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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G21/00 370
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020008154
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021117241
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨家 則夫
(72)【発明者】
【氏名】宇野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】石田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 浩
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097321(JP,A)
【文献】特開2014-182172(JP,A)
【文献】特開2012-226125(JP,A)
【文献】特開2012-150309(JP,A)
【文献】特開2007-047554(JP,A)
【文献】特開2006-201385(JP,A)
【文献】特開平05-006131(JP,A)
【文献】特開2001-175090(JP,A)
【文献】特開2011-075712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体を露光することにより静電潜像を形成する露光装置と、
前記像担持体に形成された前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置と、
前記像担持体の軸方向に沿って延在し、前記像担持体の表面に接触して残留トナーを除去するクリーニングブレードと、前記像担持体に接触しながら回転して前記像担持体の表面を摺擦する摺擦ローラーと、を有し、前記像担持体の表面の残留トナーを除去するクリーニング装置と、
を含む画像形成部と、
前記画像形成部で形成された前記トナー像が転写される記録媒体のサイズ情報が入力される入力部と、
前記画像形成部を制御する制御部と、
を備えた画像形成装置において、
前記像担持体は、所定サイズの前記記録媒体の幅方向外側であって前記現像装置による現像可能領域の幅方向内側である第1領域と、前記第1領域の幅方向外側の第2領域と、を有し、
前記クリーニングブレードの長手方向の両端部近傍には、前記第1領域と前記第2領域とに対向し、前記第1領域から前記第2領域に向かって幅広となるトナー貯留部を有するトナー溜め部材が配置され、
前記クリーニングブレードおよび前記摺擦ローラーは、前記第2領域の幅方向外側まで延在しており、
前記制御部は、前記入力部に入力された前記記録媒体のサイズが前記所定サイズ以下である場合、前記現像装置により前記第1領域の前記トナー溜め部材と重なる位置にトナーバンドを形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー溜め部材は、前記トナー貯留部の前記クリーニングブレードと反対側の端縁に沿って上方に屈曲する堰き止め部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー貯留部は、前記クリーニングブレードに向かって下向きに傾斜することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー溜め部材は、少なくとも前記トナー貯留部が前記第2領域の幅方向全域に対向するように配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー溜め部材は、前記トナー貯留部の前記堰き止め部と反対側の端縁から下方に延在する支持部を有し、前記支持部が前記クリーニングブレードを支持するブレード支持ステーと前記クリーニング装置のハウジングとの間に挟持されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナーバンドは、前記第1領域の幅方向全域に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記所定サイズは、使用可能な複数の前記記録媒体のサイズのうち最も使用頻度が高いサイズであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング部材を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いる画像形成装置では、画像形成を行う場合、帯電装置によって感光体ドラムの表面が一様に帯電された後、露光装置によって露光が行われて感光体ドラムの表面に静電潜像が形成され、さらに静電潜像が現像装置によって現像される。現像されたトナー像は転写部材によって記録媒体上に転写され、記録媒体は定着装置へと搬送されて定着された後、画像形成装置の外部へと排出される。転写後に除電装置によって感光体ドラム上の残留電荷が除去され、感光体ドラムは再び帯電装置によって帯電される。
