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特許7467966電界駆動型の機能素子、固体冷媒サイクル、および、アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電界駆動型の機能素子、固体冷媒サイクル、および、アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/857 20230101AFI20240409BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240409BHJP
   F25B 21/00 20060101ALI20240409BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H10N30/857
H10N30/20
F25B21/00 Z
H02N11/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020022628
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129016
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115209(JP,A)
【文献】特開2013-051252(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194700(WO,A1)
【文献】特開2019-201094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/857
H10N 30/20
F25B 21/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、
前記第1分子の運動性を高める第2分子であって、前記電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え
前記第1材料、および/または、前記第2材料は、液晶ポリマーである電界駆動型の機能素子。
【請求項2】
前記第1材料、および/または、前記第2材料は、強誘電体である請求項1に記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項3】
一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、
前記第1分子の運動性を高める第2分子であって、前記電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え
前記第1材料、および、前記第2材料は、強誘電体であり、かつ、液晶ポリマーであり、自発分極によって前記第1双極子、および、前記第2双極子を発現している電界駆動型の機能素子。
【請求項4】
前記第2材料は、液体である請求項1から請求項3のいずれかに記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項5】
一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、
前記第1分子の運動性を高める第2分子であって、前記電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え
前記第2材料は、液体である電界駆動型の機能素子。
【請求項6】
前記第1材料、および/または、前記第2材料は、強誘電体である請求項5に記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項7】
前記第2分子のアスペクト比は、6.0以上である請求項1から請求項6のいずれかに記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項8】
一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、
前記第1分子の運動性を高める第2分子であって、前記電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え
前記第2分子のアスペクト比は、6.0以上である電界駆動型の機能素子。
【請求項9】
前記第1材料、および/または、前記第2材料は、強誘電体である請求項8に記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項10】
さらに、前記電界を変調する電界変調回路(20)を備える請求項1から請求項9のいずれかに記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項11】
前記第2材料は、前記第1材料に対する可塑化成分として添加されている請求項1から請求項10のいずれかに記載の電界駆動型の機能素子。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の電界駆動型の機能素子(10)と、
