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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】貯湯給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/375 20220101AFI20240409BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240409BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20240409BHJP
   F24H 15/124 20220101ALI20240409BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20240409BHJP
   F24H 15/36 20220101ALI20240409BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20240409BHJP
   F24H 15/429 20220101ALI20240409BHJP
【FI】
F24H15/375
F24H1/18 G
F24H4/02 F
F24H15/124
F24H15/20
F24H15/36
F24H15/395
F24H15/429
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020106712
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001810
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正晃
(72)【発明者】
【氏名】稲本 辰巳
(72)【発明者】
【氏名】山根 将太
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096582(JP,A)
【文献】特開2014-238258(JP,A)
【文献】特開2018-105547(JP,A)
【文献】特開2013-219848(JP,A)
【文献】特開2022-001809(JP,A)
【文献】特開2022-001811(JP,A)
【文献】特開2014-095501(JP,A)
【文献】特開平04-093558(JP,A)
【文献】特開2016-133267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプユニットと貯湯タンクユニットと太陽光発電装置と制御手段とを備えたヒートポンプ給湯システムにおいて、
前記ヒートポンプ給湯システムは、太陽光発電装置から供給される電力及び商用電源から供給される電力を用いて湯水を加熱可能に構成され、通常運転モードと緊急時に通常運転モードから移行する応急運転モードとを備え、
前記制御手段は、応急運転モードでのヒートポンプユニット運転時において、設定時間内にヒートポンプユニットの起動、停止を所定回数以上検知したときには太陽光発電装置から供給される電力によってヒートポンプユニットが運転されていると判定すると共にヒートポンプユニットの再起動を所定時間遅延させることを特徴とするヒートポンプ給湯システム。
【請求項2】
前記ヒートポンプユニットが太陽光発電装置から供給される電力によって運転されていると判定された場合には、太陽光発電装置から供給される電力で運転していることを報知する報知手段と、ヒートポンプユニットの運転を継続するか待機するか選択する選択操作手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプ給湯システムは補助熱源機を備えており、
前記ヒートポンプユニットが太陽光発電装置から供給される電力によって運転されていると判定されたとき、前記制御手段はヒートポンプユニットの運転を一定時間待機させ、その待機中には前記補助熱源機の運転を許可することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置を備えたヒートポンプ給湯システムに関し、日照が悪いため太陽光発電装置の発電が不安定であるときのヒートポンプユニットの再起動制御を改善したものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なハイブリッド給湯システムは、貯湯タンクユニットとヒートポンプユニットと補助熱源機とを有するものであり、通常はヒートポンプユニットで加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯しておく。約1週間分の湯水の消費パターンを学習により記憶しておいて、湯水を消費する予定時刻の約1時間位前までに必要量の湯水を貯湯タンクに貯湯する。風呂の追い焚きや予測外の大量の湯水の消費に際しては補助熱源機を稼働させる。
