IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-重複長さの検出方法 図1
  • 特許-重複長さの検出方法 図2
  • 特許-重複長さの検出方法 図3
  • 特許-重複長さの検出方法 図4
  • 特許-重複長さの検出方法 図5
  • 特許-重複長さの検出方法 図6
  • 特許-重複長さの検出方法 図7
  • 特許-重複長さの検出方法 図8
  • 特許-重複長さの検出方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】重複長さの検出方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20240409BHJP
   B29C 65/82 20060101ALI20240409BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20240409BHJP
   G01B 21/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B29D30/30
B29C65/82
G01B11/02 Z
G01B21/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020004806
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021109431
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊福 喜広
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-209739(JP,A)
【文献】特開2004-354258(JP,A)
【文献】特開2011-213024(JP,A)
【文献】特開昭62-070704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368777(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106662429(CN,A)
【文献】特開平1-197609(JP,A)
【文献】特開平7-232382(JP,A)
【文献】特開2011-224908(JP,A)
【文献】特開2020-10011(JP,A)
【文献】特開2016-7846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C63/00-63/48
65/00-65/82
B29D30/00-30/72
G01B11/00-11/30
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム上に巻きつけられた帯状部材の前端部にその後端部を重ねて形成され、前記前端部と前記後端部との重複部と、前記前端部に連なり前記ドラムに沿って延びる本体と、前記後端部と前記本体との間を繋ぐ傾斜部とを含む筒状部材における、前記重複部の長さを検出する方法であって、
前記帯状部材の後端位置を検出するステップと、
前記後端位置に基づいて前記帯状部材の前端位置を推定するステップと、
前記後端位置と前記前端位置とに基づいて、前記重複部の長さを計算するステップと
を含み、
前記推定ステップにおいて、
前記筒状部材の外側面に含まれる、前記傾斜部の外側面の形状を表す線分を特定し、前記帯状部材の厚さに相当する距離内側に、前記線分を移動させて、前記傾斜部の内側面の形状を表す線分の位置が推定され
前記筒状部材の外側面に含まれる、前記重複部の外側面の形状を表す線分を特定し、前記帯状部材の厚さに相当する距離内側に、前記線分を移動させて、前記重複部に含まれる前記前端部の外側面の形状を表す線分の位置が推定され、
前記傾斜部の前記内側面の形状を表す前記線分の延長線と、前記前端部の前記外側面の形状を表す前記線分の延長線との交点が、前記帯状部材の前記前端位置とされる、重複長さの検出方法。
【請求項2】
前記重複部の長さをモニターに表示するステップを含む、請求項1に記載の重複長さの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重複長さの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タイヤを構成する要素としてのカーカスやベルトは、シート状の帯状部材を用いて形成される。帯状部材は、成形機のドラムに巻かれ、前端部に後端部を重ねて筒状に加工される。前端部と後端部との重複部は、ユニフォミティのようなタイヤの性能に影響する。タイヤの製造では、例えば、下記の特許文献1に開示されたジョイント量測定装置を用いて、重複部の長さが計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-207240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