【0003】
近年、電子写真プロセスを用いた画像形成装置は、高速化、高画質化に加えて、様々な記録媒体への対応性が必要となっている。そのため、対応する用紙サイズにおいても印刷業界で必要とされるSRA3サイズ用紙(幅320mm)や13インチ用紙(幅330mm)への対応も必要となっている。その結果、感光体ドラムが長くなり、現像装置や帯電装置、クリーニングブレードも長くなる。
【0004】
しかしながら、一般的にはA4サイズ横置きやA3サイズ(幅297mm)、または8.5インチ横置きや11インチの用紙(幅279mm)の使用がほとんどであり、それ以上の大きさの用紙の使用頻度は低い。
【0005】
A4サイズや11インチの用紙を使用した場合、用紙サイズの幅方向外側の非通紙領域では、感光体ドラムは帯電しているが現像装置からトナーは現像されない。そのため、感光体ドラムの非通紙領域に放電生成物が付着して表面摩擦係数が上昇する一方、クリーニング装置のクリーニングブレードや摺擦ローラーにはトナーが付着しないため、非通紙領域においてクリーニングブレードの摩擦力が上昇する。その結果、ブレード鳴きやブレード捲れ、クリーニング不良等の不具合を生じる。
【0006】
そこで、像担持体とクリーニング部材との間の摩擦力の上昇を抑制する方法が提案されており、例えば特許文献1には、像担持体表面の、トナー像を形成する領域を避けた領域に、像担持体の幅方向に延びるトナーバンドを形成し、像担持体を幅方向に見てトナー像が形成されない部分が生じないようにする装置が開示されている。
【0007】
特許文献2には、クリーニングブレードの両端部に感光体ドラムから掻き落とされたトナー粒子を一時的に貯留する貯留部を形成するトナー溜め部材を取り付け、感光体ドラムの偏摩耗やクリーニングブレードの破損を防止するドラムアセンブリが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-175090号公報
【文献】特開2011-75712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2の方法は、現像装置から現像されたトナーによってクリーニングブレードへのダメージを低減するものであり、クリーニングブレードのダメージを低減できる範囲は現像可能範囲である。このため、特許文献1、2の方法を用いたとしても、通紙領域よりも外側の領域、即ち、感光体ドラムの表面は帯電しているがトナーは現像されない領域では、感光体ドラムに当接するクリーニングブレードや摺擦ローラーにトナーは全く供給されない。その結果、この領域では感光体ドラムの表面を十分に摺擦できず、感光体ドラムの表面摩擦係数が上昇してクリーニングブレードがダメージを受け、クリーニング不良などの不具合を生じる。
【0010】
また、用紙の外側の領域における表面摩擦係数の上昇を防止するために、帯電領域と現像可能領域とをほぼ同一幅とすることも考えられる。この場合、感光体ドラム上の非帯電領域と現像可能領域とが非常に近くなるため、非帯電領域に現像装置からの飛散トナーが現像されてしまい装置内部の汚染等の不具合が生じる。一般的には帯電領域は現像領域から片側3mmは広くする必要がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、記録媒体の幅方向外側における像担持体の表面摩擦係数の上昇を抑制可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、画像形成部と、入力部と、制御部と、を備えた画像形成装置である。画像形成部は、表面に感光層が形成される像担持体と、像担持体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電装置により帯電された像担持体を露光することにより静電潜像を形成する露光装置と、像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置と、像担持体の表面の残留トナーを除去するクリーニング装置と、を含む。クリーニング装置は、像担持体の軸方向に沿って延在し、像担持体の表面に接触して残留トナーを除去するクリーニングブレードと、像担持体に接触しながら回転して像担持体の表面を摺擦する摺擦ローラーと、を有する。入力部は、画像形成部で形成されたトナー像が転写される記録媒体のサイズ情報が入力される。制御部は、画像形成部を制御する。像担持体は、所定サイズの記録媒体の幅方向外側であって現像装置による現像可能領域の幅方向内側である第1領域と、第1領域の幅方向外側の第2領域と、を有する。クリーニングブレードの長手方向の両端部近傍には、第1領域と第2領域とに対向し、第1領域から第2領域に向かって幅広となるトナー貯留部を有するトナー溜め部材が配置され、クリーニングブレードおよび摺擦ローラーは、第2領域の幅方向外側まで延在している。