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特許7467855ラウリン系ハードバター組成物及びそれを含有するチョコレート様食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ラウリン系ハードバター組成物及びそれを含有するチョコレート様食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240409BHJP
   A23G 1/36 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019176152
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2020054340
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2018185092
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油グループ本社株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石渡 暁之
(72)【発明者】
【氏名】栗山 雅充
(72)【発明者】
【氏名】リー シャオリン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/057451(WO,A1)
【文献】特開2011-115075(JP,A)
【文献】特開2010-142153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0119008(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164102(US,A1)
【文献】特開2010-144158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂Aを50~95質量%油脂Bを3~40質量%及び油脂Cを0.5~10質量%含有し、
油脂A、油脂B、油脂Cは以下を満たす油脂であって、油脂Aに対する油脂Bの質量比(油脂B/油脂A)が0.03~0.6、油脂Bに対する油脂Cの質量比(油脂C/油脂B)が0.03~0.6である、ラウリン系ハードバター組成物
(ただし、炭素数12以下の飽和脂肪酸を20重量%以上かつ炭素数20以上の飽和脂肪酸を2.5重量%以上含むエステル交換油脂A及び炭素数12の飽和脂肪酸を35重量%以上含む非エステル交換油脂であるラウリン系油脂Bを必須成分とする被覆チョコレート用油脂組成物を除く)
油脂Aは下記を満たす非エステル交換ラウリン系油脂
・構成脂肪酸組成中、ラウリン酸の含有量が40~60質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸の含有量が1~10質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が10~40質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量が0.2~10質量%
・上昇融点が30℃~40℃
油脂Bは下記を満たすランダムエステル交換油脂
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~14の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が15~60質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸の合計量が3~50質量%
油脂Cは下記を満たす油脂
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が95質量%以上
・構成脂肪酸組成中、炭素数16の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
【請求項2】
油脂Aが下記の油脂である、請求項1に記載のラウリン系ハードバター組成物。
・構成脂肪酸組成中、トランス脂肪酸含有量が1質量%以下
【請求項3】
チョコレートに含まれる油脂中に、請求項1又は請求項2に記載のラウリン系ハードバター組成物を80~97質量%及びカカオバターを3~20質量%含有するチョコレート様食品。
【請求項4】
チョコレートに含まれる油脂中に、請求項1又は請求項2に記載のラウリン系ハードバター組成物を80~97質量%含有することにより、カカオバターを3~20質量%含有するチョコレート様食品のブルーム耐性を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウリン系ハードバター組成物及びそれを含有するチョコレート様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
カカオバター代用脂として広く利用されているハードバターは、固化・成型時に温調操作を実施するテンパー型ハードバターと、温調操作を実施しないノーテンパー型ハードバターに大別される。テンパー型ハードバターは、ココアバター中に多く含有されるSUS型トリグリセリド(S:炭素数16~18の飽和脂肪酸、U:炭素数18の一価不飽和脂肪酸)を多く含み、ココアバターと類似の性質物性を持つ。そのためココアバターとの相容性が高く、またココアバターと類似の食感が得られるが、テンパリング操作には厳密な温度制御が必要となるため、省略することが望まれている。
【0003】
ノーテンパー型ハードバターは、煩雑なテンパリング操作を必要としないことから、パンや洋菓子などとチョコレートを組み合わせた様々な組み合わせ食品に好適に使用することができる。
【0004】
ノーテンパー型ハードバターのうち、大豆油や菜種油などの液状油を水素添加して得られるトランス酸型ハードバターは、良好な口溶けやココアバターとの高い相容性から広く利用されてきた。しかし近年、トランス脂肪酸の健康に及ぼすリスクが明らかとなり、トランス脂肪酸を含まない低トランス脂肪酸型ハードバターが望まれている。
【0005】
