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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】穿刺器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61B5/151 200
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019187407
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021061959
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土取 保紀
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美浪
(72)【発明者】
【氏名】渕上 卓哉
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0299397(US,A1)
【文献】特開2012-005518(JP,A)
【文献】特開2015-136601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/151
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、ケースに収容された穿刺体と、取り外し可能に取り付けられたキャップとを有するランセットカートリッジが取り付けられる穿刺器具であって、
ロッド側係合部を有するハブホールドロッドと、
前記ハブホールドロッドを先端側へ付勢する付勢部と、
前記ハブホールドロッドが先端側へ付勢された状態で、前記ロッド側係合部と解除可能に係合する操作部側係合部を有する操作部とを備え、
前記ハブホールドロッドは、前記穿刺器具に装着された前記ランセットカートリッジの穿刺体が先端部に接続され、
前記キャップが取り付けられた状態の前記ランセットカートリッジが装着された第1の状態と、装着された前記ランセットカートリッジの前記キャップが取り外された第2の状態とを有し、
前記第1の状態において、前記ロッド側係合部と前記操作部側係合部とは、離間した状態であり、
前記第2の状態において、前記ロッド側係合部と前記操作部側係合部とは、係合した状態である、穿刺器具。
【請求項2】
筒状のケースと、ケースに収容された穿刺体と、取り外し可能に取り付けられたキャップとを有するランセットカートリッジが取り付けられる穿刺器具であって、
ロッド側係合部を有するハブホールドロッドと、
前記ハブホールドロッドを先端側へ付勢する付勢部と、
前記ハブホールドロッドが先端側へ付勢された状態で、前記ロッド側係合部と解除可能に係合する操作部側係合部を有する操作部とを備え、
前記ハブホールドロッドは、前記穿刺器具に装着された前記ランセットカートリッジの穿刺体が先端部に接続され、
前記キャップが取り付けられた状態の前記ランセットカートリッジが装着された第1の状態において、前記キャップを取り外すことにより、前記ロッド側係合部と前記操作部側係合部とが係合した第2の状態に移行する、穿刺器具。
【請求項3】
前記ハブホールドロッドは、前記第1の状態において、前記付勢部により先端側に付勢されており、
前記キャップが取り付けられた状態において、前記ロッド側係合部は、前記操作部側係合部に対して後端側に離間しており、
前記キャップが取り外されると、前記付勢部により前記ロッド側係合部が前記操作部側係合部に対して先端側に相対移動し、前記ロッド側係合部と前記操作部側係合部とが係合した状態へ移行する、請求項1又は2に記載の穿刺器具。
【請求項4】
前記キャップは、取り外される際に徐々に先端側へ移動し、
前記ロッド側係合部は、前記キャップの移動に応じて、前記操作部側係合部に対して先端側に相対移動する、請求項3に記載の穿刺器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穿刺器具に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者が血糖値測定を行う際に、専用の穿刺器具が用いられることがある。穿刺器具には種々のものがあるが、使い捨てのランセットカートリッジを装着して使用するものが広く用いられている。一般的なランセットカートリッジは、穿刺針を有する穿刺体と、穿刺体を収容するケースとを有している。ランセットカートリッジが装着される穿刺器具は、バネ等の付勢機構と、付勢力を開放するための穿刺ボタンとを有している。穿刺器具にランセットカートリッジを装着すると、付勢機構が自動的に付勢され、穿刺ボタンを押すと穿刺体が前方に駆動され皮膚を穿刺する。
【0003】
