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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】瓶針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/162 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61M5/162 500V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020004569
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109045
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 一樹
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-087385(JP,A)
【文献】特開2013-111311(JP,A)
【文献】実開昭51-149992(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0045919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に設けられた針先部、基端側に設けられた接続部、及び側方に突出した逆止弁収容筒を含む中間部を有する瓶針本体と、
前記逆止弁収容筒に収容された逆止弁と、
前記逆止弁を固定するように前記逆止弁収容筒に取り付けられた逆止弁固定部とを備え、
前記瓶針本体は、前記針先部と前記接続部とを連通する通液路と、前記針先部と前記逆止弁収容筒とを連通する通気路とを有し、
前記逆止弁は、弁本体と、前記弁本体を囲む弁体フランジ部とを有し、
前記逆止弁固定部は、前記瓶針本体よりも軟質の材料により形成され、筒状の固定部本体と、前記固定部本体内に固定された通気フィルタとを有し、
前記固定部本体の一端には、気密に嵌合するキャップ部が設けられ、前記固定部本体内には中央に開口を有する中間壁が設けられ、
前記通気フィルタは、前記中間壁の外側面に前記開口を覆うように固定され、
前記弁体フランジ部は、前記逆止弁収容筒と前記固定部本体との間に位置し、前記逆止弁収容筒に前記固定部本体が組み付けられることにより、一方の面が前記逆止弁収容筒の端部と気密に当接し、他方の面が前記中間壁と気密に当接し、
前記逆止弁収容筒は、前記弁体フランジ部の厚さよりも浅いフランジ収容凹部を端部に有し、
前記弁体フランジ部は、前記フランジ収容凹部に収容され、
前記弁体フランジ部の外縁と、前記フランジ収容凹部の周壁との間には隙間が存在する瓶針。
【請求項2】
先端側に設けられた針先部、基端側に設けられた接続部、及び側方に突出した逆止弁収容筒を含む中間部を有する瓶針本体と、
前記逆止弁収容筒に収容された逆止弁と、
前記逆止弁を固定するように前記逆止弁収容筒に取り付けられた逆止弁固定部とを備え、
前記瓶針本体は、前記針先部と前記接続部とを連通する通液路と、前記針先部と前記逆止弁収容筒とを連通する通気路とを有し、
前記逆止弁は、弁本体と、前記弁本体を囲む弁体フランジ部とを有し、
前記逆止弁固定部は、前記瓶針本体よりも軟質の材料により形成され、筒状の固定部本体と、前記固定部本体内に固定された通気フィルタとを有し、
前記固定部本体の一端には、気密に嵌合するキャップ部が設けられ、前記固定部本体内には中央に開口を有する中間壁が設けられ、
前記通気フィルタは、前記中間壁の外側面に前記開口を覆うように固定され、
前記弁体フランジ部は、前記逆止弁収容筒と前記固定部本体との間に位置し、前記逆止弁収容筒に前記固定部本体が組み付けられることにより、一方の面が前記逆止弁収容筒の端部と気密に当接し、他方の面が前記中間壁と気密に当接し、
前記逆止弁収容筒の前記弁体フランジ部との当接面には、前記弁体フランジ部を押圧する周状の突起が設けられており、
前記中間壁の前記弁体フランジ部との当接面は、平坦面である瓶針。
【請求項3】
先端側に設けられた針先部、基端側に設けられた接続部、及び側方に突出した逆止弁収容筒を含む中間部を有する瓶針本体と、
前記逆止弁収容筒に収容された逆止弁と、