トランス酸含有量が低く、ラウリン系油脂を使用するラウリン系ハードバターに関して、特許文献1~5が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-182961号公報
【文献】特開2010-142152号公報
【文献】特開2010-142153号公報
【文献】特開2011-115075号公報
【文献】特開2016-116486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ラウリン系ハードバターの品質と機能の向上について考察した。ラウリン系ハードバターを使用したチョコレート様食品である、特許文献1~5は、比較的口どけが良いものの、カカオバターの配合量制限、ブルーム耐性および口どけが悪い点を含め、さらなる品質向上が必要であると考えた。
【0008】
かかる従来技術を認識した上で、本発明の目的は、ラウリン系ハードバターを含有するノーテンパー型チョコレートにおいて、カカオバターが配合でき、食感、風味、及びブルーム耐性が良好なチョコレート様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、適切な脂肪酸組成に調製したランダムエステル交換油脂を含有する、ラウリン系ハードバター組成物が上記課題に対して有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 油脂Aを40~97質量%および油脂Bを3~60質量%含有するラウリン系ハードバター組成物、
ただし、油脂A、油脂Bは下記の油脂であって、油脂Aに対する油脂Bの質量比(油脂B/油脂A)が0.03~0.6、
油脂Aは下記を満たす非エステル交換ラウリン系油脂、
・構成脂肪酸組成中、ラウリン酸の含有量が40~60質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸の含有量が1~10質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が10~40質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量が0.2~10質量%
・上昇融点が30℃~40℃
油脂Bは下記を満たすランダムエステル交換油脂、
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~14の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が15~60質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸の合計量が3~50質量%
(2) さらに、油脂Cを0.5~10質量%含有する、(1)のラウリン系ハードバター組成物、
ただし、油脂Cは下記の油脂であって、前記油脂Bに対する油脂Cの質量比(油脂C/油脂B)が0.03~0.6、
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~22の飽和脂肪酸の含有量が95質量%以上
(3) 油脂Cが下記の油脂である、(1)または(2)のラウリン系ハードバター組成物、
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が95質量%以上
・構成脂肪酸組成中、炭素数16の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
(4) 油脂Aが下記の油脂である、(1)~(3)のいずれかのラウリン系ハードバター組成物、
・構成脂肪酸組成中、トランス脂肪酸含有量が1質量%以下
(5) チョコレートに含まれる油脂中に、(1)~(4)のいずれかのラウリン系ハードバター組成物を80~97質量%およびカカオバターを3~20質量%含有するチョコレート様食品、
(6) チョコレートに含まれる油脂中に、(1)~(4)のいずれかのラウリン系ハードバター組成物を80~97質量%含有することにより、カカオバターを3~20質量%含有するチョコレート様食品のブルーム耐性を向上する方法、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ラウリン系ハードバターを含有するノーテンパー型チョコレートにおいて、ブルーム耐性が良好なチョコレート様食品を提供することができる。
好ましい態様として、本発明のチョコレート様食品は、カカオバターを配合することができ、良好な食感と良好な風味が得られる。
より好ましい態様として、本発明により、ラウリン系ハードバターを含有するチョコレート様食品のブルーム耐性を1.5倍以上に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本発明においてチョコレート様食品とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、およびチョコレート利用食品に限定されるものではなく、油脂類を必須成分とし、カカオマス、ココア、カカオバター、カカオバター代用脂、ハードバター等を利用した油脂加工食品をも包含するものである。
【0014】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、下記の油脂Aを40~97質量%及び油脂Bを3~60質量%含有する。
油脂Aは下記を満たす非エステル交換ラウリン系油脂である。
・構成脂肪酸組成中、ラウリン酸の含有量が40~60質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸の含有量が1~10質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が10~40質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量が0.2~10質量%
・上昇融点が30℃~40℃
油脂Bは下記を満たすランダムエステル交換油脂である。
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~14の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が15~60質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸の合計量が3~50質量%
