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特許7467936ヒートシンク付絶縁回路基板、電子部品及びヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ヒートシンク付絶縁回路基板、電子部品及びヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240409BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20240409BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240409BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 C
H05K1/02 F
H05K7/20 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010667
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118257
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】北原 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】湯本 遼平
(72)【発明者】
【氏名】末永 圭一
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157115(JP,A)
【文献】特開2010-171033(JP,A)
【文献】特開2010-232369(JP,A)
【文献】特開2018-182198(JP,A)
【文献】特開2019-121794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12 -23/15
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されるとともに、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層が形成されてなる絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の前記金属層と銅層を介して固定されるSiCの多孔質体に金属が含侵された厚さが3.0mm以上5.0mm以下のヒートシンクと、を有し、
前記金属層と前記銅層、及び前記銅層と前記ヒートシンクとは、それぞれ固相拡散接合により接合されており、
前記銅層の前記金属層側の面における中央部に該金属層に対する非接合部が形成されており、
前記金属層側の面における前記非接合部の面積比率は、0.5%以上25%以下とされていることを特徴とするヒートシンク付絶縁回路基板。
【請求項2】
前記非接合部は、前記銅層を貫通する空間により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板。
【請求項3】
前記非接合部は、前記銅層の表面に形成された凹部により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク付絶縁回路基板と、前記ヒートシンク付絶縁回路基板の前記回路層上に形成される半導体素子と、を有し、前記ヒートシンク付絶縁回路基板を前記回路層側から投影してみた場合に、前記半導体素子は、前記回路層の表面における前記銅層の前記非接合部と重ならない位置に形成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項5】
セラミックス基板の一方の面に回路層を形成し、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層を形成して絶縁回路基板を形成する絶縁回路基板形成工程と、
前記絶縁回路基板における前記金属層とSiCの多孔質体に金属が含侵された厚さが3.0mm以上5.0mm以下のヒートシンクとを銅層を介して固相拡散接合するヒートシンク接合工程と、
前記ヒートシンク接合工程により接合されたヒートシンク付絶縁回路基板の前記回路層の表面を押圧する凸面を有する第1加圧板と、前記ヒートシンクの前記金属層とは反対側の面を押圧する凹面を有する第2加圧板と、により前記ヒートシンク付絶縁回路基板を挟持し、前記絶縁回路基板及び前記ヒートシンクの積層方向に押圧して前記ヒートシンク付絶縁回路基板の反りを矯正する矯正工程と、を備え、
前記ヒートシンク接合工程では、前記銅層の前記金属層側の面における中央部に、非接合部が形成されるように前記銅層を形成しており、前記金属層側の面における前記非接合部の面積比率は、0.5%以上25%以下とされることを特徴とするヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク付絶縁回路基板、電子部品及びヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板からなる絶縁層の一方の面に回路層が接合されるとともに、他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板にヒートシンクが接合されたヒートシンク付絶縁回路基板として、特許文献1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板が知られている。
