(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】植物生体センサ
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240409BHJP
G01F 1/684 20060101ALI20240409BHJP
A01G 9/18 20060101ALI20240409BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G01F1/684 Z
A01G9/18
A01G9/24 A
(21)【出願番号】P 2019200153
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昌
(72)【発明者】
【氏名】清水 良治
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 宗治
(72)【発明者】
【氏名】宮地 孝明
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-078116(JP,A)
【文献】特開2019-109104(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188848(WO,A1)
【文献】特開2016-065868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G01F 1/684
A01G 9/14 - 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の環境情報および生体情報を測定する植物生体センサであって、
前記植物に照射される日射量を測定する日射センサと、
前記植物の体内を流れる樹液の流量を測定する樹液流センサと、
前記植物の栄養状態を測定する吸収養分センサと
を備え
、
前記植物が、樹液が流れる第1構造部を有し、
前記樹液流センサが、
表面に熱絶縁層が設けられた収容部を内部に有すると共に、前記第1構造部に対して前記第1構造部が延びる方向まわりに取り付け可能な第2ケーシングと、
前記収容部の内部に配置されて、前記第1構造部を加熱するヒータ部と、
前記収容部の内部に配置されて、前記第2ケーシングを前記第1構造部に取り付けた状態における前記第1構造部が延びる第1方向の前記ヒータ部に対する両側で、前記第1構造部を流れる樹液の温度を測定する温度センサ部と、
前記温度センサ部で測定された前記第1構造部を流れる樹液の温度に基づいて、前記第1構造部を流れる樹液の流量を測定する流量測定部と
を有し、
前記第2ケーシングが、
前記ヒータ部および前記温度センサ部を通る直線上に配置され、前記第2ケーシングを前記直線が延びる方向に貫通すると共に、その内周にねじ溝が設けられたねじ孔を有し、
前記樹液流センサが、
前記ねじ孔を介して前記収容部の外部から前記収容部の内部まで延びて前記温度センサ部に接続されている共に、外周に前記ねじ溝に嵌合するねじ山が設けられ、前記直線まわりに回転させることで前記直線が延びる方向に移動可能な位置調整部材を有する、植物生体センサ。
【請求項2】
前記日射センサで測定された前記日射量、前記樹液流センサで測定された前記樹液の流量、および、前記吸収養分センサで測定された前記植物の栄養状態に関する情報を送信する通信装置と、
前記日射センサおよび前記通信装置を内部に収容する第1ケーシングと
をさらに備え、
前記第1ケーシングが、
前記樹液流センサが接続される第1接続部と、
前記吸収養分センサが接続される第2接続部と
を有し、
前記日射センサおよび前記通信装置が、前記第1ケーシングの一端に配置され、
前記第1接続部および前記第2接続部が、前記一端に対向する前記第1ケーシングの他端に配置されている、請求項1の植物生体センサ。
【請求項3】
前記植物まわりの空気における二酸化炭素の量を測定する二酸化炭素センサをさらに備え、
前記二酸化炭素センサが、
前記第1ケーシングに収容され、前記第1ケーシングの前記一端と前記他端との中間に配置されている、請求項2の植物生体センサ。
【請求項4】
前記植物まわりの温度および湿度を測定する温湿度センサをさらに備え、
前記温湿度センサが、
前記第1ケーシングに収容され、前記第1ケーシングの前記一端と前記他端との中間に配置されている、請求項2または3の植物生体センサ。
【請求項5】
前記植物まわりの空気における揮発性有機化合物の量を測定するVOCセンサをさらに備え、
前記VOCセンサが、
前記第1ケーシングに収容され、前記第1ケーシングの前記一端と前記他端との中間に配置されている、請求項2から4のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項6】
前記ヒータ部と前記温度センサ部とが、前記第2ケーシングを前記第1方向に交差する第2方向において、前記第1構造部を挟んで向かい合うように配置されている、請求項1
から5のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項7】
前記ヒータ部と前記温度センサ部とが、前記第1方向および前記第1方向に交差する第2方向を含む平面視において、前記第1構造部に対して同じ側に位置するように配置されている、請求項1
から5のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項8】
前記ヒータ部が、
第1面と、
前記第1面に交差するように配置された第2面と
を有し、
前記第1面および前記第2面の各々に弾性を有する伝熱シートがそれぞれ設けられ、前記第1面および前記第2面の各々と前記第1構造部とが前記伝熱シートを介して接触する、請求項
1から
7のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項9】
前記第2ケーシングが、
前記第1方向の両端にそれぞれ設けられ、前記第2ケーシングを前記第1方向に貫通して前記第1構造部を配置可能な一対の第1貫通孔と、
前記一対の第1貫通孔の少なくともいずれかに設けられ、前記第1構造部を前記第1方向に交差する第2方向において挟持可能な一対の第1弾性部材と
を有する、請求項
1から
8のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項10】
前記植物が、樹液が流れる第2構造部を有し、
前記吸収養分センサが、
前記第2構造部に対して前記第2構造部が延びる方向まわりに取り付け可能な第3ケーシングと、
前記第3ケーシングの内部に設けられ、前記第2構造部を前記第2構造部が延びる方向に交差する方向において挟持可能な挟持部と、
前記第3ケーシングの内部に設けられ、前記第2構造部の栄養状態を測定可能な栄養状態センサ部と
を備える、請求項1から
9のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項11】
前記挟持部が、