前記逆止弁を固定するように前記逆止弁収容筒に取り付けられた逆止弁固定部とを備え、
前記瓶針本体は、前記針先部と前記接続部とを連通する通液路と、前記針先部と前記逆止弁収容筒とを連通する通気路とを有し、
前記逆止弁は、弁本体と、前記弁本体を囲む弁体フランジ部とを有し、
前記逆止弁固定部は、前記瓶針本体よりも軟質の材料により形成され、筒状の固定部本体と、前記固定部本体内に固定された通気フィルタとを有し、
前記固定部本体の一端には、気密に嵌合するキャップ部が設けられ、前記固定部本体内には中央に開口を有する中間壁が設けられ、
前記通気フィルタは、前記中間壁の外側面に前記開口を覆うように固定され、
前記弁体フランジ部は、前記逆止弁収容筒と前記固定部本体との間に位置し、前記逆止弁収容筒に前記固定部本体が組み付けられることにより、一方の面が前記逆止弁収容筒の端部と気密に当接し、他方の面が前記中間壁と気密に当接し、
前記逆止弁収容筒の周壁と、前記中間壁の内側の面とは当接していない瓶針。
【請求項4】
前記逆止弁固定部は、前記逆止弁収容筒に外嵌している、請求項1~3のいずれか1項に記載の瓶針。
【請求項5】
前記キャップ部は、前記固定部本体と可撓性の連結部材により連結されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の瓶針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、瓶針に関し、特に空気取り込み通路を有する瓶針に関する。
【背景技術】
【0002】
点滴等に用いる輸液セットは、チューブと薬液容器とを接続する瓶針と呼ばれるプラスチック製の針を有している。瓶針には、硬質容器内が陰圧とならないように、薬液容器内に空気を供給するための通気路を有するものがある。また、通気路を気密に閉止するキャップ部を有し、空気の供給が不要ないわゆるソフトバックに対して気密に閉止した状態で穿刺できるようにした瓶針も知られている。
【0003】
瓶針の通気路には、埃や塵が混入しないようにするためのフィルタと、薬液が逆流しないようにするための逆止弁とが設けられる。一般的な逆止弁は立体的な形状であるため、瓶針の側周から突出して設けられた収容部に逆止弁が収容される。収容部に収容された逆止弁は固定部材により固定され、固定部材の端部をキャップ部等の閉塞部材で覆うことにより通気路を気密状態とすることができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-37876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
閉塞部材により通気路を気密状態とするためには、閉塞部材と固定部材との気密性を確保するだけでなく、固定部材と収容部との接続部も気密となるようにしなければならない。このため、従来は固定部材と収容部との接続部を気密に嵌合させることで機密性を実現しているが、組付け時に嵌合部に傷がつき、気密性が損なわれるという問題が確認された。気密性が損なわれた状態でソフトバックに接続されるとソフトバック内に空気が入ってしまい、ソフトバックが意図せず押圧された場合に通液路内に空気が入り込む事象が起こり得る。
【0006】
本開示の課題は、十分な気密性を確保しつつ逆止弁の取り付けが容易な瓶針を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の瓶針の一態様は、先端側に設けられた針先部、基端側に設けられた接続部、及び側方に突出した逆止弁収容筒を含む中間部を有する瓶針本体と、逆止弁収容筒に収容された逆止弁と、逆止弁を固定するように逆止弁収容筒に取り付けられた逆止弁固定部と、キャップ部とを備え、瓶針本体は、針先部と接続部とを連通する通液路と、針先部と逆止弁収容筒とを連通する通気路とを有し、逆止弁は、弁本体と、弁本体を囲む弁体フランジ部とを有し、逆止弁固定部は、瓶針本体よりも軟質の材料により形成され、筒状の固定部本体と、固定部本体内に固定された通気フィルタとを有し、固定部本体の一端には、気密に嵌合するキャップ部が設けられ、固定部本体の内部には開口を有する中間壁が設けられ、通気フィルタは、中間壁の外側面に開口を覆うように固定され、弁体フランジ部は、逆止弁収容筒と固定部本体との間に位置し、逆止弁収容筒に固定部本体が組み付けられることにより、一方の面が逆止弁収容筒の端部と気密に当接し、他方の面が中間壁と気密に当接している。
