IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-移動式クレーン 図1
  • 特許-移動式クレーン 図2
  • 特許-移動式クレーン 図3
  • 特許-移動式クレーン 図4
  • 特許-移動式クレーン 図5
  • 特許-移動式クレーン 図6
  • 特許-移動式クレーン 図7
  • 特許-移動式クレーン 図8
  • 特許-移動式クレーン 図9
  • 特許-移動式クレーン 図10
  • 特許-移動式クレーン 図11
  • 特許-移動式クレーン 図12
  • 特許-移動式クレーン 図13
  • 特許-移動式クレーン 図14
  • 特許-移動式クレーン 図15
  • 特許-移動式クレーン 図16
  • 特許-移動式クレーン 図17
  • 特許-移動式クレーン 図18
  • 特許-移動式クレーン 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/90 20060101AFI20240409BHJP
   B66C 23/26 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B66C23/90 X
B66C23/26 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019129729
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014345
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓則
(72)【発明者】
【氏名】前藤 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】百濟 和文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 伸広
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210625(JP,A)
【文献】特開2016-215744(JP,A)
【文献】特開2004-307188(JP,A)
【文献】特開2000-136090(JP,A)
【文献】特開平08-217384(JP,A)
【文献】特開昭61-287696(JP,A)
【文献】特開平11-246176(JP,A)
【文献】特開平03-008698(JP,A)
【文献】特開平10-265176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンであって、
前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置された一対のクローラフレームと当該一対のクローラフレームの間に介在して当該一対のクローラフレームを連結する中央フレームとを含むフレームユニットを有する下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に支持された上部旋回体と、
前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームを含む起伏部材と、
少なくとも一つの反力受け部材と、
反力検出部と、を備え
記ブームが前記上部旋回体から延びる方向の水平成分の方向をブーム方向と定義する場合に、前記ブーム方向は、前記左右方向の一方の方向である第1方向であり、
前記反力検出部は、前記少なくとも一つの反力受け部材が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出するように構成され、
前記一対のクローラフレームのそれぞれは、無端状のクローラを案内するホイールを回転可能に支持するものであり、前記フレームユニットのうち、前記前後方向に延びる部分であって前記無端状のクローラに囲まれる部分であり、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、
前記一対のクローラフレームのうち一方のクローラフレームに接続される第1の反力受け部材と、
前記第1の反力受け部材に対して前記前後方向にずれた位置において前記一方のクローラフレームに接続される第2の反力受け部材と、を含み
記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材のそれぞれは、前記一方のクローラフレームに接続される接続部と、前記地面に接する接触部と、を有し、前記一方のクローラフレームおよび前記接続部に対して前記第1方向である左右方向外側に離れた位置に前記接触部が配置されるように構成される、移動式クレーン。
【請求項2】
動式クレーンであって、
前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置された一対のクローラフレームと当該一対のクローラフレームの間に介在して当該一対のクローラフレームを連結する中央フレームとを含むフレームユニットを有する下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に支持された上部旋回体と、
前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームを含む起伏部材と、
少なくとも一つの反力受け部材と、
反力検出部と、を備え、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記フレームユニットに接続される接続部と、地面に接する接触部と、を有し、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記ブームが前記上部旋回体から延びる方向の水平成分の方向をブーム方向と定義する場合に、前記接触部が前記接続部に対して前記ブーム方向に離れた位置に配置されるように構成され、
前記反力検出部は、前記少なくとも一つの反力受け部材が前記地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出するように構成され、
前記下部走行体は、
前記一対のクローラフレームのうち第1のクローラフレームの前部に回転軸を中心に回転可能に支持される前側ホイールと、
前記一対のクローラフレームのうち第2のクローラフレームの前部に回転軸を中心に回転可能に支持される前側ホイールと、をさらに有し、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、
前記第1のクローラフレームに接続される第1の右側反力受け部材及び第1の左側反力受け部材と、
前記第2のクローラフレームに接続される第2の右側反力受け部材及び第2の左側反力受け部材と、を含み、
前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記前後方向の一方であり、
前記第1の右側反力受け部材は、前記接触部が前記第1のクローラフレームよりも右側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、
前記第1の左側反力受け部材は、前記接触部が前記第1のクローラフレームよりも左側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、
前記第2の右側反力受け部材は、前記接触部が前記第2のクローラフレームよりも右側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、
前記第2の左側反力受け部材は、前記接触部が前記第2のクローラフレームよりも左側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、
前記第1の右側反力受け部材、前記第1の左側反力受け部材、前記第2の右側反力受け部材、及び第2の左側反力受け部材のそれぞれの前記接触部の中央は、一対の前記前側ホイールの前記回転軸に対して前記前後方向の一方にずれた位置に配置される、移動式クレーン。
【請求項3】
動式クレーンであって、
前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置された一対のクローラフレームと当該一対のクローラフレームの間に介在して当該一対のクローラフレームを連結する中央フレームとを含むフレームユニットを有する下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に支持された上部旋回体と、
前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームを含む起伏部材と、
少なくとも一つの反力受け部材と、
反力検出部と、を備え、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記フレームユニットに接続される接続部と、地面に接する接触部と、を有し、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記ブームが前記上部旋回体から延びる方向の水平成分の方向をブーム方向と定義する場合に、前記接触部が前記接続部に対して前記ブーム方向に離れた位置に配置されるように構成され、
前記反力検出部は、前記少なくとも一つの反力受け部材が前記地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出するように構成され、
前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいて、当該パラメータに対応する反力と前記移動式クレーンの重量との比率を演算する比率演算部をさらに備える、移動式クレーン。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の移動式クレーンであって、
前記少なくとも一つの反力受け部材は、
前記接続部から前記ブーム方向又は当該ブーム方向に対して傾斜した方向に延びるビームと、
当該ビームの先端部に接続された脚部であって前記接触部を構成する下端部を有する脚部と、を含み、
前記脚部は、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダを含み、
前記反力検出部は、前記油圧シリンダにおけるヘッド側の圧力及びロッド側の圧力の少なくとも一方の圧力を前記パラメータとして検出する圧力センサを含む、移動式クレーン。
【請求項5】
請求項に記載の移動式クレーンであって、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
当該油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に介在する制御弁であって、前記油圧ポンプによって吐出された前記作動油を前記油圧シリンダに供給する油路を形成する供給位置と前記油圧ポンプから吐出された前記作動油の前記油圧シリンダへの供給を遮断する遮断位置との間で切り換わることが可能な制御弁と、
前記供給位置と前記遮断位置との間の前記制御弁の作動を指示する指示装置と、を備える、移動式クレーン。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の移動式クレーンであって、
前記反力受け部材の少なくとも一部は、当該少なくとも一部が取り付けられている取付部に対して着脱可能に構成される、移動式クレーン。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項に記載の移動式クレーンであって、
