぞれ第1空調機12と第2空調機14へ還流される。
【0025】
低温冷水循環路26は、第1コイル20に低温冷水等の熱媒体を供給する往路側第1循環路26Aと、第1コイル20から排出される熱媒体を回収する復路側第1循環路26Bと、を備えている。すなわち、往路側第1循環路26Aの下流側端部は、第1コイル20に接続されており、復路側第1循環路26Bの上流側端部は、第1コイル20に接続されている。また、低温冷水循環路26は、第2コイル24に低温冷水等の熱媒体を供給する往路側第2循環路26Cと、第2コイル24から排出される低温冷水等の熱媒体を回収する復路側第2循環路26Dと、を備えている。すなわち、往路側第2循環路26Cの下流側端部は、第2コイル24に接続されており、復路側第2循環路26Dの上流側端部は、第2コイル24に接続されている。
【0026】
また、低温冷水循環路26は、往路側第1循環路26Aの上流側と往路側第2循環路26Cの上流側に接続される1本の本体循環路26Eを備えている。すなわち、往路側第1循環路26Aと往路側第2循環路26Cとは、流れ方向上流側で、本体循環路26Eの下流側端部から分岐されている。また、復路側第1循環路26Bと復路側第2循環路26Dとは、流れ方向下流側で本体循環路26Eの上流側端部に繋がっている。
【0027】
本体循環路26Eには、低温冷水を供給するための熱源機器46と、低温冷水を循環させるポンプ48が設けられている。往路側第1循環路26Aには、低温冷水の流量を調整する流量調整弁50が設けられており、復路側第1循環路26Bには、低温冷水の流量を調整する流量調整弁52が設けられている。また、往路側第2循環路26Cには、低温冷水の流量を調整する流量調整弁54が設けられており、復路側第2循環路26Dには、低温冷水の流量を調整する流量調整弁56が設けられている。
【0028】
高温冷水循環路28は、第1コイル20に高温冷水等の熱媒体を供給するための往路側第1循環路28Aを備えている。本実施形態では、往路側第1循環路28Aの下流側端部は、往路側第1循環路26Aにおける流量調整弁50より下流側に接続されている。また、高温冷水循環路28は、第2コイル24に高温冷水等の熱媒体を供給するための往路側第2循環路28Bと、第2コイル24から排出される高温冷水等の熱媒体を回収する復路側第2循環路26Dを介して接続される本体循環路28Cと、を備えている。本実施形態では、往路側第2循環路28Bの下流側端部は、往路側第2循環路26Cにおける流量調整弁54より下流側に接続されている。本体循環路28Cの上流側端部は、復路側第2循環路26Dにおける流量調整弁56より上流側に接続されている。
【0029】
本体循環路28Cには、高温冷水を供給するための熱源機器60と、高温冷水を循環させるポンプ62が設けられている。往路側第1循環路28Aには、高温冷水の流量を調整する流量調整弁64が設けられており、往路側第2循環路28Bには、高温冷水の流量を調整する流量調整弁66が設けられている。また、本体循環路28Cには、高温冷水の流量を調整する流量調整弁68が設けられている。流量調整弁50、52、54、56、64、66、68としては、例えば、二方弁などが用いられている。
【0030】
空調システム10は、空調システム10の全体を制御するコントローラ70を備えている。また、第1供給通路30Aの上流側端部には、第1空調機12から供給される空気の状態(温度、湿度など)を検出する空気センサ72が設けられている。第2供給通路30Bの上流側端部には、第2空調機14から供給される空気の状態(温度、湿度など)を検出する空気センサ74が設けられている。本体通路30Dの下流側端部には、空調対象室16への供給前に空気の状態(温度、湿度など)を検出する空気センサ76が設けられている。また、空調対象室16の内部には、空調対象室16の空気の状態(温度、湿度など)を検出する空気センサ78が設けられている。図示を省略するが、空気センサ72、74、76、78は、コントローラ70に電気的に接続されている。
【0031】