前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部が延びる第3方向に交差する第4方向に沿って移動可能に配置された第1挟持部材と、
前記第3ケーシングを前記第4方向において、前記第1挟持部材に対向するように配置され、前記第3ケーシングに固定された第2挟持部材と、
前記第1挟持部材を前記第4方向でかつ前記第2挟持部材に接近する方向に付勢する付勢部材と
を有する、請求項
10の植物生体センサ。
【請求項12】
前記第1挟持部材および前記第2挟持部材の各々が、相互に離れる方向に窪んで前記第2構造部が配置される凹部をそれぞれ有する、請求項
11の植物生体センサ。
【請求項13】
前記吸収養分センサが、
前記第3ケーシングが取り付けられた状態の前記第2構造部に向かって光を照射する投光部と、
前記第2構造部からの光を受光する受光部と
を有する、請求項
10から
12のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項14】
前記投光部が、
光を発生させる発光素子と、
前記発光素子で発生した光を前記第2構造部に導く投光ファイバと
を有し、
前記受光部が、
光を受光する受光素子と、
前記第2構造部からの光を前記受光素子に導く受光ファイバと
を有する、請求項
13の植物生体センサ。
【請求項15】
前記投光部と前記受光部とが、前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部が延びる第3方向と前記第3方向に交差する第4方向とを含む平面視において、前記第3ケーシングが前記第2構造部に取り付けられた状態で、前記第2構造部に対して同じ側に配置され、
前記投光ファイバと前記受光ファイバとがV字形状となるように配置されている、請求項
14の植物生体センサ。
【請求項16】
前記投光部と前記受光部とが、前記第3ケーシングが前記第2構造部に取り付けられた状態で、前記第2構造部に対して対向するように配置されている、請求項
14の植物生体センサ。
【請求項17】
前記第3ケーシングが、
前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部が延びる第3方向の両端にそれぞれ設けられ、前記第3ケーシングを貫通して前記第2構造部を配置可能な一対の第2貫通孔と、
前記一対の第2貫通孔の少なくともいずれかに設けられ、前記第2構造部を前記第3方向に交差する第4方向において挟持可能な一対の第2弾性部材と
を有する、請求項
10から
16のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項18】
前記樹液流センサで測定された樹液の流量から前記植物で行われる光合成量を測定する第1測定部と、
前記吸収養分センサで測定された前記植物の栄養状態から前記植物の栄養成長度を測定する第2測定部と、
前記第1測定部で測定された前記植物の光合成量と、前記第2測定部で測定された前記植物の栄養成長度とに基づいて、前記植物の生殖成長度を算出する算出部と
を備える、請求項1から
17のいずれか1つの植物生体センサ。
【請求項19】
樹液が流れる第1構造部を有する植物の体内を流れる樹液の流量を測定する樹液流センサであって、
表面に熱絶縁層が設けられた収容部を内部に有すると共に、前記第1構造部に対して前記第1構造部が延びる方向まわりに取り付け可能な第2ケーシングと、
前記収容部の内部に配置されて、前記第1構造部を加熱するヒータ部と、
前記収容部の内部に配置されて、前記第2ケーシングを前記第1構造部に取り付けた状態における前記第1構造部が延びる第1方向の前記ヒータ部に対する両側で、前記第1構造部を流れる樹液の温度を測定する温度センサ部と
前記温度センサ部で測定された前記第1構造部を流れる樹液の温度に基づいて、前記第1構造部を流れる樹液の流量を測定する流量測定部と
を備え
、
前記第2ケーシングが、
前記ヒータ部および前記温度センサ部を通る直線上に配置され、前記第2ケーシングを前記直線が延びる方向に貫通すると共に、その内周にねじ溝が設けられたねじ孔を有し、
前記ねじ孔を介して前記収容部の外部から前記収容部の内部まで延びて前記温度センサ部に接続されている共に、外周に前記ねじ溝に嵌合するねじ山が設けられ、前記直線まわりに回転させることで前記直線が延びる方向に移動可能な位置調整部材を有する、樹液流センサ。
【請求項20】
前記ヒータ部と前記温度センサ部とが、前記第2ケーシングを前記第1方向に交差する第2方向において、前記第1構造部を挟んで向かい合うように配置されている、請求項
19の樹液流センサ。
【請求項21】
前記ヒータ部と前記温度センサ部とが、前記第1構造部に対して同じ側に位置するように配置されている、請求項
19の樹液流センサ。
【請求項22】
前記ヒータ部が、
第1面と、
前記第1面に交差するように配置された第2面と
を有し、
前記第1面および前記第2面の各々に弾性を有する伝熱シートがそれぞれ設けられ、前記第1面および前記第2面の各々と前記第1構造部とが前記伝熱シートを介して接触する、請求項
19から
21のいずれか1つの樹液流センサ。
【請求項23】
前記第2ケーシングが、
前記第1方向の両端にそれぞれ設けられ、前記第2ケーシングを前記第1方向に貫通して前記第1構造部を配置可能な一対の第1貫通孔と、
前記一対の第1貫通孔の少なくともいずれかに設けられ、前記第1構造部を前記第1方向に交差する第2方向において挟持可能な一対の第1弾性部材と
を有する、請求項
19から
22のいずれか1つの樹液流センサ。
【請求項24】
樹液が流れる第2構造部を有する植物の栄養状態を測定する吸収養分センサであって、
前記第2構造部に対して前記第2構造部が延びる方向まわりに取り付け可能な第3ケーシングと、
前記第3ケーシングの内部に設けられ、前記第2構造部を前記第2構造部が延びる方向に交差する方向において挟持可能な挟持部と、
前記第3ケーシングの内部に設けられ、前記第2構造部の栄養状態を測定可能な栄養状態センサ部と
を備え
、
前記第3ケーシングが、
前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部が延びる第3方向の両端にそれぞれ設けられ、前記第3ケーシングを貫通して前記第2構造部を配置可能な一対の第2貫通孔と、
前記一対の第2貫通孔の少なくともいずれかに設けられ、前記第2構造部を前記第3方向に交差する第4方向において挟持可能な一対の第2弾性部材と
を有する、吸収養分センサ。
【請求項25】
前記挟持部が、
前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部が延びる第3方向に交差する第4方向に沿って移動可能に配置された第1挟持部材と、
前記第3ケーシングを前記第4方向において、前記第1挟持部材に対向するように配置され、前記第3ケーシングに固定された第2挟持部材と、
前記第1挟持部材を前記第4方向でかつ前記第2挟持部材に接近する方向に付勢する付勢部材と
を有する、請求項
24の吸収養分センサ。
【請求項26】