【0003】
ここで、太陽光発電装置からパワーコンディショナーを介してハイブリッド給湯システムに電力を供給可能にしたものも実用化されている。
この場合、日中の日射が十分であるときには、太陽光発電装置とヒートポンプユニットを利用した貯湯運転が可能であり、夜間や日射が不安定な場合には、商用電源からの給電によりハイブリッド給湯システムが稼働する。
【0004】
ハイブリッド給湯システムを制御する技術が種々の公報に記載されている。
特許文献1には、太陽光発電装置が発電している間は売電量を多くするため給湯装置の運転を停止する技術が記載されている。
特許文献2には、ヒートポンプ運転停止が所定回数以上になった場合にはヒートポンプの運転を停止する技術が記載されている。
【0005】
特許文献3には、ヒートポンプの再起動時に沸き上げ温度を低く設定する技術が記載されている。
特許文献4には、冷媒高圧異常により停止したヒートポンプユニットのコンプレッサの再起動時の周波数を通常の立ち上げ時の周波数よりも低くする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5874502
【文献】特開2011-191056
【文献】特許第4874138
【文献】特開2009-264715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光発電装置からハイブリッド給湯システムに給電可能にした場合、停電時には商用電源が停止してしまうため太陽光発電装置からの給電で給湯システムを稼働させなければならない。大都市やその近郊地域における停電の頻度は僅少であるが、地球の温暖化により大型台風が増え、河川の氾濫が増えると、上記以外の地域における停電の回数が増え、停電期間も長期化する傾向がある。
【0008】
このように停電時に太陽光発電装置からの給電のみによりハイブリッド給湯システムを稼働させる場合、曇天時など日射が不安定になると、ヒートポンプユニットの起動、停止が頻繁に繰り返され、ヒートポンプユニット(特に圧縮機)に悪影響を及ぼすだけでなく、効率も低下する。特に、日射が不安定のときヒートポンプユニットの圧縮機の負荷が高くなるほど停止頻度が高くなる。
【0009】
しかも、上記のような場合、制御ユニットも作動、停止を頻繁に繰り返すことになるため、ヒートポンプユニットの制御が複雑化し、所期の制御を行うことが困難になる。このように、太陽光発電装置の発電能力が不安定である場合には、日照の回復を期待してヒートポンプユニットの再起動を遅延させたり、停止確率を減らす為に出力制限する等の対策を行うことが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、応急運転モード下に、太陽光発電装置からの電力でヒートポンプユニットが運転されていると判定したとき日照の回復を期待して再起動を一定時間遅延させるようにしたヒートポンプ給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のヒートポンプ給湯システムは、ヒートポンプユニットと貯湯タンクユニットと太陽光発電装置と制御手段とを備えたヒートポンプ給湯システムにおいて、
前記ヒートポンプ給湯システムは、太陽光発電装置から供給される電力及び商用電源から供給される電力を用いて湯水を加熱可能に構成され、通常運転モードと緊急時に通常運転モードから移行する応急運転モードとを備え、前記制御手段は、応急運転モードでのヒートポンプユニット運転時において、設定時間内にヒートポンプユニットの起動、停止を所定回数以上検知したときには太陽光発電装置から供給される電力によってヒートポンプユニットが運転されていると判定すると共にヒートポンプユニットの再起動を所定時間遅延させることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、例えば停電時等における応急運転モードでのヒートポンプユニット運転時において、設定時間内にヒートポンプユニットの起動、停止を所定回数以上検知したときには、太陽光発電装置から供給される電力によってヒートポンプユニットが運転されていると判定する。この判定により、簡単且つ容易に太陽光発電装置から供給される電力によってヒートポンプユニットが運転されていることを知ることができる。