低温冷水循環路26の本体循環路26Eの下流側端部には、冷温冷水の温度を検出する温度センサ80が設けられている。また、高温冷水循環路28の本体循環路28Cの下流側端部には、高温冷水の温度を検出する温度センサ82が設けられている。図示を省略するが、温度センサ80、82は、コントローラ70に電気的に接続されている。コントローラ70は、空気センサ72、74、76、78で検出された空気の状態、温度センサ80、82で検出された熱媒体の温度などに基づき、流量調整弁50、52、54、56、64、66、68の開閉度の調整、ポンプ48、62の駆動、ファン34、36の駆動、及び熱源機器46、60の駆動等を制御するようになっている。
【0032】
コントローラ70では、空調対象室16の空気の温度及び相対湿度を調整するための複数のモードが設定されている。コントローラ70では、第1空調機12の第1コイル20に低温冷水を循環させて空気を潜熱・顕熱(すなわち潜熱及び顕熱)処理し、第2空調機14の第2コイル24に高温冷水を循環させて空気を顕熱処理し、供給通路30で合流して空調対象室16へ供給する第1モードが設定されている。また、コントローラ70では、第1空調機12又は第2空調機14のいずれか一方を停止して空調対象室16を空調する第2モードが設定されている。第2モードでは、例えば、第1空調機12又は第2空調機14のいずれか一方が故障したときに、第1空調機12又は第2空調機14のいずれか一方を停止して他方の第1空調機12又は第2空調機14で空調対象室16を空調するようになっている。
【0033】
また、コントローラ70では、第1モード及び第2モードに加えて、他のモードを設定してもよい。例えば、コントローラ70では、第1コイル20と第2コイル24の両方に低温冷水を循環させて空気を処理するモードや、第1コイル20と第2コイル24の両方に高温冷水を循環させて空気を処理するモードなどを設定してもよい。また、コントローラ70では、冬季の間に、第1コイル20と第2コイル24の両方、又は第1コイル20と第2コイル24の一方に温水を循環させて空気を暖房処理するモードを設定してもよい。
【0034】
なお、空調システム10は、図示を省略するが、高温冷水循環路28の本体循環路28Cで、熱源機器60とクーリングタワーとを切り替えられる構成としてもよい。これにより、熱源機器60からクーリングタワーに切り替えることで、クーリングタワーにより熱媒体を熱交換して高温冷水を供給することができる。
【0035】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
<第1モード>
例えば、夏季の冷房運転により、空調システム10を用いて空調対象室16の空気の温度及び相対湿度を調整する方法について説明する。
図2に示されるように、空調システム10では、コントローラ70により、第1コイル20に低温冷水を循環させて空気を潜熱・顕熱処理し、第2コイル24に高温冷水を循環させて空気を顕熱処理し、供給通路30で合流して空調対象室16へ供給する第1モードに設定される。
【0037】
第1モードでは、コントローラ70により低温冷水循環路26の流量調整弁50、52が開放され、低温冷水循環路26の流量調整弁54、56が閉止される。また、コントローラ70により高温冷水循環路28の流量調整弁66、68が開放され、高温冷水循環路28の流量調整弁64が閉止される。そして、コントローラ70により、ポンプ48、62と、ファン34、36と、熱源機器46、60とが駆動される。第1モードでは、第1空調機12と第2空調機14に還流されると共に第1空調機12と第2空調機14から供給される空気の流量は、ほぼ同じに設定されている。
【0038】
低温冷水循環路26では、矢印Aに示すように、熱源機器46で熱交換された低温冷水が低温冷水循環路26を通って第1空調機12の第1コイル20に供給される。このとき、低温冷水循環路26の温度センサ80で検出された低温冷水の温度は、例えば、7℃である。
【0039】
また、高温冷水循環路28では、矢印Bに示すように、熱源機器60で熱交換された高温冷水が高温冷水循環路28を通って第2空調機14の第2コイル24に供給される。このとき、高温冷水循環路28の温度センサ82で検出された高温冷水の温度は、例えば、15℃である。
【0040】
