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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光デバイスおよび光デバイスの試験方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20240409BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 6/34 20060101ALI20240409BHJP
   H01S 5/50 20060101ALI20240409BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/124
G02B6/34
H01S5/50 610
H01S5/02
G02B6/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020034066
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136411
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0209020(US,A1)
【文献】特開2017-098362(JP,A)
【文献】特開2019-211538(JP,A)
【文献】特表2015-533259(JP,A)
【文献】特開2020-021015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0293866(US,A1)
【文献】特開2002-185076(JP,A)
【文献】特開2010-171252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングによりウエハから切り離されてチップ化される光デバイスにおいて、
ローカル光が入射される複数の光導波路と、
前記複数の光導波路の間に設けられ、光チップ部品が搭載されるテラスと、
前記複数の光導波路の前記光チップ部品の後段に接続された光回路と、
前記テラスに搭載される前記光チップ部品を介して、前記テラスの前後で前記複数の光導波路が接続される前記テラスを迂回し、試験用のローカル光を試験対象の前記光回路に導波する試験用光導波路と、
を備えることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記ウエハ上に、前記試験用のローカル光を前記光導波路に入射させるグレーティングカプラが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記試験用光導波路は、光結合器を介して前記光回路に光結合されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記ウエハは、シリコン材質により形成され、
ダイシング後の前記テラスに搭載される前記光チップ部品は、化合物半導体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光デバイス。
【請求項5】
前記光チップ部品は、前記テラスに搭載され前記試験用のローカル光を光増幅する半導体光増幅器であることを特徴とする請求項4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記光結合器は、方向性光結合器であることを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光結合器は、MMIカプラであることを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記グレーティングカプラを、前記ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスの領域外に設けたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記グレーティングカプラを、前記ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスのうち、隣接する光デバイスの空き領域に設けたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記グレーティングカプラを、前記ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスのうち、自光デバイスの空き領域に設けたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項11】
試験対象の前記光回路は、90°光ハイブリッドであることを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の光デバイス。
【請求項12】
ダイシングによりウエハから切り離されてチップ化される光デバイスの試験方法において、