【0008】
瓶針の一態様において、通気フィルタが、中間壁の外側面に固定され、弁体フランジ部は、一方の面が逆止弁収容筒の端部と気密に当接し、他方の面が中間壁と気密に当接している。通気フィルタが弁体フランジ部から離れていることにより、弁体フランジ部を逆止弁収容筒の端部と中間壁との間を気密にシールするシールリングとして機能させることができる。このため、逆止弁収容筒と固定部本体との当接面を気密にする必要がない。よって、逆止弁収容筒と固定部本体との当接面に傷が形成されても気密性が損なわれることがなく、固定部本体を逆止弁収容筒よりも軟質にした場合であっても気密性が良好な瓶針を実現することができる。また、逆止弁固定部を逆止弁収容筒に嵌合させるだけで、十分な気密性を確保できるため、逆止弁の取り付けが容易となる。
【0009】
瓶針の一態様において、逆止弁収容筒は、弁体フランジ部の厚さよりも浅いフランジ収容凹部を端部に有し、弁体フランジ部はフランジ収容凹部に収容され、弁体フランジ部の外縁と、フランジ収容凹部の周壁との間には隙間が存在していてもよい。このような構成とすれば、押圧された弁体フランジ部がフランジ収容凹部内に広がることにより、押圧による変形の影響を吸収することができ、弁本体に影響が及びにくくすることができる。
【0010】
瓶針の一態様において、逆止弁収容筒の弁体フランジ部との当接面には、弁体フランジ部を押圧する周状の突起が設けられており、中間壁の弁体フランジ部との当接面は、平坦面とすることができる。このような構成とすることにより、フランジ収容凹部を適度に押圧することが容易となる。
【0011】

瓶針の一態様において、逆止弁固定部は、前記逆止弁収容筒に外嵌していてもよい。このような構成とすることにより、逆止弁固定部の取り付けがさらに容易となる。
【0012】
瓶針の一態様において、逆止弁収容筒の周壁と、中間壁の内側の面とは当接しないようにすることができる。このような構成とすることにより、中間壁の内側の面がフランジ収容凹部の周壁と当接して変形し、固定部本体の外嵌力が小さくなってしまう事態を避けることができる。
【0013】
瓶針の一態様において、キャップ部は、固定部本体と可撓性の連結部材により連結されていてもよい。このような構成とすることにより、固定部本体の開口部と気密に嵌合するキャップ部を設けやすくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の瓶針によれば、逆止弁を容易に取り付けることができ且つ十分な気密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る瓶針を示す断面図である。
図2】一実施形態の瓶針の逆止弁収容筒の部分を拡大して示す断面図である。
図3】逆止弁の取り付け状態を示すCT写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の瓶針100は、側方に突出した逆止弁収容筒121を有する瓶針本体101と、逆止弁収容筒121に収容された逆止弁103と、逆止弁収容筒121に外嵌する逆止弁固定部105とを備えている。
【0017】
瓶針本体101は、硬質の樹脂等により形成された管状の部材であり、先端側に針先部111を有し、基端側に接続部113を有し、針先部111と接続部113との間に中間部114を有している。針先部111は、尖った先端に向かって次第に縮径する針形状であり、薬液容器に設けられたゴム栓等に穿刺することができる。接続部113は、基端側にわずかに縮径したテーパ状であり、チューブ等を接続することができる。中間部114は、針先部111及び接続部113よりも大径に形成されており、側方に突出した逆止弁収容筒121を有している。
【0018】
本実施形態の瓶針は、重力によって薬液を導出するために、針先部111が上側に、基端部が下側に位置する状態で使用することが一般的であるが、以下においては、逆止弁収容筒121が突出する方向が上側、針先部111の側を先端側、接続部113の側を基端側として説明する。
【0019】
