(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ、その製造方法、ならびにそれを備えた半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240409BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20240409BHJP
H01L 27/092 20060101ALI20240409BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L27/092 C
H01L27/092 D
H01L27/092 K
H01L29/78 617N
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L29/78 626C
(21)【出願番号】P 2020027903
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019038178
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 健太
(72)【発明者】
【氏名】堀井 新司
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019955(JP,A)
【文献】特開2009-098418(JP,A)
【文献】特開2003-197612(JP,A)
【文献】特開2000-276076(JP,A)
【文献】特開2017-034060(JP,A)
【文献】特開2006-270077(JP,A)
【文献】特開2004-207616(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038635(WO,A1)
【文献】特開2002-251166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、21/8238、
27/092、29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのチャネル領域を有する薄膜トランジスタであって、
基材と、
ドレインもしくはソースとなる少なくとも3つの電極と、
少なくとも2つのゲート電極と、
前記少なくとも2つのゲート電極のいずれにも接するゲート絶縁層と、
前記少なくとも2つのチャネル領域に跨がる島状の半導体層と、
を有
し、
前記薄膜トランジスタのチャネル幅のうちの最大値Wmと、前記2つ以上のゲート電極間の距離のうちの最大値dmが、Wm>dmの関係を有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
少なくとも2つのチャネル領域を有する薄膜トランジスタであって、
基材と、
ドレインもしくはソースとなる少なくとも3つの電極と、
少なくとも2つのゲート電極と、
前記少なくとも2つのゲート電極のいずれにも接するゲート絶縁層と、
前記少なくとも2つのチャネル領域に跨がる島状の半導体層と、
を有し、
前記半導体層は複数のカーボンナノチューブがネットワーク状に構成された形状を有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記薄膜トランジスタのチャネル幅のうちの最大値Wmと、前記2つ以上のゲート電極間の距離のうちの最大値dmが、Wm>dmの関係を有する請求
項2に記載の薄膜トランジスタ
。
【請求項4】
前記島状の半導体層の平面形状が円形である請求項1
~3のいずれかに記載の薄膜トランジスタ
。
【請求項5】
前記半導体層は少なくとも有機半導体、グラフェンおよびカーボンナノチューブから選ばれる1つ以上の材料を含有する請求項
1に記載の薄膜トランジスタ
。
【請求項6】
前記半導体層は、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブを含有する請求項1~5のいずれかに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記基材がフレキシブル性を有する請求項1~6のいずれかに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記薄膜トランジスタに含まれる全てのゲート電極のうち、少なくとも2つのゲート電極が電気的に互いに独立している請求項1~7のいずれかに記載の薄膜トランジスタ
。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の薄膜トランジスタを含む半導体装置。
【請求項10】
請求項8に記載の薄膜トランジスタを含む半導体装置であって、
前記薄膜トランジスタのゲート電極のうち少なくとも2つの電位が、それぞれ独立に制御される半導体装置。
【請求項11】
少なくとも2つのチャネル領域を有する薄膜トランジスタであって、
基材と、
ドレインもしくはソースとなる少なくとも3つの電極と、
少なくとも2つのゲート電極と、
前記少なくとも2つのゲート電極のいずれにも接するゲート絶縁層と、
前記少なくとも2つのチャネル領域に跨がる島状の半導体層と、
を有する薄膜トランジスタ
、
を含む半導体装置であって、
前記薄膜トランジスタに含まれる全てのゲート電極のうち、少なくとも1組の隣り合う2つのゲート電極が共通の電気的配線によって接続され、
前記隣り合う2つのゲート電極の内側に挟まれた1つのドレインまたはソース電極は共通電極であって、
前記隣り合う2つのゲート電極の外側に配置される2つのドレインまたはソース電極が互いに異なる電気的配線に接続され、
前記2つのゲート電極によって制御される2つのチャネル領域に流れるオン電流が、
前記共通電極から、前記外側に配置される2つのドレインまたはソース電極に向かって流れる、または、
前記外側に配置される2つのドレインまたはソース電極から、前記共通電極に向かって流れる
半導体装置。
【請求項12】
少なくとも2つのチャネル領域を有する薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記薄膜トランジスタは、
請求項1~8のいずれかに記載の薄膜トランジスタであり、