前記ウエハに、ローカル光が入射される複数の光導波路と、
前記複数の光導波路の間に設けられ、光チップ部品が搭載されるテラスと、
前記複数の光導波路の前記光チップ部品の後段に接続された光回路と、
前記テラスを迂回し、試験用のローカル光を試験対象の前記光回路に導波させる試験用光導波路と、
前記光導波路に前記試験用のローカル光を入射させるグレーティングカプラと、を設け、
ダイシング以前の前記ウエハの状態で前記光回路の試験を行う際、前記試験用光導波路に、前記グレーティングカプラを介して前記試験用のローカル光を供給することで、前記テラスに搭載される前記光チップ部品を介して、前記テラスの前後で前記複数の光導波路が接続される前記テラスを迂回し、前記試験用のローカル光を試験対象の前記光回路に導波させる、
ことを特徴とする光デバイスの試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信機等の光デバイスおよび光デバイスの試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスは、光ICチップ化され、光ICチップとして、光信号を受信する光受信部(Rx)と、光信号を送信する光送信部(Tx)がある。光ICチップ上には、光導波路、光回路、光チップ部品等が設けられる。光回路は、例えば、PBS(偏波ビームスプリッタ)、PR(偏波ローテータ)、90°光ハイブリッド等である。光チップ部品は、例えば、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifiers:SOA)等である。
【0003】
光回路の試験を行う際、光ICチップの端面から光ファイバを介して光回路に光信号を入射する方法がある。また、光ICチップ化する前のウエハ状態で光回路を試験する方法がある(例えば、下記特許文献1参照。)。この方法では、測定する光ICチップの領域外のウエハ部分にグレーティングカプラ(Grating Coupler:GC)を設け、ダイシングラインを越える光導波路を介して光信号を光回路に入射させる。これにより、ウエハ表面方向からファイバ(ファイバアレイ)をGCに近づけて光を入射することで、光ICチップに光を入力でき、ダイシング前のウエハ状態のままでウエハ上の光回路の試験が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0293866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイシングによりチップ化された光ICチップに対する試験では、光ICチップの端面から光導波路に試験光を入射させる必要がある。この場合、光ICチップを1個ずつステージにセットして光ファイバを調心しなければならず、試験に手間と時間がかかった。
【0006】
また、ダイシング以前の段階で光ICチップに対する試験を行う場合、以下の問題を有する。上記の光チップ部品、例えば、SOAは化合物半導体で形成されている。このため、ウエハプロセスの段階でウエハ(基板)にSOA搭載用の深溝(テラス)形成する。そして、ウエハをダイシングしてチップ化した後、テラスにSOAをボンディング等で搭載することで、SOAは入射された光を後段の光導波路に出射する。
【0007】
このため、チップ化以前のウエハ状態では、テラスにSOAが搭載されておらず、テラスで光導波路が切断された状態となっている。この状態では、GCを用いて光ICチップに光信号を入射させたとしても、光信号をテラス後段の光回路に導波させることができず、ウエハ状態のままで光ICチップの光回路を試験することはできない。
【0008】
一つの側面では、本発明は、光デバイスをウエハ状態で効率的に試験できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施態様によれば、ダイシングによりウエハから切り離されてチップ化される光デバイスにおいて、ローカル光が入射される複数の光導波路と、前記複数の光導波路の間に設けられ、光チップ部品が搭載されるテラスと、前記複数の光導波路の前記光チップ部品の後段に接続された光回路と、前記テラスに搭載される前記光チップ部品を介して、前記テラスの前後で前記複数の光導波路が接続される前記テラスを迂回し、試験用のローカル光を試験対象の前記光回路に導波する試験用光導波路と、が設けられた光デバイスが提案される。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、光デバイスをウエハ状態で効率的に試験できることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態にかかる光デバイスの構成例1を示す平面図である。
図2図2は、実施の形態にかかる光デバイスの構成例2を示す平面図である。
図3図3は、実施の形態にかかる光デバイスの構成例3を示す平面図である。
図4図4は、実施の形態にかかる光デバイスを搭載した送受信モジュールの構成例を示す図である。
