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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】歪センサユニット及び伸長量測定部材
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019055118
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020153932
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】奥宮 保郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋平
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-163902(JP,A)
【文献】特開昭62-290442(JP,A)
【文献】特開2018-115884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子と、
前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部と
を備え、
前記伸長量測定部の両端は、前記歪センサ素子の延在方向の両端部に前記歪センサ素子に対して距離を空けて固定されており、
前記伸長量測定部の長さが、前記歪センサ素子の長さより長く、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子との間に、他の部材を介さず、空間を有しており、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子が前記初期値に伸長した状態において、前記歪センサ素子に対して固定されている部分間の全ての領域が前記歪センサ素子と離間している歪センサユニット。
【請求項2】
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子と、
前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部と
を備え、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を見た目の変化によって確認できるように構成されており、
前記伸長量測定部は変形することで変色する素材からなる歪センサユニット。
【請求項3】
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子と、
前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部と
を備え、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を見た目の変化によって確認できるように構成されており、
前記伸長量測定部は変形することで模様が変化する歪センサユニット。
【請求項4】
前記伸長量測定部が前記歪センサ素子の延在方向の両端部に接続される請求項2又は請求項3に記載の歪センサユニット。
【請求項5】
前記伸長量測定部の長さが、前記歪センサ素子の長さより長い請求項4に記載の歪センサユニット。
【請求項6】
前記伸長量測定部が前記歪センサ素子に着脱可能に構成される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の歪センサユニット。
【請求項7】
前記伸長量測定部が可撓性部材である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の歪センサユニット。
【請求項8】
前記伸長量測定部が伸縮性を有する請求項7に記載の歪センサユニット。
【請求項9】
前記伸長量測定部が変形前の状態で折りたたまれている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の歪みセンサユニット。
【請求項10】
前記伸長量測定部は、一定量伸長した際に破断する素材からなり、
前記歪センサ素子は、前記伸長量測定部が破断した伸長量で破断しない請求項1に記載の歪センサユニット。
【請求項11】
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子の伸長に対応して変形可能であり、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部と、
前記歪センサ素子の延在方向の両端部に前記歪センサ素子に対して距離を空けて前記伸長量測定部を固定する一対の接続部と
を備え、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子との間に、他の部材を介さず、空間を有するように設けられており、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子が前記初期値に伸長した状態において、前記一対の接続部間の全ての領域が前記歪センサ素子と離間するように設けられている伸長量測定部材。
【請求項12】
