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特許7467947画像投射システムの制御方法、及び画像投射システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】画像投射システムの制御方法、及び画像投射システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20240409BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240409BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G03B21/00 D
G09G5/00 510B
G09G5/00 530H
G09G5/00 550C
G09G5/00 510V
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020014474
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121087
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】山内 泰介
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047312(JP,A)
【文献】特開2008-287426(JP,A)
【文献】特開2015-060211(JP,A)
【文献】特開2007-142495(JP,A)
【文献】特開2015-119381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
H04N 9/31
G03B 21/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状の投射面を平面に展開した二次元展開図に第1座標を設定し、
第1アスペクト比を有する第1四角形を、前記第1四角形の全ての外形線が前記二次元展開図内に収まるように、前記第1座標を基準位置として、前記二次元展開図内に配置し、
前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触するか否かを判定し、
前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触しないと判定された場合には、前記第1座標を変更し、前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触するように、変更後の第1座標を基準位置として前記第1四角形を前記二次元展開図内に配置して前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを再度判定する一方、前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触すると判定された場合には、画像情報を前記第1四角形に基づいて補正することによって補正画像情報を生成し、
前記補正画像情報に基づく画像を、前記投射面に投射する、ことを含み、
前記二次元展開図は、前記投射面に投射されたパターン画像の歪みを示す、
画像投射システムの制御方法。
【請求項2】
前記第1座標を変更することは、前記第1四角形と前記二次元展開図の外形線との間の第1軸に沿った最小距離及び前記第1軸と交差する第2軸に沿った最小距離を算出し、前記第1軸に沿った最小距離及び前記第2軸に沿った最小距離に基づいて前記第1座標を変更することである、
請求項1に記載の画像投射システムの制御方法。
【請求項3】
前記二次元展開図の中心位置の座標又は前記二次元展開図の重心位置の座標を前記第1座標として決定する、
請求項1又は請求項2に記載の画像投射システムの制御方法。
【請求項4】
前記第1アスペクト比を有し且つ前記二次元展開図に外接する第2四角形を、前記第1座標を基準位置として配置し、前記第2四角形を、前記第1アスペクト比を維持しつつ縮小することによって前記第1四角形を生成する、
請求項1~3のうちの何れか1項に記載の画像投射システムの制御方法。
【請求項5】
前記パターン画像を前記投射面に投射し、前記パターン画像が投射された前記投射面を撮像することによって生成される撮像画像情報に基づいて前記投射面の三次元形状を測定することで前記二次元展開図を生成することを含む、
請求項1~4のうちの何れか1項に記載の画像投射システムの制御方法。
【請求項6】
前記画像投射システムは、第1投射装置と第2投射装置とを含み、
前記投射面は、前記第1投射装置により画像が投射される第1投射面と前記第2投射装置により画像が投射される第2投射面とを連結させて得られる、
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の画像投射システムの制御方法。
【請求項7】
補正画像情報を生成する補正装置と、
前記補正画像情報に基づく画像を、三次元形状の投射面に投射する投射装置と、を含む画像投射システムであって、
前記補正装置は、
前記投射面を平面に展開した二次元展開図に第1座標を設定し、第1アスペクト比を有する第1四角形を、前記第1四角形の全ての外形線が前記二次元展開図内に収まるように、前記第1座標を基準位置として、前記二次元展開図内に配置し、
前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触するか否かを判定し、
前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触しないと判定された場合には、前記第1座標を変更し、前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触するように、変更後の第1座標を基準位置として前記第1四角形を前記二次元展開図内に配置して前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを再度判定する一方、前記第1四角形の外形線上の2以上の点が前記二次元展開図の外形線と接触すると判定された場合には、画像情報を前記第1四角形に基づいて補正することによって補正画像情報を生成し、
前記二次元展開図は、前記投射面に投射されたパターン画像の歪みを示す、
ことを特徴とする画像投射システム。
【請求項8】
前記投射装置が前記投射面に投射した前記パターン画像を撮像することによって撮像画像情報を生成する撮像装置と、
前記撮像画像情報に基づいて、前記投射面の三次元形状を測定する測定装置と、をさらに含む請求項7に記載の画像投射システム。
