(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20240409BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240409BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01F27/32 140
H01F27/00 R
H01F17/00 B
(21)【出願番号】P 2019233233
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-12-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196091(US,A1)
【文献】特開2017-092444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0217903(US,A1)
【文献】特開2014-152059(JP,A)
【文献】特開2010-135602(JP,A)
【文献】国際公開第2007/111122(WO,A1)
【文献】特開2002-270451(JP,A)
【文献】特開2019-075478(JP,A)
【文献】特開平11-031632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられ、第1の磁芯周りに巻回された第1のコイルと、
前記素体内に設けられ、前記第1の磁芯に沿う方向に延びる第2の磁芯周りに巻回され、かつ、前記第1の磁芯に対して直交する方向において前記第1のコイルと隣り合う第2のコイルと、
前記第1のコイルの磁芯と前記第2のコイルの磁芯とを含む前記素体の断面において、前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に渡された非磁性部とを備え、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルが、前記素体の第1の層内に形成されており、
前記非磁性部が、
前記素体の前記第1の層内において前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に亘って延びる第1部分と、前記素体の前記第1の層に重なる第2の層内において前記第1のコイルと前記第2のコイルとをつなぐ第2部分を含み、
前記素体内に設けられ、
前記第1部分を構成する材料とは異なる非磁性の絶縁材料により構成されるとともに、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルが主面上に形成される絶縁基板をさらに備え、
前記絶縁基板が
、前記非磁性部の第2部分の少なくとも一部を構成する
とともに前記第1のコイルと前記第2のコイルとをつないでいる、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の層内において前記第1のコイルと前記第2のコイルとの間に亘って延びる樹脂部をさらに備え、
前記樹脂部が前記非磁性部の第1部分を構成する、請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくともいずれか一方が、前記絶縁基板の一方の主面上に設けられた第1のコイルパターンと他方の主面上に設けられた第2のコイルパターンとを有する、請求項1
または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記絶縁基板を、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルとともに一体的に覆う保護膜をさらに備え、
前記保護膜が前記非磁性部の第2部分の少なくとも一部を構成する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記非磁性部の一部が空隙である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、素体内において並ぶ2つのコイルと、2つのコイルの間に配置された非磁性層とを備えたコイル部品が開示されている。本文献には、2つのコイルの磁束が互いに干渉し合うことを、非磁性層によって抑制することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公開2017-196091号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル部品においては、磁束の相互干渉を十分に抑制することができておらず、磁束の相互干渉のさらなる抑制が求められている。
【0005】