前記島状の半導体層を塗布法により形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記塗布法は、前記半導体層を含む材料をインクジェット方式、ノズル塗布方式、スクリーン印刷方式、オフセット印刷方式、またはドロップキャスト塗布方式のいずれか1種によって形成する請求項12に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記基材のガラス転移温度が200℃以下である請求項12または13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ、その製造方法、ならびにそれを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型のタグとしてRFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信システムの開発が進められている。RFIDシステムでは、リーダ/ライタと呼ばれる無線送受信機とRFIDタグとの間で、無線通信が行われる。
【0003】
RFIDタグは、物流管理、商品管理、万引き防止などの様々な用途での利用が期待されており、交通カードなどのICカード、商品タグなど一部で導入が始まっている。RFIDタグは、ICチップと、リーダ/ライタとの無線通信するためのアンテナを有している。タグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される搬送波を受信し、ICチップ内の駆動回路が動作する。
【0004】
RFIDタグは、あらゆる商品やシーンでの使用が期待されている。そのためには製造コストの低減が必要不可欠であり、真空や高温を使用する製造プロセスから脱却し、塗布・印刷技術を用いた安価なものが検討されている。
【0005】
例えば、ICチップ内の駆動回路には、成形性に優れた有機半導体を半導体層として用いた薄膜トランジスタ(以下、TFTという)の利用が提案されている。有機半導体をインクとして利用することで、インクジェット技術等によりフレキシブル基板上に直接回路パターンを形成することが可能になる(例えば、特許文献1参照)。本技術を用いることで、いわゆるロールツーロールプロセスの適用が可能となり、製造コストを低減したICチップの製造が可能となることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、塗布・印刷技術を用いたTFTや、それを用いた回路パターンのサイズは、塗布・印刷技術の加工精度に依存する。そしてそのようなTFTは、いわゆるシリコン半導体で形成されるトランジスタよりも面積が大きいという課題が存在する。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の技術では、TFTの構成要素であるドレイン電極、ソース電極をフォトリソ技術で加工・形成し、それらの間に有機半導体インクをインクジェット法により供給することで、有機半導体層を形成している。ここで、インクジェット法で形成される有機半導体層のサイズは、フォトリソ技術で加工・形成される各電極の最小加工寸法と比べて大きい。そのため、TFT1個あたりの面積は有機半導体層の面積に依存することとなり、チップ面積が大きくなる。
【0009】
また、一般的にTFTでは、電気的な要求特性から、チャネル幅に対してチャネル長が短いものを使用することが多い。例えば、特許文献1に記載のTFTでは、チャネル長が5μm、チャネル幅が50μm~100μmのものを用いている。この場合、チャネル幅とチャネル長の長さが10倍以上の違いとなり、比較的円形に近い有機半導体層に対して無駄となる面積が大きくなる。
【0010】
また、殊に塗布技術を用いる有機半導体においては、その半導体層の結晶性やナノワイヤにおけるネットワークの形成状態により、各半導体素子のばらつきが無機結晶系の半導体素子に比べて大きくなってしまうという課題が存在する。このため、1組の半導体素子において相対ばらつきが小さいことを利用するカレントミラー回路や差動対などの特性を安定させることが難しく、アナログ回路の設計が困難であった。
【0011】
そこで本発明は、面積が小さく製造コストが抑制され、かつ隣接するチャネル間の相対ばらつきが小さいTFTおよびそれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、
少なくとも2つのチャネル領域を有する薄膜トランジスタであって、
基材と、
ドレインもしくはソースとなる少なくとも3つの電極と、
少なくとも2つのゲート電極と、
前記少なくとも2つのゲート電極のいずれにも接するゲート絶縁層と、
前記少なくとも2つのチャネル領域に跨がる島状の半導体層と、
を有することを特徴する薄膜トランジスタである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、面積が小さく、製造コストを低減し、かつ隣接するチャネル間の相対ばらつきが小さいTFT、およびTFTを用いた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るTFTを示した模式平面図
【
図2】
図1に示した平面図のA-Bの断面を示した模式断面図
【
図3】本発明の実施の形態2に係るTFTを示した模式平面図
【
図4】本発明の実施の形態3に係るTFTを示した模式平面図
【
図5】本発明の実施の形態4に係るTFTを示した模式平面図
【
図6】本発明の実施の形態5に係るTFTを示した模式平面図
【
図7A】本発明の実施の形態に係るTFTの製造方法の一例を示した模式断面図
【
図7B】本発明の実施の形態に係るTFTの製造方法の一例を示した模式断面図
【
図8】本発明の実施の形態6に係る半導体装置を示した模式平面図
【
図9】本発明の実施の形態6に係る従来の形態の半導体装置を示した模式平面図
【
図10】本発明の実施の形態7に係る半導体装置を示した模式平面図
【
図11】本発明の実施の形態8に係る半導体装置を示した模式平面図
【
図12】本発明の実施の形態9に係る半導体装置を示した模式平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものである。また、本発明は以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0016】
なお、以下において、マルチゲートTFTとは、1つの半導体層に対し複数のゲート電極および複数のチャネル領域を有する薄膜トランジスタ(TFT)を意味する。
【0017】
<薄膜トランジスタ>
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るTFTを模式的に示した概略平面図であり、
図2は
図1で示した概略平面図のA-Bの断面を示す概略断面図である。
【0018】
図1および
図2では、PET(ポリエチレンテレフタラート)等からなるフィルム基材10の上に、2つのゲート電極200および201と、それらの両方に接するゲート絶縁層50と、ソースもしくはドレインとなる3つの電極110、111および112と、2つのチャネル領域300および301と、それらのチャネル領域に跨がる島状の半導体層400とを有するTFTが形成されている。
