(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20240409BHJP
F16H 57/023 20120101ALI20240409BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H57/023
B60T1/06 G
(21)【出願番号】P 2020028402
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 聡
(72)【発明者】
【氏名】北岡 圭史
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-72226(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098938(WO,A1)
【文献】特開2012-35757(JP,A)
【文献】特許第5739936(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
F16H 57/023
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースに回転自在に支持され、互いに平行に設置される少なくとも第1の回転軸、第2の回転軸および第3の回転軸と、前記変速機ケースに収容されたパーキングロック機構とを備え、
前記パーキングロック機構が、
歯部を有し、前記第1の回転軸と一体で回転するように前記第1の回転軸に設けられたパーキングギヤと、
前記歯部に噛み合う爪部を有し、前記変速機ケースに揺動自在に支持されるパーキングポールと、
カム部材を有し、前記第1の回転軸の軸方向に移動自在に設けられたパーキングロッドと、
前記パーキングロッドの軸方向への移動に伴って前記カム部材が乗り上げることにより、前記爪部が前記歯部に噛み合うように前記パーキングポールを揺動させるサポート部材とを備えた車両用変速機であって、
前記第1の回転軸の軸方向から見た場合に、前記第3の回転軸は、前記第2の回転軸の
前斜め上方に設置され、
前記第1の回転軸は、前記第2の回転軸の後ろ斜め上方に設置されており、
前記パーキングロッドは、前記第2の回転軸の側方で、かつ、前記第3の回転軸の下方の空間において前記第1の回転軸の軸方向に沿って設置されて
おり、
前記パーキングポールは、その前端部が前記カム部材に当接し、その後端部が前記パーキングギヤに噛み合うように、前記第1の回転軸の軸方向から見た場合に、前記第2の回転軸の前側から後側に渡って前後方向に延びていることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記第2の回転軸と前記第3の回転軸は、それぞれ複数のギヤを備えており、
前記パーキングギヤは、前記第1の回転軸の軸方向の一端部に取付けられており、
前記パーキングロッドは、前記第1の回転軸の軸方向の他端部側から一端部側に延びる第1のパーキングロッド部と、前記第1のパーキングロッド部に屈曲部を介して連絡され、前記屈曲部から前記第1の回転軸の一端部側に延びる第2のパーキングロッド部とを有し、
前記屈曲部は、前記第1の回転軸の軸方向と直交する方向で前記第2のパーキングロッド部が前記第1のパーキングロッド部よりも前記第2の回転軸側または前記第3の回転軸側に位置するように屈曲しており、
前記第1の回転軸の軸方向から見た場合に、前記第2のパーキングロッド部は、前記第2の回転軸に設けられた最大径のギヤと軸方向で対向するようにして前記第1の回転軸の軸方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用変速機は、車両の停止時に車両用変速機の回転軸を機械的にロックし、車両が前後方向に移動しないように停車状態を維持させるパーキング機構を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されるパーキング機構は、車両用変速機(自動変速機)の中間軸に固定されるパーキングギヤと、パーキングギヤの付近に揺動自在に固定されるパーキングポールと、一端で複数のディテントが刻設されると共に、他端でコントロールシャフト に揺動自在に連結されるディテントレバーとを備えている。
【0004】
さらに、パーキング機構は、一端でディテントレバーに接続され、他端にコーンを備えるコーンレバー(パーキングロッド)と、シャフトと、ディテントレバーのディテントに係合して保持するディテントスプリングとを備えている。コーンレバーは、中間軸の径方向外方で、かつ、中間軸の端部から中間軸の軸方向外方に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のパーキング機構にあっては、コーンレバーが中間軸の径方向外方で、かつ、中間軸の端部から中間軸の軸方向外方に延びているので、中間軸と直交する方向で、かつ、中間軸の軸方向外方にパーキング機構を設置する空間が必要になる。