(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20240409BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F28F9/22
F28D1/053 A
(21)【出願番号】P 2020006901
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 章太
(72)【発明者】
【氏名】浜田 浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 貢
(72)【発明者】
【氏名】中村 友彦
(72)【発明者】
【氏名】亀井 一雄
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/012921(WO,A1)
【文献】特開2010-60274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00-9/22,1/00-1/44
F28D 1/00-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して配置される複数のチューブ(21)と、複数の前記チューブの一端部に接続されるタンク(31)とを有し、前記チューブの内部を流れる第1流体と、前記チューブの外部を流れる第2流体との間で熱交換を行う熱交換器であって、
前記タンクの内部に配置されて、複数の前記チューブのうちの少なくとも一つの所定のチューブの端部の開口部分を部分的に閉塞する閉塞部材(50)を備え、
前記閉塞部材には、前記所定のチューブの端部に形成される突出部(215)との干渉を回避するための逃がし構造(51,54)が形成されている
熱交換器。
【請求項2】
前記逃がし構造は、前記閉塞部材における前記所定のチューブの端部に対向する表面に形成される溝部(51)である
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記閉塞部材は、複数の前記所定のチューブのそれぞれの端部を部分的に閉塞するように設けられ、
前記閉塞部材には、複数の前記所定のチューブにそれぞれ形成される前記突出部に沿って延びるように前記溝部が形成されている
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記閉塞部材は、複数の前記所定のチューブのそれぞれの端部を部分的に閉塞するように設けられ、
前記閉塞部材には、複数の前記所定のチューブの前記突出部にそれぞれ対応するように前記溝部が複数形成されている
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記逃がし構造は、前記閉塞部材における前記所定のチューブの端部に対向する一方の表面からその反対側の他方の表面に貫通するように形成される貫通孔(54)である
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記閉塞部材は、複数の前記所定のチューブのそれぞれの端部を部分的に閉塞するように設けられ、
前記閉塞部材には、複数の前記所定のチューブにそれぞれ形成される前記突出部に沿って延びるように前記貫通孔が形成されている
請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記閉塞部材は、複数の前記所定のチューブのそれぞれの端部を部分的に閉塞するように設けられ、
前記閉塞部材には、複数の前記所定のチューブにそれぞれ形成される前記突出部に対応するように前記貫通孔が複数形成されている
請求項5に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記チューブは、平板状の金属部材を環状に折り曲げることにより形成され、且つその中央部に前記金属部材の両端部の接合部(214)を有する
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の熱交換器がある。特許文献1に記載の熱交換器は、熱交換コア部と、入口タンクと、出口タンクとを備えている。熱交換コア部は、内部流体が流れる複数のチューブが積層配置されることにより構成されている。入口タンクは、複数のチューブの両端部のうちの入口端部に連通するように接合されて、内部流体を複数のチューブに対して分配する。出口タンクは、複数のチューブの両端部のうちの出口端部に連通するように接合されて、複数のチューブから流出する内部流体を集合させる。チューブ積層方向における入口タンクの端部には、入口タンクに内部流体を流入させる流入口が設けられている。チューブ積層方向における流入口と同一側の出口タンクの端部には、出口タンクから内部流体を流出させる流出口が設けられている。複数のチューブのうちのチューブ積層方向における流入口と同一側に配置される所定本数のチューブの端部には、その開口部分の一部を閉塞する閉塞部材が設けられている。このような構成によれば、流入口の近くに配置されるチューブに流入する内部流体の流量を抑制することができる一方、流入口から離間したチューブに流入する内部流体の流量を増加させることができる。これにより、各チューブの流量を均一化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されるような熱交換器のチューブの端部には突出部が形成される可能性がある。具体的には、チューブは、平板状の金属部材を環状に折り曲げて両端部同士を接合した後、その環状の成形品を所定の長さに切断することにより製造される。このようにしてチューブを製造する場合、環状の成形品を切断する際に、その切断面にばりが形成される可能性がある。切断時に形成されるばりは、金属部材の両端部の接合部分で特に形成され易いことが発明者らにより確認されている。このようにして形成されるばり等により、チューブの端部に突出部が形成される可能性がある。