前記反力受け部材は、その長手方向に伸縮可能な構造を有する、移動式クレーン。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載の移動式クレーンであって、
前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいた前記移動式クレーンにおけるバランスに関する情報をオペレータに対して報知するための報知装置をさらに備える、移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自走可能な下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、この上部旋回体に起伏可能に取り付けられたブームを含む起伏部材と、を備える移動式クレーンが知られている。当該移動式クレーンが吊り荷を吊り上げる吊り作業は、ブームが上部旋回体から起立した状態(起立状態)で行われる。また、当該移動式クレーンを組み立てる組立作業においては、ブームは、地面に略平行な姿勢で倒伏された状態(倒伏状態)で上部旋回体に対して取り付けられる。そして、前記吊り作業を行う際には、地面に対するブームの傾斜角度が次第に大きくなる起立動作によってブームの姿勢が前記倒伏状態から前記起立状態に変えられる。一方、当該移動式クレーンを分解する分解作業においては、地面に対するブームの傾斜角度が次第に小さくなる倒伏動作によってブームの姿勢が前記起立状態から前記倒伏状態に変えられる。
【0003】
上記のようなクレーンにおいて、地面に対するブームの傾斜角度が変わると、ブームを含む起伏部材の重心位置が変わり、これにより、前記起伏部材の重量及び重心位置に起因するモーメントも変化する。このようなモーメントの変化に起因する当該移動式クレーンの転倒を防止するために、当該移動式クレーンはモーメントリミッタを備えている。そして、前記吊り作業においては、ブームの傾斜角度の変化に伴って前記移動式クレーンの転倒モーメントの大きさが予め設定された閾値に達した場合、前記モーメントリミッタにより警報が発せられたり、当該移動式クレーンの動作が停止されたりすることによって安全が確保される。
【0004】
一方、前記組立作業及び分解作業は、上述したように前記起立状態と前記倒伏状態との間で大きな起伏動作を伴うため、前記吊り作業とは以下の点で相違する。すなわち、前記モーメントリミッタは基本的に吊り作業時の安定性に関わる装置であるため、前記モーメントリミッタにおいては、前記吊り作業において想定される作業範囲内で吊り能力が設定されている。一方、前記組立作業及び分解作業は、前記吊り作業における前記作業範囲内で行われる場合だけでなく、上述したような倒伏状態、すなわち地面に対するブームの角度が小さい状態、のように前記吊り作業における前記作業範囲外で行われる場合もある。このように前記吊り作業の前記作業範囲を外れる範囲に関しては、前記モーメントリミッタにおいて前記吊り能力が設定されていない。このため、前記組立作業及び分解作業においては、前記モーメントリミッタを停止させた状態、又は前記モーメントリミッタを停止させていないが前記モーメントリミッタのリミッタを解除した状態で、前記ブームの角度を小さくする作業が行われる。したがって、前記組立作業及び分解作業においては、前記移動式クレーンのオペレータは、前記ブームの傾斜角度が安全な角度であるか否かについて判断するための経験と知識が要求される。このような組立作業及び分解作業における安全性を高めるために、種々の技術が提案されている。
【0005】
特許文献1は、ブームが上部旋回体から左右方向の一方に延びた姿勢でのブームの引き起こし作業について開示している。特許文献1は、前記姿勢でブームを引き起こす際に、ブームに対面する側のサイドフレームの側部にサイドジャッキを取り付けることにより、転倒支点距離が大きくなることを開示している(特許文献1の段落0015)。
【0006】
特許文献2は、クレーンの操作支援装置を開示している。当該操作支援装置を備えたクレーンでは、フロントアタッチメント(起伏部材)のブーム長さとジブ長さの組み合わせが、ブームとジブの相対角度を第一目標角度とした状態でのフロントアタッチメントの倒し操作時において安定性を得られる組み合わせである場合は、ブームに対するジブの相対角度を上記第一目標角度に保持した状態で、上記ジブの先端部が接地するようになるまでのフロントアタッチメントの倒し操作が実施される。この特許文献2に開示された技術では、オペレータは、ブームやジブに関する情報、ブームとジブの相対角度の目標値などの種々の情報を前記操作支援装置に対して予め入力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-221993号公報
【文献】特開2014-162607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のようにサイドジャッキによって転倒支点距離が大きくなったとしても、前記組立作業及び分解作業においては、クレーンのオペレータは、ブームの傾斜角度が安全な角度であるか否かについて判断するための経験と知識が要求されることには変わりはない。したがって、当該ブームを安全に起立動作及び倒伏動作させることができるか否かは、オペレータの経験と知識に左右される。
【0009】
また、移動式クレーンには様々な仕様が存在する。例えば、特許文献2のようにブームとジブとストラットとを備えたクレーンの他、ブームを備える一方でジブを備えていないクレーン、ラチスマストを備えたクレーンなどの種々の仕様が存在する。このように移動式クレーンにおいては、必要とされる能力や作業の種類に応じて、起伏部材の種類が選択され、ブームの長さやジブの長さが調節される。上述の特許文献2に開示された技術では、これらの全ての仕様についてのブームやジブに関する情報の入力と、各仕様に対応する前記目標値の入力とが必要となる。しかし、オペレータが全ての仕様についての前記情報と前記目標値を把握し、これらを前記装置に入力する作業は繁雑であり、オペレータによる入力ミスが生じる可能性もある。
【0010】
なお、上記の課題は、前記組立作業及び前記分解作業以外の他の作業においても生じることがある。当該他の作業としては、例えば、前記移動式クレーンについて過負荷試験を行うための作業を挙げることができる。前記過負荷試験は、前記モーメントリミッタを停止させた状態、又は前記モーメントリミッタを停止させていないが前記モーメントリミッタのリミッタを解除した状態で、定格荷重を超える負荷が前記移動式クレーンに与えられるように所定の吊り荷を吊り上げる吊り作業を行う試験である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、オペレータが煩雑な入力作業を行わなくても、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出することができる移動式クレーンを提供することを目的とする。
【0012】
提供されるのは、移動式クレーンであって、前後方向にそれぞれ延びるとともに左右方向に間隔をおいて配置された一対のクローラフレームと当該一対のクローラフレームの間に介在して当該一対のクローラフレームを連結する中央フレームとを含むフレームユニットを有する下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームを含む起伏部材と、少なくとも一つの反力受け部材と、反力検出部と、を備え、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記フレームユニットに接続される接続部と、地面に接する接触部と、を有し、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記ブームが前記上部旋回体から延びる方向の水平成分の方向をブーム方向と定義する場合に、前記接触部が前記接続部に対して前記ブーム方向に離れた位置に配置されるように構成され、前記反力検出部は、前記少なくとも一つの反力受け部材が前記地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出するように構成される。
【0013】
この移動式クレーンは、前記移動式クレーンが倒れようとする方向のモーメントの増減に応じて当該移動式クレーンが地面から受ける反力が増減することに着目してなされたものである。すなわち、この移動式クレーンは、前記反力の変化に対応して変化するパラメータを検出することにより、オペレータが煩雑な入力作業を行わなくても、安全な起立動作及び倒伏動作を可能にするものである。具体的には以下の通りである。
【0014】
前記組立作業、前記分解作業、前記過負荷試験を行うための作業などのように前記移動式クレーンが倒れようとする方向に大きなモーメントが生じる特定作業では、前記ブームの地面に対する角度が小さくなるにつれて、前記移動式クレーンが倒れようとする方向のモーメントが増加する。このモーメントの増加に伴って前記移動式クレーンが前記地面に与える下向きの荷重は大きくなり、当該移動式クレーンが前記地面から受ける上向きの反力も大きくなる。ここで、前記移動式クレーンが前記地面から受ける反力は、前記下部走行体の下面の全体に均等に分布しているのではなく、前記ブームが倒伏される方向に偏って分布している。従って、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記特定作業において、前記接触部が前記接続部に対して前記ブーム方向に離れた位置に配置されるように構成される。これにより、前記反力受け部材は、前記地面から大きな反力を受けることができるので、前記パラメータの検出精度が高められる。そして、前記反力受け部材が前記地面から受ける反力は、前記モーメントの増加に伴って増加する。従って、前記反力は、前記移動式クレーンのバランスがとれて安定した状態である安定状態や、前記移動式クレーンのバランスがくずれて転倒に近づいている状態である不安定状態などの移動式クレーンの状態を判定する(推測する)ための指標になり、当該判定にはブーム長さとジブ長さの組み合わせに関する情報は不要である。よって、前記移動式クレーンでは、オペレータが煩雑な入力作業を行わなくても、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出することができる。そして、検出された当該情報は、移動式クレーンが安全に起立動作及び倒伏動作するために利用される。
【0015】
前記移動式クレーンにおいて、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記接続部から前記ブーム方向又は当該ブーム方向に対して傾斜した方向に延びるビームと、当該ビームの先端部に接続された脚部であって前記接触部を構成する下端部を有する脚部と、を含み、前記脚部は、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダを含み、前記反力検出部は、前記油圧シリンダにおけるヘッド側の圧力及びロッド側の圧力の少なくとも一方の圧力を前記パラメータとして検出する圧力センサを含むことが好ましい。
【0016】
この態様では、前記接続部から前記接触部までの距離は、前記ビームの長さに応じて設定することができる。また、前記脚部に前記油圧シリンダを設け、この油圧シリンダにおけるヘッド側の圧力及びロッド側の圧力の少なくとも一方の圧力を検出するという簡易な構成で、前記反力の変化に対応して変化する前記パラメータを検出することができる。
【0017】
