(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】現像装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240409BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G03G15/08 366
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020013237
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 渉
(72)【発明者】
【氏名】波多野 北斗
(72)【発明者】
【氏名】高谷 俊一
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197813(JP,A)
【文献】特開2001-166593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/08
13/095
15/08
15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体と、
現像剤を搬送しながら前記現像剤担持体へ前記現像剤を供給する供給搬送部材と、
前記供給搬送部材による現像剤搬送方向とは反対方向に前記現像剤を搬送する撹拌搬送部材と、
前記供給搬送部材を格納する供給室と前記撹拌搬送部材を格納する撹拌室とを有する筐体と、を備え、
前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記筐体の外部に前記現像剤を排出するための撹拌室側現像剤排出口を前記筐体に設け、前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側に向かって前記撹拌室側現像剤排出口まで到達した前記現像剤を排出
し、
前記供給搬送部材の現像剤搬送方向の下流側に、前記供給搬送部材の現像剤搬送方向とは逆方向に前記現像剤を搬送する逆送り搬送部材を設け、
前記逆送り搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記筐体の外部に前記現像剤を排出するための供給室側現像剤排出口を前記筐体に設けたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記撹拌室側現像剤排出口は、
前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記逆送り搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域に抜ける連絡口からなることを特徴とする
請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記撹拌室側現像剤排出口は、その下端部が前記筐体の内底面から一定の高さで離隔して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
現像剤担持体と、
現像剤を搬送しながら前記現像剤担持体へ前記現像剤を供給する供給搬送部材と、
前記供給搬送部材による現像剤搬送方向とは反対方向に前記現像剤を搬送する撹拌搬送部材と、
前記供給搬送部材を格納する供給室と前記撹拌搬送部材を格納する撹拌室とを有する筐体と、を備え、
前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記筐体の外部に前記現像剤を排出するための撹拌室側現像剤排出口を前記筐体に設け、前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側に向かって前記撹拌室側現像剤排出口まで到達した前記現像剤を排出
し、
前記撹拌室から前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側に向かって延出された補給室を設け、
当該補給室は、前記撹拌室との間には隔壁や段差などの境界が存在しない状態で連通すると共に、
前記撹拌室側現像剤排出口を前記補給室の内底部から下方に向かって開口して設けたことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記供給室と前記撹拌室とを仕切る隔壁を有し、
前記隔壁に、前記供給搬送部材から前記撹拌搬送部材に前記現像剤を受け渡す第一連通部と前記撹拌搬送部材から前記供給搬送部材に前記現像剤を受け渡す第二連通部とを設けたことを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記撹拌室側現像剤排出口は、前記筐体内に前記現像剤が補給される現像剤補給口に対して前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向上流側に設けられていることを特徴とすることを特徴とする
請求項1から5のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記撹拌搬送部材の駆動源と、
前記駆動源の制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記撹拌搬送部材の正送りと逆送りとを切り替えるように前記駆動源を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記供給搬送部材と前記撹拌搬送部材との駆動により前記現像剤の循環経路が形成され、
前記撹拌室側現像剤排出口は、前記循環経路から外れた位置に設けられ、
前記制御装置は、前記撹拌搬送部材の逆送りの駆動を、前記循環経路から前記撹拌室側現像剤排出口まで前記現像剤が移動する時間以上実行するように前記駆動源を制御することを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置における現像剤の排出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を用紙に転写し、転写されたトナー像を加熱定着することで、用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
感光体上にトナー像を現像する現像装置は、感光体に近接する現像ローラー(現像剤担持体)、撹拌、搬送のためのスクリュー等が現像槽内に配置されて構成されており、現像容器にトナーを含む現像剤を収容する。
