IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図1
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図2
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図3
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図4
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図5
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図6
  • 特許-バッテリー診断装置及び方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】バッテリー診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240409BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240409BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240409BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20240409BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01R31/392
H02J7/00 X
H02J7/00 Q
G01R31/389
G01R31/3842
H01M10/48 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022570674
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2022004009
(87)【国際公開番号】W WO2022203367
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039998
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-ドク
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ-スー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、スン-ジュ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0111016(KR,A)
【文献】国際公開第2020/189918(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189914(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/189915(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0103396(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
H02J 7/00
G01R 31/389
G01R 31/3842
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの充電が終了した後に前記バッテリーの開放電圧を測定し、前記バッテリーの充電が終了した後、前記バッテリーが所定の時間放電する過程で前記バッテリーの抵抗を測定する測定部と、
前記測定部から前記開放電圧に対する電圧情報及び前記抵抗に対する抵抗情報を受信し、前記バッテリーに対して予め設定された基準電圧と前記開放電圧との電圧差を算出し、前記バッテリーに対して予め設定された基準抵抗と前記抵抗との抵抗差を算出し、前記電圧差に対する前記抵抗差の比率である電圧-抵抗比率に基づいて前記バッテリーの退化加速を診断する制御部と、を含む、バッテリー診断装置。
【請求項2】
前記バッテリーは、
SOCが予め設定された上限SOCに到達した場合、充電が終了し、
前記制御部は、
前記バッテリーの充電が終了する度に前記電圧-抵抗比率を算出し、算出された複数の電圧-抵抗比率に基づいて前記バッテリーの退化加速を診断する、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の電圧-抵抗比率間の増減パターンを決定し、決定された増減パターンに応じて前記バッテリーの退化加速を診断する、請求項2に記載のバッテリー診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記増減パターンが増加パターンと決定された場合、前記バッテリーの退化が加速していると診断する、請求項3に記載のバッテリー診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記増減パターンが増加パターンと決定された場合、前記予め設定された上限SOCを減少させる、請求項3または4に記載のバッテリー診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記複数の電圧-抵抗比率に対する変化率と予め設定された基準変化率とを比較し、比較結果に基づいて前記増減パターンを決定する、請求項3から5のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数の電圧-抵抗比率に対する増減を表す変動曲線を生成し、前記変動曲線の傾きが前記基準変化率以上であれば、前記増減パターンを増加パターンと決定する、請求項6に記載のバッテリー診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記増減パターンが増加パターンと決定された場合、前記バッテリーに高ニッケル系正極材が含まれたと判断する、請求項3から7のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置を含む、バッテリーパック。
