(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電子楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
(21)【出願番号】P 2019131331
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 暁久
(72)【発明者】
【氏名】大城 淳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 先勝
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-177797(JP,U)
【文献】特開2010-048947(JP,A)
【文献】特開平06-276592(JP,A)
【文献】特開平10-091162(JP,A)
【文献】実開平05-094893(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00- 7/12
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと、
第2ケースと、
前記第1ケース及び前記第2ケースの内側に配置されているスピーカと、
前記第1ケース及び前記第2ケースを互いに固定している固定部材と、
を備え、
前記第1ケースの縁部の内側に、前記第2ケースの縁部の内側に当接している第1リブを有し、
前記スピーカに対応させて少なくとも前記第1ケース及び前記第2ケースのいずれか一方に設けられている放音部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるとともに、前記第1ケース及び前記第2ケースの外周における少なくとも一部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるための間隙が前記第1ケース及び前記第2ケースの間に設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されている、電子楽器。
【請求項2】
第1ケースと、
第2ケースと、
前記第1ケース及び前記第2ケースの内側に配置されているスピーカと、
前記第1ケース及び前記第2ケースを互いに固定している固定部材と、
を備え、
前記第2ケースの縁部の内側に、前記第1ケースの縁部の内側に当接している第2リブを有し、
前記スピーカに対応させて少なくとも前記第1ケース及び前記第2ケースのいずれか一方に設けられている放音部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるとともに、前記第1ケース及び前記第2ケースの外周における少なくとも一部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるための間隙が前記第1ケース及び前記第2ケースの間に設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されている、電子楽器。
【請求項3】
第1ケースと、
第2ケースと、
前記第1ケース及び前記第2ケースの内側に配置されているスピーカと、
前記第1ケース及び前記第2ケースを互いに固定している固定部材と、
を備え、
前記第1ケースの縁部の内側に前記第2ケースの縁部の内側に当接している複数の第1リブを有するとともに、前記第2ケースの縁部の内側に前記第1ケースの縁部の内側に当接している複数の第2リブを有し、
前記第1ケース及び前記第2ケースの内側で前記複数の第1リブと前記複数の第2リブは交互に配置されていて、
前記スピーカに対応させて少なくとも前記第1ケース及び前記第2ケースのいずれか一方に設けられている放音部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるとともに、前記第1ケース及び前記第2ケースの外周における少なくとも一部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるための間隙が前記第1ケース及び前記第2ケースの間に設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されている、電子楽器。
【請求項4】
前記第1ケースの内側に前記スピーカの周囲を囲む第1枠状リブが設けられているとともに、前記第2ケースの内側に前記第1枠状リブに対応する第2枠状リブが設けられており、前記第1枠状リブと、前記第2枠状リブとの間に間隙が設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されてい
る、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項5】
前記第1ケース及び前記第2ケースが固定されることにより、前記第1ケース及び前記第2ケースを含む楽器ケースは、天面側から底面側まで貫通している貫通孔と、前記貫通孔の内壁の一部を含む把持部と、を有し、