【0004】
特許文献1に記載の現像装置は、現像ローラーに併設されて現像剤を供給する供給スクリューと、隔壁を介して供給スクリューと平行に配置された撹拌スクリューとを備え、供給スクリューと撹拌スクリューとは互いに逆方向に現像剤を送るように構成されている。また、隔壁における供給スクリューの搬送方向下流側と上流側とには、現像剤を循環させる連通口が設けられており、撹拌スクリューによってトナーとキャリアとが撹拌された現像剤が供給スクリューによって現像ローラーのほぼ全長に渡って供給される。
また、この現像装置は、供給スクリューの搬送方向下流側の端部に設けられた供給口から新しい現像剤が補填され、繰り返される使用により劣化した現像剤は、供給スクリューの搬送方向下流側の端部近傍であって供給口よりも上流側となる位置に設けられた排出口から排出される。なお、排出口は、開閉制御が行われるシャッター機構が設けられており、また、所定の高さで配置され、現像剤が排出口の下端部よりも上に到達するレベルまで増えると排出が行われる。
【0005】
特許文献2に記載の現像装置は、上記特許文献1の現像装置と同様に、隔壁で仕切られた供給スクリューと撹拌スクリューとを備え、隔壁には現像剤を流通させる二つの連通口が設けられている。そして、この現像装置は、撹拌スクリューから供給スクリューへ現像剤を送る連通口の隣に、高さの低い仕切りを有する他の連通口が設けられ、撹拌室から供給室への現像剤の流通の停滞を防いでいた。
【0006】
特許文献3に記載の現像装置は、上記特許文献1の現像装置と同様に、隔壁で仕切られた供給スクリューと撹拌スクリューとを備え、隔壁には現像剤を流通させる二つの開口部が設けられている。そして、この現像装置は、撹拌室の撹拌スクリューによる搬送方向の上流側と下流側とに現像剤を排出する排出口を設け、下流側の排出口の高さを上流側の排出口よりも高くしている。
これにより、現像剤の排出を専ら上流側の排出口で行い、現像剤が増えすぎた場合に下流側の排出口からも排出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-231624号公報
【文献】特開2017-194645号公報
【文献】特開2018-036537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各現像装置は、いずれも、傾斜等の外的要因によりに供給室と撹拌室内においてスクリュー長手方向両側の現像剤の偏りが生じた場合や、循環される現像剤のよどみ箇所で生じる撹拌が不十分で帯電量が低いままの現像剤の存在、トナー補給部の補給時の壁面固着トナーの剥がれ落ちによるトナー凝集物の存在への考慮が成されていなかった。
供給室と撹拌室内のスクリュー長手方向両側の現像剤の偏りが生じると、各スクリューの回転駆動源に予想外の負荷が生じるおそれがあった。
また、帯電量の低い現像剤が現像ローラーに供給されてしまうと、記録媒体に対して、トナーが本来意図していない箇所への付着(かぶり)の原因となり、トナーの凝集物が存在すると、トナー汚れ、白点等のトナーの抜け落ち等が生じて、画質が低下するおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、装置内の現像剤の偏りを抑制することを課題とする。
また、撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤やトナーの凝集物の影響の抑制を他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明にかかる現像装置は、
現像剤担持体と、
現像剤を搬送しながら前記現像剤担持体へ前記現像剤を供給する供給搬送部材と、
前記供給搬送部材による現像剤搬送方向とは反対方向に前記現像剤を搬送する撹拌搬送部材と、
前記供給搬送部材を格納する供給室と前記撹拌搬送部材を格納する撹拌室とを有する筐体とを備え、
前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記筐体の外部に前記現像剤を排出するための撹拌室側現像剤排出口を前記筐体に設け、前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側に向かって前記撹拌室側現像剤排出口まで到達した前記現像剤を排出し、
前記供給搬送部材の現像剤搬送方向の下流側に、前記供給搬送部材の現像剤搬送方向とは逆方向に前記現像剤を搬送する逆送り搬送部材を設け、
前記逆送り搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記筐体の外部に前記現像剤を排出するための供給室側現像剤排出口を前記筐体に設けたことを特徴とする。
さらに、本発明にかかる他の現像装置は、
現像剤担持体と、
現像剤を搬送しながら前記現像剤担持体へ前記現像剤を供給する供給搬送部材と、
前記供給搬送部材による現像剤搬送方向とは反対方向に前記現像剤を搬送する撹拌搬送部材と、
前記供給搬送部材を格納する供給室と前記撹拌搬送部材を格納する撹拌室とを有する筐体と、を備え、
前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側の領域から前記筐体の外部に前記現像剤を排出するための撹拌室側現像剤排出口を前記筐体に設け、前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側に向かって前記撹拌室側現像剤排出口まで到達した前記現像剤を排出し、
前記撹拌室から前記撹拌搬送部材の現像剤搬送方向の上流側に向かって延出された補給室を設け、
当該補給室は、前記撹拌室との間には隔壁や段差などの境界が存在しない状態で連通すると共に、
前記撹拌室側現像剤排出口を前記補給室の内底部から下方に向かって開口して設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる画像形成装置は、上記現像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現像装置の傾斜、その他の外的な要因により装置内の現像剤が偏り始めた場合に、撹拌搬送部材の搬送に抗して撹拌室側現像剤排出口まで到達した現像剤を筐体外に排出することができ、装置内の現像剤の偏りを抑制することが可能となる。