このため、車両用変速機が中間軸の軸方向および軸方向と直交する方向に大型化するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、回転軸に対するパーキングロッドの設置位置を工夫することにより、回転軸の軸方向および軸方向と直交する方向に大型化することを防止できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、変速機ケースに回転自在に支持され、互いに平行に設置される少なくとも第1の回転軸、第2の回転軸および第3の回転軸と、前記変速機ケースに収容されたパーキングロック機構とを備え、前記パーキングロック機構が、歯部を有し、前記第1の回転軸と一体で回転するように前記第1の回転軸に設けられたパーキングギヤと、前記歯部に噛み合う爪部を有し、前記変速機ケースに揺動自在に支持されるパーキングポールと、カム部材を有し、前記第1の回転軸の軸方向に移動自在に設けられたパーキングロッドと、前記パーキングロッドの軸方向への移動に伴って前記カム部材が乗り上げることにより、前記爪部が前記歯部に噛み合うように前記パーキングポールを揺動させるサポート部材とを備えた車両用変速機であって、前記第1の回転軸の軸方向から見た場合に、前記第3の回転軸は、前記第2の回転軸の前斜め上方に設置され、前記第1の回転軸は、前記第2の回転軸の後ろ斜め上方に設置されており、前記パーキングロッドは、前記第2の回転軸の側方で、かつ、前記第3の回転軸の下方の空間において前記第1の回転軸の軸方向に沿って設置されており、前記パーキングポールは、その前端部が前記カム部材に当接し、その後端部が前記パーキングギヤに噛み合うように、前記第1の回転軸の軸方向から見た場合に、前記第2の回転軸の前側から後側に渡って前後方向に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、回転軸に対するパーキングロッドの設置位置を工夫することにより、車両用変速機が回転軸の軸方向および軸方向と直交する方向に大型化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を左前斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の平面図であり、ライトケースおよびレフトケースを仮想線で示している。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図であり、パーキングカバーを取り外した状態を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図であり、レフトケースを取り外した状態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の動力伝達系の展開図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースの右側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースの下面図であり、レフトケースを仮想線で示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、変速機ケースに回転自在に支持され、互いに平行に設置される少なくとも第1の回転軸、第2の回転軸および第3の回転軸と、変速機ケースに収容されたパーキングロック機構とを備え、パーキングロック機構が、歯部を有し、第1の回転軸と一体で回転するように第1の回転軸に設けられたパーキングギヤと、歯部に噛み合う爪部を有し、変速機ケースに揺動自在に支持されるパーキングポールと、カム部材を有し、第1の回転軸の軸方向に移動自在に設けられたパーキングロッドと、パーキングロッドの軸方向への移動に伴ってカム部材が乗り上げることにより、爪部が歯部に噛み合うようにパーキングポールを揺動させるサポート部材とを備えた車両用変速機であって、第1の回転軸の軸方向から見た場合に、第3の回転軸は、第2の回転軸の斜め上方に設置されており、パーキングロッドは、第2の回転軸の側方で、かつ、第3の回転軸の下方の空間において第1の回転軸の軸方向に沿って設置されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、回転軸に対するパーキングロッドの設置位置を工夫することにより、回転軸の軸方向および軸方向と直交する方向に大型化することを防止できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から
図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
図1から
図8において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1において、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1と、エンジン1に連結される変速機2とが設けられている。エンジン1の出力は、変速機2から図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の車輪に伝達される。
【0015】
図2、
図3、
図5に示すように、変速機2は、変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、ライトケース4およびライトケース4に図示しないボルトによって連結されるレフトケース5を備えている。本実施例の変速機2は、本発明の車両用変速機を構成する。
【0016】
図5に示すように、ライトケース4とレフトケース5は、エンジン1に対向する面が開口している。ライトケース4は、エンジン1に対向する左側面に隔壁4Aが形成されている。変速機ケース3の内部は、隔壁4Aによってライトケース4の内部の空間とレフトケース5の内部の空間とに仕切られている。
【0017】
レフトケース5は、車幅方向において隔壁4Aに対向する左側壁5Aを有し(
図3参照)、レフトケース5の底部には潤滑用のオイルO(