この特許文献1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板は、回路層及び金属層がアルミニウム又はアルミニウム合金により構成されている。このヒートシンクは、銅又はアルミニウムにより構成され、セラミックス基板や回路層及び金属層に比べて厚く形成されるため、ヒートシンクを絶縁回路基板に接合すると、これらの熱伸縮差により、回路層側を上側とする凸状に反り易い。この反りを抑制するため、特許文献1では、絶縁回路基板とヒートシンクとを接合する際に、回路層の表面を押圧する凸面が形成された上側加圧板と、ヒートシンクの背面を押圧する凹面を有する下側加圧板とからなる一対の加圧板の間に絶縁回路基板とヒートシンクとの積層体を挟むことにより、その積層体に回路層側を上側とする凹状の変形を生じさせた状態で加圧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-170826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒートシンクの熱膨張係数を小さくしてセラミックス基板との間の熱伸縮差を小さくするため、ヒートシンクをAlSiC(AlとSiCとの複合体)により構成することが考えられる。この場合、絶縁回路基板とヒートシンクとの間に銅層を配置し、絶縁回路基板の金属層と銅層、及び銅層とヒートシンクとを固相拡散接合により接合可能である。
【0005】
しかしながら、銅層の熱膨張係数がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層の熱膨張係数より大きいので、接合の際の冷却時に銅層の収縮によって生じる大きな圧縮応力により、回路層側を上側とする凸状の反りが大きくなる。この反りを矯正するため、回路層の表面を押圧する凸面を有する加圧板と、ヒートシンクの背面を押圧する凹面を有する加圧板とによりヒートシンク付絶縁回路基板を挟持して、ヒートシンク付絶縁回路基板の回路層側を上側とする凹状の変形を生じさせた状態で加圧することが考えられる。
【0006】
しかしながら、接合時の反りが大きく、また、銅層の剛性が高いので、上記のように矯正してもヒートシンクの中央部分の回路層側を上側とする凸状の反りを矯正しきれず、中央部分が回路層側に突出する状態となる。このようなヒートシンク付絶縁回路基板を冷却器等に締結して用いた場合、冷却器とヒートシンク付絶縁回路基板との間に隙間が生じ、ヒートシンク付絶縁回路基板に繰り返しの温度変化が生じると、ヒートシンク付絶縁回路基板と冷却器等との間に塗布されたグリースがポンピング現象により、上記隙間から外部に排出されるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回路層側を上側とする凸状の反りを抑制できるヒートシンク付絶縁回路基板、電子部品、及びヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒートシンク付絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されるとともに、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層が形成されてなる絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の前記金属層と銅層を介して固定されるSiCの多孔質体に金属が含侵されたヒートシンクと、を有し、前記金属層と前記銅層、及び前記銅層と前記ヒートシンクとは、それぞれ固相拡散接合により接合されており、前記銅層の前記金属層側の面における中央部に該金属層に対する非接合部が形成されている。
【0009】
SiCの多孔質体に金属が含侵されたヒートシンクとしては、SiCの多孔質体にアルミニウムやアルミニウム合金、マグネシウムやマグネシウム合金などを含侵させたものである。その中でも、AlSiCが好適に用いられる。AlSiCとは、炭化ケイ素(SiC)の多孔質体に、アルミニウム(Al)を主成分とする金属が含浸されたものである。
また、銅層の金属層側の面における中央部とは、銅層の金属層側の面における図心を含む領域をいい、例えば、銅層が矩形である場合に、上記面における2つの対角線の交点を含む領域をいう。
本発明では、銅層の金属層側の面における中央部に非接合部が形成されているので、絶縁回路基板、銅層及びヒートシンクの接合時に、銅層の金属層との接合部においては、圧縮応力が生じ、中央部の非接合部においては、引張応力が生じる。この中央部に生じる逆方向の応力によりヒートシンク付絶縁回路基板の回路層側を上側とする凸状の反りを抑制できる。
また、ヒートシンク付絶縁回路基板の反りを矯正する場合に、接合時においてヒートシンク付絶縁回路基板の回路層側を上側とする凸状の反りが小さく抑えられているとともに、剛性の高い銅層の中央部に非接合部が形成されているので、中央部の矯正も容易となり、中央部が回路層側に突出する状態となることを抑制できる。
【0010】