図5図5は、実施の形態にかかる光デバイスのウエハ上の配置例1を示す平面図である。
図6図6は、実施の形態にかかる光デバイスのウエハ上の配置例2を示す平面図である。
図7図7は、実施の形態にかかる光デバイスのウエハ上の配置例3を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる光デバイスの実施の形態を詳細に説明する。実施の形態では、光デバイスとして光回路を備えた光ICチップの光受信部(Rx)を例に説明する。光ICチップは、光送信部(Tx)もほぼ同様の構成であり、光送信部についても同様に適用することができる。
【0013】
以下に説明する光ICチップでは、ダイシング以前のウエハ状態のままで光ICチップの光回路に対する各種試験を行うことを可能にする。上述したように、ウエハ状態の光ICチップでは、チップ状に形成された化合物半導体による光チップ部品、例えばSOAがウエハ(チップ化後の基板)上に搭載されておらず、光導波路は、SOA搭載の部分で光導波が切断された形となっている。
【0014】
図1に示した構成において、SOA以外のPBS(偏波ビームスプリッタ)、PR(偏波ローテータ)、90°光ハイブリッド等の光回路、および光導波路は、ダイシング以前のウエハ状態においてウエハ上に形成可能である。
【0015】
このように、SOAが未搭載の状態では、光ICチップの光回路を試験しようとしても、SOA部分で光導波路による光導波が切断されており、SOA後段の光回路に対して試験光を導波できず、光ICチップの試験を行うことができない。このため、実施の形態では、光導波が切断された状態の光導波路を迂回する形で別の試験用光導波路を介して光回路に入射させ、光回路の試験を可能にする。
【0016】
(光デバイスの構成例)
図1は、実施の形態にかかる光デバイスの構成例1を示す平面図である。実施の形態のウエハ100は、例えば、シリコン(Si)を用いる。ウエハ100にSiを用いることで、Si基板上に設ける光回路の素子サイズを集積化でき小型化できる。但し、Siは、PLC(Planar Lightwave Circuit)用のガラス基板に比べて光損失が大きい。このため、ウエハ100にSiを用いた場合、ウエハ100上に光回路としてSOAを配置して、光信号を増幅させる。
【0017】
図1において、ウエハ100上のダイシングラインDL(点線)で囲まれた領域が光受信部(Rx)に用いる一つの光ICチップ110である。光ICチップ110には、光信号を導波させる光導波路と、各種の光回路が設けられる。
【0018】
試験装置180は、偏波多重信号を扱う光ICチップ110の光回路に対し、TE,TMの両偏波の試験光を入力する。試験装置180は、光源181と偏波コントローラ182を含む。光源1(181a)から出射された光は偏波コントローラ182aを介して光ICチップ110にローカル光(LO)として供給する。光源2(181b)から出射された光は偏波コントローラ182bを介して光ICチップ110にシグナル光(Rx-Sig)として供給する。例えば、偏波コントローラ182aは、光源1(181a)からの光をTE偏光にしたローカル光を供給する。偏波コントローラ182bは、光源2(181b)からの光をTE偏光あるいはTM偏光に切り替えたシグナル光を供給する。シグナル光は、TE偏波あるいはTM偏波された試験用の多値信号である。
【0019】
(光ICチップに対する光入力)
ダイシングラインDLで切断してチップ化し、SOA等のチップを搭載することで製品化された後の光ICチップ110には、光導波路120aにローカル光(LO)が入力され、光導波路120bにシグナル光(Rx-Sig)が入力される。ローカル光(LO)は、光受信部(Rx)の光源から出射され、光ICチップ110の端面部分に位置する光導波路120aの一端から入射される。シグナル光(Rx-Sig)は、光受信部(Rx)の外部の光伝送路から伝送された光が光ICチップ110の端面部分に位置する光導波路120bの一端から入射される。
【0020】
光導波路120aを介して入射されたローカル光は、テラス160部分に搭載されたSOAにより光増幅され、一方の90°光ハイブリッド(90OH)140a、および他方の90°光ハイブリッド(90OH)140bに入射される。
【0021】
光導波路120bを介して入射されたシグナル光は、偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarizing Beam Splitter)130によりTM光とTE光に分けられる。PBS130から出射されるTE光は、光導波路120cを介して一方の90°光ハイブリッド(90OH)140aに入射される。PBS130から出射されるTM光は、偏波ローテータ(PR:Polarization Rotator)135で偏波回転されてTE光とされ、光導波路120dを介して他方の90°光ハイブリッド(90OH)140bに入射される。
【0022】