図4参照)が貯留されている。
【0018】
ライトケース4の隔壁4Aより右側の内部には図示しないクラッチが収容されている。
図2、
図5に示すように、ライトケース4の隔壁4Aよりも左側の内部およびレフトケース5の内部には変速機構6およびディファレンシャル装置17が収容されている。
【0019】
変速機2は、エンジン1の動力を変速機構6に入力し、図示しないシフタ軸の作動により変速機構6において動力(回転速度)の変速を行い、変速された動力をディファレンシャル装置17により、ドライブシャフト18L、18R(
図6参照)に伝達する。
【0020】
図6に示すように、変速機構6は、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15を有する。
【0021】
主入力軸11は、1速段用の入力ギヤ11A、2速段用の入力ギヤ11B、3速/5速段用の入力ギヤ11Cおよび4速/6速段用の入力ギヤ11Dを有し、これら入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dは、主入力軸11に固定されている。
【0022】
カウンタ軸14は、1速段用のカウンタギヤ14A、2速段用のカウンタギヤ14B、5速段用のカウンタギヤ14C、6速段用のカウンタギヤ14D、リダクションドリブンギヤ14E、前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよびパーキングギヤ14Gを有する。
【0023】
各カウンタギヤ14Aからカウンタギヤ14Dは、カウンタ軸14と相対回転自在となっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11Aから入力ギヤ11Dに噛み合っている。パーキングギヤ14Gは、カウンタ軸14の左端部14f(一端部)に取付けられており、カウンタ軸14と一体で回転する。
【0024】
アイドル軸12は、3速段用のアイドルギヤ12A、4速段用のアイドルギヤ12Bおよびリダクションドライブギヤ12Cを有する。3速段用のアイドルギヤ12Aおよび4速段用のアイドルギヤ12Bは、アイドル軸12と相対回転自在となっており、それぞれ同じ変速段を構成する入力ギヤ11C、11Dに噛み合っている。
【0025】
副入力軸13は、リダクションドリブンギヤ13A、リダクションドライブギヤ13Bおよびダンパ機構16を有する。リダクションドリブンギヤ13Aは、リダクションドライブギヤ12Cに噛み合っており、リダクションドライブギヤ13Bは、リダクションドリブンギヤ14Eに噛み合っている。
【0026】
リダクションドライブギヤ13Bは、リダクションドリブンギヤ13Aよりも大径に形成されている。すなわち、副入力軸13に設けられたギヤの中でリダクションドライブギヤ13Bが最大径のギヤを構成している。
【0027】
後進軸15は、後進ギヤ15Aおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bを有する。後進ギヤ15Aは、1速段用のカウンタギヤ14Aに噛み合っており、後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
【0028】
カウンタ軸14には同期装置31が設けられており、同期装置31は、シフト操作によって変速段が1速段または2速段にシフトされると、1速段用のカウンタギヤ14Aまたは2速段用のカウンタギヤ14Bをカウンタ軸14に連結する。
【0029】
カウンタ軸14には同期装置32が設けられている。同期装置32は、シフト操作によって変速段が5速段または6速段にシフトされると、5速段用のカウンタギヤ14Cまたは6速段用のカウンタギヤ14Dをカウンタ軸14に連結する。
【0030】
アイドル軸12には同期装置33が設置されている。同期装置33は、シフト操作によって変速段が3速段または4速段にシフトされると、3速段用のアイドルギヤ12Aまたは4速段用のアイドルギヤ12Bをアイドル軸12に連結する。
【0031】
後進軸15には同期装置34が設置されている。シフト操作によって後進段にシフトされると、同期装置34は、後進ギヤ15Aを後進軸15に連結する。
【0032】
前進用のファイナルドライブギヤ14Fおよび後進用のファイナルドライブギヤ15Bは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
【0033】
これにより、変速段に応じてエンジン1からカウンタ軸14に直接伝達される動力、または、エンジン1から主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13を経てカウンタ軸14に伝達される動力は、前進用のファイナルドライブギヤ14Fからディファレンシャル装置17に伝達される。
【0034】
また、エンジン1から主入力軸11およびカウンタ軸14を経て後進軸15に伝達される動力は、後進用のファイナルドライブギヤ15Bからディファレンシャル装置17に伝達される。
【0035】
図2に示すように、ディファレンシャル装置17は、左側壁5Aに対して隔壁4A側に設置されており、右側の部分がライトケース4に入り込んでいる。
【0036】
図2、
図6に示すように、ディファレンシャル装置17は、ファイナルドリブンギヤ17Aと、ファイナルドリブンギヤ17Aが外周部に取付けられたデフケース17Bと、デフケース17Bに内蔵された差動機構17Cとを有する。
【0037】
