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特許7467884血圧計、血圧計の作動方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】血圧計、血圧計の作動方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61B5/022 400L
A61B5/022 300F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019196144
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021069445
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088263(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018029(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0342764(US,A1)
【文献】特開2009-149691(JP,A)
【文献】特開2003-061919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0035233(US,A1)
【文献】国際公開第2017/086071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02- 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して、血圧測定を行う血圧計であって、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードを有し、
上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始し、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定する血圧測定部と、
測定された血圧値を記憶し得る記憶部と
を備え、さらに、
或る被験者について、複数の日にわたって毎日、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って同じ時間帯ごとに上記血圧測定部に血圧を測定させ、測定された血圧値を順次上記記憶部に記憶させるデータ蓄積処理を行う蓄積処理部と、
上記被験者について、上記複数の日にわたって毎日同じ時間帯ごとに上記記憶部に記憶された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める統計処理を行って、夜間の血圧変動パターンが予め定められた複数のタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定する統計処理部とを備え、
上記予め定められた複数のタイプは、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量10%から20%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量20%以上となるまで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するエクストリームディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量ゼロから10%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するノンディッパー型と、
夜間の血圧平均が昼間の血圧平均よりも上昇するライザー型と
の4つのタイプであり、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、上記複数の日以降の測定頻度を減らすように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す処理を行うスケジュール再設定部と
を備え、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻を設定することによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす
ことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻のみを設定する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記複数の日について、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールは、第1の時間間隔に設定され、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型または上記ライザー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを、上記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔に切り替えることによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記蓄積処理部は、予め定められた開始指示を受けると、上記データ蓄積処理を開始し、
上記データ蓄積処理が完了次第、上記統計処理部による上記統計処理から、上記スケジュール再設定部による上記スケジュールを設定し直す処理までを連続して実行させる制御部を備えた
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記複数の日は1週間である
ことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記被測定部位は手首である
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体を備え、
上記本体は、上記血圧測定部、上記記憶部、上記蓄積処理部、上記統計処理部、および、上記スケジュール再設定部を搭載している
ことを特徴とする血圧計。
【請求項8】
請求項1に記載の血圧計を作動させる血圧計の作動方法であって、
上記蓄積処理部は、或る被験者について、複数の日にわたって毎日、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って同じ時間帯ごとに上記血圧測定部に血圧を測定させ、測定された血圧値を順次上記記憶部に記憶させるデータ蓄積処理を行い、
上記統計処理部は、上記蓄積処理部によって上記複数の日にわたって毎日同じ時間帯ごとに上記記憶部に記憶された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める統計処理を行って、夜間の血圧変動パターンが予め定められた複数のタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定し、
上記予め定められた複数のタイプは、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量10%から20%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量20%以上となるまで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するエクストリームディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量ゼロから10%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するノンディッパー型と、
夜間の血圧平均が昼間の血圧平均よりも上昇するライザー型と
の4つのタイプであり、
上記スケジュール再設定部は、上記統計処理部によって決定された夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、上記複数の日以降の測定頻度を減らすように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す処理を行い、この処理では、上記統計処理部によって決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻を設定することによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす
ことを特徴とする血圧計の作動方法
【請求項9】
請求項8に記載の血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、夜間(睡眠時)血圧測定モードを有する血圧計に関する。また、この発明は、そのような血圧計を作動させる血圧計の作動方法に関する。また、この発明は、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ABPM(Ambulatory Blood Pressure Monitor:24時間自由行動下血圧計)では、上腕にカフを巻き、1日の生活の中で、昼間は10~30分間隔、夜間(睡眠時)は30分間隔など、予め決められた時間間隔で血圧を測定・記録するものとされている(非特許文献1;24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン(2010年改訂版))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン(2010年改訂版)”、[online]、日本循環器学会,日本高血圧学会,日本心臓病学会、[令和1年9月10日検索]、インターネット< URL :http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_shimada_h.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ABPMで血圧測定を行った場合、夜間にカフによって上腕が頻繁に圧迫されるため、被験者の睡眠が阻害されるという報告がある(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。
【0005】
そこで、この発明の課題は、夜間血圧測定を行う場合に、必要な血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる血圧計および血圧計の作動方法を提供することにある。また、この発明の課題は、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、夜間の血圧変動パターンが、ディッパー(dipper)型、エクストリームディッパー(extreme-dipper)型、ノンディッパー(non-dipper)型、ライザー(riser)型に分類されることに着目した(非特許文献1;24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン(2010年改訂版))。ディッパー型は、夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して徐々に10%~20%低下し、未明に最低となった後、徐々に上昇するタイプ(正常タイプ)である。エクストリームディッパー型は、ディッパー型に比して、夜間に20%以上の過度の血圧低下を示すタイプである。ノンディッパー型は、ディッパー型に比して、夜間の血圧低下が少なく10%未満のタイプである。ライザー型は、夜間に血圧が上昇する(昼間の血圧平均よりも夜間の血圧の平均が上昇する)タイプである。例えば、ディッパー型、エクストリームディッパー型では、夜間に血圧が最小を示す時間帯の血圧が重要であると考えられる。また、ノンディッパー型、ライザー型では、夜間を通した幾つかの時間帯の血圧が重要であると考えられる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して、血圧測定を行う血圧計であって、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードを有し、
上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始し、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定する血圧測定部と、
測定された血圧値を記憶し得る記憶部と
を備え、さらに、
或る被験者について、複数の日にわたって毎日、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って同じ時間帯ごとに上記血圧測定部に血圧を測定させ、測定された血圧値を順次上記記憶部に記憶させるデータ蓄積処理を行う蓄積処理部と、
上記被験者について、上記複数の日にわたって毎日同じ時間帯ごとに上記記憶部に記憶された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める統計処理を行って、夜間の血圧変動パターンが予め定められた複数のタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定する統計処理部とを備え、
上記予め定められた複数のタイプは、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量10%から20%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量20%以上となるまで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するエクストリームディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量ゼロから10%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するノンディッパー型と、
夜間の血圧平均が昼間の血圧平均よりも上昇するライザー型と
の4つのタイプであり、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、上記複数の日以降の測定頻度を減らすように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す処理を行うスケジュール再設定部と
を備え、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻を設定することによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす
ことを特徴とする。
【0008】
本明細書で、「スケジュール」は、血圧測定(通常は1分間~2分間程度要する)の開始時刻を定める。スケジュールに従う血圧測定の「時間間隔」(後述)は、或る血圧測定の開始時刻とその次の開始時刻との間の間隔を意味し、周期と同義であるものとする。
【0009】
「統計処理」において、「時間帯」の長さは、30分間、1時間など、任意に設定され得る。「同じ時間帯」は、「同じ時刻」であってもよい。
【0010】
例えば、非特許文献1(24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン(2010年改訂版))に、上記ディッパー(dipper)型、上記エクストリームディッパー(extreme-dipper)型、上記ノンディッパー(non-dipper)型、上記ライザー(riser)型が示されている。
【0011】
「測定頻度を減らすように」、スケジュールを「設定し直す」とは、典型的には、血圧測定を、夜間の血圧が最小を示す時間帯に限定して行う、および/または、上記データ蓄積処理の対象となった上記複数の日における測定の時間間隔に比して、上記複数の日以降の測定の時間間隔を長くする、などを意味する。
【0012】
この開示の血圧計では、蓄積処理部は、或る被験者について、複数の日にわたって毎日、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って同じ時間帯ごとに上記血圧測定部に血圧を測定させ、測定された血圧値を順次上記記憶部に記憶させるデータ蓄積処理を行う。統計処理部は、上記被験者について、上記複数の日にわたって毎日同じ時間帯ごとに上記記憶部に記憶された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める統計処理を行って、夜間の血圧変動パターンが予め定められた複数のタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定する。すなわち、上記時間帯ごとの平均値が、夜間を通してどのように推移するかに応じて、夜間の血圧変動パターンが予め定められた複数のタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定する。これにより、上記被験者について上記夜間の血圧変動パターンは、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量10%から20%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量20%以上となるまで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するエクストリームディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量ゼロから10%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するノンディッパー型と、