本発明のヒートシンク付絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記非接合部は、前記銅層を貫通する空間により構成されているとよい。
空間としては、銅層を貫通する貫通溝や貫通孔を例示できる。
上記態様では、非接合部が銅層を貫通する空間により構成されているので、金属層と銅層との間及び銅層とヒートシンクとの間のそれぞれに非接合部を形成することができる。また、銅層となる銅板を打ち抜いて空間を形成することにより非接合部を形成できるので、その製造も容易である。
【0011】
本発明のヒートシンク付絶縁回路基板の別の態様としては、前記非接合部は、前記銅層の表面に形成された凹部により構成されていてもよい。
【0012】
本発明の電子部品は、上記ヒートシンク付絶縁回路基板と、前記ヒートシンク付絶縁回路基板の前記回路層上に形成される半導体素子と、を有し、前記ヒートシンク付絶縁回路基板を前記回路層側から投影してみた場合に、前記半導体素子は、前記回路層の表面における前記銅層の前記非接合部と重ならない位置に形成されている。
【0013】
本発明では、半導体素子が回路層の表面における銅層の非接合部と重ならない位置に形成されているので、半導体素子の熱を、銅層を介して速やかにヒートシンクに伝達でき、放熱性を高めることができる。
【0014】
本発明のヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面に回路層を形成し、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層を形成して絶縁回路基板を形成する絶縁回路基板形成工程と、前記絶縁回路基板における前記金属層とSiCの多孔質体に金属が含侵されたヒートシンクとを銅層を介して固相拡散接合するヒートシンク接合工程と、前記ヒートシンク接合工程により接合されたヒートシンク付絶縁回路基板の前記回路層の表面を押圧する凸面を有する第1加圧板と、前記ヒートシンクの前記金属層とは反対側の面を押圧する凹面を有する第2加圧板と、により前記ヒートシンク付絶縁回路基板を挟持し、前記絶縁回路基板及び前記ヒートシンクの積層方向に押圧して前記ヒートシンク付絶縁回路基板の反りを矯正する矯正工程と、を備え、前記ヒートシンク接合工程では、前記銅層の前記金属層側の面における中央部に、非接合部が形成されるように前記銅層を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路層側を上側とする凸状の反りを抑制できるヒートシンク付絶縁回路基板及び電子部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るヒートシンク付絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
図2図1に示すパワーモジュールの半導体素子側から見た上面図である。
図3図1に示すヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図であり、絶縁回路基板形成工程を示す図である。
図4図1に示すヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法におけるヒートシンク接合工程を示す図である。
図5図1に示すヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法における矯正工程を示す図である。
図6】上記実施形態の1変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板を用いたパワーモジュールの断面図である。
図7】上記実施形態の第2変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の金属層を示す平面図である。
図8】上記実施形態の第3変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の金属層を示す平面図である。
図9】上記実施形態の第4変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の金属層を示す平面図である。
図10図9に示す金属層の断面図である。
図11】上記実施形態の第5変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の金属層の断面図である。
図12】上記実施形態の第6変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の金属層の平面図である。
図13】上記実施形態の第7変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の金属層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[ヒートシンク付絶縁回路基板の概略構成]
本発明に係るヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法により製造されるヒートシンク付絶縁回路基板1は、図1に示すように、絶縁回路基板10に、銅層14を介してヒートシンク20が接合されたものである。
【0019】
[パワーモジュールの構成]