計測した重複部の長さが所定の範囲にない場合、後端部を前端部から剥がし前端部に貼り直すことで重複部の調整が行われる。高品質なタイヤの生産のために、調整後の重複部の長さの検出方法が検討されている。
【0005】
重複部において帯状部材の前端は後端部に覆われる。例えば、レーザー変位計を用いて調整後の筒状部材の外側面形状を測定しても、前端位置を検出することはできない。後端部を貼りつける前に検出した前端位置に基づいて重複部の長さを推定できるが、後端部を貼り直す際に前端部が動くことがあり、この推定により得られる重複部の長さの精度は低い。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、調整後の筒状部材に含まれる重複部の長さを高い精度で推定でき、高品質なタイヤの生産に貢献できる、重複長さの検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る重複長さの検出方法は、ドラム上に巻きつけられた帯状部材の前端部にその後端部を重ねて形成され、前記前端部と前記後端部との重複部と、前記前端部に連なり前記ドラムに沿って延びる本体と、前記後端部と前記本体との間を繋ぐ傾斜部とを含む筒状部材における、前記重複部の長さを検出する方法である。この検出方法は、
(1)前記帯状部材の後端位置を検出するステップ、
(2)前記後端位置に基づいて前記帯状部材の前端位置を推定するステップ、及び
(3)前記後端位置と前記前端位置とに基づいて、前記重複部の長さを計算するステップ
を含む、重複長さの検出方法。
【0008】
好ましくは、この重複長さの検出方法は、前記重複部の長さをモニターに表示するステップを含む、請求項1に記載の重複長さの検出方法。
【0009】
好ましくは、この重複長さの検出方法では、前記推定ステップにおいて、前記筒状部材の外側面に含まれる、前記傾斜部の外側面の形状を表す線分を特定し、前記帯状部材の厚さに相当する距離内側に、前記線分を移動させて、前記傾斜部の内側面の形状を表す線分の位置が推定される。
【0010】
より好ましくは、この重複長さの検出方法では、前記推定ステップにおいて、前記筒状部材の外側面に含まれる、前記重複部の外側面の形状を表す線分を特定し、前記帯状部材の厚さに相当する距離内側に、前記線分を移動させて、前記重複部に含まれる前記前端部の外側面の形状を表す線分の位置が推定され、前記傾斜部の前記内側面の形状を表す前記線分と、前記前端部の前記外側面の形状を表す前記線分との交点が、前記帯状部材の前記前端位置とされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重複長さの検出方法は、調整後の筒状部材に含まれる重複部の長さを高い精度で推定できる。この検出方法は、高品質なタイヤの生産に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重複長さの検出方法が適用される、筒状部材の成形機の一部が示された側面図である。
図2図2は、筒状部材に含まれる重複部を示す側面図である。
図3図3は、調整前の重複部の形状計測結果を示すグラフである。
図4図4は、調整前の重複部の長さを検出するためのフロー図である。
図5図5は、調整前の重複部の判定結果の表示状況を示す図である。
図6図6は、調整後の重複部の長さを検出するためのフロー図である。
図7図7は、調整後の筒状部材が示された側面図である。
図8図8は、調整後の重複部の長さの検出要領を説明する図である。
図9図9は、調整後の重複部の判定結果の表示状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る、重複長さの検出方法が適用される、成形機2を示す。この成形機2では、シート状の帯状部材4を筒状に加工して、例えば、タイヤの構成要素である、カーカス又はベルトが形成される。この成形機2は、タイヤの製造で用いられる一般的な成形機である。
【0015】
この成形機2は、コンベア6及びドラム8を備える。コンベア6は、他で準備された帯状部材4をドラム8に案内する。ドラム8は回転可能に支持されており、ドラム8に案内された帯状部材4はこのドラム8上に巻かれる。
【0016】
図示されないが、この成形機2はさらに、制御手段を備える。この制御手段は、例えばCPU等の演算部、RAM及びROMを含む記憶部等を有するマイクロコンピュータにより構成される。制御手段は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。この制御手段は、この成形機2の構成要素と通信ケーブルで繋げられる。詳述しないが、前述した、コンベア6及びドラム8の動作はこの制御手段によって制御される。後述する、重複部の長さを検出するためのデータ処理も、この制御手段において行われる。