瓶針本体101は、針先部111に設けられた第1の針先開口111aと、接続部113の基端に設けられた接続部開口113aとを連通する通液路116、及び針先部111に設けられた第2の針先開口111bと、逆止弁収容筒121の内腔121aとを連通する通気路117を有している。通液路116に気泡が入らないようにする観点から、通気路117の第2の針先開口111bは、通液路116の第1の針先開口111aよりも先端側に位置していることが好ましい。
【0020】
図2に示すように、逆止弁103は、例えばダックビル弁であり、通気路117の外側から内側へ空気を通過させるが、通気路117の内側から外側へ液体を通過させない。逆止弁103は、弁本体131と、弁本体131を囲む弁体フランジ部132とを有している。弁本体131は、逆止弁収容筒121の内径よりもわずかに小さい外径を有しており、逆止弁収容筒121内に収容されている。弁体フランジ部132は、外径が逆止弁収容筒121の内径よりも大きく且つ外径よりも小さく、逆止弁収容筒121の上端に設けられたフランジ収容凹部123に収容されている。フランジ収容凹部123は、深さが弁体フランジ部132の厚さよりも浅い。
【0021】
逆止弁固定部105は、筒状の固定部本体151と、固定部本体に連結部164により連結されたキャップ部155と、固定部本体151内に固定された通気フィルタ161とを有している。固定部本体151は、逆止弁収容筒121に外嵌する第1嵌合部152と、第1嵌合部152の上端に設けられ、中央に開口部153aを有する中間壁153と、中間壁153から第1嵌合部152と反対側に突出して設けられ、キャップ部155が着脱自在に嵌合する第2嵌合部154とを有している。第2嵌合部154は、キャップ部155を嵌合させることにより、当接部が気密状態となるように設計されている。通気フィルタ161は、中間壁153の第2嵌合部154側の面(外側面)に開口部153aを塞ぐように固定されている。
【0022】
フランジ収容凹部123に弁体フランジ部132を収容して、逆止弁固定部105を逆止弁収容筒121に取り付けると、弁体フランジ部132は、フランジ収容凹部123の底面と中間壁153の第1嵌合部152側の面(内側面)との間に挟まれて固定される。フランジ収容凹部123の深さが、弁体フランジ部132の厚さよりも浅いため、中間壁153の内側面は、確実に弁体フランジ部132に当接する。また、弁体フランジ部132とフランジ収容凹部123の底面との当接部は気密にシールされ、弁体フランジ部132と中間壁153の内側面との当接部も気密にシールされるように設計されている。
【0023】
硬質の薬液容器の場合には、キャップ部155を第2嵌合部154に取り付けずに瓶針100を使用する。この場合には、通気フィルタ161及び逆止弁103が設けられた通気路117を通って、薬液容器内に空気が供給される。このため、薬液容器内が陰圧になることなく、容器内の薬液は通液路116を通って導出される。逆止弁103が設けられているため、薬液容器内の薬液が通気路117を逆流した場合にも、外部へ漏れ出さないようにすることができる。
【0024】
軟質の薬液容器の場合には、キャップ部155を第2嵌合部154に気密に嵌合させて瓶針100を使用する。この場合には、通気路117から空気が供給されないが、大気圧によって薬液容器が圧縮されることにより、容器内の薬液が通液路116を通って導出される。
【0025】
キャップ部155を第2嵌合部154に嵌合させて気密状態としても、逆止弁収容筒121と逆止弁固定部105との間を気密状態にできなければ、通気路117から薬液容器に空気が供給されてしまう。逆止弁収容筒と逆止弁固定部とを接着又は融着等すれば、気密性が向上するが工程が増加してしまう。また、接着剤がはみ出して、通気路を塞いだり、逆止弁の動きを阻害したりする恐れも生じる。
【0026】
接着等をすることなく、逆止弁収容筒と逆止弁固定部との間を気密にしようとすると、逆止弁固定部の内径を逆止弁収容筒の外径よりも若干小さくして、逆止弁収容筒の外壁面と逆止弁固定部の内壁面との間に適度な力が加わり密着するようにしなければならない。このため、逆止弁収容筒と逆止弁固定部とを非常に精密に成形する必要がある。また、逆止弁固定部105を逆止弁収容筒に気密に嵌合させる際には大きな力が必要となり、組立性が低下する。さらに、逆止弁収容筒の外壁面及び逆止弁固定部の内壁面の平滑性を確保する必要があるが、逆止弁収容筒の外壁面は露出しているため、自動組み立て装置等を使用した場合に逆止弁収容筒の外壁に微細な傷が生じて平滑性が損なわれ不良が発生するリスクも高い。