このような穿刺器具は通常、安全のための様々な機構を有している(例えば、特許文献1を参照)。例えば、ランセットカートリッジには、穿刺針を覆うキャップが設けられている。ランセットカートリッジを穿刺器具に装着するまでキャップにより穿刺針が覆われていることにより、装着の際に穿刺針に指が触れて怪我をしたり、穿刺針を汚染したりしないようにすることができる。また、新品のランセットカートリッジを穿刺器具に装着すると、付勢機構が自動的に付勢され穿刺が可能な状態となるが、一度使用したランセットカートリッジは器具本体に装着できないようにしたり、装着しても使用可能な状態とならないようにしたりする機構を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-131814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の穿刺器具は、ランセットカートリッジを穿刺器具に装着すると同時に、穿刺ボタンとハブホールドロッドとが係合状態になるため、穿刺ボタンが操作されなくても、穿刺動作が生じてしまう可能性があるという新規な課題を見いだした。例えば、製造公差を考慮した設計とすると各部材間に遊びができてしまう。この場合、キャップを取り外す前に穿刺ボタンを押圧すると、意図せず遊びの分だけハブホールドロッドが先端側に移動してしまう。これにより、穿刺ボタンとハブホールドロッドとの係合が不完全な状態となってしまい、この状態でキャップを外すと、付勢力が開放されてしまい、穿刺体が移動して、ランセットカートリッジが使用後の状態になってしまう可能性がある。
【0006】
本開示の課題は、意図せずランセットカートリッジが使用後の状態になってしまう可能性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の穿刺用器具の第1の態様は、筒状のケースと、ケースに収容された穿刺体と、取り外し可能に取り付けられたキャップとを有するランセットカートリッジが取り付けられる穿刺器具を対象とし、ロッド側係合部を有するハブホールドロッドと、ハブホールドロッドを先端側へ付勢する付勢部と、ハブホールドロッドが先端側へ付勢された状態で、ロッド側係合部と解除可能に係合する操作部側係合部を有する操作部とを備え、キャップが取り付けられた状態のランセットカートリッジが装着された第1の状態と、装着されたランセットカートリッジのキャップが取り外された第2の状態とを有し、第1の状態において、ロッド側係合部と操作部側係合部とは、離間した状態であり、第2の状態において、ロッド側係合部と操作部側係合部とは、係合した状態である。
【0008】
穿刺用器具の第1の態様は、キャップが取り付けられた状態のランセットカートリッジを装着した状態において、ロッド側係合部と操作部側係合部とが離間している。このため、穿刺ボタンが押圧されて、ハブホールドロッドが遊びの分だけ移動したとしても、ロッド側係合部が操作部側係合部を超えてしまう事態が生じにくい。従って、穿刺ボタンの操作により、意図せずランセットカートリッジが使用後の状態になってしまう事態を生じにくくすることができる。
【0009】
本開示の穿刺用器具の第2の態様は、筒状のケースと、ケースに収容された穿刺体と、取り外し可能に取り付けられたキャップとを有するランセットカートリッジが取り付けられる穿刺器具を対象とし、ロッド側係合部を有するハブホールドロッドと、ハブホールドロッドを先端側へ付勢する付勢部と、ハブホールドロッドが先端側へ付勢された状態で、ロッド側係合部と解除可能に係合する操作部側係合部を有する操作部とを備え、キャップが取り付けられた状態のランセットカートリッジが装着された第1の状態において、キャップを取り外すことにより、ロッド側係合部と操作部側係合部とが係合した第2の状態に移行する。
【0010】
穿刺用器具の第2の態様は、キャップが取り付けられた状態のランセットカートリッジが装着された状態からキャップを取り外すことで、ロッド側係合部と操作部側係合部とが係合した状態となる。このため、意図せずランセットカートリッジが使用後の状態になってしまう可能性を低減することができる。また、キャップを取り外すことにより、ロッド側係合部と操作部側係合部とが係合するため、穿刺の操作ステップが増加することもない。
【0011】
穿刺用器具の第1及び第2の態様において、ハブホールドロッドは、第1の状態において、付勢部により先端側に付勢されており、キャップが取り付けられた状態において、ロッド側係合部は操作部側係合部に対して後端側に離間しており、キャップが取り外されると、付勢部によりロッド側係合部が操作部側係合部に対して先端方向に相対移動して、ロッド側係合部と操作部側係合部とが係合した状態へ移行するようにできる。このような構成とすれば、キャップを取り外すことにより、第1の状態から第2の状態への移行を付勢部により自動的に行うことができる。
【0012】
この場合において、キャップは、取り外される際に徐々に先端側へ移動し、ロッド側係合部は、キャップの移動に応じて、操作部側係合部に対して先端側に相対移動するようにすることができる。このような構成とすることにより、ロッド側係合部と操作部側係合部とが勢い良く衝突しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の穿刺器具によれば、意図せずランセットカートリッジが使用後の状態になってしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る穿刺器具を示す断面図である。