前記第1挟持部材および前記第2挟持部材の各々が、相互に離れる方向に窪んで前記第2構造部が配置される凹部をそれぞれ有する、請求項
25の吸収養分センサ。
【請求項27】
前記吸収養分センサが、
前記第3ケーシングが取り付けられた状態の前記第2構造部に向かって光を照射する投光部と、
前記第2構造部からの光を受光する受光部と
を有する、請求項
24から
26のいずれか1つの吸収養分センサ。
【請求項28】
前記投光部が、
光を発生させる発光素子と、
前記発光素子で発生した光を前記第2構造部に導く投光ファイバと
を有し、
前記受光部が、
光を受光する受光素子と、
前記第2構造部からの光を前記受光素子に導く受光ファイバと
を有する、請求項
27の吸収養分センサ。
【請求項29】
前記投光部と前記受光部とが、前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部が延びる第3方向と前記第3方向に交差する第4方向とを含む平面視において、前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部に対して同じ側に配置され、
前記投光ファイバと前記受光ファイバとがV字形状となるように配置されている、請求項
28の吸収養分センサ。
【請求項30】
前記投光部と前記受光部とが、前記第3ケーシングを前記第2構造部に取り付けた状態における前記第2構造部に対して対向するように配置されている、請求項
28の吸収養分センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物の環境情報および生体情報を測定可能な植物生体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温室の環境制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記環境制御方法では、温室内の環境情報である光強度、温度および湿度に基づいて、温室内の環境を調整するための各種装置が制御される。このため、温室内の個々の植物に対して最適な環境を提供することができない場合がある。
【0005】
本開示は、植物の環境情報および生体情報を測定可能な植物生体センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例の植物生体センサは、
植物の環境情報および生体情報を測定する植物生体センサであって、
前記植物に照射される日射量を測定する日射センサと、
前記植物の体内を流れる樹液の流量を測定する樹液流センサと、
前記植物の栄養状態を測定する吸収養分センサと
を備える。
【0007】
ここで、「環境情報」は、測定対象となる植物の環境に関する情報であり、日射量、二酸化炭素量、湿度、温度および揮発性有機化合物量等を含む。「生体情報」は、測定対象となる植物の生体情報に関する情報であり、樹液の流量および栄養状態等を含む。また、「栄養状態」は、例えば、植物の体内における所定の物質の成分量で示される。所定の物質には、硝酸態窒素、炭水化物、タンパク質、ミネラル成分、抗酸化物質および水分が含まれる。
【発明の効果】
【0008】
前記植物生体センサによれば、植物に照射される日射量を測定する日射センサと、植物の体内を流れる樹液の流量を測定する樹液流センサと、植物の栄養状態を測定する吸収養分センサとを備えている。このような構成により、例えば、温室内の個々の植物の生体情報を測定可能な植物生体センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態の植物生体センサの構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の植物生体センサの樹液流センサを示す斜視図。
【
図3】
図2の樹液流センサの第2ケーシングを開放した状態を示す斜視図。
【
図6】
図1の植物生体センサの吸収養分センサを示す斜視図。
【
図7】
図6の吸収養分センサの第3ケーシングを開放した状態を示す斜視図。
【
図10】
図1の植物生体センサで測定された情報の使用例を説明するための第1の図。
【
図11】
図1の植物生体センサで測定された情報の使用例を説明するための第2の図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0011】
本開示の一実施形態の植物生体センサ1は、
図1に示すように、日射センサ10と、樹液流センサ20と、吸収養分センサ30とを備え、測定対象の植物の環境情報および生体情報を測定する。
【0012】
植物生体センサ1は、一例として、ケーシング2(以下、第1ケーシング2という。)をさらに備え、その内部に日射センサ10が収容されている。具体的には、第1ケーシング2の内部には、基板(図示せず)が設けられ、この基板に、日射センサ10、通信装置11、第1接続部12、第2接続部13、二酸化炭素センサ14、温湿度センサ15、VOCセンサ16および演算装置17(算出部の一例)が実装されている。日射センサ10および通信装置11は、第1ケーシング2の一端(例えば、
図1の上端)に配置され、第1接続部12および第2接続部13は、第1ケーシング2の一端に対向する他端(例えば、
図1の下端)に配置されている。
【0013】
日射センサ10は、測定対象の植物に照射される日射量を測定する。詳しくは、日射センサ10は、測定対象の植物まわりに照射される日射量を測定し、この日射量を植物に照射されている日射として測定する。
【0014】
通信装置11は、日射センサ10、樹液流センサ20および吸収養分センサ30を含む各センサで測定された測定結果に関する情報を受信すると共に、受信した測定結果に関する情報を無線または有線で接続された外部装置に送信する。なお、受信した測定結果に関する情報を無線で送信する場合、Wi-Fi(ワイファイ:ブランド名)、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信規格を用いることができる。
【0015】
第1接続部12は、樹液流センサ20が接続され、樹液流センサ20で測定された測定結果に関する情報を受信する。第1接続部12と樹液流センサ20とは、例えば、電線41で接続されている。第2接続部13は、吸収養分センサ30が接続され、吸収養分センサ30で測定された測定結果に関する情報を受信する。第2接続部13と吸収養分センサ30とは、例えば、光ファイバ42で接続されている。なお、第1接続部12と樹液流センサ20との間の接続は、任意の通信規格の無線通信で接続されていてもよい。
【0016】
二酸化炭素センサ14は、測定対象の植物まわりの空気における二酸化炭素の量を測定する。温湿度センサ15は、測定対象の植物まわりの温度および湿度を測定する。VOCセンサ16は、測定対象の植物まわりの空気における揮発性有機化合物の量を測定する。
【0017】