【0013】
そして、上記の場合に、ヒートポンプユニットを再起動させる時に所定時間遅延させるので、日照が回復して発電が安定化する確率が高くなる。そのため、ヒートポンプユニットの起動、停止の頻度を減らしてヒートポンプユニットの作動を安定化させることができる。
【0014】
請求項2のヒートポンプ給湯システムは、請求項1の発明において、前記ヒートポンプユニットが太陽光発電装置から供給される電力によって運転されていると判定された場合には、太陽光発電装置から供給される電力で運転していることを報知する報知手段と、ヒートポンプユニットの運転を継続するか待機するか選択する選択操作手段を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、報知手段により、太陽光発電装置から供給される電力で運転していることを報知することができ、また、選択操作手段により、ヒートポンプユニットの運転を継続するか待機するか選択することができる。
【0016】
請求項3のヒートポンプ給湯システムは、請求項1又は2の発明において、前記ヒートポンプ給湯システムは補助熱源機を備えており、前記ヒートポンプユニットが太陽光発電装置から供給される電力によって運転されていると判定されたとき、前記制御手段はヒートポンプユニットの運転を一定時間待機させ、その待機中には前記補助熱源機の運転を許可することを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、ヒートポンプユニットが待機している間は湯水を加熱できないことから、補助熱源機の運転を許可することで、湯水の加熱が可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記のような種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例に係るヒートポンプ給湯システムの構成図である。
図2】ヒートポンプユニットと貯湯タンクユニットの構成図である。
図3】応急運転モードを設定した場合のヒートポンプ応急運転制御のフローチャートである。
図4】停電時におけるヒートポンプ再起動制御のフローチャートの一部である。
図5】上記のヒートポンプ再起動制御のフローチャートの残部である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づいて説明する。
【0021】
最初にヒートポンプ給湯システム1の全体構成について説明する。
図1図2に示すように、ヒートポンプ給湯システム1は、ヒートポンプユニット2と、貯湯タンクユニット3と、太陽光発電装置4を備えている。貯湯タンクユニット3は、貯湯運転によりヒートポンプユニット2で加熱した湯水を貯湯する貯湯タンク11と、貯湯タンク11の湯水を再加熱するための燃焼式の補助熱源機12と、将来の給湯使用を予測して給湯使用前に必要熱量を貯湯タンク11に貯湯する貯湯運転制御を含む種々の制御を行う制御部13(制御手段)等を備えている。
【0022】
ヒートポンプユニット2は、制御部13からの貯湯運転の指令に基づいて、外気から吸熱して貯湯タンク11の湯水を加熱し、この加熱した湯水を貯湯タンク11に戻して貯湯する。
【0023】
太陽光発電装置4は、太陽光で発電するソーラーパネル5が発電した直流電力をまとめるために接続された接続箱6と、接続箱6からの直流電力を交流電力(発電電力)に変換するために接続されたパワーコンディショナ7と、パワーコンディショナ7からの発電電力を家庭内の使用箇所に分配可能なように接続された分電盤8を備えている。分電盤8は、商用電源線9からの交流電力も家庭内の使用箇所に分配する。
【0024】
この分電盤8は、太陽光発電装置4の発電電力と家庭の使用電力を測定する電力測定手段でもある。パワーコンディショナ7から供給される発電電力を家庭内に分配して余った電力は、分電盤8から商用電源線9を介して外部に送って売電される。
上記とは反対に、パワーコンディショナ7から供給される発電電力だけでは全体の所要電力が不足する場合には、商用電源線9からの電力も併用される。
【0025】
分電盤8から分配される電力の一部は、電源線3aを介して貯湯タンクユニット3に供給され、貯湯タンクユニット3から電源線2aを介してヒートポンプユニット2に供給される。ヒートポンプユニット2及び貯湯タンクユニット3は、分電盤8から分配される発電電力及び/又は商用電力でもって駆動される。
【0026】