夜間の血圧平均が昼間の血圧平均よりも上昇するライザー型と
の4つのタイプの何れかに決定される。
この後、スケジュール再設定部は、上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、上記複数の日以降の測定頻度を減らすように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す処理を行う。これにより、血圧測定を、夜間の血圧が最小を示す時間帯に限定して行ったり、上記データ蓄積処理の対象となった上記複数の日における測定の時間間隔に比して、上記複数の日以降の測定の時間間隔を長くしたりすることができる。したがって、夜間血圧測定を行う場合に、必要な血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる。
特に、この血圧計では、上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻を設定することによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす。したがって、この血圧計によれば、上記被験者について上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記被験者にとって重要な(つまり、必要な)血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる。
【0013】
【0014】
【0015】
一実施形態の血圧計では、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻のみを設定する
ことを特徴とする。
【0016】
上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、血圧の日内変動を把握する見地から、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯の血圧を測定することが重要である、と考えられる。そこで、この一実施形態の血圧計では、上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻のみを設定する。したがって、血圧測定の頻度を一夜当たり1回に減らすことができる。これにより、上記複数の日以降、上記被験者の睡眠が阻害される回数を減らすことができる。
【0017】
一実施形態の血圧計では、
上記複数の日について、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールは、第1の時間間隔に設定され、
上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型または上記ライザー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを、上記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔に切り替えることによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす
ことを特徴とする。
【0018】
上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型または上記ライザー型であるとき、血圧の日内変動を把握する見地から、夜間の血圧を網羅的に測定することが重要である、と考えられる。そこで、この一実施形態の血圧計では、上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型または上記ライザー型であるとき、上記スケジュール再設定部は、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを、上記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔に切り替えることによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす。例えば、上記第1の時間間隔が30分間間隔であれば、上記第2の時間間隔は2時間間隔のように設定される。したがって、この血圧計によれば、上記被験者について上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型または上記ライザー型であるとき、上記被験者にとって重要な(つまり、必要な)血圧値のデータを取得することができる。しかも、上記データ蓄積処理の対象となった上記複数の日における測定回数に比して、上記複数の日以降の測定回数を減らすことができる。これにより、上記複数の日以降、上記被験者の睡眠が阻害される回数を減らすことができる。
【0019】
一実施形態の血圧計では、
上記蓄積処理部は、予め定められた開始指示を受けると、上記データ蓄積処理を開始し、
上記データ蓄積処理が完了次第、上記統計処理部による上記統計処理から、上記スケジュール再設定部による上記スケジュールを設定し直す処理までを連続して実行させる制御部を備えた
ことを特徴とする。
【0020】
「予め定められた開始指示」とは、例えば、ユーザ(主に、被験者)が、この血圧計に搭載されたスイッチをオンする操作、または、この血圧計の外部から無線通信によってこの血圧計に処理開始信号を入力する操作などを指す。
【0021】
この一実施形態の血圧計では、ユーザ(主に、被験者)が上記開始指示を行えば、自動的に上記スケジュールが設定し直される。したがって、ユーザにとって、夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す手間が実質的にかからず、便利である。
【0022】
一実施形態の血圧計では、
上記複数の日は1週間である
ことを特徴とする。
【0023】
この一実施形態の血圧計では、上記蓄積処理部は、上記1週間にわたって毎日、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って同じ時間帯ごとに上記血圧測定部に血圧を測定させ、測定された血圧値を順次上記記憶部に記憶させる。上記統計処理部は、上記統計処理として、上記1週間にわたって毎日同じ時間帯ごとに上記記憶部に記憶された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める。1週間にわたる時間帯ごとの平均値を求めれば、日ごとのばらつきが多少あったとしても、本発明者の経験から言って、時間帯ごとの平均値を適切に把握できる。また、通常、被験者は1週間をライフサイクルとして生活しているので、被験者の血圧値の日ごとのばらつきは、上記時間帯ごとの平均値に適切に反映される。この結果、この時間帯ごとの平均値が、夜間を通してどのように推移するかに応じて、上記被験者の夜間の血圧変動パターンを適切に把握できる。
【0024】
一実施形態の血圧計では、上記被測定部位は手首であることを特徴とする。
【0025】
この一実施形態の血圧計は、被測定部位としての手首を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、被験者の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計は、夜間(睡眠時)血圧測定に適する。
【0026】
一実施形態の血圧計では、
上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体を備え、
上記本体は、上記血圧測定部、上記記憶部、上記蓄積処理部、上記統計処理部、および、上記スケジュール再設定部を搭載している
ことを特徴とする。
【0027】
ここで、「血圧測定部」は、例えば、上記血圧測定用カフに加圧用の流体を供給するポンプ、上記血圧測定用カフから流体を排気させる弁、これらのポンプ・弁などを駆動・制御する要素を含む。
【0028】
この一実施形態の血圧計は、一体かつコンパクトに構成され得る。したがって、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0029】