制御部は、入力部に入力された記録媒体のサイズが所定サイズ以下である場合、現像装置により第1領域のトナー溜め部材と重なる位置にトナーバンドを形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の構成によれば、記録媒体が所定サイズ以下であるときは第1領域にトナーバンドを形成することにより、第1領域に形成されたトナーバンドがトナー溜め部材によって第2領域に移動し、摺擦ローラーに供給されることで第2領域が研磨される。このため、現像領域の外側の第2領域に付着した放電生成物が除去され、像担持体の表面摩擦係数の上昇も抑制される。また、トナー溜め部材に落下したトナーは、第1領域から第2領域に向かって幅広となるトナー貯留部に沿って広がりながら両端部側へ押し出され、第2領域に円滑に移動する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の構造を示す側面断面図
図2図1における画像形成部Pa周辺の部分拡大図
図3図2におけるクリーニング装置7a周辺の部分拡大図
図4】クリーニング装置7aの長手方向の一端側を示す部分斜視図
図5】クリーニング装置7a~7dに装着されるトナー溜め部材50をクリーニングブレード32側から見た斜視図
図6】本実施形態の画像形成装置100に搭載される感光体ドラム1a~1dの現像領域および帯電領域とトナー溜め部材50との位置関係を示す模式図
図7】画像形成装置100の制御経路の一例を示すブロック図
図8】本実施形態の画像形成装置100における画像形成動作の制御例を示すフローチャート
図9】本実施形態の画像形成装置100の変形例におけるクリーニング装置7a周辺の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の内部構造を示す断面図である。画像形成装置100(ここではカラープリンター)本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を順次形成する。
【0016】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1cおよび1dがそれぞれ配設されている。感光体ドラム1a~1dは、例えばアルミニウム製のドラム素管の外周面に有機感光層(OPC)が積層され、さらに有機感光層の表面にコート層が積層された有機感光体であり、メインモーター(図示せず)によって回転駆動される。なお、有機感光体ドラムに代えて、ドラム素管の外周面にアモルファスシリコン感光層が形成されたアモルファスシリコン感光体ドラムを用いることもできる。
【0017】
また、ベルト駆動モーター(図示せず)により図1において時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
【0018】
トナー像が二次転写される転写紙Pは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。
【0019】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb~Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。図2に示すように、回転可能に配設された感光体ドラム1aの周囲および下方には、感光体ドラム1aを帯電させる帯電装置2aと、感光体ドラム1aに画像情報を露光する露光装置5(図1参照)と、感光体ドラム1a上にトナー像を形成する現像装置3aと、感光体ドラム1a上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7aと、除電装置20と、が配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6aが配置されている。
【0020】
帯電装置2aは、感光体ドラム1aに接触して感光体ドラム1aの表面を帯電させる帯電ローラー21と、帯電ローラー21をクリーニングする帯電クリーニングローラー22を有している。帯電ローラー21には直流電圧、若しくは直流電圧に交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
【0021】
現像装置3aは、感光体ドラム1aに対向する現像ローラー31を備える。現像装置3a内には磁性キャリアおよびトナーからなる二成分現像剤が収容されており、攪拌搬送スクリュー26aおよび供給搬送スクリュー26bによって現像ローラー31に二成分現像剤が供給され、現像ローラー31上に磁気ブラシが形成される。現像ローラー31には、直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧が印加される。
【0022】
現像装置3aから供給されるトナーは研磨材を含むトナーであり、感光体ドラム1a上の静電潜像に付着してトナー像を形成するだけでなく、一次転写ローラー6aで中間転写ベルト8に転写されなかった残留トナーを利用して感光体ドラム1aの表面を研磨するために用いられる。
【0023】
