(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】繊維構造体製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 1/736 20120101AFI20240409BHJP
B27N 3/04 20060101ALI20240409BHJP
B02C 23/18 20060101ALI20240409BHJP
B02C 18/16 20060101ALI20240409BHJP
B02C 18/10 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
D04H1/736
B27N3/04 A
B02C23/18
B02C18/16 Z
B02C18/10
(21)【出願番号】P 2020019426
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】深沢 真直
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-221091(JP,A)
【文献】実開昭63-058649(JP,U)
【文献】特開2011-235995(JP,A)
【文献】米国特許第05556039(US,A)
【文献】国際公開第2018/043047(WO,A1)
【文献】特開2016-163944(JP,A)
【文献】特開2016-160561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 18/00-38
B02C 23/18-40
B27N 3/04
D04H 1/00-76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料を粗砕して粗砕片を生成する粗砕装置と、
前記粗砕片を解繊して解繊物を生成する解繊部と、
前記解繊物をベルト上に堆積させて堆積物を形成させる堆積部と、
前記堆積物に加圧及び加熱を行うことでシートを形成する成形部と、
前記シートを切断する切断部と、を備えた繊維構造体製造装置であって、
前記切断部は、前記シートが搬送される搬送方向に沿って前記シートの縁部を切断する回転刃を有し、切断された前記縁部が前記材料となり、
前記粗砕装置は、
前記材料を粗砕する粗砕部と、
前記回転刃によって切断されて落下する前記材料を前記粗砕部に案内
し、傾斜面からなる案内面を有する案内部と、
前記案内面に向かって気体を噴出する噴出口を有する気体噴出部と、を備え
、
前記案内部は、前記切断部に対して前記搬送方向の下流側であり、前記粗砕部の鉛直上方である位置に設けられ、
前記気体噴出部は、前記案内部の上部であり、かつ前記搬送方向下流側となる位置に設置され、
前記気体噴出部に設けられ斜め下方に傾斜した壁部に、前記噴出口が設けられることで、前記噴出口から前記気体が斜め下方に向かって噴出されることを特徴とする繊維構造体製造装置。
【請求項2】
前記案内面は、前記粗砕部の鉛直上方で、かつ、前記粗砕部を介して対向する第1案内
面および第2案内面を有し、
前記第1案内面および前記第2案内面は、鉛直下方に行くに従って離間距離が小さくな
るように傾斜している
請求項1に記載の繊維構造体製造装置。
【請求項3】
前記噴出口は、前記気体を間欠的に噴出する
請求項1に記載の繊維構造体製造装置。
【請求項4】
前記気体噴出部は、前記材料の帯電量を減少させる除電部を有する
請求項1に記載の繊維構造体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗砕装置、解繊装置および繊維構造体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、水を極力利用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。このシート製造装置は、例えば、繊維を含む材料を粗砕する粗砕部と、粗砕部で生成された粗砕片を改選する解繊部と、解繊部で生成された解繊物を解析させる堆積部と、堆積部によって堆積された堆積物を成形する成形部と、を備えるものが知られている。
【0003】
これらのうち、粗砕部としては、例えば、特許文献1に記載されているようなシュレッダが挙げられる。特許文献1のシュレッダは、シート状物が搬入されるガイドシュートと、搬入されたシート状物を裁断する回転刃を有する裁断機構と、裁断片を収容する屑入れと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、シート状物の帯電量等の諸条件によっては、ガイドシュートに搬入されたシート状物がガイドシュートに張り付いてしまうおそれがある。シート状物がガイドシュートに張り付いてしまうと、何枚かのシート状物がまとまって裁断機構に供給されることがある。その程度によっては、裁断機構で紙詰まりが生じることや、シュレーダーの裁断用モーターに高い負荷が加わるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粗砕装置は、繊維を含む材料を粗砕する粗砕部と、
落下中の前記材料を前記粗砕部に案内する案内面を有する案内部と、
前記案内面に向かって気体を噴出する噴出口を有する気体噴出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の解繊装置は、本発明の粗砕装置と、
前記粗砕装置で粗砕された粗砕片を解繊する解繊部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の繊維構造体製造装置は、本発明の解繊装置と、
前記解繊装置により生成された解繊物を堆積する堆積部と、
前記堆積部で生成された堆積物を成形する成形部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る粗砕装置を備える繊維構造体製造装置を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、鉛直上方から見た図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、