そして、このヒートシンク付絶縁回路基板1の表面に半導体素子30等が搭載されることにより、本発明の電子部品が製造される。半導体素子30としては、パワー半導体素子や、LED素子、熱電変換素子などが挙げられる。本実施形態では、半導体素子30としてパワー半導体素子を用いたパワーモジュール100(電子部品)で説明する。
なお、ヒートシンク20を備えるパワーモジュール100は、例えば図1に二点鎖線で示すような冷却器50に取り付けられた状態で使用される。この冷却器50には、ねじ止めによりパワーモジュール100が固定される。
【0020】
[絶縁回路基板の構成]
絶縁回路基板10は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に積層された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に積層された金属層13とを備える。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13の間の電気的接続を防止する絶縁材であって、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等により形成され、その板厚は0.2mm~1.2mmである。また、セラミックス基板11の平面サイズは、例えば、30~160mm×30~160mmに設定されている。
【0021】
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面に接合されており、純度99質量%以上の純アルミニウムからなり、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面に接合されており、純度99質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、JIS規格では1000番台のアルミニウムを用いることができる。特に、1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることが好ましい。
【0022】
回路層12及び金属層13の厚さは0.4mm~1.6mm、平面サイズは、26~156mm×26~156mmに設定されており、回路層12の厚さ及び平面サイズと金属層13の厚さ及び平面サイズとが同一に設定されている。これら回路層12及び金属層13は、セラミックス基板11よりも若干小さく形成されている。
そして、これら回路層12及び金属層13は、回路層12、セラミックス基板11、金属層13の順に、例えばAl-Si系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより接合される。
【0023】
[銅層の構成]
銅層14は、金属層13とヒートシンク20との間に配置されている。本実施形態においては、金属層13と銅層14は固相拡散接合されており、さらに、銅層14とヒートシンク20とは、固相拡散接合されている。この銅層14は、純度が99.9%以上の純銅又は銅合金の矩形板状の銅板からなり、平面サイズは、回路層12及び金属層13と同様に26~156mm×26~156mmとされている。また、銅層14の厚さは0.5mm以上5.0mm以下、より好ましくは、1mm以上3mm以下に設定されている。この銅層14の厚さが0.5mm未満であると、銅層14と金属層13及びヒートシンク20との固相拡散接合が適切に実行できず、これらの接合性が低下する可能性がある。また、銅層14の厚さが5.0mm以上であると、後述する製造工程の矯正工程において、銅層14の剛性が高くなりすぎて、回路層12側を上側とする凸状の反りを矯正しきれない可能性がある。
【0024】
また、銅層14の金属層13側の面には、金属層13と接合していない非接合部141が形成されている。この非接合部141は、銅層14を貫通する空間により構成され、本実施形態では、貫通溝により構成されている。
この銅層14は、図2に破線で示すように、十字状の貫通溝からなる非接合部141により4つの領域に分断されている。この十字状の貫通溝を構成する十字の交点と銅層14の中心C(図心)とは、一致している。また、非接合部141を構成する貫通溝の幅は、0.5mm~2.0mmとされている。また、銅層14の金属層13側の面における非接合部141の面積比率は、0.5%以上25%以下とされ、より好ましくは、5.0%以下であるとよい。つまり、銅層14の金属層13側の面における中央部に非接合部141が形成される。
なお、銅層14の金属層13側の面における中央部とは、図心を含む領域をいい、本実施形態では、銅層14が矩形であるため、上記面における2つの対角線の交点(中心C)を含む領域をいう。
【0025】
[ヒートシンクの構成]
この絶縁回路基板10に接合されるヒートシンク20は、AlSiCからなる板材により形成される。このAlSiCは、炭化ケイ素(SiC)の多孔質体に、アルミニウム(Al)を主成分とする金属が含浸されたものである。このアルミニウムとしては、例えば、Al-Si合金などを用いることができる。なお、AlSiCの少なくとも銅層14と接合される側の表面にはスキン層と呼ばれる、アルミニウム(Al)を主成分とする金属からなる(ほとんどSiCを含まない)層が形成されており、このスキン層と銅層14とが固相拡散接合されている。このスキン層を構成する金属とAlSiCに含侵されている金属とは、同一の組成であることが好ましい。