【0015】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましくは、前記油脂Aを50~95質量%、より好ましくは、60~95質量%含有する。
【0016】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましくは、前記油脂Bを3~45質量%、より好ましくは、3~40質量%含有する。
【0017】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、含有する、前記油脂Aに対する油脂Bの質量比(油脂B/油脂A)が0.03~0.6、好ましくは0.04~0.5、より好ましくは0.05~0.45である。
【0018】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、含有する、前記油脂Aの、構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは1.5~10質量%、より好ましくは2~10質量%、さらに好ましくは3~10質量%である。
【0019】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、含有する、前記油脂Aの、構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは10~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。
【0020】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、含有する、前記油脂Aの、構成脂肪酸組成中、炭素数18の不飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは0.2~8質量%、より好ましくは0.3~8質量%である。
【0021】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、含有する、前記油脂Aの、構成脂肪酸組成中、トランス脂肪酸含有量が好ましくは1質量%以下である。
【0022】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましい態様として、含有する前記油脂Bの、構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸の合計量の上限が、好ましくは25質量%、より好ましくは23質量%、最も好ましくは20質量%である。かかる数値範囲内とすることが、チョコレートの固化時間の点で望ましい。
【0023】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましい態様として、含有する前記油脂Bの、構成脂肪酸組成中、炭素数6~10の飽和脂肪酸と炭素数18の不飽和脂肪酸の合計量の下限が、好ましくは10質量%、より好ましくは11質量%、最も好ましくは12質量%である。かかる数値範囲内とすることが、チョコレートの口溶けの点で望ましい。
【0024】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましい態様として、含有する前記油脂Bの、構成脂肪酸組成中、炭素数6~14の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは25~75質量%、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは30~65質量%である。
【0025】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましい態様として、含有する前記油脂Bの、構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~55質量%である。
【0026】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、含有する、前記油脂Aに対する油脂Bの質量比(油脂B/油脂A)が0.03~0.6 であることで、ブルーム耐性が向上できるため望ましい。0.6を超えると、食感や口溶けが悪くなる場合がある。0.03未満ではブルーム耐性を向上する効果が劣る場合がある。
【0027】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、好ましい態様として、さらに、下記油脂Cを0.5~10質量%含有する。
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~22の飽和脂肪酸の含有量が95質量%以上
【0028】
好ましくは、油脂Cが下記の油脂である。
・構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量が95質量%以上
・構成脂肪酸組成中、炭素数16の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
・構成脂肪酸組成中、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が20~80質量%
【0029】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、前記油脂Cを含有する態様において、前記油脂Bに対する油脂Cの質量比(油脂C/油脂B)が0.03~0.6、好ましくは0.04~0.6、より好ましくは0.05~0.5である。
【0030】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、前記油脂Cを含有する態様において、前記油脂Bに対する油脂Cの質量比(油脂C/油脂B)が0.03~0.6であることが、ブルーム耐性と、作業に適した固化速度が得られる点で望ましい。0.6を超えると食感や口溶けが悪くなる場合がある。
【0031】