図2】穿刺器具に装着するランセットカートリッジを示す断面図である。
図3】穿刺器具にランセットカートリッジを装着した状態を示す断面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】キャップを取り外した状態を示す断面図である。
図6】穿刺ボタンを操作した後の状態を示す断面図である。
図7】ランセットカートリッジの取り外しを示す断面図である。
図8】ハブホールドロッドを示す平面図である。
図9】キャップ取り外しの際の衝撃を緩和するための機構の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本実施形態の穿刺器具101は、先端部に使い捨てのランセットカートリッジを取り外し可能に装着して、皮膚の穿刺を行うことができる。穿刺器具101は、先端部にランセットカートリッジの穿刺体を接続できるハブホールドロッド110と、ハブホールドロッド110を収容するハウジング120と、ハブホールドロッド110を付勢する付勢部130と、付勢部130を操作するための操作部140とを有している。以下において、穿刺器具101の穿刺を行う側を「先端」、その反対側を「後端」として説明する。
【0016】
本実施形態の穿刺器具101は、図2に示すような使い捨てのランセットカートリッジ201を装着することができる。ランセットカートリッジ201は、ケース210と、ケース210内に組み込まれた穿刺体220とを有している。穿刺体220は、軸221と、軸221の先端部に取り付けられた針222と、軸221の先端部から後端側に向かってU字状に拡がるアーム223とを有している。軸221の後端部には、ハブホールドロッド110のロッド本体部111と係合する係合部を有する。具体的には、ロッド本体部111に設けられた爪部111Aと係合する係合溝221Aが設けられている。ケース210は、側面に第1の係止孔211と第2の係止孔212とを有する筒状である。ケース210の後端部には、爪部111Aと係合溝221Aとの係合を容易にしたり、穿刺器具101への挿入方向を一定方向にしたりするためのスリットを設けることができる。
【0017】
未使用のランセットカートリッジ201の先端部には、針222を保護するキャップ230が取り外し可能に取り付けられている。キャップ230は針222を保護すると共に、針222による誤穿刺を防止する。本実施形態において、キャップ230は穿刺体220の先端部に弱化部230Aを介して固定されている。また、係合爪234がケース210に設けられた係合突起214と解除可能に係合している。このため、穿刺体220は、キャップ230を介してもケース210と係合し、固定されている。従って、キャップ230が取り付けられている場合は、アーム223の端部と第1の係止孔211との係合が解除されても、穿刺体220は、ケース210内を自由に移動しない。
【0018】
未使用の状態において、アーム223の端部はケース210に設けられた第1の係止孔211に係止されている。アーム223の端部は、穿刺器具に取り付ける前にキャップ230が取り外されたとしても穿刺体220のケース210に対する相対移動を防ぐ、係止機構として機能する。未使用のランセットカートリッジ201が穿刺器具101に装着されると、アーム223の端部と第1の係止孔211との係止が解除される。使用後は、アーム223の端部は第1の係止孔211よりも先端側に設けられた第2の係止孔212に係止される。アーム223の端部が第2の係止孔212に係止された状態においても、針222の先端部は、ケース210の先端部から突出しないようになっている。
【0019】
本実施形態の穿刺器具101を使用する際は、まず図3に示すように、穿刺器具101の先端に設けられたカートリッジホルダ123の開口部にキャップ230が取り付けられた未使用のランセットカートリッジ201を挿入する。図1に示すように、ランセットカートリッジ201を挿入する前は、ハブホールドロッド110が初期位置にある。ランセットカートリッジ201を挿入することにより、穿刺体220の後端部が、ハブホールドロッド110のロッド本体部111と当接し、ハブホールドロッド110を、初期位置よりも後端側に移動させる。また、ロッド本体部111の爪部111Aが穿刺体220の後端部に設けられた係合溝221Aと係合すると共に、付勢部である穿刺用バネ131が付勢される。
【0020】
ランセットカートリッジ201が所定の位置まで挿入されると、カートリッジホルダ123に設けられた突起123aが、ケース210の第1の係止孔211に挿入される。これにより、アーム223の端部と第1の係止孔211との係合が解除される。しかし、穿刺体220はキャップ230を介してランセットカートリッジ201のケース210に固定されている。このため、穿刺体220及び穿刺体220と連結されたハブホールドロッド110の先端側への移動は阻止される。このため、図4に示すように、キャップ230が取り付けられたランセットカートリッジが装着された第1の状態においては、ロッド本体部111に設けられた突起であるロッド側係合部111Bは、操作部140の操作部側係合部142よりも後端側に位置し、ロッド側係合部111Bと、操作部側係合部142とは間隔dをおいて離間している。また、本実施形態において、ハブホールドロッド110は第1の状態において付勢部により付勢された状態となる。