このAlSiCは、アルミニウム及び炭化珪素の両方の特性を兼ね備えており、ヒートシンクとして良好な熱伝導性を有するとともに、熱膨張係数が低く、絶縁回路基板10に接合されることにより、熱伸縮が絶縁回路基板10のセラミックス基板11と均衡して反り等の発生を抑制することができる。このヒートシンク20の厚さは、3.0mm以上5.0mm以下に設定され、その平面サイズは、例えば、40~200mm×40~200mmとされている。このようなヒートシンク20は、固相拡散接合により銅層14に接合され、絶縁回路基板10と一体とされる。
また、ヒートシンク20の外周縁には、図2に示すように、冷却器50等の各種機器への取り付けの際にねじ止めを行うための締結穴21が形成されている。
【0026】
パワーモジュール100を構成する半導体素子30は、回路層12の表面129に、Sn-Ag-Cu系等の一般的なはんだ材を用いて接合される。図1中の符号31が、そのはんだ接合層を示す。この際、ヒートシンク付絶縁回路基板1を回路層12側から投影してみた場合に、半導体素子30は、図2に示すように、回路層12の表面129における銅層14の非接合部141と重ならない位置に形成されている。この図2の例では、4つの半導体素子30は、銅層14の非接合部141により分断された4つの領域のそれぞれの中央に配置されている。
また、半導体素子30と回路層12の端子部との間は、アルミニウムからなるボンディングワイヤ(不図示)により接続される。
【0027】
[ヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法]
次に、本実施形態のヒートシンク付絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
その製造方法は、セラミックス基板11の一方の面に回路層12を形成するとともに、他方の面に金属層13を形成して絶縁回路基板10を形成する絶縁回路基板形成工程と、絶縁回路基板10における金属層13とヒートシンク20とを中央部に貫通溝が形成された銅層14を介して固相拡散接合するヒートシンク接合工程と、ヒートシンク接合工程により接合されたヒートシンク付絶縁回路基板1を積層方向に押圧してヒートシンク付絶縁回路基板1の反りを矯正する矯正工程と、を備える。以下、この工程順に説明する。
【0028】
(絶縁回路基板形成工程)
図3に示すように、回路層用金属板120、セラミックス基板11、金属層用金属板130を、それぞれAl-Si系ろう材箔15を介して積層し、その積層体を積層方向に加圧した状態で加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層用金属板120が接合され、他方の面に金属層用金属板130が接合される。これにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層12が形成され、他方の面に金属層13が形成された絶縁回路基板10が形成される。
【0029】
このときの接合条件は、必ずしも限定されるものではないが、真空雰囲気中で、積層方向の加圧力が0.3MPa~1.5MPaで、630℃以上655℃以下の加熱温度に20分以上120分以下保持するのが好適である。
なお、本実施形態では、ろう材箔15を用いることとしたが、これに限らず、ろう材ペーストを用いてもよい。この場合、ろう材ペーストは、セラミックス基板11に塗布してもよいし、回路層用金属板120及び金属層用金属板130に塗布してもよい。
【0030】
(ヒートシンク接合工程)
絶縁回路基板10の金属層13を、それぞれ隙間を空けて配置された4つの銅板140を介してヒートシンク20上に積層し、図4に示すように、絶縁回路基板10、4つの銅板140及びヒートシンク20の積層体を、平坦面を有する一対の加圧板31,32により挟持し、積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下で接合温度に加熱することにより、金属層13と4つの銅板140、及び、4つの銅板140とヒートシンク20とを固相拡散接合する。この場合の加圧力は、例えば0.5MPa~2.0MPa、加熱温度は500℃~540℃とされ、この加圧及び加熱状態を30分~120分保持する。これにより、金属層13とヒートシンク20とが銅層14を介して接合され、図1に示すように、ヒートシンク付絶縁回路基板1が得られる。
なお、本実施形態においては、金属層13の接合面、4つの銅板140の接合面及びヒートシンク20の接合面は、平滑にされた後に固相拡散接合される。また、ヒートシンク20の接合面には、酸化膜が形成されているので、この酸化膜を除去した後、銅板140と接合することが好ましい。
【0031】
ヒートシンク接合工程に用いた4つの銅板140のそれぞれは、例えば、平面サイズ12.5mm~76mm×12.5mm~76mm、厚さ0.5mm~5.0mmとされ、ヒートシンク20上にそれぞれ隙間の幅を0.2mm~2.0mmとした状態で配置し、これらを接合している。つまり、接合されることにより銅層14となる銅板140の金属層13側の面における中央部を含む十字状の領域に、空間が形成されるように銅板140を接合している。これら4つの銅板140の隙間(空間)は、銅層14における貫通溝となり、この貫通溝が上述した十字状の非接合部141となる。これにより、銅層14の金属層13側の面における中央部を含む十字状の領域に、非接合部141が形成されるように銅層14が形成される。