クリーニング装置7aは、感光体ドラム1aの表面の残留トナーを除去するクリーニングブレード32と、感光体ドラム1a表面の残留トナーを除去するとともに感光体ドラム1aの表面を摺擦して研磨する摺擦ローラー33と、クリーニングブレード32および摺擦ローラー33によって感光体ドラム1aから除去された残留トナーをクリーニング装置7aの外部に排出する搬送スパイラル35と、を含む。
【0024】
除電装置20は、感光体ドラム1aの回転方向に対し一次転写ローラー6aの下流側、且つクリーニング装置7aの上流側に配置されている。除電装置20は、感光体ドラム1a~1dに除電光を照射して感光体ドラム1aの表面の残留電荷を所定電位以下まで除去する。
【0025】
また、感光体ドラム1aと、帯電装置2aと、クリーニング装置7aとはユニット化されている。各画像形成部Pa~Pdにおいて、感光体ドラム1a~1dと、帯電装置2a~2dと、クリーニング装置7a~7dと、から成るユニットをドラムユニット40a~40dと称する。
【0026】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0027】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。また、感光体ドラム1a~1dの表面の残留電荷が除電装置20によって除去される。
【0028】
中間転写ベルト8が時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから駆動ローラー11と二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ所定のタイミングで搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が転写紙P上に二次転写される。トナー像が二次転写された転写紙Pは定着部13へと搬送される。
【0029】
定着部13に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面に画像が形成された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0030】
図3は、図2におけるクリーニング装置7a周辺の部分拡大図である。図4は、クリーニング装置7aの長手方向の一端側(図3の紙面手前側)を示す部分斜視図である。クリーニング装置7aは、クリーニングブレード32と、摺擦ローラー33と、搬送スパイラル35とを保持するハウジング41を備える。クリーニングブレード32は、ハウジング41に固定されたブレード支持ステー43に支持されている。
【0031】
クリーニングブレード32は、感光体ドラム1aとの当接点において感光体ドラム1aの接線方向に対し所定の角度で取り付けられている。より詳細には、クリーニングブレード32は感光体ドラム1aの回転方向(図3の反時計回り方向)に対しカウンター方向(下方向)からトナーを掻き落とす位置に配置されている。クリーニングブレード32の材質としては、例えばJIS硬度が78°のポリウレタンゴム製のブレードが用いられる。クリーニングブレード32の材質、硬度、寸法、感光体ドラム1aへの食い込み量および圧接力、取り付け角度等は、感光体ドラム1aの仕様に応じて適宜設定される。
【0032】
摺擦ローラー33は、感光体ドラム1aに所定の圧力で圧接されている。摺擦ローラー33は、図示しない駆動機構により、感光体ドラム1aとの当接面において感光体ドラム1aの外周面の移動方向と同一方向(図3の時計回り方向)に、感光体ドラム1aに対し所定の線速差をもって回転駆動される。摺擦ローラー33としては、例えば金属シャフトの周囲にローラー体としてEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)製でアスカーC硬度55°の発泡体層を形成した構造が挙げられる。
【0033】
クリーニングブレード32の背面側(感光体ドラム1aと反対側、図3の左側)にはトナー溜め部材50が配置されている。トナー溜め部材50は、クリーニングブレード32の長手方向(図3の紙面と垂直な方向)の両端部に1箇所ずつ、一対配置されている。
【0034】
図5は、トナー溜め部材50をクリーニングブレード32側から見た斜視図である。トナー溜め部材50は、金属板を折り曲げて形成されており、ハウジング41とブレード支持ステー43との間に挟持される支持部51と、支持部51の上端から略水平に延在するトナー貯留部52と、トナー貯留部52のクリーニングブレード32と反対側の端縁に沿って上方に屈曲する堰き止め部53とを有する。
【0035】
トナー貯留部52は平面視台形状であり、図4に示すように、クリーニングブレード32の長手方向の中央部から両端部に向かってトナー貯留部52が幅広となる(面積が大きくなる)向きに配置されている。即ち、図5の左側のトナー溜め部材50がクリーニングブレード32の一端側(図3の紙面手前側)に、図5の右側のトナー溜め部材50がクリーニングブレード32の他端側(図3の紙面奥側)に、それぞれ配置される。