前記貫通孔の内壁における前記第1ケース及び前記第2ケースの連結部からは、前記スピーカにより発せられる音が外部に放音させないように、前記貫通孔の内壁における前記第1ケース及び前記第2ケースの前記連結部は密着固定されている、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項6】
前記第1ケースは、前記第2ケースの上側で固定されており、
前記スピーカは、上側に向けて放音するように前記第1ケースに固定されており、
前記放音部は、前記第1ケースに設けられている、
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項7】
前記第2ケースは、ねじ挿入孔を含む下側ボスを有し、
前記第1ケースは、ねじ孔を含む上側ボスを有し、
前記固定部材は、前記下側ボスの前記ねじ挿入孔を通して前記上側ボスの前記ねじ孔に螺合している、請求項1乃至6のいずれかに記載の電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数のケースを組み合わせた筐体にスピーカを内蔵した電子楽器が提案されている。例えば特許文献1には、鍵盤部を搭載する底板を有する下ケースと、下ケースの上側を覆い操作部を有する上ケースとを有する電子楽器(電子鍵盤楽器)の外装構造が開示されている。上ケースの上板には、鍵盤部を露出するための鍵盤部開口と、スピーカを露出するためのスピーカ開口とが設けられている。上ケースと下ケースはネジにより固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子楽器のように複数のケースを組み合わせる場合、連結部分の対向する端面を当接させてスピーカから発音させると、両ケースの振動衝突によりいわゆるビビリ音が発生することがある。また、ケースを金属等の補強部材で補強して剛性を持たせたり、両ケースの連結部分にパッキンを挟んで免振させると、コストや組立工数が増加してしまう。
【0005】
本発明は、良好に発音する電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の電子楽器は、第1ケースと、第2ケースと、前記第1ケース及び前記第2ケースの内側に配置されているスピーカと、前記第1ケース及び前記第2ケースを互いに固定している固定部材と、を備え、前記第1ケースの縁部の内側に、前記第2ケースの縁部の内側に当接している第1リブを有し、前記スピーカに対応させて少なくとも前記第1ケース及び前記第2ケースのいずれか一方に設けられている放音部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるとともに、前記第1ケース及び前記第2ケースの外周における少なくとも一部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるための間隙が前記第1ケース及び前記第2ケースの間に設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好に発音する電子楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子楽器の正面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子楽器の背面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る上ケースの裏面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る下ケースの平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る上ケース及び下ケースの内側の部分斜視図であり、(a)は上ケースを示し、(b)は下ケースを示す。
【
図6】本発明の実施形態に係る
図1に示した電子楽器のVI-VI断面図であり、(a)は後側壁側の拡大断面図を示し、(b)は
図6(a)のC部拡大図を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る
図1に示した電子楽器のVII-VII断面図であり、(a)は後側壁側の拡大断面図を示し、(b)は
図7(a)のD部拡大図を示す。
【
図8】本発明の実施形態に係る
図1に示した電子楽器のVIII-VIII断面図であり、(a)は右側壁側の拡大断面図を示し、(b)は
図8(a)のE部拡大図を示す。
【
図9】本発明の実施形態に係る
図1に示した電子楽器のIX-IX断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る
図1に示した電子楽器のX-X断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る
図1に示した電子楽器のXI-XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。
図1は電子楽器1の正面側から見た斜視図である。また