また、第1空調機12では、ファン34の駆動により、空調対象室16から還流通路32を通って第1空調機12に戻った空気は、第1コイル20に供給された低温冷水により熱交換され、空気が第1供給通路30Aに供給される。このとき、空調対象室16内の空気センサ78で検出された空気(すなわち、第1空調機12により処理される前の空気)の温度は、例えば、26℃であり、空気の相対湿度は、例えば、50%である。また、第1供給通路30Aの空気センサ72で検出された空気(すなわち、第1コイル20の低温冷水により処理された空気)の温度は、例えば、11℃であり、空気の相対湿度は、例えば、90%である。第1空調機12では、第1コイル20に低温冷水が供給されることで、空気中の水分が結露することにより除湿されて空気が潜熱・顕熱処理される。
【0041】
また、第2空調機14では、ファン36の駆動により、空調対象室16から還流通路32を通って第2空調機14に戻った空気は、第2コイル24に供給された高温冷水により熱交換され、空気が第2供給通路30Bに供給される。このとき、第2供給通路30Bの空気センサ74で検出された空気(すなわち、第2コイル24の高温冷水により処理された空気)の温度は、例えば、17℃であり、空気の相対湿度は、例えば、90%である。第2空調機14では、第2コイル24に高温冷水が供給されることで、空気中の水分の結露はほとんど発生せず空気が顕熱処理される。
【0042】
そして、第1供給通路30Aに供給された空気と第2供給通路30Bに供給された空気とが合流部30Cで合流され、さらに空気は本体通路30D等を通って空調対象室16に供給される。これにより、空調対象室16の空気の温度及び相対湿度が調整される。このとき、本体通路30Dの空気センサ76で検出された空気(すなわち、合流部30Cで合流された後の空気)の温度は、例えば、14℃であり、空気の相対湿度は、例えば、90%である。
【0043】
さらに、空調システム10では、空調対象室16の空気を還流通路32によって第1空調機12及び第2空調機14へ還流させることで、第1空調機12及び第2空調機14と空調対象室16との間で空気が循環される。
【0044】
図4は、空調システム10における夏季の冷房運転の際の空気の状態変化を示す空気線図である。
図4に示されるように、符号A1の点は、空調対象室16から還流される空気の状態を表しており、符号B1の点は、第1コイル20によって処理された後の空気の状態を表しており、符号C1の点は、第2コイル24によって処理された後の空気の状態を表している。さらに、符号D1の点は、供給通路30の合流部30Cで合流された後の空気の状態を表している。
【0045】
第2コイル24には、高温冷水が供給されており、第2空調機14内で第2コイル24によって空気が冷却される。このとき、空気は、点A1から低温側に向かって、所定の絶対湿度線(例えば、10.5の絶対湿度線)に沿って遷移し、点C1の状態となる。すなわち、空気が顕熱処理される。
【0046】
第1コイル20には、低温冷水が供給されており、第1空調機12内で第1コイル20によって空気が冷却される。このとき、空気は、点A1から低温側に向かって、所定の絶対湿度線(例えば、10.5の絶対湿度線)に沿って遷移し、所定の相対湿度線(例えば、90%の相対湿度線)に到達すると、第1コイル20の表面に結露が生じ、空気が潜熱・顕熱処理される。このとき、空気の状態が所定の相対湿度線に沿って左下方向に遷移し、点B1の状態となる。そして、第1コイル20で処理された空気と第2コイル24で処理された空気は、供給通路30の合流部30Cで合流されることで、点B1と点C1とを結ぶ直線上の点D1の状態となる。
【0047】
図4では、第1コイル20による処理の前後で空気の比エンタルピーの差がΔ23であり、第2コイル24による処理の前後で空気の比エンタルピーの差がΔ9である。一般的な冷凍機熱源の一例では17℃の高温冷水は、7℃の低温冷水と比べて約80%のエネルギーで供給可能であり、さらに、未利用エネルギーが導入しやすい温度帯である。これにより、下記の式(1)の熱量となる。
Δ9×50(能力分割)×80%(熱源COP)+Δ23×50(能力分割)×100%(熱源COP)=360+1150=1510・・・式(1)
【0048】