【0017】
この成形機2では、帯状部材4がドラム8に案内されると、図1(a)に示されるように、この帯状部材4の前端部10がドラム8に載置される。図示されない駆動手段によりドラム8を回転させるとともに帯状部材4をドラム8に案内することで、この帯状部材4がドラム8に巻かれていく。図1(b)に示されるように、帯状部材4の前端部10と後端部12とを接合して筒状部材14が得られる。
【0018】
図2には、帯状部材4の前端部10と後端部12との接合状況が示される。この図2に示されるように、この成形機2で形成された筒状部材14では、先にドラム8に載置された帯状部材4の前端部10に、この帯状部材4の後端部12が載せられる。これにより、前端部10と後端部12との重複部16と、前端部10に連なりドラム8に沿って延びる本体18と、後端部12と本体18との間を繋ぐ傾斜部20とが構成される。この筒状部材14は、ドラム8上に巻きつけられた帯状部材4の前端部10にその後端部12を重ねて形成される。この筒状部材14は、前端部10と後端部12との重複部16と、前端部10に連なりドラム8に沿って延びる本体18と、後端部12と本体18との間を繋ぐ傾斜部20とを含む。
【0019】
図2において、符号EFは帯状部材4の前端である。符号ERは、帯状部材4の後端である。図2においては、前端部10と後端部12との接合面における前端EFが、前端位置PFとして示されている。この接合面における後端ERが、後端位置PRとして示されている。図2において、両矢印Lは重複部16の長さである。この長さLは、この接合面に沿って計測される前端位置PFから後端位置PFまでの距離により表される。
【0020】
タイヤの製造では、重複部16の長さLを検出して、この重複部16が適正に形成されているかの確認が行われる。この確認には、前端部10をドラム8に載置してからこの前端部10に後端部12を重ねて筒状部材14が形成される過程における帯状部材4、言い換えれば、ドラム8に巻かれていく帯状部材4の外側面の形状に関するデータが用いられる。タイヤの製造では、検出した重複部16の長さLが所定の範囲内にあれば、筒状部材14は次工程へ展開される。検出した重複部16の長さLが所定の範囲内になければ、作業員によって重複部16の調整が行われる。作業員は後端部12を前端部10から剥がし、剥がした後端部12を前端部10に改めて貼りつける。
【0021】
タイヤの製造では、調整後の重複部16についても、重複部16の長さLを検出して、適正に形成されているかの確認が行われる。この確認には、ドラム8上に形成された筒状部材14の外側面の形状に関するデータが用いられる。このデータにおいて、重複部16が適正に形成されていることが確認できれば、筒状部材14は次工程へ展開される。この調整は、適正な重複部16が得られるまで続けられる。
【0022】
前述したように、重複部16の長さLの検出には、ドラム8に巻かれていく帯状部材4やドラム8上に形成された筒状部材14の、外側面の形状に関するデータが用いられる。このため、この成形機2は、ドラム8に巻かれていく帯状部材4やドラム8上に形成された筒状部材14の外側面の形状を計測するために、変位計22を備える。
【0023】
この成形機2では、外側面の形状を計測できるのであれば、変位計22に特に制限はない。この成形機2では、市販のレーザー変位計が変位計22として用いられる。
【0024】
レーザー変位計は、計測対象物に向けてレーザー光を照射し、レーザー変位計から計測対象物までの距離データを取得する。この成形機2では、ドラム8を回転しながらこの距離データが取得されるので、ドラム8に巻かれていく帯状部材4やドラム8上に形成された筒状部材14の外側面の、周方向に沿った形状に関するデータが得られる。
【0025】
前述したように、筒状部材14において重複部16が適正に形成されているかを確認するために、重複部16の長さLが検出される。まず、ドラム8に巻かれていく帯状部材4の外側面形状に関するデータに基づいて、筒状部材14における重複部16の長さLを検出する方法(以下、調整前の重複長さの検出方法とも称される。)が説明される。
【0026】
[調整前の重複長さの検出方法]
図3は、調整前の重複長さの検出方法で用いられるドラム8に巻かれていく帯状部材4の外側面形状に関するデータの一例を示す。図3において、横軸は、ドラム8に巻かれた帯状部材4の周方向位置を表す。この図3においては、左から右に向かう方向がドラム8の回転方向に相当する。縦軸は、変位計22の検出強度を表し、ドラム8に載置された帯状部材4の厚さに対応する。この図3に示されたデータは、作業員による調整が行われる前の重複部16の形状計測結果である。
【0027】