デフケース17Bの左端部には筒状部17aが設けられており、デフケース17Bの右端部には筒状部17bが設けられている。筒状部17a、17bには左右のドライブシャフト18L、18Rのそれぞれの一端部が挿通されている。
【0038】
左右のドライブシャフト18L、18Rの一端部は、差動機構17Cに連結されており、左右のドライブシャフト18L、18Rの他端部は、それぞれ図示しない左右の駆動輪に連結されている。
【0039】
ディファレンシャル装置17は、エンジン1の動力を差動機構17Cによって左右のドライブシャフト18L、18Rに分配して伝達し、左右のドライブシャフト18L、18Rから駆動輪に伝達する。
【0040】
図7に示すように、左側壁5Aには軸受支持部5B、5C、5D、5E、5Fが設けられている。
【0041】
図6に示すように、主入力軸11の一端部側は、軸受22Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。主入力軸11の他端部は、軸受22Bを介して左側壁5A(
図7参照)に回転自在に支持されている。
【0042】
アイドル軸12の一端部は、軸受23Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。アイドル軸12の他端部は、軸受23Bを介して軸受支持部5C(
図7参照)に回転自在に支持されている。
【0043】
副入力軸13の一端部は、軸受24Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。副入力軸13の他端部は、軸受24Bを介して軸受支持部5D(
図7参照)に回転自在に支持されている。
【0044】
カウンタ軸14の一端部は、軸受25Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。カウンタ軸14の他端部は、軸受25Bを介して軸受支持部5E(
図7参照)に回転自在に支持されている。
【0045】
後進軸15の一端部は、軸受26Aを介して隔壁4Aの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。後進軸15の他端部は、軸受26Bを介して軸受支持部5F(
図7参照)に回転自在に支持されている。
【0046】
図4、
図7において、主入力軸11の軸方向から見た場合に、主入力軸11(軸受支持部5B)は、アイドル軸12の後側斜め上方に設置されている。副入力軸13(軸受支持部5D)は、アイドル軸12(軸受支持部5C)の後側で、かつ、主入力軸11の下方に設置されており、アイドル軸12に対して後側斜め下方に位置している。換言すれば、アイドル軸12は、副入力軸13の前側斜め上方に設置されている。
【0047】
カウンタ軸14(軸受支持部5E)は、アイドル軸12の後方で、かつ、上下方向で主入力軸11と副入力軸13の間に設置されている。後進軸15(軸受支持部5F)は、カウンタ軸14の後斜め上方に設置されており、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13およびカウンタ軸14よりも上方に設置されている。
【0048】
本実施例のカウンタ軸14は、本発明の第1の回転軸を構成する。副入力軸13は、本発明の第2の回転軸を構成し、アイドル軸12は、本発明の第3の回転軸を構成する。本実施例のアイドルギヤ12A、12B、リダクションドライブギヤ12C、リダクションドリブンギヤ13Aおよびリダクションドライブギヤ13Bは、本発明のギヤを構成する。
【0049】
さらに、軸11から軸15と、これら軸11から軸15に設けられた上述したギヤと、同期装置31、32、33とは、エンジン1の動力(回転速度)を変速する変速機構6を構成する。
【0050】
図7に示すように、軸受支持部5Bの上部には切り欠き5bが形成されており、切り欠き5bは、軸受支持部5Bの内部と外部とを連通している。軸受支持部5Cの上部には切り欠き5cが形成されており、切り欠き5cは、軸受支持部5Cの内部と外部とを連通している。
【0051】
軸受支持部5Bと軸受支持部5Eには切り欠き5mが形成されている。具体的には、軸受支持部5Eの前斜め上部と、軸受支持部5Bの後斜め下部と、軸受支持部5Eの前斜め上部と軸受支持部5Bの後斜め下部の間には切り欠き5mが形成されており、軸受支持部5Bの内部と軸受支持部5Eの内部は、切り欠き5mによって連通されている。
【0052】
図1、
図2、
図4、
図5に示すように、変速機ケース3のライトケース4にはキャッチタンク35とオイルガター41が設置されている。
【0053】
図2、
図4に示すように、オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aの前方で、かつ、後進軸15よりも上方に設置されている。オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを捕捉して一時的に貯留する。
【0054】
図2、
図5に示すように、キャッチタンク35は、ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向(前後方向)において、オイルガター41に対してファイナルドリブンギヤ17Aと反対側に位置している。キャッチタンク35は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを一時的に貯留する。
【0055】
ファイナルドリブンギヤ17Aの軸心17Lと直交する水平方向は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられるオイルが飛散する方向である。