また、本発明によれば、装置内の現像剤が偏りにより嵩が増えると、撹拌室側現像剤排出口まで現像剤が到達して排出される際に、よどみにより生じる撹拌が不十分な現像剤や補給時に生じるトナー凝集物を含んで共に排出するので、撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤やトナーの凝集物の影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一の実施形態の画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第一の実施形態における現像装置の垂直断面図である。
【
図5】
図3のV-V線に沿った位置における他の構造例を示す断面図である。
【
図6】現像装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】第二の実施形態の画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】第二の実施形態における現像装置を上方から見た水平断面図である。
【
図11】現像装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一の実施形態]
以下に本発明の第一の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0015】
[装置概要]
図1は第一の実施形態の画像形成装置10の概略構成を示すブロック図である。
画像形成装置10は、
図1に示すように、電子写真式の画像形成装置であって、制御装置11と、画像形成部12と、記憶装置18と、インターフェース19と、給紙装置20と、排紙装置21等を備えて構成されている。
画像形成部12は、静電潜像を担持する静電潜像担持体としての感光体13と、感光体13に静電潜像を形成する露光装置14と、静電潜像をトナーで現像して感光体上にトナー像を現像する現像装置30と、トナー像を用紙に転写する転写装置16、トナー像を用紙に定着させる定着装置17、その他帯電装置、クリーニング装置等を備えて構成される。
【0016】
[現像装置]
図2は現像装置30の垂直断面図、
図3は現像装置30を上方から見た水平断面図である。
現像装置30は、画像形成装置10の内部に着脱可能に取り付けられている。以下に説明する現像装置30の各構成の配置や向きは、全て、画像形成装置10内に取り付けられた状態を前提としている。
現像装置30は、
図2及び
図3に示すように、現像剤を収容し、装置の全体構成を支持する筐体31と、感光体13にトナー像を現像する現像剤担持体としての現像ローラー32と、現像ローラー32へ現像剤を供給する供給搬送部材としての供給スクリュー33と供給スクリュー33による現像剤搬送方向とは反対方向に現像剤を搬送する撹拌搬送部材としての撹拌スクリュー34とを備える。
【0017】
現像剤は、トナーとキャリアを含む乾式二成分現像剤であり、トナーとキャリアを混合させて撹拌することによりトナーを帯電状態とすることができる。帯電したトナーは、現像ローラー32を通じて静電潜像が形成された感光体13の表面に付着させてトナー像を現像することができる。
【0018】
筐体31は、感光体13に向けて開放された開口部を備えており、この開口部の近傍に形成された空間に現像ローラー32が回転可能に支持されている。
現像剤担持体としての現像ローラー32と感光体13は、いずれも、円筒状であり、これらの回転軸は互いに平行且つ水平に向けられている。また、現像ローラー32の外周面と感光体13の外周面とは、所定の現像ギャップを形成するように配置されている。
なお、以下の説明において、現像ローラー32の回転軸に平行な方向をX軸方向、水平であってX軸方向に直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する鉛直上下方向をZ軸方向という場合がある。
【0019】
筐体31は、供給スクリュー33を格納した供給室311と、撹拌スクリュー34を格納した撹拌室312とを備えている。
筐体31内において、現像ローラー32と供給スクリュー33と撹拌スクリュー34は、いずれもその回転中心線がX軸方向に平行となるように支持されており、これらは略Y軸方向に並んで配置されている。供給スクリュー33及び供給室311は、現像ローラー32の隣であって、感光体13の反対側に配置されている。また、撹拌スクリュー34及び撹拌室312は、供給スクリュー33及び供給室311の隣であって、現像ローラー32の反対側に配置されている。
現像ローラー32と供給スクリュー33と撹拌スクリュー34は、モーター301を駆動源として図示しない動力伝達機構を介していずれも同じ回転方向に連動回転動作が付与される。
【0020】
供給スクリュー33は、X軸方向に向けられた状態で筐体31内に回転可能に支持された第一軸331と、第一軸331に固定装備された螺旋状の撹拌羽根332とを備えている。
供給室311は、内底部のY-Z平面に沿った断面形状が下に向かって凸となる円弧状であり、その内径は撹拌羽根332の最外径より僅かに大きく設定されている。そして、撹拌羽根332の外周は供給室311の内底部に接近した状態で配置されている。
供給室311内に現像剤が充填された状態で、供給スクリュー33が規定の正回転方向に回転駆動されることにより、供給室311内において、現像剤をX軸方向に平行な矢印H1方向に向かって撹拌しながら搬送することができる。
供給スクリュー33は、現像ローラー32のX軸方向の全長に渡って接近して配置されており、現像ローラー32の外周面全域にわたって現像剤に含まれるトナーを供給することができる。
【0021】
撹拌スクリュー34は、X軸方向に向けられた状態で筐体31内に回転可能に支持された第二軸341と、第二軸341に固定装備された螺旋状の撹拌羽根342とを備えている。
撹拌室312は、内底部のY-Z平面に沿った断面形状が下に向かって凸となる円弧状であり、その内径は撹拌羽根342の最外径より僅かに大きく設定されている。そして、撹拌羽根342の外周は撹拌室312の内底部に接近した状態で配置されている。
また、撹拌スクリュー34の撹拌羽根342は、供給スクリュー33の撹拌羽根332とは逆巻きの螺旋状に形成されている。
これにより、撹拌室312内に現像剤が充填された状態で、撹拌スクリュー34が規定の正回転方向に回転駆動されることにより、撹拌室312内において、現像剤をX軸方向に平行な矢印H2方向(矢印H1と逆方向)に向かって撹拌しながら搬送することができる。