【請求項9】
前記撮像装置と前記投射装置と前記測定装置とが一体的に構成されている、請求項
記載の画像投射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像投射システムの制御方法、及び画像投射システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
単純な平面ではない投射面、例えば三次元形状の投射面に画像を投射する場合、観察者の視点位置によっては画像が大きく歪んで観察されることがある。このため、三次元形状の投射面に画像を投射する際に、所定の視点位置から歪みのない画像を観察できるように、三次元計測技術を用いた歪み補正技術が種々提案されている。特許文献1では、画像を投射する画像領域を、投射面を平面に展開した二次元展開図から決定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-47312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、三次元形状の投射面に投射される画像に歪みを生じさせず、且つ可能な限り大きい画面サイズで画像を投射するには、画像領域の大きさを二次元展開図Pdからはみ出すことなく、且つできるだけ大きく決定する必要がある。しかし、画像領域の大きさを二次元展開図Pdからはみ出すことなく、且つできるだけ大きくするための具体的な方法について、特許文献1では言及されていない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、可能な限り大きい画面サイズで歪みのない画像を三次元形状の投射面に投射することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の画像投射システムの制御方法は、三次元形状の投射面を平面に展開した二次元展開図に第1座標を設定し、第1アスペクト比を有する第1四角形が前記二次元展開図の外形線と接触するように、前記第1座標を基準位置として、前記第1四角形を前記二次元展開図内に配置し、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを判定し、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触すると判定された場合、画像情報を前記第1四角形に基づいて補正することによって補正画像情報を生成し、前記補正画像情報に基づく画像を、前記投射面に投射する、ことを含む。
【0007】
また、上記課題を解決するために本開示の画像投射システムは、補正画像情報を生成する補正装置と、前記補正画像情報に基づく画像を、投射面に投射する投射装置と、を含む画像投射システムであって、前記補正装置は、三次元形状の投射面を平面に展開した二次元展開図に第1座標を設定し、第1アスペクト比を有する第1四角形が前記二次元展開図の外形線と接触するように、前記第1座標を基準位置として、前記第1四角形を前記二次元展開図内に配置し、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを判定し、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触すると判定された場合、画像情報を前記第1四角形に基づいて補正することによって前記補正画像情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るプロジェクター100の構成例を示すブロック図 である。
図2】投射面Spの三次元形状を測定するためのパターン画像Ipの一例を示す図 である。
図3】歪み補正を行う際のプロジェクター100の動作の流れを示すフローチャー トである。
図4】歪み補正を行う際のプロジェクター100の動作の流れを示すフローチャー トである。
図5】鉛直に配設された投射面Spを上方から見た平面図の一例を示す図である。
図6】撮像部17で撮像される撮像画像Icの一例を示す図である。
図7】補正情報生成部18が生成する二次元展開図Pdの一例を示す図である。
図8】二次元展開図Pdに画像領域Asを設定する制御方法の流れを示すフローチ ャートである。
図9】補正情報生成部18の動作を説明するための図である。
図10】補正情報生成部18の動作を説明するための図である。
図11】補正情報生成部18の動作を説明するための図である。
図12】補正情報生成部18の動作を説明するための図である。
図13】補正情報生成部18の動作を説明するための図である。
図14】二次元展開図Pdに設定される画像領域Asの一例を示す図である。
図15表示画像Isの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に述べる実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
【0010】
1.実施形態
図1は、本開示の画像投射システムの一実施形態であるプロジェクター100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、プロジェクター100は、制御部10と、記憶部11と、入力操作部12と、画像情報入力部13と、画像情報補正部14と、画像投射部15と、測定部16と、補正情報生成部18とを備える。プロジェクター100は、画像情報入力部13に入力される画像情報に基づいて、画像投射部15から投射面Spに画像を投射する。
【0011】
本実施形態のプロジェクター100は、単純な平面ではない投射面Spに画像を投射する場合に生じる画像の歪み、具体的には三次元形状の投射面Spに画像を投射する場合に生じる画像の歪み、を補正することができる。より詳細に説明すると、プロジェクター100は、図2に示すパターン画像Ipを画像投射部15から投射面Spに投射し、測定部16で投射面Spの三次元形状を測定する。そして、プロジェクター100は、この三次元形状の投射面Spに矩形の紙を貼り付けたような形状で画像が投射されるように、画像を補正するための補正情報を生成する。その後、プロジェクター100は、本来表示すべき画像、即ち歪みを補正した状態で表示すべき画像に対して補正情報に基づく補正処理を施し、処理後の画像を投射面Spに投射する。以下では、歪みを補正した状態で表示すべき画像を表示画像と呼ぶ。
【0012】
制御部10は、1つ又は複数のプロセッサーを備えて構成される。制御部10は、記憶部11に記憶されている制御プログラムに従って動作することによりプロジェクター100の動作を統括制御する。
【0013】