【0019】
上記の如き構成とすることにより、ゲート電極200と、ソースもしくはドレインとなる電極110および111と、半導体層400のうちチャネル領域300にかかる部分とから形成されるTFT(これをTFT-Rと称する)と、ゲート電極201と、ソースもしくはドレインとなる電極111および112と、半導体層400のうちチャネル領域301にかかる部分とから形成されるTFT(これをTFT-Lと称する)とが、電極111を介して直列接続した形状となる。この状態は、1つの島状をなす半導体層400でカバーされる領域に2個のTFTが形成された状態である。つまり、本実施の形態1にかかるTFTは、2個のTFTの集合体であるといえる。
【0020】
本実施の形態1によれば、2個のTFTがそれぞれ独立して島状半導体層を有する場合に比べ、TFTを形成するために必要な面積がほぼ半分で済む。その結果、チップ面積の縮小や、製造コストの低減が可能となる。
【0021】
ここで、
図1に示したように、面積効率の観点からは、半導体層400は、各チャネル領域における幅方向の両端部(チャネル領域300と電極110との境界、チャネル領域300と電極111との境界、チャネル領域301と電極111との境界、およびチャネル領域301と電極112との境界)を全て包含することが好ましい。また、ソース電極とドレイン電極の間にある半導体層のうち、ゲート電極により導電状態が制御されない領域が存在するとリーク電流の増加等が懸念される。そこで、そのリーク電流を抑制するためには、ゲート電極200および201は、その平面形状が、島状の半導体層400から少なくとも2方向に突き出した形状であることが望ましい。
【0022】
本実施の形態1では、ゲート電極がチャネル領域に対して基板側に存在する、いわゆるボトムゲート構造を示したが、所望の特性や効果が得られる限りにおいては、ゲート電極がチャネル領域に対して基板と反対側に存在する、いわゆるトップゲート構造でも良い。また、同様に、本実施の形態1では、半導体層がソース電極およびドレイン電極に対して基板と反対側で接する、いわゆるボトムコンタクト型の構成を示したが、所望の特性や効果が得られる限りにおいては、半導体層がソース電極およびドレイン電極に対して基板側に存在する、いわゆるトップコンタクト型の構成でも良い。
【0023】
TFT-RとTFT-Lとは必ずしも直列接続である必要は無く、2つのTFTの間に配置した電極111を他の配線に接続し、2つのTFTを並列接続とした構成であってもよい。
【0024】
本実施の形態1におけるゲート電極の数は2つであり、ドレインもしくはソースとなる電極の数は3つであるが、それらの電極の数を増やしても良い。例えば、ゲート電極の数を3つ(またはそれ以上)、ドレインもしくはソースとなる電極の数を4つ(またはそれ以上)とすることで、3つ(またはそれ以上)のTFTが含まれる構成としてもよい。
【0025】
それぞれのゲート電極の電気的接続については特に限定しないが、TFTの制御性と回路への適用性の観点から、電気的に独立していることが望ましい。2つ以上の電極が電気的に独立していることは、ばらつきの小さい複数のTFTチャネルを個別に制御できるという観点から特に望ましい。また、3個以上のゲート電極を含むTFTにおいて、一部のゲート電極を電気的に接続してチャネルを並列接続とし、それ以外の電極を電気的に独立させることで、電気的に独立したゲート電極がそれぞれ形成するチャネル幅の総和によるサイズ比率を持った、TFTの対を得ることができる。このTFT対の電気的特性はサイズ比率に比例するため電気的特性の制御が容易であり、殊にカレントミラー回路などに代表される、電流比を用いる回路構成において特性の良好な回路を形成できる。
【0026】
島状の半導体層400の平面形状は、円形であることが好ましい。後述のように、島状の半導体層は、TFTの製造コストを削減する観点から、いわゆる塗布・印刷法を用いて形成することが望ましい。さらに、半導体層を形成するために使用される材料の使用量を最小限に抑制するためには、TFTなどの素子を形成する部分にのみ半導体層を塗布・印刷することが好ましい。かかる観点から、インクジェット法が特に好ましく用いられる。そして、半導体層の平面形状が円形であることは、インクジェット法での形成に特に適した構成である。
【0027】
なお、ここでいう円形は真円形状に限られるものではない。すなわち、半導体層の平面形状は、半導体インクの液滴の平面投影形状に近ければ、真円形状でなくても構わない。半導体インクの液滴の自由落下により半導体層が形成されることから、当該液滴の平面投影形状は常に真円となるとは限らない。そこで、プロセスとしての再現性が良好であり、形状や特性のばらつきが所望の範囲である限りにおいては、真円から崩れた円形であることは何ら問題ない。
【0028】
本実施の形態1において、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に用いられる材料は、一般的に電極として使用されうる導電材料であればいかなるものでもよい。例えば、酸化錫インジウム(ITO)、金、銀、銅、アルミニウム、ポリシリコン、導電性ポリマー、炭素材料などが挙げられる。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0029】
本実施の形態1では、基材としてPETからなるフィルムを例示したが、基材は、少なくとも電極系が配置される面が絶縁されていればいかなる材質のものでもよい。例えば、シリコンウエハ、ガラス、ポリイミドなどが挙げられる。また、基材は、複数の材料が積層されたものであってもよい。なお、ロールツーロール等の安価な製造プロセスへの適用を踏まえると、基材はフィルム等のフレキシブル性に優れたものの方が好ましく、更に絶縁性や保護性など所望の機能性・特性が確保できる限りにおいては、極力薄いことが好ましい。
【0030】
本実施の形態1において、ゲート絶縁層に含まれる材料は、所望の絶縁性が得られる限りにおいて、特に限定されない。例えば、酸化シリコン、アルミナ、ポリイミドなどが挙げられる。ロールツーロール等の安価な製造プロセスへの適用を踏まえ、塗布法や印刷法などに適用可能な材料である方が好ましい。
【0031】
本実施の形態1において、半導体層400に含まれる材料は、所望の電気的特性が得られ、安価な製造プロセスが適用可能で、加工性に優れる限りにおいては特に限定されない。中でも、半導体層に含まれる材料が、有機半導体、グラフェンおよびカーボンナノチューブ(CNT)から選ばれる1つ以上であることが、高い電気的特性を実現し、且つ塗布による形成が容易となる点で、より好ましい。特に、CNTが好ましく、CNTそのものの分散性といった加工性の観点から、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNTがいっそう好ましい。