【請求項10】
バッテリーの充電が終了した後に前記バッテリーの開放電圧を測定する電圧測定段階と、
前記バッテリーの充電が終了した後、前記バッテリーが所定の時間放電する過程で前記バッテリーの抵抗を測定する抵抗測定段階と、
前記バッテリーに対して予め設定された基準電圧と前記開放電圧との電圧差を算出し、前記バッテリーに対して予め設定された基準抵抗と前記抵抗との抵抗差を算出する電圧差及び抵抗差算出段階と、
前記電圧差に対する前記抵抗差の比率である電圧-抵抗比率に基づいて前記バッテリーの退化加速を診断する診断段階と、を含む、バッテリー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月26日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0039998号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリー診断装置及び方法に関し、より詳しくは、バッテリーの退化状態を診断することができるバッテリー診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、人工衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能バッテリーに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどのバッテリーが商用化しているが、中でもリチウムバッテリーはニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果が殆ど起きず充放電が自在であって、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
このようなバッテリーの退化状態を診断するため、従来、微分プロファイルに含まれたピーク(特徴点)の挙動変化を分析する技法が用いられている。
【0006】
図1は、バッテリー電圧と微分容量との対応関係を示す微分プロファイルである。
【0007】
例えば、図1を参照すると、従来、バッテリーに対する微分プロファイルを生成し、微分プロファイルに含まれたEc(4)ピークの挙動を確認することでバッテリーの退化加速を診断している。
【0008】
ただし、従来の方式でバッテリーの退化加速を診断するためには、微分プロファイルの生成が必須であり、微分プロファイルを生成するためには、完全放電したバッテリーを完全充電するか又は完全充電されたバッテリーを完全放電する充放電過程が必要である。また、微分容量を算出するため、充放電過程で取得したバッテリーの電圧及び容量データの加工が必要であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリーが充電される度にバッテリーの電圧及び抵抗に基づいてバッテリーの退化加速を迅速且つ簡便に診断することができるバッテリー診断装置及び方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によるバッテリー診断装置は、バッテリーの充電が終了した後にバッテリーの開放電圧を測定し、バッテリーの充電が終了した後、バッテリーが所定の時間放電する過程でバッテリーの抵抗を測定するように構成された測定部と、測定部から開放電圧に対する電圧情報及び抵抗に対する抵抗情報を受信し、バッテリーに対して予め設定された基準電圧と開放電圧との電圧差を算出し、バッテリーに対して予め設定された基準抵抗と抵抗との抵抗差を算出し、電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速を診断するように構成された制御部と、を含む。
【0012】
バッテリーは、SOCが予め設定された上限SOCに到達した場合、充電が終了するように構成され得る。
【0013】
制御部は、バッテリーの充電が終了する度に電圧差に対する抵抗差の比率である電圧-抵抗比率を算出し、算出された複数の電圧-抵抗比率に基づいてバッテリーの退化加速を診断するように構成され得る。
【0014】
制御部は、複数の電圧-抵抗比率間の増減パターンを決定し、決定された増減パターンに応じてバッテリーの退化加速を診断するように構成され得る。
【0015】
制御部は、増減パターンが増加パターンと決定された場合、バッテリーの退化が加速していると診断するように構成され得る。
【0016】
制御部は、増減パターンが増加パターンと決定された場合、予め設定された上限SOCを減少させるように構成され得る。
【0017】
制御部は、複数の電圧-抵抗比率に対する変化率と予め設定された基準変化率とを比較し、比較結果に基づいて増減パターンを決定するように構成され得る。
【0018】
制御部は、複数の電圧-抵抗比率に対する増減を表す変動曲線を生成し、変動曲線の傾きが基準変化率以上であれば、増減パターンを増加パターンと決定するように構成され得る。
【0019】
制御部は、増減パターンが増加パターンと決定された場合、バッテリーに高ニッケル系正極材が含まれたと判断するように構成され得る。
【0020】