記憶部11は、揮発性のメモリーであるRAM(Random Access Memory)と不揮発性のメモリーであるROM(Read Only Memory)とを有する。RAMは、各種データ等の一時記憶に用いられる。ROMは、プロジェクター100の動作を制御するための制御プログラム及び制御データ等を記憶する。本実施形態の記憶部11には、投射面Spの三次元形状を測定するためのパターン画像Ipに対応する画像データが記憶されている。以下では、パターン画像Ipに対応する画像データをパターン画像データDpと呼ぶ。また、記憶部11は、表示画像用の画像データを記憶していてもよい。
【0014】
入力操作部12は、ユーザーがプロジェクター100に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備える。入力操作部12が備える操作キーの一例としては、電源キー、メニューキー、及び方向キーが挙げられる。電源キーは、電源のオンとオフとを切り替えるための操作キーである。メニューキーは、各種設定を行うための設定メニューを表示させる操作キーである。方向キーは、設定メニューの項目を選択するための操作キーである。ユーザーが入力操作部12の各種操作キーを操作すると、入力操作部12は、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部10に出力する。これにより、ユーザーの操作内容が制御部10に伝達される。なお、遠隔操作が可能な不図示のリモコンを入力操作部12として用いる構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、不図示のリモコン信号受信部がこれを受信し、受信した操作信号を制御部10に出力する。
【0015】
画像情報入力部13は、コンピューターや画像再生装置等の不図示の外部の画像供給装置に接続され、画像供給装置から表示画像用の画像情報の供給を受ける。また、画像情報入力部13は、制御部10から、記憶部11に記憶されている画像情報の供給を受けることができる。制御部10から画像情報入力部13に供給される画像情報の具体例としては、パターン画像データDp及び表示画像用の画像データが挙げられる。画像情報入力部13は、制御部10の制御に基づいて、画像供給装置又は制御部10から供給された画像情報に、必要に応じて様々な処理を施し、処理後の画像情報を画像情報補正部14に出力する。画像情報入力部13が画像情報に施す処理の具体例としては、解像度変換処理及び画質調整処理が挙げられる。
【0016】
画像情報補正部14は、制御部10の制御に基づいて、投射面Spの三次元形状等に起因する画像の歪みを補正する。具体的には、画像情報補正部14は、画像情報入力部13から入力される画像情報に対して、制御部10から入力される補正情報に基づく補正処理を施し、処理後の画像情報である補正画像情報を画像投射部15のライトバルブ駆動部24に出力する。
【0017】
画像投射部15は、光源21と、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ22R、22G及び22Bと、投射光学系としての投射レンズ23と、ライトバルブ駆動部24とを備える。画像投射部15は、光源21から射出された光を、液晶ライトバルブ22R、22G、及び22Bで変調して画像光を形成し、この画像光を投射レンズ23から投射して投射面Spに画像を表示する。画像投射部15は本開示における投射装置の一例である。
【0018】
光源21は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電型の光源ランプ、又は発光ダイオードや半導体レーザー等の固体光源を含んで構成される。光源21から射出された光は、不図示のインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、不図示の色分離光学系によって光の3原色である赤色、緑色、及び青色の各色光成分に分離される。赤色の光成分は液晶ライトバルブ22Rに、緑色の光成分は液晶ライトバルブ22Gに、青色の光成分は液晶ライトバルブ22Bに夫々入射する。
【0019】
液晶ライトバルブ22R、22G、及び22Bは、夫々一対の透明基板間に液晶が封入された透過型の液晶パネル等によって構成される。各液晶パネルには、マトリクス状に配列された複数の画素からなる矩形の画像形成領域Aiが形成されており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。
【0020】
ライトバルブ駆動部24は、液晶ライトバルブ22R、22G、及び22B の各々の画像形成領域Aiに画像を形成する。具体的には、ライトバルブ駆動部24は、画像情報補正部14から入力される画像情報に応じた駆動電圧を、画像形成領域Aiの各画素に印加し、各画素を画像情報に応じた光透過率に設定する。光源21から射出された光は、液晶ライトバルブ22R、22G、及び22B の画像形成領域Aiを透過することによって画素毎に変調され、画像情報に応じた画像光が色光毎に形成される。形成された各色の画像光は、不図示の色合成光学系によって画素毎に合成されてカラー画像を表す画像光となり、投射レンズ23によって投射面Spに拡大投射される。この結果、投射面Sp上には、画像情報に基づく画像が表示される。
【0021】
測定部16は、制御部10の制御に従って動作し、投射面Spの三次元形状を測定する。測定部16は、パターン画像Ipを撮像するための撮像部17を有する。撮像部17は、CCD(Charge Coupled Device)センサー、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の撮像素子を備えたカメラである。なお、図1では、撮像素子の図示は省略されている。撮像部17は、画像投射部15から投射面Spに投射されるパターン画像Ipを撮像し、撮像画像を表す撮像画像情報を生成する。撮像部17は、本開示における撮像装置の一例である。
【0022】
測定部16は、撮像部17により生成される撮像画像情報に基づいて、投射面Spの三次元形状を測定する。具体的には、測定部16は、撮像画像情報に基づく画像、即ち撮像部17の撮像画像に含まれるパターン画像Ipから複数の基準点を検出し、各基準点の三次元座標を導出する。測定部16は本開示における測定装置の一例である。測定部16は、導出した各基準点の三次元座標を、測定結果として補正情報生成部18に出力する。
【0023】
補正情報生成部18は、制御部10の制御に従って動作し、測定部16の測定結果に基づいて、投射面Spの三次元形状に応じた画像の歪みを補正するための補正情報を生成する。補正情報生成部18は、生成した補正情報を制御部10に出力する。補正情報生成部18及び画像情報補正部14は、本開示における補正装置の一例である。