【0027】
逆止弁固定部と逆止弁収容筒との間に別途シールリング等を設けることも考えられるが、この場合には部品点数が増加してしまう。エラストマーである逆止弁を逆止弁固定部と逆止弁収容筒との間のシールとして利用することができれば、部品点数の増加を抑えることができる。しかし、逆止弁と通気フィルタとを一工程で固定するために、逆止弁と通気フィルタとを重ねた状態で固定すると通気フィルタの部分から空気が漏れてしまうため逆止弁をシールとして用いることができない。また、気密を確保するために逆止弁に力をかけて圧縮すると逆止弁が変形して開いた状態で固定されてしまう恐れがある。
【0028】
本実施形態においては、通気フィルタ161を逆止弁固定部105の中間壁153の外側面に固定し、中間壁153の内側面と弁体フランジ部132とが直接当接するようにしている。これにより、エラストマーである逆止弁103をシール部材として利用することができ、中間壁153の内側面と弁体フランジ部132との当接面及びフランジ収容凹部123の底面と弁体フランジ部132との当接面が気密にシールされる。本実施形態においては、逆止弁固定部105の内壁面と逆止弁収容筒121の外壁面との当接面にシール機能を持たせる必要がなく、逆止弁収容筒121の外壁面及び逆止弁固定部105の内壁面は通常の加工精度で成形することができる。
【0029】
逆止弁固定部105が逆止弁収容筒121よりも軟質であると、嵌合がしやすくなる一方、逆止弁収容筒121に存在する傷等により、逆止弁固定部105と逆止弁収容筒121との当接面の気密性が大きく低下しやすくなる。本実施形態においては、逆止弁固定部105及び逆止弁収容筒121と弁体フランジ部132との当接面において気密性を確保しているため、逆止弁収容筒121の傷等の影響を受けにくく、逆止弁固定部105を逆止弁収容筒121よりも軟質にすることができる。また、逆止弁固定部の上方開口部を逆止弁収容部に比して軟質であると、キャップとの気密嵌合が行いやすくなる。
【0030】
弁体フランジ部132はフランジ収容凹部123に収容されており、弁体フランジ部132の外側にフランジ収容凹部123の周壁が存在する。このため、逆止弁103を逆止弁収容筒121に収容する際に位置合わせが容易にできる。但し、逆止弁収容筒121の上端を平坦面として、第1嵌合部152の内壁に肉厚の部分を設けることにより、弁体フランジ部132の外縁と第1嵌合部152の内壁との間に大きな空洞が生じないようにすることもできる。なお、組立時に変形が生じにくいように、フランジ収容凹部123を設ける方が好ましい。
【0031】
図3は、逆止弁収容筒121に収容された逆止弁103のCT(Computed Tomography)写真を示している。図3に示すように、フランジ収容凹部123の内径は、弁体フランジ部132の外径よりも大きく、収容された弁体フランジ部132の外縁とフランジ収容凹部123の周壁とは当接しておらず、隙間が存在している。フランジ収容凹部123の周壁と弁体フランジ部132の外縁との間に隙間があることにより、弁体フランジ部132が変形した際にもフランジ収容凹部123の周壁による応力が加わりにくくなり、変形した態様を安定させることができる。このため、弁本体131側が変形して弁が開いた状態で固定されてしまう事態を生じにくくすることができる。また、弁体フランジ部132が変形した状態で弁体フランジ部132が逆止弁固定部105と逆止弁収容筒121とで固定されると、フランジ収容凹部123の周壁からの応力により弁体フランジ部132が変形した状態で圧縮されてしまう。このため、弁体フランジ部132への圧縮力が分散されてうまく軸方向に圧縮されず、逆止弁103を気密に固定できない事態が生じうるが、フランジ収容凹部123の周壁と弁体フランジ部132の外縁との間に隙間があることにより、そのような事態が防止される。但し、弁本体131側の変形がなければ、弁体フランジ部132の外縁とフランジ収容凹部123の周壁とが当接していてもよい。
【0032】