前記移動式クレーンは、作動油を吐出する油圧ポンプと、当該油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に介在する制御弁であって、前記油圧ポンプによって吐出された前記作動油を前記油圧シリンダに供給する油路を形成する供給位置と前記油圧ポンプから吐出された前記作動油の前記油圧シリンダへの供給を遮断する遮断位置との間で切り換わることが可能な制御弁と、前記供給位置と前記遮断位置との間の前記制御弁の作動を指示する指示装置と、を備えることが好ましい。
【0018】
この態様では、前記指示装置の指示に応じて前記制御弁を作動させることにより、前記油圧シリンダを前記供給位置に設定し、当該油圧シリンダを伸縮させることができる。これにより、前記特定作業の前に、前記反力受け部材の前記脚部の前記下端部が地面に接触するように、前記脚部の前記上下方向の長さを適当な大きさに調節することができる。そして、前記特定作業を行うときには、前記指示装置の指示に応じて前記制御弁を作動させることにより、前記油圧シリンダを前記遮断位置に設定する。これにより、前記圧力センサは、前記油圧シリンダにおけるヘッド側の圧力及びロッド側の圧力の少なくとも一方の圧力を前記パラメータとして検出することができる。
【0019】
前記移動式クレーンにおいて、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記一対のクローラフレームのうち一方のクローラフレームに接続される第1の反力受け部材と、前記第1の反力受け部材に対して前記前後方向にずれた位置において前記一方のクローラフレームに接続される第2の反力受け部材と、を含み、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記左右方向の一方であり、前記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材のそれぞれは、前記接触部が前記接続部に対して前記左右方向の一方に離れた位置に配置されるように構成されていてもよい。
【0020】
この態様では、前記特定作業において、前記ブーム方向が前記下部走行体の前記左右方向の一方である場合に、前記特定作業において、前記接触部は前記接続部に対して前記左右方向の一方に離れた位置に配置される。これにより、前記反力検出部は、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な前記パラメータを検出することができる。また、この態様では、前記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材が前後方向に間隔をおいて前記一方のクローラフレームに接続されているので、単一の反力受け部材のみが設けられている場合に比べて、前記モーメント(移動式クレーンが左右方向の一方に倒れようとする方向のモーメント)が発生したときに、前記移動式クレーンの姿勢をより安定して支持することができる。
【0021】
前記移動式クレーンにおいて、前記下部走行体は、前記一対のクローラフレームのうち第1のクローラフレームの前部に回転軸を中心に回転可能に支持される前側ホイールと、前記一対のクローラフレームのうち第2のクローラフレームの前部に回転軸を中心に回転可能に支持される前側ホイールと、をさらに有し、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記中央フレームの前部に接続される第1の反力受け部材と、前記第1の反力受け部材に対して前記左右方向にずれた位置において前記中央フレームの前部に接続される第2の反力受け部材と、を含み、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記前後方向の一方であり、前記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材のそれぞれは、前記接触部が前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、前記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材のそれぞれの前記接触部の中央は、一対の前記前側ホイールの前記回転軸に対して前記前後方向の一方にずれた位置に配置されていてもよい。
【0022】
この態様では、前記特定作業において、前記ブーム方向が前記下部走行体の前記前後方向の一方である場合に、前記特定作業において、前記接触部は前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置される。これにより、前記反力検出部は、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な前記パラメータを検出することができる。また、この態様では、前記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材が左右方向に間隔をおいて前記中央フレームに接続されているので、単一の反力受け部材のみが設けられている場合に比べて、前記モーメント(移動式クレーンが前方に倒れようとする方向のモーメント)が発生したときに、前記移動式クレーンの姿勢をより安定して支持することができる。さらに、前記第1の反力受け部材及び前記第2の反力受け部材のそれぞれの前記接触部の中央が、前記前側ホイールの前記回転軸に対して前記前後方向の一方にずれた位置に配置されるので、前記移動式クレーンの重量のうちの多くが前記反力受け部材を介して地面に作用し、その結果、前記反力受け部材は大きな反力を地面から受けることができる。
【0023】
前記移動式クレーンにおいて、前記下部走行体は、前記一対のクローラフレームのうち第1のクローラフレームの前部に回転軸を中心に回転可能に支持される前側ホイールと、前記一対のクローラフレームのうち第2のクローラフレームの前部に回転軸を中心に回転可能に支持される前側ホイールと、をさらに有し、前記少なくとも一つの反力受け部材は、前記第1のクローラフレームに接続される第1の右側反力受け部材及び第1の左側反力受け部材と、前記第2のクローラフレームに接続される第2の右側反力受け部材及び第2の左側反力受け部材と、を含み、前記ブーム方向は、前記下部走行体の前記前後方向の一方であり、前記第1の右側反力受け部材は、前記接触部が前記第1のクローラフレームよりも右側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、前記第1の左側反力受け部材は、前記接触部が前記第1のクローラフレームよりも左側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、前記第2の右側反力受け部材は、前記接触部が前記第2のクローラフレームよりも右側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、前記第2の左側反力受け部材は、前記接触部が前記第2のクローラフレームよりも左側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置されるように構成され、前記第1の右側反力受け部材、前記第1の左側反力受け部材、前記第2の右側反力受け部材、及び第2の左側反力受け部材のそれぞれの前記接触部の中央は、一対の前記前側ホイールの前記回転軸に対して前記前後方向の一方にずれた位置に配置されていてもよい。
【0024】
この態様では、前記特定作業において、前記ブーム方向が前記下部走行体の前記前後方向の一方である場合に、前記特定作業において、前記第1の右側反力受け部材の前記接触部が前記第1のクローラフレームよりも右側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置され、前記第1の左側反力受け部材の前記接触部が前記第1のクローラフレームよりも左側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置され、前記第2の右側反力受け部材の前記接触部が前記第2のクローラフレームよりも右側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置され、前記第2の左側反力受け部材の前記接触部が前記第2のクローラフレームよりも左側において前記接続部に対して前記前後方向の一方に離れた位置に配置される。これにより、前記反力検出部は、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な前記パラメータを検出することができる。また、この態様では、各クローラフレームには右側反力受け部材及び左側反力受け部材が接続されており、前記右側反力受け部材の前記脚部は前記クローラフレームよりも右側に位置し、前記左側反力受け部材の前記脚部は前記クローラフレームよりも左側に位置している。したがって、前記モーメント(移動式クレーンが前方に倒れようとする方向のモーメント)が発生したときに、右側反力受け部材及び左側反力受け部材は前記クローラフレームの左右両側において当該クローラフレームをバランスよく支持することができる。仮に、前記クローラフレームに右側反力受け部材及び左側反力受け部材の一方の反力受け部材のみが接続されている場合には、前記モーメントが発生したときに当該反力受け部材は前記クローラフレームを左右方向においてバランスよく支持できず、当該クローラフレームにねじりモーメントが発生しやすくなる。本態様では、このようなねじりモーメントが発生するのを抑制できるので、前記反力検出部による検出結果に対する前記ねじりモーメントの影響を低減できる。さらに、各反力受け部材の前記接触部の中央が、一対の前記前側ホイールの前記回転軸に対して前記前後方向の一方にずれた位置に配置されるので、前記移動式クレーンの重量のうちの多くが前記反力受け部材を介して地面に作用し、その結果、前記反力受け部材は大きな反力を地面から受けることができる。
【0025】
前記移動式クレーンにおいて、前記反力受け部材の少なくとも一部は、当該少なくとも一部が取り付けられている取付部に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0026】
この態様では、前記移動式クレーンの前記特定作業において必要なときにのみ前記反力受け部材の前記少なくとも一部を前記取付部に取り付け、吊り作業のように反力受け部材が不要なときには前記反力受け部材の前記少なくとも一部を前記取付部から取り外すことができる。これにより、前記吊り作業において、前記反力受け部材が邪魔になりにくく、しかも、取り外す部材の重量分だけ前記移動式クレーンの重量を軽くすることができる。
【0027】
前記移動式クレーンにおいて、前記反力受け部材は、その長手方向に伸縮可能な構造を有していてもよい。
【0028】
この態様では、前記特定作業が行われるときには、前記反力受け部材を伸ばして転倒支点までの距離を大きくする。これにより、前記反力受け部材は、前記特定作業において前記移動式クレーンをより安定して支持することができる。一方、前記移動式クレーンにおいて吊り荷を吊り上げる吊り作業が行われるときには、前記反力受け部材を縮めることにより、前記反力受け部材が前記吊り作業の邪魔になるのを抑制できる。また、前記反力受け部材を縮めた状態において、前記反力受け部材は、前記下部走行体を地面から浮上させるトランスリフタとして用いられることも可能である。
【0029】
前記移動式クレーンは、前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいて、当該パラメータに対応する反力と前記移動式クレーンの重量との比率を演算する比率演算部をさらに備えていてもよい。
【0030】