なお、熱源COPとは、成績係数(動作係数)とも呼ばれる空調システムのエネルギー消費効率をチェックするための係数であり、消費電力1kWに対しての冷房能力・暖房能力を示す値のことである。
【0049】
ここで、
図5及び
図6を用いて、比較例の空調システム200について説明する。
【0050】
図5に示されるように、比較例の空調システム200は、第1空調機202と、第2空調機204と、空調対象室16と、を備えている。第1空調機202は、低温冷水が供給される第1コイル206を備えている。第2空調機204は、低温冷水が供給される第2コイル208を備えている。
【0051】
また、空調システム200は、第1コイル206と第2コイル208へ選択的に低温冷水を循環させる低温冷水循環路210を備えている。さらに、空調システム10は、第1空調機202からの空気と第2空調機204からの空気を合流して空調対象室16へ供給する供給通路30と、空調対象室16の空気を第1空調機202及び第2空調機204へ還流させる還流通路32と、を備えている。
【0052】
低温冷水循環路210は、第1空調機202に繋がる往路側第1循環路210Aと、第1空調機202に繋がる復路側第1循環路210Bと、第2空調機204に繋がる往路側第2循環路210Cと、第2空調機204に繋がる復路側第2循環路210Dと、を備えている。また、低温冷水循環路210は、往路側第1循環路210Aの上流側と往路側第2循環路210Cの上流側に接続される1本の本体循環路210Eを備えている。復路側第1循環路210Bと復路側第2循環路210Dとは、流れ方向下流側で本体循環路210Eの上流側端部に繋がっている。低温冷水循環路210では、熱源機器46により熱交換された低温冷水が第1コイル206と第2コイル208に循環される。このとき、低温冷水循環路210の温度センサ80で検出された低温冷水の温度は、例えば、7℃である。
【0053】
第1空調機202では、ファン34の駆動により、空調対象室16から還流通路32を通って第1空調機202に戻った空気は、第1コイル206に供給された低温冷水により熱交換され、空気が第1供給通路30Aに供給される。同様に、第2空調機204では、ファン36の駆動により、空調対象室16から還流通路32を通って第2空調機204に戻った空気は、第2コイル208に供給された低温冷水により熱交換され、空気が第2供給通路30Bに供給される。そして、第1供給通路30Aに供給された空気と第2供給通路30Bに供給された空気が合流部30Cで合流され、さらに空気が空調対象室16へ供給される。
【0054】
このとき、空調対象室16内の空気センサ78で検出された空気(すなわち、第1空調機202により処理される前の空気)の温度は、例えば、26℃であり、空気の相対湿度は、例えば、50%である。また、第1供給通路30Aの空気センサ72で検出された空気(すなわち、第1コイル206の低温冷水により処理された空気)の温度は、例えば、13℃であり、空気の相対湿度は、例えば、95%である。また、第2供給通路30Bの空気センサ74で検出された空気(すなわち、第2コイル208の低温冷水により処理された空気)の温度は、例えば、13℃であり、空気の相対湿度は、例えば、95%である。さらに、本体通路30Dの空気センサ76で検出された空気の温度は、例えば、13℃であり、空気の相対湿度は、例えば、95%である。
【0055】
図6は、空調システム200における夏季の冷房運転の際の空気の状態変化を示す空気線図である。
図6に示されるように、符号A2の点は、空調対象室16から還流される空気の状態を表しており、符号B2の点は、第1コイル20及び第2コイルによって処理された後の空気の状態を表している。
【0056】
第1コイル206及び第2コイル208には、低温冷水が供給されており、第1コイル206及び第2コイル208によって空気が冷却される。このとき、空気は、点A2から低温側に向かって、所定の絶対湿度線(例えば、10.5の絶対湿度線)に沿って遷移し、空気が顕熱処理される。さらに、空気は所定の相対湿度線(例えば、95%の相対湿度線)に到達すると、第1コイル206及び第2コイル208の表面に結露が生じ、空気が潜熱・顕熱処理される。このとき、空気の状態が所定の相対湿度線に沿って左下方向に遷移し、点B2の状態となる。この空調システム200では、顕熱と潜熱とを効率よく処理することができない。