別の局面では、この開示の血圧計の作動方法は、
上記血圧計を作動させる血圧計の作動方法であって、
上記蓄積処理部は、或る被験者について、複数の日にわたって毎日、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って同じ時間帯ごとに上記血圧測定部に血圧を測定させ、測定された血圧値を順次上記記憶部に記憶させるデータ蓄積処理を行い、
上記統計処理部は、上記蓄積処理部によって上記複数の日にわたって毎日同じ時間帯ごとに上記記憶部に記憶された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める統計処理を行って、夜間の血圧変動パターンが予め定められた複数のタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定し、
上記予め定められた複数のタイプは、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量10%から20%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量20%以上となるまで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するエクストリームディッパー型と、
夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量ゼロから10%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するノンディッパー型と、
夜間の血圧平均が昼間の血圧平均よりも上昇するライザー型と
の4つのタイプであり、
上記スケジュール再設定部は、上記統計処理部によって決定された夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、上記複数の日以降の測定頻度を減らすように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す処理を行い、この処理では、上記統計処理部によって決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記複数の日以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻を設定することによって、上記複数の日以降の測定頻度を減らす
ことを特徴とする。
【0030】
この開示の血圧計の作動方法によれば、血圧測定を、夜間の血圧が最小を示す時間帯に限定して行ったり、上記データ蓄積処理の対象となった上記複数の日における測定回数に比して、上記複数の日以降の測定回数を減らしたりすることができる。したがって、夜間血圧測定を行う場合に、必要な血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる。特に、上記被験者について上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、上記被験者にとって重要な(つまり、必要な)血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる。
【0031】
さらに別の局面では、この開示のプログラムは、上記血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0032】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧計の作動方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上より明らかなように、この開示の血圧計および血圧計の作動方法によれば、夜間血圧測定を行う場合に、必要な血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる。この開示のプログラムによれば、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】この発明の一実施形態の手首式血圧計の外観を示す図である。
図2】血圧計のブロック構成を示す図である。
図3】上記血圧計が被測定部位としての左手首に装着された態様を示す図である。
図4A】測定姿勢としての座位を示す図である。
図4B】測定姿勢としての仰臥位を示す図である。
図5】上記血圧計によって通常の血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
図6】上記血圧計によって夜間血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
図7図7(A)は,血圧測定に伴うカフ圧PCの時間経過を示す図である。図7(B)は、血圧測定に伴う脈波信号SMの時間経過を示す図である。図7(C)は、上記脈波信号SMがなす脈波振幅の列に対して設定された包絡線ENVを示す図である。
図8】夜間血圧測定モードでの血圧算出の仕方を説明する図である。
図9】夜間の血圧変動パターンが分類され得る4つのタイプを例示する図である。
図10】上記血圧計において、被験者の夜間の血圧変動パターンのタイプ別に、夜間血圧測定のスケジュールを設定し直す時間検査モードの処理のフローを示す図である。
図11】上記血圧計において、被験者の夜間の血圧変動パターンのタイプ別に、夜間血圧測定のスケジュールを設定し直す態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
(血圧計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の手首式血圧計100の外観を示している。この血圧計100は、大別して、被測定部位としての左手首90(後述の図3参照)に装着されるべき血圧測定用カフ20と、このカフ20に一体に取り付けられた本体10とを備えている。
【0037】
カフ20は、手首式血圧計用の一般的なものであり、左手首90を周方向に沿って取り巻くように細長い帯状の形状を有している。このカフ20内には、左手首90を圧迫するための流体袋22(図2参照)が内包されている。なお、カフ20を常時環状に維持するために、カフ20内に、適度な可撓性を有するカーラが設けられてもよい。
【0038】
図3に示すように、本体10は、帯状のカフ20の長手方向に関して略中央の部位に、一体に取り付けられている。この例では、本体10が取り付けられた部位は、装着状態で左手首90の掌側面(手の平側の面)90aに対応することが予定されている。
【0039】
本体10は、カフ20の外周面に沿った偏平な略直方体状の形状を有している。この本体10は、ユーザ(この例では、被験者を指す。以下同様。)の睡眠の邪魔にならないように、小型で、薄厚に形成されている。また、本体10のコーナー部にはアールが施されている(角が丸くされている。)。
【0040】
図1に示すように、本体10の外面のうち左手首90から最も遠い側の面(頂面)には、表示画面をなす表示器50と、ユーザからの指示を入力するための操作部52とが設けられている。
【0041】
表示器50は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなり、後述のCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)110からの制御信号に従って所定の情報を表示する。この例では、最高血圧(単位;mmHg)、最低血圧(単位;mmHg)、脈拍数(単位;拍/分)を表示するようになっている。なお、表示器50は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなっていてもよいし、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を含んでいてもよい。
【0042】
操作部52は、ユーザによる指示に応じた操作信号を後述のCPU110に入力する。この例では、操作部52は、ユーザによる血圧測定指示を受け付けるための測定スイッチ52Aと、通常の血圧測定モードと夜間血圧測定モードとの間でモードを切り替える指示を受け付けるための夜間測定スイッチ52Bと、時刻検査モードの処理を実行する指示を受け付けるための時刻検査モードスイッチ52Cとを含んでいる。ここで、「通常の血圧測定モード」とは、測定スイッチ52Aによって血圧測定指示が入力されると、その血圧測定指示に応じて血圧測定を行うモードを意味する。「夜間血圧測定モード」とは、ユーザが睡眠中に血圧値を測定することができるように、予め定められたスケジュールに従って血圧測定が自動的に開始されるモードを意味する。予め定められたスケジュールとは、例えば深夜1時、2時、3時などの定刻に測定する計画や、夜間測定スイッチ52Bが押されてから例えば2時間毎に1回測定する計画などを指す。「時刻検査モード」とは、被験者の夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、夜間血圧測定モードのスケジュールを設定し直す処理を行うモードを意味する。