【0036】
図6は、本実施形態の画像形成装置100に搭載される感光体ドラム1a~1dの現像領域および帯電領域とトナー溜め部材50との位置関係を示す模式図である。感光体ドラム1a~1dの外周面は3つの領域A、B、Cに区画される。領域Aは、所定サイズ(ここではA4横サイズ)の用紙幅w1(297mm)の内側の領域である。領域B(第1領域)は、A4横サイズの用紙幅w1の外側、且つ、最大サイズ(ここでは13インチサイズ)の用紙幅w2(330mm)の内側の領域である。13インチサイズの用紙幅w2は、現像装置3a~3dの現像領域幅(332mm)と略同一幅である。
【0037】
領域C(第2領域)は、13インチサイズの用紙幅w2(330mm)の外側、且つ、帯電装置2a~2dの帯電領域幅w3(340mm)の内側の領域である。クリーニングブレード32のブレード幅および摺擦ローラー33のローラー幅w4(350mm)は、いずれも帯電領域幅w3よりも大きく、且つ、感光体ドラム1a~1dの軸方向長さ(360mm)よりも小さい。
【0038】
トナー溜め部材50は、感光体ドラム1a~1dの長手方向の両端部において領域Bから領域Cに跨って対向配置されている。より詳細には、トナー貯留部52は領域Bの幅方向(図6の左右方向)の少なくとも一部に対向するように配置されており、領域Cの幅方向の全域に対向するように配置されている。
【0039】
図7は、画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0040】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部80からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、画像形成装置100の本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0041】
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。カウンター95は、印字枚数を積算してカウントする。
【0042】
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa~Pd、定着部13、電圧制御回路61、画像入力部70、操作部80等が挙げられる。
【0043】
電圧制御回路61は、帯電電圧電源62、現像電圧電源63、転写電圧電源64と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。これらの各電源は、電圧制御回路61からの制御信号によって、帯電電圧電源62は帯電装置2a~2d内の帯電ローラー21に、現像電圧電源63は現像装置3a~3d内の現像ローラー31に、転写電圧電源64は一次転写ローラー6a~6dおよび二次転写ローラー9に、それぞれ所定の電圧を印加する。
【0044】
画像入力部70は、画像形成装置100にパソコン等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部70より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0045】
操作部80には、液晶表示部81、各種の状態を示すLED82が設けられており、ユーザーは操作部80のストップ/クリアボタンを操作して画像形成を中止し、リセットボタンを操作して画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする。液晶表示部81は、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0046】
前述したように、画像形成装置100では帯電装置2a~2dの帯電ローラー21に帯電電圧(直流電圧)を印加して感光体ドラム1a~1dを帯電させる。そして、露光、現像、転写およびクリーニングの各工程が行われた後、感光体ドラム1a~1dの残留電荷を除電するために除電装置20から除電光を照射する。このとき、感光体ドラム1a~1dの帯電および除電が繰り返されることにより、帯電ローラー21による近接放電により生成したNOxなどの放電生成物が感光体ドラム1a~1dの表面に付着する。
【0047】
画像領域(図6の領域A、B)においてはクリーニングブレード32および摺擦ローラー33にトナーが供給され、感光体ドラム1a~1dの表面が研磨される。そのため、放電生成物の付着もほとんどなく、感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数の上昇も少ない。しかしながら、画像領域の外側(図6の領域C)においては画像形成時にクリーニングブレード32および摺擦ローラー33にトナーが供給されず、放電生成物が除去されない。その結果、感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数が上昇してクリーニングブレードの摩擦力が増加し、ブレード鳴きやブレード捲れ、クリーニング不良等の不具合が発生する。