一方の90°光ハイブリッド(90OH)140aには、ローカル光とシグナル光が入射され、位相の異なる信号を分離し、受光素子(PD:Photo Detector)150a,150bで受光する。PD150aは、XI成分の電気信号を出力し、PD150bは、XQ成分の電気信号(Rx-RF)を出力する。他方の90°光ハイブリッド(90OH)140bには、ローカル光とシグナル光が入射されて位相の異なる信号を分離し、PD150c,150dで受光する。PD150cは、YI成分の電気信号を出力し、PD150dは、YQ成分の電気信号(Rx-RF)を出力する。
【0023】
(光ICチップの試験時の光入力)
そして、実施の形態では、光ICチップ110の試験時、試験装置180から出射された試験光(ローカル光およびシグナル光)を、グレーティングカプラ(GC)190を用いて光ICチップ110に入射させる。このため、光ICチップ110のウエハ100上に、GC190用の領域を設ける。図1の例では、光ICチップ110の領域外のウエハ100上にGC190を配置している。ローカル光は、ウエハ100上の光ICチップ110の外側に配置したGC1(190a)を用いる。シグナル光の入射には、ウエハ100上の光ICチップ110の外側に配置したGC2(190b)を用いる。
【0024】
ここで、図1に示すように、ウエハ状態の光ICチップ110、すなわち、ダイシングラインDLで切り離す以前の状態の光ICチップ110は、未だSOAが搭載されておらず、SOAを搭載する部分には、テラス160が設けられた状態である。実施の形態では、光ICチップ110上にSOAを搭載しない状態で試験を行うものであるため、SOAの符号は付していないが、ダイシング後にテラス160部分にボンディングによりSOAが搭載される。
【0025】
このように、光ICチップ110上にSOAを搭載しない状態で試験のために、ウエハ状態の光ICチップ110の端面の光導波路120aにローカル光を入射させたとしても、テラス160部分で光の導波が切断されている。この状態のままでは、ローカル光は、テラス160より後段の光導波路120eおよび光回路(90°光ハイブリッド(90OH)140a,140bに導波させることができない。この場合、SOA後段に配置された光回路(90°光ハイブリッド(90OH)140a,140b等の光回路を試験することができない。実施の形態の試験対象の光回路は、例えば、90°光ハイブリッド(90OH)140a,140bである。
【0026】
このため、実施の形態では、光ICチップ110に入力されるローカル光をテラス160部分を経由せず、このテラス160部分を迂回して後段の光回路である90°光ハイブリッド(90OH)140a,140bに入射させる構成とする。
【0027】
図1に示す例では、試験用光導波路170は、ローカル光の光導波路120aおよびテラス160の側部に隣接して設けている。試験用光導波路170は、光ICチップ110の試験時に、一端が試験装置180が出射するローカル光のGC190aに接続される。試験用光導波路170の他端は、光結合器、例えば方向性結合器171に接続される。
【0028】
方向性結合器171は、例えば2×2タップカプラを用いて構成され、テラス160の後段の光導波路120e部分で光合波させ、また、受光モニタ172への分岐出力を有する。方向性結合器171(2×2タップカプラ)は、2入力の一方がテラス160後段の光導波路120eに接続され、他方が試験用光導波路170に接続される。また、方向性結合器171(2×2タップカプラ)は、2出力の一方が光導波路120eに結合され、光信号を後段の光回路に導波し、他方が受光モニタ172に光を分岐出力する。
【0029】
受光モニタ172は、mPD等の受光素子からなる。例えば、受光モニタ172は、後に搭載されるSOAの増幅制御用として設けられる。受光モニタ172は、方向性結合器171の分岐出力の光レベル(受光電流)を検出する。受信部(Rx)に設けられる図示しない制御部は、受光モニタ172の光レベルに基づき、SOAの光増幅度をフィードバック制御する。
【0030】
そして、図1に示すような光ICチップ110上にSOAが搭載されていないウエハ状態での試験について説明する。この場合、光ICチップ110に対し、GC1(190a)からローカル光(LO)を入射させ、GC2(190b)からシグナル光(Rx-Sig)を入射させる。
【0031】
そして、GC1(190a)から入射されたローカル光は、試験用光導波路170から方向性結合器171を介して光導波路120eに導波させることができる。このローカル光は、光導波路120eを介してテラス160よりも後段の光回路である90°光ハイブリッド(90OH)140a,140bに入射させることができるようになる。90°光ハイブリッド(90OH)140a,140bは、それぞれローカル光とシグナル光を干渉させ、XI,XQ,YI,YQ成分の電気信号(Rx-RF)を出力できる。
【0032】