【0005】
一方、チューブの端部に突出部が形成されている場合、特許文献1に記載されるような閉塞部材をチューブの端部に配置する際に、チューブの突出部に閉塞部材が乗り上げる可能性がある。仮にチューブの突出部に閉塞部材が乗り上げた場合、閉塞部材によりチューブの開口部分を閉塞することが困難となる。また、例えばチューブの端部の突き出し長さのばらつきによっても、閉塞部材によりチューブの端部を閉塞することが困難となる可能性がある。こうした種々の要因により閉塞部材によるチューブの端部の閉塞効果が低下すると、流入口に近いチューブに流入する流体の流量を抑制することが難しくなるため、結果として複数のチューブ間の流体の分配性を向上させることができないおそれがある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より的確に複数のチューブ間の流体の分配性を向上させることが可能な熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する熱交換器は、積層して配置される複数のチューブ(21)と、複数のチューブの一端部に接続されるタンク(31)とを有し、チューブの内部を流れる第1流体と、チューブの外部を流れる第2流体との間で熱交換を行う熱交換器である。熱交換器は、タンクの内部に配置されて、複数のチューブのうちの少なくとも一つの所定のチューブの端部の開口部分を部分的に閉塞する閉塞部材(50)を備える。閉塞部材には、所定のチューブの端部に形成される突出部との干渉を回避するための逃がし構造(51,54)が形成されている。
【0008】
この構成によれば、閉塞部材に形成される逃がし構造により、所定のチューブの端部に形成される突出部と閉塞部材との干渉を回避することができるため、所定のチューブの端部に形成される突出部に閉塞部材が乗り上げ難くなる。これにより、より確実に所定のチューブの端部を閉塞部材により閉塞することができるため、複数のチューブ間の流体の分配性を向上させることが可能となる。
【0009】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の熱交換器によれば、より的確に複数のチューブ間の流体の分配性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の熱交換器の正面構造を示す正面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のチューブの断面構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の第1タンクのチューブ長手方向に直交する断面構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の第1タンクの第1タンク部材をチューブ長手方向に直交する断面で破断した熱交換器の破断断面構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の閉塞部材の断面構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、参考例の熱交換器における第1タンクのチューブ長手方向に直交する断面構造を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例の閉塞部材の断面構造を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の変形例の閉塞部材の断面構造を示す断面図である。
【
図10】
図9は、第1実施形態の変形例の熱交換器における第1タンクの空気流れ方向に直交する断面構造を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の閉塞部材の斜視構造を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の変形例の閉塞部材の斜視構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、熱交換器の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、
図1に示される第1実施形態の熱交換器10について説明する。
【0013】
本実施形態の熱交換器10は、例えば車両に搭載される空調装置のヒータコアとして用いられる。空調装置は、空調空気を加熱又は冷却して車室内に送風することにより、車室内の暖房又は冷房を行う装置である。熱交換器10は、空調空気が流れる空調ダクト内に配置されている。熱交換器10の内部には車両のエンジンの冷却水が液相の状態で循環している。熱交換器10は、その内部を流れる冷却水と、空調ダクト内を流れる空調空気との間で熱交換を行うことにより冷却水の熱により空調空気を加熱する。熱交換器10により加熱された空調空気が空調ダクトを通じて車室内に送風されることにより車室内の暖房が行われる。本実施形態では熱交換器10の内部を流れる冷却水が流体に相当する。また、冷却水が第1流体に相当し、空気が第2流体に相当する。