本発明は、磁束の相互干渉をさらに抑制することができるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、素体と、素体内に設けられ、第1の磁芯周りに巻回された第1のコイルと、素体内に設けられ、第1の磁芯に沿う方向に延びる第2の磁芯周りに巻回され、かつ、第1の磁芯に対して直交する方向において第1のコイルと隣り合う第2のコイルと、第1のコイルの磁芯と第2のコイルの磁芯とを含む素体の断面において、第1のコイルと第2のコイルとの間に渡された非磁性部とを備える。
【0007】
上記コイル部品では、第1のコイルの磁芯と第2のコイルの磁芯とを含む素体の断面において、非磁性部は、第1のコイルと第2のコイルとの間に渡されている。そのため、第1のコイルと第2のコイルとの間では、非磁性部により第1の磁芯に沿う方向の磁束が阻害される。したがって、第1のコイルの磁束と第2のコイルの磁束とが互いに干渉しづらくなっている。
【0008】
他の側面に係るコイル部品は、第1のコイルおよび第2のコイルが、素体の第1の層内に形成されている。
【0009】
他の側面に係るコイル部品は、非磁性部が、第1の層内に位置する第1部分を含む。
【0010】
他の側面に係るコイル部品は、第1の層内において第1のコイルと第2のコイルとの間に亘って延びる樹脂部をさらに備え、樹脂部が非磁性部の第1部分を構成する。
【0011】
他の側面に係るコイル部品は、非磁性部が、素体の第1の層に重なる第2の層内に位置する第2部分を含む。
【0012】
他の側面に係るコイル部品は、素体内に設けられ、非磁性の絶縁材料により構成されるとともに、第1のコイルおよび第2のコイルが主面上に形成される絶縁基板をさらに備え、絶縁基板が非磁性部の第2部分の少なくとも一部を構成する。
【0013】
他の側面に係るコイル部品は、第1のコイルおよび第2のコイルの少なくともいずれか一方が、絶縁基板の一方の主面上に設けられた第1のコイルパターンと他方の主面上に設けられた第2のコイルパターンとを有する。
【0014】
他の側面に係るコイル部品は、絶縁基板を、第1のコイルおよび第2のコイルとともに一体的に覆う保護膜をさらに備え、保護膜が非磁性部の第2部分の少なくとも一部を構成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁束の相互干渉をさらに抑制することができるコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコイル部品の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すコイル部品の本体部を示した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す本体部の内部構造を示した図である。
【
図4】
図4は、基板上面に設けられた第1の平面コイルパターンを示した図である。
【
図5】
図5は、基板下面に設けられた第2の平面コイルパターンを示した図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す本体部のVI-VI線断面図である。
【
図8】
図8は、異なる形態のコイル部品を示した図である。
【
図9】
図9は、異なる形態のコイル部品を示した図である。
【
図10】
図10は、異なる形態のコイル部品を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1~3を参照しつつ、実施形態に係るコイル部品10について説明する。
【0019】
コイル部品10は、矩形平板状の外形を有する本体部12(素体)と、本体部12の表面に設けられた二対の外部端子電極14A、14B、14C、14Dとを備えて構成されている。本体部12は、互いに平行な長方形状の上面12aおよび下面12bと、上面12aおよび下面12bに対して直交する一対の側面12c、12dと、一対の主面12a、12bと一対の側面12c、12dとに直交する一対の端面12e、12fとを有する。外部端子電極14A、14B、14C、14Dは、各側面12c、12dに一対ずつ形成されている。本体部12は、一例として、上面12aの長辺長さ3.2mm、上面の短辺長さ2.0mm、高さ0.5mmの寸法で設計される。
【0020】
本体部12は、絶縁基板20と、絶縁基板20に設けられた第1のコイルC1および第2のコイルC2と、磁性体30とを含んで構成されている。
【0021】
絶縁基板20は、本体部12の内部に設けられた板状部材であり、非磁性の絶縁材料で構成されている。絶縁基板20としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm~60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。絶縁基板20の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0022】