【0032】
また、複数のCNTがネットワーク状に構成されることで、単体のCNTを製造・配置することや複数のCNTを配向させる場合に比べて、電気的特性と製造の簡便さを両立できることから、より好ましい。複数のCNTがネットワーク状に構成される様子は、原子間力顕微鏡(AFM)や透過電子顕微鏡(TEM)により観察することができる。
【0033】
更に、CNTは、TFTの特性ばらつきを抑制する点、および、複数のチャネル間に跨るリーク電流経路を抑制する点から、半導体型CNTを80重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは、半導体型CNTを90重量%以上含むことであり、特に好ましくは、半導体型CNTを95重量%以上含むことである。
【0034】
以上説明した本実施の形態1に係るTFTは、2つのチャネル領域に跨がる島状の半導体層400を有するため、TFT-RとTFT-Lとで半導体層が共通化される。そのため、TFT-RとTFT-Lとがそれぞれ独立した半導体層を有する場合と比べて、半導体層に起因するTFT間の特性ばらつきが減少する。また、TFT-RとTFT-Lとの物理的な距離が近いことから、半導体層以外に起因するTFT特性のばらつきが減少する。結果として、電気的特性の相互ばらつきが少ないTFTを形成することが可能となる。
【0035】
本実施の形態1に係るTFTを、半導体回路の中でアナログ回路といわれる回路への適用することにより、回路としての動作安定性や、歩留まり向上につなげることも可能となる。より具体的には、例えば、カレントミラー回路の基準電流生成部と電流ミラー部のTFTを同一の島状の半導体層内とすることや、差動増幅回路の差動入力部に使用するTFTを同一の島状の半導体層内とすることなどが挙げられる。
【0036】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係るTFTを模式的に示した概略平面図である。この実施の形態2に係るTFTは、ゲート電極201の幅が実施の形態1の場合に比べて小さいこと、およびソースもしくはドレインとなる電極の1つである電極112の、ゲート電極が走る方向の幅が小さいこと以外は、実施の形態1に係る構成と同様である。かかる構成により、本実施の形態2におけるTFT-Lのチャネル長およびチャネル幅は、実施の形態1におけるものとは異なる。このように、本発明の効果を得られる限りにおいて、2つのTFTを構成する各要素の形状、チャネル長、チャネル幅等が異なっていても良い。
【0037】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3に係るTFTを模式的に示した概略平面図である。この実施の形態3に係るTFTは、ソースもしくはドレインとなる電極110の、ゲート電極が走る方向の幅が小さいこと以外は
図1と同様の構成である。
【0038】
TFT-Rのチャネル幅は、ゲート電極200と電極110の接触面の長さと、ゲート電極200と電極111の接触面の長さとのうち小さい方の値となる。本実施の形態3の場合は、電極110とゲート電極200が接している辺の長さとなる。
【0039】
半導体層400の平面上の大きさは、チャネル幅のうちの最大値(最大チャネル幅Wm)に応じた大きさとすることが望ましい。本実施の形態3では、半導体層400の平面上の大きさは最大チャネル幅Wmを覆い尽くすことができる範囲で、かつ大きすぎることがない、適度な大きさである。
【0040】
2つのゲート電極間の距離のうちの最大値(最大距離dm)は、最大チャネル幅Wmより小さいことが好ましい。これにより、同一の島状の半導体層400内に所望のTFTを含めることが可能となり、TFT面積の縮小によるチップ面積の縮小および製造コストの低減が可能となる。
【0041】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4に係るTFTを模式的に示した概略平面図である。この実施の形態4は、ゲート電極201が折れ曲がりを有する場合以外は実施の形態3に係る構成と同様である。本実施の形態4では、折れ曲がりを有するゲート電極201を含む側のTFT(TFT-L)の最大チャネル幅Wmは、
図5中に示したように、チャネル領域301の左右の端部の長さのうち短い側(電極111もしくは電極112がそれぞれチャネル領域301と接する辺の長さの総和のうち短い側)となる。なお、
図5に示した例では、ゲート電極201が直角の折れ曲がりを有する場合を述べたが、直角に限定されるものではなく、所望の電気的特性や形状が得られる限りにおいてはその折れ曲がりの角度は限定しないとともに、折れ曲がり箇所の数も特に限定はしない。また、折れ曲がりは直線による角に限定されず、円弧やサイクロイド曲線状であってもよい。
【0042】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5に係るTFTを模式的に示した概略平面図である。この実施の形態5は、ゲート電極200および201、ソースもしくはドレインとなる電極110、111および112、ならびに島状の半導体層400の形状が異なる以外は実施の形態1と同様の構成である。
【0043】
本実施の形態5では、ゲート電極200と201が共に折れ曲がりを有し、また、半導体層400が楕円形状を有する。TFT-RとTFT-Lとを比較すると、チャネル幅はTFT-Lの方が長い。したがって最大チャネル幅Wmは
図6に図示されるとおりとなる。一方、上記2つのTFTのチャネル間の距離は、
図6にdmで示した箇所が最大値となる。よって本実施の形態5に係るTFTはWm>dmの関係を有し、面積効率が良く、結果チップ面積が小さく、製造コストが低減された半導体装置の提供が可能となる。なお、本実施の形態5では、ゲート電極が2個でTFTが2つ配置された場合を示したが、ゲート電極が3つ以上存在する場合であっても、それぞれのゲート電極が独立して所望の形状をとれば良く、それぞれのゲート電極同士の相関関係は特に限定しない。
【0044】
また半導体層400については、図面上下方向に楕円の長軸がある場合を示したが、ゲート電極やソース・ドレイン電極の形状、半導体層の塗布・印刷方法などにより適切な方法にて所望の範囲に半導体層が形成される限りにおいては、材料や形成方法は特に限定しないが、TFTのチャネルとなる領域をカバーし、円形に準じる形とすることで、製造コストの低減と半導体層の効率使用が実現できることから、より好ましい。