【0032】
具体的には、絶縁回路基板10に4つの銅板140を接合する際に、4つの銅板140の金属層13側の面における隙間(貫通溝)が形成されている部分は、金属層13に対する非接合部141となる。このため、絶縁回路基板10、4つの銅板140及びヒートシンク20の接合時に、銅板140の金属層13との接合部においては、圧縮応力が生じ、中央部を含む十字状領域である非接合部141においては、引張応力が生じる。詳述すると、十字状の非接合部141が銅層14を4つの領域に分断しているため、これら4つの領域(接合部)においては圧縮応力が生じ、4つの領域の間に形成された非接合部141においては、引張応力が生じる。この中央部を含む十字状の領域に生じる逆方向の応力によりヒートシンク付絶縁回路基板1の回路層12側を上側とする凸状の反りを抑制している。
【0033】
ただし、銅層14に非接合部141を設けることによりヒートシンク付絶縁回路基板1の回路層12側を上側とする凸状の反りは一部解消されるものの、金属層13の熱膨張係数と銅層14の熱膨張係数とが異なるため、凸状の反りが完全に解消されるわけではない。このため、本実施形態では、ヒートシンク接合工程後に矯正工程を実行している。
【0034】
(矯正工程)
矯正工程は、図5に示すように、第1加圧板41と、第2加圧板42とを備える冶具を用いて、常温(25℃)で実行される。第1加圧板41及び第2加圧板42は、ステンレス鋼材の表面にカーボン板が積層されたものであり、第1加圧板41は、回路層12の表面129を押圧する曲面状の凸面411を有し、第2加圧板42は、ヒートシンク20の銅層14とは反対側の面を押圧する曲面状の凹面421を有している。なお、凸面411の曲率半径Rは1000mm~5000mmとすることが好ましく、また、凹面421の曲率半径Rは1000mm~5000mmとすることが好ましい。
【0035】
矯正工程では、図5に示すように、ヒートシンク接合工程により接合されたヒートシンク付絶縁回路基板1の回路層12の表面129に第1加圧板41の凸面411を当接させるとともに、ヒートシンク付絶縁回路基板1のヒートシンク20の背面に第2加圧板42の凹面421を当接させてヒートシンク付絶縁回路基板1を挟持し、これらを絶縁回路基板10とヒートシンク20との積層方向(厚さ方向)に押圧して、回路層12側を上側とする凹状に反るように矯正する。なお、第1加圧板41の押圧力は、必ずしも限定されるものではないが、積層方向の加圧力が0.2MPa~2.0MPaに設定される。
【0036】
ここで、銅層14に非接合部141が形成されていない場合、銅層14全体の剛性が高くなるため、矯正工程を実行しても、ヒートシンク付絶縁回路基板1のヒートシンク20の中央部の反りを矯正しきれない場合がある。本実施形態では、剛性の高い銅層14の中央部を含む十字状の領域に非接合部141を形成しているので、中央部の矯正も容易となり、中央部が回路層12側に突出する状態となることを抑制している。
【0037】
本実施形態では、銅層14の金属層13側の面における中央部を含む十字状の領域に非接合部141が形成されているので、絶縁回路基板10、銅層14及びヒートシンク20の接合時に、銅層14の金属層13との接合部においては、圧縮応力が生じ、中央部を含む十字状の非接合部141においては、引張応力が生じる。この中央部を含む十字状の領域に生じる逆方向の応力により、セラミックス基板11における上記収縮応力が緩和されるため、ヒートシンク付絶縁回路基板1の回路層12側を上側とする凸状の反りを抑制できる。
また、ヒートシンク付絶縁回路基板1の反りを矯正する際に、接合時においてヒートシンク付絶縁回路基板1の回路層12側を上側とする凸状の反りが小さく抑えられているとともに、剛性の高い銅層14の中央部を含む十字状の領域に非接合部141が形成されているので、中央部の矯正も容易となり、中央部が回路層12側に突出する状態となることを抑制できる。
【0038】
本実施形態では、非接合部141が貫通溝(空間)により構成されているので、金属層13と銅層14との間及び銅層14とヒートシンク20との間のそれぞれに非接合部141を形成することができる。また、4つの銅板140を、それぞれ隙間を空けた状態で金属層13及びヒートシンク20との間に配置し、これらを固相拡散接合することにより非接合部141を形成できるので、その製造も容易である。
【0039】
また、パワーモジュール100では、半導体素子30が回路層12の表面129における銅層14の非接合部141と重ならない位置に形成されているので、半導体素子30の熱を、銅層14を介してヒートシンク20に伝達でき、放熱性を高めることができる。
【0040】
その他、細部構成は実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、回路層12は、分断されていない一枚の回路層用金属板120がセラミックス基板11に接合されることにより形成されていることとしたが、これに限らず、例えば、図6に示すような形状であってもよい。
【0041】