この態様では、前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいて前記比率が演算部によって演算され、これにより、前記移動式クレーンの状態の指標となる前記比率が得られる。演算された当該比率は、例えば前記報知装置を通じてオペレータに報知される。
【0031】
前記移動式クレーンは、前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいて、前記移動式クレーンが倒れようとする方向のモーメントを演算するモーメント演算部をさらに備えていてもよい。
【0032】
この態様では、前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいて前記モーメントが演算部によって演算され、これにより、前記移動式クレーンの転倒原因となるモーメントが得られる。演算された当該モーメントは、例えば前記報知装置を通じてオペレータに報知される。
【0033】
前記移動式クレーンは、前記反力検出部により検出される前記パラメータに基づいた前記移動式クレーンにおけるバランスに関する情報をオペレータに対して報知するための報知装置をさらに備えていてもよい。
【0034】
この態様では、オペレータは、前記移動式クレーンにおける前記バランスに関する情報を、報知装置を通じて得ることができるので、当該情報を指標として前記移動式クレーンを操縦することが可能となり、これにより、前記移動式クレーンをより安全に起立動作及び倒伏動作させることができる。
【発明の効果】
【0035】
前記移動式クレーンは、オペレータが煩雑な入力作業を行わなくても、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係る移動式クレーンを示す側面図であり、吊り作業時の姿勢を示しており、起伏部材が起立状態にあるときの図である。
図2】前記第1実施形態に係る移動式クレーンの機能的構成を示すブロック図である。
図3】前記第1実施形態に係る移動式クレーンの下部走行体と、当該下部走行体の一方のクローラフレームに設けられた複数の反力受け部材とを示す平面図である。
図4図3における前記一方のクローラフレームに反力受け部材を取り付ける前の状態を示す側面図である。
図5図3における前記一方のクローラフレームに反力受け部材を取り付けた状態を示す側面図である。
図6】前記移動式クレーンの油圧回路の一例を示す図である。
図7図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図であり、起伏部材が倒伏状態にあるときの図である。
図8図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図であり、起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。
図9図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図であり、起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。
図10図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図であり、モーメントのつり合い位置が転倒支点に近づいた状態を示す図である。
図11図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図であり、起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。
図12図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図であり、起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。
図13】第1実施形態の変形例1に係る移動式クレーンの下部走行体と、当該下部走行体の一方のクローラフレームに設けられた複数の反力受け部材とを示す平面図である。
図14】第1実施形態の変形例2に係る移動式クレーンの下部走行体と、当該下部走行体の一方のクローラフレームに設けられた複数の反力受け部材とを示す平面図である。
図15】第2実施形態に係る移動式クレーンの下部走行体を示す平面図であり、中央フレームに反力受け部材が取り付けられた状態を示す図である。
図16図15における前記中央フレームと前記反力受け部材とを示す一部破断の側面図である。
図17図15の下部走行体を示す側面図である。
図18】第3実施形態に係る移動式クレーンの下部走行体と、当該下部走行体のクローラフレームに取り付けられた反力受け部材とを示す平面図である。
図19図18の下部走行体の前記クローラフレームと、前記反力受け部材とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る移動式クレーンについて説明する。
【0038】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に係る移動式クレーン10を示す側面図であり、吊り作業時の姿勢を示しており、起伏部材が起立状態にあるときの図である。図2は、図1の移動式クレーン10の機能的構成を示すブロック図である。図3は、実施形態に係る移動式クレーン10の下部走行体11と、当該下部走行体11の一方のクローラフレーム1に設けられた複数の反力受け部材80とを示す平面図である。
【0039】
なお、図面に示される「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」などの方向は、前記移動式クレーンの前記下部走行体11を基準とした方向である。図面における前後方向は、前記下部走行体11の前進後退方向である。具体的に、本実施形態では、前記クローラフレーム1の長手方向中央から後述のホイール4a(ドライブタンブラ4a)に向かう方向を前方とし、前記クローラフレーム1の長手方向中央から後述のホイール4c(アイドラ4c)に向かう方向を後方とする。なお、これらの前方及び後方を規定する方法は一例であり、上記の規定方法に限定されない。例えば、前記クローラフレーム1の長手方向中央から前記ホイール4a(ドライブタンブラ4a)に向かう方向を後方とし、前記クローラフレーム1の長手方向中央から前記ホイール4c(アイドラ4c)に向かう方向を前方としてもよい。
【0040】
前記左右方向は、上記の前後方向を基準に規定される。また、本実施形態では、例えば図3に示すように、左右方向のうちの一方の方向を第1方向D1とし、前記左右方向のうちの他方の方向を第2方向D2とする。第1方向D1は、上部旋回体12の旋回中心Cから一方のクローラフレーム1(図3では右のクローラフレーム1)に向かう方向であり、後述するブーム方向である。第2方向D2は、旋回中心Cから他方のクローラフレーム1(図3では左のクローラフレーム1)に向かう方向である。
【0041】
図1図3に示すように、クレーン10は、自走可能な下部走行体11と、この下部走行体11上に軸回りに旋回可能に搭載された上部旋回体12と、起伏部材と、マスト20と、上部旋回体12の後部に積載されたカウンタウエイト13と、一対の反力受け部材80と、反力検出部90と、コントローラ100と、報知装置110と、を備えている。本実施形態では、前記起伏部材は、ブーム14と、ジブ17と、上部ストラット22と、下部ストラット21と、を含む。
【0042】
ブーム14は、上部旋回体12に回動可能でかつ着脱可能に取り付けられている。図1に示されるブーム14は、いわゆるラチス型のブーム本体15と、基端部14Aと、先端部14Bとを有する。
【0043】
ブーム本体15は、基端側部材15Aと、一又は複数(図例では2個)の中間部材15B,15Cと、先端側部材15Dとで構成される。前記基端側部材15Aは、上部旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。前記中間部材15B,15Cは、その順に前記基端側部材15Aの先端に着脱可能に連結される。前記先端側部材15Dは前記中間部材15Cの先端に着脱可能に連結される。なお、中間部材15B,15Cは省略することが可能である。
【0044】
ジブ17は、ブーム14の先端部に回動可能でかつ着脱可能に取り付けられている。ジブ17は、図例ではラチス型の構造を有する。ジブ17の基端部17Aは、ブーム14の先端部14Bに回動可能に連結されている。ジブ17の回動中心軸は、上部旋回体12に対するブーム本体15の回動中心軸と平行である。図1に示すように、ジブ17の先端部17Bは、当該先端部17Bが地面に接するときにジブ17を支えるとともに地面上で回転可能なローラ17Rを備えている。
【0045】
上部ストラット22及び下部ストラット21は、ジブ17を回動させるために設けられている。上部ストラット22は、ブーム14の先端部14Bに回動可能に取り付けられている。下部ストラット21は、上部ストラット22の後方又は下方の位置でブーム14の先端部14Bに回動可能に取り付けられている。上部ストラット22及び下部ストラット21は、ブーム14の先端部14Bから着脱可能に構成されている。
【0046】
上部旋回体12上には左右一対のバックストップ23が設けられる。これらのバックストップ23は、ブーム14が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で当該ブーム14の基端側部材15Aの左右両側部に当接し、この当接によって、前記ブーム14が強風等で後方に煽られるのを規制する。
【0047】
下部ストラット21は、ブーム14の先端部14Bからブーム起立側(図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、当該下部ストラット21とブーム14との間に左右一対のバックストップ25及び左右一対のストラットガイライン26が介在する。バックストップ25は、先端側部材15Dと下部ストラット21の中間部位との間に介在し、下部ストラット21を下から支える。ガイライン26は下部ストラット21の先端部21Bと基端側部材15Aとを結ぶように張設され、その張力によって下部ストラット21の位置を規制する。
【0048】
上部ストラット22は、ジブ17と連動して回動するようにこのジブ17と連結される。具体的に、上部ストラット22の先端部22Bとジブ17の先端部17Bとを結ぶように左右一対のジブガイライン28が張設される。従って、この上部ストラット22の回動駆動によってジブ17も回動駆動される。
【0049】
マスト20は、基端部20A及び回動端部20Bを有する。マスト20の基端部20Aが上部旋回体12に回動可能に連結される。マスト20の回動軸は、ブーム14の回動軸と平行でかつ当該ブーム14の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20はブーム14の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端部20Bは左右一対のブーム用ガイライン24を介してブーム14の先端部14Bに連結される。この連結は、マスト20の回動とブーム14の回動とを連携させる。
【0050】
クレーン10には、各種ウインチが搭載される。具体的には、ブーム14を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、ジブ17を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とが搭載される。
【0051】
ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻取り及び繰出しを行う。そして、この巻取り及び繰出しによりマスト20が回動するようにブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的に、マスト20の回動端部20B及び上部旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、ブーム起伏用ウインチ30がブーム起伏用ロープ38の巻取りや繰出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによってマスト20さらにはこれと連動するブーム14が起伏方向に回動する。
【0052】
ジブ起伏用ウインチ32は、ジブ起伏用ロープ44の巻取り及び繰出しを行う。そして、この巻取りや繰出しによって上部ストラット22が回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、下部ストラット21の長手方向中間部にはガイドシーブ46が設けられるとともに、この下部ストラット21の先端部21B及び上部ストラット22の先端部22Bにそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたスプレッダ47,48(シーブブロック)が設けられる。ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44はガイドシーブ46に掛けられ、かつ、スプレッダ47,48間に掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ32によるジブ起伏用ロープ44の巻取りや繰出しは、両スプレッダ47,48間の距離を変え、上部ストラット22さらにはこれと連動するジブ17を起伏方向に回動させる。
【0053】
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、下部ストラット21の基端部21Aの近傍部位、上部ストラット22の基端部22Aの近傍部位及びジブ17の先端部17Bには、それぞれ主巻用ガイドシーブ52,53,54が回転可能に設けられている。さらに、主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置(ジブ17の先端部17B)には、ジブポイントシーブ56が設けられている。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50は、主巻用ガイドシーブ52,53,54に順に掛けられ、かつ、ジブポイントシーブ56と、吊荷用の主フック57に設けられたフックシーブ58と、の間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ50の巻取りや繰出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0054】
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、主巻用ガイドシーブ52,53,54とそれぞれ同軸に補巻用ガイドシーブ62,63,64が回転可能に設けられている。補巻用ガイドシーブ64に隣接する位置(ジブ17の先端部17B)には、ローラ17R(補助シーブ)が回転可能に設けられている。当該補助シーブには、補巻ロープ60をかけ回される。すなわち、補巻用ウインチ36から引き出された補巻ロープ60は、補巻用ガイドシーブ62,63,64に順に掛けられ、かつ、当該補助シーブから垂下される。従って、補巻用ウインチ36が補巻ロープ60の巻取りや繰出しを行うと、補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、又は巻下げられる。
【0055】
図2に示す報知装置110は、反力検出部90により出力される検出信号に基づいたクレーン10における左右のバランスに関する情報をオペレータに対して報知するための装置である。報知装置110は、例えば、音を発するための発音部、光を発するための発光部及び文字、図形などを表示するための表示部の少なくとも1つを有している。報知装置110は、オペレータが認識しやすい場所、具体的には例えば上部旋回体12のキャブ12Aなどに配置される。
【0056】
前記発音部は、聴覚を通じてオペレータが認識できる音を発する機能を有する。例えば、前記発音部は、図略の警報ブザー、スピーカーなどを有する。前記発光部は、視覚を通じてオペレータが認識できる光を発する機能を有する。例えば、前記発光部は、図略の表示灯、回転灯、信号灯などを有する。前記表示部は、視覚を通じてオペレータが認識できる文字、図形などを表示する機能を有する。例えば、前記表示部は、図略のディスプレイを有する。
【0057】
コントローラ100は、中央処理装置(CPU)、種々の制御プログラムを記憶するROM、CPUの作業領域として使用されるRAMなどから構成される。図2に示すように、コントローラ100は、演算部101と、報知制御部102と、を機能として備える。演算部101は、例えば、後述するモーメントや反力などを演算する。また、演算部101は、前記反力検出部90により検出される前記検出信号(パラメータ)に基づいて、当該パラメータに対応する反力と前記移動式クレーンの重量との比率を演算する。報知制御部102は、報知装置110を制御して、反力検出部90により出力される検出信号に基づいたクレーン10における左右のバランスに関する情報をオペレータに報知するためのものである。
【0058】
[下部走行体]
図4は、図3における一方のクローラフレーム1に反力受け部材80を取り付ける前の状態を示す側面図である。図5は、図3における一方のクローラフレーム1に反力受け部材80を取り付けた状態を示す側面図である。
【0059】
図3図5に示すように、下部走行体11は、クローラ式であり、一対のクローラ走行装置3と、上部旋回体12が取り付けられる旋回ベアリング2aと、一対のクローラ走行装置3を連結するとともに旋回ベアリング2aを支持する中央フレーム2と、を備える。前記一対のクローラ走行装置3は、左右方向に間隔をおいて配置された第1のクローラ走行装置3と、第2のクローラ走行装置3とにより構成される。
【0060】
中央フレーム2は、当該旋回ベアリング2aの下方において当該旋回ベアリング2aを支持するカーボディ2dと、カーボディ2dの前方において左右方向に延びる前部アクスル2bと、カーボディ2dの後方において左右方向に延びる後部アクスル2cと、を有する。前記前部アクスル2bは、前記中央フレーム2の前部を構成し、前記後部アクスル2cは、前記中央フレーム2の後部を構成する。前部アクスル2bの一端(右端)と後部アクスル2cの一端(右端)には第1のクローラ走行装置3のクローラフレーム1が取付けられており、前部アクスル2bの他端(左端)と後部アクスル2cの他端(左端)には第2のクローラ走行装置3のクローラフレーム1が取付けられている。
【0061】
第1のクローラ走行装置3と第2のクローラ走行装置3は、複数の構成部材の配置が左右逆向きである以外は同様の構造を有する。各クローラ走行装置3は、前後方向にそれぞれ延びる形状を有する。各クローラ走行装置3は、前記クローラフレーム1と、一対のホイール4a,4c(第1ホイール4a及び第2ホイール4c)と、駆動機構4bと、クローラ7と、複数の上部ローラ5と、複数の下部ローラ6とを有する。
【0062】
駆動機構4bは、不図示の油圧式モータ(走行モータ)と、走行減速機とを含む。クローラ7は、多数のシューが連結されて構成されている。クローラ7は、前記一対のホイール4a,4cの間に架け渡されることにより一対のホイール4a,4cに無端状(輪状)に支持されて周回移動可能に構成された部材である。本実施形態では、第1ホイール4a(前側ホイール)は、ドライブタンブラ4aによって構成され、第2ホイール4c(後側ヒール)は、アイドラ4cによって構成されている。
【0063】
図3に示すように、クローラフレーム1は、前後方向に延びる形状を有する。クローラフレーム1は、フレーム本体1Aと、タンブラブラケット1Bとを含む。
【0064】
図3及び図4に示すように、フレーム本体1Aは、前後方向に延びる形状を有する。タンブラブラケット1Bは、フレーム本体1Aの先端部に対して例えば溶接などの接合手段を用いて接続されている。タンブラブラケット1Bは、ドライブタンブラ4a及び駆動機構4bを支持している。
【0065】
ドライブタンブラ4aは、回転軸回りに回転可能にタンブラブラケット1Bに支持されている。ドライブタンブラ4aは、前記走行モータから前記走行減速機に伝わった回転力によって回転してクローラ7を駆動するホイールである。
【0066】
アイドラ4cは、クローラフレーム1の基端部(フレーム本体1Aの基端部)において回転可能に支持されている。アイドラ4cは、ドライブタンブラ4aに対して前後方向の反対側においてクローラ7を案内するホイールである。
【0067】
複数の上部ローラ5は、クローラフレーム1の上部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の上部ローラ5は、ドライブタンブラ4aとアイドラ4cとの間において前後方向に間隔をおいて配置されてクローラ7を案内する。
【0068】
複数の下部ローラ6は、クローラフレーム1の下部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の下部ローラ6は、ドライブタンブラ4aとアイドラ4cとの間において前後方向に間隔をおいて配置されてクローラ7を案内する。
【0069】
[反力受け部材]
前記一対の反力受け部材80は、前記一対のクローラ走行装置3が地面に接した状態で前記旋回中心Cに対して第1方向D1(ブーム方向)にずれた位置において地面から反力を受ける。この構成は、第1の実施形態だけでなく、後述の第2及び第3の実施形態においても同様である。
【0070】
図3に示すように、本実施形態では、前記一対の反力受け部材80は、一対のクローラ走行装置3のうちの第1のクローラ走行装置3におけるクローラフレーム1(第1のクローラフレーム1)に支持されている。一対の反力受け部材80は、前後方向に間隔をおいて配置されている。一対の反力受け部材80は、第1の反力受け部材80と、この第1の反力受け部材80よりも後方に位置する第2の反力受け部材80とにより構成されている。これらの反力受け部材80は、第1のクローラフレーム1に対する取り付け位置が異なっている他は、同様の構造を有している。
【0071】
図3に示すように、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が前部アクスル2bの前縁2eに対応する部位と、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が後部アクスル2cの後縁2fに対応する部位との間の範囲内に、第1の反力受け部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置し、第2の反力受け部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置するように、一対の反力受け部材80が第1のクローラフレーム1に取り付けられているのが好ましい。
【0072】
また、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が前部アクスル2bに対応する範囲内に、第1の反力受け部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置し、第1のクローラフレーム1のうち前後方向の位置が後部アクスル2cに対応する範囲内に、第2の反力受け部材80の基端部8Aの少なくとも一部が位置するように、一対の反力受け部材80が第1のクローラフレーム1に取り付けられているのがより好ましい。