【0024】
画像情報入力部13、画像情報補正部14、測定部16及び補正情報生成部18は、1つ又は複数のプロセッサー等によって構成されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用の処理装置によって構成されてもよい。
【0025】
図2は、投射面Spの三次元形状を測定するためのパターン画像Ipの一例を示す図である。パターン画像Ipは画像形成領域Aiに形成される矩形の画像である。図2に示すように、パターン画像Ipは、白色の単位パターンUwと、黒色の単位パターンUkとを、15×11のマトリクス状に配列した画像である。全ての単位パターンUw及び単位パターンUkは合同の矩形であり、パターン画像Ipでは、同色の単位パターンが上下左右に隣接しないように、単位パターンUw及び単位パターンUkは市松模様状に配置されている。
【0026】
測定部16は、撮像部17によって撮像されたパターン画像Ipから、白色の単位パターンUwの頂点、即ち単位パターンUwの角部を基準点C1として検出する。矩形のパターン画像Ip内において、基準点C1は、16×12のマトリクス状に配置される。ここで、パターン画像Ipは、各単位パターンUw及び各単位パターンUkの輪郭線で構成される格子状の画像とみなすことも可能である。この場合、パターン画像Ipは、複数の平行な直線である横線と、これに直交する複数の平行な直線である縦線とを含んで構成され、これらの交点、即ち格子の交点が基準点C1である。上記複数の横線と平行な軸は本開示における第1軸の一例であり、上記複数の縦線と平行な軸は本開示における第2軸の一例である。以下では、第1軸を横軸と呼び、第2軸を縦軸と呼ぶ場合がある。矩形のパターン画像Ip内において、縦軸に沿った格子間隔、即ち基準点C1の縦軸に沿った間隔は等間隔であり、横軸に沿った格子間隔、即ち基準点C1の横軸に沿った間隔も等間隔である。また、格子の角度、即ち縦線と横線がなす角度は直角である。また、単位パターンUw及び単位パターンUkに対応する領域、即ち縦、横、斜めに隣り合う4つの基準点C1を頂点とする矩形の領域をブロックB1と呼ぶ場合がある。
【0027】
次に、プロジェクター100の動作について説明する。
図3及び図4は、歪み補正を行う際のプロジェクター100の動作の流れ、即ち本開示の画像投射システムの制御方法の流れを示すフローチャートである。ユーザーがプロジェクター100の入力操作部12を操作して歪み補正の開始を指示すると、プロジェクター100の制御部10は、図3に示すフローチャートに従って動作する。
【0028】
図3におけるステップS101では、制御部10は、図2に示すパターン画像Ipを画像投射部15に投射させる。具体的には、制御部10は、記憶部11からパターン画像データDpを読み出し、読み出したパターン画像データDpを画像情報入力部13に出力する。また、制御部10は、画像情報補正部14に対して補正処理を行わないように指示をする。この結果、画像形成領域Aiの全域にパターン画像Ipが形成され、パターン画像Ipが投射面Spに投射される。投射面Spが平面ではない場合、パターン画像Ipは、投射面Sp上に歪んで表示される。
【0029】
ステップS102では、制御部10は、測定部16に指示をして、投射面Spに投射されたパターン画像Ipを撮像部17で撮像させる。
【0030】
例えば、図5に示すように、2つの壁面である平面W1及び平面W2が直角に交わり、且つ画像投射部15から見て奥行き方向にへこんだ角部Nを含む範囲に画像が投射されるとする。図5は、鉛直に配設された投射面Spを上方から見た平面図であり、図5に示す例では直角に交わる2つの平面W1及び平面W2が投射面Spとなる。この場合、画像投射部15から投射面Spまでの距離は、角部Nに近い位置ほど長くなる。図6は、撮像部17で撮像された撮像画像Icを示す図である。図6に示すように、画像投射部15から投射面Spに投射されたパターン画像Ipは、角部Nに近い位置ほど大きく拡大されるように歪んで投射され、このように歪んで表示されたパターン画像Ipが撮像画像Icとして撮像部17により撮像される。
【0031】
図3に戻って、ステップS103では、制御部10は、測定部16に指示をして、撮像部17により撮像された撮像画像Icに基づいて、投射面Spの三次元形状を測定部16に測定させる。測定部16は、制御部10からの指示を受けると、撮像画像Icに含まれるパターン画像Ipから複数の基準点C1を検出する。ここで、矩形のパターン画像Ipにおける各基準点C1の座標は既知であり、予め記憶部11に記憶されている。以下では、記憶部11に記憶されている各基準点C1の座標を基準座標と呼ぶ。測定部16は、検出した基準点C1の座標、即ち撮像画像Icにおける基準点C1の座標と、記憶部11に記憶されている基準座標との対応関係に基づいて、三角測量の原理により、投射面Sp上の基準点C1の三次元座標を導出する。測定部16は、例えば、撮像部17における不図示の撮像レンズの主点を原点とする三次元座標を求めることができる。この三次元座標により、投射面Spの三次元形状及び投射面Sp上における画像の歪みが認識可能となる。
【0032】
ステップS104では、制御部10は、補正情報生成部18に指示をして、導出された基準点C1の三次元座標に基づいて、投射面Spの三次元形状に起因する歪みを補正するための補正情報を補正情報生成部18に生成させる。補正情報生成部18は、この指示を受けると、図4に示すフローに従って動作し、補正情報の生成を開始する。
【0033】
図4に示すように、ステップS111では、補正情報生成部18は、測定部16により導出された基準点C1の三次元座標に基づいて、基準点C1が配置された三次元形状の投射面Spを単一の平面上に展開した二次元展開図を生成する。
【0034】
図7は、図5に示すように直角に交わる2つの平面W1及び平面W2が投射面Spである場合に、補正情報生成部18が生成する二次元展開図Pdの一例を示す図である。図7に示すように、二次元展開図Pdは、パターン画像Ipが投射された投射面Sp上における基準点C1の位置関係を示す仮想図面であり、投射面Sp上におけるパターン画像Ipの歪みを示す。図7では、便宜上、縦軸及び横軸に沿って隣り合う基準点C1同士が直線で接続されている。つまり、二次元展開図Pdは、パターン画像Ipの単位パターンUw及び単位パターンUkに対応する複数の矩形のブロックB1を含んで構成され、各ブロックB1の頂点が基準点C1である。そして、二次元展開図Pd上において、各ブロックB1の辺の長さ、即ち隣接する基準点C1間の距離は、投射面Sp上の対応する単位パターンUw及び単位パターンUkの辺の長さと等しい。また、二次元展開図Pd上における各ブロックB1の頂点の角度は、投射面Sp上の対応する単位パターンUw及び単位パターンUkの頂点の角度に等しい。