貯湯タンクユニット3は、貯湯運転により貯湯タンク11に貯湯した湯水を給湯や浴槽29の湯張りに使用する。また、貯湯タンク11の湯水の温度が低い場合や浴槽29の追焚運転等の場合に、補助熱源機12において燃料を燃焼させて加熱した湯水を給湯や追焚運転等に使用する。
【0027】
貯湯タンク11の上部には、貯湯タンク11に貯湯した湯水を出湯するための出湯通路14が接続されている。出湯通路14は湯水混合弁15に接続され、湯水混合弁15に供給する湯水の温度を検知するための出湯温度センサ14aを備えている。また、貯湯タンク11の下部には、貯湯タンク11に上水源から上水を供給するための給水通路16が接続されている。給水通路16には、上水の温度を検知するための給水温度センサ16aが配設されている。
【0028】
湯水混合弁15は、出湯通路14の湯水と、給水通路16から分岐して湯水混合弁15に上水を供給可能に接続されたバイパス通路17の上水を混合する。この湯水混合弁15の混合比率を調整することによって給湯温度を調整する。湯水混合弁15には給湯通路18が接続され、湯水混合弁15で混合された湯水は、給湯時には給湯通路18を流通して図示外の給湯栓等に供給され、湯張り時には給湯通路18から分岐して追焚回路32に接続する湯張り通路19を介して浴槽29に供給される。給湯通路18には、給湯温度を検知するための給湯温度センサ18aが配設されている。
【0029】
貯湯タンク11の下部にはヒートポンプユニット2に湯水を供給する上流加熱通路21aが接続され、このヒートポンプユニット2で加熱された湯水を貯湯タンク11に戻す下流加熱通路21bが貯湯タンク11の上部に接続されて、貯湯タンク11とヒートポンプユニット2の間で循環ポンプ22により湯水が循環可能な循環加熱回路21が形成されている。上流加熱通路21aの途中部と下流通路21bの途中部を接続するバイパス通路21cと、このバイパス通路21cと上流加熱通路21aの接続部位に配置された三方弁21dが設けられている。上流加熱通路21aには温度センサ23a、下流加熱通路21bには温度センサ23bが配設されている。
【0030】
通常の貯湯運転時には、貯湯タンク11の湯水をヒートポンプユニット2で設定された貯湯温度に加熱して貯湯タンク11の上部から貯湯する。後述するような沸き上げ運転時には、貯湯タンク11の湯水の全部をヒートポンプユニット2で設定された貯湯温度に加熱して貯湯する。
【0031】
貯湯タンク11の外周部には、貯湯タンク11内の湯水の温度と量を検知する複数の貯湯温度センサ11a~11dが上下方向に所定の間隔を空けて設けられている。これら貯湯温度センサ11a~11d及び貯湯タンク11は、貯湯タンク11からの放熱を低減する図示外の保温材により覆われている。
【0032】
貯湯タンク11の湯水を補助熱源機12で加熱するための補助加熱通路24は、出湯通路14から分岐されて補助熱源機12に接続されている。補助熱源機12で加熱した湯水を出湯するための補助出湯通路25は、補助加熱通路24の分岐部より下流側の出湯通路14に水比例弁26を介して接続されている。補助加熱通路24には、三方弁27と補助熱源機12に湯水を送るためのポンプ28が配設されている。
【0033】
補助出湯通路25から分岐した熱交換器通路30は、三方弁27に接続されている。三方弁27は、貯湯タンク11の湯水又は熱交換器通路30の湯水を補助熱源機12に供給可能となるように切換えられる。熱交換器通路30には熱交換器30aと開閉弁30bが配設されている。また、給水通路16から分岐した分岐通路部16bが熱交換器通路30の開閉弁30bと三方弁27の間に接続されている。熱交換器30aは、追焚ポンプ31の作動により追焚回路32を流れる浴槽29の湯水を補助熱源機12で加熱した湯水との熱交換により加熱する追焚運転に使用される。
【0034】
ヒートポンプユニット2は、圧縮機33、凝縮熱交換器34、膨張弁35、蒸発熱交換器36を冷媒配管により接続したヒートポンプ回路37を備えている。このヒートポンプユニット2は、冷媒配管に封入された冷媒を圧縮機33で圧縮して昇温し、凝縮熱交換器34において高温の冷媒との熱交換により循環加熱回路21を流通する湯水を加熱して貯湯タンク11に貯湯する。熱交換後の冷媒は、膨張弁35で膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器36で外気から吸熱した後、再び圧縮機33に導入される。
【0035】
蒸発熱交換器36は、外気温度を検知する外気温度センサ36aと送風機36bを備えている。また、ヒートポンプユニット2は、圧縮機33、膨張弁35、送風機36b等を制御する補助制御部38を備えている。補助制御部38は、ヒートポンプ給湯システム1の主たる制御手段である制御部13に通信可能に接続され、制御部13の指令に基づいてヒートポンプユニット2を制御する。