これにより、SOAが未搭載であるウエハ状態のままで複数の光ICチップ110に対し、試験装置180による試験を行うことができるようになる。そして、ウエハ状態による光ICチップ110の試験後、ダイシングラインDLに沿ってウエハ100から複数の光ICチップ110が分離され、その後、各光ICチップ110のテラス160部分にSOAがボンディングにより搭載される。
【0033】
SOA搭載により完成した光ICチップ110は、光ファイバ等を介して端面部分の光導波路120aからローカル光が入射され、端面部分の光導波路120bからシグナル光が入射され、光受信部(Rx)として機能する。GC190および試験用光導波路170は、上記試験時にのみ用いられ、光ICチップ110の完成後はGC190を用いた光の入射は行わず、試験用光導波路170に対して光は入射させない。
【0034】
このように実施の形態の光ICチップ110によれば、SOA未搭載のウエハ状態、すなわち、ダイシング以前の製造段階でウエハ100上の複数の光ICチップ110部分に対する試験を行うことができる。これにより、試験にかかる作業者の手間を削減でき、試験にかかる時間(スループット)を向上できるようになる。
【0035】
図2は、実施の形態にかかる光デバイスの構成例2を示す平面図である。構成例2において、構成例1(図1)同様の構成には同一の符号を付してある。この構成例2の光ICチップ110では、光結合器として2(入力)×2(出力)のMMI(MultiMode Interference)カプラ201を用いる。構成例1(図1)では方向性結合器171の分岐比は波長依存性を有するが、構成例2(図2)のMMIカプラ201を用いることで波長無依存化して精度よく試験実施できるようになる。
【0036】
図3は、実施の形態にかかる光デバイスの構成例3を示す平面図である。構成例3において、構成例1(図1)同様の構成には同一の符号を付してある。この構成例3の光ICチップ110では、構成例1(図1)で用いた受光モニタ(mPD)172への分岐出力用の方向性結合器(タップカプラ)171に代えて、90°光ハイブリッド(90OH)301の入力を用いる構成である。
【0037】
図3に示す90°光ハイブリッド(90OH)301には、4×4カプラ、例えば4×4MMIカプラを用いる。この4×4カプラの4入力のうち1入力はシグナル光(Rx-Sig)、1入力はローカル光(LO)の入力に用いると、残り2入力は未使用となる。この残りの2入力のうちの一つをGC1(190a),GC3(190c)から試験用のローカル光(LO)の入力に用いる。
【0038】
構成例3では、光ICチップ110の試験時のローカル光(LO)の入射用に2つのGC(GC1(190a),GC3(190c))を用いる。GC1(190a)から入射されたローカル光は、試験用光導波路170aを介して一方の90°光ハイブリッド(90OH)301aに入射させる。GC3(190c)から入射されたローカル光は、試験用光導波路170bを介して他方の90°光ハイブリッド(90OH)301bに入射させる。このように、光回路である90°光ハイブリッド(90OH)301が2つ以上の入力を有するカプラを用い、カプラの入力の一つをGC190に接続した構成としてもよい。
【0039】
構成例3では、2つのGC1(190a)とGC3(190c)を用いた構成とした。これに限らず、一つのGC1(190a)のみ用い、光ICチップ110の内部あるいは外部でGC1(190a)が出射する試験光を光分岐させ、2つの90°光ハイブリッド(90OH)301a,301bに入射させる構成とすることもできる。
【0040】
図4は、実施の形態にかかる光デバイスを搭載した送受信モジュールの構成例を示す図である。光送受信モジュール400は、光送受信パッケージ401、LD等の光源402、DSP等の制御部403を含む。光送受信パッケージ401は、上述した光ICチップ110を備えた光受信部(Rx)411および、同様に上述した光ICチップ110を備えた光送信部(Tx)412を有する。
【0041】
光受信部(Rx)411には、光ファイバを介して伝送されたシグナル光(Rx-In)と、光源402からのローカル光(LO)が入力され、シグナル光を復調した電気信号(Rx-RF)を制御部403に出力する。また、光送信部(Tx)412には、制御部から入力される送信信号と、光源402からのローカル光(LO)が入力され、送信信号を変調したシグナル光(Tx-Out)を光ファイバに出力する。
【0042】
制御部403は、光送受信パッケージ401(光受信部411,光送信部412)および光源402を動作制御し、光送受信モジュール400における光信号および電気信号の入出力を制御する。
【0043】
上述した各構成例の光ICチップ110は、SOAが搭載される光受信部(Rx)411を例に説明したが、光送信部(Tx)412についても同様にSOAが搭載される。また、光送信部(Tx)412と光受信部(Rx)411の構成上の相違としては、光受信部(Rx)411では受光モニタ172を用いるが、光送信部(Tx)412では、受光モニタに代えて光変調器が配置された形となる。これにより、SOAが未搭載状態の光ICチップ110に対する試験は、光受信部(Rx)411で説明した例と同様に光送信部(Tx)412についても効率的に行うことができる。