【0021】
次に、図5に示すように、ランセットカートリッジ201のキャップ230を取り外して第2の状態とすると、穿刺体220はケース210内を移動できるようになるため、ハブホールドロッド110が僅かに先端側に移動してロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが当接して係合する。ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142との係合により、ハブホールドロッド110は第2の状態においても付勢状態を保持できる。
【0022】
次に、操作部140の穿刺ボタン141を押し込むと、操作部側係合部142とロッド側係合部111Bとの係合が解除される。これにより、ハブホールドロッド110が付勢状態から解放され、先端側の穿刺位置に移動する。ロッド本体部111の先端部に接続された穿刺体220も先端側に移動し、針222が、ケース210の先端部から突出して、穿刺が行われる。
【0023】
穿刺動作の後、ハブホールドロッド110は、回収用バネ137により、図6に示す終了位置に移動する。穿刺体220が後端側に移動する際に、アーム223の端部は、第2の係止孔212にはまり込み係止される。このため、針222はケース210の内部に収容されるが、ハブホールドロッド110は初期位置まで後退せず、初期位置よりも先端側の終了位置で停止する。穿刺体220のアーム223は、穿刺動作の後において、穿刺体220のケース210に対する相対移動を防ぐ係止機構として機能する。
【0024】
一連の動作の後、排出ボタン135を押圧すると、図7に示すようにプッシュロッド136が先端側に移動する。これにより、ロッド本体部111の爪部111Aが押し広げられ、ハブホールドロッド110と穿刺体220との接続が解除される。排出ボタン135の押圧をさらに続けると、プッシュロッド136がランセットカートリッジ201を押圧し、ランセットカートリッジ201が、ハウジング120から排出される。排出ボタン135を押圧すると廃棄用バネ138が付勢されるため、排出ボタン135の押圧をやめると、廃棄用バネ138の復元によりプッシュロッド136及び排出ボタン135は、元の位置に戻される。また、穿刺体との接続が解除されたハブホールドロッド110は、初期位置に移動する。
【0025】
ランセットカートリッジの部品の遊びが0であれば、未使用のランセットカートリッジを穿刺器具に装着することにより、自動的にロッド側係合部と操作部側係合部とが係合するような穿刺装置であっても、キャップを外し忘れて穿刺ボタンを操作した場合に問題は生じない。しかし、寸法公差等の影響により実際には遊びを0にすることはできないため、キャップが取り付けられた状態で、穿刺ボタンを操作すると、ハブホールドロッドが遊びの分だけ先端側へ僅かに移動する。これにより、ロッド側係合部の位置が操作部側係合部の位置を越えてしまうおそれがある。このような状態においてキャップを取り外すと勝手に穿刺動作が行われてしまい、ランセットカートリッジは穿刺後の状態となり、これを廃棄しなければならなくなる。
【0026】
本実施形態の穿刺器具101は、未使用のランセットカートリッジ201を挿入しても、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とは離間しており、係合した状態とはならない。このため、キャップ230を取り外す前段階で意図せず穿刺ボタン141が操作されたとしても、ロッド側係合部111Bの位置が、操作部側係合部142の位置を越えてしまうように移動してしまう事態を生じにくくし、また、キャップ230を取り外すという流れの中で、自然にロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とを係合状態に移行させることができる。
【0027】
キャップ230は、ランセットカートリッジ201から取り外すことができ、取り付けられた状態において、穿刺体220のケース210内における移動を阻止できればどのような構成としてもよい。本実施形態においては、係合爪234とケース210の係合突起214とが係合することにより、キャップ230がケース210に固定される構成となっている。キャップ230を把持して捻ることにより、弱化部230Aがねじ切られると共に、係合爪234とケース210の係合突起214との係合が解除されて取り外すことが可能となる。但し、このような構成に限らず、突起を押さえることにより取り外しが可能になるような構成や、一部を折り取ることにより取り外しが可能になるような構成とすることもできる。なお、安全の観点からは、ランセットカートリッジ201を穿刺器具101に装着するまでキャップ230を取り外すことができないような機構が設けられていることが好ましい。また、一度取り外したキャップは再度取り付けることができない構成とすることが好ましい。