【0014】
図1に示されるように、熱交換器10はコア部20とタンク31,32とサイドプレート41,42とを備えている。熱交換器10は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。
コア部20は冷却水と空気との間で熱交換を行う部分である。コア部20は、図中に矢印Xで示される方向に所定の間隔をおいて積層して配置される複数のチューブ21と、隣り合うチューブ21の間の隙間に配置される複数のフィン22とを有している。なお、
図1では、複数のフィン22のうちの一部のみが図示されている。コア部20には、図中に矢印Yで示される方向に空気が流れる。矢印Yで示される方向は、矢印Xで示される方向に直交する方向である。図中に矢印Zで示される方向は、矢印Xで示される方向、及び矢印Yで示される方向の両方に直交する方向である。
【0015】
以下では、矢印Xで示される方向を「チューブ積層方向X」と称する。また、チューブ積層方向Xのうちの一方向を「X1方向」と称し、その他方向を「X2方向」と称する。さらに、矢印Yで示される方向を「空気流れ方向Y」と称する。
チューブ21は、図中に矢印Zで示される方向に延びるように形成されている。以下では、矢印Zで示される方向を「チューブ長手方向Z」と称する。また、チューブ長手方向Zのうちの一方向を「Z1方向」と称し、その他方向を「Z2方向」と称する。
図2に示されるように、チューブ21は、その内部に冷却水の流れる内部流路W10を有している。チューブ21は、平板状の金属部材210を環状に折り曲げることにより成形される。
【0016】
具体的には、チューブ21を製造する際には、まず、平板状の金属部材210の中央部を二重に折り曲げて突出部211を形成した後、金属部材210の両端部212,213を内側に折り曲げて突出部211にろう付けにより接合させることで環状の成形品が形成される。この環状の成形品を所定の長さに切断することによりチューブ21が成形される。本実施形態のチューブ21では、接合部214によりチューブ21の内部流路W10が2つの流路W11,W12に分割されている。
【0017】
図1に示されるように、フィン22は、薄く長い金属板を波状に折り曲げることにより形成される、いわゆるコルゲートフィンからなる。フィン22の折り曲がり部分は、隣接するチューブ21,21の外周面にろう付けにより接合されている。フィン22は、空気に対する伝熱面積を増加させることにより冷却水と空気との熱交換効率を高めるために設けられている。
【0018】
タンク31,32は、チューブ積層方向Xに延びるように形成される筒状の部材からなる。
図3及び
図4に示されるように、第1タンク31の内部には、冷却水の流れる内部流路W20が形成されている。なお、
図4では、複数のフィン22のうちの一部のみが図示されている。
図5に示されるように、第1タンク31は、チューブ積層方向Xに直交する断面形状が凹状に形成された第1タンク部材312及び第2タンク部材313を接合することにより構成されている。
図3~
図5に示されるように、第1タンク31には、複数のチューブ21の一端部21aが接続されている。複数のチューブ21の一端部21aは、第1タンク31の第2タンク部材313を貫通して第1タンク31の内部流路W20まで延びるように配置されている。
図1に示されるように、X2方向における第1タンク31の一端部310には流入口33が取り付けられている。X1方向における第1タンク31の他端部311は閉塞されている。
【0019】
第2タンク32も、第1タンク31と同様に、冷却水の流れる流路が内部に形成される筒状の部材からなる。第2タンク32には、複数のチューブ21の他端部21bが接続されている。X2方向における第2タンク32の一端部320には流出口34が取り付けられている。X1方向における第2タンク32の他端部321は閉塞されている。
【0020】
サイドプレート41,42は、チューブ積層方向Xにおけるコア部20の両端部にそれぞれ配置されている。Z2方向におけるサイドプレート41,42のそれぞれの一端部410,420は、第1タンク31に接続されている。
図3に示されるように、サイドプレート41の一端部410は、第1タンク31の第2タンク部材313を貫通して第1タンク31の内部流路W20まで延びるように配置されている。同様に、サイドプレート42の一端部420も第1タンク31に接続されている。さらに、
図1に示されるように、Z1方向におけるサイドプレート41,42の他端部411,421は第2タンク32に接続されている。サイドプレート41,42は、コア部20を補強するために設けられている。
【0021】
図3~
図5に示されるように、熱交換器10は、第1タンク31の内部に収容される閉塞部材50を更に備えている。閉塞部材50は、第1タンク31とは別体の部材からなり、流入口33から第1タンク31の内部に挿入されることにより第1タンク31の内部に配置される。
図6に示されるように閉塞部材50は平板状に形成されている。
図3に示されるように、閉塞部材50は、複数のチューブ21のうち、流入口33の近くに配置される所定数のチューブ21の一端部21aの開口部分を部分的に閉塞するように設けられている。より詳細には、閉塞部材50は、所定数のチューブ21の一端部21aにおける流路W11の開口部分を閉塞するように設けられている。以下では、便宜上、流入口33の近くに配置され、且つ閉塞部材50により流路の一部が閉塞されているチューブ21を「所定のチューブ21A」と称する。