図2中矢印A方向から見た図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る粗砕装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の粗砕装置、解繊装置および繊維構造体製造装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る粗砕装置を備える繊維構造体製造装置を示す概略側面図である。
図2は、
図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、鉛直上方から見た図である。
図3は、
図1に示す繊維構造体製造装置の各部の位置関係を説明するための模式図であって、
図2中矢印A方向から見た図である。
図4は、
図1に示す粗砕装置の斜視図である。
図5は、
図4中矢印B方向から見た図である。
図6は、
図1に示す粗砕装置の概略構成図である。
【0012】
なお、以下では、説明の便宜上、
図2~
図5に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むx-y平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、
図1、
図3、
図4および
図5の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0013】
なお、
図1は、概略構成図であり、繊維構造体製造装置100の各部の位置関係は、図示の位置関係とは大きく異なる。また、各図において、原料M1、粗砕片M2、解繊物M3、第1選別物M4-1、第2選別物M4-2、第1ウェブM5、細分体M6、混合物M7、第2ウェブM8、シートSおよびシートS1が搬送される方向、すなわち、矢印で示す方向を搬送方向とも言う。また、矢印の先端側を搬送方向上流側、矢印の基端側を搬送方向下流側とも言う。
【0014】
図1に示すように、繊維構造体製造装置100は、原料M1および後述するシートS1を粗砕、解繊し、結合素材を混合して堆積させ、この堆積物を成形部20によって成形することで成形体を得る装置である。
【0015】
また、繊維構造体製造装置100により製造される成形体は、例えば、再生紙のようなシート状をなしていてもよく、ブロック状をなしていてもよい。また、成形体の密度も特に限定されず、シートのような繊維の密度が比較的高い成形体であってもよく、スポンジ体のような繊維の密度が比較的低い成形体であってもよく、これらの特性が混在する成形体であってもよい。
【0016】
以下では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙とし、製造される成形体は、再生紙であるシートSとして説明する。
【0017】
図1に示す繊維構造体製造装置100は、原料供給部11と、本発明の粗砕装置12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、堆積部である第2ウェブ形成部19と、成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、これらの作動を制御する制御部28と、を備えている。また、粗砕装置12と、解繊部13とにより、本発明の解繊装置10が構成される。
【0018】
また、繊維構造体製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236と、を備えている。その他、繊維構造体製造装置100は、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263と、を備えている。
【0019】
また、繊維構造体製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、ほぐし工程と、第2ウェブ形成工程と、シート形成工程と、切断工程と、がこの順に実行される。
【0020】
以下、各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕装置12に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、セルロース繊維を含む繊維含有物からなるシート状材料である。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。また、本実施形態では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙である。
【0021】
粗砕装置12は、原料供給部11から供給された原料M1および後述する切断部21で切断された切断くずを、大気中等の気中で粗砕して粗砕片M2を生成する粗砕工程を行なう部分である。粗砕装置12の構成については、後に詳述する。粗砕装置12によって生成された粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0022】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0023】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転する回転刃と、回転刃の外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、回転刃とライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0024】
また、解繊部13は、回転刃の回転により、粗砕装置12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0025】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0026】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上、30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0027】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0028】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
【0029】
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0030】