【0048】
そこで、本実施形態の画像形成装置100では、上述した画像領域の外側にもトナーを十分に供給するために、領域Bから領域Cに跨ってトナー溜め部材50を配置する。そして、一般的に使用されるA4横サイズへの印字時には、通紙領域の外側、且つ現像領域の内側(図6の領域B)にトナーバンドTB(図6参照)を形成する。
【0049】
これにより、領域Cにトナーを供給してクリーニングブレード32および摺擦ローラー33による感光体ドラム1a~1dの表面の研磨を促進し、感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数の上昇を抑えることとしている。
【0050】
図8は、実施形態の画像形成装置100における画像形成動作の制御例を示すフローチャートである。必要に応じて図1図7を参照しながら、図5のステップに沿って画像形成装置100の画像形成手順について詳細に説明する。
【0051】
先ず、制御部90は印字命令を受信したか否かを判定する(ステップS1)。印字命令が受信されない場合は(ステップS1でNo)印字待機状態を継続する。印字命令を受信した場合は(ステップS1でYes)、制御部90は印字に使用される用紙サイズを検出する(ステップS2)。用紙サイズは、給紙カセット2aや手差し給紙トレイ2bに配置される用紙サイズ検知センサー(図示せず)や、パソコン等の外部機器から画像入力部70に送信された画像データにより判定される。
【0052】
次に、制御部90は、ステップS2で検出された用紙サイズがA4横サイズ以下であるか否かを判定する(ステップS3)。用紙サイズがA4横サイズ以下である場合は(ステップS3でYes)、感光体ドラム1a~1dの領域BにトナーバンドTBを形成しながら(ステップS4)印字を実行する(ステップS5)。一方、用紙サイズがA4横サイズよりも大きい場合は(ステップS3でNo)トナーバンドTBを形成せずに印字を実行する(ステップS5)。
【0053】
その後、印字が終了したか否かを判定し(ステップS6)、印字が継続している場合は(ステップS6でNo)ステップS2に戻り用紙サイズの検知および印字動作を継続する(ステップS2~S5)。印字が終了している場合は(ステップS6でYes)処理を終了する。
【0054】
本実施形態の構成によれば、用紙サイズがA4横サイズ以下であるときは領域BにトナーバンドTBが形成されるため、クリーニングブレード32および摺擦ローラー33で掻き落とされたトナーバンドTBがトナー溜め部材50のトナー貯留部52に断続的に落下して堆積する。トナー貯留部52に落下したトナーは、トナー貯留部52のクリーニングブレード32と反対側の端縁に形成された堰き止め部53によって後方(図6の下方向)への移動が規制される。また、トナー貯留部52は領域Bから領域Cに向かって幅広となっている。
【0055】
そのため、トナー貯留部52に落下して堆積したトナーはトナー貯留部52の形状に沿って広がりながら感光体ドラム1a~1dの軸方向外側へ押し出され、現像領域の外側の領域Cに対向する位置まで移動する。このトナーが摺擦ローラー33に供給されて領域Cが研磨される。
【0056】
一方、用紙サイズがA4横サイズより大きい場合(例えば13インチ用紙の場合)は、領域A、Bに印字画像が形成されるため、上記と同様に領域Bに残存したトナーがトナー溜め部材50に堆積し、領域Cに移動する。このため、領域Cに付着した放電生成物が除去され、感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数の上昇が抑制される。
【0057】
従って、感光体ドラム1a~1dのクリーニングブレード32の両端部に対向する部分の表面摩擦係数の上昇が抑えられるため、クリーニングブレード32のブレード鳴きや捲れ、クリーニング不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
図6に示すように、トナー溜め部材50はトナー貯留部52が領域Cの幅方向(図6の左右方向)の全域に対向するように配置することが好ましい。これにより、領域Cの全域に亘ってトナーを十分に供給することができる。
【0059】
また、図6ではトナーバンドTBは領域Bの幅方向全域に形成されているが、感光体ドラム1a~1dの軸方向においてトナー貯留部52に重なる位置に形成されていればよい。
【0060】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では用紙サイズがA4横サイズ以下の場合とA4横サイズよりも大きい場合とでトナーバンドTBの形成の要否を判定するようにしたが、トナーバンドTBの形成のトリガーとなる用紙サイズは任意に設定可能である。但し、画像形成装置100において最も使用頻度が高いサイズを要否判定のトリガーとなるサイズとしておくことが好ましい。
【0061】