フランジ収容凹部123の底面には、周状の底面突起部124が設けられている。底面突起部124は例えば断面略三角形状とすることができる。底面突起部124を設けることにより、弁体フランジ部132を押圧する力を大きくすることができる。本実施形態において、中間壁153の内側面は平坦面となっている。このため、弁体フランジ部132の上面を均等に押圧することができ、局所的な変形の発生を抑えることができる。本実施形態においては、フランジ収容凹部123の底面に突起を設け、中間壁153の内側面を平坦面としたが、中間壁153の内側面に突起を設け、フランジ収容凹部123の底面を平坦面とすることもできる。但し、通気路117の内部の圧力が外部の圧力よりも高くなる可能性が高いため、逆止弁103を確実に固定する観点から、フランジ収容凹部123の側に突起を設ける方が好ましい。
【0033】
逆止弁収容筒121の外壁面に周状の係合凸部125が設けられ、逆止弁固定部105の第1嵌合部152の内壁面に周状の係合凹部152aが設けられている。係合凸部125と係合凹部152aとが互いに係合することにより、逆止弁収容筒121に取り付けられた逆止弁固定部105が外れないようにすることができる。但し、逆止弁固定部105を逆止弁収容筒121の所定の位置に固定することができれば、他の構成を採用することもできる。例えば、第1嵌合部152の内壁面に凸部を設け、逆止弁収容筒121の外壁面に凹部を設けることもできる。
【0034】
係合凸部125と係合凹部152aとが係合していれば、第1嵌合部152の外壁面と逆止弁固定部105の内壁面との間にクリアランスを設けることができるため、第1嵌合部152を逆止弁収容筒121に外嵌させる操作が容易となる。
【0035】
係合凸部125と係合凹部152aとは、フランジ収容凹部123に収容された弁体フランジ部132に適度な圧力がかかる位置に逆止弁固定部105が固定されるように配置されている。係合凸部125と係合凹部152aとが係合した状態において、逆止弁収容筒121の上端(フランジ収容凹部123の上端)と、逆止弁固定部105の中間壁153の内側面とは当接しておらず、隙間Aが存在している。隙間Aが存在することにより、弁体フランジ部132を逆止弁固定部105と逆止弁収容筒121とで気密に固定することができる。即ち、中間壁153の内側面がフランジ収容凹部123の上端と当接すると、比較的軟質の逆止弁固定部105が変形し、第1嵌合部152が逆止弁収容筒121に嵌合する嵌合力が低下して、弁体フランジ部132を気密に固定できなくなるおそれがある。隙間Aを設けることにより、このような事態の発生を抑えることができる。
【0036】
逆止弁収容筒121の外壁面には、係合凸部125よりも下側に収容筒鍔部126が設けられている。収容筒鍔部126を設けることにより、逆止弁固定部105を逆止弁収容筒121に嵌合させる操作が容易となる。
【0037】
収容筒鍔部126は、逆止弁固定部105を適切な位置に固定した際に、第1嵌合部152の下端との間に隙間Bができる位置に設けられている。収容筒鍔部126と第1嵌合部152の下端との隙間Bは、逆止弁収容筒121の上端と中間壁153の内側面との隙間Aよりも大きいことが好ましい。隙間Bを隙間Aよりも大きくすることにより、逆止弁固定部105及び逆止弁収容筒121の成形公差が大きい場合にも、中間壁153の内側面が弁体フランジ部132の上面に確実に当接する位置に逆止弁固定部105を固定することができると共に使用者が意図せず逆止弁固定部105と逆止弁収容筒121の嵌合を解除し、意図せず気密状態を解除してしまう事態を防止している。また、収容筒鍔部126と第1嵌合部152の下端との隙間により、製造者は逆止弁固定部105が弁体フランジ部132を圧縮しすぎていないかどうかを目視で確認することも容易にできる。
【0038】
通気フィルタ161は、中間壁153の外側面に設けられた周状のフィルタ固定突起162を用いて溶着している。このような構成とすることにより通気フィルタ161を容易に固定することができる。但し、通気フィルタ161は、接着剤等により固定することもできる。なお、図1及び図2には、フィルタ固定突起162が完全に形状を保っている状態を記載しているが、溶融して痕跡だけになっている場合もある。
【0039】
筒状の第2嵌合部154が中間壁153から上方に突出しており、通気フィルタ161は、第2嵌合部154の底面に位置している。このため、通気フィルタ161に指が触れたりする事態を生じにくくできる。なお、通気フィルタ161に指が触れたりする事態を生じにくくする観点から逆止弁固定部105の上方開口部の内径は6.4mm以下で、開口端から通気フィルタ161までの深さは2.0mm以上であることが好ましい。