【0028】
第1の状態において、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とは、当接していなければよいが、寸法公差等を考慮すると、間隔dが0.2mm以上であることが好ましい。間隔dは大きくてもよいが、キャップ230を取り外した際のロッド側係合部111Bの動きをできるだけ小さくすると共に無駄なスペースが生じないようにする観点から、間隔dは1mm以下とすることが好ましい。
【0029】
なお、穿刺器具101は、キャップ230が取り付けられた未使用のランセットカートリッジ201を装着した際に、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが離間した第1の状態となり、この後、キャップ230を取り外して第2の状態とすると、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが係合するようにできればどのような構成としてもよい。
【0030】
一例として図1に示す穿刺器具101の構成について説明する。ハウジング120は、硬質の樹脂成形品からなる略円筒形状の部材であって、軸方向中間部分の内周面には、内周側に突出する円環状の中間壁124が設けられている。ハウジング120の周壁には操作窓126が開口している。ハウジング120の内周面における中間壁124よりも先端側における操作窓126と径方向で対向する位置には、内周面上に突出する当接リブ128が形成されている。当接リブ128は、略平板形状とされており、突出先端がハウジング120の横断面における弦方向に延びている。また、当接リブ128の厚さは、ハウジング120とほぼ同じか僅かに薄くなっており、ハウジング120の軸方向に互いに間隔をおいて複数(本実施形態では2つ)設けられている。さらに、当接リブ128は、操作窓126の軸方向の中央部付近に対向して配置されている。このような位置に複数の当接リブ128を設けることにより、部材厚さ寸法を抑えて成形性を確保しつつ、ハブホールドロッド110の安定した当接状態が実現可能となる。なお、ハウジング120は、略対称形状とされた一対の半割体を組み合わせて、それら半割体を超音波溶着等により相互に固着することにより形成することができる。
【0031】
ハウジング120の先端側に設けられた操作窓126には、操作部140が取り付けられている。操作部140は、操作窓126から外部に露出する穿刺ボタン141と、穿刺ボタン141から後端側に延びる位置決め片146とを有している。穿刺ボタン141における先端の内面からは、後端側に向かって内周側に傾斜して延び出す板状のロック片148が設けられている。ロック片148の軸方向中央部分には凹所149が形成されている。なお、凹所149は、ロッド本体部111に設けられたロッド側係合部111B対応する大きさであり、凹所149の後端側面は、ロッド側係合部111Bの後端側面と対応する傾斜面となっている。ロック片148の後端部は、ロッド側係合部111Bと係合する操作部側係合部142となっている。
【0032】
操作部140は、位置決め片146が操作窓126から挿し入れられて、ハウジング120の内周面に重ね合わされていると共に、ハウジング120に取り付けられる支軸145によってロック片148の中間部分が支持されている。支軸145は略円柱形状とされており、例えばハウジング120における半割体のそれぞれに凹部が設けられて、両凹部に支軸145の軸方向両端が嵌め入れられている。
【0033】
穿刺ボタン141の先端側を内周側に押し下げると、ロック片148も支軸145を中心に傾動して、ロック片148の先端側も内周側に押し下げられる一方、ロック片148の後端部が外周側に変位する。第2の状態において、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが係合しているため、ハブホールドロッド110を付勢する付勢力は操作部側係合部142が受け止めている。このため、穿刺ボタン141を押し下げることにより、操作部側係合部142とロッド側係合部111Bとの係合が解除され、ハブホールドロッド110は先端側へ移動して穿刺動作を行う。一方、第1の状態において、ハブホールドロッド110と操作部側係合部142とは離間するように予め設計されているため、ロッド側係合部111Bの位置が操作部側係合部142の位置を超えてしまうような移動は生じにくい。
【0034】
ハウジング120の先端側の開口部には、カートリッジホルダ123が設けられている。カートリッジホルダ123は、樹脂成形品からなる全体として筒状の部材であり、ハウジング120の先端側の開口部の形状に一致した外壁と、ランセットカートリッジ201の外形と一致した内壁とを有している。カートリッジホルダ123の内壁面には、ランセットカートリッジ201を挿入した際に、第1の係止孔211が配置される位置に、突起123aが設けられている。なお、カートリッジホルダ123は、ハウジング120と一体に形成することもできる。