【0022】
また、供給室311と撹拌室312とは、X-Z平面に沿った隔壁313により仕切られており、当該隔壁313のX軸方向の一端部と他端部とには、それぞれ供給室311と撹拌室312との間を現像剤が流通する開口が設けられている。
図3において、隔壁313の右端に設けられた開口は、供給スクリュー33から撹拌スクリュー34に現像剤を受け渡す第一連通部314であり、隔壁313の左端に設けられた開口は、撹拌スクリュー34から供給スクリュー33に現像剤を受け渡す第二連通部315である。
即ち、供給スクリュー33は、前述したように矢印H1方向に向かって現像剤を搬送するので、現像剤は、供給室311において供給スクリュー33の正回転の搬送方向下流側に位置する第一連通部314から撹拌室312に矢印H3方向に向かって押し込まれることになる。
同様に、撹拌スクリュー34は、前述したように矢印H2方向に向かって現像剤を搬送するので、現像剤は、撹拌室312において撹拌スクリュー34の正回転の搬送方向下流側に位置する第二連通部315から供給室311に矢印H4方向に向かって押し込まれることになる。
つまり、筐体31内において、現像剤は、矢印H1,H3,H2,H4を連ねた環状の循環経路に沿って搬送が行われるようになっている。
【0023】
また、撹拌スクリュー34は、その一端部において、補給スクリュー35に連結されている。補給スクリュー35は、X軸方向に向けられた状態で筐体31内に回転可能に支持された第三軸351と、第三軸351に固定装備された螺旋状の撹拌羽根352とを備えている。第三軸351は、撹拌スクリュー34の第二軸341と同心で連結され、一体的に回転を行う。撹拌羽根352は、撹拌スクリュー34の撹拌羽根342と現像剤の搬送方向が一致している。
【0024】
補給スクリュー35は、撹拌室312の片側に設けられた補給室316に収容されている。
補給室316は、Y-Z平面に沿った断面形状が撹拌室312とほぼ等しく設定されており、補給室316と撹拌室312との間には隔壁や段差などの境界が存在しない状態で連通している。
補給室316には、補給スクリュー35の周囲の壁面部(例えば、補給スクリュー35の上方)における撹拌室312寄りの位置に現像剤を筐体31内に補給する現像剤補給口317が設けられている(
図3では二点鎖線で図示)。
【0025】
補給室316の上方には、トナーが格納された補給トナー貯留部と当該補給トナー貯留部からトナーを搬送する搬送機構とからなる図示しない補給部が配置されている。そして、現像剤補給口317を通じて上方から補給室316内の補給スクリュー35にトナーが補給される。
これにより、補給されたトナーは、矢印H2と同方向に向かって、筐体31内の前述した環状の循環経路を循環する現像剤に合流し、撹拌スクリュー34によって撹拌される。
【0026】
乾式二成分現像剤は、画像形成を行うことによりトナーを消費する。このため、トナーの補給の要否判断のために、供給室311又は撹拌室312内に、現像剤に含まれるトナー量の検出を行うトナー量検出装置302(
図1参照)が設けられている。
トナー量検出装置302は、例えば、透磁率センサーからなり、供給室311又は撹拌室312内の現像剤を貫通する方向(例えば、Z軸方向)の透磁率を検出し、その検出結果から現像剤に含まれるトナーの含有率を求めることができる。
前述した制御装置11は、トナー量検出装置302の検出に基づくトナーの含有率が予め定められた閾値を下回ると、補給部の搬送機構を作動させて規定量のトナーを供給する制御を行う。
【0027】
なお、トナー量検出装置302を設けずに、制御装置11が画像形成装置10における画像形成量(例えば、用紙の給紙枚数等)の累積量を監視し、一定量を超える度にトナーを供給する制御を行ってもよい。
【0028】
補給室316内において、X軸方向のほぼ全長に渡って補給スクリュー35が配置されている。そして、補給室316における、当該補給スクリュー35の正回転による現像剤の搬送方向(撹拌スクリュー34の搬送方向と一致)の現像剤補給口317よりも上流側となる補給スクリュー35の周囲の壁面には、撹拌室側現像剤排出口318が設けられている。
この撹拌室側現像剤排出口318は、
図4に示すように、補給室316の内底部から下方に向かって開口している。この撹拌室側現像剤排出口318から排出された現像剤は、図示しない廃棄現像剤貯蔵部に落下して貯蔵される。
【0029】
なお、補給室316に設ける撹拌室側現像剤排出口318は、
図4に示すような下方に向けた状態に限られない。
例えば、
図5に示すように、撹拌室側現像剤排出口318は、側方を向いた状態で設けてもよい。その場合、撹拌室側現像剤排出口318は、図示のように、その下端部の高さは内底面から所定の高さとする。例えば、補給スクリュー35の第三軸351の上端部の高さhと同程度とすることが好ましい。この高さは、傾きが生じない状態で現像装置30が適正に配置されている場合には、現像剤が到達しない高さである。この高さであれば、補給スクリュー35による搬送撹拌動作によって現像剤を排出することができる。
【0030】
[現像装置の現像動作]
現像装置30は、制御装置11によって動作制御が行われる。
図6は、制御装置11による画像形成時の現像装置30の動作制御を示したフローチャートである。この
図6に基づいて現像装置30の動作を説明する。
【0031】
制御装置11は、現像装置30の供給スクリュー33,撹拌スクリュー34及び補給スクリュー35の回転駆動を行うモーター301を正回転と逆回転とに切り替える制御を行うことができる。
画像形成時において、制御装置11は、通常の現像動作の際には、供給スクリュー33,撹拌スクリュー34及び補給スクリュー35を正回転させる方向にモーター301を駆動する(ステップS1)。これにより、供給室311及び撹拌室312内の現像剤は、トナーとキャリアが撹拌されながら前述した矢印H1,H3,H2,H4を連ねた環状の循環経路に沿って搬送が行われる。
また、供給スクリュー33は、供給室311内で隣に位置する現像ローラー32の外周面に撹拌により帯電した現像剤中のトナーを供給する。これにより、現像ローラー32は、筐体31の外部で対向する感光体13の外周面にトナー像を現像することができる。
【0032】
そして、制御装置11は、連続的又は周期的にトナー量検出装置302により供給室311又は撹拌室312内の透磁率を検出し、その検出結果から現像剤に含まれるトナーの含有率が規定の閾値を下回るか否かを判定する(ステップS3)。