【0045】
(実施の形態6)
図8(a)は、本発明の実施の形態6に係る半導体装置のレイアウトを模式的に示した概略平面図である。
図8(b)は本構成を回路図で示したものである。
【0046】
この実施の形態6は、それぞれ2個のゲート電極と3個のソースまたはドレインとなる電極を有するマルチゲートTFTを2個用いてNANDゲートを構成したものである。2個のTFTは、それぞれp型TFT500、n型TFT510であり、CMOS回路を構成する。p型TFT500における2個のゲート電極は、互いに独立した電位を有する。n型TFT510においても同様に、2個のゲート電極は、互いに独立した電位を有する。
【0047】
p型TFT500およびn型TFT510を同一基板上に作製する方法は特に限定しないが、例として半導体材料に直接不純物を加える方法、イオン注入やドーピングペーストにより不純物を注入・拡散する方法、オーバーコート材によりチャネル領域を覆ってキャリアとなる材料を導入する方法が知られている。特にオーバーコート材によるキャリア導入を行うことは、低温プロセスを適用しやすい点、真空プロセスが不要になる点などから、ロールツーロールへの適用が容易となり、より好ましい。
【0048】
本実施の形態6では、TFT2個と配線との接続により半導体装置が構成されている点、およびp型TFTとn型TFTを同一基材上に形成する点を除いては、実施の形態1と同様である。TFTの構成は、実施の形態2~5のいずれかに示す形態であってもよい。また、所望の電気的特性を確保できる限りにおいては、ゲート電極、ソースまたはドレインとなる電極の形状は限定されない。
【0049】
p型TFT500において、片方のゲートは入力1である配線530に接続され、もう片方のゲートは入力2である配線531に接続される。入力1および入力2の配線はそれぞれ独立した電位により制御される。3個のドレインまたはソースとなる電極のうち、2つのゲート電極に挟まれる1つのドレイン電極は2個のチャネルの共通端子であり、出力である配線536に接続される。その他2個のソース電極は、どちらも電源である配線540に接続される。
【0050】
n型TFT510において、片方のゲートは入力1である配線530に接続され、もう片方のゲートは入力2である配線531に接続される。入力1および入力2の配線はそれぞれ独立した電位により制御される。3個のドレインまたはソースとなる電極のうち、1つのドレイン電極は出力である配線536に接続される。2つのゲート電極に挟まれる1つのソースまたはドレインとなる電極は2個のチャネルの共通端子であって、出力側チャネルのソース、GND側チャネルのドレインとなる。残りの1つのソース電極はGNDである配線545に接続される。
【0051】
上記の如き構成とすることにより、p型TFTチャネル2個の並列接続およびn型TFTチャネル2個の直列接続を有する、2入力1出力のNANDゲート回路が形成される。
【0052】
図9(a)は、従来の方式との比較のために、
図8(a)と電気的に同等となる回路を1つのゲート電極と2つのソースまたはドレインとなる電極のみを持つシングルゲートTFTを用いて形成したレイアウトを模式的に示した概略平面図である。回路図は
図9(b)であり、これはマルチゲートTFTを用いた場合の
図8(b)と同一である。
図9(a)に示す従来の形態においては、p型半導体層とn型半導体層がそれぞれ2個ずつ配置され、p型TFT501と502のソース電極はどちらも電源電極541に、ドレイン電極はどちらも出力電極537に接続され、n型TFT511のソース電極はGND電極546に、n型TFT512のドレイン電極は出力電極537に接続される。n型TFT511のドレイン電極とn型TFT512のソース電極は共通端子として配線538に接続される。したがって、p型TFT501、502のソース電極およびドレイン電極は並列の構成に、n型TFT511、512のソース電極およびドレイン電極は直列の構成になる。
【0053】
ここで、
図8(a)と
図9(a)は論理的に等価な回路構成であるが、本例おけるTFTと周辺の配線を合わせた面積は、
図8(a)では
図9(a)の半分以下となり、マルチゲートTFTを用いることで回路面積を大きく削減することができる。また、半導体層そのものの面積も半分となることから、基材や半導体層の材料コストを大きく低減できる。さらに、集積化による半導体装置の取れ数の増加、製造装置の小型化などの観点からも、マルチゲートTFTを用いた回路構成が有利である。さらに、直列接続においては共通電極の配線引き回しが不要になるため、配線レイアウトの設計自由度を高める観点からも好ましい。
【0054】
本実施の形態6ではNAND回路の例を示したが、半導体装置中の少なくとも1つ以上のTFTが2個以上のゲート電極と3個以上のソースまたはドレイン電極を含み、かつゲート電極のうち少なくとも2つの電位が、それぞれ独立に制御される限りにおいて、回路構成は特に限定されない。例えば、NOR回路やインバータ回路、クロックドインバータ回路、フリップフロップ回路、およびその複合ゲートなどが挙げられる。
【0055】
なお、本実施の形態6について、入出力電極の例として、電源配線、GND配線、入力1、入力2、出力の端子を挙げたが、回路として所望の電気的特性が得られる限りにおいて、各入出力電極の接続先は限定されるものではない。例えば、電源配線、GND配線はそれぞれGND配線、負電源配線と置き換えることもできる。
【0056】
(実施の形態7)
図10(a)は本発明の実施の形態7に係る半導体装置のレイアウトを模式的に示した概略平面図である。また、
図10(b)は本形態の半導体装置および周辺回路の回路図であり、カレントミラー回路590が本実施の形態7に係る半導体装置、すなわち
図10(a)の半導体装置と対応する。電源ライン600、電流源601、負荷R
L602は、本実施の形態7に係る半導体装置を制御する周辺回路部品である。
【0057】
この実施の形態7は、2個のゲート電極と、3個のソースまたはドレインとなる電極とを有するp型TFTを用いて、1出力のカレントミラー回路を構成したものである。
【0058】
本実施の形態7では、TFT2個と配線との接続により半導体装置が構成されていることを除いては、実施の形態1と同様である。TFTの構成はこれに限定されるものではなく、実施の形態2~5のいずれかに示す形態であってもよい。
【0059】
p型TFT503において、1組の隣り合う2個のゲート電極は、共通の電気的配線である配線580により電気的に接続されている。2つのゲート電極間に挟まれるソース電極は共通電極である。なお、共通電極とは、1つの電気的配線によって、TFTのチャネル2個以上のソースまたはドレイン電極を兼ねる電極である。両チャネルの外側の2個のドレイン電極は互いに異なる電気的配線に接続されている。また、そのうち一方のドレイン電極は、ダイオード接続を構成するために層間ビア550を通じてゲート電極の配線に接続される。