【0043】
具体的には、この例では、測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52B、時刻検査モードスイッチ52Cは、いずれもモーメンタリタイプ(自己復帰タイプ)のスイッチであり、押し下げられている間だけオン状態になり、離されるとオフ状態に戻る。
【0044】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に測定スイッチ52Aが一旦押し下げられると、それは血圧測定指示を意味し、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。血圧測定中(例えば、カフ20の加圧中)に測定スイッチ52Aが再び押し下げられると、それは血圧測定停止の指示を意味し、直ちに血圧測定が停止される。
【0045】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが一旦押し下げられると、それは夜間血圧測定モードへの移行の指示を意味し、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。夜間血圧測定モードでは、上述のように、予め定められたスケジュールに従ってオシロメトリック法による血圧測定が自動的に開始される。血圧計100が夜間血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが再び押し下げられると、それは夜間血圧測定モード停止の指示を意味し、血圧計100は夜間血圧測定モードから通常の血圧測定モードへ移行する。
【0046】
血圧計100が夜間血圧測定モードにある間であっても、上記予め定められたスケジュールとは別に、ユーザが、測定スイッチ52Aを押すことによって、割り込みで血圧測定を指示することがある。そのときは、その割り込みの血圧測定指示に応じて、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。
【0047】
血圧計100の電源がオンしている間(すなわち、通常の血圧測定モードまたは夜間血圧測定モードにある間)に時刻検査モードスイッチ52Cが一旦押し下げられると、それは時刻検査モードをオンする旨の開始指示を意味する。時刻検査モードの処理については、後に詳述する。なお、時刻検査モードの処理の一部(後述のデータ蓄積処理)は、夜間血圧測定モードのバックグラウンドで実行される。時刻検査モードがオンしている間に時刻検査モードスイッチ52Cが再び押し下げられると、それは時刻検査モードをオフする旨の指示を意味し、時刻検査モードはオフされる。
【0048】
図2は、血圧計100のブロック構成を示している。
【0049】
カフ20は、既述のように被測定部位としての左手首90を圧迫するための流体袋22を含んでいる。この流体袋22と本体10とは、エア配管39によって流体流通可能に接続されている。
【0050】
本体10は、既述の表示器50と操作部52とに加えて、制御部としてのCPU110と、記憶部としてのメモリ51と、電源部53と、圧力センサ31と、ポンプ32と、弁33とを搭載している。さらに、本体10は、圧力センサ31の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換回路310と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320と、弁33を駆動する弁駆動回路330とを搭載している。圧力センサ31、ポンプ32、および弁33は、エア配管39を通して共通に、流体袋22に対して流体流通可能に接続されている。
【0051】
メモリ51は、血圧計100を制御するためのプログラム、血圧計100を制御するために用いられるデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0052】
特に、この例では、メモリ51は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。ここで、「座位」とは、図4Aに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が椅子97などに座り、左肘をテーブル98に着いて左手首90を体幹に対して前方で斜め(手が上、肘が下)に挙げることにより、左手首90(および血圧計100)を心臓81の高さレベルに維持した姿勢を意味する。この姿勢は、ユーザ80の左手首90と心臓81との間の高低差を無くせるので、血圧測定精度を高めるために推奨される。一方、「仰臥位」とは、図4Bに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、左肘を伸ばし体幹に沿わせた状態で、水平な床面99などに仰向けに横たわった姿勢を意味する。この姿勢では、ユーザ80の左手首90(および血圧計100)と心臓81との間の高低差ΔHが生ずる(左手首90の高さよりも心臓81の高さが高い)ため、血圧測定値のずれが生ずる。また、座位(図4A)では左肘が曲げられているのに対して仰臥位(図4B)では左肘が伸ばされているため、左肘の屈伸のせいで血圧測定値のずれが生ずる可能性もある。このような座位での血圧測定値に対する仰臥位での血圧測定値のずれを解消するため、座位で血圧測定する場合の血圧算出アルゴリズムに対して、仰臥位で血圧測定する場合の血圧算出アルゴリズムを変更するのが望ましい。この理由から、この例では、メモリ51は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。それらのアルゴリズムを使用した具体的な血圧算出の仕方については、後述する。
【0053】
また、この例では、メモリ51は、不揮発性半導体記憶素子からなる時刻検査モードフラグ51Aを含んでいる。時刻検査モードフラグ51Aがセットされていれば、時刻検査モードがオンしていることを表す一方、時刻検査モードフラグ51Aが非セットであれば、時刻検査モードがオフしていることを表す。時刻検査モードフラグ51Aのセット、非セットは、特に切り替えられない限り、血圧計100の電源のオン、オフにかかわらず、維持される。
【0054】
図2中に示すCPU110は、この血圧計100全体の動作を制御する。具体的には、CPU110は、メモリ51に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って圧力制御部として働いて、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、CPU110は、血圧測定部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを使用して血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。
【0055】
電源部53は、この例では2次電池からなり、CPU110、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、A/D変換回路310、ポンプ駆動回路320、および弁駆動回路330の各部に電力を供給する。
【0056】
ポンプ32は、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して流体袋22に流体としての空気を供給する。弁33は、エア配管39を通して流体袋22の空気を排出し、または流体袋22に空気を封入してカフ圧を制御するために開閉される。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU110から与えられる制御信号に基づいて駆動する。弁駆動回路330は、弁33をCPU110から与えられる制御信号に基づいて開閉する。
【0057】
圧力センサ31とA/D変換回路310は、カフの圧力を検出する圧力検出部として働く。圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。A/D変換回路310は、圧力センサ31の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。この例では、CPU110は、圧力センサ31からの電気抵抗に応じた周波数で発振する発振回路として働いて、その発振周波数に応じて、カフ圧を表す信号を取得する。