この図3には、2つの波形が示される。2つの波形のうち、下側の波形は、帯状部材4の前端部10をドラム8に載置したときの波形(以下、貼り始め波形とも称される。)である。上側の波形は、帯状部材4の後端部12を前端部10に重ねたときの波形(以下、貼り終わり波形とも称される。)である。
【0028】
貼り始め波形からは、検出強度が、一気に上昇し、その後、一定に保持されていることが確認される。この波形は、帯状部材4の前端部10がドラム8に載置された状態を検出している。強度が急速に上昇している部分は、帯状部材4の前端EFに対応する。
【0029】
貼り終わり波形からは、検出強度が、帯状部材4の前端EFに対応する部分の手前で徐々に上昇し、しばらく一定に保持された後、一気に降下していることが確認される。この波形は、帯状部材4の後端部12を前端部10に重ねた状態を検出している。この波形のうち、強度が徐々に上昇している部分は、筒状部材14の傾斜部20の外側面形状に対応する。そして、強度が急速に降下している部分は、帯状部材4の後端ERに対応する。
【0030】
ドラム8に巻かれていく帯状部材4の外側面形状に関するデータからは、帯状部材4の前端位置PFと後端位置PRとが検出できる。そして、この前端位置PFから後端位置PFまでの距離を求めることで、筒状部材14における重複部16の長さLが得られる。
【0031】
図4には、調整前の重複長さの検出方法のフローが示される。この検出方法は、
(1)ドラム8に巻かれていく帯状部材4の外側面形状を計測するステップ(Sb1)、
(2)帯状部材4の前端位置PFを検出するステップ(Sb2)、
(3)帯状部材4の後端位置PRを検出するステップ(Sb3)、
(4)検出した前端位置PFと後端位置PRとに基づいて、重複部16の長さLを計算するステップ(Sb4)
及び
(5)重複部16の長さLに基づいて、この重複部16の形成状況を判定するステップ(Sb5)
を含む。この判定ステップ(Sb5)において、重複部16の長さLが所定の範囲内にあり、重複部16が適正に形成されていると判断された場合には、前述したように、形成された筒状部材14は次工程に展開される。この検出方法は、次工程へ展開するステップ(Sb6)を含む。そして、重複部16の長さLが所定の範囲内になく、重複部16が適正に形成されていないと判断された場合には、作業員が重複部16の調整を行う。この検出方法は、重複部16を調整するステップ(Sb7)を含む。
【0032】
この検出方法では、図5に示されるように、判定結果とともに、計算ステップ(Sb4)で計算された重複部16の長さLがモニター24に表示されてもよい。これにより、作業員はモニター24の表示内容を確認することで、重複部16の調整の要否について容易に認識できる。この観点から、この検出方法は、判定結果とともに、重複部16の長さLをモニター24に表示するステップを含むのが好ましい。
【0033】
前述したように、タイヤの製造では、調整後の重複部16についても、重複部16の長さLを検出して、適正に形成されているかの確認が行われる。この場合、ドラム8上に形成された筒状部材14の外側面形状に関するデータが用いられる。筒状部材14において、帯状部材4の前端EFは、帯状部材4の後端部12に覆われるので、ドラム8上に形成された筒状部材14の外側面形状に関するデータでは、重複部16の長さLの計算に必要な、前端位置PFを検出することはできない。後端部12を貼りつける前に検出した前端位置PFに基づいて重複部16の長さLを推定できるが、後端部12を貼り直す際に前端部10が動くことがあり、この推定により得られる重複部16の長さLの精度は低い。
【0034】
そこで、発明者は、前端位置PFを検出できない、ドラム8上に形成された筒状部材14の外側面形状に関するデータに基づいて、筒状部材14における重複部16の長さLを検出する方法(以下、調整後の重複長さの検出方法とも称される。)について検討し、帯状部材4の厚さを考慮することで、重複部16の長さLを高精度に検出できることを見出し、本発明の完成に至っている。次に、この調整後の重複長さの検出方法が説明される。
【0035】
[調整後の重複長さの検出方法]
図6には、調整後の重複長さの検出方法のフローが示される。この検出方法は、
(1)筒状部材14の外側面形状を計測するステップ(Sa1)、
(2)帯状部材4の後端位置PRを検出するステップ(Sa2)、
(3)検出した後端位置PRに基づいて帯状部材4の前端位置PFを推定するステップ(Sa3)、
(4)検出した後端位置PRと推定した前端位置PFとに基づいて、重複部16の長さLを計算するステップ(Sa4)
及び
(5)重複部16の長さLに基づいて、この重複部16の形成状況を判定するステップ(Sa5)
を含む。
【0036】
計測ステップ(Sa1)では、重複部16の調整を終えた筒状部材14の外側面形状が計測される。図7に示されるように、ドラム8を回転させることで、筒状部材14が変位計22の直下を通過させられる。これにより、ドラム8上に形成された筒状部材14の外側面形状に関するデータが得られる。