トナーの含有率が規定の閾値以上であればステップS7に処理を進め、閾値に満たない場合には、制御装置11は、補給部の搬送機構を作動させて規定量のトナーを補給する制御を実行する(ステップS5)。トナーの補給は、規定時間実行しても良いし、トナー量検出装置302により検出される透磁率が示すトナーの含有率が補給時の目標値となるまで継続しても良い。
【0033】
トナーの補給の際には、トナーが現像剤補給口317から補給室316内に供給され、補給スクリュー35により、撹拌室312に向かう矢印H5に向かってトナーが搬送され、撹拌室312内の現像剤と共に撹拌スクリュー34によって撹拌されながら搬送される。従って、トナーが補給された現像剤が供給室311に搬送される。
なお、補給室316内では、補給スクリュー35が撹拌室312側にトナーの搬送を行っているので、適正な現像剤の搬送状態では、トナーや現像剤は
図3に示すエリアA1よりも正回転の搬送方向上流側には搬送されず、撹拌室側現像剤排出口318からはトナーや現像剤が排出されない。
【0034】
一方、何らかの原因、例えば、現像装置30が傾斜した状態で画像形成装置10に取り付けられた等の原因により、筐体31内でX軸方向両側における端部に現像剤の偏りを生じ、供給室311や撹拌室312の片側端部の現像剤が増加する場合がある。
このような現像剤の偏りを生じると、撹拌室312及び補給室316内で現像剤のかさが上昇し、トナーや現像剤は
図3に示すエリアA2まで後退する。これにより、トナーや現像剤が撹拌室側現像剤排出口318から廃棄現像剤貯蔵部に排出され、偏り状態を解消することができる。
【0035】
また、トナーの供給において、既に循環されている現像剤の流れに対してトナーが合流するので、
図7に示すように、その合流点Rの付近においてトナーの流れによどみが生じて撹拌で不十分で帯電量が低い現像剤が滞留する場合がある。
上記のように、現像剤の偏りを生じて現像剤のかさが上昇すると、帯電量が低い現像剤が循環されている現像剤の流れに混入されて、かぶり等の画質低下の原因となり得る。
また、現像剤補給口317周囲の筐体壁面には、壁面固着トナーからの剥がれ落ちによるトナー凝集物が生じる場合があるが、現像剤のかさが上昇すると、トナー凝集物が循環されている現像剤の流れに混入されて、トナー汚れ、白点等のトナーの抜け落ち等の画質低下の原因となり得る。
しかしながら、現像剤のかさの上昇時に、トナーや現像剤が撹拌室側現像剤排出口318から排出されるので、帯電量が低い現像剤やトナーの凝集物が循環されている現像剤の流れに混入することを抑制し、画質低下の発生を低減する。
【0036】
また、制御装置11は、現像剤の偏り等の発生を考慮して、定期的に又はモーター301の駆動トルクの上昇時に、モーター301を逆回転させる制御を行う。モーター301の駆動トルクの上昇は、モーター301に対する駆動電流を監視することで検出可能である。
即ち、制御装置11は、定期的な期間の到来又はモータートルク上昇の検出等により、モーター301の逆回転の実行条件を満たすと(ステップS7)、モーター301の逆回転を実行する(ステップS9)。
【0037】
モーター301の逆回転により、供給室311、撹拌室312及び補給室316内には、
図3の二点鎖線の矢印G1に示すように、現像剤は通常時とは逆方向の流れが発生する。
前述した合流点Rでは、循環される現像剤のよどみにより撹拌が不十分で帯電量が低いままの現像剤が滞留しているが、現像剤の逆搬送時に現像剤補給口317の周辺でトナーの凝集物が発生する場合もある。
現像剤は矢印G1に沿って搬送されるので、撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤やトナーの凝集物は、逆回転の搬送方向下流側の終点に位置する撹拌室側現像剤排出口318から筐体31の外部の廃棄現像剤貯蔵部に排出することができる。
【0038】
モーター301の逆回転の実行時間は、少なくとも、矢印H1,H3,H2,H4を連ねた環状の循環経路(合流点Rの付近)から撹拌室側現像剤排出口318まで現像剤を搬送するまでに要する時間以上に設定されている。これにより、合流点Rに滞留している撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤や現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物を撹拌室側現像剤排出口318から排出することができる。この環状の循環経路から撹拌室側現像剤排出口318まで現像剤を搬送するまでに要する時間は、予め、所要時間を試験などで実測して記憶装置18に記録しておくことが望ましい。
【0039】
制御装置11は、モーター301の逆回転の実行開始からの経過時間を計測し、予め定められた実行時間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。
そして、実行時間が経過していない場合にはモーター301の逆回転を継続し、経過した場合にはモーター301を再び正回転に切り替える(ステップS13)。
その後、制御装置11は、画像形成が終了するか判定し(ステップS15)、終了ではない場合には、ステップS1に処理を戻して現像動作を継続し、画像形成の終了の際にはモーター301を停止して(ステップS17)、現像動作を終了する。
【0040】
[第一の実施形態の技術的効果]
以上のように、画像形成装置10の現像装置30は、撹拌スクリュー34の正回転の現像剤搬送方向の上流側の領域である補給室316から外部に現像剤を排出するための撹拌室側現像剤排出口318を筐体31に設けている。このため、通常の搬送時には、現像剤は、撹拌室側現像剤排出口318から排出されることはないが、筐体31内で現像剤の偏りが生じた場合に、現像剤のかさの上昇により撹拌室側現像剤排出口318から排出することができる。このように簡易な構成によって現像剤の偏りによるモーター301のトルク上昇による負荷を低減することが可能となる。
また、現像剤の循環経路から外れた位置となる合流点Rによどみによる撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤が生じた場合に、現像剤の偏りが生じると、かさの上昇によって帯電量が低い現像剤が現像剤の循環経路に入り込むおそれがある。このような場合でも、かさの上昇により余剰となる現像剤が撹拌室側現像剤排出口318から排出される際に、帯電量が低い現像剤も一緒に排出し得るので、帯電量が低い現像剤の影響を抑制することが可能となる。