前記機能素子の電気熱量効果を出力する出力部材とを備える固体冷媒サイクル。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の電界駆動型の機能素子(10)と、
前記機能素子の機械的な変位を出力する出力部材とを備えるアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電界駆動型の機能素子、固体冷媒サイクル、および、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、弾性的なエラストマ応答を利用する素子を開示する。特許文献2は、静電気的に変形する素子を開示する。これらの素子は、電気熱量効果を発揮している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-530728号公報
【文献】国際公開第2018/208680号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する素子は、それ自身がエラストマを含むため、分極密度に制限がある。特許文献2が開示する素子は、それ自身が静電気的に変形可能であるため、分極密度に制限がある。電界駆動型の機能素子において、分極密度は、引き出される機能の大きさに影響する。ひとつの例示的な観点において、電界駆動型機能素子が発揮する機能が、機械的な変位の提供である場合、分極密度は機械的な変位の大きさに影響する。他の例示的な観点において、電界駆動型機能素子が発揮する機能が、電気熱量効果の提供である場合、分極密度は電気熱量効果の大きさに影響する。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、電界駆動型の機能素子、固体冷媒サイクル、および、アクチュエータにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、分極密度が改良された電界駆動型の機能素子、固体冷媒サイクル、および、アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電界駆動型の機能素子は、一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、第1分子の運動性を高める第2分子であって、電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え、第1材料、および/または、第2材料は、液晶ポリマーである。
ここに開示された電界駆動型の機能素子は、一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、第1分子の運動性を高める第2分子であって、電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え、第1材料、および、第2材料は、強誘電体であり、かつ、液晶ポリマーであり、自発分極によって第1双極子、および、第2双極子を発現している。
ここに開示された電界駆動型の機能素子は、一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、第1分子の運動性を高める第2分子であって、電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え、第2材料は、液体である。
ここに開示された電界駆動型の機能素子は、一対の電極(12、13)の間に作用する電界の方向を指向する第1双極子(Df)を提供する第1分子を有する第1材料(15)と、第1分子の運動性を高める第2分子であって、電界の方向を指向する第2双極子(Dr)を提供する第2分子を有する第2材料(16)とを備え、第2分子のアスペクト比は、6.0以上である。
【0007】
開示される電界駆動型の機能素子によると、電界駆動型の機能素子は、第1材料と第2材料とを含む。第2材料は、第1材料に含まれる第1分子の運動性を高めるための第2分子を有する。さらに、第2分子は、電界の方向を指向する第2双極子を提供している。第1材料は、電極の方向を指向する第1双極子を提供する。よって、機能素子における分極密度は、第1双極子と、第2双極子との両方によって提供される。この結果、分極密度が改良された電界駆動型の機能素子が提供される。
【0008】
ここに開示された固体冷媒サイクルは、上記電界駆動型の機能素子(10)と、機能素子の電気熱量効果を出力する出力部材とを備える。
【0009】
ここに開示されたアクチュエータは、上記電界駆動型の機能素子(10)と、機能素子の機械的な変位を出力する出力部材とを備える。
【0010】
この明細書において開示された複数の形態は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の電界駆動型の機能素子を示すブロック図である。
図2】電界駆動型の機能素子を示すブロック図である。