【0035】
ハウジング120内に収容されるハブホールドロッド110は、図8に拡大して示すように、穿刺時に針222に外力を及ぼすロッド本体部111と、針222の先端側への移動端を規定する穿刺止めシリンダ112と、穿刺深さを調節する位置調整部113とを有している。
【0036】
ロッド本体部111は、全体として略円筒のロッド形状である。ロッド本体部111の先端よりの部分には、ロッド側係合部111Bが設けられている。ロッド側係合部111Bは、それぞれ略直角三角形状の断面を有しており、先端面が略軸直角方向に広がっていると共に、後端面が後端側に向かって内周側に傾斜して広がっている。なお、ロッド側係合部111Bは、操作部側係合部142と係合できればよく、当接リブ128側には設けなくてもよい。但し、操作窓126側と当接リブ128側との両方にロッド側係合部111Bを設けることにより、ロッド本体部111の組立が容易となる。
【0037】
ロッド本体部111の先端部は二股形状となっており、二股の先端にはそれぞれ、穿刺体220の後端部に設けられた係合溝221Aと係合する爪部111Aが設けられている。これらの爪部111Aは、それぞれロッド本体部111の内周側に対向して突出しており、後端面が内周側に向かって次第に先端側に傾斜する傾斜面とされている。
【0038】
穿刺止めシリンダ112は、全体として内径がロッド本体部111の外径よりも大きい略円筒形状である。穿刺止めシリンダ112は、先端部分112Aと後端部分112Cとの間にこれらの部分よりも外径が小さい中間部分112Bを有している。穿刺止めシリンダ112の先端部分112Aは、幅方向両側に拡がった一対の穿刺規制部となっている。また、穿刺止めシリンダ112の後端部分112Cの内表面には雌ねじ116が設けられている。なお、穿刺止めシリンダ112の外面には、ハウジング120内面に形成されたリブと係合する溝が形成されており、穿刺止めシリンダ112はハウジング120に対して回転しないようになっている。
【0039】
穿刺止めシリンダ112の中間部分112Bは、ハウジング120に設けられた中間壁124に挿通されている。穿刺止めシリンダ112の中間部分112Bには、後端部分112Cとの段差面と中間壁124とを受座として、コイルスプリングである回収用バネ137が外挿されている。
【0040】
なお、穿刺止めシリンダ112の外表面にマークを付け、穿刺体220が連結されて、ハブホールドロッド110が後端側に移動した際に、ハウジング120に設けられた窓部からマークを確認できるようにすれば、穿刺体220が連結されたかどうかを確認することが可能となる。
【0041】
位置調整部113は、全体としてロッド本体部111の外径よりも内径が大きい略円筒形状である。ロッド本体部111の後端側には、軸方向に離間して外周側に突出する2つの突条が設けられている。位置調整部113の先端部分は、これら2つの突条間に挟まれて配置されることにより、位置調整部113がロッド本体部111に対して回転可能に、且つ軸方向には移動不能に取り付けられている。また、位置調整部113の外表面には、穿刺止めシリンダ112の雌ねじに対応する雄ねじが設けられている。これらの雄ねじと雌ねじとが螺合することにより、穿刺止めシリンダ112の後端部分112Cに位置調整部113が接続されている。
【0042】
ハブホールドロッド110には、プッシュロッド136が挿通されている。プッシュロッド136は、全体として小径中実の略円柱形状である。プッシュロッド136は、ハブホールドロッド110よりも後端側に突出していると共に、プッシュロッド136の先端部に設けられた広幅部(図示せず)が、ロッド本体部111の先端部における二股になった部分において幅方向両側に突出している。プッシュロッド136の後端には、略有底円筒形状の排出ボタン135が取り付けられている。
【0043】
排出ボタン135は、設定ダイアル125に挿通されている。設定ダイアル125は、全体として略筒形状であり、後端側開口部から排出ボタン135が突出している。設定ダイアル125の先端側はハウジング120の後端側の開口部に内挿されており、設定ダイアル125の先端側外周面に設けられた環状凸部が、ハウジング120の後端側内周面に設けられた環状凹部に挿し入れられることにより、設定ダイアル125がハウジング120に対して周方向で回転可能に、且つ軸方向で移動不能にされている。
【0044】
設定ダイアル125の先端部分には軸方向に延びるスリットが設けられており、位置調整部113の後端部に設けられた突起113aと係合している。設定ダイアル125を回転させることにより、ハウジング120の内部に設けられた位置調整部113を回転させることができる。なお、位置調整部113は、設定ダイアル125に固定されておらず、ハブホールドロッド110は設定ダイアル125と独立して軸方向に移動可能とされている。
【0045】