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子の伸長に対応して変形可能であり、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部を備え、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を見た目の変化によって確認できるように構成されており、
前記伸長量測定部は変形することで変色する素材からなる伸長量測定部材。
【請求項13】
長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子の伸長に対応して変形可能であり、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部を備え、
前記伸長量測定部は、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を見た目の変化によって確認できるように構成されており、
前記伸長量測定部は変形することで模様が変化する伸長量測定部材。
【請求項14】
前記歪センサ素子に対して着脱可能に構成されている請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の伸長量測定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪センサユニット及び伸長量測定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物等の測定対象の動きをセンサによって検出して数値データ化する多様な試みがなされている。
【0003】
これらの測定対象の動きを検出する装置として、本出願人は長手方向の伸縮を検出する糸状又は帯状の歪センサ素子を用いた歪センサユニットを出願している(特開2017-211215号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-211215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記公報に記載の歪センサユニットは、糸状又は帯状の歪センサ素子と、この歪センサ素子の両端部に積層される一対の粘着シートとを備える。この歪センサユニットは、一対の粘着シートを測定対象に貼着することで、歪センサ素子の位置ずれを抑制し、測定対象部位の動きを比較的正確に測定することができる。
【0006】
一方、本発明者等が鋭意検討したところ、歪センサ素子は、一定程度伸長させた状態で測定対象に固定し、リニアリティを高めることで、測定精度を高めることができることが分かった。また、歪センサ素子をどの程度伸長させるべきかについては、使用目的や測定対象等に応じて予め定めておく方がよい場合があることが分かった。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、本発明の課題は、歪センサ素子のリニアリティを高めることで測定精度を向上可能な歪センサユニット及び伸長量測定部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る歪センサユニットは、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子と、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部とを備える。
【0009】
前記伸長量測定部が可撓性部材であるとよい。
【0010】
前記伸長量測定部が変形前の状態で折りたたまれているとよい。
【0011】
前記伸長量測定部が伸縮性を有するとよい。
【0012】
前記伸長量測定部が前記歪センサ素子の延在方向の両端部に接続されるとよい。
【0013】
前記伸長量測定部が前記歪センサ素子に着脱可能に構成されるとよい。
【0014】
前記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様に係る伸長量測定部材は、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子の伸長に対応して変形可能であり、前記歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る歪センサユニットは、歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部を備えるので、前記歪センサ素子のリニアリティを高めることで測定精度を向上することができる。また、本発明の他の一態様に係る伸長量測定部材は、歪センサ素子のリニアリティを高めることでこの歪センサ素子の測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る歪センサユニットを示す模式的側面図である。
図2図2は、図1の歪センサユニットの模式的平面図である。
図3図3は、図1の歪センサユニットから伸長量測定部材を取り外した状態を示す模式的側面図である。
図4図4は、図1の歪センサユニットの測定対象への取付け状態を示す模式的側面図である。
図5図5は、図3の伸長量測定部材とは異なる実施形態に係る伸長量測定部材を示す模式的側面図である。