図3】機能材料における双極子を示す断面図である。
図4】機能材料における双極子を示す断面図である。
図5】電界Eと分極Pとを示すグラフである。
図6】第1材料の実施例を列挙する表である。
図7】第2材料の実施例を列挙する表である。
図8】第2材料のサンプルを示す特性表である。
図9】測定装置を示す回路図である。
図10】アスペクト比ARと抗電圧CVとを示すグラフである。
図11】第2実施形態の電界駆動型の機能素子を示すブロック図である。
図12】電界駆動型の機能素子を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
複数の実施形態が、図面を参照しながら説明される。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
第1実施形態
図1および図2において、固体冷媒サイクル1が図示されている。固体冷媒サイクル1は、低温部材2から高温部材3へ熱を移動させる。なお、固体冷媒の語は、蒸気圧縮式の冷媒サイクルにおける冷媒と対比した語である。固体冷媒の語は、後述の機能材料11が固体であることを限定的に意味するものではない。事実、後述の機能材料11は、少なくとも流動可能であって、液体のようにふるまう性状を有している。
【0014】
固体冷媒サイクル1は、対象物の温度を調節する。対象物は、気体、液体、または、固体である。固体冷媒サイクル1が低温を利用するサイクルである場合、固体冷媒サイクル1は、低温部材2によって対象物を冷却する。この場合、固体冷媒サイクル1は、冷房、冷蔵、または、冷凍のためのサイクルを提供する。固体冷媒サイクル1が高温を利用するサイクルである場合、固体冷媒サイクル1は、高温部材3によって対象物を加熱する。この場合、固体冷媒サイクル1は、暖房、温蔵、または、加熱のためのサイクルを提供する。固体冷媒サイクル1が低温と高温との両方を利用するサイクルである場合、固体冷媒サイクル1は、低温部材2によって対象物を冷却し、かつ、高温部材3によって対象物を加熱する。この場合、固体冷媒サイクル1は、例えば、除湿のためのサイクルを提供する。低温部材2は、固体冷媒サイクル1における吸熱部材、または、熱源部材でもある。高温部材3は、固体冷媒サイクル1における放熱部材、または、熱供給部材でもある。この明細書において、冷媒サイクルの語は、低温を利用する冷凍サイクル、および、高温を利用するヒートポンプサイクルの両方を包含する語として解釈されるべきである。
【0015】
固体冷媒サイクル1は、電界駆動型の機能素子10を備える。機能素子10は、提供されるべき機能として、電気熱量効果(ECE:ElecrtroCaloric Effect)を提供する。固体冷媒サイクル1は、機能素子10が発揮する電気熱量効果によって得られる高温だけ、低温だけ、または高温と低温との両方を利用する。機能素子10は、電気熱量効果によって吸熱と放熱との両方の作用を発揮する。機能素子10は、電気熱量効果によって、低温部材2から高温部材3への熱移動を生成する。機能素子10は、電気熱量効果によって、高温部材3の温度が、低温部材2の温度より高くなるように、熱移動を生成する。機能素子10は、機能材料11を備える。機能素子10は、一対の電極12、13を備える。
【0016】
機能材料11は、多くの部分を有機材料が占めている。機能材料11は、樹脂材料製である。機能材料11は、無機材料を含む場合がある。機能材料11は、例えば、無機フィラーを備える場合がある。
【0017】
機能材料11は、電極12、13に印加される電界の変化に応答して、電気熱量効果を発揮する材料製である。機能材料11は、電極12、13に印加される電界の変化に応答して、厚さ方向THDにおける厚さを変化させる材料製である。厚さ方向THDにおける厚さを変化は、電極12、13間における静電気的な力によって生成されてもよい。厚さ方向THDにおける厚さを変化は、電歪効果的な力によって生成されてもよい。よって、この実施形態における機能素子10は、機能として、電気熱量効果と、機械的な変位との両方を提供している。
【0018】
機能材料11は、ポリマーフィルムとして提供されている。ポリマーフィルムは、通常のフィルムの製造方法によって提供することができる。機能材料11は、容器を備える場合がある。容器は、機能材料11を収容する。容器は、厚さ方向THDにおける厚さを維持するために貢献する。機能材料11は、容器を備えない場合がある。この場合、機能材料11自身が厚さを維持する。
【0019】
機能材料11は、電場の印加により発熱し、電場の除去により吸熱する。機能材料11は、所定値を超える電場が印加されるとき、分子が提供する電気的な双極子の配列が整列する。このとき、機能材料11は、エントロピーが減少し、熱を放出する。この結果、機能材料11の温度が上昇する。機能材料11は、電場が除去されるとき、双極子の配列がランダムに戻る。このとき、機能材料11は、エントロピーが増加し、熱を吸収する。この結果、機能材料11の温度が低下する。言い換えると、機能材料11は、外部から電場が加えられたエントロピーの小さい状態から、電場を除去すると吸熱してエントロピーが大きくなる。機能材料11は、エントロピーが大きな状態から、電場を印加すると放熱してエントロピーが小さくなる。