図2は電子楽器1の背面側から見た斜視図である。電子楽器1は長方形状の平板状に設けられる。電子楽器1は、前方側に鍵盤11を有し、鍵盤11の後方側に操作パネル12を有する。操作パネル12には、表示画面、電源ボタン、及び設定の選択や決定を行う操作ボタンやダイヤルが設けられる。操作パネル12の後方には把持部13が設けられる(
図2も参照)。本実施形態の電子楽器1は、鍵盤11が61鍵で構成された電子鍵盤楽器であり、把持部13を片手で把持する等して持ち運ぶことができる。
【0010】
電子楽器1は、上ケースである第1ケース2と、下ケースである第2ケース3とを含む楽器ケース10を有する。第1ケース2は、長矩形状の天面20と、天面20の前後左右の外周縁から第2ケース3側に延設される側壁21(前側壁21a,後側壁21b,左側壁21c,右側壁21d)とを有する。また、第2ケース3は、長矩形状の底面30と、底面30の前後左右の外周縁から第1ケース2側に延設される側壁31(前側壁31a,後側壁31b,左側壁31c,右側壁31d)とを有する。第1ケース2の前側壁21aは、鍵盤11の前方に鍵の可動域に対応して低く設けた鍵前方部21a2を含み、鍵盤11の鍵前方部21a2の左右両側に左側壁21c及び右側壁21dと連続して鍵前方部21a2よりも高く設けた角側前方部21a3を含む。
【0011】
電子楽器1は、スピーカ7(
図9等参照)に対応させて少なくとも第1ケース2及び第2ケース3のいずれか一方に設けられている放音部24からスピーカ7によって発せられる音を外部に放音させる。また、第1ケース2及び第2ケース3は、第1ケース2及び第2ケース3の外周における少なくとも一部からスピーカ7によって発せられる音を外部に放音させるための間隙S1(
図6乃至
図11参照)が第1ケース2及び第2ケース3の間に設けられるように、固定部材63(
図6参照)により固定されている。以下各構成について説明する。
【0012】
図3は第1ケース2の裏面図であり、
図4は第2ケース3の平面図である。また、
図5(a)は第1ケース2の裏面側から見た部分斜視図であり、
図5(b)は第2ケース3の平面側から見た部分斜視図である。
図5(a)及び
図5(b)は第1ケース2及び第2ケース3の左側壁21c,31c側の一部を示している。
【0013】
図3に示すように、第1ケース2の前側壁21a及び後側壁21bは略平行に設けられ、左側壁21c及び右側壁21dは略平行に設けられる。第1ケース2の天面20には、鍵盤11が配置される鍵盤開口22と、貫通孔23と、放音部24とが設けられる(
図1及び
図2も参照)。鍵盤開口22及び貫通孔23は、第1ケース2の長尺方向の略中央に配置される。鍵盤開口22は左右方向に長尺の矩形状に設けられる。また、放音部24は、左右対称となる二箇所に配置される。放音部24は、小孔24aと長孔24bとを含み、第1ケース2の板厚方向の内外空間と連通している(
図9も参照)。左右の放音部24に対応する第1ケース2及び第2ケース3の内側にはスピーカ7が配置されている(
図9及び
図10も参照)。貫通孔23は左右方向に延設する長孔状に設けられる。また、第1ケース2の天面20は、ねじ孔611(
図6も参照)を含む複数の上側ボス(第1取付部)61を有する。上側ボス61は、第1ケース2の長尺方向において略左右対称となる位置に配置される。
【0014】
図5(a)のA部拡大図に示すように、各側壁21(図示しない右側壁21dも含む)の内側には複数の第1リブ4が設けられる。第1リブ4は、側壁21の縁部211の先端側に突出した突出部41と、突出部41と側壁21の端面211aとの間に設けられて第2ケース3の係合突起311b(
図6参照)が係合する溝部42とを有する。突出部41は、略長矩形状に設けられ、溝部42側の角部にはテーパ状の傾斜部412が設けられる。溝部42は平坦状の底部を有して開口側を傾斜部412及び傾斜部211bにより拡開するように切り欠かれている。また、突出部41の端部411は、側壁21の端面211aよりも第2ケース3側に突出している(
図6参照)。
【0015】
第1ケース2の天面20の内側には、スピーカ7の周囲を囲う第1枠状リブ25が設けられている。第1枠状リブ25は平板部251~254により囲われて略長矩形枠状に設けられる。放音部24は、第1枠状リブ25の内側に設けられる。第1枠状リブ25の貫通孔23側の平板部254には矩形状の切欠部254aが設けられる。なお、
図5(a)では、第1ケース2の左側壁21c側の第1枠状リブ25を示しているが、第1枠状リブ25は右側壁21d側にも略左右対称となる位置において放音部24の内側に設けられている。
【0016】
図4に示すように、第2ケース3の前側壁31a及び後側壁31bは略平行に設けられ、左側壁31c及び右側壁31dは略平行に設けられる。底面30には、第1ケース2の貫通孔23(
図3参照)に対応して、第2ケース3の長尺方向の略中央に貫通孔32が設けられる。貫通孔32は左右方向の長孔状に設けられる。また、第2ケース3の底面30は、ねじ挿入孔621(
図6も参照)を含む複数の下側ボス(第2取付部)62を有する。下側ボス62は、第2ケース3の長尺方向において上側ボス61(