演算装置17は、演算を行うCPU、情報を記憶するROMおよびRAM等で構成され、後述する流量測定部27で測定された植物の光合成量と、後述する成長度測定部38で測定された植物の栄養成長度とに基づいて、植物の生殖成長度を算出する。流量測定部27で測定された植物の光合成量については、第1接続部12を介して樹液流センサ20から取得される。また、成長度測定部38で測定された植物の栄養成長度については、第2接続部13を介して吸収養分センサ30から取得される。
【0018】
なお、「栄養成長度」とは、幹、枝、茎、葉等の成長状態を示す度合いである。また、「生殖成長度」とは、花、つぼみ、実等の成長状態を示す度合いである。
【0019】
植物生体センサ1を構成する各種センサ、通信装置11および演算装置17は、一例として、第1ケーシング2の内部に収容されたバッテリー(図示せず)に電気的に接続され、バッテリーから電力が供給される。
【0020】
樹液流センサ20は、
図2~
図5に示すように、内部に収容部25が設けられたケーシング21(以下、第2ケーシング21という。)と、収容部25の内部に配置されたヒータ部22および温度センサ部23とを有している。この樹液流センサ20では、一例として、
図4および
図5に示すように、ヒータ部22と温度センサ部23とが、第2ケーシング21を主茎101(樹液が流れる第1構造部の一例)に取り付けた状態で、主茎101の径方向(例えば、
図4および
図5に示すY方向)において主茎101を挟んで向かい合うように配置されている。
【0021】
第2ケーシング21は、
図2に示すように、略直方体の箱状で、測定対象の植物の主茎101に対して、主茎101が延びる方向(例えば、X方向)まわりに取り付け可能に構成されている。具体的には、第2ケーシング21は、
図3に示すように、ヒンジ213を介して回転可能に接続された2つの部材211で構成されている。各部材211は、それぞれ開口面212を有し、開口面212同士が対向した状態で接続されている。ヒンジ213は、第2ケーシング21の長手方向に延びて、各部材211の開口面212における短手方向の一方の側縁に配置されている。なお、
図1に示すように、第2ケーシング21の開口面212における短手方向の他方の側面には、各部材211をスナップフィット接続する接続機構29が設けられている。
【0022】
図3に示すように、収容部25の表面(言い換えると、第2ケーシング21の内面)には、熱絶縁層26が設けられている。熱絶縁層26は、閉空間(空気もしくは真空)または熱絶縁性の高い材料(例えば、スポンジ)で構成されている。熱絶縁層26を設けることにより、収容部25の外部に熱を逃さずに主茎101に対して熱を効率的に与えることができると共に、ヒータ部22と温度センサ部23との間の熱絶縁を確保することができる。一例として、熱絶縁層26は、ヒータ部22、温度センサ部23および後述する一対の貫通孔214、215を除く収容部25の表面全体に設けられている。
【0023】
また、第2ケーシング21は、
図3に示すように、第2ケーシング21を主茎101に取り付けた状態における主茎101が延びる第1方向(例えば、X方向)の両端にそれぞれ設けられた一対の貫通孔214、215(一対の第1貫通孔の一例)と、各貫通孔214、215にそれぞれ設けられた一対の弾性部材216、217(一対の第1弾性部材の一例)とを有している。
【0024】
各貫通孔214、215は、主茎101を配置可能な略円形状を有し、X方向に第2ケーシング21を貫通している。各弾性部材216、217は、例えば、スポンジで構成され、第2ケーシング21を構成する各部材211にそれぞれ配置されている。言い換えると、各弾性部材216、217は、第2ケーシング21を主茎101に取り付けた状態において、主茎101を主茎101の径方向(言い換えると、第1方向に交差する第2方向)から挟持可能に配置されている。各弾性部材216、217により、樹液流センサ20が測定対象の植物から脱落するのを防止している。
【0025】
第2ケーシング21のX方向の両端には、結束バンド110を取り付けるためのバンド取付部28がそれぞれ設けられている。結束バンド110を用いて第2ケーシング21と主茎101とを接続することで、樹液流センサ20が測定対象の植物から脱落するのをより確実に防止できる。
【0026】
ヒータ部22は、
図3に示すように、収容部25の内部で、主茎101を加熱可能に配置されている。詳しくは、ヒータ部22は、第1面と、第1面に交差するように配置された第2面とで構成された略V字形状を有している。第1面および第2面の各々には、
図3に示すように、伝熱シート221がそれぞれ設けられている。言い換えると、ヒータ部22は、第1面および第2面の各々が主茎101に対して伝熱シート221を介して接触するように構成されている。
【0027】
温度センサ部23は、
図3に示すように、収容部25の内部で、第2ケーシング21を主茎101に取り付けた状態における主茎101が延びる方向(例えば、X方向)のヒータ部22に対する両側で、主茎101を流れる樹液の温度を測定可能に配置されている。詳しくは、温度センサ部23は、X方向が長手方向となる矩形板状の本体部231と、本体部231のヒータ部22に対向する面に設けられた一対の温度センサ232とを有している。各温度センサ232は、本体部231からヒータ部22に向かって突出する略円柱形状で、X方向に間隔を空けて配置されている。各温度センサ232の先端が主茎101に接触して、主茎101を流れる樹液の温度が測定される。
【0028】
また、樹液流センサ20は、
図3に示すように、位置調整機構24を有している。位置調整機構24は、
図4および
図5に示すように、第2ケーシング21に設けられたねじ孔218と、位置調整部材241とで構成されている。
【0029】
ねじ孔218は、位置調整部材241を挿入可能な形状で、第2ケーシング21におけるヒータ部22および温度センサ部23を通る直線L上に配置され、第2ケーシング21を直線Lが延びる方向(例えば、Y方向)に貫通する。ねじ孔218の内周には、ねじ溝(図示せず)が設けられている。直線Lは、第2ケーシング21を主茎101に取り付けた状態において、主茎101の径方向に沿って延びている。なお、直線Lが延びる方向における第2ケーシング21の外周面には、ボス部219が設けられている。ねじ孔218は、このボス部219を直線Lが延びる方向に貫通している。
【0030】
位置調整部材241は、一例として、細長い略円柱形状で、ねじ孔218を介して収容部25の外部から収容部25の内部まで延びて温度センサ部23の本体部231に接続されている。位置調整部材241の外周には、ねじ孔218のねじ溝に嵌合するねじ山(図示せず)が設けられている。位置調整部材241は、直線Lまわりに回転させることで直線Lが延びる方向に移動可能に構成されている。言い換えると、位置調整部材241を直線Lまわりに回転させることで、温度センサ部23を直線Lが延びる方向に移動させて(
図4および
図5参照)、位置調整を行うことができる。なお、位置調整部材241における収容部25の外部側の端部には、ねじ孔218よりも大きい径を有する略円柱形状の操作部242が設けられている。この操作部242により位置調整部材241の回転操作を容易にしている。