【0056】
図1に示すように、キャッチタンク35は、箱型に形成されたオイル貯留部35Aを有し、オイル貯留部35Aの上方には開口部35aが形成されている。キャッチタンク35は、オイル導入部35Bを有し、オイル導入部35Bは、オイル貯留部35Aから後方に延びている。キャッチタンク35は、ボルト10Aによってライトケース4の隔壁4Aに取り付けられている。
【0057】
ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、オイル導入部35Bに捕捉され、オイル導入部35Bによって前方に案内されることにより、開口部35aを通してオイル貯留部35Aに導入される。また、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、開口部35aに直接導入される。
【0058】
オイル貯留部35Aの底部には図示しないオイル排出口が形成されており、オイル排出口は、オイル貯留部35Aからオイルを排出する。オイル排出口の開口面積は、開口部35aの開口面積よりも小さく形成されており、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、常時、オイル貯留部35Aに貯留される。
【0059】
すなわち、キャッチタンク35は、車両の走行時にオイル排出口から排出されるオイル量がオイル貯留部35Aに貯留されるオイル量を超えることがなく、常時、オイルが貯留された状態を維持できる。
【0060】
これにより、ファイナルドリブンギヤ17Aが漬かるオイルOの油面を低下させることができ、ファイナルドリブンギヤ17Aの攪拌抵抗を低減できる。
【0061】
図4に示すように、オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aの前側で、かつ、後進軸15よりも上方に設置されており、オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルを捕捉して一時的に貯留する。
【0062】
図4において変速機ケース3を車幅方向の左方から見た場合に、ファイナルドリブンギヤ17Aは、車両の前進走行時に反時計周りに回転する。
【0063】
オイルガター41は、ファイナルドリブンギヤ17Aの上方から後方に直線状に延びた後、左方に屈曲し、レフトケース5に向かって車幅方向に直線状に延びている。
【0064】
ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、オイルガター41から切り欠き5bを通して軸受支持部5Bの内部に導入され、軸受22Bを潤滑するとともに、主入力軸11の軸方向に延びるオイル通路11a(
図6参照)から主入力軸11にスプライン嵌合されている入力ギヤ11C、11Dのスプラインに供給される。
【0065】
また、ファイナルドリブンギヤ17Aによって掻き上げられたオイルは、オイルガター41から切り欠き5mを通して軸受支持部5Eの内部に導入され、軸受25Bを潤滑するとともに、切り欠き5cを通して軸受支持部5Cの内部に導入され、軸受23Bを潤滑する。
【0066】
レフトケース5の左側壁5Aには図示しない開口部が形成されており、
図3、
図6に示すように、カウンタ軸14の左端部14fは、開口部を通して左側壁5Aから外方(左方)に突出している。カウンタ軸14の左端部14fに取付けられたパーキングギヤ14Gは、左側壁5Aの外方(左方)に設置されている。
【0067】
図3に示すように、左側壁5Aの壁面5aには左側壁5Aの外方(左方)に突出する周壁5Gが形成されており、周壁5Gは、パーキングギヤ14Gと後述するパーキングポール52とサポート部材56とを取り囲んでいる。
【0068】
周壁5Gの突出方向の先端部には図示しないボルトによってパーキングカバー61(
図8参照)が取付けられており、左側壁5Aの壁面5aと周壁5Gとパーキングカバー61とによって囲まれる空間は、パーキング収容室50を構成している。
【0069】
図3、
図4、
図8に示すように、変速機2は、パーキングロック機構51を有する。 レフトケース5にはパーキングロック機構51が収容されている。
【0070】
パーキングロック機構51は、パーキングギヤ14G、パーキングポール52、パーキングポールシャフト53、カムスプリング54、パーキングロッド55、サポート部材56、マニュアルシャフト57、ディテントプレート58およびディテントスプリング59を備えている。
【0071】
図3、
図8に示すように、パーキングロック機構51は、パーキングロック機構51を構成する部品のうち、パーキングギヤ14G、パーキングポール52、パーキングポールシャフト53、サポート部材56がパーキング収容室50に設置されている。
【0072】
図8に示すように、パーキングロック機構51は、パーキングロック機構51を構成する部品のうち、カムスプリング54、パーキングロッド55、マニュアルシャフト57、ディテントプレート58およびディテントスプリング59がレフトケース5に設置されている。
【0073】
図3に示すように、パーキングギヤ14Gの外周部には複数の歯部14gが周方向に等間隔に設けられている。歯部14gの間には、カウンタ軸14の軸方向に沿って切通し状態に形成され、パーキングポール52の爪部52Aが入り込む溝が形成されている。
【0074】