【0058】
血圧計の作動方法
図5は、ユーザが血圧計100によって通常の血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示している。なお、この例では、電源オフ状態で測定スイッチ52Aが例えば3秒間以上連続して押されると、電源がオンして、デフォルトで通常の血圧測定モードになる。また、時刻検査モードフラグ51Aは非セット(したがって、時刻検査モードはオフ)であるものとする。
【0059】
図4Aに示したように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、座位の姿勢をとっているものとする。
【0060】
この状態で、図5のステップS1に示すように、ユーザが本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げて血圧測定指示を入力すると、CPU110は、圧力センサ31を初期化する(ステップS2)。具体的には、CPU110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ32をオフ(停止)し、弁33を開いた状態で、圧力センサ31の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0061】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS3)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS4)。このとき、CPU110は、ポンプ32からエア配管39を通して流体袋22に空気を供給しながら、圧力センサ31の出力に基づいて、図7(A)に示すように、流体袋22内の圧力であるカフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0062】
次に、図5のステップS5で、CPU110は血圧測定部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(図7(B)参照)に基づいて、メモリ51に記憶されている座位用のアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0063】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS6でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS4~S6の処理を繰り返す。
【0064】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、図7(B)に示す脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、図7(C)に示すような包絡線ENVを設定する。これとともに、包絡線ENVの最大値AmpMaxに対して、座位用に予め定められた割合αdia,αsysの2つのスレッシュレベルTHD1,THS1を設定する。THD1は、拡張期血圧用のスレッシュレベルであり、THD1=αdia×AmpMaxとして設定される。また、THS1は、収縮期血圧用のスレッシュレベルであり、THS1=αsys×AmpMaxとして設定される。一例として、αdia=0.75であり、また、αsys=0.4である(すなわち、THD1=0.75×AmpMaxとして設定され、また、THS1=0.4×AmpMaxとして設定される。)。そして、包絡線ENVがそれらのスレッシュレベルTHD1,THS1を横切った時点のカフ圧PCを、図7(A)に示すように、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia1、最高血圧(収縮期血圧)BPsys1として算出する。
【0065】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS6でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS7)、弁33を開いて(ステップS8)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0066】
また、CPU110は、ステップS4~S6の処理を繰り返す間、カフ圧PCから得られた脈波をカウントして、脈拍数(単位;拍/分)を算出する。
【0067】
この後、CPU110は、算出した血圧値、脈拍数を表示器50へ表示し(ステップS9)、血圧値、脈拍数などのデータをメモリ51へ保存する制御を行う。
【0068】
図6は、ユーザが血圧計100によって夜間血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示している。このフロー開始時に、血圧計100は、通常の血圧測定モードにあるものとする。また、時刻検査モードフラグ51Aは非セット(したがって、時刻検査モードはオフ)であるものとする。
【0069】
図6のステップS11に示すように、ユーザが本体10に設けられた夜間測定スイッチ52Bを押し下げると、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。この例では、夜間血圧測定モードでは、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、例えば1時間毎に1回測定するスケジュールが定められているものとする。なお、このスケジュールに限られるものではなく、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、午前1時、2時、3時のように定刻に測定するスケジュールが定められていてもよい。
【0070】
次に、図6のステップS12に示すように、CPU110は、(夜間血圧測定モードの)スケジュールで定められた測定時刻であるか否かを判断する。スケジュールで定められた測定時刻でなければ(ステップS12でNo)、スケジュールで定められた測定時刻になるのを待つ。
【0071】
上記スケジュールで定められた測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、図6のステップS13~S15に示すように、図5のステップS2~S4におけるのと同様に血圧測定を開始する。すなわち、CPU110は、まず、圧力センサ31を初期化する(ステップS13)。
【0072】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS14)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS15)。このとき、CPU110は、図7(A)に示したのと同様に、カフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0073】
次に、図6のステップS16で、CPU110は血圧測定部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(図7(B)に示したのと同様)に基づいて、仰臥位用のアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0074】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS17でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS15~S17の処理を繰り返す。
【0075】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、図8に示すような包絡線ENV(図7(C)に示したのと同様)を設定する。仰臥位用のアルゴリズムでは、図8中に示すように、拡張期血圧用のスレッシュレベルとして、THD1=0.75×AmpMaxに代えてTHD2=0.6×AmpMaxを用い、また、収縮期血圧用のスレッシュレベルとして、THS1=0.4×AmpMaxに代えてTHS2=0.5×AmpMaxを用いる。これにより、座位(図4A)での血圧測定値に対する仰臥位(図4B)での血圧測定値のずれを解消する。そして、包絡線ENVが現在設定されている仰臥位用のスレッシュレベルTHD2(=0.6×AmpMax)、THS2(=0.5×AmpMax)を横切った時点のカフ圧PCを、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia2、最高血圧(収縮期血圧)BPsys2として算出する。