図6は、上記実施形態の第1変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板1Aを用いたパワーモジュール100Aの断面図である。なお、以下の説明では、上記実施形態と同一又は略同一の構成については、同じ符号を付し、説明を省略又は簡略化して説明する。
本変形例の回路層12Aは、図6に示すように、絶縁回路基板10Aを構成するセラミックス基板11に接合される第1回路層121と、第1回路層121の上面に接合される第2回路層122とを備えており、銅層14と同様に4つの領域に分割されている。この回路層12Aの4つの領域間の隙間は、銅層14の非接合部141(分割溝)の幅よりも若干大きく設定され、ヒートシンク付絶縁回路基板1Aを回路層12A側から投影してみた場合に、上記隙間と非接合部141とが重なるように形成されている。
【0042】
これらのうち第1回路層121は、純度99質量%以上の純アルミニウムが用いられ、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。また、第2回路層122は、純度が99.9%以上の純銅又は銅合金からなるとよい。第1回路層121の厚さは、金属層13の厚さと同じであることが好ましく、第2回路層122の厚さは、銅層14の厚さと同じであることが好ましい。この場合、セラミックス基板11の上側と下側とのバランスを向上させることができる。
【0043】
なお、上記第1変形例では、回路層12Aは4つの領域に分割されていることとしたが、例えば、2以上の領域に分割されていればよく、その領域の数及び形状は適宜設定できる。また、回路層12Aの2つの領域間の隙間は、銅層14の非接合部141(分割溝)の幅よりも若干大きく設定されていることとしたが、これに限らず、上記隙間より非接合部141の幅が大きくてもよいし、上記隙間と非接合部141の幅とが同じであってもよい。さらに、ヒートシンク付絶縁回路基板1Aを回路層12A側から投影してみた場合に、回路層12Aの4つの領域間の隙間と非接合部141とが重なるように形成されていることとしたが、これに限らず、これらが一部重なるように形成されてもよいし、全く重ならないように形成されてもよい。
【0044】
上記実施形態では、銅層14に形成された非接合部141の形状は、十字状であり、銅層14を4つの領域に分断する形状であることとしたが、これに限らず、例えば、図7又は図8に示す形状であってもよい。
図7は、上記実施形態の第2変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図である。この銅層14には、非接合部141Bが形成されている。この非接合部141Bは、図7に示すように、十字状の貫通溝(空間)により構成され、銅層14の中心C(図心)と十字の中心とが一致している。また、十字状の貫通溝の4つの端部のいずれもが銅層14の外周端に達していない。このような非接合部141Bは、銅層14となる銅板を十字状に打ち抜くことにより形成される。本変形例においても、銅層14となる銅板に十字状の空間が形成された状態で絶縁回路基板10及びヒートシンク20と接合されることにより、銅層14の金属層13側の面における中央部を含む十字状の非接合部141Bが形成される。これにより、上記実施形態と同様の効果を奏する他、銅層14が非接合部141Bにより分割されていないので、絶縁回路基板10とヒートシンク20との接合時に銅層14となる銅板を容易に配置可能となる。
【0045】
図8は、上記実施形態の第3変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図である。この銅層14には、非接合部141Cが形成されている。この非接合部141Cは、図8に示すように、銅層14の中心Cを通る直線状の貫通溝(空間)により構成され、この非接合部141Cが銅層14となる銅板を2つの領域に分断している。このような非接合部141Cは、2つの銅板を非接合部141Cと同じ隙間(空間)を空けて配置し、絶縁回路基板10及びヒートシンク20と接合することにより形成される。本変形例においても、銅層14の金属層13側の面における中央部を含む直線状に非接合部141Cが形成されているので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、非接合部141Cは、中心Cを通る直線状であればよく、例えば、図8の横方向に延びる形状であってもよいし、対角線上に延びる形状であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、非接合部141は、銅層14を貫通する空間(貫通溝)により構成されることとしたが、これに限らず、例えば、銅層14の金属層13側の表面に形成された凹部により構成されることとしてもよい。