パーキングポール52は、前後方向に延びるようにしてパーキング収容室50に収容されている。周壁5Gは、上端から下方に延び、前方に折り曲げられたL字形状に形成されており、パーキング収容室50の下方の空間は、上方の空間よりも前後方向に広がっている。この前後方向に広がるパーキング収容室50の下方の空間にパーキングポール52が設置されている。
【0075】
パーキングポール52は、パーキングポールシャフト53が貫通することにより、パーキングポールシャフト53を介して左側壁5Aに揺動自在に支持されており、パーキングポールシャフト53を中心に揺動する。
【0076】
図3に示すように、レフトケース5の左側壁5Aの壁面5aにはボス部5Iが形成されており、パーキングポールシャフト53は、ボス部5Iに取付けられている。
【0077】
パーキングポール52の後端部にはパーキングギヤ14G側に突出する爪部52Aが形成されている。爪部52Aは、パーキングポール52がパーキングポールシャフト53を中心に一方向(パーキングギヤ14Gに接近する方向)に揺動すると、パーキングギヤ14Gの溝に入り込むことにより、歯部14gに噛み合う。
【0078】
爪部52Aは、パーキングポール52がパーキングポールシャフト53を中心に他方向(パーキングギヤ14Gから離れる方向)に揺動すると、歯部14gとの噛み合いが解除される。
【0079】
このようにパーキングポール52は、爪部52Aと歯部14gとが噛み合う噛み合い位置と爪部52Aと歯部14gとの噛み合いが解除される解除位置との間でパーキングポールシャフト53を中心に揺動する。
【0080】
爪部52Aが歯部14gに噛み合うと、パーキングギヤ14Gが回転不能となり、カウンタ軸14の回転が規制される。カウンタ軸14のファイナルドライブギヤ14Fは、ディファレンシャル装置17のファイナルドリブンギヤ17Aに噛み合っている。
【0081】
このため、カウンタ軸14の回転が不可能となると、ファイナルドリブンギヤ17Aの回転が規制される。この結果、爪部52Aが歯部14gに噛み合うと、駆動輪の回転が規制され、車両の停車状態が維持される。
【0082】
図4、
図8に示すように、パーキングロッド55は、副入力軸13の側方で、かつ、アイドル軸12の下方の空間においてカウンタ軸14の軸方向に沿って設置されている。
【0083】
具体的には、
図4に示すようにカウンタ軸14の軸方向から見た場合に、パーキングロッド55は、副入力軸13の軸心C1を鉛直方向に横切る仮想線L1とカウンタ軸14の軸心C2を水平方向に横切る仮想線L2で囲まれた空間において、出来る限りアイドル軸12と副入力軸13に近づくように設置されている。
【0084】
図8に示すように、パーキングロッド55は、カウンタ軸14の軸方向においてカウンタ軸14の設置範囲内に設置されている。すなわち、パーキングロッド55の右端部55rは、カウンタ軸14の右端部14rよりも左方に位置しており、パーキングロッド55の左端部55fは、カウンタ軸14の左端部14fよりも右方に位置している。
【0085】
図8に示すように、変速機2を下方から見た場合に、パーキングロッド55は、カウンタ軸14の軸方向に延びており、パーキングポール52は、カウンタ軸14の軸方向と直交する方向に延びているので、パーキングロック機構51の中でも長尺なパーキングポール52とパーキングロッド55は、L字形状に設置されている。
【0086】
図8に示すように、パーキングロッド55は、第1のパーキングロッド部55A、屈曲部55Bおよび第2のパーキングロッド部55Cから構成されている。
【0087】
第1のパーキングロッド部55Aは、カウンタ軸14の軸方向に沿ってカウンタ軸14の右端部14r側から左端部14f側に延びている。本実施例のカウンタ軸14の左端部14fは、本発明の第1の回転軸の軸方向の一端部を構成し、カウンタ軸14の右端部14rは、本発明の第1の回転軸の軸方向の他端部を構成する。
【0088】
ここで、主入力軸11、アイドル軸12、副入力軸13、カウンタ軸14および後進軸15の軸方向は、同一方向であり、説明の便宜上、軸方向はカウンタ軸14の軸方向を用いて説明する。
【0089】
屈曲部55Bは、第1のパーキングロッド部55Aに連絡されている。第2のパーキングロッド部55Cは、屈曲部55Bに連絡されており、第2のパーキングロッド部55Cは、屈曲部55Bからカウンタ軸14の左端部14f側に延びている。
【0090】
屈曲部55Bは、カウンタ軸14の軸方向と直交する方向で第2のパーキングロッド部55Cが第1のパーキングロッド部55Aよりも副入力軸13側に位置するように屈曲している。
【0091】
図4に示すように、カウンタ軸14の軸方向から見た場合に、第2のパーキングロッド部55Cは、副入力軸13に設けられたリダクションドライブギヤ13Bと軸方向で対向するようにしてカウンタ軸14の軸方向に延びている。
【0092】
すなわち、
図4に示すように、カウンタ軸14の軸方向から見た場合に、第2のパーキングロッド部55Cは、リダクションドライブギヤ13Bの外周部よりもリダクションドライブギヤ13Bの径方向内方に位置している。
【0093】
第2のパーキングロッド部55Cの左端部55fにはカム部材60が設けられており、カム部材60は、第2のパーキングロッド部55Cの外周部において第2のパーキングロッド部55Cの軸方向に移動自在となっている。
【0094】
カム部材60よりも右方において第2のパーキングロッド部55Cには図示しないストッパ部が形成されており、カムスプリング54は、カム部材60とストッパ部の間に設けられている。
【0095】