【0036】
制御部13には、ポンプ類22,28,31とバルブ類とセンサ類等が接続されている。この制御部13にはユーザによる給湯設定温度の設定等の各種設定や操作のための操作端末13a(設定手段)が接続されている。
【0037】
制御部13は、CPUとROMとRAMを含むマイクロコンピュータ、入出力インターフェース等を有するもので、ROMには種々の制御プログラムが格納されている。
この制御部13は、出湯温度センサ14a等の検知信号に基づいて給湯運転等を制御すると共に、過去の給湯使用における給湯量や各種温度、給湯使用開始時刻等の給湯使用状況、及び過去の電力情報等を学習記憶している。そして、この給湯使用状況に基づき将来の給湯使用を予測する給湯使用予測機能と、この電力情報に基づき将来の余剰電力を予測する余剰電力予測機能を有している。
【0038】
次に、停電時等に操作端末13aを介して応急運転モードが設定された際に実行されるヒートポンプ応急運転制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。尚、ヒートポンプ応急運転制御の制御プログラムは、制御部13に予め格納されている。また、図3のフローチャート中のSi(i=1,2,・・)は各ステップを示し、「HP」はヒートポンプを意味する。
【0039】
この応急運転モードが設定された状態では、太陽光発電装置4で発電した電力のみで、ヒートポンプユニット2と貯湯タンクユニット3が駆動されるため、日照が十分である場合にはヒートポンプユニット3の運転を継続できるが、日照が不安定の場合には、それに応じた制御が必要になる。尚、以下、ヒートポンプユニット2をヒートポンプ2と記載する。
【0040】
この制御が開始されると、S1において、過去1時間以内にヒートポンプ2の「起動→停止」の履歴m回は無いか否か判定する。尚、mは2又は3である。
その判定がYesの場合は日照か安定しているものとしてS2において、ヒートポンプ2の運転が継続され、そのS2からリターンする。
【0041】
S1の判定がNoであるときは、S3において太陽光発電装置4からの電力供給であると判定し、ヒートポンプ2を待機状態に切換え、その待機中は補助熱源機12の運転を許可する。
次に、S4において操作端末13aに太陽光発電装置4からの電力のみで作動していることを報知する表示が出される。この表示は、ヒートポンプ2の運転を継続させるか否かの選択を促す表示も含むものである。
【0042】
次に、S5において、ユーザーがヒートポンプ2の運転継続を選択したか否か判定され、その判定がYesの場合はS6において、ヒートポンプ2の再起動時に所定時間(例えば、30分)遅延させてから再起動させ、その後リターンする。
【0043】
S5の判定がNoである場合(ユーザーがヒートポンプ2の運転継続を選択しない場合)、S7において、ヒートポンプ2の待機開始からn時間(例えば1時間又は2時間)経過したか否か判定し、そのn時間が経過するまでS7を繰り返し、S7の判定がYesになるとS8においてヒートポンプ2を再起動させ、その後リターンする。
【0044】
次に、以上説明したヒートポンプ応急運転制御の作用、効果について説明する。
S1のような簡単な判定により、太陽光発電装置4から供給される電力によってヒートポンプ2が運転されていると判定し、簡単且つ容易に太陽光発電装置4から供給される電力でヒートポンプ2が運転されていることを知ることができる。
【0045】
S4に示すように、操作端末13aにより、太陽光発電装置4から供給される電力で運転していることを報知することができ、また、操作端末13aにより、ヒートポンプ2の運転を継続するか待機するか選択することができる。
S6に示すように、ヒートポンプ2を再起動させる時に所定時間遅延させるので、日照が回復して発電が安定化する確率が高くなる。
そのため、ヒートポンプ2の起動、停止の頻度を減らしてヒートポンプ2の作動を安定化させることができる。
【0046】
上記のS7のようにn時間待機しないでヒートポンプ2を再起動させると、日照の不足により再起動できないか、或いは再起動してもすぐに停止してしまう確率が高くなる。つまり、ヒートポンプ2の起動、停止の頻度が高くなる。
しかし、S7のようにn時間待機してからヒートポンプ2を再起動させると、日照が回復している確率が高くなるから、ヒートポンプ2の起動、停止の頻度が高くなるのを抑制することができる。こうして、ヒートポンプ2の起動、停止の繰り返しによる悪影響を極力減らすことができる。また、ヒートポンプ2が待機している間は湯水を加熱できないことから、補助熱源機12の運転を許可することで、湯水の加熱が可能になる。