図9は、上記実施形態の第4変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図であり、図10は、図9に示す銅層14の断面図である。この銅層14には、非接合部141Dが形成されている。この非接合部141Dは、図9及び図10に示すように、銅層14の金属層13側の表面に形成された中心Cを通る直線状の凹部により構成されている。この凹部の深さは、銅層14の厚さにも依存するが、銅層14の厚みの10%以上50%以下であることが好ましく、例えば、銅層14の厚さの略半分程度とされる。また、凹部の幅は、上記貫通溝と同じく0.5mm~2.0mmとされる。本変形例においても、銅板の金属層13側の表面に空間を形成し、これを絶縁回路基板10及びヒートシンク20と固相差拡散接合することにより、金属層13と銅層14との間に非接合部141Dが形成されるので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
図11は、上記実施形態の第5変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14の断面図である。この銅層14には、図11に示すように、金属層13側の面に形成される非接合部141Eと、ヒートシンク20側の面に形成される非接合部142Eが形成されている。これら非接合部141E,142Eは、銅層14の各面の中心を通る直線状に形成され、銅層14を投影して見た場合に、各非接合部141E,142Eは、重なって配置されている。これら非接合部141E,142Eを構成する各凹部の底面は平坦面とされ、その深さは、銅層14の厚さに依存するが、例えば、銅層14の厚みの10%以上50%未満であることが好ましい。本変形例では、金属層13と銅層14との間、及び銅層14とヒートシンク20との間に非接合部141E,142Eが形成されるので、上記実施形態と同様に空間(貫通溝)により非接合部を形成したのと同様の効果を奏することができる。
なお、上記第4及び第5変形例における凹部の底面は、平坦面であることとしたが、これに限らない。また、各凹部は、銅板140に対してエッチング加工やレーザ加工により形成されるとよい。
【0048】
上記実施形態では、非接合部141は、貫通溝により構成されることとしたが、これに限らず、例えば、貫通孔により構成されることとしてもよい。
図12は、上記実施形態の第6変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図である。この銅層14には、非接合部141Fが形成されている。この非接合部141Fは、図12に示すように、金属層13側の面における中心Cを中心とする平面視円形状の貫通孔により構成され、その直径は10mm程度とされている。好ましくは、セラミックス基板11の面積の1%以上5%以下の面積となるような直径を有する円形とするとよい。なお、この貫通孔の直径は、銅層14の平面サイズに合わせて変更可能である。本変形例においても、銅層14の金属層13側の面における中央部に非接合部141Fが形成されているので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる他、非接合部141Fが貫通孔により構成されているので、金属層13と銅層14との間及び銅層14とヒートシンク20との間のそれぞれに非接合部141Fを形成することができる。また、銅層14となる銅板140を打ち抜いて貫通孔を形成することにより非接合部141Fを形成できるので、その製造も容易である。
【0049】
図13は、上記実施形態の第7変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図である。この銅層14には、非接合部141Gが形成されている。この非接合部141Gは、金属層13側の面における中心Cを中心とする平面視矩形状の貫通孔により構成され、貫通孔の平面サイズは、10mm×10mm程度とされている。好ましくは、セラミックス基板の面積の1%以上5%以下の面積となるような、面積を持つ平面視矩形状に形成すると良い。なお、この貫通孔の平面サイズは、銅層14の平面サイズに合わせて変更可能である。本変形例においても、銅層14の金属層13側の面における中央部に非接合部141Gが形成されているので、上記第6変形例と同様の効果を奏することができる。
【0050】
上記実施形態では、銅層14は、矩形板状に形成されることとしたが、これに限らず、四角形以外の角形や、角丸四角形等であってもよい。この場合、銅層の中央部は、銅層の平面視における図心を含む領域となり、少なくとも図心を含む領域に非接合部が形成されていればよい。
【0051】
上記実施形態では、ヒートシンク20はAlSiCからなることとしたが、これに限らず、例えば、SiCの多孔質体にマグネシウムやマグネシウム合金などが含侵されたMgSiCにより形成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1A…ヒートシンク付絶縁回路基板
10,10A…絶縁回路基板
100,100A…パワーモジュール(電子部品)
11…セラミックス基板
12,12A…回路層
120…回路層用金属板
121…第1回路層
122…第2回路層
129…表面
13…金属層
130…金属層用金属板
14…銅層
140…銅板
141,141B,141C,141D,141E,142E,141F,141G…非接合部(空間、貫通溝、貫通孔、凹部)
15…ろう材箔
20…ヒートシンク
21…締結穴
30…半導体素子
31,32…加圧板
41…第1加圧板
411…凸面
42…第2加圧板
421…凹面
50…冷却器
C…中心(図心)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13