また、ドラム部141から落下した第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0031】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0032】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0033】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0034】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0035】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0036】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0037】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0038】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0039】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0040】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0041】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と樹脂P1とを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、樹脂供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0042】
管172は、細分部16のハウジング部162と、分散部18のハウジング部182とを接続しており、細分体M6と樹脂P1との混合物M7が通過する流路である。
【0043】
管172の途中には、樹脂供給部171が接続されている。樹脂供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、樹脂P1を粉体または粒子として管172に供給することができる。管172に供給された樹脂P1は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0044】
なお、樹脂P1は、後の工程で繊維同士を結着させる結合素材であり、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-12、ナイロン6-66等のポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
【0045】
なお、樹脂供給部171から供給されるものとしては、樹脂P1の他に、例えば、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集や樹脂P1の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための紙力増強剤等が含まれていてもよい。または、予めそれらを樹脂P1に含ませて複合化したものを樹脂供給部171から供給してもよい。
【0046】
また、管172の途中には、樹脂供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と樹脂P1とが混合される。また、ブロアー173は、分散部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と樹脂P1とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と樹脂P1とが均一に分散した状態で、分散部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0047】
分散部18は、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐすほぐし工程を行なう部分である。分散部18は、ドラム部181と、ドラム部181を収納するハウジング部182とを有する。
【0048】
ドラム部181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部181には、混合物M7が流入してくる。そして、ドラム部181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さい繊維等が、ドラム部181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされることとなる。
【0049】
ハウジング部182は、加湿部234と接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング部182内を加湿することができ、よって、混合物M7がハウジング部182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0050】
また、ドラム部181でほぐされた混合物M7は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0051】
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0052】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0053】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0054】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0055】
分散部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0056】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上、20質量部以下であるのが好ましい。
【0057】