【0076】
夜間血圧測定モードでは、通常、ユーザが仰臥位にあることが期待される。したがって、仰臥位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0077】
このようにして血圧値(今回の血圧値)の算出ができたら(ステップS17でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS18)、弁33を開いて(ステップS19)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0078】
また、CPU110は、ステップS15~S17の処理を繰り返す間、カフ圧PCから得られた脈波をカウントして、脈拍数(単位;拍/分)を算出する。
【0079】
この後、CPU110は、算出した血圧値、脈拍数を表示器50へ表示し(ステップS20)、血圧値、脈拍数などのデータを、メモリ51へ保存する制御を行う。
【0080】
このようにして上記スケジュールで定められた1回の血圧測定が完了すると、ステップS21で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。ここで、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS21で「未完」)、ステップS12に戻る。そして、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ(ステップS12でNo)。
【0081】
上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、ステップS13~S20の処理を繰り返す。さらに、ステップS21で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了すると(ステップS21で「終了」)、CPU110は、上記夜間血圧測定モードを終了する。
【0082】
(時刻検査モードの処理)
さて、上述の夜間血圧測定モードでは、夜間にカフ20によって被測定部位としての左手首90が頻繁に圧迫されるため、被験者の睡眠が阻害される可能性がある。ここで、既述のように、被験者の夜間の血圧変動パターンは、ディッパー(dipper)型、エクストリームディッパー(extreme-dipper)型、ノンディッパー(non-dipper)型、ライザー(riser)型の4つのタイプに分類され得る(非特許文献1;24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン(2010年改訂版))。より詳しくは、図9(苅尾七臣、「血圧日内変動」、脳卒中、2008、30巻6号、p931―937、インターネット< URL :https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/6/30_6_938/_pdf>より引用)に示すように、ディッパー型は、夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量10%から20%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するタイプである。エクストリームディッパー型は、夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量20%以上となるまで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇する上昇するタイプである。ノンディッパー型は、夜間の血圧が昼間の血圧平均に比して低下量ゼロから10%未満まで低下し、或る時間帯で最小を示した後、上昇するタイプである。ライザー型は、夜間の血圧平均が昼間の血圧平均よりも上昇するタイプである。
【0083】
上記ディッパー型、上記エクストリームディッパー型については、血圧の日内変動を把握する見地から、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯の血圧を測定することが重要である、と考えられる。また、上記ノンディッパー型、上記ライザー型については、血圧の日内変動を把握する見地から、夜間の血圧を網羅的に測定することが重要である、と考えられる。
【0084】
そこで、この例では、図10に示すような夜間血圧測定のための時刻検査モードの処理を実行する。
【0085】
最初に、血圧計100は、電源がオンして、通常の血圧測定モード(または夜間血圧測定モード)にあるものとする。この状態で、ユーザ(被験者)が予め定められた開始指示として時刻検査モードスイッチ52Cを押し下げると、それに応じて、CPU110は、時刻検査モードフラグ51A(図2参照)をセットする。これにより、図10のステップS31に示すように、時刻検査モードがオン(開始)される。
【0086】
時刻検査モードがオンされると、ステップS32に示すように、CPU110は蓄積処理部として働いて、その被験者について、複数の日(この例では、1週間)にわたってデータ蓄積処理を開始する。
【0087】
具体的には、図11(A)に示すように、時刻検査モードがオンされた直後の1週間(データ蓄積処理を行う期間)にわたって、毎日、夜間血圧測定モードのスケジュールを、例えば夜22時から早朝6時頃まで、第1の時間間隔としての30分間ごとに設定する。または、1時間ごとに設定してもよい。なお、図11の各段では、横軸に沿って時刻を表し、1回の血圧測定を1本の縦棒Pで表している。
【0088】
そして、CPU110は、その1週間にわたって、毎日、夜間血圧測定モードで、このスケジュールに従って、図6に示したフローによって血圧計100を動作させて血圧を測定させる。そして、CPU110は、測定された血圧値を順次、メモリ51に記憶させる(データ蓄積処理)。
【0089】
続いて、上記1週間にわたるデータ蓄積処理が完了次第、図10のステップS33に示すように、CPU110は統計処理部として働いて、その被験者について、上記1週間にわたってメモリ51に記憶された血圧値を統計処理して、夜間の血圧変動パターンが上記4つのタイプのうち何れのタイプに分類されるかを決定する。
【0090】
具体的には、CPU110は、まず、上記統計処理として、上記1週間にわたって毎日同じ時間帯ごとに取得された血圧値を、上記同じ時間帯ごとに平均して、時間帯ごとの平均値を求める。これにより、上記被験者について、図9中の夜22時から早朝6時頃までに示したのと同様の、夜間の血圧変動パターンが得られる。
【0091】
ここで、1週間にわたる時間帯ごとの平均値を求めれば、日ごとのばらつきが多少あったとしても、本発明者の経験から言って、時間帯ごとの平均値を適切に把握できる。また、通常、被験者は1週間をライフサイクルとして生活しているので、被験者の血圧値の日ごとのばらつきは、上記時間帯ごとの平均値に適切に反映される。この結果、この時間帯ごとの平均値が、夜間を通してどのように推移するかに応じて、上記被験者の夜間の血圧変動パターンを適切に把握できる。
【0092】
次に、CPU110は、上記被験者の夜間の血圧変動パターンが、ディッパー型、エクストリームディッパー型、ノンディッパー型、ライザー型ののうち何れのタイプに分類されるかを決定する。詳しくは、まず、夜間の血圧が昼間の血圧平均よりも低下するか、夜間の血圧(平均)が昼間の血圧平均よりも上昇するかによって、ディッパー型、エクストリームディッパー型、ノンディッパー型に分類されるか、ライザー型に分類されるかを大別する。それから、夜間の血圧の最小値が昼間の血圧平均に比してどの程度に相当するかに応じて、ディッパー型、エクストリームディッパー型、ノンディッパー型のうち何れに分類されるかを決定する。これにより、上記被験者の夜間の血圧変動パターンが、ディッパー型、エクストリームディッパー型、ノンディッパー型、ライザー型ののうち何れのタイプに分類されるかを、円滑に決定することができる。
【0093】
このようにした場合、非特許文献1(24時間血圧計の使用(ABPM)基準に関するガイドライン(2010年改訂版))に沿って、上記被験者の夜間の血圧変動パターンを適切に分類できる。
【0094】
続いて、図10のステップS34に示すように、CPU110はスケジュール再設定部として働いて、上記被験者について、上記決定された夜間の血圧変動パターンのタイプに応じて、上記1週間以降の測定頻度を減らすように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す処理を行う。
【0095】