本発明のラウリン系ハードバター組成物において、前記油脂Aは、非エステル交換ラウリン系油脂であって、前記構成を満たせば、使用する油脂類に特に制限はなく、複数の油脂を混合した油脂であってもよい。パーム核油及びパーム核油を加工した油脂より選ばれた1種以上の油脂を使用することが、前記構成が容易に調製できるので好ましい。パーム核油を加工した油脂としては、硬化パーム核油、パーム核分別硬化油、及びパーム核分別油等が例示できる。かかる油脂類を使用し、前記構成を満たせば、使用する油脂類に特に制限はなく、他のラウリン系油脂類を使用しても良い。
【0032】
本発明のラウリン系ハードバター組成物において、前記油脂Bは、ランダムエステル交換油脂であって、前記構成を満たせば、使用する油脂類に特に制限はない。
前記構成が容易に調製できる点で好ましい態様として、ランダムエステル交換の原料油脂が下記油脂成分X及び油脂成分Yを混合してランダムエステル交換したものが挙げられる。
油脂成分Xは、ヤシ油、パーム核油及びこれらを加工した油脂より選ばれた1種以上の油脂
油脂成分Yは、非ラウリン系油脂
【0033】
油脂成分Xとして使用できる、ヤシ油、パーム核油及びこれらを加工した油脂としては、硬化ヤシ油、パーム核分別硬化油、及びパーム核分別油等が例示できる。
前記油脂類を単独若しくは1種以上を混合して使用しても良い。
【0034】
油脂成分Yとして使用できる、非ラウリン系油脂は、非ラウリン油脂の硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油や、非ラウリン系油脂のエステル交換油や、非ラウリン系油脂のエステル交換油の加工油脂類も使用することができる。
前記構成が容易に調製できる点でパーム系油脂を使用することが好ましい。パーム油の高融点油脂がより好ましく、パーム油を分別して得られるパームステアリンが例示できる。
前記油脂類を単独若しくは1種以上を混合して使用しても良い。
【0035】
ランダムエステル交換の方法は、化学法として、触媒にナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いる方法が知られているが、反応温度や反応時間、扱い易さの点からナトリウムメチラートを使用するのが好ましい。また、酵素法として、触媒に油脂分解酵素(リパーゼ)を用いた方法も知られており、いずれで行っても良い。
【0036】
本発明のラウリン系ハードバター組成物において、前記油脂Cは、前記構成を満たせば、使用する油脂類に特に制限はなく、複数の油脂を混合した油脂であってもよい。少量の配合で効果が発揮できる点で、好ましくは、ハイエルシン酸菜種油の極度硬化油やパーム極度硬化油、菜種極度硬化油などが例示できる。
【0037】
本発明のラウリン系ハードバター組成物を使用したチョコレート様食品においては、本発明の効果を阻害しない程度であれば、前記した油脂以外の食用油脂類を含有させてもよい。
【0038】
本発明のラウリン系ハードバター組成物は、ノーテンパー型チョコレートに使用可能なものであって、本発明において、ノーテンパー型チョコレートとは、テンパリング操作又は、安定結晶を用いたシードテンパリング操作を行わずに製造したチョコレートである。
【0039】
本発明のラウリン系ハードバター組成物を使用したチョコレート様食品の製造法としては、一般的なチョコレート類を製造する要領で行うことができる。具体的には、本発明のラウリン系ハードバター組成物を必須とし、糖類、カカオマス、カカオバター、ココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、乳化剤、香料、色素等の原料を適宜選択して混合し、ロール掛け及びコンチング処理を行い、得ることができる。
【0040】
本発明のラウリン系ハードバター組成物を使用したチョコレート様食品の好ましい態様は、チョコレートに含まれる油脂中に、ラウリン系ハードバター組成物を80~97質量%及びカカオバターを3~20質量%含有する。
本発明において、チョコレートに含まれる油脂中にとは、チョコレートに含まれる全油脂分中のことであり、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)中の油脂分も含むものである。
【実施例
【0041】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、例中、%及び部はいずれも質量基準を意味する。
【0042】
表2の配合に従いチョコレートを作製した。(単位/質量部)
使用したココアパウダーの油脂(カカオバター)含有量は約11質量%、チョコレート中の油脂分は31.65質量%であった。
使用した、パーム核油分別硬化油、パーム油極度硬化油の組成は下記の表1とおりであった。なお、パーム核油分別硬化油は、パーム核油を分別した高融点側を硬化したものである。
作製したチョコレートを油脂が融解している温度(50℃)で型に流し込み、10℃で冷却固化した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(口溶け)
冷却固化後20℃で1週間熟成(エージング)後に試食し、下記評価基準に従い評価した。結果を表3にまとめた。
◎ : 口どけが非常によく、後残りは感じられない。
△ : 比較例1よりも劣る。
× : 口どけが悪い。
【0046】
(ブルーム耐性の評価)
20℃で一晩静置し、15℃恒温インキュベータにて保管し経時変化を観察した。テスト開始してから、ブルームが発生するまでに経過した日数を、表3にまとめた。
【0047】
【表3】
【0048】
(考察)
参考例1~3では、ブルーム耐性が向上できない。
参考例1~3では、口溶けが悪化してしまう。
口溶けは、比較例1同等で、ブルーム耐性は比較例1の1.5倍に延ばすことを目標品質とした。
【0049】
表4に記載の割合にて調合した原料油脂1.0kgに、ナトリウムメチラートを触媒として1.5g添加し、80℃にて30分ランダムエステル交換を行った後、常法に従い水洗/脱色/脱臭を行いエステル交換油脂を得た。脂肪酸組成を分析した結果を表5に示す。
油脂Aとして、使用した油脂A-1:パーム核油分別硬化油(上昇融点35.0℃)、