【0035】
次いで、ステップS112では、補正情報生成部18は、生成した二次元展開図Pd上に、表示画像を形成するための画像領域を設定する。画像領域は、表示画像の本来の形状、即ち画像形成領域Aiと相似の矩形の領域である。画像領域の位置及び大きさは、画像領域が二次元展開図Pdからはみ出すことなく、且つできるだけ画像領域が大きくなるように設定されることが好ましい。本実施形態の特徴は、二次元展開図Pdからはみ出すことなく、且つできるだけ大きくなるように画像領域を設定する制御方法にある。図8は、画像領域を設定する制御方法の流れを示すフローチャートである。図8に示すように、この制御方法は、第1座標設定処理SA110、画像領域設定処理SA120、判定処理SA130、及び第1座標更新処理SA140を含む。以下、図4のステップS111において、図9に示すようにプロジェクター100から見て奥行き方向に湾曲した投射面Spの二次元展開図Pdが生成された場合を例にとって、図8における各処理の処理内容を説明する。なお、図9図13において符号Ibは、画像形成領域Aiに対応する矩形の画像を指す。
【0036】
第1座標設定処理SA110では、補正情報生成部18は、三次元形状の投射面Spを平面に展開した二次元展開図Pdに、画像領域を設定する際の基準位置となる第1座標を設定する。第1座標の具体例としては、二次元展開図Pdの中心位置の座標、又は二次元展開図Pdの重心位置の座標が挙げられる。本実施形態では、第1座標の横軸の座標をX0及び縦軸の座標をY0とした場合、X0及びY0は以下のように設定される。即ちX0=(二次元展開図Pdの水平方向の最大座標値+二次元展開図Pdの水平方向の最小座標値)/2と設定され、Y0=(二次元展開図Pdの垂直方向の最大座標値+二次元展開図Pdの垂直方向の最小座標値)/2と設定される。つまり、本実施形態における第1座標は二次元展開図Pdの中心位置の座標である。第1座標として二次元展開図Pdの中心位置の座標と重心位置の座標の何れが好ましいかは、二次元展開図Pdの全体の形状に依存する。そこで、二次元展開図Pdの全体の形状に応じて中心位置の座標と重心位置の座標の何れを第1座標とするのかを、プロジェクター100のユーザーが指定できるようにしてもよい。
【0037】
画像領域設定処理SA120では、補正情報生成部18は、ユーザーにより指定されたアスペクト比を有する第1四角形が二次元展開図Pdの外形線と接触するように、第1座標を基準位置として当該第1四角形を二次元展開図Pd内に配置する。本実施形態では、画像領域設定処理SA120により二次元展開図Pd内に配置される第1四角形が画像領域の候補となる。ユーザーによるアスペクト比の指定態様としては種々の態様が考えられる。ユーザーは、画像情報入力部13に入力される画像情報の表す画像のアスペクト比と同じアスペクト比を指定してもよいし、画像情報入力部13に入力される画像情報の表す画像のアスペクト比とは異なるアスペクト比を指定してもよい。ユーザーにより指定されるアスペクト比は本開示における第1アスペクト比の一例である。
【0038】
より詳細に説明すると、画像領域設定処理SA120において補正情報生成部18は、まず、図10に示すように、ユーザーにより指定されたアスペクト比を有し且つ二次元展開図Pdに外接する第2四角形R02を、第1座標を基準位置として配置する。具体的には、補正情報生成部18は、第2四角形R02の中心位置が第1座標となるように第2四角形R02を配置する。次いで、補正情報生成部18は、図11に示すように、ユーザーにより指定されたアスペクト比を維持しつつ、全ての外形線が二次元展開図Pd内に収まるまで第2四角形R02を縮小することによって第1四角形R01を生成する。また、補正情報生成部18は、第1四角形R01の左右上下の各辺と二次元展開図Pdの外形線との間の最小距離を算出する。図11に示す例では、左側水平最小距離、右側水平最小距離、上側垂直最小距離、及び下側垂直最小距離は、夫々、HLm、HRm、0、及びVDmである。
【0039】
判定処理SA130では、補正情報生成部18は、画像領域設定処理SA120にて二次元展開図内に配置した第1四角形が当該二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを判定する。判定処理SA130の判定結果が“Yes”である場合、即ち第1四角形が二次元展開図の外形線と2点以上で接触すると判定された場合、補正情報生成部18は、その時点の第1四角形を画像領域として本制御方法を終了する。これに対して、判定処理SA130の判定結果が“No”である場合、即ち第1四角形が二次元展開図の外形線と2点以上で接触すると判定されなかった場合には、補正情報生成部18は、第1座標を変更する第1座標更新処理SA140を実行した後に、再度、画像領域設定処理SA120の処理を実行する。つまり、第1四角形が二次元展開図の外形線と2点以上で接触しないと判定された場合、補正情報生成部18は、第1座標を変更し、第1四角形が二次元展開図の外形線と接触するように、変更後の第1座標を基準位置として第1四角形を二次元展開図内に配置する。そして、補正情報生成部18は、再配置した第1四角形が二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを判定する。
【0040】
図11に示す例では、第1四角形R01は丸印で囲まれた一点のみで二次元展開図Pdと接触している。このため、図11に示す第1四角形R01については、判定処理SA130の判定結果は“No”となり、第1座標更新処理SA140が実行される。第1座標更新処理SA140では、補正情報生成部18は、第1四角形と二次元展開図Pdの外形線との間の横軸に沿った最小距離及び縦軸に沿った最小距離を算出し、横軸に沿った最小距離及び縦軸に沿った最小距離に基づいて第1座標を変更する。例えば、第1座標更新処理SA140の実行前の第1座標が(X0、Y0)であったとすると、第1座標更新処理SA140では、補正情報生成部18は、第1座標を(X0+ΔX、Y0+ΔY)に更新する。なお、ΔX=(右側水平最小距離-左側水平最小距離)/2であり、ΔY=(上側垂直最小距離-下側垂直最小距離)/2である。このように第1座標が更新された後、再度、画像領域設定処理SA120が実行されるので、図12に示すように、更新後の第1座標を基準位置として第2四角形R02が配置され、アスペクト比を維持しつつ第2四角形R02を縮小することによって第1四角形が再度生成される。そして、再度生成された第1四角形について判定処理SA130が実行される。本実施形態では、図13にて丸印で示すように、第1四角形R01が二次元展開図Pdの外形線と2点以上で接触するまで、画像領域設定処理SA120、判定処理SA130、及び第1座標更新処理SA140が繰り返し実行される。