【0047】
次に、停電時に操作端末13aを介して応急運転モードが設定されない場合に実行される停電時におけるヒートポンプ再起動制御について、図4図5のフローチャートに基づいて説明する。このヒートポンプ再起動制御の制御プログラムは制御部13に予め格納されている。尚、フローチャート中のSi(i=10,11,・・)は各ステップを示す。
【0048】
太陽光発電装置4の発電電圧がヒートポンプ2を駆動できない程度(例えば約90V)まで低下すると、ヒートポンプ2が停止し、この制御の演算処理も停止するが、EPROMを含むメモリに記憶したデータやフラグやカウント値は保持される。
そして、日照の回復により太陽光発電装置4の発電電圧が復旧すると、この制御の演算処理が最初のステップから再開され、ヒートポンプ2が再起動される。
【0049】
太陽光発電装置4の発電電圧が復旧すると、S10においてヒートポンプ2と制御部13の電源がONに切換えられ、次にS11において起動遅延フラグF=2か否か判定され、その判定がYesのときはS12へ移行し、その判定がNoのときはS13へ移行する。S12では、起動遅延タイマに30分が設定されてからS15へ移行する。
【0050】
S13では、起動遅延フラグF=1か否か判定され、その判定がYesのときはS14において起動遅延タイマに10分が設定されてからS15へ移行する。S13の判定がNoのときはそのままS15へ移行する。なお、起動遅延タイマは、ヒートポンプ2の再起動を遅延させる時間を設定するタイマである。
【0051】
次に、S15においては起動遅延フラグF=2に設定される。次に、S16において、起動遅延タイマがスタートして減算が開始される。
次に、S17では、ヒートポンプ2への運転指令(貯湯タンクユニット3側からの指令)が運転であって且つ起動遅延タイマがタイムアップしたか否か判定され、S17の判定がNoのうちはS17を繰り返し、S17の判定がYesになると、S18へ移行する。
【0052】
S18~S22は、ヒートポンプ2の再起動前に、再起動する時の運転出力を示す出力変更カウンタを決定するステップである。出力変更カウンタには下限値があり、上限値は標準目標出力である。
【0053】
S18では、出力変更カウンタが-1と+1の間の値であるか否か判定され、出力変更カウンタが-1,0,+1の何れかの値である場合にはS18の判定がYesとなってS24へ移行する。S18の判定がNoの場合は、S19において出力変更カウンタが-2か否か判定され、その判定がYesのときは、ヒートポンプ2の出力制限として、S20においてヒートポンプ2の圧縮機33の目標出力が「-0.1kW」だけ小さく変更され、その後S23へ移行する。
【0054】
S19の判定がNoのときはS21において、出力変更カウンタが2以上か否か判定され、その判定がYesのときは、S22において圧縮機33の目標出力が「+0.1kW」だけ大きく変更されて、圧縮機33の出力が目標値へ戻る方向へ調整され、その後S22からS23へ移行する。また、S21の判定がNoのときもS23へ移行する。S23では、出力変更カウンタが「0」にリセットされる。
【0055】
次に、S24において、ヒートポンプ2が再起動される。次に、S25において過去1時間以内にヒートポンプ2の「起動→停止」の履歴m回なしか否か判定され、その判定がNoのとき(履歴m回あった場合)は、S26において起動遅延フラグFが「1」に設定される。
即ち、ヒートポンプ2の再起動まで進めば、ある程度の日照が安定しているか、日照が多少不安定であるにすぎないと判断して次回起動の遅延時間は小さ目に設定するため、起動遅延フラグFが「1」に設定される。尚、S25の判定がYesのときはS27においてヒートポンプ2の運転が継続され、S28へ移行する。
【0056】
次に、S28において、ヒートポンプ2の運転状態は沸き上げモードか否か判定される。尚、沸き上げモードとは、貯湯タンク11の全体に満蓄状態まで貯湯するモードである。S28の判定がNoのときはS28を繰り返し、沸き上げモードに入ってS28の判定がYesになると、S29において起動遅延フラグF=0に設定される。
即ち、沸き上げモードまで進めば、かなりの日照があり、かなりの発電量があると判断して次回通常起動を許す為に、起動遅延フラグF=0に設定する。
【0057】
次に、S30では、出力変更カウンタを「-1」だけ変更する。そして、次のS31では、ヒートポンプ2の再起動から1時間経過したか否か判定される。ヒートポンプ2の再起動から1時間経過するとS32において出力変更カウンタを「+1」だけ変更する。