【0031】
図1に示すように、樹液流センサ20は、流量測定部27をさらに有している。流量測定部27は、演算を行うCPU、情報を記憶するROMおよびRAM、情報を第1接続部12に送信する通信装置等で構成され、温度センサ部23で測定された主茎101の体内を流れる樹液の温度に基づいて、主茎101の体内を流れる樹液の流量を測定する。また、流量測定部27は、測定された樹液の流量から植物で行われる光合成量を測定する。すなわち、流量測定部27は、第1測定部の一例である。樹液流センサ20で測定および測定された結果に関する情報は、電線41を介して第1接続部12に送信される。
【0032】
ヒータ部22、温度センサ部23および流量測定部27の各々は、一例として、第2ケーシング21の内部に収容されたバッテリー(図示せず)に電気的に接続され、バッテリーから電力が供給される。
【0033】
吸収養分センサ30は、
図6~
図9に示すように、ケーシング31(以下、第3ケーシング31という。)と、第3ケーシング31の内部に設けられた挟持部32および栄養状態センサ部33とを有している。
【0034】
第3ケーシング31は、
図6に示すように、植物の葉柄102(樹液が流れる第2構造部の一例)に対して葉柄102が延びる方向(例えば、Y方向)まわりに取り付け可能に構成されている。葉柄102は、一例として、主茎101が延びる方向(例えば、X方向)に対して交差する方向に延びている。
【0035】
具体的には、第3ケーシング31は、
図6および
図7に示すように、全体として略T字状で、
図8および
図9に示すように、内部に挟持部32が収容された第1部材311と、内部に栄養状態センサ部33が収容された第2部材312とで構成されている。
【0036】
第1部材311は、略矩形の板状で、長手方向の一端に第2部材312が接続されている。第1部材311の長手方向の他端には、光ファイバ42が接続される接続部34と、吸収養分センサ30を吊るすケーブル120(
図1参照)が取り付けられる略円弧形状のケーブル取付部35とが設けられている。第2部材312は、略直方体の箱状で、第1部材311の短手方向が長手方向となるように配置されている。第2部材312は、ヒンジ313を介して回転可能に接続された2つの部材314で構成されている。各部材314は、それぞれ開口面315を有し、開口面315同士が対向した状態で接続されている。ヒンジ313は、第3ケーシング31の長手方向に延びて、各部材314の開口面315における短手方向の一方の側縁に配置されている。なお、
図6に示すように、第3ケーシング31の開口面315における短手方向の他方の側面には、各部材314をスナップフィット接続する接続機構36が設けられている。
【0037】
また、第2部材312は、
図6および
図7に示すように、第3ケーシング31を葉柄102に取り付けた状態における葉柄102が延びる方向(例えば、Y方向)の両端にそれぞれ設けられた一対の貫通孔316、317(一対の第2貫通孔の一例)と、各貫通孔316、317にそれぞれ設けられた一対の弾性部材318、319(一対の第2弾性部材の一例)とを有している。
【0038】
各貫通孔316、317は、葉柄102を配置可能な略円形状を有し、Y方向に第3ケーシング31を貫通している。各弾性部材318、319は、例えば、スポンジで構成され、第2部材312を構成する各部材314にそれぞれ配置されている。言い換えると、各弾性部材318、319は、第3ケーシング31を葉柄102に取り付けた状態において、葉柄102を葉柄102の径方向から挟持可能に配置されている。各弾性部材318、319により、吸収養分センサ30が測定対象の植物から脱落するのを防止している。
【0039】
図6および
図7に示すように、第2部材312における第1部材311が接続されている面には、結束バンド110を取り付けるためのバンド取付部37が設けられている。結束バンド110を用いて第2部材312と主茎101とを接続することで、吸収養分センサ30が測定対象の植物から脱落するのをより確実に防止できる。
【0040】
挟持部32は、
図8および
図9に示すように、第1挟持部材321と、第1挟持部材321に対向するように配置された第2挟持部材322と、第1挟持部材321を第2挟持部材322に向かって付勢する付勢部材323とを有している。第1挟持部材321は、第3ケーシング31を葉柄102に取り付けた状態における葉柄102の径方向(言い換えると、葉柄102に取り付けた状態における葉柄102が延びる第3方向に交差する第4方向(例えば、X方向))に移動可能に配置されている。第2挟持部材322は、X方向において第1挟持部材321に対向するように配置され、第3ケーシング31に固定されている。付勢部材323は、例えば、コイルばねで構成され、X方向における第1挟持部材321と第3ケーシング31の第2部材312側の底面との間に配置されている。
【0041】
第1挟持部材321および第2挟持部材322の各々は、相互に離れる方向に窪んで葉柄102が配置される凹部324をそれぞれ有している。各凹部324は、葉柄102の外形形状に沿って湾曲している。
【0042】
栄養状態センサ部33は、一例として、植物の測定部位に向かって光を照射する投光部331と、植物の測定部位からの光を受光する受光部332とを有している。この栄養状態センサ部33は、受光部332で受光した光から、葉柄102(測定部位の一例)の栄養状態を測定する。投光部331は、例えば、ウォーミングアップ時間が少なく、時間応答性の高い発光ダイオード(光を発生させる発光素子の一例)と、発光ダイオードで発生した光を葉柄102に導く投光ファイバとを有している。波長の異なる複数の発光ダイオードで投光部331を構成することもできる。受光部332は、例えば、発光ダイオードから葉柄102に照射され反射された反射光を受光する分光器またはフォトダイオード(受光素子の一例)と、葉柄102からの反射光を分光器またはフォトダイオードに導く受光ファイバとを有している。投光部331と受光部332とは、一例として、第3方向および第4方向を含む平面視において(
図8および
図9参照)、第3ケーシング31が取り付けられた状態で、葉柄102に対して同じ側(
図8および
図9では、葉柄102の上側)に配置されている。また、投光ファイバと受光ファイバとは、V字形状となるように配置されている。
【0043】
図1に示すように、吸収養分センサ30は、第2測定部の一例の成長度測定部38をさらに有している。成長度測定部38は、演算を行うCPU、情報を記憶するROMおよびRAM、情報を第2接続部13に送信する通信装置等で構成され、栄養状態センサ部33で測定された葉柄102の栄養状態に基づいて、測定対象の植物の栄養成長度を測定する。吸収養分センサ30で測定および測定された結果に関する情報は、光ファイバ42を介して第2接続部13に送信される。
【0044】
栄養状態センサ部33および成長度測定部38の各々は、第3ケーシング31の内部に収容されたバッテリー(図示せず)に電気的に接続され、バッテリーから電力が供給される。