図6図6は、図5の伸長量測定部材を取り付けた歪センサユニットの測定対象への取付け状態を示す模式的側面図である。
図7図7は、図3及び図5の伸長量測定部材とは異なる実施形態に係る伸長量測定部材を示す模式的背面図(下面図)である。
図8図8は、図7の伸長量測定部材を備える歪センサユニットの測定対象への取付け状態を示す模式的側面図である。
図9図9は、図3図5及び図7の伸長量測定部材とは異なる実施形態に係る伸長量測定部材を示す模式的背面図(下面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0018】
[第一実施形態]
<歪センサユニット>
図1図4の歪センサユニット1は、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子12(図1図4では糸状を図示)と、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部13とを備える。伸長量測定部13は、歪センサ素子12の伸長に対応して変形可能に構成される。また、当該歪センサユニット1は、歪センサ素子12を伸長状態で測定対象に取付け可能な取付け部14と、伸長量測定部13と歪センサ素子12とを接続する一対の接続部15とを備える。伸長量測定部13及び一対の接続部15は、それ自体本発明の一態様である伸長量測定部材2を構成している。なお、歪センサ素子の「帯状」とは、厚さに対して幅の大きい長尺状を意味し、厚さ及び幅が部分的に相違する構成を含む。「使用状態における伸長量の初期値」とは、測定対象に取り付けられた状態における測定対象の基準状態に対応する伸長量を意味する。
【0019】
当該歪センサユニット1は、歪センサ素子12の両端側の抵抗値を検出回路(不図示)によって測定することで、測定対象部位の動作に応じて変化する測定対象部位の表面(例えば皮膚)の長さの増減を測定可能に構成されている。
【0020】
(歪センサ素子)
歪センサ素子12は、全体として1方向に延在するよう測定対象に取り付けられる。歪センサ素子12は、延在方向の両端部で測定対象に固定される。歪センサ素子12は、伸縮性を有し、伸縮に応じて電気的特性が変化するものであればよく、伸縮により電気抵抗が変化する歪抵抗素子が好適に用いられる。中でも、歪センサ素子12としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)を用いたCNT歪センサが特に好適に用いられる。
【0021】
歪センサ素子12が糸状である場合、この歪センサ素子12は、CNT束を含んで構成される。このCNT束は、複数のCNT(単繊維)をCNT素子の長手方向に概略配向した繊維束であり、樹脂によって被覆される。糸状の歪センサ素子12は、径方向の中心から外側に向けて、CNT束からなる導電部と、CNT繊維と樹脂とが複合された導電層と、樹脂製の被覆膜とをこの順で有する。歪センサ素子12は、中心のCNT束が断裂し、その断裂した間隔が変化をすることで抵抗変化を生じさせることができる。
【0022】
一方、歪センサ素子12が帯状である場合、この歪センサ素子12は多数のCNT繊維を含む樹脂組成物から構成される。具体的には、歪センサ素子12は、複数のCNT(単繊維)をCNT素子12の長手方向に概略配向した複数の繊維束のシートと、これらの繊維束のシートを被覆する樹脂とを有する。この歪センサ素子12は、伸長歪が加えられた場合、内部のCNT繊維が切断してCNTの端部が離間したり、伸長歪みが緩和されて再接触したりして抵抗値に変化を生じる。
【0023】
前記CNTとしては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができる。中でも、導電性及び熱容量等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがさらに好ましい。
【0024】
前記CNTは、公知の方法で製造することができ、例えばCVD法、アーク法、レーザーアブレーション法、DIPS法、CoMoCAT法等により製造することができる。中でも、所望するサイズのCNT(MWNT)を効率的に得ることができる点から、鉄を触媒とし、エチレンガスを用いたCVD法により製造することが好ましい。この場合、石英ガラス基板や酸化膜付きシリコン基板等の基板に、触媒となる鉄又はニッケル薄膜を成膜した上に、垂直配向して成長した所望の長さのCNTの結晶を得ることができる。
【0025】
(取付け部)
取付け部14は、歪センサ素子12の両端部に取り付けられ、歪センサ素子12を伸長状態で支持可能な一対の支持部14aと、一対の支持部14aに接続され、歪センサ素子12を伸長状態で測定対象に固定可能な一対の保持部14bとを有する。
【0026】
支持部14aは、軸方向が歪センサ素子12の延在方向と直交する柱状である。支持部14aは、歪センサ素子12を伸長状態で支持できるよう剛性を有する。支持部14aは導電性を有する金属からなり、歪みセンサ素子12と電気的に接続される。支持部14aは、歪センサ素子12の検出信号を電気的に取り出すための端子として機能させることができる。なお、「歪センサ素子の延在方向」とは、使用状態における歪センサ素子の張設方向をいう。
【0027】