【0044】
(光デバイスのウエハ上の配置例)
図5は、実施の形態にかかる光デバイスのウエハ上の配置例1を示す平面図である。上述した光ICチップ110は、ウエハ100上に複数配置され、この配置例について説明する。配置例1では、4つの光ICチップ110(110a~110d)の領域外にGC190を配置したものである。
【0045】
図5に示すように、各光ICチップ110の各ダイシングラインDLの領域外のウエハ100上にGC190を配置する。例えば、光ICチップ110cの試験用のGC190a,190bを、光ICチップ110cの図5上部のダイシングラインDLの領域外のウエハ100上に配置する。光ICチップ110dの試験用のGC190a,190bについても、光ICチップ110dの図5上部のダイシングラインDLの領域外のウエハ100上に配置する。なお、光ICチップ110a,110bの試験用のGC190a,190bは、光ICチップ110a,110bの領域外においてウエハ100の上端部に位置する。
【0046】
この配置例1によれば、ダイシングラインDLで4つの光ICチップ110をそれぞれダイシングすると、ダイシング後の各光ICチップ110(110a~110d)にGC190が残らない。すなわち、配置例1によれば、ダイシング後の光ICチップ110は、ウエハ状態で試験した際にのみ用いるGC190を含まず、光ICチップ110から余分な構成を除くことができる。なお、配置例1では、隣接する光ICチップ110間に配置されたGC190部分のウエハ100の領域110xは、不要な領域として捨てることになる。
【0047】
図6は、実施の形態にかかる光デバイスのウエハ上の配置例2を示す平面図である。図6に示す配置例2では、GC190を隣接する光ICチップ110(110a~110d)の領域に配置したものである。
【0048】
図6に示すように、光ICチップ110試験用のGC1(190a)とGC2(190b)を隣接する光ICチップ110の領域上に配置する。例えば、光ICチップ110c用のGC1(190a)とGC2(190b)は、図6の上部に隣接して位置する光ICチップ110aの内部で空いた領域、例えば、PD150間に配置する。
【0049】
この配置例2では、ダイシングラインDLで4つの光ICチップ110をそれぞれダイシングすると、ダイシング後の各光ICチップ110(110a~110d)の領域内に、隣接する光ICチップ110の試験に用いたGC190が残ることになる。なお、ウエハ100の端部に位置する光ICチップ110a,110b用のGC190は、隣接する光ICチップ110が無いため、ウエハ100の端部の領域にGC190が残ることになる。
【0050】
この配置例2によれば、ダイシング後の光ICチップ110上に隣接する光ICチップ110の試験で用いたGC190が残ることになるが、空き領域に配置したものであるため、各光ICチップ110をできるだけ効率的にダイシングすることができる。例えば、配置例1で生じた不要な領域110xが生じることがなく、その分、ウエハ100上にできるだけ多くの個数の光ICチップ110を配置できるようになる。なお、光ICチップ110a,110bの試験用のGC190a,190bは、光ICチップ110a,110bの領域外でウエハ100の上端部の不要な位置にあるため、光ICチップ110の配置の効率化を妨げない。
【0051】
図7は、実施の形態にかかる光デバイスのウエハ上の配置例3を示す平面図である。この配置例3では、GC190を同一の光ICチップ110(110a~110d)の領域内に配置したものである。
【0052】
図7に示すように、GC1(190a)とGC2(190b)を同一の光ICチップ110の領域上に配置する。例えば、光ICチップ110c用のGC1(190a)とGC2(190b)は、この光ICチップ110cの内部で空いた領域、例えば、上部右方に配置する。
【0053】
また、光ICチップ110cのローカル光(LO)入射用のGC1(190a)と、試験用光導波路170との間の光導波路701を、ダイシングラインDLを跨いで上部に隣接する光ICチップ110aを経由して設ける。同様に、光ICチップ110cのシグナル光(Rx-Sig)入射用のGC2(190b)と、光導波路120bとの間の光導波路702を、ダイシングラインDLを跨いで上部に隣接する光ICチップ110aを経由して設ける。この光導波路701,702は、平面でみて受光素子(PD)150の信号出力と交差しているが、Si基板上でこれら光導波路701,702と、受光素子(PD)150の信号線の層を異ならせればよい。
【0054】
この配置例3では、ダイシングラインDLで4つの光ICチップ110をそれぞれダイシングすると、ダイシング後の各光ICチップ110(110a~110d)には、自身の光ICチップ110の試験に用いたGC190が残ることになる。また、ダイシングにより、例えば、光ICチップ110cは、自身のダイシングラインDLの外部に位置する光導波路701,702の部分は、自身の光ICチップ110cの領域内に残らなくなる。