【0060】
上記の如き構成とすることにより、p型TFTチャネル2個を用いたカレントミラー回路となる。このカレントミラー回路の共通電極を電源配線542に接続、ダイオード接続側のドレイン電極を入力である配線570を介して電流源601に接続し、出力である配線571を負荷602を介してGND配線に接続することで、電流源601の電流が負荷電流にミラーリングされる。この時のTFTのオン電流560は、TFTのチャネル2か所において、共にソース電極からドレイン電極、すなわち共通ソース電極から外側のドレイン電極に向かって流れる。
【0061】
本実施の形態7で示したカレントミラー回路や、差動対回路のように、2個のチャネルの相対ばらつきが小さい必要がある回路を作製する際には、マルチゲートTFT上の複数のチャネルを使用することが、半導体層の粒子径、膜厚、ネットワーク構造に起因するばらつきや、チャネル長、チャネル幅に代表される加工精度の位置的なばらつきを抑制する観点から好ましい。
【0062】
本実施の形態7ではp型TFTチャネル2個を用いたカレントミラー回路の例を示したが、n型TFTを用いても同様のカレントミラー回路を構成することができる。この場合、TFTのチャネルを流れるオン電流の向きはp型TFTの場合とは逆になり、ドレイン電極からソース電極、すなわち外側のドレイン電極から共通ソース電極に向かって流れる。
【0063】
(実施の形態8)
図11(a)は本発明の実施の形態8に係る半導体装置のレイアウトを模式的に示した概略平面図である。また、
図11(b)は本実施の形態8に係る半導体装置および周辺回路の回路図であり、カレントミラー回路591が本実施の形態8に係る半導体装置、すなわち
図11(a)の半導体装置と対応する。電源ライン603、電流源604、負荷R
L605~606は、本実施の形態8に係る半導体装置を制御する周辺回路部品である。
【0064】
この実施の形態8は、6個のゲート電極と、7個のソースまたはドレインである電極を有するp型マルチゲートTFT504とを用いて、2出力のカレントミラー回路を構成したものである。
【0065】
本実施の形態8では、カレントミラー元になるTFTのチャネルとカレントミラー先となるTFTのチャネルとが、それぞれチャネル2個分の並列接続となること、カレントミラー先が2個の出力となることを除いては、実施の形態7と同様である。
【0066】
p型TFT504において、6個のゲート電極は全て配線581により電気的に接続されており、隣り合う2つのゲート電極間に挟まれるドレインまたはソースとなる電極はそれぞれ共通電極である。ドレインとなる共通電極は3個あり、それぞれ入力となる配線572、出力1となる配線573、出力2となる配線574に接続される。これらのドレイン電極は互いに直接接続されておらず、電気的に独立である。また、入力となる配線572に接続されるドレイン電極は、ダイオード接続を構成するために層間ビア551を通じてゲート電極の配線581にも接続される。
【0067】
ソースとなる電極は、共通電極として2個とチャネルの両外側に単独で2個、合わせて4個あり、全て電源配線543に接続される。
【0068】
上記の如き構成とすることにより、p型TFTチャネル6個を用いたカレントミラー回路となる。入力である配線572を電流源に接続し、出力1、出力2である配線573、574を、それぞれ負荷605、606を介してGND配線に接続することで、電流源604の電流が負荷電流にミラーリングされる。この時のTFTのオン電流561は、TFTのチャネル2か所において、共にソース電極からドレイン電極、すなわち共通ソース電極から外側のドレイン電極に向かって流れる。
【0069】
本実施の形態8ではp型TFTチャネル6個を用いたカレントミラー回路の例を示したが、n型TFTを用いても同様のカレントミラー回路を構成することができる。この場合、TFTのチャネルを流れるオン電流の向きはp型TFTの場合とは逆になり、ドレイン電極からソース電極、すなわち外側のドレイン電極から共通ソース電極に向かって流れる。
【0070】
(実施の形態9)
図12(a)は本発明の実施の形態9に係る半導体装置のレイアウトを模式的に示した概略平面図である。また、
図12(b)は本実施の形態9に係る半導体装置および周辺回路の回路図であり、カスコード型のカレントミラー回路592が本実施の形態9に係る半導体装置、すなわち
図12(a)の半導体装置と対応する。電源ライン607、電流源608、負荷R
L609は、本形態の半導体装置を制御する周辺回路部品である。この実施の形態9は、4個のゲート電極と、5個のソースまたはドレイン電極を有するp型マルチゲートTFT505とを用いて、1出力のカスコード型のカレントミラー回路を構成したものである。
【0071】
本実施の形態9では、カレントミラー元になるTFTのチャネルとカレントミラー先となるTFTのチャネルが、それぞれチャネル2個分の直列接続であることを除いては、実施の形態7と同様である。
【0072】
p型TFT505において、4個のゲート電極のうち、外側の2本は配線582により電気的に接続されており、内側の2本は配線583により電気的に接続される。
【0073】
内側の配線583に接続される2つの隣り合うゲート電極間に挟まれるソース電極は共通電極であり、電源配線544に接続される。外側のゲート電極と内側のゲート電極に挟まれる電極2つはそれぞれ共通電極であり、内側のゲート電極が作るチャネルのドレイン電極と、外側のゲート電極とが作るチャネルのソース電極である。これらの2つの電極は電気的に独立しており、異なる電位を持つ。このうち、カレントミラー元となる側は、ダイオード接続を構成するため、配線ビア553および配線583を通じて内側の2個のゲート電極に接続される。
【0074】
最も外側にある2つの電極は、それぞれ外側のゲート電極が作るチャネルのドレイン電極であり、カレントミラー元となる側の電極は入力配線575に、カレントミラー先となる側の電極は出力配線576に接続される。また、カレントミラー元となる側の電極は、ダイオード接続を構成するため、配線ビア552および配線582を通じて外側の2個のゲート電極に接続される。
【0075】
上記の如き構成とすることにより、p型TFTチャネル4個を用いたカスコード型のカレントミラー回路となる。入力となる配線575を電流源に接続し、出力となる配線576を負荷を介してGND配線に接続することで、電流源の電流が負荷電流にミラーリングされる。この時のTFTのオン電流562は、内側のTFTチャネル2か所において、共にソース電極からドレイン電極、すなわち共通ソース電極から外側のドレイン電極に向かって流れる。