保持部14bは、支持部14aに接続され、この支持部14aを下方側(測定対象と接続される側)から支持する基台部14cと、基台部14cの周囲に接続され、歪センサ素子12を伸長状態で測定対象に固定する固定部14dとを有する。基台部14cは、板状又はシート状であり、その平面形状は適宜調整可能であるが、貼付しやすさから円板状が好ましい。図3に示すように、支持部14aは基台部14cの上面から垂直方向に突出するように接合されている。固定部14dは好ましくは一面に粘着層を有する可撓性を有するシートからなる。固定部14dは、測定対象と粘着層とが対向するよう基台部14cの上面を被覆する。固定部14dは、基台部14cの周囲に接合すると共に測定対象にも接合される。また、歪みセンサ素子12は支持部14aと共に基台部14cに支持されてもよい。この場合、固定部14dは、測定対象と粘着層とが対向するよう基台部14cと共に歪センサ素子12を上方から被覆してもよい。固定部14dは平面視でリング状であってもよく、図2に示すようにC型やU型、又はリングの一部切断がされたものでもよい。固定部14dは可撓性を有すると基台部14c及び測定対象への貼付性が向上するので好ましい。なお、本明細書において、「下」とは測定対象と対向する側をいい、「上」とはその反対側をいう。
【0028】
(伸長量測定部)
伸長量測定部13は、歪センサ素子12の伸長に対応して伸長する。伸長量測定部13は可撓性部材である。伸長量測定部13は紐状であるとよい。伸長量測定部13は、両端部は幅が大きく、中央部は幅が小さくなっている。伸長量測定部13の長手方向長さは、歪センサ素子12の使用状態における初期長さ(基準長さ)に対応して定められる。なお、伸長量測定部の「紐状」とは、細長状で可撓性を有するものを意味する。この「紐状」とは、複数の糸状体を編成又は織成した網状(ニット状)、織物状、リボン状を含み、幅、厚さ等が部分的に変化したものであってもよい。
【0029】
伸長量測定部13は可撓性を有することで、歪センサ素子12を伸長した際に容易に変形し、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を容易に定めることができる。特に、伸長量測定部13は、紐状であることによって前記初期値を定めやすい。詳しく説明すると、当該歪センサユニット1は、伸長量測定部13の長さを予め歪センサ素子12の使用状態における初期長さに対応して形成しておく。すなわち、伸長量測定部13は歪センサ素子12よりも長く、歪センサ素子12を伸長していない状態では、伸長量測定部13は弛んでいる。そして、伸長量測定部13が直線状になるまで歪センサ素子12を伸長することで、歪センサ素子12を伸長量の初期値まで伸長した状態で測定対象に容易に固定することができる。また、弛んでいる伸長量測定部13が直線状になるまで歪みセンサ素子12を伸長するので、目視で確認しやすい。すなわち、伸長量測定部13は、可撓性を有し、歪センサ素子12を伸長に対応して変形し、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値のところで直線化する。
【0030】
伸長量測定部13は、伸縮性を有することが好ましい。この場合、伸長量測定部13は、例えば合成樹脂、エラストマー等を主成分として構成することができる。この構成によると、伸長量測定部13は、歪センサ素子12を測定対象に固定した状態でさらに伸長可能となる。伸長量測定部13は中央部の幅を小さくすることで、より剛性を小さくすることができる。これにより、当該歪センサユニット1は、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定めた後に、伸長量測定部13をそのまま歪センサ素子12に取り付けたままでも伸長量測定部13が歪センサ素子12の伸縮の妨げとなり難い。従って、当該歪センサユニット1は、使用に際して伸長量測定部13を取り外すことを要しないので、取扱性を高めることができる。
【0031】
伸長量測定部13の剛性は、歪センサ素子12の剛性と同じかそれ以上であることが好ましい。歪センサユニット1を手で伸長した際に、伸長量測定部13が直線状になった時に目視だけでなく指の感覚で感じることができる。伸長量測定部13は弾性体であるので、伸長されたままで、測定対象物の測定をすることができる。
【0032】
歪センサ素子12と伸長量測定部13とは、支持部14aによって距離を空けて支持される。すなわち、当該歪センサユニット1は、歪センサ素子12の伸縮領域と伸長量測定部13との間に空間を有する。そうすることで、それぞれが独立して動くことができ、伸長量測定部13が直線状になっているかどうかを目視で容易に確認できる。なお、「歪センサ素子の伸縮領域」とは、歪センサ素子の測定対象部位の動作に応じて伸縮可能な領域をいう。すなわち、本実施形態では、取付け部14に取り付けられる両端部間の領域をいう。
【0033】
<伸長量測定部材>
伸長量測定部材2は、長手方向に伸縮する歪センサ素子12の伸長に対応して変形可能である。伸長量測定部材2は、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定める。
【0034】