【0037】
計測ステップ(Sa1)で得たデータには、ノイズが含まれる。以降のステップにおいて、ノイズは処理の障害になることが懸念されるので、このノイズを除去するために、この検出方法では、計測ステップ(Sa1)で得られるデータに対しては平均化処理が行われるのが好ましい。この検出方法では、処理に障害のない程度にノイズを除去できるのであれば、平均化処理の方法に、特に、制限はなく、ノイズ除去で用いられる一般的な平均化処理が行われる。なお、前述した、調整前の重複長さの検出方法における、計測ステップ(Sb1)で得られるデータに対しても、平均化処理が行われるのが好ましい。
【0038】
図8は、計測ステップ(Sa1)で得られる、筒状部材14の外側面形状に関するデータの概念図である。この図8には、筒状部材14の外側面形状に関するデータのうち、重複部16を含む部分の外側面形状に関するデータが示される。この図8に示されたデータは、計測ステップ(Sa1)で得た外側面形状に関するデータを平均化処理することでノイズを除去したデータに対応する。
【0039】
例えば、図8(a)に示されるように、筒状部材14の外側面形状に関するデータにおいて、重複部16を含む部分の外側面形状に関するデータは、図3に示された貼り終わり波形と同様の波形で示される。この重複部16を含む部分の外側面形状を表す波形からは、検出強度が徐々に上昇し、しばらく一定に保持された後、一気に降下していることが確認される。この波形のうち、強度が徐々に上昇している部分(以下、上昇部分26とも称される。)は、筒状部材14の傾斜部20の外側面形状に対応する。そして、強度が急速に降下している部分(以下、急降下部分28とも称される。)は、帯状部材4の後端ERに対応する。
【0040】
この検出方法では、計測ステップ(Sa1)において、筒状部材14の外側面形状に関するデータを取得すると、検出ステップ(Sa2)が行われる。
【0041】
この検出ステップ(Sa2)では、帯状部材4の後端位置PRが検出される。重複部16を含む部分の外側面形状を表す波形において、急降下部分28が、帯状部材4の後端ERを表す線分として特定される。
【0042】
図8(a)に示されたデータにおいては、符号P1で示される、帯状部材4の後端ERを表す線分と本体18の外側面とで構成される角が後端位置PRとして検出される。この検出方法では、符号P2で示される、この線分と重複部16の外側面とで構成される角が、後端位置PRとして選定されてもよく、角P1と角P2とを結ぶ線分上の任意の位置が、後端位置PRとして選定されてもよい。
【0043】
この検出方法では、後端位置PRが検出されると、前端位置PFを推定する、推定ステップ(Sa3)が行われる。この推定ステップ(Sa3)では、検出した後端位置PRに基づいて、重複部16及びこの重複部16に連なる傾斜部20の位置が特定される。そして、傾斜部20の外側面形状に関するデータに基づいて、この傾斜部20の外側面形状が一次関数で表される。これにより、筒状部材14の外側面に含まれる、傾斜部20の外側面の形状を表す線分が特定される。
【0044】
図8に示されるように、傾斜部20の外側面形状と重複部16の外側面形状との境界部分、そして、この傾斜部20の外側面形状と本体18の外側面形状との境界部分は、位置変化に対する強度変化の割合が徐々に変化するゾーンである。高い精度で重複部16の長さLを検出する観点から、このゾーンを除いて、傾斜部20の外側面形状が一次関数で表されるのが好ましい。
【0045】
図8(a)において、両矢印Hは本体18の外側面から重複部16の外側面までの高さである。この高さHは基準高さとも称される。符号Paは、傾斜部20の外側面形状のうち、前述の一次関数で表されるゾーンの一方の端(詳細には、本体18側の端)である。両矢印Haは、本体18の外側面からこの端Paまでの高さである。符号Pbは、一次関数で表されるゾーンの他方の端(詳細には、重複部16側の端)である。両矢印Hbは、重複部16の外側面からこの端Pbまでの高さである。
【0046】
高い精度で重複部16の長さLを検出する観点から、基準高さHに対する、本体18の外側面から、一次関数で表されるゾーンの一方の端Paまでの高さHaの比率(Ha/H)は、5%以上が好ましく、15%以下が好ましい。同様の観点から、基準高さHに対する、重複部16の外側面から、一次関数で表されるゾーンの他方の端Pbまでの高さHbの比率(Hb/H)は、5%以上が好ましく、15%以下が好ましい。
【0047】
この推定ステップ(Sa3)では、筒状部材14の外側面に含まれる、傾斜部20の外側面の形状を表す線分を特定すると、図8(b)に示されるように、この線分を内側に移動させて、傾斜部20の内側面の形状を表す線分の位置が推定される。この場合、この検出方法では、線分の内側への移動距離は、帯状部材4の厚さに相当する距離に設定される。図8(b)において、符号NLで示される線分が、推定された、傾斜部20の内側面の形状を表す線分である。