【0020】
機能材料11は、電極12と電極13との間に配置されている。電極12、13は、電界変調回路20から供給される電圧によって、機能材料11に電界を印加することができる。電界変調回路20は、一対の電極12、13の間に作用する電界の強度を、強弱に変調する。電界変調回路20は、電界の強さを、0(ゼロ)と最大値とに変調する。電極12、13は、機能材料11の厚さ方向THDにおける両側に配置されている。電極12、13は、厚さ方向THDに直交する直交方向PPDに沿って面状に広がっている。電極12、13は、機能材料11の両面に接している。電極12、13は、直接的に機能材料11に接触している場合がある。電極12、13は、容器を介して間接的に機能材料11に接触している場合がある。
【0021】
機能材料11は、低温部材2だけ、または、高温部材3だけ、または、低温部材2と高温部材3との両方に対して、高熱伝達状態と、低熱伝達状態とに切替可能である。高熱伝達状態は、所定の高い熱伝達率を提供する。低熱伝達状態は、高熱伝達状態より低い熱伝達率を提供する。図示の例では、機能材料11は、電極12、13を介して、間接的に、低温部材2、または、高温部材3に対して熱伝達する。これに代えて、機能材料11は、電極12、13を介することなく、直接的に、低温部材2、または、高温部材3に対して熱伝達してもよい。図示される機能材料11は、厚さ方向THDに関して熱移動を提供している。これに代えて、機能材料11は、直交方向PPDに関して熱移動を提供してもよい。
【0022】
この観点において、機能材料11と低温部材2との間、または、機能材料11と高温部材3との間には、熱的なスイッチが提供されている。熱的なスイッチは、高熱伝達状態と、低熱伝達状態とを提供する。熱的なスイッチは、機能素子10における熱的な作用に同期して、熱伝達状態を切替える。この実施形態では、熱的なスイッチは、機能材料11へ作用する電界変調に同期して、熱伝達状態を切替える。熱的なスイッチは、機能素子10が吸熱するときに、低温部材2と機能素子10との間に高熱伝達状態を提供する。熱的なスイッチは、機能素子10が発熱するときに、高温部材3と機能素子10との間に高熱伝達状態を提供する。熱的なスイッチは、機能素子10が発熱するときに、低温部材2と機能素子10との間に低熱伝達状態を提供することが望ましい。熱的なスイッチは、機能素子10が吸熱するときに、高温部材3と機能素子10との間に低熱伝達状態を提供することが望ましい。この実施形態では、後述の機能素子10の変位によって、熱的なスイッチが提供されている。熱的なスイッチは、低温部材2、または、高温部材3における、流体成分の流動状態の切り替えによって実現されてもよい。
【0023】
電極12、13は、機能材料11の両側に配置されている。この観点において、電極12、13は、端部電極とも呼ばれる。端部電極としての電極12、13は、機能材料11の厚さ方向THDにおける全長にわたって、機能材料11に電界を印加する。
【0024】
電極12は、低温部材2に対して、高熱伝達状態と、低熱伝達状態とに切替可能である。図示される例では、2つの状態の切替は、機能材料11の厚さ変化によって提供されている。高熱伝達状態は、電極12と低温部材2とが接触している接触状態である。低熱伝達状態は、電極12と低温部材2とが離れている非接触状態である。電極12は、低温部材2に対して、接触状態と、非接触状態とを切替可能に提供するように可動である。接触状態と、非接触状態とは、熱伝達の方向を規定している。この観点において、電極12は、可動電極である。
【0025】
電極13は、高温部材3に対して、接触状態に置かれている。この観点において、電極13は、固定電極である。電極13は、高温部材3に対して、継続的に、高熱伝達状態にある。これに代えて、電極13は、高温部材3に対して、高熱伝達状態と、低熱伝達状態とに切替可能に構成されてもよい。
【0026】
固体冷媒サイクル1は、電界変調回路20を備える。電界変調回路20は、電極12、13に電圧を供給する。電界変調回路20は、一対の電極12、13の間に電界を作用させる。言い換えると、電界変調回路20は、一対の電極12、13の間に位置する機能材料11に電界を作用させる。さらに、電界変調回路20は、電界の強度を、強弱に変調する。電界変調回路20は、電界の強さを、0(ゼロ)と供給可能な極大値とに変調する。
【0027】
電界変調回路20は、電極12、13に電圧を供給する回路部材21を備える。回路部材21は、電線、導体膜、バスバーなどによって提供されている。電界変調回路20は、直流電圧を供給する直流電源22を備える。電界変調回路20は、電極12、13への電圧供給を断続するためのスイッチ素子23を備える。スイッチ素子23は、スイッチ装置とも呼ぶことができる。スイッチ素子23は、オン状態とオフ状態とに切替可能である。スイッチ素子23は、制御装置24によって制御可能な素子である。電界変調回路20は、制御装置24(ECU)を備える。制御装置24は、スイッチ素子23を制御する。制御装置24は、機能素子10が機能を発揮するようにスイッチ素子23をオン状態とオフ状態とに交互に切替える。制御装置24がスイッチ素子23をオフ状態に制御するとき、機能素子10は非活性状態に制御される。制御装置24がスイッチ素子23をオン状態に制御するとき、機能素子10は活性状態に制御される。