【0073】
また、第1の反力受け部材80の基端部8Aが第1のクローラフレーム1に取り付けられる位置から上部旋回体12の旋回中心Cまでの第1距離と、第2の反力受け部材80の基端部8Aが第1のクローラフレーム1に取り付けられる位置から上部旋回体12の旋回中心Cまでの第2距離とは、同程度であるのが好ましく、同じであるのがより好ましい。前記第1距離と前記第2距離との差が大きくなりすぎると、第1の反力受け部材80のビーム81に生じる撓み及びねじれと、第2の反力受け部材80のビーム81に生じる撓み及びねじれとの差が大きくなりやすい。
【0074】
各反力受け部材80は、ビーム81と、脚部82とを含む。ビーム81は、第1のクローラフレーム1から左右方向の外側に延びている。ビーム81は、基端部8Aと、先端部8Bとを有する。ビーム81の基端部8Aは第1のクローラフレーム1に取り付けられている。前記ビーム81の基端部8Aは接続部を構成する。ビーム81の先端部8Bは、第1のクローラフレーム1に対して、左右方向の一方の方向である第1方向D1(ブーム方向、図3では右方)にはずれた位置にある。
【0075】
本実施形態では、各ビーム81は、図3に示す平面視において直線状に延びている。各ビーム81は、平面視において左右方向に平行な方向に延びているが、これに限られず、左右方向に傾斜する方向に延びていてもよい。すなわち、本実施形態において、ビーム81がクローラフレーム1から左右方向の外側に延びるという構成には、ビーム81を平面視したときに、ビーム81の延びる方向が左右方向に平行である場合だけでなく、左右方向に対して傾斜している場合も含まれる。例えば、一対のビーム81のうち、前方に位置するビーム81が斜め前方に延び、後方に位置するビーム81が斜め後方に延びていてもよい。
【0076】
脚部82は、ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに当該先端部8Bから下方に延びて下端部85が地面に接するように構成されている。本実施形態では、脚部82は油圧シリンダによって構成されている。具体的には、脚部82は、ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに前記先端部8Bから下方に延びるシリンダ本体83と、シリンダ本体83に対して上下方向にスライド移動可能なロッド84と、ロッド84の下端部84A(図4参照)に取り付けられたフロート85(図5参照)とを含む。フロート85は、脚部82の下端部85(接触部)を構成している。前記シリンダ本体83と前記ロッド84は油圧シリンダ86を構成する。
【0077】
各反力受け部材80における脚部82は、第1のクローラ走行装置3のクローラフレーム1に対して第1方向D1(ブーム方向)にはずれた位置にある。脚部82が第1のクローラ走行装置3のクローラフレーム1に対して第1方向D1にはずれた位置にあるとは、脚部82の中心軸CC(下端部85の中央)が第1のクローラ走行装置3に対して第1方向D1にはずれた位置にあることをいう。本実施形態では、脚部82の中心軸CCは、上下方向に延びる油圧シリンダの中心軸CC(ロッド84の中心軸CC)である。
【0078】
本実施形態では、各反力受け部材80はクローラフレーム1に対して着脱可能に構成されている。具体的には次の通りである。
【0079】
図4に示すように、ビーム81の基端部8Aには、クローラフレーム1にビーム81を取り付けるための被取付部が設けられている。当該被取付部は、クローラフレーム1のフレーム本体1Aに設けられた取付部に係合可能に構成されている。本実施形態では、当該被取付部は、一対の上部貫通孔8Cと、一対の下部貫通孔8Dと、一対のピンとを含む。上部貫通孔8Cと下部貫通孔8Dとは上下方向に間隔をあけて設けられている。一対の上部貫通孔8Cには前記一対のピンの一方が予め挿入されて固定されている。
【0080】
一方、クローラフレーム1のフレーム本体1Aに設けられた前記取付部は、一対のフック部1C と、当該フック部1Cの下方に設けられた一対の下部貫通孔1Dとを含む。図4及び図5に示すように、前記被取付部における上部貫通孔8Cに配置されたピンが前記取付部におけるフック部1Cに係合されるとともに、前記被取付部における下部貫通孔8Dの位置が前記取付部における下部貫通孔1Dの位置に合った状態でこれらの貫通孔8D,1Dに前記一対のピンの他方が挿入される。また、図4に示す脚部82のロッド84の下端部84Aは、図5に示す脚部82の下端部85を構成するフロート85の上面に設けられた凹部内に配置される。これにより、反力受け部材8がクローラフレーム1に取り付けられる。
【0081】
各反力受け部材80は、上述の作業の逆の作業が行われることにより、クローラフレーム1から取り外すことができる。
【0082】
本実施形態では、クローラフレーム1から取り外された各反力受け部材80(サイドジャッキ)は、下部走行体11の前部アクスル2b及び後部アクスル2cに設けられたトランスリフタを構成する部材(フロントジャッキ及びリアジャッキ)として用いることもできる。具体的には次の通りである。
【0083】
当該トランスリフタは、複数の反力受け部材によって構成され、クローラ走行装置3をフレーム2の前部アクスル2b及び後部アクスル2cに取り付ける作業及び取り外す作業が行われるときに、フレーム2を地面から持ち上げるためのものである。前部アクスル2bには、クローラフレーム1に設けられている前記取付部と同様の構成を有する2つの取付部が設けられており、後部アクスル2cにも、クローラフレーム1に設けられている前記取付部と同様の構成を有する2つの取付部が設けられている。本実施形態では、トランスリフタを構成する複数(通常、4つ)の反力受け部材の少なくとも一部の反力受け部材は、図3に示すクローラフレーム1に設けられた一対の反力受け部材80と兼用される。ただし、複数の反力受け部材80(サイドジャッキ)は、トランスリフタを構成する反力受け部材(フロントジャッキ及びリアジャッキ)として兼用されるものでなくてもよい。
【0084】
[反力検出部]
反力検出部90は、クレーン10の組立作業及び分解作業においてブーム14を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するためのものである。具体的には、前記反力検出部90は、前記反力受け部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータ(物理量)を検出する。反力検出部90は、クレーン10を左右方向の一方の方向に倒す向きのモーメントの変化に対応して変化するパラメータを検出可能に構成されている。前記起立動作は、地面に対するブーム14の傾斜角度を大きくする動作であり、前記倒伏動作は、前記傾斜角度を小さくする動作である。
【0085】
第1実施形態では、前記反力受け部材80は、前記組立作業及び前記分解作業において前記ブーム14が倒伏状態に配置されるときに、前記ブーム14が前記上部旋回体12から延びる方向の水平成分の方向をブーム方向と定義する場合に、前記組立作業及び前記分解作業において、前記脚部82の下端部85(接触部)が前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向に離れた位置に配置される。この第1実施形態では、前記ブーム方向は、前記下部走行体11の前記左右方向の一方である右方である。
【0086】
図6は、前記クレーン10における油圧回路の一例を示す図である。図6に示すように、本実施形態では、前記反力検出部90は、第1の反力受け部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出する第1の圧力センサ91と、第2の反力受け部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出する第2の圧力センサ92と、を含む。具体的には、前記第1の圧力センサ91は、第1の反力受け部材80の前記油圧シリンダ86におけるヘッド側の圧力を前記パラメータとして検出し、前記第2の圧力センサ92は、第2の反力受け部材80の前記油圧シリンダ86におけるヘッド側の圧力を前記パラメータとして検出する。前記第1の圧力センサ91及び前記第2の圧力センサ92のそれぞれは、対応する油圧シリンダ86におけるヘッド側室の圧力を検出するように構成されていてもよく、前記ヘッド側室に接続された後述の油圧配管L1内の圧力を検出するように構成されていてもよい。以下、図6に示す油圧回路について説明する。
【0087】
図6に示すように、前記クレーン10は、油圧ポンプ70と、一対の制御弁71,72と、指示装置74と、前記一対の油圧シリンダ86,86と、反力検出部90と、を備える。
【0088】
前記油圧ポンプ90は、作動油を吐出する。当該油圧ポンプ70は図略の駆動源(例えばエンジン)によって駆動される。
【0089】
前記一対の制御弁71,72のそれぞれは、前記油圧ポンプ70と対応する前記油圧シリンダ86との間に介在する。前記油圧ポンプ70と前記制御弁71,72との間を接続する配管には、タンクへつながるとともにリリーフ弁が設けられた配管が接続されている。前記一対の制御弁71,72のそれぞれは、前記油圧ポンプ70によって吐出された前記作動油を対応する前記油圧シリンダ86に供給する油路を形成する供給位置(図6では、上側位置又は下側位置)と、前記油圧ポンプ70から吐出された前記作動油の前記油圧シリンダ86への供給を遮断する遮断位置(図6では、中央位置)との間で切り換わることができる。
【0090】
前記指示装置74は、前記供給位置と前記遮断位置との間の前記制御弁71,72の作動を指示する。当該指示装置74は、例えばオペレータが操作可能に構成されていてもよく、コントローラ100からの指令に基づいて操作されるように構成されていてもよい。前記指示装置74は、前記制御弁を前記供給位置に設定するための操作を受けると、対応する前記制御弁のソレノイドに電源78からの指示電流が供給され、これにより、前記制御弁が前記供給位置に切り換わる。
【0091】
具体的に、前記制御弁が図6に示す上側位置に切り換わると、前記油圧ポンプ70から吐出された作動油は、油圧配管L1を通じて、対応する油圧シリンダ86のヘッド側室に供給され、当該油圧シリンダ86のロッド側室の作動油が油圧配管L2に排出される。これにより、前記反力受け部材80の脚部82が伸長する。一方、前記制御弁が図6に示す下側位置に切り換わると、前記油圧ポンプ70から吐出された作動油は、油圧配管L2を通じて、対応する油圧シリンダ86のロッド側室に供給され、当該油圧シリンダ86のヘッド側室の作動油が油圧配管L1に排出される。これにより、前記反力受け部材80の脚部82が収縮する。
【0092】
一方の油圧シリンダ86のヘッド側室に接続された油圧配管L1には、チェック弁76が設けられ、同様に、他方の油圧シリンダ86のヘッド側室に接続された油圧配管L1には、チェック弁77が設けられている。これらのチェック弁76,77のそれぞれは、前記クレーン10が地面に与える荷重の反力を前記反力受け部材80が受けている状態において、前記ヘッド側室の作動油が当該ヘッド側室から流出する方向の流れを阻止する。これにより、前記油圧シリンダ86が収縮することが阻止される。一方、前記チェック弁76,77のそれぞれは、前記制御弁が図6に示す下側位置に切り換わると、前記ロッド側室に接続される前記油圧配管L2の作動油の圧力をパイロット圧力(パイロット源)として前記ヘッド側室の作動油が当該ヘッド側室から流出する方向の流れを許容する。なお、前記一対の制御弁71,72のそれぞれは、前記中央位置(中立位置)において、前記油圧ポンプ70から吐出された前記作動油が前記油圧シリンダ86の前記ヘッド側室に供給されるのを阻止する。その一方で、前記制御弁は、前記中央位置(中立位置)において、対応する前記チェック弁が前記油圧配管L2の作動油の圧力により当該チェック弁が開状態となることを阻止するために、前記ロッド側室に接続された前記油圧配管L2の作動油がタンクに流れるように構成されている。