【0045】
ここで、
図10および
図11を参照して、植物生体センサ1で測定された植物の環境情報および生体情報の使用例を説明する。
図10に示す画像200には、第1表示領域210と、第2表示領域220とが含まれている。第1表示領域210の上側の領域には、温室のCGが表示され、第1表示領域210の下側の領域には、植物生体センサ1で測定された植物の環境情報および生体情報とがリアルタイムに表示される。第2表示領域220には、植物生体センサ1で測定され蓄積された植物の環境情報および生体情報から、植物の栽培管理に関するレコメンデーションが時系列に沿って表示される。
図11に示す画像300は、レコメンデーションの一例である。画像300の上側の領域310には、レコメンデーションの内容が表示され、画像300の下側の領域320には、表示されているレコメンデーションの根拠となる植物の環境情報および生体情報が表示される。
【0046】
植物生体センサ1によれば、次のような効果を発揮できる。
【0047】
植物に照射される日射量を測定する日射センサ10と、植物の体内を流れる樹液の流量を測定する樹液流センサ20と、植物の栄養状態を測定する吸収養分センサ30とを備えている。このような構成により、例えば、温室内の個々の植物の生体情報を測定可能な植物生体センサ1を実現できる。
【0048】
日射センサ10および通信装置11が、第1ケーシング2の一端に配置され、第1接続部12および第2接続部13が、第1ケーシング2の一端に対向する第1ケーシング2の他端に配置されている。このような構成により、例えば、植物生体センサ1の使用時に、日射センサ10および通信装置11を第1ケーシング2の鉛直方向の上端に配置することができる。この場合、測定対象の植物に照射される日射量をより正確に測定しつつ、測定された植物の環境情報および生体情報をより確実に外部機器に送信することができる。
【0049】
二酸化炭素センサ14、温湿度センサ15およびVOCセンサ16を備えている。このような構成により、より多くの植物の環境情報を測定可能な植物生体センサ1を実現できる。
【0050】
樹液流センサ20が、第2ケーシング21と、ヒータ部22と、温度センサ部23と、流量測定部27とを有している。第2ケーシング21は、表面に熱絶縁層26が設けられた収容部25を内部に有すると共に、主茎101に対して主茎101が延びる方向まわりに取り付け可能に構成されている。ヒータ部22は、収容部25の内部に配置されて主茎101を加熱可能に構成されている。温度センサ部23は、収容部25の内部に配置されて、第2ケーシング21を主茎101に取り付けた状態における主茎101が延びる方向のヒータ部22に対する両側で、主茎101を流れる樹液の温度を測定可能に構成されている。流量測定部27は、温度センサ部23で測定された主茎101の体内を流れる樹液の温度に基づいて、主茎101の体内を流れる樹液の流量を測定する。このような構成により、植物の体内を流れる樹液の流量をより正確に測定できる。
【0051】
ヒータ部22と温度センサ部23とが、第2ケーシング21を主茎101に取り付けた状態における主茎101の径方向において、主茎101を挟んで向かい合うように配置されている。このような構成により、ヒータ部22の熱が、温度センサ部23に直接伝わらないので、樹液流センサ20のSN比を大きくすることができる。また、収容部25内のスペース効率を高めることができる。
【0052】
樹液流センサ20が、位置調整部材241を有している。位置調整部材241は、ねじ孔218を介して収容部25の外部から収容部25の内部まで延びて温度センサ部23に接続されている共に、外周にねじ溝に嵌合するねじ山が設けられ、直線Lまわりに回転させることで直線Lが延びる方向に移動可能に構成されている。このような構成により、測定対象の植物が成長して、主茎101が大きくなったとしても、主茎101を損傷させることなく樹液流センサ20を主茎101に取り付けることができる。
【0053】
ヒータ部22が、主茎101に接触可能な第1面と、第1面に交差するように配置され主茎101に接触可能な第2面とを有している。第1面および前記第2面の各々には弾性を有する伝熱シート221がそれぞれ設けられ、第1面および第2面の各々と主茎101とが伝熱シート221を介して接触する。このような構成により、ヒータ部22を主茎101に安定して接触させることでできるので、植物の体内を流れる樹液の流量をより正確に測定できる。
【0054】
第2ケーシング21が、一対の第1貫通孔214、215の各々に設けられ、主茎101を主茎101の径方向において挟持可能な一対の第1弾性部材216、217を有している。このような構成により、主茎101を損傷させることなく樹液流センサ20を主茎101に取り付けることができる。なお、第1弾性部材216、217は、一対の第1貫通孔214、215のいずれか一方のみに設けてもよい。
【0055】
吸収養分センサ30が、第3ケーシング31と、挟持部32と、栄養状態センサ部33とを有している。第3ケーシング31は、植物の葉柄102に対して葉柄102が延びる方向まわりに取り付け可能に構成されている。挟持部32は、第3ケーシング31の内部に設けられ、葉柄102を葉柄102の径方向において挟持可能に構成されている。栄養状態センサ部33は、第3ケーシング31の内部に設けられ、葉柄102の栄養状態を測定可能に構成されている。このような構成により、植物の栄養状態をより正確に測定することができる。
【0056】
挟持部32が、第1挟持部材321と、第2挟持部材322と、付勢部材323とを有している。第1挟持部材321は、第3ケーシング31を葉柄102に取り付けた状態における葉柄102の径方向に沿って移動可能に配置されている。第2挟持部材322は、第3ケーシング31を葉柄102に取り付けた状態における葉柄102の径方向において、第1挟持部材321に対向するように配置され、第3ケーシング31に固定されている。付勢部材323は、第1挟持部材321を第2挟持部材322に接近する方向に付勢可能に構成されている。このような構成により、葉柄102に外力が加えられたとしても、葉柄102を所定の測定位置で保持することができるので、植物の栄養状態をより確実に測定することができる。
【0057】
第1挟持部材321および第2挟持部材322の各々が、相互に離れる方向に窪んで葉柄102が配置される凹部324をそれぞれ有している。このような構成より、葉柄102の挟持部32に対する位置をより正確に決めることができるので、植物の栄養状態をより確実に測定することができる。
【0058】
第3ケーシング31が、一対の第2貫通孔316、317の各々に設けられ、葉柄102を葉柄102の径方向において挟持可能な一対の第2弾性部材318,319を有している。このような構成により、葉柄102を損傷させることなく吸収養分センサ30を葉柄102に取り付けることができる。なお、第2弾性部材318、319は、一対の第2貫通孔316、317のいずれか一方のみに設けてもよい。
【0059】