【0076】
本実施の形態9ではp型TFTチャネル4個を用いたカレントミラー回路の例を示したが、n型TFTを用いても同様のカレントミラー回路を構成することができる。この場合、TFTのチャネルを流れるオン電流の向きはp型TFTの場合とは逆になり、ドレイン電極からソース電極、すなわち外側のドレイン電極から共通ソース電極に向かって流れる。
【0077】
<薄膜トランジスタの製造方法>
次に、本発明の実施の形態に係るTFTの製造方法について、実施の形態1に係る半導体装置を製造する方法を例にして、
図7を用いて詳細に説明する。
【0078】
まず、
図7(a)に示すように、PETフィルムからなる基材10に、ゲート電極200およびゲート電極201となる、例えば金属を成膜し、レジスト塗布、露光、現像、エッチングと、いわゆるフォトリソプロセスを用いて、所望の形状に加工する。なお、ゲート電極200およびゲート電極201の材料や成膜方法、フォトリソの各工程の詳細条件は、所望の形状が得られる限りにおいては、特に限定しない。
【0079】
次に、
図7(b)に示すように、ゲート絶縁層50となる絶縁膜を成膜する。ゲート絶縁層50においても、特に材料・成膜方法は問わないが、例えば、塗布による成膜を行うことで、安価に製造できるメリットを有する。なお、ゲート絶縁層50は、半導体素子部のみ残るように、例えばフォトリソプロセスを用いて加工してもよいし、加工せず、全面にゲート絶縁層が残ったままとしてもよい。ただし、本製造方法例では省略するが、いずれかの工程において、ゲート電極200およびゲート電極201への電気的接続を行うための工程は必要となる。
【0080】
続いて、
図7(c)に示すように、ソース電極もしくはドレイン電極110、111、112を成膜し、例えば、前述のフォロリソプロセスを用いて、所望の形状に加工する。ここでも、例えば、電極材料として塗布可能な材料を用いることで、より安価に製造できるメリットを有するが、材料、成膜方法、加工方法は、所望の形状および特性が得られる限りにおいては、特に限定しない。
【0081】
次に、
図7(d)に示すように、半導体層を形成する。なお、半導体層は、塗布法により形成することで形成すべき領域にのみ半導体層を形成することが可能となる。塗布法としては、具体的にはインクジェット方式、ノズル塗布方式、スクリーン印刷方式、オフセット印刷方式、ドロップキャスト塗布方式が挙げられるが、特定の領域に、必要最低限の半導体層の領域を形成するにあたっては、インクジェット方式が好ましい。
【0082】
インクジェット法による半導体層の形成を行う場合、半導体層の塗布・印刷は、必要に応じて溶媒などを追加した半導体材料を含む半導体インクをインクジェットヘッドから吐出することにより行う。この際、吐出された半導体インクは、着地する地点の表面エネルギーや半導体インクの粘度、インクジェットヘッドの動作スピードなど様々な要素により形状が変化することとなる。製造プロセスの制御性の観点からは、半導体層の形状はTFT間において比較的均一であることが望ましく、半導体インクの着地によって形成される半導体層は半導体インクの液滴の平面投影形状に近いことが好ましい。
【0083】
本製造方法の例ではソース電極やドレイン電極を形成した後に半導体を形成しているが、ソース電極やドレイン電極を形成する前に半導体層を形成してもよく、この順序は特に限定しない。
【0084】
製造プロセスの温度は特に限定されるものではないが、形成される薄膜トランジスタにおいて所望の電気的特性や形状が得られる限りにおいては、ロールツーロールや塗布プロセスの適用容易性という観点から、できる限り低温であることが望ましい。特にプロセス温度を200℃以下とすることで、PETやPP(ポリプロピレン)などの安価でフレキシブル性の高い基材を適用することが可能となる。なお、ここでの製造プロセスの温度とは、製造時に基材および薄膜トランジスタが形成される領域における最高温度を指す。また、基材のガラス転移温度が200℃以下であることが好ましい。前記ガラス転移温度は、熱機械分析(TMA)法によって分析される。
【0085】
以上により、本発明の実施の形態1に示した構成でのTFTや、そのTFTを用いたチップの製造が可能となり、TFT面積が小さいことによりチップ面積が小さく、安価な製造コストで高機能あるいは高性能な回路を実現できる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の実施例の一つを具体的に示す。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0087】
<実施例1>
(1)半導体溶液の作製
純度が95%のCNT1(CNI社製、単層CNT)を1.5mgと、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を1.5mgとを、30mlの水中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザーを用いて、出力を250Wとして3時間超音波撹拌し、溶媒に対するCNT複合体濃度が0.05g/lのCNT複合体分散液を得た。得られたCNT複合体分散液を、遠心分離機(日立工機社製、CT15E)を用いて、21000Gで30分間遠心分離した後、上澄みの80体積%を取り出すことによって半導体溶液Aを得た。
【0088】
(2)ゲート絶縁層材料の作製
メチルトリメトキシシラン(以下、MTMSiという)を61.29g(0.45mol)、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(以下、β-EpETMSiという)を12.31g(0.05mol)、およびフェニルトリメトキシシラン(以下、PhTMSiという)を99.15g(0.5mol)用いて、203.36gの容量の沸点が170℃のプロピレングリコールモノブチルエーテルに溶解させた。これに、水を54.90g、リン酸を0.864g、撹拌しながら加えた。得られた溶液を、バス温を105℃として2時間加熱し、内温を90℃まで上昇させて、主として副生するメタノールからなる成分を留出した。次に、バス温を130℃として2.0時間加熱し、内温を118℃まで上昇させて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度が26.0質量%のゲート絶縁層材料Aを得た。
【0089】
(3)半導体素子の作製
本例では、実施の形態1で示したように、2個のゲート電極および3個のソースまたはドレインとなる電極を含み、1チャネルあたりL/W=10/1200umとなるマルチゲートTFTを作製した。
【0090】