【0055】
この配置例3によれば、ダイシング後の光ICチップ110上に自身の光ICチップ110の試験で用いたGC190が残ることになるが、空き領域に配置したものであるため、各光ICチップ110をできるだけ効率的にダイシングすることができる。例えば、配置例1で生じた不要な領域110xが生じることがなく、その分、ウエハ100上にできるだけ多くの個数の光ICチップ110を配置できるようになる。
【0056】
以上説明したように、光デバイスは、ウエハ上に、光導波路と、光導波路に接続された光回路と、光導波路のうち光チップ部品搭載用のテラスにより切断状態の光導波路部分を迂回して、試験光を試験対象の光回路に導波させる試験用光導波路と、を設ける。これにより、光デバイスの試験用光導波路に、グレーティングカプラを介して試験光を供給することで、テラス後段の光回路を含むすべての光回路の試験が行え、ダイシング以前のウエハ状態のままで光デバイスの試験が行えるようになる。
【0057】
また、光デバイスは、ウエハ上に、試験光を光導波路に入射させるグレーティングカプラを設けてもよい。これにより、ダイシング以前のウエハ状態のままで光デバイスに対し、グレーティングカプラを介して試験光を入射でき、光部品の試験が行えるようになる。
【0058】
また、光デバイスは、試験用光導波路が光結合器を介して光回路に光結合された構成としてもよい。これにより、試験用光導波路の試験光を、光結合器を介して光回路まで導波できるようになる。
【0059】
また、光デバイスは、ウエハがシリコン材質により形成され、ダイシング後のテラスに搭載される光チップ部品が化合物半導体からなることとしてもよい。これにより、光デバイスを集積化できる。
【0060】
また、光デバイスは、光チップ部品を、試験光を光増幅する半導体光増幅器(SOA)としてもよい。これにより、ウエハにシリコン材質を用いた場合の光損失をSOAで補填できる。SOAはダイシング後のテラスに搭載すればよい。
【0061】
また、光デバイスは、光チップ部品が搭載されるテラスを有する光導波路に、ローカル光が入射され、試験用光導波路は、試験光としてローカル光を試験対象の光回路に導波させる。これにより、ウエハ状態において、SOAが未搭載であってもSOA後段の光回路に対し、試験用光導波路を介してローカル光を導波でき、光回路を試験できるようになる。
【0062】
また、光デバイスは、光結合器として、方向性光結合器、MMIカプラ等を用いることができる。これにより、偏波依存性に対応した光結合器を用いて、より適切な試験光を試験対象の光回路に導波させることができる。
【0063】
また、光デバイスは、グレーティングカプラを、ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスの領域外に設けてもよい。これにより、ダイシング後の光デバイスには、ウエハ状態で試験した際にのみに用いたグレーティングカプラが残らず、光デバイスのチップから余分な構成を除くことができる。
【0064】
また、光デバイスは、グレーティングカプラを、ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスのうち、隣接する光デバイスの空き領域に設けてもよい。これにより、光デバイスをできるだけ効率的にダイシングすることができる。例えば、ウエハ上で不要な領域が生じることがなく、その分、ウエハ上にできるだけ多くの個数の光デバイスを配置できるようになる。
【0065】
また、光デバイスは、グレーティングカプラを、ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスのうち、自光デバイスの空き領域に設けてもよい。これにより、光デバイスをできるだけ効率的にダイシングすることができる。例えば、ウエハ上で不要な領域が生じることがなく、その分、ウエハ上にできるだけ多くの個数の光デバイスを配置できるようになる。
【0066】
また、光デバイスは、試験光が導波される試験対象の光回路が90°光ハイブリッドとしてもよい。これにより、SOAが搭載されていないウエハ状態でSOA後段に設けられた90°光ハイブリッドに試験光を入射でき、90°光ハイブリッドの試験をウエハ状態のままで行うことができるようになる。
【0067】
これらにより、実施の形態によれば、チップ化以前のウエハ状態の光デバイスがテラスで光導波路が切断された状態であっても、グレーティングカプラからの試験光を、試験用光導波路を介してテラス後段の光回路に導波できる。例えば、テラスにSOA未搭載のウエハ状態、すなわち、ダイシング以前の製造段階でウエハ上の複数の光デバイスを効率的に試験できる。また、1枚のウエハをステージにセットした状態のままでウエハ上の複数の光デバイスを試験できるため、試験にかかる作業者の手間を削減でき、試験にかかる時間(スループット)を向上できるようになる。