図3に示されるように、X2方向における閉塞部材50の端部には、流入口33の内部に向かって延びるように突出部55が形成されている。
図4に示されるように、Z1方向における突出部55の底面には係合部550が形成されている。係合部550は第1タンク31の第2タンク部材313におけるX2方向の端面に係合している。係合部550と第1タンク31の第2タンク部材313との係合構造により、閉塞部材50のX1方向の位置ずれが規制されている。
【0022】
次に、本実施形態の熱交換器10の動作例について説明する。
熱交換器10では、流入口33を通じて第1タンク31の内部に液相の冷却水が流入する。第1タンク31に流入した冷却水は各チューブ21の一端部21aから各チューブ21の内部流路W10に流入することにより各チューブ21に分配される。各チューブ21に分配された冷却水は各チューブ21の内部流路W10を第2タンク32に向かって流れる。熱交換器10では、各チューブ21の内部流路W10を流れる冷却水と、チューブ21の外部を流れる空気との間で熱交換が行われることにより、冷却水の熱が空気に伝達されて空気が加熱される。各チューブ21を通過した冷却水は、第2タンク32に集められた後、流出口34から排出される。このように、本実施形態の熱交換器10は、第1タンク31から全てのチューブ21に冷却水が分配される、いわゆる全パスタイプの構造を有している。
【0023】
ところで、
図3に示されるように第1タンク31の一端部に設けられる流入口33から第1タンク31の内部に冷却水を流入させるような構造の場合、第1タンク31では、流入口33から閉塞端部311に向かうほど冷却水の流路長が長くなるため、冷却水の圧力損失が大きくなる。そのため、複数のチューブ21のうち、流入口33から離間して配置されるチューブに流入する冷却水の流量が、流入口33の近くに配置されるチューブに流入する冷却水の流量よりも少なくなり、結果として各チューブ21の冷却水の流量が不均一になるおそれがある。各チューブ21の冷却水の流量が不均一になると、熱交換後の空気の温度分布にばらつきが生じるため、空調フィーリングの悪化を招く可能性がある。
【0024】
この点、本実施形態の熱交換器10では、所定のチューブ21Aの一端部21aの開口部分の一部が閉塞部材50により閉塞されているため、所定のチューブ21Aに流入する冷却水の圧力損失を増加させることができる。これにより、所定のチューブ21Aに流入する冷却水の圧力損失と、流入口33から離間して配置されるチューブ21に流入する冷却水の圧力損失との差が小さくなるため、各チューブ21に流入する冷却水の流量を均一化することが可能となる。
【0025】
一方、チューブ21の一端部21aには、
図5に拡大して示されるような突出部215が形成されることが発明者らにより確認されている。この突出部215はチューブ21の製造時に形成されるばり等であると考えられる。具体的には、チューブ21は、上述の通り、環状の成形品を所定の長さに切断することにより製造される。環状の成形品では、チューブ21の接合部214に相当する部分の板厚が他の部分と比較して厚くなっている。このように板厚が厚くなっている接合部214では切断時にばりが発生し易く、これがチューブ21の一端部21aに突出部215が形成される要因となっている。
【0026】
仮に
図7に示されるように閉塞部材50が単に平板状に形成されている場合、チューブ21の一端部21aに閉塞部材50を配置した際に、チューブ21の突出部215に閉塞部材50が乗り上げる可能性がある。これによりチューブ21の一端部21aと閉塞部材50との間に隙間が形成されると、閉塞部材50による閉塞効果が低下するため、各チューブ21に流入する冷却水の流量を均一化することが困難となる。
【0027】
そこで、
図5に示されるように、本実施形態の閉塞部材50では、そのチューブ21の一端部21aに対向する表面52に溝部51が形成されている。
図3及び
図6に示されるように、溝部51はチューブ積層方向Xに延びるように形成されている。これにより、
図5に示されるように、所定のチューブ21Aの一端部21aに閉塞部材50を配置した際に、閉塞部材50の溝部51内に所定のチューブ21Aの突出部215が位置することにより、閉塞部材50と所定のチューブ21Aとの干渉を回避することができる。よって、より確実に所定のチューブ21Aの一端部21aの開口部分の一部を閉塞部材50により閉塞することができる。このように、本実施形態の熱交換器10では、溝部51が、所定のチューブ21Aの一端部21aに形成される突出部215との干渉を回避するための逃がし構造に相当する。
【0028】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(1)~(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)閉塞部材50に形成される溝部51により、所定のチューブ21Aの一端部21aに形成される突出部215と閉塞部材50との干渉を回避することができるため、所定のチューブ21Aの一端部21aに形成される突出部215に閉塞部材50が乗り上げ難くなる。これにより、より確実に所定のチューブ21Aの一端部21aの開口部分の一部を閉塞部材50により閉塞することができるため、閉塞部材50を設けることにより得られる効果、すなわち複数のチューブ21間の冷却水の分配性を向上させるという効果をより確実に奏することができる。
【0029】