図3参照)と対応して略左右対称となる位置に設けられる。
【0017】
図5(b)のB部拡大図に示すように、各側壁31(図示しない右側壁31dも含む)の内側には複数の第2リブ5が設けられる。第2リブ5は、側壁31の縁部311の先端側の突出した長矩形状の突出部51を有する。突出部51の端部511における側壁31外側の角部には、テーパ状の傾斜部51aが設けられる。突出部51は、係合突起311bを含む縁部311よりも第1ケース2側へ突出している(
図7参照)。
【0018】
第2ケース3の底面30の内側には、スピーカ7の周囲を囲う第2枠状リブ33が設けられている。第2枠状リブ33は、平板部331~334により囲われて略長矩形枠状に設けられる。
図4に示す貫通孔32側に配置される平板部334は、第1ケース2の平板部254よりも貫通孔13a(23,32)側に配置される。第1ケース2及び第2ケース3は、第1枠状リブ25と第2枠状リブ33との間に後述する間隙S2が設けられるように、固定される。
【0019】
次に、第1ケース2及び第2ケース3の組付け状態について説明する。
図6(a)及び
図7(a)はそれぞれ
図1の電子楽器1の後側壁21b,31b側を拡大したVI-VI断面図及びVII-VII断面図である。
図6(b)は
図6(a)の断面図におけるC部拡大図であり、
図7(b)は
図7(a)の断面図におけるD部拡大図である。また、
図8(a)は
図1の電子楽器1の右側壁21d,31d側を後方から見て拡大したVIII-VIII断面図であり、
図8(b)は
図8(a)の断面図におけるE部拡大図である。
【0020】
第1ケース2及び第2ケース3は、
図6に示す固定部材63により互いに固定されている。第1ケース2は第2ケース3の上側で固定される。本実施形態では固定部材63としてねじを用いている。固定部材63は、下側ボス62のねじ挿入孔621を通して上側ボス61のねじ孔611に螺合している。
図6(b)に示すように、第1ケース2の縁部211の先端側の内面には、テーパ状の傾斜部211bが設けられる。また、第2ケース3の縁部311の先端側には平坦状の端面311aが設けられている。後側壁31bの内面側の端面311aには、係合突起311bが設けられる。係合突起311bの端面311a側の側面には傾斜部311cが設けられる。したがって、第1ケース2及び第2ケース3の固定により第1リブ4が第2ケースの縁部311の内側に当接するように移動させると、係合突起311bは、傾斜部412,211b,311cにより溝部42の底部側へ容易に案内されて、第1リブ4の溝部42内に係合突起311bが係合する。
【0021】
係合突起311bの端面311aからの突出量は、溝部42の底部から端面211aまでの高さ(換言すれば、溝部42の端面211aからの深さ)より高いため、第1ケース2の縁部211と第2ケース3の縁部311との間には間隙S1が設けられる。
【0022】
また、
図7(b)に示すように、第1ケース2及び第2ケース3を固定すると、後側壁21b,31b側に設けられた第2リブ5の突出部51が傾斜部51a,211bにより第1ケース2の内側へ容易に案内されて、第2リブ5を第1ケース2の縁部211の内側に当接させることができる。このように、第2リブ5と第1ケース2の縁部211とを当接させる構成としたため、間隙S1を設けながら縁部211,311の剛性を高めることができる。
【0023】
図8(b)に示す右側壁21d,31d側に設けられた第2リブ5は、第1ケース2の内側に近接している。右側壁21d,31d側の第2リブ5の突出部51も、傾斜部51a,211bにより第1ケース2の内側へ容易に案内される。このような構成により、間隙S1を設けながら、第1ケース2の縁部211の端面211aと、第2ケース3の縁部311の端面311aとの接触を防止することができる。なお、第2リブ5の突出部51は、
図7に示した後側壁31b側の第2リブ5と同様に、第1ケース2の縁部211の内側に当接する構成としてもよい。これにより、間隙S1を設けながら縁部211,311の剛性を高めることができる。
【0024】
第1リブ4及び第2リブ5は、
図4のF部拡大図に示すように、第1ケース2及び第2ケース3の前側壁21a,31a及び後側壁21b,31bに沿った長尺方向、並びに左側壁21c,31c及び右側壁21d,31dに沿った短尺方向において交互に隣接するように配置される。これにより、間隙S1を設けながら縁部211,311の剛性を高めることができる。なお、本実施形態のように、第1リブ4及び第2リブ5は、後側壁21b,31b、右側壁21d,31d及び左側壁21c,31cにおいては交互に配置し、前側壁21a,31aに対応する位置おいては左右の角側前方部21a3に第1リブ4及び第2リブ5を各々1カ所ずつ配置させることができる(
図2及び
図3参照)。
【0025】
図9は、
図1の電子楽器1の右側のスピーカ7位置周辺を拡大して示したIX-IX断面図である。また、
図10は、