【0048】
この推定ステップ(Sa3)では、傾斜部20の内側面の形状を表す線分の位置を推定すると、重複部16に含まれる前端部10の外側面の形状を表す線分の位置が推定される。この推定のために、重複部16の外側面形状に関するデータに基づいて、この重複部16の外側面形状が一次関数で表される。これにより、筒状部材14の外側面に含まれる、重複部16の外側面の形状を表す線分が特定される。図8(c)に示されるように、この線分を内側に移動させて、重複部16に含まれる前端部10の外側面の形状を表す線分の位置が推定される。この場合においても、線分の内側への移動距離は、帯状部材4の厚さに相当する距離に設定される。図8(c)において、符号GLで示される線分が、推定された、前端部10の外側面の形状を表す線分である。
【0049】
この推定ステップ(Sa3)では、前端部10の外側面の形状を表す線分GLの位置を推定すると、図8(d)に示されるように、傾斜部20の内側面の形状を表す線分NLと、この線分GLとの交点Psが求められる。この検出方法では、この交点Psが帯状部材4の前端位置PFとされる。
【0050】
この検出方法では、前端位置PFが推定されると、重複部16の長さLを計算する、計算ステップ(Sa4)が行われる。この計算ステップ(Sa4)では、検出した後端位置PRと推定した前端位置PFとに基づいて、重複部16の長さLが計算される。この検出方法では、図8(b)に示された、傾斜部20の内側面の形状を表す線分NLの重複部16側の端Pnを前端位置PFとして、重複部16の長さLが計算されてもよい。
【0051】
この検出方法では、重複部16の長さLが計算されると、この計算された重複部16の長さLに基づいて、重複部16の形成状況を判定する、判定ステップ(Sa5)が行われる。この判定ステップ(Sa5)においては、前述の調整前の重複長さの検出方法における判定ステップ(Sb5)と同様、重複部16の長さLが所定の範囲内にあり、重複部16が適正に形成されていると判断された場合には、形成された筒状部材14は次工程に展開される。この検出方法は、次工程へ展開するステップ(Sa6)を含む。そして、重複部16の長さLが所定の範囲内になく、重複部16が適正に形成されていないと判断された場合には、作業員が重複部16の再調整を行う。この検出方法は、重複部16を調整するステップ(Sa7)を含む。この調整ステップ(Sa7)が行われた場合には、計測ステップ(Sa1)が行われ、再調整後の重複部16の長さLが計測される。この重複部16の長さLに基づいて、重複部16の形成状況が判定される。
【0052】
この検出方法は、筒状部材14の外側面形状に関するデータにおいて、後端位置PRに基づいて、このデータからは検出できない前端位置PFが推定される。この検出方法は、調整後の筒状部材14に含まれる重複部16の長さを高い精度で推定できる。この検出方法は、高品質なタイヤの生産に貢献できる。
【0053】
この検出方法では、前端位置PFの推定に際し、好ましくは、帯状部材4の厚さが考慮される。前端位置PFの推定に際し、前端部10に重ねられる後端部12に連なる傾斜部20の内側面の形状が反映されるので、重複部16の長さLがより高い精度で推定できる。さらに、データからは検出できない重複部16に含まれる前端部10の外側面の位置も考慮することで、重複部16の長さLの推定精度がさらに高められる。この検出方法は、高品質なタイヤの安定な生産に貢献できる。
【0054】
この検出方法では、図9に示されるように、判定結果とともに、計算ステップ(Sa4)で計算された重複部16の長さLがモニター24に表示されてもよい。これにより、作業員はモニター24の表示内容を確認することで、重複部16の調整の要否について容易に認識できる。この観点から、この検出方法は、判定結果とともに、重複部16の長さLをモニター24に表示するステップを含むのが好ましい。
【0055】
以上説明したように、本発明の重複長さの検出方法は、調整後の筒状部材14に含まれる重複部16の長さを高い精度で推定できる。この検出方法は、高品質なタイヤの生産に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明された、重複長さの検出方法は、端部同士の接合を伴う部品の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
2・・・成形機
4・・・帯状部材
6・・・コンベア
8・・・ドラム
10・・・前端部
12・・・後端部
14・・・筒状部材
16・・・重複部
18・・・本体
20・・・傾斜部
22・・・変位計
24・・・モニター
26・・・上昇部分
28・・・急降下部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9