第2ウェブ形成部19の下流側には、成形部20が配置されている。成形部20は、第2ウェブM8からシートSを形成するシート形成工程を行なう部分である。この成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0058】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。なお、このときの加熱の程度としては、例えば、樹脂P1を溶融させない程度であるのが好ましい。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0059】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。さらに、加熱部202は、ウェブM8を下流に搬送する搬送部として機能を有する。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、樹脂P1が溶融して、この溶融した樹脂P1を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0060】
成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1切断部211と、第2切断部212とを有する。
【0061】
第1切断部211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0062】
第2切断部212は、第1切断部211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、
図3に示すように、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。以下、この切断除去された部分をシートS1と言う。
【0063】
図3に示すように、第2切断部212は、シートSの+y軸方向の端部を切断する第1切断ユニット213と、シートSの-y軸方向の端部を切断する第2切断ユニット214とを有している。第1切断ユニット213および第2切断ユニット214は、+y軸側からこの順で離間して配置されている。第1切断ユニット213および第2切断ユニット214は、同様の構成であるため、以下、第1切断ユニット213について代表的に説明する。
【0064】
第1切断ユニット213は、2つの回転刃215を有する。各回転刃215は、シートSの搬送経路を介してz軸に沿って並んで配置されている。また、各回転刃215は、円板状をなし、厚さ方向がy軸方向に沿った向きで配置されている。回転刃215の外縁部は、鋭利な刃先となっており、各回転刃215の間を通過した際にシートSを搬送方向に沿って切断することができる。
【0065】
このような第2切断部212によって、シートS1が形成される。また、後述するように、このシートS1は、粗砕装置12に供給され、粗砕片M2となる。一方、所望の形状、大きさのシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0066】
以上説明した繊維構造体製造装置100が備える各部は、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0067】
制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。
【0068】
記憶部282は、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラム等が記憶されている。
【0069】
また、この制御部28は、繊維構造体製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、繊維構造体製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークを、繊維構造体製造装置100を介して接続されている場合等がある。
【0070】
また、CPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281が繊維構造体製造装置100に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部282が繊維構造体製造装置100に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0071】
次に、繊維構造体製造装置100の各部の位置関係について説明する。
図2および
図3に示すように、繊維構造体製造装置100は、前述した各部を収納する筐体50を有する。粗砕装置12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、第2ウェブ形成部19と、成形部20と、切断部21とは、筐体50内に設置されている。また、原料供給部11は、筐体50の外側で、かつ、筐体50の+y軸側に設置されている。また、ストック部22は、筐体50の外側で、かつ、筐体50の-x軸側に設置されている。
【0072】
図2に示すように、粗砕装置12は、筐体50内の+y軸側で、かつ、-x軸側に偏在した位置に設置されている。解繊部13は、粗砕装置12の-y軸側に設置されている。選別部14、第1ウェブ形成部15および細分部16は、解繊部13の+x軸側に設置されている。混合部17は、選別部14、第1ウェブ形成部15および細分部16の+x軸側に設置されている。分散部18および第2ウェブ形成部19は、混合部17の+y軸側に設置されている。成形部20は、分散部18および第2ウェブ形成部19の-x軸側に設置されている。切断部21は、成形部20の-x軸側に設置されている。切断部21を経たシートSは、-x軸側に搬送され、筐体50の外側、すなわち、ストック部22に排出される。
【0073】
また、
図3に示すように、切断部21は、粗砕装置12の+z軸側に設置されている。これにより、切断部21の第2切断部212によって切断されたみみ、すなわち、シートS1は、下方に落下し、粗砕装置12に供給される。これにより、シートS1を再度原料M1とともに粗砕することができ、歩留まりを高めることができる。
【0074】
なお、シートS1は、第2切断部212でシートSに張力が掛かった状態で切断されて形成されるため、厚さ方向に湾曲し撓みを有した形状をなしている。さらに、