【0041】
図14は、二次元展開図Pd上に設定した画像領域Asを示す図である。図14に示すように、画像領域Asは、表示画像の本来の形状、即ち画像形成領域Aiと相似の矩形の領域であり、その位置及び大きさは、二次元展開図Pdからはみ出すことなく、且つできるだけ大きくなるように決定される。図14では、便宜上、パターン画像Ipに対応する格子模様が画像領域Asに描画されており、格子によって区切られた矩形のブロックB2は、矩形のパターン画像IpのブロックB1に対応する。また、画像領域Asにおける縦軸及び横軸の各軸に沿った格子間隔はパターン画像Ipと同様に夫々等間隔であり、格子の角度は直角である。また、画像領域Asにおける格子の交点は、パターン画像Ipにおける基準点C1に対応する基準点C2であり、これ以降、基準点C1を第1基準点C1と呼び、基準点C2を第2基準点C2と呼ぶ場合がある。このように、補正情報生成部18は、二次元展開図Pd上に設定した画像領域Asに、複数の第2基準点C2をマトリクス状に配置する。
【0042】
図4に戻って、ステップS113では、補正情報生成部18は、二次元展開図Pd上の第2基準点C2の座標を、画像形成領域Aiに対応する矩形の画像Ib上の座標に変換する座標変換処理を行う。以下では、画像形成領域Aiに対応する矩形の画像Ibを基本画像Ibとも呼ぶ。より詳細に説明すると、補正情報生成部18は、矩形のパターン画像Ip上の第1基準点C1の座標と二次元展開図Pd上の第1基準点C1の座標との対応関係に基づいて、第2基準点C2が配置された二次元展開図Pdを基本画像Ibの形状、即ち矩形に変形した場合の第2基準点C2の座標を導出する。第2基準点C2を含む画像領域Asは、上記の座標変換処理により、基本画像Ib上に歪んで配置される。ここで、基本画像Ib上の第2基準点C2は、二次元展開図Pd上に配置された第2基準点C2を投射面Sp上に配置し直して、画像投射部15の位置から観察した場合の画像に相当する。
【0043】
次いで、ステップS114では、補正情報生成部18は、基本画像Ib上に配置された第2基準点C2の座標に基づいて、歪みを補正するための補正情報を生成する。この補正情報は、例えば、複数のブロックB1に分割された表示画像の各ブロックB1に対して、夫々の4つの頂点、即ち4つの第1基準点C1の座標と、基本画像Ibにおける画像領域As内の対応するブロックB2の4つの頂点、即ち第2基準点C2の座標とに基づいて表示画像の変形を行うための変換テーブルである。この変形の具体例としては、射影変換が挙げられる。補正情報生成部18は、生成した補正情報を制御部10に出力する。その後、制御部10は、図3に示すフローに処理を戻す。
【0044】
図3に戻って、ステップS105では、制御部10は、入力された補正情報を画像情報補正部14に出力し、この補正情報に基づいて表示画像を補正する補正処理を画像情報補正部14に開始させる。以降、画像情報補正部14は、画像情報入力部13から逐次入力される表示画像用の画像情報に対して、補正情報に応じた補正処理を行う。具体的には、画像情報補正部14は、基本画像Ibの画像領域As内に表示画像を形成するとともに、画像領域Asの外側の領域を黒色に設定する処理を行う。この結果、補正された画像情報に基づく画像が画像投射部15から投射され、投射面Spには、歪みが補正された状態で表示画像が表示される。プロジェクター100から投射される画像の全体は歪んでいるが、画像領域Asの外側の領域が黒色に設定されているため、画像領域As内に形成された表示画像のみが観察者に視認される。画像領域Asは、二次元展開図Pd上では歪みのない矩形の領域であるため、実際の投射面Sp上では、矩形の紙を投射面Spに沿って貼り付けたような形状で表示される。
【0045】
図15は、表示画像Isの一例を示す図である。図15に示すように、表示画像Isは、矩形の画像であり、平行で等間隔に配置された複数の縦線Lvと、同じく平行で等間隔に配置された複数の横線Lhとが直交する格子パターンを含んでいる。表示画像Isは、図2のパターン画像Ipに対応しており、マトリクス状に配置された複数の矩形のブロックB1を含む。全てのブロックB1は合同であるため、例えば左上の角のブロックB1等の基準となる1つのブロックB1の辺の長さに対する各ブロックB1の辺の長さの比を間隔比とすると、全てのブロックB1の間隔比は、横方向も縦方向も1である。また、全てのブロックB1の頂点の角度、即ち格子の角度は、全て直角である。
【0046】
この表示画像Isを表す画像情報が画像情報入力部13に入力されると、画像情報補正部14にて、上述した補正処理が為され、画像投射部15から歪みが補正された状態で投射面Spに表示画像Isが投射される。投射面Sp上において、格子の間隔は、横方向、縦方向とも等間隔であり、格子の角度、即ち横線Lhと縦線Lvのなす角度は直角である。つまり、上述の補正処理により、ブロックB1の間隔比は、投射面Sp上でも1のまま維持され、ブロックB1の頂点の角度は、投射面Sp上でも直角のまま維持される。
【0047】
一般に、三次元形状の投射面Spに投射された画像は、観察者の位置に応じて歪んで観察される。しかし、投射面Sp上において、表示画像を構成する各ブロックB1の間隔比や角度が維持されていれば、観察者には、投射面Spに沿って印刷物が貼り付けられているように観察され、不自然な印象が軽減される。なお、間隔比と角度のうち、何れか一方のみを維持する構成とすることも可能である。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター100によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプロジェクター100によれば、画像情報補正部14は、等間隔で平行に配置された複数の縦線と、等間隔で平行に配置された複数の横線とが直交する格子パターンを表す画像情報が入力された場合に、格子の間隔比と角度が三次元形状の投射面Sp上において維持されるように、即ち格子が等間隔で角度が直角となるように画像情報を補正する。このため、観察者の位置に拘らず、観察者に不自然な印象を与えることを抑制できる。
【0049】