【0058】
ここで、S31のカウント中に、太陽光発電装置4の電圧低下が1回発生すると、次回の制御再開後にはS10~S18を経てS24~S31へ移行することになるが、そのS31のカウント中に太陽光発電装置4の電圧低下がもう1回発生すると、出力変更カウンタの値が「-2」になるため、その次の制御再開後にはS19、S20へ移行してヒートポンプ2の圧縮機33の目標出力が「-0.1kW」だけ小さく変更される。このように、日照が不安定の場合は、圧縮機33の目標の出力を低く変更することで、ヒートポンプ2の停止頻度を低くすることができる。
【0059】
次に、S32では、S31に示すようにヒートポンプ2の運転継続時間が1時間を越え、日照がある程度安定しているため、S30にて小さく変更した出力変更カウンタに「+1」を加算して「0」に戻していく。
【0060】
次のS33においては、S32における出力変更カウンタのアップから1時間経過したか否か判定され、その判定のNoのうちはS33を繰り返し、S33の判定がYesになるとS34へ移行する。S34では、出力変更カウンタに「+1」を加算する。即ち、長時間運転継続できれば、ヒートポンプ2の圧縮機33の出力を元に戻せると判断し、連続運転1時間ごとに出力変更カウンタに「+1」を加算していく。
【0061】
次に、S35においては、運転指令が待機か否か判定され、その判定がNoの場合はS33へ戻り、S35の判定がYesの場合はS36へ移行して、ヒートポンプ2を停止状態に切換えて制御が終了する。
【0062】
次に、以上説明した停電時におけるヒートポンプ再起動制御の作用、効果について説明する。
設定時間内にヒートポンプ2の起動、停止を所定回数以上検知したときには、日照が不安定である。このとき、ヒートポンプ2を再起動させる際に所定時間遅延させると、日照が回復して太陽光発電装置の発電が安定化する確率が高くなり、ヒートポンプ2の起動、停止の頻度を減らしてヒートポンプ2の作動を安定化させることができる。
【0063】
また、上記のように日照が不安定であるとき、出力制限を伴う再起動にすると、ヒートポンプ2が停止する確率を減らし、ヒートポンプ2の作動を安定化させることができる。
【0064】
例えば、ヒートポンプ2の連続運転時間など、ヒートポンプ2が停止する前の状態から日照の安定、不安定を推定できるため、日照が安定している場合には再起動までの遅延時間を短くし、日照が不安定な場合には再起動までの遅延時間を長くする等の対策を講じることができる。
【0065】
例えば、ヒートポンプ2の連続運転時間や起動、停止の頻度など、ヒートポンプ2が停止する前の状態から日照の安定、不安定を推定できるため、日照が安定している場合には出力制限のレベルを低くし又は出力制限をなくし、日照が不安定な場合には出力制限のレベルを高くする等の対策を講じることができる。
【0066】
例えば、ヒートポンプ2の連続運転時間や起動、停止の頻度などヒートポンプ2の停止時における運転状態から日照の安定、不安定を推定できる。日照の不安定度合いに応じて、再起動の遅延と出力制限の両方又は何れか一方を行う等の対策を講じることができる。
ヒートポンプ2の運転中に、沸き上げモードに入った場合は、日照が安定していると推定できるため、出力制限を解除することができる。
【0067】
次に、前記実施形態を部分的に変更する例について説明する。
(1)日照が不安定な場合におけるヒートポンプ2の出力制限として、ヒートポンプ2の圧縮機の目標出力を変更していたが、出力制限として貯湯設定温度を変更するようにしてもよい。即ち、図4のS20においては、ヒートポンプ2の出力制限として、目標貯湯温度を「-5℃」だけ低く変更し、S22においては、目標貯湯温度を「+5℃」だけ高く変更してもよい。
【0068】
(2)S28においては、沸き上げもモードが所定時間継続したかという判定を行うように構成してもよい。
(3)S36において、ヒートポンプ2を停止する代わりに、所定時間待機し、その後制御はリターンするように構成してもよい。そして、この場合、S27からリターンするように構成してもよい。
(4)その他、当業者であれば、本発明の技術思想を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加して実施可能であり、本発明はそのような変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0069】
1 ヒートポンプ給湯システム
2 ヒートポンプユニット
3 貯湯タンクユニット
4 太陽光発電装置
12 補助熱源機
13 制御部
図1
図2
図3
図4
図5