油脂Cとして、使用した油脂C-1:パーム油極度硬化油、それぞれの分析結果を表5に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
なお、パーム核油分別油は、パーム核油を分別した高融点側、硬化パーム核油は、パーム核油を硬化したもの、パームステアリンは、パーム油を分別した高融点側である。
【0052】
【表5】
【0053】
表6の配合に従い、油脂Bには、前記作製した油脂B-1~B-5を使用し、それぞれ、配合例1~3のチョコレートを作製した。(単位/質量部)
使用したココアパウダーの油脂(カカオバター)含有量は約11質量%、チョコレート中の油脂分は31.65質量%であった。
作製したチョコレートを油脂が融解している温度(50℃)で型に流し込み、10℃で冷却固化した。
【0054】
【表6】
【0055】
(ブルーム耐性の評価)
20℃で一晩静置し、15℃恒温インキュベータにて保管し経時変化を観察した。テスト開始してから、ブルームが発生するまでに経過した日数を、表7にまとめた。
【0056】
【表7】
【0057】
(口溶け)
冷却固化後20℃で1週間熟成(エージング)後に試食し、前記比較例1のチョコレートと対比して下記基準に従って評価した。結果を表8にまとめた。
◎ : 比較例1と同等。
○ : 比較例1よりも若干劣る。
△ : 許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る。
× : 口どけが悪い。
(固化時間)
チョコレートを完全融解した後50℃に調整し、室温(22℃)で固化するまでの時間を、前記比較例1のチョコレートと対比して下記基準に従って評価した。結果を表8にまとめた。
◎ : 比較例1と同等。
○ : 比較例1よりも若干劣る。
△ : 許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る。
× : 比較例1よりも劣る。
【0058】
【表8】
【0059】
(考察)総合評価
・油脂B-1を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が良好。口溶け、固化は比較例1同等で、優れた結果が得られた。
・油脂B-2を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が良好。口溶け、固化は比較例1同等で、優れた結果が得られた。
・油脂B-3を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が向上できなかった。
・油脂B-4を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性、固化が良好。口溶けが許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る結果が得られた。
・油脂B-5を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性、口溶けが良好。固化は許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る結果が得られた。
【0060】
表9の配合に従い、油脂Bには、前記作製した油脂B-1~B-5を使用し、それぞれ、配合例4~7のチョコレートを作製した。(単位/質量部)
使用したココアパウダーの油脂(カカオバター)含有量は約11質量%、チョコレート中の油脂分は31.65質量%であった。
作製したチョコレートを油脂が融解している温度(50℃)で型に流し込み、10℃で冷却固化した。
【0061】
【表9】
【0062】
(ブルーム耐性の評価)
冷却固化したチョコレートを20℃で一晩静置した後、15℃恒温インキュベータにて保管し経時変化を観察した。テスト開始してから、ブルームが発生するまでに経過した日数を、表10にまとめた。
【0063】
【表10】
【0064】
(口溶け)
冷却固化後20℃で1週間熟成(エージング)後に試食し、前記比較例1のチョコレートと対比して下記基準に従って評価した。結果を表8にまとめた。
◎ : 比較例1と同等。
○ : 比較例1よりも若干劣る。
△ : 許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る。
× : 口どけが悪い。
(固化時間)
チョコレートを完全融解した後50℃に調整し、室温(22℃)で固化するまでの時間を、前記比較例1のチョコレートと対比して下記基準に従って評価した。結果を表8にまとめた。
◎ : 比較例1と同等。
○ : 比較例1よりも若干劣る。
△ : 許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る。
× : 比較例1よりも劣る。
【0065】
【表11】
【0066】
(考察)総合評価
・油脂B-1を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が良好。口溶け、固化は比較例1同等で許容範囲であって、全体的に優れた結果が得られた。
・油脂B-2を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が良好。口溶け、固化は比較例1同等で許容範囲であって、全体的に優れた結果が得られた。
・油脂B-3を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が向上できなかった。
・油脂B-4を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性、固化が良好。口溶けが許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る結果が得られた。
・油脂B-5を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性、口溶けが良好。固化は許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により、ラウリン系ハードバターを含有するノーテンパー型チョコレートにおいて、カカオバターが配合でき、食感、風味、及びブルーム耐性が良好なチョコレート様食品を提供することができる。