本発明の他の一態様によるバッテリーパックは、本発明の一態様によるバッテリー診断装置を含む。
【0021】
本発明のさらに他の一態様によるバッテリー診断方法は、バッテリーの充電が終了した後にバッテリーの開放電圧を測定する電圧測定段階と、バッテリーの充電が終了した後、バッテリーが所定の時間放電する過程でバッテリーの抵抗を測定する抵抗測定段階と、バッテリーに対して予め設定された基準電圧と開放電圧との電圧差を算出し、バッテリーに対して予め設定された基準抵抗と抵抗との抵抗差を算出する電圧差及び抵抗差算出段階と、電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速を診断する診断段階と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、バッテリーのSOCが上限SOCに到達する度に、バッテリーに対する電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速が診断されるため、退化加速の判断に不要な充放電過程(例えば、完全充電及び完全放電の過程)が求められず、比較的に簡単な演算を通じて退化加速を迅速に診断することができる。
【0023】
本発明の効果は上述した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は請求範囲の記載から当業者により明らかに理解されるだろう。
【0024】
本明細書に添付される次の図面は、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであり、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】バッテリー電圧と微分容量との対応関係を示す微分プロファイルである。
図2】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置を示した概略図である。
図3】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置によって算出されたバッテリーの電圧差を示した概略図である。
図4】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置によって算出されたバッテリーの抵抗差を示した概略図である。
図5】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置によって算出された第1バッテリーと第2バッテリーとの電圧-抵抗比率を示した概略図である。
図6】本発明の他の一実施形態によるバッテリーパックの例示的構成を示した概略図である。
図7】本発明のさらに他の一実施形態によるバッテリー診断方法を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲において使われた用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0027】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0028】
また、本発明の説明において、関連する公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0029】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちのある一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0030】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に言及されない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0031】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されるとするとき、これは「直接的な連結(接続)」だけでなく、他の素子を介在した「間接的な連結(接続)」も含む。
【0032】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100を示した概略図である。
【0034】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100は、測定部110及び制御部120を含む。
【0035】
測定部110は、バッテリーの充電終了後にバッテリーの開放電圧を測定するように構成され得る。
【0036】
ここで、バッテリーは、負極端子及び正極端子を備え、物理的に分離可能な一つの独立したセルを意味する。一例として、リチウムイオン電池またはリチウムポリマー電池をバッテリーとしてよい。また、バッテリーは、複数のセルが直列及び/または並列に接続されて設けられたバッテリーモジュールも意味し得る。以下、説明の便宜上、バッテリーが一つの独立したセルを意味するとして説明する。
【0037】
具体的には、バッテリーのSOC(State of Charge、充電状態)が予め設定された上限SOCに到達した場合、バッテリーに対する充電が終了し得る。バッテリーの充電が終了した後、測定部110は、予め設定された休止期より後のバッテリーの開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を測定し得る。
【0038】
例えば、バッテリーの充電が終わった後、測定部110は、10分間の休止期より後のバッテリーの開放電圧を測定し得る。
【0039】
測定部110は、バッテリーの充電が終了した後、バッテリーが所定の時間放電する過程でバッテリーの抵抗を測定するように構成され得る。