(2)本実施形態のプロジェクター100によれば、補正情報生成部18は、二次元展開図Pd内に本来の形状、即ち矩形の画像領域Asを設定し、二次元展開図Pd上の第1基準点C1の座標に基づいて、画像領域As内の第2基準点C2の座標を変換し、座標変換後の第2基準点C2の座標に基づいて補正情報を生成する。これにより、プロジェクター100は、二次元展開図Pd上で本来の形状となるように画像を補正することが可能となるため、三次元形状の投射面Sp上においても、観察者の位置に拘らず、観察者に不自然な印象を与えることを抑制できる。
【0050】
(3)本実施形態のプロジェクター100によれば、補正情報生成部18は、表示画像を形成するための画像領域を、二次元展開図Pdからはみ出すことなく、且つできるだけ大きくなるように設定する。これにより、可能な限り大きい画面サイズで歪みのない画像を三次元形状の投射面に投射することが可能になる。
【0051】
(4)本実施形態のプロジェクター100によれば、測定部16は、画像投射部15が投射したパターン画像Ipを撮像部17で撮像することによって投射面Spの三次元形状を測定するため、三次元形状を測定するための専用の装置を具備する必要がない。
【0052】
(5)本実施形態のプロジェクター100によれば、画像投射部15と測定部16とが一体的に構成されているため、画像投射部15と測定部16の配置の調整を都度行う必要がない。
【0053】
2.変形例
また、上記実施形態は、以下のように変更されてもよい。
上記実施形態では、測定部16は、画像投射部15から投射されたパターン画像Ipを撮像部17で撮像することにより、投射面Spの三次元形状を測定するが、この態様に限定されない。例えば、測定部16の代わりに、投射面Spの三次元形状を測定可能な三次元測定装置を備えた構成としてもよい。三次元測定装置としては、構造化光を投射する方式や、TOF(Time Of Flight)方式等を採用することができる。また、構造化光を投射する方式については、上記実施形態のように、画像投射部15から構造化光を投射する態様であってもよいし、三次元測定装置に備わる投射装置から構造化光を投射する態様であってもよい。
【0054】
ここで、画像投射部15以外の投射装置から構造化光を投射する態様では、不可視光(例えば、赤外光)の構造化光を投射する構成とすることもできる。この場合、投射される構造化光は観察者に観察されないため、表示画像の投射中に三次元形状の測定を行って補正情報を更新することも可能となる。また、TOF方式によって三次元形状を測定する態様では、上記と同様、表示画像の投射中に三次元形状の測定を行って補正情報を更新することが可能であるうえ、不可視光を投射する投射装置を備える必要がない。
【0055】
また、上述した三次元測定装置を備えた構成では、測定された投射面Spの三次元形状と、画像投射部15と三次元測定装置との配置関係とに基づいて、画像投射部15からパターン画像Ipを投射した場合の基準点C1の三次元座標を算出することが可能であるため、実際にパターン画像Ipを投射する必要はない。同様に、上記実施形態のように、画像投射部15と撮像部17とを備えた構成においても、例えば、画像投射部15から構造化光を投射し、これを撮像部17で撮像することによって投射面Sp の三次元形状を認識すれば、画像投射部15と撮像部17との配置関係に基づいて、画像投射部15からパターン画像Ipを投射した場合の基準点C1の三次元座標を算出することができる。このため、この構成の場合にも、実際にパターン画像Ipを投射する必要はない。
【0056】
上記実施形態では、へんこんだ角部Nを有する投射面Spに画像を投射する態様、及びプロジェクター100から見て奥行き方向に湾曲した投射面Spに画像を投射する態様について説明した。しかし、投射面Spの三次元形状は、切り開くことなく平面に展開することが可能な形状であれば上記に限定されない。例えば、突き出した角部を有する投射面Spであってもよいし、円柱状に湾曲した投射面Spや、波状に歪んだ投射面Sp等であってもよい。上記実施形態において、投射面Spが角部Nを有する場合や、湾曲した湾曲部を有する場合には、角部Nや湾曲部において、格子間隔や格子の角度に誤差が生じ、基準点の不一致が生じ得る。この場合には、上述したように、適宜補正を行うようにしてもよいし、パターン画像Ipにおける基準点C1の間隔を小さくすることで、誤差を低減することも可能である。
【0057】
上記実施形態では、画像投射部15が、複数の矩形の単位パターンUw及び単位パターンUkがマトリクス状に配列されたパターン画像Ipを投射し、測定部16は、矩形の単位パターンUwの頂点、即ち格子の交点を基準点C1として検出するが、基準点C1は、単位パターンUwの頂点に限定されない。例えば、画像投射部15が、輝度分布を有する複数の単位パターンが配列されたパターン画像を投射し、測定部16は、各単位パターンの最大輝度位置又は最小輝度位置を基準点C1として検出してもよい。また、パターン画像内に配列された複数の図形の重心位置を基準点C1として検出してもよい。
【0058】
上記実施形態では、画像投射部15及び測定部16等の各構成要素を一体的に備えたプロジェクター100について説明したが、各構成要素の一部又は全部が分離された構成であってもよい。ただし、画像投射部15と測定部16が分離されている場合には、設置の度に夫々の配置状態が変化するため、その都度キャリブレーションを行う必要がある。キャリブレーションとは、矩形のパターン画像Ip上の座標と撮像画像Ic上の座標とを対応付ける処理のことを言う。
【0059】
上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ22R、22G、及び22B を用いたが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源21から射出された光を変調するデジタルミラーデバイス等を用いることもできる。また、色光別に複数の光変調装置を備える構成に限定されず、1つの光変調装置で複数の色光を時分割で変調する構成としてもよい。
【0060】
上記実施形態では、第1アスペクト比を有し且つ二次元展開図Pdに外接する第2四角形を、第1座標を基準位置として配置し、第1アスペクト比を維持しつつ当該第2四角形を縮小することによって第1四角形を生成した。しかし、第1アスペクト比を有し且つ二次元展開図Pd内に包含される十分に小さい第2四角形を、第1座標を基準位置として配置し、第1アスペクト比を維持しつつ当該第2四角形を拡大することによって第1四角形を生成してもよい。ただし、後者の態様の場合、第2四角形を適切な大きさに設定することが難しく、第2四角形を小さくしすぎると、第1四角形が得られるまで第2四角形を徐々に拡大する処理に要する処理負荷が高くなるので、上記実施形態の態様が好ましい。