植物生体センサ1が、第1測定部(例えば、流量測定部27)と、第2測定部(例えば、成長度測定部38)と、算出部(例えば、演算装置17)とをさらに備える。流量測定部27は、樹液流センサ20で測定された樹液の流量から植物で行われる光合成量を測定する。成長度測定部38は、吸収養分センサ30で測定された植物の栄養状態から植物の栄養成長度を測定する。演算装置17は、流量測定部27で測定された植物の光合成量と、成長度測定部38で測定された植物の栄養成長度とに基づいて、植物の生殖成長度を算出する。このような構成により、リアルタイムで、植物の成長状態を把握できる。
【0060】
植物生体センサ1は、次のように構成することもできる。
【0061】
植物生体センサ1は、日射センサ10と、樹液流センサ20と、吸収養分センサ30とを備えていればよく、第1ケーシング2、通信装置11、二酸化炭素センサ14、温湿度センサ15およびVOCセンサ16は、その一部または全部について省略することができる。
【0062】
樹液流センサ20は、第2ケーシング21、ヒータ部22、温度センサ部23および流量測定部27で構成されている場合に限らず、植物の体内を流れる樹液の流量を測定可能な他の構成を採用することもできる。例えば、第1方向および第2方向を含む平面視(
図4および
図5参照)において、ヒータ部22および温度センサ部23を主茎101に対して同じ側に位置するように配置してもよい。このように構成することで、樹液流センサ20の構造を簡略化することができる。また、温度センサ部23が流量測定部27を兼ねるように構成してもよい。ヒータ部22は、略V字形状に限らず、主茎101に接触可能な他の形状(例えば、3つ以上の面で構成された略C字形状)であってもよい。伝熱シート221を省略してもよい。一対の第1弾性部材216、217を省略してもよい。位置調整部材241に代えて、コイルばね等の弾性部材で位置調整機構24を構成してもよい。この場合、弾性部材は、温度センサ部23の本体部231を主茎101に向かって付勢するように配置すればよい。
【0063】
吸収養分センサ30は、第3ケーシング31、挟持部32および栄養状態センサ部33で構成されている場合に限らず、植物の栄養状態を測定可能な他の構成を採用することもできる。例えば、投光部331と受光部332とを葉柄102に対して対向するように配置してもよい。挟持部32は、葉柄102を挟持可能に構成されていればよく、付勢部材323に代えて、第1挟持部材321および第2挟持部材322による葉柄102の挟持状態を保持可能な構成を採用してもよい。凹部324を省略してもよい。一対の第2弾性部材318、319を省略してもよい。
【0064】
第2ケーシング21と第3ケーシング31とは、同じ形状のケーシングであってもよい。また、樹液流センサ20と吸収養分センサ30とを一体に設けて、第2ケーシング21が第3ケーシング31を兼ねる(または、第3ケーシング31が第2ケーシング21を兼ねる)ように構成してもよい。
【0065】
第1ケーシング2の一端(例えば、
図1の上端)以外の場所に、バッテリー残量、通信状態等を表示する表示部、または、電源スイッチを設けてもよい。
【0066】
流量測定部27とは別に、第1測定部を設けてもよい。また、演算装置17が、第1測定部および第2測定部を兼ねてもよいし、第1測定部、第2測定部および算出部を外部機器(例えば、サーバ)に設けてもよい。
【0067】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。なお、以下の説明では、一例として、参照符号も添えて記載する。
【0068】
本開示の第1態様の植物生体センサ1は、
植物の環境情報および生体情報を測定する植物生体センサ1であって、
前記植物に照射される日射量を測定する日射センサ10と、
前記植物の体内を流れる樹液の流量を測定する樹液流センサ20と、
前記植物の栄養状態を測定する吸収養分センサ30と
を備える。
【0069】
本開示の第2態様の植物生体センサ1は、
前記日射センサ10で測定された前記日射量、前記樹液流センサ20で測定された前記樹液の流量、および、前記吸収養分センサ30で測定された前記植物の栄養状態に関する情報を送信する通信装置11と、
前記日射センサ10および前記通信装置11を内部に収容する第1ケーシング2と
をさらに備え、
前記第1ケーシング2が、
前記樹液流センサ20が接続される第1接続部12と、
前記吸収養分センサ30が接続される第2接続部13と
を有し、
前記日射センサ10および前記通信装置11が、前記第1ケーシング2の一端に配置され、
前記第1接続部12および前記第2接続部13が、前記一端に対向する前記第1ケーシング2の他端に配置されている。
【0070】
本開示の第3態様の植物生体センサ1は、
前記植物まわりの空気における二酸化炭素の量を測定する二酸化炭素センサ14をさらに備え、
前記二酸化炭素センサ14が、
前記第1ケーシング2に収容され、前記第1ケーシング2の前記一端と前記他端との中間に配置されている。
【0071】
本開示の第4態様の植物生体センサ1は、
前記植物まわりの温度および湿度を測定する温湿度センサ15をさらに備え、
前記温湿度センサ15が、
前記第1ケーシング2に収容され、前記第1ケーシング2の前記一端と前記他端との中間に配置されている。
【0072】
本開示の第5態様の植物生体センサ1は、
前記植物まわりの空気における揮発性有機化合物の量を測定するVOCセンサ16をさらに備え、
前記VOCセンサ16が、
前記第1ケーシング2に収容され、前記第1ケーシング2の前記一端と前記他端との中間に配置されている。
【0073】
本開示の第6態様の植物生体センサ1は、
前記植物が、樹液が流れる第1構造部101を有し、
前記樹液流センサ20が、
表面に熱絶縁層26が設けられた収容部25を内部に有すると共に、前記第1構造部101に対して前記第1構造部101が延びる方向まわりに取り付け可能な第2ケーシング21と、
前記収容部25の内部に配置されて、前記第1構造部101を加熱するヒータ部22と、
前記収容部25の内部に配置されて、前記第2ケーシング21を前記第1構造部101に取り付けた状態における前記第1構造部101が延びる第1方向の前記ヒータ部22に対する両側で、前記第1構造部101を流れる樹液の温度を測定する温度センサ部23と
前記温度センサ部23で測定された前記第1構造部101の体内を流れる樹液の温度に基づいて、前記第1構造部101の体内を流れる樹液の流量を測定する流量測定部27と
を有する。
【0074】
本開示の第7態様の植物生体センサ1は、
前記ヒータ部22と前記温度センサ部23とが、前記第2ケーシング21を前記第1構造部101に取り付けた状態における前記第1構造部101の径方向において、前記第1構造部101を挟んで向かい合うように配置されている。
【0075】
本開示の第8態様の植物生体センサ1は、
前記ヒータ部22と前記温度センサ部23とが、前記第1方向および前記第1方向に交差する第2方向を含む平面視において、前記第1構造部101に対して同じ側に位置するように配置されている。
【0076】