設定ダイアル125の先端部分の外周面には、周方向に所定の間隔で数字が順番に記された穿刺深さ表示部を設けることができる、ハウジング120の後端部に表示窓を設け、外部から穿刺深さ表示部を視認可能とすることにより、使用者がどの程度設定ダイアル125を回転させたかを把握することが可能となる。
【0046】
設定ダイアル125の後端部の外周面には、軸方向に延びる指示突起を設けることができる。この場合、ハウジング120の後端部の外周面に深さ表示を設け、指示突起と深さ表示との位置関係を確認することにより、使用者がどの程度設定ダイアル125を回転させたかを把握することが可能となる。深さ表示はどのようなものであってもよいが、例えば、軸方向に伸びる長さが異なる複数の凸条を周状に配置することができる。
【0047】
また、設定ダイアル125は、ハウジング120に対して無段階に回転可能としても、段階的に回転可能とすることもできる。さらに、設定ダイアル125を回転させる際に使用者がクリック感を感じ得るようにしてもよい。
【0048】
設定ダイアル125の内部には円環状の仕切板132が配置され、プッシュロッド136の後端には保護ワッシャー133が設けられている。仕切板132保護ワッシャー133とを受座として、プッシュロッド136にはコイルスプリングである穿刺用バネ131が外挿され、付勢部130が形成されている。一方、仕切板132と排出ボタン135とを受座として、プッシュロッド136にはコイルスプリングである廃棄用バネ138が外挿されている。
【0049】
設定ダイアル125を回転させることにより、針222の穿刺深さを設定することができる。設定ダイアル125を回転させることにより、設定ダイアル125に連結されている位置調整部113が回転する。位置調整部113が回転することにより、位置調整部113と螺合している穿刺止めシリンダ112の軸方向における相対位置が変化する。位置調整部113とロッド本体部111とは相互に連結されているため、穿刺止めシリンダ112とロッド本体部111との軸方向での相対位置も変化する。
【0050】
穿刺の際に、ハブホールドロッド110は、穿刺止めシリンダ112の先端部分112Aがランセットカートリッジ201のケース210の後端に当接する位置まで移動する。このため、位置調整部113を回転させて穿刺止めシリンダ112を先端側に移動させると、穿刺の際におけるハブホールドロッド110の移動量は小さくなる。一方、穿刺止めシリンダ112を後端側に移動させると、穿刺の際におけるハブホールドロッド110の移動量は大きくなる。このように、穿刺止めシリンダ112の位置を移動させることにより、穿刺深さを制御することができる。
【0051】
ハブホールドロッド110、ハウジング120、付勢部130及び操作部140は、このような構成に限らず、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが、キャップ230が取り付けられた状態においては離間して係合しておらず、キャップ230を取り外すことにより、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが係合する構成とできればどのような構成としてもよい。なお、第1の状態及び第2の状態におけるロッド側係合部と操作部側係合部との位置関係は、操作部側係合部の位置を基準とした相対的なものであればよく、第1の状態から第2の状態へ移行する際に移動するのは、ロッド側係合部であっても、操作部側係合部であっても、その両方であってもよい。
【0052】
キャップ230を取り外して、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが係合する際に、ロッド側係合部111Bが勢い良く先端側に移動して操作部側係合部142に衝突すると、穿刺器具101を把持している手に衝撃が伝わったり、衝突音がして使用者を驚かせてしまうおそれがある。また、穿刺器具101が破損する原因となるおそれもある。これを避けるために、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが係合する際に、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142との間隔が徐々に小さくなり、係合する構成とすることができる。
【0053】
例えば、図9に示すように、ケース210に設けられた係合突起214を、次第に先端側に向かう螺旋状のレールとすることができる。このようにすれば、キャップ230を取り外すためにキャップ230を捻ると、キャップ230に設けられた係合爪234は、レール状の係合突起214に沿って徐々に先端側に移動するため、キャップ230は徐々に先端側に移動する。即ち、キャップ230を外す工程において、バネの付勢力に抗してレール状の係合突起214がキャップ230の急な先端側への移動を防止する。このため、ロッド側係合部111Bもキャップ230の移動と共に徐々に先端側に移動するため、ロッド側係合部111Bが操作部側係合部142に勢い良く衝突しないようにして係合させることができる。