【0041】
また、撹拌室側現像剤排出口318を、現像剤を補給する現像剤補給口317に対して撹拌スクリュー34の正回転時の現像剤搬送方向上流側に設けているので、現像剤の偏りの発生時において、現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物を撹拌室側現像剤排出口318から排出することができ、画像形成装置10における形成画像の画質の向上を図ることが可能となる。
【0042】
また、現像装置30は、制御部としての制御装置11を備え、供給スクリュー33及び撹拌スクリュー34の駆動源たるモーター301の制御によって、正送りと逆送りとを切り替えることができるので、現像剤の偏りの発生時に偏りを低減することができる。
また、モーター301の逆回転時には、合流点Rに生じた撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤や現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物を効果的に撹拌室側現像剤排出口318から排出することができるので、画像形成装置10における形成画像のさらなる画質の向上を図ることが可能となる。
【0043】
また、制御装置11は、供給スクリュー33及び撹拌スクリュー34の逆送りの駆動を、現像剤の循環経路から撹拌室側現像剤排出口318まで現像剤が搬送により移動する時間以上実行するようにモーター301を制御しているので、合流点Rに生じた撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤や現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物をより効果的に撹拌室側現像剤排出口318から排出することができるので、画像形成装置10における形成画像のさらなる画質の向上を図ることが可能となる。
【0044】
また、現像装置30の筐体31は、供給室311と撹拌室312とを仕切る隔壁313に、供給スクリュー33から撹拌スクリュー34に現像剤を受け渡す第一連通部314と撹拌スクリュー34から供給スクリュー33に現像剤を受け渡す第二連通部315とを設けているので、現像剤を循環させることができ、十分に撹拌された現像剤を供給スクリュー33を通じて現像ローラー32に供給することができる。
【0045】
また、撹拌室側現像剤排出口318を、
図5に示すように、その下端部が筐体31の内底面から一定の高さで離隔して設けた場合には、撹拌室側現像剤排出口318の高さに応じて、筐体31内の現像剤のかさがどの程度の高さに達したかによって現像剤を排出するかを調整することが可能となる。
【0046】
[第二の実施形態]
第二の実施形態について図面に基づいて説明する。この第二の実施形態にかかる画像形成装置10Aは、前述した画像形成装置10と比較して、主に、現像装置30Aの構成が現像装置30と異なっている。従って、現像装置30Aについて現像装置30と異なる点を主に説明し、画像形成装置10Aと画像形成装置10同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
図8は画像形成装置10Aの概略構成を示すブロック図、
図9は現像装置30Aを上方から見た水平断面図、
図10は
図9のW-W線に沿った断面図である。この現像装置30Aも画像形成装置の内部に着脱可能であり、以下に説明する現像装置30Aの各構成の配置や向きも、全て、画像形成装置内に取り付けられた状態を前提としている。
【0047】
現像装置30Aも、使用する現像剤は、トナーとキャリアを含む乾式二成分現像剤だが、この現像装置30Aの場合には、使用によるキャリアの劣化を考慮して、トナーの補給時にトナーに僅かに新規のキャリアを含ませて補給を行っている。
キャリアがトナーに含まれた状態で補給されると、筐体31の内部では、現像剤が徐々に増加するので、現像装置30Aには、現像剤を排出し、その内容量を一定に維持するための構成が設けられている。
【0048】
また、
図8に示すように、現像装置30Aは、供給室311又は撹拌室312内の現像剤のかさ(内容量)を検出するための現像剤量検出装置303Aを備えている。
この現像剤量検出装置303Aは、例えば、透磁率センサーからなる。例えば、供給室311又は撹拌室312内において、所定の高さで水平方向(例えば、X軸方向又はY軸方向)に透磁率を検出し、透磁率の検出結果により、所定の高さまで現像剤が増加したことを検出することができる。
なお、現像剤量検出装置303Aは、透磁率センサーに限らず、例えば、フォトインタラプタ等のように光学的に現像剤の高さを検出することで現像剤が増加したことを検出しても良い。
【0049】
現像装置30Aは、供給スクリュー33の正回転の搬送方向下流側に逆送り搬送部材としての逆巻きスクリュー36Aが連結され、さらに、正回転の搬送方向下流側に排出スクリュー37Aが連結されている。
逆巻きスクリュー36Aは、X軸方向に向けられた状態で筐体31内に回転可能に支持された第四軸361Aと、第四軸361Aに固定装備された螺旋状の撹拌羽根362Aとを備えている。また、排出スクリュー37Aは、X軸方向に向けられた状態で筐体31内に回転可能に支持された第五軸371Aと、第五軸371Aに固定装備された螺旋状の撹拌羽根372Aとを備えている。
第四軸361A及び第五軸371Aは、供給スクリュー33の第一軸331と同心で連結され、一体的に回転を行う。
逆巻きスクリュー36Aの撹拌羽根362Aは、供給スクリュー33の撹拌羽根332と逆向きの螺旋状の羽根であり、正回転の現像剤の搬送方向が供給スクリュー33による現像剤搬送方向と逆方向となる。
排出スクリュー37Aの撹拌羽根372Aは、供給スクリュー33の撹拌羽根332と同じ向きの螺旋状の羽根であり、正回転の現像剤の搬送方向が供給スクリュー33と同方向となる。
【0050】
逆巻きスクリュー36A及び排出スクリュー37Aは、供給室311の供給スクリュー33の正回転の搬送方向下流側に設けられた排出室319Aに収容されている。
排出室319Aは、Y-Z平面に沿った断面形状が供給室311とほぼ等しく設定されており、排出室319Aと供給室311との間には隔壁や段差などの境界が存在しない状態で連通している。