第2のパーキングロッド部55Cの左端部55fには図示しないストッパ部が形成されている。カムスプリング54は、カム部材60がストッパ部に接触するまでカム部材60を付勢しており、カム部材60は、ストッパ部に接触することにより、パーキングロッド55から抜け出ることがない。
【0096】
図3に示すように、レフトケース5の左側壁5Aの壁面5aにはボス部5Hが形成されており、ボス部5Hにはレフトケース5の内部とパーキング収容室50とを連通する図示しない開口部が形成されている。
【0097】
サポート部材56は、ボス部5Hに嵌合されるとともに、パーキングカバー61とレフトケース5の左側壁5Aに挟まれることによってレフトケース5の左側壁5Aに移動不能に支持されている。レフトケース5の左側壁5Aの壁面5aにはリブ5Jが形成されており、リブ5Jは、ボス部5Hとボス部5Iとを連結している。
【0098】
このように左側壁5Aにはボス部5Hの開口部が形成されているが、サポート部材56がボス部5Iの開口部に嵌合されることに加えて、左側壁5Aに剛性の高いボス部5Hが形成され、さらに、リブ5Jがボス部5Hとボス部5Iとを連結することにより、ボス部5Iの周辺の左側壁5Aの剛性を向上できる。
【0099】
パーキングギヤ14Gは、オイルOの油面よりも上方に設置されている。このため、ボス部5Hの開口部を通してパーキング収容室50にオイルが侵入しても、オイルの油面がパーキングギヤ14Gの下面に到達することがなく、パーキングギヤ14Gの攪拌抵抗が増大することがない。
【0100】
図8に示すように、サポート部材56は、パーキングロッド55が挿入される円筒部56Aと、円筒部56Aに対してライトケース4と反対側に設けられ、右方から左方に向かって下方に傾斜するテーパ面が形成されたテーパ部56Bとを有する。
【0101】
パーキングロッド55が左方に移動すると、カム部材60がサポート部材56のテーパ部56Bのテーパ面に乗り上げる。このとき、
図3に示すように、カム部材60がパーキングポール52の前端を押し下げ、パーキングポール52がパーキングポールシャフト53を中心に反時計周りに揺動する。
【0102】
これにより、爪部52Aがパーキングギヤ14Gの溝に入り込んで歯部14gに噛み合い、車両の停車状態が維持される。
【0103】
パーキングロッド55が右方に移動すると、カム部材60がサポート部材56のテーパ面から降りる。このとき、カム部材60がパーキングポール52の前端から離れる。パーキングポールシャフト53の外周部には図示しないリターンスプリングが設けられており、リターンスプリングは、爪部52Aがパーキングギヤ14Gの溝から抜け出るようにパーキングポール52を付勢している。
【0104】
すなわち、リターンスプリングは、パーキングポール52が
図3の時計周り揺動するように付勢している。これにより、爪部52Aと歯部14gとの噛み合いが解除され、車両が走行可能な状態となる。
【0105】
図8に示すように、ディテントプレート58は、パーキングロッド55の右端部55rに取付けられており、パーキングロッド55は、ディテントプレート58の動きに応じてカウンタ軸14の軸方向に沿って移動自在となっている。
【0106】
ディテントプレート58にはマニュアルシャフト57が取付けられている。パーキングロッド55は、マニュアルシャフト57が軸周りに回転すると、ディテントプレート58 を介してサポート部材56に支持されてカウンタ軸14の軸方向(車幅方向、左右方向)に往復移動する。
【0107】
図3、
図4に示すように、マニュアルシャフト57の下部分は、レフトケース5の下面よりも下方に突出している。マニュアルシャフト57は、車室に設けられた図示しないシフトレバーに連動して回転することにより、パーキングロッド55を軸方向に往復移動させる。
【0108】
なお、マニュアルシャフト57をシフトレバーに連動して回転させる機構としては、シフトレバーの操作に応じて駆動される図示しないモータを用いてもよく、シフトレバーとマニュアルシャフトを連結する図示しないケーブルを用いてもよい。
【0109】
ディテントプレート58には複数の嵌合部58A、58Bが形成されており、ディテントスプリング59の後端部にはローラ59a(
図4参照)が設けられており、ローラ59aは、嵌合部58A、58Bに嵌合自在となっている。嵌合部58Aは、パーキングポジションに対応する位置にディテントプレート58が回転したときに、ディテントスプリング59のローラ59aに嵌合する。
【0110】
嵌合部58Bには複数の嵌合部が形成されている。具体的には、嵌合部58Bにはリバースポジションに対応する位置にディテントプレート58が回転したときに、ディテントスプリング59のローラ59aが嵌合する嵌合部が形成されている。
【0111】
また、嵌合部58Bにはニュートラルポジションに対応する位置にディテントプレート58が回転したときに、ディテントスプリング59のローラ59aに嵌合する嵌合部と、ドライブポジションに対応する位置にディテントプレート58が回転したときに、ディテントスプリング59のローラ59aに嵌合する嵌合部が形成されている。
【0112】
このようにディテントプレート58は、シフトレバーのシフト操作に応じて回転するときに、各シフトポジションにおいて嵌合部58A、58Bにディテントスプリング59のローラ59aが嵌合することで、シフト操作時の運転者に切換え感触(所謂、クリック感)を与える。
【0113】
図8に示すように、マニュアルシャフト57、ディテントプレート58およびディテントスプリング59は、ライトケース4とレフトケース5の合わせ面で、かつ、レフトケース5の前側に設置されている。