【0040】
望ましくは、測定部110によってバッテリーの開放電圧が測定された後、バッテリーは所定の時間放電し得る。測定部110は、バッテリーが放電する間のバッテリーの電圧降下値とバッテリーから出力される放電量に基づいて、バッテリーの抵抗を測定し得る。
【0041】
例えば、バッテリーの開放電圧が測定された後、所定の時間(例えば、1分間)バッテリーが放電し得る。測定部110は、1分間のバッテリーの電圧降下値を測定し得る。また、測定部110は、1分間バッテリーから出力された放電電流を積算して放電量を測定し得る。そして、測定部110は、電圧降下値と放電量に基づいてバッテリーの抵抗を測定し得る。
【0042】
具体的には、測定部110は、バッテリーの開放電圧が測定された後、所定の時間がさらに経過する間にバッテリーの抵抗を測定することで、バッテリーに対するオーム抵抗、電荷移動抵抗及び拡散抵抗をすべて考慮してバッテリーの抵抗を測定し得る。
【0043】
制御部120は、測定部110から開放電圧に対する電圧情報及び抵抗に対する抵抗情報を受信するように構成され得る。
【0044】
例えば、測定部110と制御部120とは通信可能に互いに接続され得る。測定部110はバッテリーの開放電圧に対する電圧情報及び抵抗に対する抵抗情報を出力し、制御部120は測定部110から出力された電圧情報及び抵抗情報を受信し得る。
【0045】
制御部120は、バッテリーに対して予め設定された基準電圧と開放電圧との電圧差を算出するように構成され得る。
【0046】
望ましくは、基準電圧は、バッテリーがBOL(Beginning of Life)状態であるときに測定された開放電圧であり得る。例えば、BOL状態は、0サイクルであるときのバッテリーの状態を意味する。そして、制御部120は、基準電圧と測定部110によって測定された開放電圧との差を計算し、バッテリーに対する電圧差を算出し得る。
【0047】
例えば、電圧差は、基準電圧と測定された開放電圧との差、または、基準抵抗と測定された開放電圧との比率として算出され得る。
【0048】
以下、説明の便宜上、電圧差が基準電圧と測定された開放電圧との電圧差であるとして説明する。すなわち、電圧差は「開放電圧-基準電圧」の数式によって算出され得る。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100によって算出されたバッテリーの電圧差を示した概略図である。
【0050】
具体的には、図3は、サイクル毎に算出されたバッテリーの電圧差を示した図である。すなわち、バッテリーは、それぞれのサイクル毎に、SOCが上限SOCに到達するまで充電され、充電が終わった後、測定部110によって開放電圧が測定され得る。そして、制御部120は、基準電圧とそれぞれのサイクルで測定された開放電圧とに基づいて、それぞれのサイクル毎にバッテリーの電圧差を算出し得る。
【0051】
例えば、0サイクルにおいてバッテリーの充電が終わった後の開放電圧が基準電圧に設定され得る。その後、測定部110は、それぞれのサイクル毎にバッテリーの開放電圧を測定し、制御部120は「開放電圧-基準電圧」の数式を計算してバッテリーに対する電圧差を算出し得る。
【0052】
制御部120は、バッテリーに対して予め設定された基準抵抗と抵抗との抵抗差を算出するように構成され得る。
【0053】
望ましくは、基準抵抗は、バッテリーがBOL状態であるときに測定された抵抗であり得る。すなわち、制御部120は、基準抵抗と測定部110によって測定された抵抗との差に基づいてバッテリーに対する抵抗差を算出し得る。
【0054】
例えば、抵抗差は、基準抵抗と測定された抵抗との差、または、基準抵抗と測定された抵抗との比率として算出され得る。
【0055】
以下、説明の便宜上、抵抗差が基準抵抗に対する抵抗の比率であるとして説明する。すなわち、抵抗差は「(抵抗÷基準抵抗)×100」の数式によって算出され得る。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100によって算出されたバッテリーの抵抗差を示した概略図である。
【0057】
具体的には、図4は、サイクル毎に算出されたバッテリーの抵抗差を示した図である。すなわち、バッテリーは、それぞれのサイクル毎に、SOCが上限SOCに到達するまで充電され、充電が終わった後、測定部110によって抵抗が測定され得る。そして、制御部120は、基準抵抗とそれぞれのサイクルで測定された抵抗とに基づいて、それぞれのサイクル毎にバッテリーの抵抗差を算出し得る。
【0058】
制御部120は、電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速を診断するように構成され得る。
【0059】
ここで、バッテリーの退化加速とは、バッテリーの退化が線形的に行われず、サイクルが進行するほど加速することを意味する。すなわち、制御部120は、算出された電圧差及び抵抗差を用いてバッテリーの退化が加速しているか否かを非破壊的な方式で診断することができる。
【0060】
例えば、図1を参照すると、従来、バッテリーに対する微分プロファイルを生成し、微分プロファイルに含まれたピークの挙動を確認することでバッテリーの退化加速を診断している。従来の方式でバッテリーの退化加速を診断するためには、微分プロファイルの生成が必須であり、微分プロファイルを生成するためには、完全放電したバッテリーを完全充電するか又は完全充電されたバッテリーを完全放電する充放電過程が必要である。また、微分容量を算出するため、充放電過程で取得したバッテリーの電圧及び容量データの加工が求められる。
【0061】