【0028】
この明細書における制御装置は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。制御装置、または制御システムは、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理としてのアルゴリズム、または(b)機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。制御装置は、少なくともひとつのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアである少なくともひとつのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)を含む。ハードウェアプロセッサは、下記(i)、(ii)、または(iii)により提供することができる。
【0029】
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくともひとつのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくともひとつのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくともひとつのメモリと、少なくともひとつのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、RISC-CPUなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
【0030】
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC:Application-Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、SoC:System on a Chip、PGA:Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどとも呼ばれる。デジタル回路は、プログラムおよび/またはデータを格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
【0031】
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
【0032】
図1は、機能素子10の非活性状態を示す。非活性状態において、一対の電極12、13の間の機能材料11には、電界が作用していない。非活性状態は、非励起状態とも呼ばれる。非活性状態において、機能材料11は、非活性形状DSである。非活性形状DSにおいて、機能材料11は、厚さt1を有する。非活性形状DSにおいて、機能材料11は、低温部材2から吸熱する。非活性形状DSにおいて、機能材料11は、高温部材3からも吸熱する。
【0033】
図2は、機能素子10の活性状態を示す。活性状態において、一対の電極12、13の間の機能材料11には、電界が作用している。活性状態は、励起状態とも呼ばれる。活性状態において、機能材料11は、活性形状ASである。活性形状ASにおいて、機能材料11は、厚さt2を有する。活性形状ASにおいて、機能材料11は、高温部材3へ放熱する。活性形状ASにおいて、機能材料11は、低温部材2と低熱伝達状態に置かれている。よって、活性形状ASにおいて、機能材料11は、低温部材2へほとんど放熱しない。
【0034】
固体冷媒サイクル1の作動状態において、制御装置24は、図1に図示される状態と、図2に図示される状態とを交互に実現するようにスイッチ素子23を制御する。この結果、機能素子10は、低温部材2から高温部材3へ向かう熱移動を提供する。固体冷媒サイクル1は、低温部材2にあらわれる低温、および/または、高温部材3にあらわれる高温を利用する。
【0035】
図3および図4は、機能材料11に含まれる分子のモデルを示している。機能材料11は、高分子材料である。機能材料11は、全体として、高分子鎖が並んだ液晶のような性状を有している。機能材料11は、液晶ポリマーとも呼ばれる。機能材料11は、少なくとも流動可能である。機能材料11は、液体としての性状を示す。機能材料11は、第1材料15の第1分子と、第2材料16の第2分子とを含む。
【0036】
機能材料11は、第1材料15を備える。第1材料15は、高分子材料である。第1材料15は、機能素子10が提供するべき機能、この実施形態では、電気熱量効果を発揮する材料である。第1材料15は、機能材料11における主材料とも呼ばれる。第1材料15は、高分子鎖が並んだ液晶のような性状を有している。第1材料15は、液晶ポリマーとも呼ばれる。