(2)チューブ21の一端部21aに突出部215が形成されていると、閉塞部材50を流入口33から第1タンク31の内部に挿入する際に、閉塞部材50が所定のチューブ21Aの突出部215に衝突することにより、閉塞部材50を挿入し難くなる可能性がある。この点、本実施形態の熱交換器10のように閉塞部材50に溝部51が形成されていれば、閉塞部材50と所定のチューブ21Aの突出部215との干渉を回避しつつ、溝部51が挿入時のガイドとして機能するようになるため、閉塞部材50の挿入性を改善することができる。また、空気流れ方向Yにおける閉塞部材50の一端部には第1タンク31の内壁面が対向し、且つ閉塞部材50の他端部にはチューブ21の突出部215が対向しているため、空気流れ方向Yにおける閉塞部材50の位置ずれを抑制することができる。
【0030】
(3)閉塞部材50には、所定のチューブ21Aの一端部21aに形成される突出部215との干渉を回避するための逃がし構造として、その所定のチューブ21Aの一端部21aに対向する表面52に溝部51を形成することとした。この構成によれば、逃がし構造を閉塞部材50に容易に形成することができる。
【0031】
(4)閉塞部材50は、複数の所定のチューブ21Aのそれぞれの一端部21aを部分的に閉塞するように設けられている。閉塞部材50には、複数の所定のチューブ21Aにそれぞれ形成される突出部215に沿って延びるように溝部51が形成されている。この構成によれば、一つの閉塞部材50により複数の所定のチューブ21Aのそれぞれの一端部21aを閉塞しつつ、それらの干渉を回避することができる。
【0032】
(5)チューブ21は、平板状の金属部材210を環状に折り曲げた形状を有し、且つその中央に金属部材210の両端部212,213の接合部214を有する。このような構造からなるチューブ21は、ばり等からなる突出部215が接合部214に形成され易いため、閉塞部材50に本実施形態のような構造を適用することの意義は大きい。
【0033】
(変形例)
次に、第1実施形態の熱交換器10の変形例について説明する。
閉塞部材50に形成される溝部51の形状は適宜変更可能である。例えば
図8に示されるように、溝部51は、チューブ積層方向Xに直交する断面形状が凹状となるように形成されていてもよい。また、溝部51は、
図6に示されるようなピン角の形状に限らず、
図9に示されるようなR形状に形成されていてもよい。
【0034】
さらに、
図10に示されるように、閉塞部材50には、複数の所定のチューブ21Aの一端部21aの突出部215にそれぞれ対応するように複数の溝部51が形成されていてもよい。このような構成によれば、
図6に示されるように溝部51が長穴状に形成されている場合と比較すると、閉塞部材50の強度を確保することができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、熱交換器10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図11に示されるように、本実施形態の閉塞部材50には、そのチューブ21の一端部21aに対向する表面52からその反対側の他方の表面53に貫通するように貫通孔54が形成されている。貫通孔54は、チューブ積層方向Xに延びるように長穴状に形成されている。これにより、所定のチューブ21Aの一端部21aに閉塞部材50を配置した際に、閉塞部材の貫通孔54内に所定のチューブ21Aの突出部215が位置することにより、閉塞部材50と所定のチューブ21Aとの干渉を回避することができる。よって、より確実に所定のチューブ21Aの一端部21aの開口部分の一部を閉塞部材50により閉塞することができる。
【0036】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、第1実施形態の熱交換器10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
(変形例)
次に、第2実施形態の熱交換器10の変形例について説明する。
【0037】
閉塞部材50に形成される貫通孔54の形状は適宜変更可能である。例えば
図12に示されるように、閉塞部材50には、複数の所定のチューブ21Aの一端部21aの突出部215にそれぞれ対応するように複数の貫通孔54が形成されていてもよい。このような構成によれば、
図11に示されるように貫通孔54が長穴状に形成されている場合と比較すると、閉塞部材50の強度を確保することができる。
【0038】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・閉塞部材50は、複数のチューブ21の一端部21aを閉塞するものに限らず、一つのチューブ21の一端部21aを閉塞するものであってもよい。要は、閉塞部材50は、複数のチューブ21のうちの少なくとも一つのチューブの端部の開口部分を部分的に閉塞するものであればよい。
【0039】
・閉塞部材50は、流入口33の近くに配置されるチューブに限らず、任意のチューブの一端部を閉塞するものであればよい。
・各実施形態の熱交換器10では、閉塞部材50が、第1タンク31ではなく、第2タンク32に設けられて、チューブ21の他端部21bの開口部分を部分的に閉塞するものであってもよい。
【0040】
・各実施形態の熱交換器10は、空調装置のヒータコアに限らず、任意の熱交換器に適用することが可能である。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0041】
10:熱交換器
21:チューブ
31:タンク
50:閉塞部材
51:溝部(逃がし構造)
54:貫通孔(逃がし構造)
214:接合部
215:突出部