【0114】
レフトケース5は、アルミダイキャストによって形成されており、成型時に
図8に示す位置にある場合においてレフトケース5から右方に金型を抜くときの作業性を向上させるために、左側壁5Aからライトケース4に向かって前後方向に広がるように形成されている。
【0115】
これにより、レフトケース5のライトケース4側の前端部と後端部にはレフトケース5の製造工程で空間が生じる。この空間にマニュアルシャフト57、ディテントプレート58およびディテントスプリング59を設置することにより、変速機ケース3が大型化することを防止できる。
【0116】
また、パーキングポール52は、爪部52Aと歯部14gとが噛み合う噛み合い位置と爪部52Aと歯部14gとの噛み合いが解除される解除位置との間でパーキングポールシャフト53を中心に揺動する。
【0117】
図3に示すように、パーキングポジションにおいて爪部52Aと歯部14gとが噛み合う場合に、爪部52Aと歯部14gの噛み合い荷重による接線力Fが発生する。
【0118】
本実施例の左側壁5Aの壁面5aには、接線力Fが発生する方向に沿ってボス部5H、リブ5Jおよびボス部5Iが形成されている。これにより、ボス部5H、リブ5Jおよびボス部5Iによって左側壁5Aを補強して左側壁5Aの剛性を高くできる。
【0119】
このため、接線力Fに対して左側壁5Aが変形することを防止でき、パーキングポールシャフト53が傾倒することを防止できる。この結果、パーキングロック機構51を正常に作動できる。
【0120】
次に、本実施例の変速機2の効果を説明する。
本実施例の変速機2は、変速機ケース3に収容されたパーキングロック機構51を有し、パーキングロック機構51は、歯部14gを有し、カウンタ軸14と一体で回転するようにカウンタ軸14に設けられたパーキングギヤ14Gと、歯部14gに噛み合う爪部52Aを有し、レフトケース5の左側壁5Aに揺動自在に支持されるパーキングポール52とを備えている。
【0121】
また、パーキングロック機構51は、カム部材60を有し、カウンタ軸14の軸方向に移動自在に設けられたパーキングロッド55と、パーキングロッド55の移動に伴ってカム部材60が乗り上げることにより、爪部52Aが歯部14gに噛み合うようにパーキングポール52を揺動させるサポート部材56とを備えている。
【0122】
カウンタ軸14の軸方向から見た場合に、アイドル軸12は、副入力軸13の前斜め上方に設置されており、パーキングロッド55は、副入力軸13の側方で、かつ、アイドル軸12の下方の空間においてカウンタ軸14の軸方向に沿って設置されている。
【0123】
これにより、長尺なパーキングロッド55をアイドル軸12と副入力軸13に囲まれた空きスペース(デッドスペース)に設置することができる。このため、変速機ケース3の内部においてパーキングロッド55をカウンタ軸14の軸方向と、カウンタ軸14の軸方向と直交する方向とに設置するための広い空間を確保することを不要にできる。
【0124】
このように本実施形態の変速機2は、カウンタ軸14に対するパーキングロッド55の設置位置を工夫することにより、変速機2がカウンタ軸14の軸方向および軸方向と直交する方向に大型化することを防止できる。
【0125】
また、本実施例の変速機2によれば、パーキングロッド55は、カウンタ軸14の軸方向の右端部14r側から左端部14f側に延びる第1のパーキングロッド部55Aと、第1のパーキングロッド部55Aに屈曲部55Bを介して連絡され、屈曲部55Bからカウンタ軸14の一端部側に延びる第2のパーキングロッド部55Cとを有する。
【0126】
屈曲部55Bは、カウンタ軸14の軸方向と直交する方向で第2のパーキングロッド部55Cが第1のパーキングロッド部55Aよりも副入力軸13側に位置するように屈曲しており、カウンタ軸14の軸方向から見た場合に、第2のパーキングロッド部55Cは、副入力軸13に設けられた最大径のリダクションドライブギヤ13Bと軸方向で対向するようにしてカウンタ軸14の軸方向に延びている。
【0127】
これにより、パーキングロッド55の軸方向の一部である第2のパーキングロッド部55Cを、リダクションドライブギヤ13Bを避けて副入力軸13にさらに近づけることができる。このため、パーキングロック機構51を設置する広い空間を確保することをより一層不要にできる。
【0128】
この結果、変速機2がカウンタ軸14の軸方向および軸方向と直交する方向に大型化することをより効果的に防止できる。
【0129】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0130】
2...変速機(車両用変速機)、3...変速機ケース、12...アイドル軸(第3の回転軸)、12A,12B...アイドルギヤ(ギヤ)、12C...リダクションドライブギヤ(ギヤ)、13...副入力軸(第2の回転軸)、13A...リダクションドリブン(ギヤ)、13B...リダクションドライブギヤ(ギヤ、最大径のギヤ)、14...カウンタ軸(第1の回転軸)、14f...左端部(第1の回転軸の軸方向の一端部)、14G...パーキングギヤ、14g...歯部、14r...右端部(第1の回転軸の軸方向の他端部)、51...パーキングロック機構、52...パーキングポール、52A...爪部、53...パーキングポールシャフト、55...パーキングロッド、55A...第1のパーキングロッド部、55B...屈曲部、55C...第2のパーキングロッド部、56...サポート部材、60...カム部材