図1の電子楽器1の右側のスピーカ7位置周辺を拡大して示したX-X断面図である。第1ケース2と第2ケース3とを固定した状態において、第1枠状リブ25の縁部25aと、第2枠状リブ33の縁部33aとの間には、間隙S2が設けられる。第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33は、スピーカボックスとして内部にスピーカ7を収容する。スピーカ7は上側へ向けて放音するように、放音部24に対応する位置において第1ケース2に固定されている。
【0026】
第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33により構成されたスピーカボックスは、準密閉型スピーカの筐体として構成することができる。したがって、スピーカ7から発音された音は、主として第1ケース2の天面20に配置された放音部24を介して所定の周波数帯域の音圧が調整されて、電子楽器1の外部に放音される。
【0027】
一方、スピーカ7から発音された一部の音は、前側の平板部251,331及び後側の平板部252,332における間隙S2を介して、電子楽器1内における第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33の外方に伝達される。第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33の後側壁21b側の間隙S2から放音された音は、後方側へ伝達して主として後側壁21b,31bに設けられた間隙S1を介して電子楽器1の外に放音される。また、鍵盤11側の間隙S2から放音された音は、前方側へ伝達し、主として鍵盤開口22と鍵盤11との間の間隙S3を介して電子楽器1の外部へ放音される。
【0028】
さらに
図10に示すように、スピーカ7から発音された一部の音は、右側壁21d,31d側の平板部253,333における間隙S2を介して、第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33の外側へ伝達される。この右側壁21d,31d側の間隙S2から外方へ伝達された音は、
図10の第1ケース2及び第2ケース3内の図示しない間隙(例えば奥行き方向に位置する間隙)を介して、右側壁21d、31d側の間隙S1から放音される。
【0029】
また、スピーカ7から発音された一部の音は、切欠部254a等を介して
図10の右方側である把持部13(
図2等も参照)側へ伝達される。第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33の外側へ伝達された音は、後側壁21b,31b側の間隙S1や、鍵盤11側のS3等を介して電子楽器1の周囲から外方に放音される。
【0030】
このように、第1枠状リブ25及び第2枠状リブ33によりスピーカ7の外周を囲って準密閉型スピーカとしたため、放音24部から放音される音の音圧を上げることができる。また、間隙S2,S3を設けたため、スピーカ7から発音された音は、放音部24からだけでなく間隙S2,S3からも外周に放音されて、間隙S1を介して電子楽器1の周囲に音が良く聞こえるように構成することができる。
【0031】
図11は、
図1の電子楽器1のXI-XI断面図である。
図11は、電子楽器1の左右方向における中間位置における断面を示しており、中間省略して前側壁21a,31a側と後側壁21b,31b側を示している。
【0032】
電子楽器1の後方側の把持部13は、第1ケース2の天面20側から第2ケース3の底面30側まで貫通して設けられた貫通孔13a(23,32)により、左右に懸架された棒状に設けられる(
図2も参照)。貫通孔23の内縁から第2ケース3側へ延設される内周壁231と、貫通孔32の内縁から第1ケース2側へ延設される内周壁321とは、対向して当接している。貫通孔13aの内壁13bにおける第1ケース2及び第2ケース3の連結部13b1は密着固定されている。したがって、この連結部13b1からは、スピーカ7により発せられる音が外部に放音されない。内周壁231及び内周壁321の縁部の各端部231a,321aは、面当接又は線当接により密着固定される。把持部13は、貫通孔13aの内壁13bの一部である内周壁231及び内周壁321を含む、第1ケース2及び第2ケース3の外面により構成することができる。
【0033】
また、
図3及び
図4に示すように、把持部13における第1リブ4及び第2リブ5は、他の位置に設けられた第1リブ4及び第2リブ5よりも配置密度を高く構成することができる。これにより、把持部13における剛性を高めることができる。
【0034】
また、
図11で、電子楽器1の鍵盤11の前方における鍵前方部21a2の縁部21a1と、前側壁31aの縁部31a1は略密着するように当接している。そのため、電子楽器1の前方側においては第1ケース2と第2ケース3との間からの放音が抑制され得る。スピーカ7から間隙S2を介して前方側へ伝達された音は、鍵盤11と鍵盤開口22の前方側の内縁との間に設けられた間隙S4からも放音することができる。
【0035】
一方で、鍵盤開口22に対して左右の角部付近に位置する前側壁21a,31a(
図1、
図3及び