【0093】
反力検出部90は、クレーン10の前記起立動作及び前記倒伏動作において反力受け部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータである前記油圧シリンダのヘッド側の圧力を検出し、反力検出部90によって出力された検出信号は、図2に示すコントローラ100に入力される。
【0094】
前記コントローラ100の演算部101は、前記反力検出部90により検出される前記検出信号(パラメータ)に基づいて、当該パラメータに対応する反力と前記移動式クレーンの重量との比率を演算する。報知制御部102は、演算された前記比率に関する情報(クレーン10における前後のバランスに関する情報)が音、光、文字、図形などによりオペレータに報知されるように報知装置110を制御する。
【0095】
[組立作業及び分解作業]
次に、本実施形態に係るクレーン10の組立作業及び分解作業について説明する。図7図12は、図1の移動式クレーンの組立作業時又は分解作業時の姿勢を概略的に示す側面図である。図7は、起伏部材が倒伏状態にあるときの図であり、図8及び図9は、ブーム14に対するジブ17の相対角度が大きい状態で起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。図10は、モーメントのつり合い位置が転倒支点に近づいた状態を示す図である。図11及び図12は、ブーム14に対するジブ17の相対角度が小さい状態で起伏部材が起立動作又は倒伏動作をするときの図である。
【0096】
なお、図7図12においては、クレーン10が受けるモーメントの説明をする上で必要な構成要素のみを図示し、下部ストラット21、上部ストラット22、マスト20及びガイラインを含む一部の構成要素の図示を省略している。
【0097】
図9及び図12に示すように、クレーン10では、旋回中心Cを基準としたときに、ブーム14及びジブ17を含む起伏部材が左右方向の一方の方向である第1方向D1(前記ブーム方向、図9及び図12では右方向)に延びており、第1方向D1とは反対の第2方向D2(図9及び図12では左方向)にカウンタウエイト13が配置されている。以下では、クレーン10に作用するモーメントについては、主として、上部旋回体12の旋回中心Cを基準として説明する。
【0098】
当該クレーン10が第1方向D1に倒れようとするモーメント(以下、モーメントMtという。)は、主として起伏部材の重量と姿勢に起因して発生するモーメント(以下、第1モーメントMfという。)と、主としてカウンタウエイト13の重量と上部旋回体12の一部の重量に起因して発生するモーメント(以下、第2モーメントMbという。)と、により決まると考えることができる。すなわち、モーメントMtは、第1モーメントMfから第2モーメントMbを引くことにより得られる(Mt=Mf-Mb)。
【0099】
図9及び図12に示すように、カウンタウエイト13の積載量及び旋回中心Cからの距離を変更しない場合には第2モーメントMbに係る重心位置Gbがほぼ変わらないため、第2モーメントMbはほぼ一定である。すなわち、主としてカウンタウエイト13の重量が多くの割合を占める重量(旋回中心Cより第2方向D2に位置する部分の重量)をWbとするとき、第2モーメントMbは、重量Wbと旋回中心Cから重心位置Gbまでの距離Lbとの積により表される(Mb=Wb×Lb)。
【0100】
一方、ブーム14及びジブ17を含む起伏部材の姿勢によって旋回中心Cから起伏部材の重心位置Gfまでの距離L(例えば図9に示す距離L1、図12に示す距離L2など)が変わるため、第1モーメントMfは起伏部材の姿勢に応じて変動する。当該重心位置Gfは、主に、地面に対するブーム14の傾斜角度と、ブーム14に対するジブ17の相対角度と、により決まる。すなわち、起伏部材の重量をWatとするとき、第1モーメントMfは、重量Watと旋回中心Cから重心位置Gfまでの距離L(例えば距離L1、距離L2など)との積により表される(Mf=Wat×L)。
【0101】
例えば図12に示すように、地面に対するブーム14の傾斜角度が比較的大きくなるまで上部旋回体12に対してブーム14がある程度起立した状態で、かつ、ブーム14に対するジブ17の相対角度が比較的小さい状態(相対角度θ2)においては、旋回中心C周りの第1モーメントMfと第2モーメントMbがほぼ等しくなる場合がある。この略均等状態では、前記モーメントMtはほぼゼロになる。そして、クレーン10の重量は、クローラ7の左右方向の全体にわたって概ね均等に受け持たれることになる。
【0102】
上記の略均等状態と比較して、例えば図9に示すように、地面に対するブーム14の傾斜角度が比較的小さくなるまで上部旋回体12に対してブーム14がある程度倒伏した状態で、かつ、ブーム14に対するジブ17の相対角度が比較的大きい状態(相対角度θ1)においては、起伏部材の重心位置Gfが第1方向D1に移動するので、旋回中心C周りの第1モーメントMfが大きくなる。このようにモーメントが第1方向D1に偏った偏り状態では、モーメントMtは、前記略均等状態よりも大きい正の値となる(Mt=Mf-Mb>0)。
【0103】
ここで、モーメントを計算するためのモーメントの中心を旋回中心Cから左右方向に移動させ、その移動後の中心位置を基準として左右のモーメントを計算したときに、左右のモーメントが同じ大きさとなる位置を「モーメントのつり合い位置」と定義する。また、図9図10及び図12に示すように、反力受け部材80のうち、脚部82の中心軸CCが地面GRと交わる部位を転倒支点Sと称する。
【0104】
上述の略均等状態(例えば図12に示す状態)では、モーメントのつり合い位置P1は旋回中心Cの位置にほぼ一致する。一方、前記偏り状態(例えば図9に示す状態)では、モーメントのつり合い位置P2は旋回中心Cから第1方向D1に移動する。図9に示すようにモーメントMtが正の値となり、モーメントのつり合い位置が旋回中心Cから第1方向D1にある位置P2に移動したとしても、直ちにクレーン10が転倒するわけではない。すなわち、前記偏り状態は、モーメントMtによりクレーン10が第1方向D1に倒れようとするのを複数の反力受け部材80が抵抗している状態である。
【0105】
図9に示すような偏り状態では、モーメントのつり合い位置P2においてモーメントMtがゼロ(Mt=0)になっている。この偏り状態においてクローラ走行装置3及び反力受け部材80に作用する曲げモーメントは、主に、つり合い位置P2から転倒支点Sまでの部分に作用する。
【0106】
例えば図10に示すように、起伏部材の重心位置Gfが図12に示す位置よりもさらに第1方向D1に移動してクレーン10が転倒する直前の状態では、モーメントのつり合い位置P3が転倒支点Sとほぼ一致する。この転倒直前状態では、複数の反力受け部材80がモーメントMtのほぼ全てを受けることになる。なお、図10中の円形の矢印Mrは、複数の反力受け部材80が前記モーメントMtに抗している状態を示している。
【0107】
したがって、図9に示す略均等状態、図12に示す偏り状態、図10に示す転倒直前状態などの種々の状態に応じて、各反力受け部材80が地面から受ける反力の大きさは変動する。
【0108】
本実施形態では、上述した部位に設けられた反力検出部90は、図9に示す略均等状態、図12に示す偏り状態、図10に示す転倒直前状態などの種々の状態に応じて反力受け部材80が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出することができる。そして、検出されたパラメータは、上記のモーメントと相関するものであるので、クレーン10が取り得る種々の状態を判定するための指標となる。よって、本実施形態では、クレーン10の左右方向のバランスがどのような状態にあるかについての指標を得ることができる。
【0109】
本実施形態では、上述したように、オペレータが煩雑な作業を行わなくても、反力検出部90によって検出される前記パラメータが得られる。検出された当該パラメータは、クレーン10が安全に起立動作及び倒伏動作するために利用される。具体的には次の通りである。
【0110】
起伏部材が上部旋回体12から左右方向の一方に延びた姿勢でクレーン10を組み立てる組立作業においては、図7に示すように、ブーム14及びジブ17は、地面GRに略平行な姿勢で倒伏された状態(倒伏状態)で上部旋回体12に対して取り付けられる。そして、前記吊り作業を行う際には、地面GRに対するブーム14の傾斜角度が次第に大きくなる起立動作によってブーム14の姿勢が前記倒伏状態から前記起立状態(図1に示す状態)に変えられる。
【0111】
上記のように起伏部材が上部旋回体12から左右方向の一方に延びた姿勢で倒伏状態から起立状態に起伏部材を変位させる場合、まず、ジブ17の先端部17Bに設けられたローラ17Rが地面GRに接した状態でブーム14の傾斜角度を次第に大きくする。この動作においてはブーム14に対するジブ17の相対角度が次第に小さくなる。
【0112】
例えば図8に示すように前記相対角度が角度θ1となった時点で、図9に示すように相対角度を角度θ1に維持した状態でブーム14の傾斜角度をさらに大きくすると、ジブ17の先端部17Bのローラ17Rは地面GRから離れるので、クレーン10には、モーメントMfが作用する。
【0113】
このとき、コントローラ100の報知制御部102が報知装置110を制御することにより、反力検出部90により出力される検出信号に基づいたクレーン10における左右のバランスに関する情報が報知装置110を介してオペレータに報知される。これにより、オペレータは、クレーン10における左右のバランスに関する情報を、報知装置110を通じて得ることができる。例えば図9に示すクレーン10の状態が不安定状態であることをオペレータが認識すると、オペレータは、ブーム14の傾斜角度を再び小さくして例えば図8に示すようにジブ17の先端部17Bのローラ17Rを接地させる。そして、オペレータは、ジブ17の先端部17Bに設けられたローラ17Rが地面GRに接した状態でブーム14の傾斜角度を次第に大きくする。この動作においてはブーム14に対するジブ17の相対角度が次第に小さくなる(例えば図11に示す状態)。
【0114】
例えば図11に示すように前記相対角度が角度θ2となった時点で、図12に示すように相対角度を角度θ2に維持した状態でブーム14の傾斜角度をさらに大きくすると、ジブ17の先端部17Bのローラ17Rは地面GRから離れるので、クレーン10には、モーメントMfが作用する。このときのモーメントつり合い位置P1は、旋回中心Cに近い位置にあるので、クレーン10の起伏部材を安全に起立動作させることができる。
【0115】
クレーン10を分解する分解作業は、上述した組立作業の動作の逆の動作をさせることによって安全に行われる。
【0116】
前記クレーン10では、当該クレーン10が左右方向の一方に倒れようとする方向のモーメントが発生したときに、クレーンの姿勢を安定させるために少なくとも一つの反力受け部材80が設けられていればよいので、反力受け部材80の個数は、上述した実施の形態に限られない。
【0117】
例えば、図13に示すようにクレーン10は、3つの反力受け部材80を備えていてもよく、図14に示すように4つの反力受け部材80を備えていてもよく、さらに、5つ以上の反力受け部材80を備えていてもよい。何れの変形例においても、複数の反力受け部材80は、クローラフレーム1のフレーム本体1Aにおいて、前後方向に互いに間隔をおいて配置される。