【0040】
キャップ部155は、第2嵌合部154に気密に外嵌する。外嵌するキャップ部は、内側面が窪んだ形になるため、不用意に指が触れたりする事態が生じにくく好ましい。また、開閉操作に要する力も小さくてすむため好ましい。但し、キャップ部155が第2嵌合部154に内嵌するようにすることもできる。
【0041】
キャップ部155は、一体に形成された連結部164より固定部本体151と連結されている。これにより、キャップ部155を落下させたり、紛失したりしないようにすることができる。連結部164は、中間部に連結部164の他の部分よりも肉薄になった肉薄部165を有している。これにより、連結部164を容易に曲げることができ、キャップ部155の開閉操作をすることができる。キャップ部155の連結部164が接続された位置と反対側の位置には、タブ166が設けられている。タブ166を引っ張ることにより、キャップ部155を取り外す操作が容易にできる。キャップ部155と固定部本体151とは一体に形成することができるが、別体とすることもできる。
【0042】
本実施形態において、固定部本体151は、逆止弁収容筒121に外嵌している。固定部本体151を逆止弁収容筒121に外嵌させることにより、固定部本体151と一体となったキャップ部155を容易に形成することができる。また、逆止弁固定部は逆止弁収容筒121に比して軟質であると、キャップと逆止弁固定部とを気密に嵌合させやすく、キャップ部による気密性の確保が容易となる。
【0043】
また、固定部本体151を逆止弁収容筒121に外嵌させる方が、逆止弁収容筒に押し込んで内嵌させるよりも組立が容易である。内嵌する固定部本体を逆止弁収容筒に押し込む際には、固定部本体が斜めになりやすく、弁体フランジ部を均等に当接せず、気密を実現できなくなるおそれもある。
【0044】
瓶針本体101の中間部114には、本体鍔部127が設けられている。本体鍔部127を設けることにより、瓶針100の把持が容易となり操作性が向上する。また、瓶針100をゴムキャップ部等に穿刺する際に穿刺する深さの目安として用いることもできる。但し、本体把持部は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0045】
逆止弁収容筒121を含む瓶針本体101は、硬質の樹脂により形成することができ、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等により形成することができる。逆止弁固定部105は、逆止弁収容筒121よりも軟質の樹脂により形成することができ、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等により形成することができる。中でも、柔軟性と強度との兼ね合いからポリプロピレンが好ましい。通気フィルタ161は、空気が通過するフィルタであればよく、例えばフッ素樹脂等からなる疎水性のフィルタとすることができる。逆止弁103が、ダックビル弁である例を示したが、通気路117の外側から内側へ空気を通過させるが、通気路117の内側から外側へ液体を通過させないようにできれば、どのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示の瓶針は、逆止弁を容易に取り付けることができ且つ十分な気密性を確保することができ、硬質及び軟質のいずれの薬液容器にも使用可能な瓶針として、医療分野等において有用である。
【符号の説明】
【0047】
100 瓶針
101 瓶針本体
103 逆止弁
105 逆止弁固定部
111 針先部
111a 第1の針先開口
111b 第2の針先開口
113 接続部
113a 接続部開口
114 中間部
116 通液路
117 通気路
121 逆止弁収容筒
121a 内腔
123 フランジ収容凹部
124 底面突起部
125 係合凸部
126 収容筒鍔部
127 本体鍔部
131 弁本体
132 弁体フランジ部
151 固定部本体
152 第1嵌合部
152a 係合凹部
153 中間壁
153a 開口部
154 第2嵌合部
155 キャップ部
161 通気フィルタ
162 フィルタ固定突起
164 連結部
165 肉薄部
166 タブ
図1
図2
図3