図4参照)、左側壁21c,31c、後側壁21b,31b及び右側壁21d,31dには、前述した間隙S1が連続して設けられる。したがって、スピーカ7から発音された音は、主として電子楽器1の上面側に設けられた放音部24から放音されるとともに、周囲からも放音される。したがって、電子楽器1は周囲にも良好に放音させることができる。
【0036】
本実施形態では、第1ケース2と第2ケース3との間に間隙S1を設けたため、ゴムパッキンなどの緩衝材を挟むことなく安価な構成でビビリ音の発生を防ぐことができる。
【0037】
また、第1ケース2及び第2ケース3の縁部211,311における連続部分は、間隙S1を設けつつ外面の凹凸を少なくすることができるため、電子楽器1の外観の見栄えをよくすることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、小孔24aや長孔24bを含む放音部24を第1ケース2に設けた構成について説明したが、放音部24は第1ケース2及び第2ケース3の一方又は両方に設けることができる。
【0039】
また、第1リブ4及び第2リブ5は第1ケース2及び第2ケース3の両方の縁部211,311に設けてもよいし、第1リブ4を第2ケース3に設けて第2リブ5を第1ケース2に設ける構成としてもよい。
【0040】
以上、本実施形態では、第1ケース2と、第2ケース3と、第1ケース2及び第2ケース3の内側に配置されているスピーカ7と、第1ケース2及び第2ケース3を互いに固定している固定部材63と、を備える電子楽器1について説明した。この電子楽器1は、スピーカ7に対応させて少なくとも第1ケース2及び第2ケース3のいずれか一方に設けられている放音部24からスピーカ7によって発せられる音を外部に放音させるとともに、第1ケース2及び第2ケース3の外周における少なくとも一部からスピーカ7によって発せられる音を外部に放音させるための間隙S1が第1ケース及び第2ケースの間に設けられるように、第1ケース2及び第2ケース3が固定部材63により固定されている。
【0041】
このような間隙S1を設けたことにより、第1ケース2と第2ケース3の外周がスピーカ7からの音による振動で接触していわゆるビビリ音の発生を防止することができる。また、スピーカ7からの音は放音部24及び外周の間隙S1の両方から放音させることができるため、電子楽器1は周囲にも音が良く聴こえて広がりのある音を放音させることができる。したがって、良好に発音する電子楽器1とすることができる。
【0042】
また、電子楽器1は、第1ケース2の縁部211の内側に、第2ケース3の縁部311の内側に当接している第1リブ4を有する構成により、縁部211,311における剛性を高めて間隙の間隔を保持することができる。
【0043】
また、電子楽器1は、第2ケース3の縁部311の内側に、第1ケース2の縁部211の内側に当接している第2リブ5を有する構成により、縁部211,311における剛性を高めて間隙の間隔を保持することができる。
【0044】
また、第1ケース2の縁部211の内側に第2ケース3の縁部311の内側に当接している複数の第1リブ4を有するとともに、第2ケース3の縁部311の内側に第1ケース2の縁部211の内側に当接している複数の第2リブ5を有し、第1ケース2及び第2ケース3の内側で複数の第1リブ4と複数の第2リブ5は交互に配置されている構成について説明した。これにより、縁部211,311における剛性をより高めることができ、間隙の間隔を安定して保持することができる。
【0045】
また、第1ケース2の内側にスピーカ7の周囲を囲む第1枠状リブ25が設けられているとともに、第2ケース3の内側に第1枠状リブ25に対応する第2枠状リブ33が設けられており、第1枠状リブ25と、第2枠状リブ33との間に間隙S2が設けられるように、第1ケース2及び第2ケース3が固定部材63により固定されている構成について説明した。これにより、バフレス型のスピーカボックスを構成してスピーカ7から発音される音の音圧を高めることができる。また、スピーカ7からの音を、間隙S2及び間隙S1を介して電子楽器1の周囲に放音させることができる。
【0046】
また、電子楽器1が、第1ケース2及び第2ケース3が固定されることにより、第1ケース2及び第2ケース3を含む楽器ケース10が、天面20側から底面30側まで貫通している貫通孔13a(23,32)と、貫通孔13aの内壁13bの一部を含む把持部13と、を備える構成について説明した。また、貫通孔13aの内壁13bにおける第1ケース2及び第2ケース3の連結部13b1からは、スピーカ7により発せられる音が外部に放音させないように、貫通孔13aの内壁13bにおける第1ケース2及び第2ケース3の連結部13b1は密着固定されている。したがって、把持部13における剛性を高めながら、楽器ケース10の周囲に間隙S1を設けることができる。
【0047】
また、第1ケース2は第2ケース3の上側で固定されており、スピーカ7は上側に向けて放音するように第1ケース2に固定されており、放音部24は第1ケース2に設けられている構成について説明した。スピーカ7の本体の振動は、上側に配置される第1ケース2、固定部材63による固定部分、下方の第2ケース3、電子楽器1の載置面の順に伝達される。そのため、スピーカ7の振動抑制が低減されて良好に初音することができる。