【0118】
[反力の演算方法]
次に、反力の演算方法について説明する。前記反力受け部材80のフロート85(前記接触部)が地面から受ける前記反力は、例えば次の式(1)に基づいて演算される。
【0119】
反力RF=ヘッド側の圧力×Ah-ロッド側の圧力×(Ah-Ar) ・・・(1)
ここで、Ahは、油圧シリンダ86の前記ヘッド側室の断面積(ボア断面積)であり、Arは、油圧シリンダ86のシリンダロッドの断面積である。従って、式中の(Ah-Ar)は、前記ロッド側室の実質的な断面積を示す。
【0120】
なお、油圧シリンダ86のロッド側室は、油圧配管L2を介してタンクに接続されているので、前記ロッド側の圧力をほぼゼロとみなすこともできる。この場合、前記反力RFは、次の式(2)に基づいて演算されてもよい。
【0121】
反力RF=ヘッド側の圧力×Ah ・・・(2)
図3に示すように、前記クレーン10は、一対の反力受け部材80を備えるので、前記クレーン10を支持する支持反力の合計である支持反力RFtは、次の式(3)に基づいて演算される。
【0122】
RFt=RF1+RF2 ・・・(3)
ここで、RF1は、第1の反力受け部材80のフロート85が地面から受ける反力であり、RF2は、第2の反力受け部材80のフロート85が地面から受ける反力である。
【0123】
前記コントローラ100は、クレーン10における前記一対の反力受け部材80が前記クレーン10の重量(前記転倒モーメントMt)を支持すると仮定した場合に、前記一対の反力受け部材80のフロート85(接触部)が地面から受ける反力RFtの最大値RFmax(最大許容反力)を予め記憶している。
【0124】
図2に示す前記演算部101は、前記式(1)及び(3)、又は前記式(2)及び(3)を用いて、前記反力検出部90により検出される前記圧力に基づいて、前記支持反力RFtを演算する。
【0125】
前記コントローラ100は、前記支持反力RFtと前記最大許容反力RFmaxとを比較する。前記コントローラ100は、前記支持反力RFtが前記最大許容反力RFmaxよりも小さい場合(前記支持反力RFt<前記最大許容反力RFmax)、前記支持反力RFtが安全領域に含まれ、前記クレーン10が安定状態であると判定する。一方、前記コントローラ100は、前記支持反力RFtが前記最大許容反力RFmaxよりも大きい場合(前記支持反力RFt>前記最大許容反力RFmax)、前記支持反力RFtが危険領域に含まれ、前記クレーン10が不安定状態であると判定する。
【0126】
前記コントローラ100により前記クレーン10が不安定状態であると判定された場合、前記報知制御部102は、前記コントローラ100により判定された安定性に関する安定性情報を前記報知装置110においてオペレータに対して報知するための報知指令を出力する。以上のように、前記コントローラ100が前記組立作業及び前記分解作業において前記反力RFtに基づいて前記クレーン10の安定性の判定を周期的に行い、当該安定性に関する安定性情報が前記報知装置110においてオペレータに報知されることにより、前記オペレータは、前記起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を得ることができる。
【0127】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態に係る移動式クレーン10の下部走行体11を示す平面図であり、中央フレーム2に反力受け部材80が取り付けられた状態を示す図である。図16は、図15における前記中央フレーム2と前記反力受け部材80とを示す一部破断の側面図である。図17は、図15の下部走行体11を示す側面図である。
【0128】
第2実施形態は、図15に示すように、前記ブーム方向が前記下部走行体11の前記前後方向の一方である前方である点で、前記第1実施形態と相違する。
【0129】
図15に示すように、前記クレーン10は、一対の反力受け部材80を備える。当該一対の反力受け部材80は、前記中央フレーム2の前部を構成する前部アクスル2bに接続される第1の反力受け部材80と、前記第1の反力受け部材80に対して前記左右方向にずれた位置において前記アクスル2bに接続される第2の反力受け部材80と、を含む。各反力受け部材80は、前記アクスル2bに対してピン203によって連結されている。
【0130】
第2実施形態では、前記第1実施形態と同様に、前記第1及び第2の反力受け部材80のそれぞれは、前記組立作業及び前記分解作業において、前記脚部82の下端部85(接触部)が前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記ブーム方向に離れた位置に配置される。
【0131】
また、図15及び図17に示すように、前記第1の反力受け部材80及び前記第2の反力受け部材80のそれぞれの前記脚部82の下端部85の中央は、一対の前記前側ホイール4aの前記回転軸CBに対して前方にずれた位置に配置される。
【0132】
図16に示すように、前記第1の反力受け部材80及び前記第2の反力受け部材80のそれぞれの前記脚部82は、前記ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに前記先端部8Bから下方に延びるシリンダ本体83と、シリンダ本体83に対して上下方向にスライド移動可能なロッド84と、ロッド84の下端部に取り付けられたフロート85とを含む。フロート85は、脚部82の下端部85(接触部)を構成している。前記シリンダ本体83と前記ロッド84は油圧シリンダ86を構成する。
【0133】
第2実施形態に係るクレーン10は、第1実施形態と同様に、図6に示す油圧回路を有する。なお、第2実施形態明におけるその他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0134】
[第3実施形態]
図18は、第3実施形態に係る移動式クレーン10の下部走行体11と、当該下部走行体11のクローラフレーム1に取り付けられた反力受け部材80とを示す平面図である。図19は、図18の下部走行体11の前記クローラフレーム1と、前記反力受け部材80とを示す側面図である。
【0135】
第3実施形態は、図18に示すように、前記ブーム方向が前記下部走行体11の前記前後方向の一方である前方である点で、前記第1実施形態と相違する。
【0136】
図18に示すように、前記クレーン10は、4つの反力受け部材80を備える。当該4つの反力受け部材80は、右側のクローラフレーム1に接続される第1の右側反力受け部材80及び第1の左側反力受け部材80と、左側のクローラフレーム1に接続される第2の右側反力受け部材80及び第2の左側反力受け部材80と、を含む。各反力受け部材80は、対応するクローラフレーム1に対してピン203によって連結されている。
【0137】
前記組立作業及び前記分解作業において、前記第1の右側反力受け部材80は、前記脚部82の下端部85(接触部)が前記右側のクローラフレーム1よりも右側において前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記前方に離れた位置に配置され、前記第1の左側反力受け部材80は、前記接触部が前記右側のクローラフレーム1よりも左側において前記接続部に対して前記前方に離れた位置に配置されるように構成される。
【0138】
また、前記組立作業及び前記分解作業において、前記第2の右側反力受け部材80は、前記脚部82の下端部85(接触部)が前記左側のクローラフレーム1よりも右側において前記ビーム81の基端部8A(接続部)に対して前記前方に離れた位置に配置され、前記第2の左側反力受け部材80は、前記接触部が前記左側のクローラフレーム1よりも左側において前記接続部に対して前記前方に離れた位置に配置される。
【0139】
前記第1の右側反力受け部材80、前記第1の左側反力受け部材80、前記第2の右側反力受け部材80、及び第2の左側反力受け部材80のそれぞれの前記接触部の中央CCは、一対の前記前側ホイール4aの前記回転軸CBに対して前記前方にずれた位置に配置される。
【0140】
各反力受け部材80の前記脚部82は、前記ビーム81の先端部8Bに支持されるとともに前記先端部8Bから下方に延びるシリンダ本体83と、シリンダ本体83に対して上下方向にスライド移動可能なロッド84と、ロッド84の下端部に取り付けられたフロート85とを含む。フロート85は、脚部82の下端部85(接触部)を構成している。前記シリンダ本体83と前記ロッド84は油圧シリンダ86を構成する。
【0141】
第3実施形態に係るクレーン10は、第1実施形態と同様に、図6に示す油圧回路を有する。なお、第3実施形態明におけるその他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0142】
[変形例]
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0143】
A)反力受け部材の構造について
前記実施形態では、反力受け部材80は、ビーム81と、脚部82とを含むものであったが、これに限られず、例えば、脚部を省略することもできる。この場合、前記ビーム81の先端部が地面に接する接触部を構成する。
【0144】
B)演算部、報知部、報知装置について
前記実施形態では、前記演算部、報知部、及び報知装置が設けられていたが、これらの少なくとも一つは省略可能である。
【0145】
C)前記実施形態では、起伏部材がジブ17を含んでいたが、本発明は、ジブを有していないクレーンにも適用できる。
【0146】
D)前記実施形態に係るクレーン10は、当該クレーン10の組立作業及び分解作業において起伏部材を安全に起立動作及び倒伏動作させるために必要な情報を検出するものであるが、当該クレーン10は、前記組立作業及び前記分解作業以外の他の特定作業においても、当該クレーン10を安全に動作させるために必要な情報を検出する目的で用いることができる。当該他の特定作業としては、例えば、前記移動式クレーンについて過負荷試験を行うための作業を挙げることができる。前記過負荷試験は、前記モーメントリミッタを停止させた状態、又は前記モーメントリミッタを停止させていないが前記モーメントリミッタのリミッタを解除した状態で、定格荷重を超える負荷が前記移動式クレーンに与えられるように所定の吊り荷を吊り上げる吊り作業を行う試験である。また、前記他の特定作業としては、例えば、図1に示す主巻ロープ50の下端部に図略のバケットなどの先端アタッチメントを装着し、当該先端アタッチメントを地面よりも上方の位置から地面に向けて勢いよく落下させることにより地面を掘削する掘削作業を挙げることができる。
【0147】
E)前記実施形態に係るクレーン10は、前記油圧シリンダ86に供給する作動油を吐出する油圧ポンプ70を備えるが、前記油圧ポンプ70は省略することができる。
【0148】
F)前記反力検出部は、前記圧力センサに代えて、例えばロードセルにより構成されていてもよい。当該ロードセルは、前記反力受け部材が地面から受ける反力の変化に対応して変化するパラメータを検出することができる。
【符号の説明】
【0149】
1 クローラフレーム
2 中央フレーム
4a ホイール(前側ホイール)
10 移動式クレーン
11 下部走行体
12 上部旋回体
14 ブーム
80 反力受け部材
81 ビーム
82 脚部
85 接触部
86 油圧シリンダ
90 反力検出部
91,92 圧力センサ
100 コントローラ
101 演算部
102 報知制御部
110 報知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19