絶縁基板20には、第1の貫通孔20cおよび第2の貫通孔20dを含む複数の貫通孔が設けられている。第1の貫通孔20cおよび第2の貫通孔20dは、いずれも楕円形状を有しており、一対の端面12e、12fの対面方向に並んでいる。
【0023】
第1のコイルC1は、
図4、5に示すように、絶縁基板20の第1の貫通孔20c周りに巻回された平面コイルパターン22、24を含んで構成されている。第1のコイルC1の平面コイルパターン22、24は、絶縁基板20の上面20aに形成された第1の平面コイルパターン22と、絶縁基板20の下面20bに形成された第2の平面コイルパターン24とで構成されている。
【0024】
第1の平面コイルパターン22は、
図4に示すように、第1の貫通孔20c周りを平面渦巻状に複数回(本実施形態ではおよそ4ターン)巻回されている。第1の平面コイルパターン22は、本体部12の側面12cまで達して露出する外側端部22aを有する。第1の平面コイルパターン22の外側端部22aが露出する側面12cの領域には外部端子電極14Aが形成されており、側面12cにおいて第1の平面コイルパターン22の外側端部22aと外部端子電極14Aとが接続されている。また、第1の平面コイルパターン22は、第1の貫通孔20cの縁領域に位置する内側端部22bを有する。第1の平面コイルパターン22は、内側端部22bにおいて、第2の平面コイルパターン24と、後述する第1の貫通導体V1を介して接続されている。
【0025】
第2の平面コイルパターン24は、
図5に示すように、絶縁基板20の上面20a側から見て、第1の平面コイルパターン22に対して対称形状を有する。より詳しくは、第1の平面コイルパターン22と第2の平面コイルパターン24とは線対称の関係を有する。そのため、第2の平面コイルパターン24は、第1の平面コイルパターン22同様、第1の貫通孔20c周りを平面渦巻状に複数回(本実施形態ではおよそ4ターン)巻回されている。第2の平面コイルパターン24は、本体部12の側面12dまで達して露出する外側端部24aを有する。第2の平面コイルパターン24の外側端部24aが露出する側面12dの領域には外部端子電極14Bが形成されており、側面12dにおいて第2の平面コイルパターン24の外側端部24aと外部端子電極14Bとが接続されている。また、第2の平面コイルパターン24は、第1の平面コイルパターン22の内側端部22bと重なる位置に内側端部24bを有する。
【0026】
第1のコイルC1は、第1の平面コイルパターン22の内側端部22bと第2の平面コイルパターン24の内側端部24bとをつなぐ第1の貫通導体V1を含む。第1の貫通導体V1は、絶縁基板20を厚さ方向に貫通しており、その上端において第1の平面コイルパターン22の内側端部22bと接し、その下端において第2の平面コイルパターン24の内側端部24bと接している。
【0027】
外部端子電極14A、14B間に電圧が印加されると、第1の貫通導体V1により接続された第1の平面コイルパターン22と第2の平面コイルパターン24とには、絶縁基板20の上面20a側から見て同じ周回方向(たとえば時計回り方向)に電流が流れる。そのため、第1のコイルC1では、第1の平面コイルパターン22と第2の平面コイルパターン24とが協働して一つのコイルとして機能する。
【0028】
第2のコイルC2は、
図4、5に示すように、絶縁基板20の第2の貫通孔20d周りに巻回された平面コイルパターン22、24を含んで構成されている。第2のコイルC2は、一対の端面12e、12fの対面方向において第1のコイルC1と並んでいる。第2のコイルC2の平面コイルパターン22、24は、第1のコイルC1の平面コイルパターン22、24同様、絶縁基板20の上面20aに形成された第1の平面コイルパターン22と、絶縁基板20の下面20bに形成された第2の平面コイルパターン24とで構成されている。
【0029】
第2のコイルC2の第1の平面コイルパターン22は、第1のコイルC1の第1の平面コイルパターン22と同一形状を有する。第2のコイルC2に関しては、第1の平面コイルパターン22の外側端部22aが露出する側面12cの領域には外部端子電極14Cが形成されており、側面12cにおいて第1の平面コイルパターン22の外側端部22aと外部端子電極14Cとが接続されている。また、第2の平面コイルパターン24の外側端部24aが露出する側面12dの領域には外部端子電極14Dが形成されており、側面12dにおいて第2の平面コイルパターン24の外側端部24aと外部端子電極14Dとが接続されている。さらに、第2の貫通孔20dの縁領域において互いに重なる位置にある第1の平面コイルパターン22の内側端部22bと第2の平面コイルパターン24の内側端部24bとは、第1の貫通導体V1と同様の第2の貫通導体V2を介して接続されている。