【0048】
また、第2ケース3はねじ挿入孔621を含む下側ボス62を有し、第1ケース2はねじ孔611を含む上側ボス61を有し、固定部材63は下側ボス62のねじ挿入孔621を通して上側ボス61のねじ孔611に螺合している構成について説明した。これにより、第1ケース2と第2ケース3とを簡易な構成で確実に固定させることができる。
【0049】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 第1ケースと、
第2ケースと、
前記第1ケース及び前記第2ケースの内側に配置されているスピーカと、
前記第1ケース及び前記第2ケースを互いに固定している固定部材と、
を備え、
前記スピーカに対応させて少なくとも前記第1ケース及び前記第2ケースのいずれか一方に設けられている放音部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるとともに、前記第1ケース及び前記第2ケースの外周における少なくとも一部から前記スピーカによって発せられる音を外部に放音させるための間隙が前記第1ケース及び前記第2ケースの間に設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されている、電子楽器。
[2] 前記第1ケースの縁部の内側に、前記第2ケースの縁部の内側に当接している第1リブを有する前記[1]に記載の電子楽器。
[3] 前記第2ケースの縁部の内側に、前記第1ケースの縁部の内側に当接している第2リブを有する、前記[1]に記載の電子楽器。
[4] 前記第1ケースの縁部の内側に前記第2ケースの縁部の内側に当接している複数の第1リブを有するとともに、前記第2ケースの縁部の内側に前記第1ケースの縁部の内側に当接している複数の第2リブを有し、
前記第1ケース及び前記第2ケースの内側で前記複数の第1リブと前記複数の第2リブは交互に配置されている、前記[1]に記載の電子楽器。
[5] 前記第1ケースの内側に前記スピーカの周囲を囲む第1枠状リブが設けられているとともに、前記第2ケースの内側に前記第1枠状リブに対応する第2枠状リブが設けられており、前記第1枠状リブと、前記第2枠状リブとの間に間隙が設けられるように、前記第1ケース及び前記第2ケースが前記固定部材により固定されている、前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の電子楽器。
[6] 前記第1ケース及び前記第2ケースが固定されることにより、前記第1ケース及び前記第2ケースを含む楽器ケースは、天面側から底面側まで貫通している貫通孔と、前記貫通孔の内壁の一部を含む把持部と、を備え、
前記貫通孔の内壁における前記第1ケース及び前記第2ケースの連結部からは、前記スピーカにより発せられる音が外部に放音させないように、前記貫通孔の内壁における前記第1ケース及び前記第2ケースの前記連結部は密着固定されている、前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の電子楽器。
[7] 前記第1ケースは、前記第2ケースの上側で固定されており、
前記スピーカは、上側に向けて放音するように前記第1ケースに固定されており、
前記放音部は、前記第1ケースに設けられている、
前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の電子楽器。
[8] 前記第2ケースは、ねじ挿入孔を含む下側ボスを有し、
前記第1ケースは、ねじ孔を含む上側ボスを有し、
前記固定部材は、前記下側ボスの前記ねじ挿入孔を通して前記上側ボスの前記ねじ孔に螺合している、前記[1]乃至[7]のいずれかに記載の電子楽器。
【符号の説明】
【0051】
1 電子楽器 2 第1ケース
3 第2ケース 4 第1リブ
5 第2リブ 7 スピーカ
10 楽器ケース 11 鍵盤
12 操作パネル 13 把持部
13a 貫通孔 13b 内壁
13b1 連結部 20 天面
21 側壁 21a 前側壁
21a1 縁部 21a2 鍵前方部
21a3 角側前方部 21b 後側壁
21c 左側壁 21d 右側壁
22 鍵盤開口 23 貫通孔
24 放音部 24a 小孔
24b 長孔 25 第1枠状リブ
25a 縁部 30 底面
31 側壁 31a 前側壁
31a1 縁部 31b 後側壁
31c 左側壁 31d 右側壁
32 貫通孔 33 第2枠状リブ
33a 縁部 41 突出部
42 溝部 51 突出部
51a 傾斜部 61 上側ボス
62 下側ボス 63 固定部材
211 縁部 211a 端面
211b 傾斜部 231 内周壁
231a 端部 251 平板部
252 平板部 253 平板部
254 平板部 254a 切欠部
311 縁部 311a 端面
311b 係合突起 311c 傾斜部
321 内周壁 321a 端部
331 平板部 332 平板部
333 平板部 334 平板部
411 端部 412 傾斜部
511 端部 611 ねじ孔
621 ねじ挿入孔
S1~S4 間隙