【0037】
機能材料11は、第2材料16を備える。第2材料16は、高分子材料である。第2材料16は、第1材料15と高分子鎖を作ることがない材料である。第2材料16は、機能材料11における添加剤とも呼ばれる。第2材料16は、高分子鎖が並んだ液晶のような性状を有している。第2材料16は、液晶ポリマーとも呼ばれる。
【0038】
第2材料16は、第1材料15の可塑性を高める材料である。この観点において、第2材料16は、機能材料11における可塑剤、または、リラクサとも呼ばれる。第2材料16は、第1材料15に対する可塑化成分として添加されている。第2材料16の存在は、機能材料11に流動性を与える。第2材料16の存在は、機能材料11にゲルとしての性質を発現させている。第2材料16は、ゲル化剤とも呼ばれる。第2材料16の存在は、機能材料11に流体的な性質を与えている。
【0039】
第2材料16は、液体成分である。第2材料16は、機能材料11の使用温度域において、液体である。使用温度域は、機能材料11の使用状態における最高温度と最低温度とに基づいて規定されている。第2材料16は、機能材料11における0.1重量%以上、600重量%以下の範囲を占める場合がある。第2材料16は、高分子を主成分として、無機フィラーを備えていてもよい。無機フィラーは、第2材料16に分散的に配置されている。
【0040】
図3および図4は、電気的な双極子を矢印記号によってモデル的に示している。機能材料11は、誘電性を備えている。第1材料15は、誘電性を備えている。第2材料16は、誘電性を備えている。機能材料11を構成する第1材料15、および、第2材料16は、自発分極によって双極子が発現する強誘電体である。第1材料15の第1分子は、所定の双極子モーメントをもつ第1双極子Dfを備えている。第2材料16の第2分子は、それ自身が、所定の双極子モーメントをもつ第2双極子Drを備えている。
【0041】
なお、第1材料15と第2材料16とは、両方が自発分極をもたない常誘電体でもよい。また、第1材料15と第2材料16とは、一方が常誘電体であり、他方が強誘電体でもよい。第1材料15が常誘電体である場合、第1材料15は電界の中において誘電分極し、電界の方向(厚さ方向THD)を指向する双極子を発現する。第2材料16が常誘電体である場合、第2材料16は電界の中において誘電分極し、電界の方向(厚さ方向THD)を指向する双極子を発現する。望ましい形態においては、第1材料15と第2材料16との少なくとも一方が強誘電体である。
【0042】
機能材料11は、強誘電体としての性質と、液晶ポリマーとしての性質とを併せ持っている。第1材料15は、強誘電体としての性質と、液晶ポリマーとしての性質とを併せ持っている。第2材料16は、強誘電体としての性質と、液晶ポリマーとしての性質とを併せ持っている。これらの観点から、第1材料15、および、第2材料16は、強誘電体液晶ポリマーと呼ばれている。
【0043】
図3は、非活性状態における複数の双極子を示す。非活性状態においては、第1双極子Dfと第2双極子Drとの両方がランダムな方向を指向している。液体としての性状を示す機能材料11は、分子配列がランダムになりやすい。
【0044】
図4は、活性状態における複数の双極子を示す。活性状態においては、第1双極子Dfと第2双極子Drとの両方が、一対の電極12、13の間に作用する電界によって、電界の方向(厚さ方向THD)を指向している。言い換えると、機能材料11は、一対の電極12、13の間に作用する電界によって、電界の方向(厚さ方向THD)に沿うように指向する第1双極子Df、および、第2双極子Drを備える。液体としての性状を示す機能材料11は、外部電界の作用によって、分子配列が所定方向を指向しやすい。
【0045】
第2材料16は、可塑剤としての性質によって、第1材料15の高分子鎖の間に、隙間を提供する。言い換えると、第2材料16の存在は、第2材料16を備えない第1材料15だけの素体よりも、複数の第1双極子Dfの間に隙間を提供する。この結果、第2材料16は、第1材料15の第1分子、すなわち第1双極子Dfの運動性を高める。第2材料16は、第1双極子Dfを動きやすくする作用を提供する。第2材料16は、第1双極子Dfの運動性を高めることにより、機能材料11における分極Pを向上させる。
【0046】
さらに、第2材料16の第2分子は、それ自身が、所定の双極子モーメントをもつ第2双極子Drを備えている。第2双極子Drは、機能材料11における分極密度を高め、機能材料11における分極Pを向上する。
【0047】
図5は、電界Eと分極Pとが示すヒステリシス曲線を示している。破線CMP1は、第1材料15だけを含む比較例のヒステリシス曲線である。破線CMP2は、第2材料16の可塑剤としての作用を示す比較例のヒステリシス曲線である。実線EMBは、機能材料11のヒステリシス曲線である。第2材料16は、可塑剤、または、リラクサとしての性質によって、機能材料11における抗電圧を低下させる。さらに、第2材料16は、自らが第2双極子Drを備えることによって、機能材料11における分極密度を高めている。言い換えると、機能材料11における分極Pは、第2双極子Drによって、増加量Idだけ向上する。