伸長量測定部材2は、歪センサ素子12の延在方向の両端部に一対の接続部15を有する。これにより、伸長量測定部13は、一対の支持部14a及び一対の接続部15を介して長手方向の両端部で歪センサ素子12の延在方向の両端部に接続されている。当該歪センサユニット1は、伸長量測定部13が歪センサ素子12の延在方向の両端部に接続されることで、歪センサ素子12の伸長量を正確に測定することができる。
【0035】
一対の接続部15と一対の支持部14aとは、スナップボタンの雄雌構造によって着脱可能に構成することが可能である。これにより、当該歪センサユニット1は、伸長量測定部13を歪センサ素子12に着脱可能に構成することができる。
【0036】
当該歪センサユニット1は、歪センサ素子12の伸長量の初期値を定める際にのみ伸長量測定部材2を取り付けておいてもよい。この構成によると、1つの伸長量測定部13を複数の歪センサユニット1に兼用で使用することが可能であり、伸長量測定部13の数を減らすことができる。また、この構成によると、例えば当該歪センサユニット1の使用時に伸長量測定部13を取り外しておくことで、伸長量測定部13が使用者の動作に与える影響を排除することができ、より高精度な測定が可能となる。また、伸長量測定部13が伸縮しない部材である場合でも、取り外すことで高度な測定が可能となる。
【0037】
当該歪センサユニット1を測定対象に取り付ける場合、まず歪センサ素子12を延在方向の両側に伸長する。歪センサ素子12を延在方向の両側に伸長することで、この歪センサ素子12の伸長に対応して伸長量測定部13が変形する。次に、図4に示すように、伸長量測定部13を弛みがなくなるまで変形した状態で一対の固定部14dを測定対象Xに貼り付け、歪センサ素子12を所定の伸長状態で測定対象Xに固定する。
【0038】
<利点>
当該歪センサユニット1は、伸長量測定部13が歪センサ素子12の伸長に対応して変形することで、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定めることができる。また、歪センサ素子12のリニアリティの高くなるところまで歪みセンサ素子12を伸長して測定することができるので、測定精度を向上することができる。
【0039】
当該伸長量測定部材2は、歪センサ素子12のリニアリティを高めることで歪センサ素子12の測定精度を高めることができる。
【0040】
[第二実施形態]
<伸長量測定部材>
図5の伸長量測定部材22は、図3の伸長量測定部材2に替えて用いられ得る。当該伸長量測定部材22は、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子12の伸長に対応して変形可能であり、図6に示すように、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定める。当該伸長量測定部材22は、伸長量測定部23と一対の接続部15とを備える。一対の接続部15としては、図3の伸長量測定部材2の一対の接続部15と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
伸長量測定部23は、図1の伸長量測定部13に替えて用いられる。伸長量測定部23は、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定める。伸長量測定部23は、歪センサ素子12の伸長に対応して変形可能に構成される。伸長量測定部23は可撓性部材である。伸長量測定部23は紐状であるとよい。伸長量測定部23は、歪センサ素子12の延在方向の両端部に接続される。
【0042】
伸長量測定部23は、短冊状であり、変形前の状態(歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定める前の状態)で折りたたまれている。伸長量測定部23の長手方向長さは、歪センサ素子12の使用状態における初期長さ(基準長さ)に対応して定められる。伸長量測定部23は、長手方向の所定位置に複数の折り目23aを有しており、1又は複数の所望の折り目23aを折り曲げた状態で保持することで(つまり、折り曲げる折り目23aの個数を増減することで)全体の長さを段階的に変更可能に構成されている。伸長量測定部23は、1又は複数の所望の折り目23aを折り曲げた状態で保持することで歪センサ素子12の使用状態における初期長さを測定対象に応じた長さに調節できるよう構成されている。
【0043】
<歪センサユニット>
図6の歪センサユニット21は、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の歪センサ素子12と、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を定める伸長量測定部23とを備える。伸長量測定部23は、歪センサ素子12の伸長に対応して変形可能に構成される。また、当該歪センサユニット21は、歪センサ素子12を伸長状態で測定対象に取付け可能な取付け部14と、伸長量測定部23と歪センサ素子12とを接続する一対の接続部15とを備える。当該歪センサユニット21は、図1の伸長量測定部13に替えて伸長量測定部23を用いている以外、図1の歪センサユニット1と同様の構成とすることができる。当該歪センサユニット21は、歪センサ素子12を伸長した際に、伸長量測定部23が変形して伸長量を測定することができる。