一方、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100は、バッテリーを完全放電させる必要なく、バッテリーのSOCが上限SOCに到達する度に、バッテリーに対する電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速を診断することができる。
【0062】
したがって、バッテリー診断装置100によれば、退化加速の判断に不要な充放電過程(例えば、完全放電及び完全充電過程)が求められず、比較的に簡単な演算を通じて退化加速が迅速に診断することができる。
【0063】
一方、バッテリー診断装置100に備えられた制御部120は、本発明で行われる多様な制御ロジックを実行するため、当業界に知られたプロセッサ、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)、他のチップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含み得る。また、制御ロジックがソフトウェアとして具現されるとき、制御部120は、プログラムモジュールの集合として具現され得る。このとき、プログラムモジュールはメモリに保存され、制御部120によって実行され得る。メモリは、制御部120の内部または外部に備えられ得、周知の多様な手段で制御部120に接続され得る。
【0064】
また、バッテリー診断装置100は、記録部130をさらに含み得る。記録部130は、バッテリー診断装置100の各構成要素が動作及び機能を行うのに必要なデータ、若しくは、プログラムまたは動作及び機能が行われる過程で生成されるデータなどを保存し得る。記録部130は、データを記録、消去、更新及び読出できると知られた公知の情報記録手段であれば、その種類に特に制限がない。一例として、情報記録手段には、RAM、フラッシュ(登録商標)メモリ、ROM、EEPROM、レジスタなどが含まれ得る。また、記録部130は、制御部120によって実行可能なプロセスが定義されたプログラムコードを保存し得る。
【0065】
例えば、記録部130は、バッテリーに対する電圧情報及び抵抗情報を保存し得る。そして、記録部130はバッテリーの各サイクルに対する電圧差及び抵抗差を保存し得る。
【0066】
以下、制御部120がバッテリーの退化加速を診断する構成について具体的に説明する。
【0067】
制御部120は、バッテリーの充電が終了する度に、電圧差に対する抵抗差の比率である電圧-抵抗比率を算出するように構成され得る。
【0068】
具体的には、電圧-抵抗比率は、同一サイクルで算出された電圧差に対する抵抗差の比率を意味し得る。例えば、電圧-抵抗比率は、「(抵抗差-100)÷|電圧差|」の数式によって算出され得る。ここで、|電圧差|とは、電圧差の絶対値を意味する。
【0069】
図5は、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100によって算出された第1バッテリーB1と第2バッテリーB2との電圧-抵抗比率を示した概略図である。
【0070】
ここで、第1バッテリーB1は正極材におけるニッケル含量が60%であるNCM622バッテリーであり、第2バッテリーB2は正極材におけるニッケル含量が83%であるNCMAバッテリーである。
【0071】
例えば、図5の実施形態において、第1バッテリーB1に対しては100サイクルから670サイクルまで電圧-抵抗比率が測定され、第2バッテリーB2に対しては0サイクルから600サイクルまで電圧-抵抗比率が測定された。
【0072】
また、第1バッテリーB1及び第2バッテリーB2は、それぞれのサイクルで同じC-レートで同じ上限SOCまで充電された。すなわち、第1バッテリーB1と第2バッテリーB2とは、それぞれの正極材に含まれたニッケルの含量を除き、充電及び放電温度、充電C-レート、放電C-レート、及び上限SOCなどの条件がすべて同一である。
【0073】
制御部120は、算出された複数の電圧-抵抗比率に基づいてバッテリーの退化加速を診断するように構成され得る。
【0074】
具体的には、制御部120は、複数の電圧-抵抗比率間の増減パターンを決定するように構成され得る。
【0075】
ここで、増減パターンは、増加パターン、減少パターン及び維持パターンを含み得る。増加パターンとは、サイクルが進行するほど電圧-抵抗比率が増加するパターンを意味し、減少パターンとは、サイクルが進行するほど電圧-抵抗比率が減少するパターンを意味し、維持パターンとは、サイクルが進行しても電圧-抵抗比率が所定の範囲内で一定に維持されるパターンを意味する。
【0076】
制御部120は、決定された増減パターンに応じてバッテリーの退化加速を診断するように構成され得る。
【0077】
特に、制御部120は、増減パターンが増加パターンと決定された場合、バッテリーの退化が加速していると診断するように構成され得る。
【0078】
例えば、図5の実施形態において、第1バッテリーB1の電圧-抵抗比率はサイクルが進行するほど増加し、第2バッテリーB2の電圧-抵抗比率はサイクルが進行しても所定の範囲内で一定に維持される。したがって、制御部120は、第1バッテリーB1の電圧-抵抗比率の増減パターンを増加パターンと決定し、第2バッテリーB2の電圧-抵抗比率の増減パターンを維持パターンと決定し得る。そして、制御部120は、増減パターンが増加パターンと決定された第1バッテリーB1の退化が加速していることを診断することができる。
【0079】
より具体的には、制御部120は、複数の電圧-抵抗比率に対する変化率と予め設定された基準変化率とを比較し、比較結果に基づいて増減パターンを決定するように構成され得る。
【0080】