なお、実施形態において、螺旋状のレールは軸方向の長さが第1の状態におけるロッド側係合部111Bと操作部側係合部142との離間距離より長く形成されており、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが離間した位置から係合するまでの間、螺旋状のレールによって徐々にロッド側係合部111Bが先端側に移動する構成であるが、手への衝撃の伝達を多少許容するのであれば、螺旋状のレールがロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが係合する前の中途位置までガイドしないようにしてもよく、また、螺旋状のレールではなく階段状のレールを採用してもよい。また、図9においてはキャップの外面に螺旋状のレールが形成されているが、キャップの内面に螺旋状のレールを形成してキャップ230が徐々に先端側に移動するようにしてもよい。
【0054】
本実施形態においては、第1の状態において、ハブホールドロッド110が穿刺用バネ131を含む付勢部130により先端側に付勢されており、キャップ230が係合爪234によりケース210と係合することにより、付勢部130の付勢力に抗してロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが離間した状態を維持する例を示した。しかし、キャップ230は係合爪234以外の構成によりケース210と係合していてもよい、また、キャップ230はケース210以外の部分と係合していてもよい。
【0055】
さらに、キャップ230自体が付勢部130の付勢力を受け止めて、ロッド側係合部111Bと操作部側係合部142とが離間した状態を維持するのではなく、本体側又はカートリッジ側に設けたキャップとは別の部材が付勢部130の付勢力を受け止め、ロッド側係合部111Bが操作部側係合部142に対して後端側に離間した状態を維持する構成とすることもできる。この場合、取り外すことにより、キャップ230が別の部材に作用して、例えばキャップ230がカートリッジ側に設けられたロッド側係合部111Bと操作部側係合部142の相対移動阻止部を移動させて阻止を解除して、ロッド側係合部111Bを操作部側係合部142に対して先端方向に相対移動させて、操作部側係合部142と係合させるスイッチとして機能する。なお、別部材への作用はキャップの取り外し時の軸方向移動又は回転によって生じさせてもよい。また、付勢力ではなく、キャップが直接的にロッド側係合部又は操作部側係合部を移動させ、キャップの取り外しによって、第2の状態に移行させるようにしてもよい。
【0056】
さらに、第1の状態において、ハブホールドロッド110は先端側に付勢されていなくてもよい。例えば、キャップ230を取り外すことにより、付勢部130の付勢力がハブホールドロッド110に加わり、付勢力によりハブホールドロッド110が先端側に移動して第2の状態に移行する構成とすることもできる。また、キャップ230を取り外すことにより、ハブホールドロッド110及び操作部140の少なくとも一方の位置が変位し、これにより、ロッド側係合部111Bが操作部側係合部142に係合して第2の状態に移行すると共に、付勢部130の付勢力がハブホールドロッド110に加わるような構成とすることもできる。
【0057】
本実施形態において、ランセットカートリッジを穿刺器具に取り付ける前にキャップが取り外された場合や、使用後のランセットカートリッジにおいて穿刺体がケース内において相対移動しないようにする係止機構を2つのアーム部の端部に設けた。しかし、穿刺体に3つ以上のアームを設け、それぞれのアームの端部を係止機構としてもよい。また、ケースに設ける係止孔は、係止機構の数に応じて設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示の穿刺器具は、意図せずランセットカートリッジが使用後の状態になってしまう可能性を低減でき、血糖測定等を行う穿刺器具として有用である。
【符号の説明】
【0059】
101 穿刺器具
110 ハブホールドロッド
111 ロッド本体部
111A 爪部
111B ロッド側係合部
112 穿刺止めシリンダ
112A 先端部分
112B 中間部分
112C 後端部分
113 位置調整部
113a 突起
120 ハウジング
123 カートリッジホルダ
123a 突起
124 中間壁
125 設定ダイアル
126 操作窓
128 当接リブ
130 付勢部
131 穿刺用バネ
132 仕切板
133 保護ワッシャー
135 排出ボタン
136 プッシュロッド
137 回収用バネ
138 廃棄用バネ
140 操作部
141 穿刺ボタン
142 操作部側係合部
145 支軸
146 位置決め片
148 ロック片
149 凹所
201 ランセットカートリッジ
210 ケース
211 第1の係止孔
212 第2の係止孔
214 係合突起
220 穿刺体
221 軸
221A 係合溝
222 針
223 アーム
230 キャップ
230A 弱化部
234 係合爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9