【0068】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0069】
(付記1)ウエハをダイシングしてチップ化される光デバイスにおいて、
前記ウエハ上に、複数の光導波路と、
前記光導波路に接続された光回路と、
複数の前記光導波路のうち、光チップ部品搭載用のテラスで切断された光導波路部分を迂回し、試験光を試験対象の前記光回路に導波させる試験用光導波路と、
が設けられたことを特徴とする光デバイス。
【0070】
(付記2)前記ウエハ上に、前記試験光を前記光導波路に入射させるグレーティングカプラが設けられたことを特徴とする付記1に記載の光デバイス。
【0071】
(付記3)前記試験用光導波路は、光結合器を介して前記光回路に光結合されたことを特徴とする付記1または2に記載の光デバイス。
【0072】
(付記4)前記ウエハは、シリコン材質により形成され、
ダイシング後の前記テラスに搭載される前記光チップ部品は、化合物半導体であることを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0073】
(付記5)前記光チップ部品は、前記試験光を光増幅する半導体光増幅器であることを特徴とする付記4に記載の光デバイス。
【0074】
(付記6)前記光チップ部品が搭載される前記テラスを有する前記光導波路には、ローカル光が入射され、
前記試験用光導波路は、前記試験光としてローカル光を試験対象の前記光回路に導波させることを特徴とする付記5に記載の光デバイス。
【0075】
(付記7)前記光結合器は、方向性光結合器であることを特徴とする付記3~6のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0076】
(付記8)前記光結合器は、MMIカプラであることを特徴とする付記3~6のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0077】
(付記9)前記グレーティングカプラを、前記ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスの領域外に設けたことを特徴とする付記2~8のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0078】
(付記10)前記グレーティングカプラを、前記ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスのうち、隣接する光デバイスの空き領域に設けたことを特徴とする付記2~8のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0079】
(付記11)前記グレーティングカプラを、前記ダイシングによりチップ化される複数の光デバイスのうち、自光デバイスの空き領域に設けたことを特徴とする付記2~8のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0080】
(付記12)試験光が導波される試験対象の前記光回路は、90°光ハイブリッドであることを特徴とする付記1~11のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0081】
(付記13)前記チップ化後の光デバイスは、伝送路から光信号を受信する光受信部、あるいは光信号を前記伝送路に送信する光送信部に設けられることを特徴とする付記1~12のいずれか一つに記載の光デバイス。
【0082】
(付記14)ウエハをダイシングしてチップ化される光デバイスの試験方法において、
前記ウエハに、複数の光導波路と、
前記光導波路に接続された光回路と、
複数の前記光導波路のうち、光チップ部品搭載用のテラスで切断された光導波路部分を迂回し、試験光を試験対象の前記光回路に導波させる試験用光導波路と、
前記光導波路に前記試験光を入射させるグレーティングカプラと、を設け、
ダイシング以前の前記ウエハの前記試験用光導波路に、前記グレーティングカプラを介して前記試験光を供給し、前記光回路の試験を行う、
ことを特徴とする光デバイスの試験方法。
【符号の説明】
【0083】
100 ウエハ
110(110a~110d) 光ICチップ
120(120a~120e) 光導波路
130 PBS(偏波ビームスプリッタ)
135 PR(偏波ローテータ)
140(140a,140b) 90°光ハイブリッド
160 テラス
170(170a,170b) 試験用光導波路
171 方向性結合器
172 受光モニタ
180 試験装置
181 光源
182(182a,182b) 偏波コントローラ
190 GC(グレーティングカプラ)
201 MMIカプラ
400 光送受信モジュール
401 光送受信パッケージ
402 光源
403 制御部
411 光受信部
412 光送信部
701,702 光導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7