【0048】
抗電圧の低さは、機能材料11における双極子モーメントの等方化を可能とする。この結果、高いエントロピー変化量ΔSを実現することができるから、高い電気熱量効果(冷却能力)を実現することができる。さらに、同じ電界における分極Pが高くなるから、機能材料11の厚さを相対的に大きくすることができる。機能材料11の厚さを大きくすることにより、低温端と高温端との間における温度差ΔTを大きくすることができる。この結果、固体冷媒サイクル1としての高い効率を実現することができる。効率は、例えば、成績係数COP(Coefficient Of Performance)によって評価することができる。
【0049】
図6は、第1材料15の実施例I-VIIを示している。第1材料15は、図6に図示される複数の材料I-VIIのいずれかひとつを含むことができる。第1材料15は、実施例I-VIIのコポリマー、または、混合物でもよい。主たる実施例においては、第1材料15は、PVdF系の樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂)によって提供されている。これに代えて、第1材料15は、図6に図示される複数の材料II-VIIのいずれかひとつを含むことができる。第1材料15は、例えば、ポリフッ化ビニリデンPVdFに、トリフルオロエチレン(TrFE)および/または1-クロロ-1-フルオロ-エチレン(CFE)を添加物として含む、PVdF-TrFE、またはPVdF-TrFE-CFEによって提供されてもよい。
【0050】
図7は、第2材料16の実施例1-12を示している。第2材料16は、図7に図示される複数の材料1-12のいずれかひとつを含むことができる。第2材料16のアルキル鎖の数は、2-12である。第2材料16は、実施例1-12の混合物であってもよい。第2材料16は、第1材料15に対して強く相互作用する官能基と、弱く相互作用する官能基とを有している。
【0051】
図8は、実施例における第2材料16のサンプルS1、S2、S3を示す。図8において、第2材料16の分子構造MOL、沸点Tb、アスペクト比AR、双極子モーメントDM、および、誘電率ε(イプシロン)が示されている。アスペクト比ARは、第2材料16を提供する高分子鎖の長辺/短辺である。サンプルS1は、フタル酸エステルである。サンプルS2は、アジピン酸系ポリエステルである。サンプルS3は、環状炭酸エステルである。サンプルS1、S2、または、S3は、エステル系添加剤とも呼ばれている。
【0052】
実施形態において、機能材料11の製造方法は、第1材料15と第2材料16とを混合する混合工程を含む。第1材料15は、PVdF-TrFEである。第2材料16は、図8に示されるサンプルS1、S2、または、S3である。機能材料11の製造方法は、機能材料11を膜状に成形する成膜工程を含む。成膜工程は、スピンコート法によって提供することができる。さらに、機能材料11の製造方法は、成膜工程において製造された膜をアニーリングするアニーリング工程を含む。アニーリング工程は、膜を、120℃の雰囲気中に、30minにわたって置くことによって提供されている。機能材料11の製造方法は、アニーリング工程の後に、分極工程を含む。分極工程は、ポーリング工程とも呼ばれる。ポーリング工程は、膜を、100V/μm、0.05Hzの電界中に置くことによって提供されている。
【0053】
図9は、電界-分極特性を測定するための測定装置50を示す。実施例における機能材料11の試料の電界-分極特性は、図示されるソーヤタワー回路によって測定されている。測定装置50において、ファンクションジェネレータ51と、増幅器52とが測定用の交流電圧を提供する。試料53は、電極54と電極55との間に配置されている。電極54、55は、平均膜厚100nmのアルミニウム膜によって提供されている。試料53は、基準容量素子56と直列に配置されている。この実施例では、基準容量素子56は、1μFである。交流電圧は、試料53と、基準容量素子56との直列回路に印加される電界-分極特性は、オシロスコープ57にあらわれる波形を観測することにより測定される。
【0054】
図10は、サンプルS1、S2、S3のアスペクト比ARと、試料の抗電圧CVとを示している。第1材料15としてのPVdF-TrFEだけの試料S0の抗電圧が丸印によって示されている。第1材料15として利用可能なPVdF-TrFE-CFEだけの抗電圧Vtが破線によって示されている。PVdF-TrFE-CFEは、比較的望ましいヒステリシス曲線を示す。このことから、抗電圧Vtは、利用可能な機能材料11が実現するべき目標抗電圧として利用することができる。第2材料16として、サンプルS1を用いた試料S0+S1の抗電圧は、三角形印によって示されている。第2材料16として、サンプルS2を用いた試料S0+S2の抗電圧は、二重丸印によって示されている。第2材料16として、サンプルS3を用いた試料S0+S3の抗電圧は、四角形印によって示されている。サンプルS3は、比較的大きいアスペクト比AR=7.8を有している。