【0030】
第2のコイルC2は、第1のコイルC1同様、外部端子電極14C、14D間に電圧が印加されると第1の平面コイルパターン22と第2の平面コイルパターン24とが協働して一つのコイルとして機能する。
【0031】
第1の平面コイルパターン22および第2の平面コイルパターン24は、めっきによって形成することができる。
【0032】
第1のコイルC1および第2のコイルC2において、第1の平面コイルパターン22の側面(すなわち、絶縁基板20に対して直交する面)は樹脂壁25で覆われており、第2の平面コイルパターン24の側面は樹脂壁26で覆われており、樹脂壁25、26は、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁25、26は、第1の平面コイルパターン22および第2の平面コイルパターン24を形成する前に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には樹脂壁25、26において画成された壁間において第1の平面コイルパターン22および第2の平面コイルパターン24がめっき成長される。すなわち、絶縁基板20上に設けられた樹脂壁25、26によって、第1の平面コイルパターン22および第2の平面コイルパターン24の形成領域が画成される。樹脂壁25、26は、第1の平面コイルパターン22および第2の平面コイルパターン24を形成した後に絶縁基板20上に設けることができ、この場合には第1の平面コイルパターン22および第2の平面コイルパターン24に樹脂壁25、26が充填や塗布等により設けられる。後述するとおり、第1のコイルC1と第2のコイルC2との間の樹脂壁25、26間は、レジスト(樹脂部)27で充たされている。レジスト27は、樹脂壁25、26を形成する工程と同じ工程において形成することができる。レジスト27は、絶縁性の樹脂材料で構成され、樹脂壁25、26と同じ樹脂材料であってもよい。
【0033】
絶縁基板20は、保護膜28により、第1のコイルC1および第2のコイルC2とともに一体的に覆われている。保護膜28は、第1の平面コイルパターン22の上面および第2の平面コイルパターン24の下面を覆い、かつ、絶縁基板20上における第1のコイルC1と第2のコイルC2との間を充たしている。具体的には、保護膜28は、絶縁基板20の上面20aにおける第1のコイルC1の第1の平面コイルパターン22と第2のコイルC2の第1の平面コイルパターン22との間を充たすとともに、絶縁基板20の下面20bにおける第1のコイルC1の第2の平面コイルパターン24と第2のコイルC2の第2の平面コイルパターン24との間を充たしている。保護膜28は、たとえばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂で構成され、フォトリソグラフィ工法を用いて形成される。
【0034】
磁性体30は、絶縁基板20、第1のコイルC1および第2のコイルC2を一体的に覆っている。より詳しくは、磁性体30は、絶縁基板20、第1のコイルC1および第2のコイルC2を上下方向(絶縁基板の厚さ方向)から覆うとともに、絶縁基板20、第1のコイルC1および第2のコイルC2の外周を覆っている。また、磁性体30は、絶縁基板20の貫通孔20c、20dの内部を充たすとともに、第1のコイルC1および第2のコイルC2の内側領域を充たしている。磁性体30のうち、絶縁基板20の貫通孔20cの内部および第1のコイルC1の内側領域を充たす部分の磁性体30が第1のコイルC1の磁芯Z1を構成し、絶縁基板20の貫通孔20dの内部および第2のコイルC2の内側領域を充たす部分の磁性体30が第2のコイルC2の磁芯Z2を構成している。本実施形態では、第1のコイルC1の磁芯Z1と第2のコイルC2の磁芯Z2とは平行の関係を有する。
【0035】
磁性体30は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。本実施形態では、磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉は、3種類の平均粒径を有する混合粉体である。磁性体30を構成する金属磁性粉含有樹脂の磁性粉が混合粉体の場合、平均粒径が異なる磁性粉の種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
図6の断面図は、第1のコイルC1の磁芯Z1および第2のコイルC2の磁芯Z2の両方を含む断面を示している。
図6に示すように、本体部12は、絶縁基板20、平面コイルパターン22、24および保護膜28を含む積層構造を有する。本体部12の積層構造は、本実施形態では、平面コイルパターン22、24が位置する第1の層L11、L12と、第1の層L11、L12と直接的に重なるとともに絶縁基板20または保護膜28が位置する第2の層L21~L23とにより構成されている。