図5に示すように、シートS1の端部がそれぞれ第1切断ユニット213、第2切断ユニット214に保持されているため、重力によりさらに厚さ方向に撓みを有した形状をなしている。2本のシートS1は、切断されるとそのまま粗砕部3に向って落下する。
【0075】
次に、粗砕装置12について説明する。
図3~
図6に示すように、粗砕装置12は、原料M1およびシートS1を粗砕する粗砕部3と、原料M1およびシートS1を粗砕部3に案内する案内部4と、気体噴出部5と、を有する。
【0076】
図3および
図4に示すように、粗砕部3は、一対の粗砕刃31と、シュート32と、を有する。一対の粗砕刃31は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1およびシートS1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。一対の粗砕刃31は、x軸方向に延在する円柱状または円筒状をなしている。また、一対の粗砕刃31は、y軸方向に並んで配置されている。
【0077】
粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上、70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0078】
図3に示すように、シュート32は、一対の粗砕刃31の-z軸側に設置されている。シュート32は、漏斗状をなしている。これにより、粗砕片M2を受けることができる。また、シュート32には、管241が接続されている。管241は、シュート32と解繊部13とを接続している。これにより、管241を介して粗砕片M2を解繊部13に搬送することができる。
【0079】
図3~
図5に示すように、案内部4は、粗砕部3の鉛直上方、すなわち、+z軸側に設置されたシュートである。案内部4は、壁部41、壁部42、壁部43および壁部44を有する。また、これら壁部41、壁部42、壁部43および壁部44が互いに接合されることで、+z軸側に開口4Aが形成され、-z軸側に開口4Bが形成されている。
【0080】
開口4Aは、原料M1およびシートS1を導入する導入口である。一方、開口4Bは、原料M1およびシートS1を排出する排出口である。
【0081】
壁部41および壁部42は、y軸方向に対向して配置されている。壁部41は、+y軸側に位置し、壁部42は、-y軸側に位置している。また、壁部43および壁部44は、x軸方向に対向して配置されている。壁部43は、+x軸側に位置し、壁部44は、-x軸側に位置している。
【0082】
また、壁部41~壁部44の内面は、落下中の原料M1およびシートS1を粗砕部3に案内する案内面440である。案内面440は、第1案内面411と、第2案内面421と、第3案内面431と、第4案内面441と、を有する。壁部41の内面が、第1案内面411であり、壁部42の内面が、第2案内面421であり、壁部43の内面が、第3案内面431であり、壁部44の内面が、第4案内面441である。落下してきた原料M1およびシートS1は、第1案内面411~第4案内面441のいずれかと当接し、摺動しつつ開口4Bに案内される。
【0083】
また、壁部41および壁部42は、互いに反対方向に傾斜している。壁部41および壁部42は、-z軸側に行くに従って離間距離が小さくなる向きで傾斜している。換言すれば、第1案内面411および第2案内面421は、鉛直下方、すなわち、-z軸側に行くに従って離間距離が小さくなるように傾斜している。これにより、案内部4に落下してきた原料M1およびシートS1をより効果的に粗砕部3に案内することができる。
【0084】
このように、案内面440は、粗砕部3の鉛直上方で、かつ、粗砕部3を介して対向する第1案内面411および第2案内面421を有する。そして、第1案内面411および第2案内面421は、鉛直下方に行くに従って離間距離が小さくなるように傾斜している。これにより、案内部4に落下してきた原料M1およびシートS1をより効果的に粗砕部3に案内することができる。
【0085】
次に、気体噴出部5について説明する。
図4~
図6に示すように、気体を噴出する噴出口51を有する噴出部本体52と、供給管53と、ブロアー54と、加湿部55と、除電部56と、を有する。
【0086】
噴出部本体52は、内腔部520を有し、外形形状がy軸方向に延在するブロック状の箱体で構成されている。噴出部本体52は、案内部4の+z軸側で、かつ、-x軸側に設置されている。具体的には、噴出部本体52は、壁部44の+z軸側に設置されている。また、噴出部本体52の+x軸側の壁部521、すなわち、案内部4側の壁部521は、y-z平面に対して傾斜している。また、壁部521は、案内部4内を向くように、すなわち、案内面440側を向くように傾斜している。
【0087】
また、壁部521には、噴出口51が設けられている。噴出口51は、壁部521の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成される。すなわち、内腔部520と噴出部本体52の外部とは、噴出口51を介して連通している。前述したように、壁部521が案内面440側を向くように傾斜しているため、噴出口51は、案内面440に向かって気体を噴出する。
【0088】
また、
図4に示すように、噴出口51は、+y軸側に偏在する位置、すなわち、第1案内面411に対応する位置に6個、-y軸側に偏在する位置、すなわち、第2案内面421に対応する位置に6個、合計12個設けられている。第1案内面411側の6個の噴出口51は、3個×2列の行列状をなし、第2案内面421側の6個の噴出口51も、3個×2列の行列状をなしている。
【0089】
また、噴出部本体52には、供給管53を介してブロアー54が接続されている。供給管53は、噴出部本体52の+y軸側に接続されている。ブロアー54の作動により、供給管53を介して気体が噴出部本体52の内腔部520に供給され、各噴出口51から気体が噴出される。また、
図6に示すように、ブロアー54は、制御部28と電気的に接続されており、制御部28によってその作動が制御される。
【0090】
ここで、原料M1およびシートS1は、シート状をなしているため、落下中、その主面が案内面440に張り付くと、その位置に留まってしまうおそれがある。その他、原料M1およびシートS1の帯電量等によっては、案内面440に張り付きやすくなるおそれがある。原料M1またはシートS1が案内面440に張り付くと、何枚かの原料M1またはシートS1がまとまって粗砕部3に供給されることがある。その程度によっては、粗砕部3に原料M1またはシートS1が詰まってしまうことがある。また、詰まらなかったとしても、定量性が損なわれる。