【0055】
上述のように、第2材料16は、第1材料15の高分子鎖の運動性を高める。典型的な例においては、第1材料15の高分子鎖の運動性は、回転性によって評価される。さらに、上述のように、第2材料16は、自らの第2双極子Drによって、機能材料11における分極密度を向上させる。加えて、図10に示されるように、第2材料16は、アスペクト比ARが大きいほど、第1材料15の高分子鎖の運動を助けると考えられる。
【0056】
複数のサンプルS0、S1、S2、S3に基づいて、アスペクト比ARと抗電圧CVとの関係を示す想定ラインLNを想定することができる。この想定ラインLNに基づき、目標抗電圧Vtを満足するために、第2材料16のアスペクト比ARは、6.0以上であることが望ましい。第2材料16の第2分子のアスペクト比ARを6.0以上に設定することにより、低い抗電圧を実現できる。抗電圧の低さは、ヒステリシスの抑制を可能とする。
【0057】
以上に述べた実施形態によると、第2材料16によって、機能材料11の分極密度が改良された電界駆動型の機能素子が提供される。この改良は、第2材料16による第1材料15の運動性(可動性)の向上と、第2材料16それ自身の第2双極子Drによる分極密度の向上とによってもたらされる。
【0058】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、電界駆動型の機能素子10は、固体冷媒サイクル1を提供する。機能素子10は、電界の変動によって熱移動を生成する固体冷媒として機能する。これに代えて、この実施形態では、電界駆動型の機能素子10は、アクチュエータ201を提供する。機能素子10は、電界の変動によって機械的な変位を出力する動力源として機能する。
【0059】
図11、および、図12において、機能素子10は、アクチュエータ201を提供する。アクチュエータ201は、外部エネルギとしての電界の変調によって、機能素子10の変位Laを出力する。アクチュエータ201は、端部片202と、端部片203とを備える。端部片202は、電極13と機械的に連結されている。端部片203は、電極12と機械的に連結されている。端部片202は、可動片とも呼ばれる。端部片202は、機械的な変位Laを出力するための出力部材を提供する。端部片203は、変位の基準を規定する部材に固定されている。端部片203は、固定片とも呼ばれる。
【0060】
この実施形態では、端部片202が専ら機械的な変位Laを出力する。これに代えて、端部片202を固定片とし、端部片203を可動片としてもよい。この場合、端部片203が出力部材を提供する。また、端部片202と、端部片203との両方を可動片としてもよい。この場合、端部片202と、端部片203との両方が出力部材を提供する。機能素子10は、機能材料11の変形を直接的に出力することができる。機能素子10は、静かに機械的な変位を出力することができる。アクチュエータ201は、例えば、人工筋肉として利用することができる。
【0061】
この実施形態によると、機能材料11の全体の分極密度が改良された電界駆動型機能素子、すなわち、アクチュエータを提供することができる。この実施形態によると、例えば、取り出される変位量の増加、または、取り出される変位力の増加、または、変位量の増加と変位力の増加との両方を達成することができる。
【0062】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形形態を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0063】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0064】
上記実施形態では、機能素子10は、単段である。これに代えて、機能素子10は、直列的に配列されることにより、直列多段素子を提供してもよい。これに代えて、機能素子10は、並列的に配列されることにより、並列多段素子を提供してもよい。また、機能素子10は、直列的かつ並列的に配列されることにより、直並列多段素子を提供してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 固体冷媒サイクル、 2 低温部材、 3 高温部材、
10 機能素子、 11 機能材料、 12、13 電極、
15 第1材料、 16 第2材料、 20 電界変調回路、
21 回路部材、 22 直流電源、 23 スイッチ素子、
24 制御装置(ECU)、 50 測定装置、
51 ファンクションジェネレータ、 52 増幅器、
53 試料、 54、55 電極、 57 オシロスコープ、
AS 活性形状、 DS 非活性形状、 t1、t2 厚さ、
Df 第1双極子、 Dr 第2双極子、
201 アクチュエータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12