【0037】
図7は、
図6の断面図の要部を拡大した図であり、より詳しくは、本体部12内における第1のコイルC1と第2のコイルC2との間の部分を拡大した図である。
図7に示すように、非磁性部40が、第1のコイルC1と第2のコイルC2との間に渡されるように設けられている。本実施形態では、非磁性部40は、第1の層L11、L12に位置する樹脂壁25、26およびレジスト27と、第2の層L21に位置する絶縁基板20の一部と、第2の層L22、L23に位置する保護膜28の一部によって構成されている。上述したとおり、樹脂壁25、26、レジスト27、保護膜28および絶縁基板20はいずれも非磁性材料によって構成されている。
【0038】
本実施形態において、樹脂壁25、26とレジスト27とにより、第1の層L11、L12内において第1のコイルC1と第2のコイルC2との間に亘って延びる樹脂部が構成されており、この樹脂部が非磁性部40の第1部分40aを構成している。また、本実施形態において、絶縁基板20のうちの第1のコイルC1と第2のコイルC2とをつなぐ部分が、第1の層L11、L12に重なる第2の層L21内に位置する非磁性部40の第2部分40bの一部を構成している。さらに、本実施形態において、保護膜28のうちの第1のコイルC1と第2のコイルC2とをつなぐ部分が、第1の層L11、L12に重なる第2の層L22、L23内に位置する非磁性部40の第2部分40bの一部を構成している。
【0039】
上述したコイル部品10においては、
図6に示した素体断面において、非磁性部40が、第1のコイルC1と第2のコイルC2との間に渡されている。そのため、第1のコイルC1と第2のコイルC2との間では、第1のコイルC1の磁芯Z1および第2のコイルC2の磁芯Z2に沿う方向の磁束は、非磁性部40により阻害または遮断される。したがって、第1のコイルC1の磁束と第2のコイルC2の磁束とが互いに干渉しづらくなっている。
【0040】
なお、非磁性部40を構成する非磁性材料については、適宜、異なる非磁性材料に置換することができ、一部を空間(空隙)とすることもできる。たとえば、非磁性部40は、
図8に示すように、上述したレジスト27の部分に空間Sが存在する構成であってもよい。
【0041】
また、非磁性部40は、上述した第1の層L11、L12および第2の層L21~L23の全てに絶縁材料が存在する構成に限らず、第1の層L11、L12および第2の層L21~L23の一部(1層または複数層)に絶縁材料が存在する構成であってもよい。たとえば、非磁性部40は、
図9に示すように、第1の層L11、L12に位置する樹脂壁25、26およびレジスト27(すなわち、第1部分40a)と、第2の層L21に位置する絶縁基板20のうちの第1のコイルC1と第2のコイルC2とをつなぐ部分(すなわち、第2部分40b)のみによって構成されていてもよく、この場合の非磁性部40は保護膜28を含まない。また、非磁性部40は、
図10に示すように、第2の層L21に位置する絶縁基板20のうちの第1のコイルC1と第2のコイルC2とをつなぐ部分(すなわち、第2部分40b)のみで構成されていてもよく、この場合の非磁性部40はレジスト27および保護膜28を含まない。第1のコイルC1と第2のコイルC2との間に、磁性体30が介在する態様であってもよい。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、様々な態様をとり得る。
【0043】
たとえば、コイル部品は、絶縁基板を含まない構成であってもよい。この場合、第1のコイルおよび第2のコイルは、1層の平面コイルパターンで構成されていてもよい。第1のコイルおよび第2のコイルの両方が、2層の平面コイルパターン(たとえば、第1の平面コイルパターンおよび第2の平面コイルパターン)で構成される必要はなく、一方のみが2層の平面コイルパターンとで構成された構成であってもよい。2層の平面コイルパターンは、線対称でなくてもよい。また、第1のコイルの巻数および第2のコイルの巻数は適宜増減することができる。第1のコイルの磁芯と第2のコイルの磁芯とは、必ずしも平行の関係を有する必要はなく、一方の磁芯が他方の磁芯に対してわずかに傾いていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…コイル部品、12…本体部、14A~14D…外部端子電極、20…絶縁基板、22、24…平面コイルパターン、25、26…樹脂壁、27…レジスト、28…保護膜、30…磁性体、40…非磁性部、40a…第1部分、40b…第2部分、C1…第1のコイル、C2…第2のコイル、L11、L12…第1の層、L21~L23…第2の層、Z1、Z2…磁芯。