また、トナー溜め部材50の支持部51、トナー貯留部52、堰き止め部53の寸法や形状等は、クリーニングブレード32や摺擦ローラー33の仕様に応じて適宜変更することができる。例えば、上記実施形態ではクリーニングブレード32と反対側へのトナーの移動を規制する堰き止め部53をトナー貯留部52の端縁に沿って形成したが、図9に示す変形例のように、堰き止め部53を形成する代わりにトナー貯留部52をクリーニングブレード32に向かって下向きに傾斜させることでトナーの移動を規制するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、画像形成装置100として、図1に示したようなカラープリンターを例に挙げて示したが、本発明は、モノクロプリンター、モノクロ複写機、デジタル複合機、ファクシミリ等の他の画像形成装置であってもよい。以下、実施例により本発明の効果について更に詳細に説明する。
【実施例
【0063】
本発明の画像形成装置100における感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数の上昇抑制効果についての検証試験を行った。試験機としては、図1に示したような中間転写式の画像形成装置100に、図5に示したようなトナー溜め部材50を配置したクリーニング装置7a~7dを搭載し、図8に示すように用紙サイズに応じてトナーバンドTBを形成した場合(本発明)、トナー溜め部材50を配置するがトナーバンドTBを形成しなかった場合(比較例1)、トナー溜め部材50を配置せずトナーバンドTBのみを形成した場合(比較例2)、トナー溜め部材50を配置せずトナーバンドTBも形成しなかった場合(比較例3)で、感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数を比較した。
【0064】
試験方法としては、プロセス線速152mm/secでA4横サイズの普通紙(用紙幅297mm)に印字率5%のテスト画像を1000枚連続印字し、印字終了後に摩擦係数測定用治具を用いて感光体ドラム1a~1dの通紙領域の幅方向外側(図6の領域C)の表面摩擦係数を測定した。
【0065】
画像形成条件は、感光体ドラム1a~1dの表面電位(明電位)V0=350V、露光後電位(暗電位)VL=150Vとした。350Vの直流電圧に、周波数5kHz、Vpp=1100V、Duty=50%の矩形波の交流電圧を重畳した現像電圧を印加した。また、平均粒子径6.8μmの正帯電性トナーと、平均粒子径35μmのフェライト・樹脂コートキャリアとからなる二成分現像剤を用い、トナー濃度を6%とした。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、トナー溜め部材50を配置してトナーバンドTBを形成した本発明では、領域Cの表面摩擦係数が0.3に抑えられた。この理由としては、トナー溜め部材50によってトナーバンドTBのトナーが領域Cに移動し、摺擦ローラー33に供給されることによって領域Cが研磨され、領域Cに付着した放電生成物が除去されためであると考えられる。
【0068】
一方、トナー溜め部材50を配置したがトナーバンドTBを形成しなかった比較例1では、領域Cの表面摩擦係数が0.55に上昇した。また、トナー溜め部材50を配置せずトナーバンドTBのみを形成した比較例2、トナー溜め部材50を配置せずトナーバンドTBも形成しなかった比較例3では、領域Cの表面摩擦係数が0.6に上昇した。この理由としては、領域Cにトナーが供給されず、摺擦ローラー33によって領域Cが研磨されなかったためであると考えられる。
【0069】
なお、比較例1においては比較例2、3に比べて表面摩擦係数が若干低下しているが、これはトナー溜め部材50によって印字画像のトナーや飛散トナーが僅かに領域Cに供給されたためと考えられる。
【0070】
以上の結果より、トナー溜め部材50を配置し、用紙サイズが所定サイズ(ここではA4横サイズ)以下の場合にトナーバンドTBを形成する本発明により、感光体ドラム1a~1dの表面摩擦係数の上昇が効果的に抑制されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、感光体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング部材を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、記録媒体の幅方向外側における像担持体の表面摩擦係数の上昇を抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
Pa~Pd 画像形成部
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
2a~2d 帯電装置
3a~3d 現像装置
5 露光装置
7a~7d クリーニング装置
20 除電装置
32 クリーニングブレード
33 摺擦ローラー
41 ハウジング
43 ブレード支持ステー
50 トナー溜め部材
51 支持部
52 トナー貯留部
53 堰き止め部
70 画像入力部(入力部)
90 制御部
100 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9