【0091】
これに対し、粗砕装置12は、噴出口51から案内面440に向かって気体を噴出する気体噴出部5を有する。これにより、落下中の原料M1およびシートS1の主面が案内面440に密着して張り付こうとしても、空圧により物理的に離脱させることができる。これにより、原料M1およびシートS1を粗砕部3に効果的に案内することができる。
【0092】
また、原料M1およびシートS1の張り付きを防止または抑制することができるため、定量性に優れる。したがって、本発明の粗砕装置12は、シートSの製造に適しており、品質の高いシートSが得られる。
【0093】
また、原料M1およびシートS1がセルロース繊維を含んでいると、切断部21による切断で帯電しにくく、案内面440に張り付きにくくなる傾向があるため、有利である。
【0094】
また、材料であるシートS1は、搬送されているシートSの縁部が切断された短冊状の切断くずである。前述したように、シートSが切断される際、シートSに張力が掛かった状態で切断されるため、シートS1は、厚さ方向に湾曲し撓みを有した形状をなしている。このような形状であると、シートS1の主面が案内面440に対して、より密着しにくくすることができる。よって、シートS1の案内面440への張り付きをより効果的に防止または抑制することができる。
【0095】
また、原料M1とシートS1とで粗砕装置12を共有する構成であるため、繊維構造体製造装置100の装置構成の簡素化を図ることができる。
【0096】
また、
図5に示すように、噴出口51は、鉛直上方から斜め下方に向かって気体を噴出する。すなわち、噴出口51からの気体の噴出方向は、鉛直上方から鉛直下方に向かうベクトル成分を有する方向である。これにより、原料M1およびシートS1の落下を効果的に促進することができる。よって、原料M1およびシートS1が案内面440に張り付くのをより効果的に防止または抑制することができる。
【0097】
また、
図5に示すように、シートS1は、-x軸方向に搬送されているシートSが切断されて形成されるものであるため、落下しつつも、-x軸方向に向かうベクトル成分を有する方向に移動する。これに対し、噴出口51は、鉛直上方から斜め下方に向かって気体を噴出するものであり、その噴出方向は、+x軸方向に向かうベクトル成分を有する。すなわち、噴出方向と落下方向とは、互いに反対方向、換言すれば、カウンター方向となるベクトル成分をそれぞれ有する。
【0098】
このように、材料であるシートS1は、鉛直方向と交差する方向に移動しつつ粗砕部3に落下するものであり、噴出口51からの気体の噴出方向は、シートS1が鉛直方向と交差する方向に移動する向きと反対方向のベクトル成分を有する方向である。これにより、落下中または案内面440を摺動中のシートS1の姿勢を効果的に変更することができる。よって、案内面440へのシートS1の張り付きを効果的に防止または抑制することができる。
【0099】
また、噴出口51は、気体を間欠的に噴出するのが好ましい。すなわち、制御部28は、ブロアー54への通電のON、OFFを経時的に切り替えるのが好ましい。これにより、気体を連続的に噴出する場合に比べて、低消費電力化を図ることができる。また、案内部4内に空気の淀みが形成されるのを効果的に防止または抑制することができる。よって、案内面440への原料M1およびシートS1の張り付きを効果的に防止または抑制することができる。
【0100】
なお、ブロアー54への通電のON、OFFを経時的に切り替える方法に限定されず、例えば、各流路に絞り弁を設け、開度を調整する方法等により、気体を間欠的に噴出してもよい。
【0101】
また、気体噴出部5が、連続的に気体を噴出する構成であっても、噴出量に強弱をつけたり、噴出する向きを経時的に変更したりすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0102】
また、
図6に示すように、供給管53の途中、すなわち、噴出部本体52とブロアー54との間には、加湿部55が接続されている。これにより、噴出口51が噴出する気体を加湿することができる。
【0103】
噴出口51が噴出する気体の湿度は、50%RH以上、80%RH以下であるのが好ましく、55%RH以上、65%RH以下であるのがより好ましい。これにより、原料M1およびシートS1の水分量を適切に調整することができる。よって、原料M1およびシートS1が案内面440を摺動する際に、静電気が発生して帯電量が過剰に増加してしまうのを効果的に防止することができる。なお、噴出口51が噴出する気体の湿度が低すぎると、加湿したことの効果が薄れてしまう。一方、噴出口51が噴出する気体の湿度が高すぎると、原料M1およびシートS1の環境温度にもよるが、案内面440または原料M1およびシートS1の表面に結露が発生してしまう可能性があり、結露が原因で本発明の効果が薄れてしまうおそれがある。
【0104】
加湿部55としては、気化式、超音波式のいずれの方式であってもよいが、超音波式であるのが好ましい。これにより、加湿部55内の液体に例えば、保湿剤等を溶解させることができる。保湿剤を溶解させておくことにより、噴出口51が噴出した気体が保湿剤とともに噴出される。これにより、原料M1およびシートS1の水分量を十分に保つにすることができる。よって、原料M1およびシートS1が案内面440を摺動する際に、原料M1およびシートS1の帯電量が過剰に増加してしまうのを効果的に防止することができる。
【0105】
保湿剤としては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
【0106】
図6に示すように、供給管53の途中、すなわち、噴出部本体52とブロアー54との間には、除電部56が接続されている。除電部56は、例えば、イオナイザーで構成される。除電部56は、供給管53に、原料M1およびシートS1の静電気を除去するイオンを放出する。これにより、原料M1およびシートS1の帯電量を減少させることができる。よって、静電気の影響によって原料M1およびシートS1が案内面440に張り付くのを効果的に防止または抑制することができる。
【0107】