【0061】
上記実施形態におけるプロジェクター100は、画像投射部15、即ち投射装置を1つだけ有していたが、第1投射装置と第2投射装置とを含んでいてもよい。この場合、投射面は、第1投射装置により画像が投射される第1投射面と第2投射装置により画像が投射される第2投射面とを連結させて得られる。
【0062】
3.実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様
本開示は、上述した実施形態及び変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実現することができる。例えば、本開示は、以下の態様によっても実現可能である。以下に記載した各態様中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、或いは本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0063】
本開示の画像投射システムの制御方法の一態様は、以下の第1座標設定処理と画像領域設定処理と判定処理とを含む。第1座標設定処理では、三次元形状の投射面を平面に展開した二次元展開図に第1座標が設定される。画像領域設定処理では、第1アスペクト比を有する第1四角形が前記二次元展開図の外形線と接触するように、前記第1座標を基準位置として、前記第1四角形が前記二次元展開図内に画像領域として設定される。判定処理では、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かが判定される。そして、本開示の画像投射システムの制御方法では、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触すると判定された場合、画像情報を前記第1四角形に基づいて補正することによって補正画像情報が生成され、前記補正画像情報に基づく画像が前記投射面に投射される。本態様によれば、表示画像を形成するための画像領域が二次元展開図からはみ出すことなく、且つできるだけ大きくなるように設定される。これにより、可能な限り大きい画面サイズで歪みのない画像を三次元形状の投射面に投射することが可能になる。
【0064】
上記制御方法の一態様において、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触しないと判定された場合には、前記第1座標を変更する第1座標更新処理を実行し、画像領域設定処理と判定処理を再度実行するようにしてもよい。第1座標更新処理の具体的な態様としては、前記第1四角形と前記二次元展開図の外形線との間の第1軸に沿った最小距離及び前記第1軸と交差する第2軸に沿った最小距離を算出し、前記第1軸に沿った最小距離及び前記第2軸に沿った最小距離に基づいて前記第1座標を変更する態様が挙げられる。
【0065】
上記制御方法の一態様において、前記二次元展開図の中心位置の座標又は前記二次元展開図の重心位置の座標を前記第1座標として決定してもよい。本態様によれば、二次元展開図の中心位置又は重心位置を基準として、表示画像を形成するための画像領域を二次元展開図からはみ出すことなく、且つできるだけ大きくなるように設定することが可能になる。
【0066】
上記制御方法の一態様において、画像領域設定処理では、前記第1アスペクト比を有し且つ前記二次元展開図に外接する第2四角形を、前記第1座標を基準位置として配置し、前記第2四角形を、前記第1アスペクト比を維持しつつ縮小することによって前記第1四角形を生成してもよい。本体用によれば、十分に小さい第2四角形を設定し、当該第2四角形を拡大して第1四角形を生成する態様に比較して処理負荷を軽くすることができる。
【0067】
上記制御方法の一態様において、パターン画像を前記投射面に投射し、前記パターン画像が投射された前記投射面を撮像することによって生成される撮像画像情報に基づいて前記投射面の三次元形状を測定してもよい。
【0068】
上記制御方法の一態様において前記画像投射システムは、第1投射装置と第2投射装置とを含み、前記投射面は、前記第1投射装置により画像が投射される第1投射面と前記第2投射装置により画像が投射される第2投射面とを連結させて得られてもよい。本態様によれば、第1投射装置と第2投射装置とを含む画像投射システムにおいて、可能な限り大きい画面サイズで歪みのない画像を三次元形状の投射面に投射することが可能になる。
【0069】
本開示の画像投射システムの一態様は、以下の補正装置と投射装置とを含む。補正装置は、三次元形状の投射面を平面に展開した二次元展開図に第1座標を設定する。また、補正装置は、第1アスペクト比を有する第1四角形が前記二次元展開図の外形線と接触するように、前記第1座標を基準位置として、前記第1四角形を前記二次元展開図内に配置し、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触するか否かを判定する。そして、補正装置は、前記第1四角形が前記二次元展開図の外形線と2点以上で接触すると判定された場合、画像情報を前記第1四角形に基づいて補正することによって補正画像情報を生成する。投射装置は、前記補正画像情報に基づく画像を前記投射面に投射する。本態様によっても、可能な限り大きい画面サイズで歪みのない画像を三次元形状の投射面に投射することが可能になる。
【0070】
本開示の画像投射システムの一態様は、以下の撮像装置と測定装置とを含んでもよい。撮像装置は、前記投射装置が前記投射面に投射したパターン画像を撮像することによって撮像画像情報を生成する。測定装置は、前記撮像画像情報に基づいて、前記投射面の三次元形状を測定する。また、前記撮像装置と前記投射装置と前記測定装置とが一体的に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…制御部、11…記憶部、12…入力操作部、13…画像情報入力部、14…画像情報補正部、15…画像投射部、16…測定部、17…撮像部、18…補正情報生成部、21…光源、22R,22 G,22B…液晶ライトバルブ、23…投射レンズ、24…ライトバルブ駆動部、100…プロジェクター、Ai…画像形成領域、As…画像領域、B1,B2…ブロック、C1… 基準点、C2… 基準点、Dp…パターン画像データ、Ib…基本画像、Ic…撮像画像、Ip…パターン画像、Is…表示画像、Lh…横線、Lv…縦線、N…角部、Pd…二次元展開図、Sp…投射面、Uw,Uk…単位パターン、W1,W2 …平面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15