排出室319A内において、X軸方向のほぼ全長に渡って逆巻きスクリュー36A又は排出スクリュー37Aが配置されている。そして、排出室319Aの供給スクリュー33の正回転の搬送方向下流側の端部における排出スクリュー37Aの周囲の壁面には、供給室側現像剤排出口319Bが設けられている。
この供給室側現像剤排出口319Bは、
図9に示すように、排出室319Aの内底部から下方に向かって開口している。この供給室側現像剤排出口319Bから排出された現像剤は、図示しない廃棄現像剤貯蔵部に落下して貯蔵される。
【0051】
また、現像装置30Aの補給室316には、廃棄現像剤貯蔵部に直接接続された撹拌室側現像剤排出口318が設けられておらず、その替わりに、補給室316内の補給スクリュー35の正回転の搬送方向上流側の端部から排出室319Aに連通する連絡口からなる撹拌室側現像剤排出口318Aが設けられている。
撹拌室側現像剤排出口318Aは、
図10に示すように、Y軸方向に沿って水平に設けられており、撹拌室側現像剤排出口318Aは、その下端部の高さが補給スクリュー35の第三軸351の上端部の高さhと同程度とすることが好ましい。この高さは、傾きが生じない状態で現像装置30が適正に配置されている場合には、現像剤が到達しない高さである。この高さであれば、補給スクリュー35による搬送撹拌動作によって現像剤を排出することができる。また、撹拌室側現像剤排出口318Aは、排出室319A側に向かって下降勾配を設けてもよい。
【0052】
[現像装置の現像動作]
現像装置30Aは、制御装置11によって動作制御が行われる。
図11は、制御装置11による画像形成時の現像装置30Aの動作制御を示したフローチャートである。この
図11に基づいて現像装置30Aの動作を説明する。
【0053】
画像形成時において、制御装置11は、通常の現像動作の際には、供給スクリュー33,逆巻きスクリュー36A,排出スクリュー37A,撹拌スクリュー34及び補給スクリュー35を正回転させる方向にモーター301を駆動する(ステップS21)。これにより、供給室311及び撹拌室312内の現像剤は、トナーとキャリアが撹拌されながら矢印H1,H3,H2,H4を連ねた環状の循環経路に沿って搬送が行われる。
また、供給スクリュー33は、供給室311内で隣に位置する現像ローラー32の外周面に撹拌により帯電した現像剤中のトナーを供給する。これにより、現像ローラー32は、筐体31の外部で対向する感光体13の外周面にトナー像を現像することができる。
【0054】
そして、制御装置11は、連続的又は周期的にトナー量検出装置302により供給室311又は撹拌室312内の透磁率を検出し、その検出結果から現像剤に含まれるトナーの含有率が規定の閾値を下回るか否かを判定する(ステップS23)。
トナーの含有率が規定の閾値以上であればステップS27に処理を進め、閾値に満たない場合には、制御装置11は、補給部の搬送機構を作動させて規定量のキャリアを含有するトナー(以下、トナー等という)を補給する制御を実行する(ステップS25)。トナー等の補給は、規定時間実行しても良いし、トナー量検出装置302により検出される透磁率が示すトナーの含有率が補給時の目標値となるまで継続しても良い。
【0055】
トナー等の補給の際には、トナー等が現像剤補給口317から補給室316内に供給され、補給スクリュー35により、撹拌室312に向かってトナー等が搬送され、撹拌室312内の現像剤と共に撹拌スクリュー34によって撹拌されながら搬送される。従って、トナー等が補給された現像剤が供給室311に搬送される。
なお、補給室316内では、補給スクリュー35が撹拌室312側にトナーの搬送を行っているので、通常の現像剤の搬送状態では、トナーや現像剤は
図9に示すエリアA1よりも正回転の搬送方向上流側には搬送されず、撹拌室側現像剤排出口318Aからはトナー等や現像剤が排出されない。
【0056】
次いで、制御装置11は、連続的又は周期的に現像剤量検出装置303Aにより供給室311又は撹拌室312内の現像剤量の増加を検出し、現像剤が規定量まで増加したか否かを判定する(ステップS27)。
現像剤が規定量まで増加していない場合には、ステップS35に処理を進め、現像剤が規定量まで増加していた場合には、モーター301を逆回転させる制御を行う(ステップS29)。
【0057】
モーター301の逆回転により、撹拌室312及び補給室316内には、
図9の二点鎖線の矢印G2に示すように、現像剤は通常時とは逆方向の流れが発生する。
合流点R(
図7参照)に生じた撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤や現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物が現像剤と共に矢印G2に沿って搬送されるので、トナー等や現像剤は
図9に示すエリアA2まで後退する。
そして、補給室316内のトナー等や現像剤が所定の高さに達すると、撹拌室側現像剤排出口318Aを通って排出室319A内に流入する。
【0058】
また、モーター301の逆回転により、排出室319A内の現像剤は、逆巻きスクリュー36Aにより、供給スクリュー33の正回転時の搬送方向下流側に向かって矢印G3に沿って搬送される。これにより、供給室311内で増加していた現像剤も排出室319A側に搬送される。
【0059】
モーター301の逆回転の実行時間は、少なくとも、矢印H1,H3,H2,H4を連ねた環状の循環経路(合流点R付近)から撹拌室側現像剤排出口318Aまで現像剤を搬送するまでに要する時間以上に設定されている。これにより、合流点Rに生じた撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤や現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物を撹拌室側現像剤排出口318Aから排出室319Aに搬送することができる。
【0060】
なお、現像装置30Aに傾き等が生じて供給室311又は撹拌室312にて現像剤の偏りによりかさが増した状態となった場合にも、現像剤量検出装置303Aにより供給室311又は撹拌室312内の現像剤量の増加と検出されるので、モーター301の逆回転制御が行われて現像剤の偏りを抑制乃至解消することができる。
【0061】
制御装置11は、モーター301の逆回転の実行開始からの経過時間を計測し、予め定められた実行時間が経過したか否かを判定する(ステップS31)。