なお、除電部56としては、上記構成に限定されず、例えば、案内部4をアースに接続する構成であってもよい。
【0108】
このように、気体噴出部5は、材料である原料M1およびシートS1の帯電量を減少させる除電部56を有する。これにより、原料M1およびシートS1の帯電量を減少させることができる。よって、静電気の影響によって原料M1およびシートS1が案内面440に張り付くのを効果的に防止または抑制することができる。
【0109】
また、案内面440には、帯電を抑制するメッキが施されているのが好ましい。このメッキとしては、比較的導電性が高いものであれば特に限定されず、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、金メッキ等が挙げられる。これらの中でも、ニッケルメッキであるのが好ましい。ニッケルメッキの場合、帯電量の増加を抑制するという効果に加え、防錆効果も得られる。このため、噴出口51からの空気の湿度が比較的高い場合であっても、案内部4が錆びるのを防止または抑制することができる。
【0110】
以上説明したように、粗砕装置12は、繊維を含む材料である原料M1およびシートS1を粗砕する粗砕部3と、落下中の原料M1およびシートS1を粗砕部3に案内する案内面440を有する案内部4と、案内面440に向かって気体を噴出する噴出口51を有する気体噴出部5と、を備える。このような構成によれば、案内面440に案内されながら落下している原料M1およびシートS1に対して気体を噴出することができる。よって、原料M1およびシートS1の主面が案内面440に密着して張り付こうとしても、空圧により物理的に離脱させて、原料M1およびシートS1の張り付きを効果的に防止または抑制することができる。その結果、原料M1およびシートS1を粗砕部3に円滑に案内することができる。また、張り付きが防止されるため、何枚かの原料M1またはシートS1がまとまって粗砕部3に供給されるのを効果的に防止または抑制することができ、定量性に優れる。したがって、繊維構造体製造装置100に適用した場合、繊維構造体の品質を高めることができる。
【0111】
なお、本実施形態では、気体噴出部5は、壁部44の上方に設けられている構成について説明したが、本発明ではこれに限定されず、壁部41に設けられていてもよく、壁部42に設けられていてもよく、壁部43に設けられていてもよく、これらの2つ以上を組み合わせた形態であってもよい。
【0112】
また、解繊装置10は、粗砕装置12と、粗砕装置12で粗砕された粗砕片M2を解繊する解繊部13と、を備える。前述したように、粗砕装置12から解繊部13に優れた定量性で粗砕片M2が供給されるため、解繊物M3の生成の定量性にも優れる。
【0113】
また、繊維構造体製造装置100は、解繊装置10と、解繊装置10により生成された解繊物M3を堆積する堆積部である第2ウェブ形成部19と、第2ウェブ形成部19で生成された堆積物である第2ウェブM8を成形する成形部20と、を備える。これにより、前述したように、解繊物M3が定量性よく供給されるため、得られる繊維構造体の品質を高めることができる。
【0114】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る粗砕装置を示す模式図である。
【0115】
以下、これらの図を参照して本発明の粗砕装置、解繊装置および繊維構造体製造装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0116】
図7に示すように、案内部4の壁部42には、供給口422が設けられている。供給口422は、壁部42がy軸方向に貫通された貫通孔で構成され、原料供給部11から排出された原料M1を案内部4の内部に導入する導入口である。
【0117】
このような構成によれば、原料M1とシートS1とで、案内部4内に導入される部分を異ならせることができる。よって、原料M1とシートS1との双方をより確実に案内面440に落下させることができる。
【0118】
以上、本発明の粗砕装置、解繊装置および繊維構造体製造装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、粗砕装置、解繊装置および繊維構造体製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0119】
また、本発明の粗砕装置、解繊装置および繊維構造体製造装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や特徴を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0120】
100…繊維構造体製造装置、3…粗砕部、4…案内部、4A…開口、4B…開口、5…気体噴出部、10…解繊装置、11…原料供給部、12…粗砕装置、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、17…混合部、18…分散部、19…第2ウェブ形成部、20…成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、31…粗砕刃、32…シュート、41…壁部、42…壁部、43…壁部、44…壁部、50…筐体、51…噴出口、52…噴出部本体、53…供給管、54…ブロアー、55…加湿部、56…除電部、141…ドラム部、142…ハウジング部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング部、171…樹脂供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、181…ドラム部、182…ハウジング部、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1切断部、212…第2切断部、213…第1切断ユニット、214…第2切断ユニット、215…回転刃、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…CPU、282…記憶部、411…第1案内面、421…第2案内面、422…供給口、431…第3案内面、440…案内面、441…第4案内面、520…内腔部、521…壁部、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、S…シート、S1…シート、P1…樹脂