具体的には、制御部120は、変動曲線の傾きが基準変化率以上であれば、増減パターンを増加パターンと決定するように構成され得る。
【0081】
ここで、基準変化率は、増減パターンを増加パターンと決定する基準になる変化率であり得る。例えば、電圧-抵抗比率の変化率が基準変化率以上であれば、制御部120は、バッテリーの電圧-抵抗比率の増減パターンを増加パターンと決定し得る。
【0082】
望ましくは、電圧-抵抗比率の変化率と基準変化率とを比較するため、制御部120は、複数の電圧-抵抗比率に対する変動曲線を生成するように構成され得る。
【0083】
例えば、制御部120は、連続する二つのサイクルに対する電圧-抵抗比率同士の間の中央値を算出し、算出された複数の中央値を連結することで変動曲線を生成し得る。ただし、変動曲線は、複数の電圧-抵抗比率に対する増減を表すものであればよく、上記の実施形態のように中央値を用いて生成されるものに制限されない。
【0084】
図5の実施形態において、第1バッテリーB1に対して生成される変動曲線はC1線分で表され、第2バッテリーB2に対して生成される変動曲線はC2線分に表され得る。
【0085】
例えば、第1バッテリーB1に対する変動曲線C1において、約300サイクル付近での電圧-抵抗比率の変化率が基準変化率以上であり得る。したがって、制御部120は、第1バッテリーB1に対する電圧-抵抗比率の増減パターンを増加パターンと決定し、第1バッテリーB1の退化が約300サイクルから加速していると診断する。この場合、制御部120は、第1バッテリーB1に対して予め設定された上限SOCを減少させることで、約300サイクル以後からの第1バッテリーB1の退化がさらに加速化することを防止することができる。
【0086】
これに対し、第2バッテリーB2に対する変動曲線C2は、0サイクルから600サイクルまでの進行中に、電圧-抵抗比率の変化率が基準変化率未満であり得る。したがって、制御部120は、第2バッテリーB2の退化は加速していないと診断する。
【0087】
本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置100は、バッテリーの充電が終了する度に測定された電圧及び抵抗に基づいてバッテリーの退化加速を迅速に診断することができる。すなわち、バッテリー診断装置100は、バッテリーのSOCが上限SOCに到達して充電が終了するだけでバッテリーの退化加速を診断できるため、退化加速を判断する従来の方式よりも迅速にバッテリーの退化加速を診断することができるという実用的な長所がある。
【0088】
一方、制御部120は、増減パターンが増加パターンと決定された場合、バッテリーに高ニッケル系正極材が含まれたと判断するように構成され得る。
【0089】
すなわち、制御部120は、複数の電圧-抵抗比率の増減パターンに基づいてバッテリーの種類を区分可能である。具体的には、制御部120は、バッテリーを低ニッケル系バッテリー(正極材に含まれたニッケルの含量が80%未満であるバッテリー)または高ニッケル系バッテリー(正極材に含まれたニッケルの含量が80%以上であるバッテリー)に分類し得る。
【0090】
例えば、正極材の組成が不明なバッテリーの場合、従来はバッテリーを分解して正極材の組成を確認しなければならないという問題がある。これと異なり、本発明の一実施形態によれば、複数の電圧-抵抗比率の増減パターンに応じてバッテリーの正極材の組成を容易に確認できる。
【0091】
図5の実施形態において、高ニッケル系バッテリーである第1バッテリーB1は、電圧-抵抗比率の増減パターンが増加パターンとして明確に現れるが、低ニッケル系バッテリーである第2バッテリーB2は、電圧-抵抗比率の増減パターンが増加パターンとして現れないことが確認できる。これは、第1バッテリーB1の正極材に含まれたニッケル含量と第2バッテリーB2の正極材に含まれたニッケル含量とによる相違と見られるため、バッテリー診断装置100は、バッテリーの退化加速を診断する過程で正極材の組成によるバッテリーの種類を区分することができる。
【0092】
一方、制御部120は、増減パターンが増加パターンと決定された場合、予め設定された上限SOCを減少させるように構成され得る。
【0093】
例えば、増減パターンが増加パターンと決定された場合、バッテリーの退化が加速している状態であり得る。この場合、バッテリーの退化が加速することを防止するため、制御部120は、バッテリーに対して設定された上限SOCを減少させ得る。すなわち、上限SOCが減少することで、バッテリーの退化が急激に進行するSOC区間に対する使用が制限され、これによりバッテリーの寿命が増大できる。
【0094】
したがって、バッテリー診断装置100は、電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速を非破壊的な方式で診断することだけでなく、バッテリーに対して設定された上限SOCを調節することで、バッテリーの寿命を増大させることができる。
【0095】
本発明によるバッテリー診断装置100は、BMS(Battery Management System、バッテリー管理システム)に適用可能である。すなわち、本発明によるBMSは、上述したバッテリー診断装置100を含み得る。このような構成において、バッテリー診断装置100の各構成要素の少なくとも一部は、従来のBMSに含まれた構成の機能を補完または追加することで具現され得る。例えば、バッテリー診断装置100の測定部110、制御部120、及び記録部130は、BMSの構成要素として具現され得る。
【0096】
図6は、本発明の他の一実施形態によるバッテリーパックの例示的構成を示した概略図である。
【0097】