本開示の第9態様の植物生体センサ1は、
前記第2ケーシング21が、
前記ヒータ部22および前記温度センサ部23を通る直線L上に配置され、前記第2ケーシング21を前記直線Lが延びる方向に貫通すると共に、その内周にねじ溝が設けられたねじ孔218を有し、
前記樹液流センサ20が、
前記ねじ孔218を介して前記収容部25の外部から前記収容部25の内部まで延びて前記温度センサ部23に接続されている共に、外周に前記ねじ溝に嵌合するねじ山が設けられ、前記直線Lまわりに回転させることで前記直線Lが延びる方向に移動可能な位置調整部材241を有する。
【0077】
本開示の第10態様の植物生体センサ1は、
前記ヒータ部22が、
第1面と、
前記第1面に交差するように配置された第2面と
を有し、
前記第1面および前記第2面の各々に弾性を有する伝熱シート221がそれぞれ設けられ、前記第1面および前記第2面の各々と前記第1構造部101とが前記伝熱シート221を介して接触する。
【0078】
本開示の第11態様の植物生体センサ1は、
前記第2ケーシング21が、
前記第1方向の両端にそれぞれ設けられ、前記第2ケーシング21を前記第1方向に貫通して前記第1構造部101を配置可能な一対の第1貫通孔214、215と、
前記一対の第1貫通孔214、215の少なくともいずれかに設けられ、前記第1構造部101を前記第1方向に交差する第2方向において挟持可能な一対の第1弾性部材216、217と
を有する。
【0079】
本開示の第12態様の植物生体センサ1は、
前記植物が、樹液が流れる第2構造部102を有し、
前記吸収養分センサ30が、
植物の第2構造部102に対して前記第2構造部102が延びる方向まわりに取り付け可能な第3ケーシング31と、
前記第3ケーシング31の内部に設けられ、前記第2構造部102を前記第2構造部102が延びる方向に交差する方向において挟持可能な挟持部32と、
前記第3ケーシング31の内部に設けられ、前記第2構造部102の栄養状態を測定可能な栄養状態センサ部33と
を備える。
【0080】
本開示の第13態様の植物生体センサ1は、
前記挟持部32が、
前記第3ケーシング31を前記第2構造部102に取り付けた状態における前記第2構造部102が延びる第3方向に交差する第4方向に沿って移動可能に配置された第1挟持部材321と、
前記第3ケーシング31を前記第2構造部102に取り付けた状態における前記第2構造部102の径方向において、前記第1挟持部材321に対向するように配置され、前記第3ケーシング31に固定された第2挟持部材322と、
前記第1挟持部材321を前記第4方向でかつ前記第2挟持部材322に接近する方向に付勢する付勢部材323と
を有する。
【0081】
本開示の第14態様の植物生体センサ1は、
前記第1挟持部材321および前記第2挟持部材322の各々が、相互に離れる方向に窪んで前記第2構造部102が配置される凹部324をそれぞれ有する。
【0082】
本開示の第15態様の植物生体センサ1は、
前記吸収養分センサ30が、
前記第3ケーシング31が取り付けられた状態の前記第2構造部102に向かって光を照射する投光部331と、
前記第2構造部102からの光を受光する受光部332と
を有する。
【0083】
本開示の第16態様の植物生体センサ1は、
前記投光部331が、
光を発生させる発光素子と、
前記発光素子で発生した光を前記第2構造部102に導く投光ファイバと
を有し、
前記受光部332が、
光を受光する受光素子と、
前記第2構造部102からの光を前記受光素子332に導く受光ファイバと
を有する。
【0084】
本開示の第17態様の植物生体センサ1は、
前記投光部331と前記受光部332とが、前記第3ケーシング31を前記第2構造部102に取り付けた状態における前記第2構造部102が延びる第3方向と前記第3方向に交差する第4方向とを含む平面視において、第3ケーシング31が第2構造部102に取り付けられた状態で、前記第2構造部102に対して同じ側に配置され、
前記投光ファイバと前記受光ファイバとがV字形状となるように配置されている。
【0085】
本開示の第18態様の植物生体センサ1は、
前記投光部331と前記受光部332とが、前記第3ケーシング31が前記第2構造部102に取り付けられた状態で、前記第2構造部102に対して対向するように配置されている。
【0086】
本開示の第19態様の植物生体センサ1は、
前記第3ケーシング31が、
前記第3ケーシング31を前記第2構造部102に取り付けた状態における前記第2構造部102が延びる第3方向の両端にそれぞれ設けられ、前記第3ケーシング31を貫通して前記第2構造部102を配置可能な一対の第2貫通孔316、317と、
前記一対の第2貫通孔316、317の少なくともいずれかに設けられ、前記第2構造部102を前記第3方向に交差する第4方向において挟持可能な一対の第2弾性部材318、319と
を有する。
【0087】
本開示の第20態様の植物生体センサ1は、
前記樹液流センサ20で測定された樹液の流量から前記植物で行われる光合成量を測定する第1測定部27と、
前記吸収養分センサ30で測定された前記植物の栄養状態から前記植物の栄養成長度を測定する第2測定部38と、
前記第1測定部27で測定された前記植物の光合成量と、前記第2測定部38で測定された前記植物の栄養成長度とに基づいて、前記植物の生殖成長度を算出する算出部17と
を備える。
【0088】
なお、前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示の植物生体センサは、例えば、温室内で栽培されている植物に適用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 植物生体センサ
2 第1ケーシング
10 日射センサ
11 通信装置
12 第1接続部
13 第2接続部
14 二酸化炭素センサ
15 温湿度センサ
16 VOCセンサ
17 演算装置
20 樹液流センサ
21 第2ケーシング
211 部材
212 開口面
213 ヒンジ
214、215 貫通孔
216、217 弾性部材
218 ねじ孔
219 ボス部
22 ヒータ部
221 伝熱シート
23 温度センサ部
231 本体部
232 温度センサ
24 位置調整機構
241 位置調整部材
242 操作部
25 収容部
26 熱絶縁層
27 流量測定部
29 接続機構
30 吸収養分センサ
31 第3ケーシング
311 第1部材
312 第2部材
313 ヒンジ
314 部材
315 開口面
316、317 貫通孔
318、319 弾性部材
32 挟持部
321 第1挟持部材
322 第2挟持部材
323 付勢部材
324 凹部
33 栄養状態センサ部
331 投光部
332 受光部
34 接続部
35 ケーブル取付部
36 接続機構
37 バンド取付部
38 成長度測定部
41 電線
42 光ファイバ
101 主茎
102 葉柄
110 結束バンド
120 ケーブル
200、300 画像
210 第1表示領域
220 第2表示領域
310、320 領域
L 直線