厚さ1mmのガラス製基板を用い、抵抗加熱法により、厚さ100nmのアルミニウム薄膜を真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスピンコート塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10分加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製PLA-501F)を用いて、マスクを介してパターン露光した後、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM-D(商品名、三菱ガス化学(株)製)で30秒間撹拌しながら現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学(株)製)で6分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)に2分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することでゲート電極を形成した。
【0091】
その後、ゲート絶縁層となるゲート絶縁層材料Aを基板上に滴下し、スピンコーターで200rpm/5秒間回転の後、700rpm/15秒間回転させることにより均一に塗布し、一定の熱処理を加えるアニール処理を加えることで絶縁層を硬化させ、厚さ350nmのゲート絶縁層を得た。更に、パラレルライトマスクアライナーを用いて、マスクを介してパターン露光した後、所定の位置のゲート絶縁層をELM-Dで40秒ディップ現像し、水で30秒洗浄することでコンタクトホール部分の電極を露出させた。
【0092】
次に、抵抗加熱法により、厚さ60nmの金薄膜を真空蒸着した。その上にフォトレジストをスピンコート塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10分加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜を、パラレルライトマスクアライナーを用いて、マスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD-2000)を用いてELM-Dで30秒間撹拌しながら現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、AURUM-302(商品名、関東化学(株)製)で6分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。AZリムーバ100に2分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することでソース電極、ドレイン電極を形成した。
【0093】
次に、CNTを含む半導体溶液A 1μLをインクジェット法によりソース電極とドレイン電極の間に滴下し、30℃で10分風乾した後、ホットプレート上で窒素気流下、150℃、30分の熱処理を行い、p型FETの半導体層およびn型FETの半導体層を形成した。
【0094】
以上の工程を経て、2個のゲート電極と、3個のソースまたはドレインとなる電極とを含む半導体素子を同一条件で3基板、合計21対作製した。1対における素子面積は直径360μmの円形にあたる101736平方μmであり、これをチャネル長W=1200μmで割ると、チャネル長1μmあたりの長さは84.78μmとなる。
【0095】
(4)半導体素子の評価
本素子中の2つのチャネル部分それぞれにおけるTFTのVg(ゲート電圧)-Id(ドレイン電流)特性を、半導体パラメータアナライザ(Keysight Technology社製 B1500A)を用いて測定し、2つのTFTの特性差について評価を行った。
【0096】
21対の相対ばらつきを10%単位の度数分布としたとき、累積度数分布が90%を超えるばらつきの値は+110%であり、最大ばらつきは+160%であった。
【0097】
なお、ここでの相対ばらつきの値は、ゲート電圧Vg=5V、ドレイン電流Vd=5Vにおけるドレイン電流Idの値について、2個のTFTにおける値の大きい側を値の小さい側で割った値をパーセンテージ表示としたものである。
【0098】
<比較例1>
実施例1に示した基板と同一の基板3枚に、1個のゲート電極と2個のソースまたはドレインとなる電極を含み、1チャネルあたりL/W=10/1400umとなるシングルゲートTFTを合計19個作製した。本比較例1において、特に明確な差異を記載しない項目においては、実施例1と同一である。
【0099】
1対における素子面積は直径300μmの円形2個分にあたる141300平方μmであり、これをチャネル長W=1400μmで割ると、チャネル長1μmあたりの長さは100.94umとなる。
【0100】
これらの19個の半導体素子について、それぞれTFTのVg-Id特性を半導体パラメータアナライザ(Keysight Technology社製 B1500A)を用いて測定し、物理的配置が隣接している2個の半導体素子15対について、2つのTFTの特性差について評価を行った。
【0101】
21対の相対ばらつき10%単位の度数分布としたとき、累積度数分布が90%を超えるばらつきの値、および最大ばらつきは共に+500%超であった。
【0102】
実施例1と比較例1におけるチャネル長1μmあたり長さの比より、18.2%の面積効率の向上が得られた。さらに隣接TFTにおける相対ばらつきも、実施例1の結果が比較例1より優れた結果であることが示された。
【符号の説明】
【0103】
10 基材
50 ゲート絶縁層
110、111、112 ソースもしくはドレイン電極
200、201 ゲート電極
300、301 チャネル領域
400 半導体層
Wm TFTのチャネル幅最大値
dm TFTのチャネル間スペースの最大値
500、503、504、505 マルチゲートp型TFT
501、502 シングルゲートp型TFT
510 マルチゲートn型TFT
511、512 シングルゲートTFT
580、581、582、583 ゲート配線
571、572、575 入力配線
530、532 入力1配線
531,533 入力2配線
536、537、576 出力配線
538 配線
573 出力1配線
574 出力2配線
540、541、542、543、544 電源配線
545、546 GND配線
550、551、552、553 層間ビア
560、561、562 チャネルオン電流
590、591 カレントミラー回路
592 カスコード型カレントミラー回路
600、603、607 電源ライン
601、604、608 電流源
602、605、606、609 負荷