本発明によるバッテリー診断装置100は、バッテリーパックに備えられ得る。すなわち、本発明によるバッテリーパックは、上述したバッテリー診断装置100及び一つ以上のバッテリーセルを含み得る。また、バッテリーパックは、電装品(リレー、ヒューズなど)及びケースなどをさらに含み得る。
【0098】
図6を参照すると、バッテリーパック1の正極端子P+及び負極端子P-を通じて充放電装置2がバッテリーBに接続され得る。充放電装置2は、バッテリーBを充電及び放電させるように構成され得る。望ましくは、充放電装置2は、バッテリーBのSOCが上限SOCに到達するまでバッテリーBを充電させ得る。また、制御部120によって上限SOCが変更された場合、充放電装置2は、バッテリーBのSOCが変更された上限SOCに到達するまでバッテリーBを充電させ得る。
【0099】
測定部110は、第1センシングラインSL1及び第2センシングラインSL2を通じてバッテリーBに接続され得る。測定部110は、第1センシングラインSL1を通じてバッテリーBの正極電圧を測定し、第2センシングラインSL2を通じてバッテリーBの負極電圧を測定し得る。そして、測定部110は、測定した正極電圧と負極電圧との差を計算し、バッテリーBの電圧を測定し得る。
【0100】
また、測定部110は、第3センシングラインSL3を通じて電流測定ユニットAに接続され得る。測定部110は、電流測定ユニットAを通じてバッテリーBの充電電流及び放電電流を測定し得る。例えば、測定部110は、電流測定ユニットAを通じてバッテリーBの放電電流を測定し、測定された放電電流を累積することでバッテリーBの放電量を測定し得る。
【0101】
図7は、本発明のさらに他の一実施形態によるバッテリー診断方法を示した概略図である。
【0102】
望ましくは、バッテリー診断方法の各段階は、バッテリー診断装置100によって実行できる。以下では、上述した説明と重なる内容は省略するか又は簡単に説明する。
【0103】
図7を参照すると、バッテリー診断方法は、電圧測定段階S100、抵抗測定段階S200、電圧差及び抵抗差算出段階S300、及び診断段階S400を含む。
【0104】
電圧測定段階S100は、バッテリーの充電終了後にバッテリーの開放電圧を測定する段階であって、測定部110によって実行できる。
【0105】
例えば、測定部110は、バッテリーが設定された上限SOCに到達するまで充電された後、バッテリーの開放電圧を測定し得る。
【0106】
抵抗測定段階S200は、バッテリーの充電が終了した後、バッテリーが所定の時間放電する過程でバッテリーの抵抗を測定する段階であって、測定部110によって実行できる。
【0107】
例えば、測定部110は、バッテリーが設定された上限SOCに到達するまで充電された後、バッテリーが約1分間放電する過程でバッテリーの抵抗を測定し得る。具体的には、測定部110は、バッテリーの開放電圧を先に測定し、バッテリーが放電する間の電圧降下値及び放電量に基づいてバッテリーの抵抗を測定し得る。
【0108】
電圧差及び抵抗差算出段階S300は、バッテリーに対して予め設定された基準電圧と開放電圧との電圧差を算出し、バッテリーに対して予め設定された基準抵抗と抵抗との抵抗差を算出する段階であって、制御部120によって実行できる。
【0109】
例えば、制御部120は、「開放電圧-基準電圧」の数式によってそれぞれのサイクルに対する電圧差を算出し得る。また、制御部120は、「(抵抗÷基準抵抗)×100」の数式によってそれぞれのサイクルに対する抵抗差を算出し得る。
【0110】
診断段階S400は、電圧差及び抵抗差に基づいてバッテリーの退化加速を診断する段階であって、制御部120によって実行できる。
【0111】
例えば、制御部120は、「(抵抗差-100)÷|電圧差|」の数式によってそれぞれのサイクルに対する電圧-抵抗比率を算出し、算出された電圧-抵抗比率に対する増減を表す変動曲線を生成し得る。
【0112】
そして、制御部120は、変動曲線の傾きが基準変化率以上であれば、増減パターンを増加パターンと決定し、バッテリーの退化が加速する状態と診断し得る。
【0113】
例えば、図5の実施形態において、約300サイクルにおける第1変動曲線C1の傾きは基準変化率以上であり得る。すなわち、第1変動曲線C1は、約300サイクルから急激に増加するため、制御部120は、第1バッテリーB1が約300サイクルから退化が加速していると診断し得る。
【0114】
これに対し、第2変動曲線C2は、全体サイクル区間(0サイクル~600サイクル)において傾きが基準変化率未満であり得る。制御部120は、第2バッテリーB2は全体サイクル区間で退化が加速していないと診断し得る。
【0115】
上述した本発明の実施形態は、装置及び方法のみによって具現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じても具現され得、このような具現は上述した実施形態の記載から当業者であれば容易に具現できるであろう。
【0116】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0117】
また、上述した本発明は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であって、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、多様な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0118】
1:バッテリーパック
100:バッテリー診断装置
110:測定部
120:制御部
130:記録部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7