例えば、上記決定された夜間の血圧変動パターンがディッパー型またはエクストリームディッパー型であり、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯が午前0時~午前0時30分であったとする。このとき、CPU110は、上記1週間以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、図11(B)上段、中上段に示すように、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻として午前0時を設定している。この理由は、上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型については、上述のように、血圧の日内変動を把握する見地から、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯の血圧を測定することが重要である、と考えられるからである。図11(B)上段のディッパー型の例では、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯相当する時刻として午前0時のみを設定しているが、図11(B)中上段のエクストリームディッパー型の例では、午前0時に加えて、その時刻よりも後の最大を示す時間帯に相当する時刻として午前6時を設定している。この理由は、上記エクストリームディッパー型については、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯の後、急激に上昇する血圧値(この例では、午前6時頃に急激に血圧が上昇したとする。)に注意を払うことが重要である、と考えられるからである。
【0096】
これにより、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ディッパー型または上記エクストリームディッパー型であるとき、被験者にとって重要な(つまり、必要な)血圧値のデータを取得することができる。特に、図11(B)上段のディッパー型の例のように、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールを、上記夜間の血圧が最小を示す時間帯に相当する時刻(上の例では、午前0時)に限定すれば、血圧測定の頻度を一夜当たり1回に減らすことができる。これにより、上記1週間以降、被験者の睡眠が阻害される回数を減らすことができる。
【0097】
また、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型、上記ライザー型であるとき、CPU110は、上記1週間以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、上記第1の時間間隔(上の例では、図11(A)に示したように30分間間隔)よりも長い第2の時間間隔に切り替える。例えば、図11(B)中下段のノンディッパー型の例では、上記1週間以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、睡眠開始から2時間後の時刻である午前0時を設定するとともに、午前0時から第2の時間間隔としての2時間間隔で、午前2時、午前4時を設定している。また、図11(B)下段のライザー型の例では、上記1週間以降の、上記夜間血圧測定モードの上記スケジュールとして、睡眠開始から1時間後の時刻である23時を設定するとともに、第2の時間間隔としての3時間を空けて午前2時、さらに第2の時間間隔としての2時間を空けて午前4時を設定している。この理由は、上記ノンディッパー型、上記ライザー型については、上述のように、血圧の日内変動を把握する見地から、夜間の血圧を網羅的に測定することが重要である、と考えられるからである。
【0098】
これにより、上記決定された夜間の血圧変動パターンが上記ノンディッパー型または上記ライザー型であるとき、被験者にとって重要な(つまり、必要な)血圧値のデータを取得することができる。しかも、上記データ蓄積処理の対象となった上記1週間における測定回数(図11(A)の例では、一夜当たり17回)に比して、上記1週間以降の測定回数を減らすことができる。例えば、図11(B)中下段、下段の例では、一夜当たり3回に減らしている。これにより、上記複数の日以降、被験者の睡眠が阻害される回数を減らすことができる。
【0099】
このように、この血圧計100では、血圧測定を、夜間の血圧が最小を示す時間帯に限定して行ったり、データ蓄積処理(図10のステップS32)の対象となった上記1週間における測定の時間間隔に比して、上記1週間以降の測定の時間間隔を長くしたりすることができる。したがって、夜間血圧測定を行う場合に、必要な血圧値のデータを取得しながら、血圧測定の頻度を減らすことができる。なお、データ蓄積処理のための期間は、上述の1週間に限られるものではなく、例えば2週間、3週間などであってもよい。
【0100】
スケジュールの再設定が完了すると、図10のステップS35に示すように、CPU110は、時刻検査モードフラグ51A(図2参照)を非セットにして、時刻検査モードをオフ(終了)する。
【0101】
上述のように、この血圧計100では、ユーザ(主に、被験者)が上記開始指示として時刻検査モードスイッチ52Cを押し下げれば(図10のステップS31)、CPU110は、上記データ蓄積処理(ステップS32)を開始し、上記データ蓄積処理が完了次第、上記統計処理(ステップS33)から、上記スケジュールを設定し直す処理(ステップS34)までを連続して実行する。これにより、自動的に上記スケジュールが設定し直される。したがって、ユーザにとって、夜間血圧測定モードの上記スケジュールを設定し直す手間が実質的にかからず、便利である。
【0102】
また、この血圧計100は、被測定部位としての手首(上の例では左手首90としたが、右手首でもよい。)を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、ユーザ(被験者)の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計100は、夜間血圧測定に適する。
【0103】
また、この血圧計100は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成されているので、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0104】
(変形例)
なお、上述の実施形態では、カフ20(流体袋22)の加圧過程で血圧を算出したが、これに限られるものではない。カフ20の減圧過程で血圧を算出してもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、本体10に設けられた操作部としての測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52B、時刻検査モードスイッチ52Cによって、それぞれ血圧測定指示、夜間血圧測定モードへの移行指示、時刻検査モードの開始指示を入力したが、これに限られるものではない。例えば、本体10に無線通信が可能な通信部を搭載して、この通信部を介して、血圧計100の外部に存在するスマートフォン等から血圧測定指示、夜間血圧測定モードへの移行指示、時刻検査モードの開始指示を入力してもよい
【0106】
また、上述の実施形態では、本体10がカフ20と一体に設けられているものとしたが、これに限られるものではない。本体10は、カフ20と別体として構成され、可撓性のエアチューブを介してカフ20(流体袋22)と流体流通可能に接続されているものとしてもよい。
【0107】
上述の血圧計の作動方法(特に、図5図6図10の動作フロー)を、ソフトウェア(コンピュータプログラム)として、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的(non-transitory)にデータを記憶可能な記録媒体に記録してもよい。このような記録媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、上述の血圧計の作動方法を実行させることができる。
【0108】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 本体
20 血圧測定用カフ
50 表示器
51 メモリ
51A 時刻検査モードフラグ
52 操作部
52A 測定スイッチ
52B 夜間測定スイッチ
52C 時刻検査モードスイッチ
110 CPU
図1
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図4A
図4B
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