【0057】
図6では、第1コイル206及び第2コイル208による処理の前後で空気の比エンタルピーの差がΔ18である。これにより、下記の式(2)の熱量となる。
Δ18×(50+50)(能力分割)×100%(熱源COP)=1800・・・式(2)
【0058】
式(1)の熱量と式(2)の熱量とを比較すると、本実施形態の空調システム10では、ピーク時で16%程度の省エネルギー化が可能である。
【0059】
<第2モード>
次に、空調システム10における第2モードについて説明する。空調システム10では、コントローラ70により、第1空調機12又は第2空調機14のいずれか一方を停止して空調対象室16を空調する第2モードが設定されている。
図3に示されるように、コントローラ70は、例えば、第2空調機14が故障したときに、第2空調機14を停止して他方の第1空調機12で空調対象室16を空調する第2モードに切り替える。
【0060】
第2モードでは、コントローラ70により低温冷水循環路26の流量調整弁50、52が開放され、低温冷水循環路26の流量調整弁54、56が閉止される。また、コントローラ70により高温冷水循環路28の流量調整弁64、66、68を閉止してもよい。そして、コントローラ70により、ポンプ48と、ファン34と、熱源機器46とが駆動される。
【0061】
これにより、低温冷水循環路26では、矢印Aに示すように、熱源機器46で熱交換された低温冷水が低温冷水循環路26を通って第1空調機12の第1コイル20に供給される。このとき、低温冷水循環路26の温度センサ80で検出された低温冷水の温度は、例えば、7℃である。
【0062】
第1空調機12では、ファン34の駆動により、空調対象室16から還流通路32を通って第1空調機12に戻った空気は、第1コイル20に供給された低温冷水により熱交換され、空気が第1供給通路30Aに供給される。そして、第1供給通路30Aに供給された空気は、本体通路30D等を通って空調対象室16に供給される。これにより、空調対象室16内の空気の温度及び相対湿度が調整される。
【0063】
なお、図示を省略するが、第2モードでは、例えば、第1空調機12が故障したときに、第1空調機12を停止して他方の第2空調機14で空調対象室16を空調してもよい。
【0064】
上記の空調システム10では、第1モードにおいて、第1空調機12内で第1コイル20に低温冷水を循環させて空気を潜熱・顕熱処理し、第2空調機14内で第2コイル24に高温冷水を循環させて空気を顕熱処理し、供給通路30で合流して空調対象室16へ供給する。このため、ファン34、36の負担が小さく、簡単な構成で潜熱・顕熱と顕熱を分離して処理することができる。したがって、空調システム10では、潜熱・顕熱と顕熱を分離して処理しない場合に比べて、省エネルギー化が可能である。
【0065】
また、空調システム10では、第2モードにより、第1空調機12又は第2空調機14のいずれか一方を停止して空調対象室16を空調する。このため、例えば、第1空調機12又は第2空調機14のいずれか一方が故障したときに、第1空調機12又は第2空調機14の他方のみを動作させて空調対象室16を空調することで、故障時のバックアップとして機能させることができる。
【0066】
〔補足説明〕
上記実施形態では、第1コイル20に供給される低温冷水の温度、第2コイル24に供給される高温冷水の温度、空調対象室16内の空気の温度及び相対湿度、第1コイル20により処理された後の空気の温度及び相対湿度、第2コイル24により処理された後の空気の温度及び相対湿度などは、変更可能である。
【0067】
上記実施形態では、空調対象室16は、1つの部屋であるが、複数の部屋であってもよい。すなわち、第1空調機12と第2空調機14により複数の部屋(空調対象室)の空気の温度及び相対湿度を調整する構成でもよい。
【0068】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0069】
10 空調システム
12 第1空調機
14 第2空調機
16 空調対象室
20 第1コイル
24 第2コイル
26 低温冷水循環路
28 高温冷水循環路
30 供給通路
32 還流通路