【0044】
<利点>
当該歪センサユニット21は、伸長量測定部23が全体の長さを段階的に変更可能に構成されているので、測定部位等に応じて歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を調節することができる。
【0045】
当該伸長量測定部材22は、歪センサ素子12の使用状態における伸長量の初期値を調節することができる。
【0046】
当該伸長量測定部材22は、歪センサ素子12に着脱可能に構成され、かつ伸長量測定部23に複数の折り目23aを設けておくことで、複数種の歪センサユニット21に使用することができる。
【0047】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0048】
例えば伸長量測定部の具体的構成は前述の実施形態に記載の構成に限定されるものではない。図7図9を参照して、他の態様に係る伸長量測定部及びこの伸長量測定部を備える伸長量測定部材について説明する。
【0049】
図7の伸長量測定部材32は、図1の歪センサユニット1の一対の固定部14dと、これらの固定部14d間に架け渡される伸長量測定部33とを備える。固定部14dと伸長量測定部33は一体となっている。伸長量測定部33及び固定部14dは、両面に剥離紙のある両面テープの剥離紙及び粘着層をパターニングして作られる。具体的には、一対の固定部14dが前記粘着層によって構成され、伸長量測定部33が粘着層同士を接続する剥離紙によって構成される。伸長量測定部33は帯状である。伸長量測定部33の長手方向長さは、歪センサ素子12の使用状態における初期長さ(基準長さ)に対応して定められる。
【0050】
図8を参照して、この伸長量測定部材32を備える歪センサユニット31の使用手順について説明する。当該歪センサユニット31を測定対象Xに取り付ける場合、まず歪センサ素子12を延在方向の両側に伸長する。歪センサ素子12を延在方向の両側に伸長することで、この歪センサ素子12の伸長に対応して伸長量測定部33が変形する。次に、伸長量測定部33を弛みがなくなるまで変形した状態で一対の固定部14dを測定対象Xに貼り付ける。伸長量測定部33の変形後の状態では伸長量測定部33と歪センサ素子12は接触することもあるがそれぞれは独立して変形することができる。変形前又は変形途中では伸長量測定部33と歪センサ素子12の間に空間を有する。さらに、一対の固定部14dの貼り付け後に伸長量測定部33を剥離してもよい。これにより、歪センサ素子12を所定の伸長状態、かつ伸縮可能な状態で測定対象Xに固定できる。
【0051】
図9の伸長量測定部材42は、伸縮性を有する帯状の取付け部45と、取付け部45の下面に設けられる伸長量測定部43とを備える。伸長量測定部43は、歪センサ素子の両端部に設けられる一対の電極と接続される一対の電極接続部43aとして構成されている。一対の電極接続部43a同士の間隔は、歪センサ素子の使用状態における初期長さ(基準長さ)に対応して定められる。当該伸長量測定部材42は、一対の電極接続部43aと接続される位置まで歪センサ素子の一対の電極を引き伸ばすことで、歪センサ素子の使用状態における伸長量の初期値を定めることができる。当該伸長量測定部材42によると、歪センサ素子を測定対象に容易かつ確実に固定することができる。また、当該伸長量測定部材42は、歪センサ素子を上面側から被覆することができるので、防水性等、歪センサ素子の保護機能に優れる。ここで伸長量測定部材42は、歪センサ素子と重なる部分の粘着層を省いておいてもよい。そうすることで、伸長量測定部材42は歪みセンサ素子と独立して変形することができる。伸長されていない又は伸長させる途中では伸長量測定部42と歪センサ素子の間に空間を有する。
【0052】
前記伸長量測定部としては、例えば伸長によって変色する糸状又は帯状のエラストマー、伸長によって網目の変化するメッシュ等、見た目の変化によって歪センサ素子の使用状態の伸長量の初期値を定めることが可能なものを用いることも可能である。さらに、前記伸長量測定部として、一定以上に伸長した場合に破断するものを用い、破断時の長さを歪センサ素子の使用状態の初期長さとして定めることも可能である。
【0053】
伸長量測定部は蛇腹状であってもよい。また、伸長量測定部は上方から視認できる位置に配置される弛んだ糸でもよい。伸長量測定部が上方から視認できる位置に配置されることで、それが真っ直ぐ伸びたことを視覚的に確認ができ、また、最適なリニアリティである状態で測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明に係る歪センサユニットは、歪センサ素子のリニアリティを高めることで測定精度を向上することができるので、人の動作等を測定するのに適している。
【符号の説明】
【0055】
1,21,31 歪センサユニット
2,22,42 伸長量測定部材
12,32 歪センサ素子
13,23,33,43 伸長量測定部
14,45 取付け部
14a 支持部
14b 保持部
14c 基台部
14d 固定部
15 接続部
23a 折り目
43a 電極接続部
X 測定対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9