そして、実行時間が経過していない場合にはモーター301の逆回転を継続し、経過した場合にはモーター301を再び正回転に切り替える(ステップS33)。
これにより、逆巻きスクリュー36Aが排出室319A内に搬送した現像剤及び撹拌室側現像剤排出口318Aを通じて排出室319A内に搬送されたトナー等及び現像剤が排出スクリュー37Aによって供給室側現像剤排出口319Bから廃棄現像剤貯蔵部に排出される。
【0062】
その後、制御装置11は、画像形成が終了するか判定し(ステップS35)、終了ではない場合には、ステップS21に処理を戻して現像動作を継続し、画像形成の終了の際にはモーター301を停止して(ステップS37)、現像動作を終了する。
【0063】
なお、この現像装置30Aの制御では、現像剤の増加によりモーター301の逆回転を行う制御を例示したが、現像装置30の場合と同様に、定期的に又はモーター301の駆動トルクの上昇時に逆回転を実行する制御を行ってもよい。
【0064】
[第二の実施形態の技術的効果]
以上のように、画像形成装置10Aは、画像形成装置10と同一の技術的効果を具備している。
さらに、現像装置30Aは、供給スクリュー33の正回転の現像剤搬送方向の下流側に逆巻きスクリュー36Aを設け、逆巻きスクリュー36Aの正回転時の現像剤搬送方向の上流側の領域から筐体31の外部に現像剤を排出するための供給室側現像剤排出口319Bを筐体31に設けたので、筐体31内の現像剤の増加に対して、過剰な現像剤を排出することが可能となる。
従って、新規のキャリアを補充して良好な現像を行い、画像形成装置10Aの画質の向上を図ることが可能となる。
現像装置30AのX軸方向に対する傾斜配置等による現像剤がX軸方向の片側で増加した場合にも、過剰な現像剤を排出することが可能である。
【0065】
また、撹拌室側現像剤排出口318Aは、撹拌スクリュー34の正回転時の現像剤搬送方向の上流側の領域である補給室316から逆巻きスクリュー36Aの正回転時の現像剤搬送方向の上流側の領域である排出室319Aに抜ける連絡口からなる構成としたので、現像剤の合流点Rに生じた撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤や現像剤補給口317の周辺で生じたトナーの凝集物を撹拌室側現像剤排出口318Aから排出室319A及び供給室側現像剤排出口319Bを通じて排出することができ、画像形成装置10Aにおける形成画像の画質の向上を図ることが可能となる。
【0066】
なお、撹拌室側現像剤排出口318Aとして、補給室316から排出室319Aに抜ける連絡口からなる構成を例示したが、撹拌室側現像剤排出口318Aも直接的に図示しない廃棄現像剤貯蔵部に接続する構成としても良い。
【0067】
[比較試験1]
上述した構成の現像装置30を備える画像形成装置10を実施例1とし、上述した構成の現像装置30Aを備える画像形成装置10Aを実施例2とする。
また、現像装置30から撹拌室側現像剤排出口318を除いた現像装置を備える画像形成装置を比較例1とし、現像装置30Aから撹拌室側現像剤排出口318Aを除いた現像装置を備える画像形成装置を比較例2とする。
そして、上記実施例1,2と比較例1,2とについて、以下の比較試験1を行った。
即ち、現像剤補給口側が下側となるように各現像装置を3°傾斜させた状態で取り付け、A4サイズでカバレッジ10%の画像形成を複数枚の記録媒体に対して連続的に実行し、内部の各スクリューの駆動トルクの変化を測定した。
その結果、比較例1,2については、現像剤補給口側に片寄った現像剤の圧力によって、画像形成枚数およそ100枚の時点でトルクが1.5倍に上昇し、およそ300枚の時点でトルクが2.5倍となり、駆動源となるモーターの定格を超えて機械故障に至った。
これに対して、実施例1,2では、片寄った現像剤が撹拌室側現像剤排出口318又は撹拌室側現像剤排出口318Aを介して供給室側現像剤排出口319Bから排出されるため、記録媒体300枚の画像形成を行っても、各スクリューの駆動のトルクは上昇しなかった。
このように、本発明の実施例である現像装置30,30Aを備える画像形成装置10,10Aについては、現像装置30,30Aの傾き等を原因とする現像剤の片寄りに対して、現像剤の排出を効果的に行うことができ、モーター301に過剰な負荷を与えることなく、安定的に画像形成を続けることが可能であることが分かった。
【0068】
[比較試験2]
上記実施例1,2と比較例1,2とについて、以下の比較試験2を行った。
トナー補給の頻度を上げるためにやや高いカバレッジ50%でA4サイズの記録媒体1万枚に対して画像形成を行った。そして、上記画像形成後に現像装置の各スクリューを5秒間逆回転させてから、画像形成を再開した。
その結果、比較例1,2については、再開直後の記録媒体にトナー凝集物による汚れが発生し、その後の50枚程度は、かぶりによる画質の低下が観察された。
これに対して、実施例1,2では、各スクリューの逆回転によりトナーの凝集物と澱み現像剤(撹拌が不十分で帯電量が低い現像剤)は共に撹拌室側現像剤排出口318又は撹拌室側現像剤排出口318Aを介して供給室側現像剤排出口319Bから排出されたため、逆回転からの再開直後の記録媒体から逆回転前の記録媒体と同様に良好な画像形成が行われた。
このように、本発明の実施例である現像装置30,30Aを備える画像形成装置10,10Aについては、逆回転時に供給現像剤に混入され易い澱み現像剤やトナー凝集物を撹拌室側現像剤排出口318又は供給室側現像剤排出口319Bから効果的に排出することができ、安定的に高品質で画像形成を行うことが可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0069】
10,10A 画像形成装置
11 制御装置
12 画像形成部
13 感光体
30,30A 現像装置
31 筐体
32 現像ローラー(現像剤担持体)
33 供給スクリュー(供給搬送部材)
34 撹拌スクリュー(撹拌搬送部材)
35 補給スクリュー
36A 逆巻きスクリュー
37A 排出スクリュー
301 モーター(駆動源)
302 トナー量検出装置
303A 現像剤量検出装置
311 供給室
312 撹拌室
313 隔壁
314 第一連通部
315 第二連通部
316 補給室
317 現像剤補給口
318,318A 撹拌室側現像剤排出口
319A 排出室
319B 供給室側現像剤排出口
R 合流点