(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ケーキドーナツ用油脂組成物およびケーキドーナツ用穀粉生地
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240409BHJP
A23D 7/01 20060101ALI20240409BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240409BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20240409BHJP
A21D 13/40 20170101ALN20240409BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A23D7/01
A21D2/14
A21D2/16
A21D13/40
(21)【出願番号】P 2020037293
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】宇野 秀一
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075997(JP,A)
【文献】特開2002-191288(JP,A)
【文献】特開2009-153477(JP,A)
【文献】特開2008-079507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D、A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)食用油脂中に、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)水を含有する油中水型乳化物であって、10℃における粘度が
2300mPa・s以上、
15000mPa・s以下であ
り、前記(C)水の含有量が70質量%以上である、ケーキドーナツ用油脂組成物。
【請求項2】
穀粉に、請求項1に記載のケーキドーナツ用油脂組成物を含有するケーキドーナツ用穀粉生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキドーナツ用穀粉生地に練りこんで使用することで、吸油量が少なく、食感に優れたケーキドーナツが得られるケーキドーナツ用油脂組成物に関する。また、本発明は、前記のケーキドーナツ用油脂組成物を含有するケーキドーナツ用穀粉生地に関する。
【背景技術】
【0002】
本願においてケーキドーナツとは、パン酵母の発酵力に頼らず、膨張剤を使用して製造したドーナツをいう。一般的にケーキドーナツは、小麦粉や加工澱粉、砂糖、脱脂粉乳、膨張剤などを混合し、そこに水や卵、油脂を加えて生地をつくり、フライしてドーナツを製造する。ケーキドーナツは口溶けがよく、しっとりとした食感が求められ、かつ近年の健康志向の高まりから、吸油量を抑えたケーキドーナツが要望される。しかし、口溶けよく、しっとりとした食感にするためにはドーナツ生地に配合する油脂量を増やす方法が取られ、配合する油脂量が増えるとフライ時にケーキドーナツ生地へフライオイルが染み込みやすくケーキドーナツの吸油量が増加してしまう。反対に、ドーナツ生地に配合する油脂量を減らすことで、ケーキドーナツ生地へのフライオイルの染み込みを減らすことが出来るが、しっとりさに欠け、ぼそぼそとした口溶けの悪いケーキドーナツとなってしまう。したがって、吸油量が少なく、食感に優れたケーキドーナツの提供が望まれている。
【0003】
ケーキドーナツの改良方法としては、キサンタンガム/グアーガムおよびビタミンCを所定量含むケーキドーナツ用吸油抑制剤が提案されている(特許文献1)。しかし、吸油量は抑制されるが、口溶けが悪くねちゃついた食感になる。また、油中水型乳化物(マーガリン)と液種生地を使用するケーキドーナツの製造方法について提案されている(特許文献2)が、食感を改良するが吸油抑制効果は得られない。
【0004】
以上のように、吸油量が少なく、食感に優れたケーキドーナツが得られる方法は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-214230号公報
【文献】特開2019-115288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フライ時の吸油量が少なく、食感(口溶け、しっとり感)に優れたケーキドーナツが得られるケーキドーナツ用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは鋭意検討を重ねた結果、食用油脂に対してポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと水を添加し、油中水型油脂組成物とすることによって上記課題を解決するケーキドーナツ用油脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明である。
【0008】
〔1〕(A)食用油脂中に、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)水を含有する油中水型乳化物であって、10℃における粘度が100mPa・s以上、100000mPa・s以下であるケーキドーナツ用油脂組成物。
〔2〕穀粉に、〔1〕のケーキドーナツ用油脂組成物を含有するケーキドーナツ用穀粉生地。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、フライ時の吸油量が少なく、食感(口溶け、しっとり感)に優れたケーキドーナツが得られるケーキドーナツ用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[ケーキドーナツ用油脂組成物]
本発明のケーキドーナツ用油脂組成物は、油中水型乳化物であって、(A)食用油脂、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)水を含有する油中水型乳化物であって、10℃における粘度が100mPa・s以上、100000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の油脂組成物は、その物性が10℃の温度において粘度が100mPa・s以上、100000mPa・s以下である。粘度の上限値は、好ましくは50000mPa・s以下であり、より好ましくは20000mPa・s以下であり、更に好ましくは15000mPa・s以下であり、特に好ましくは10000mPa・s以下である。粘度の下限値は、好ましくは500mPa・s以上である。粘度100000mPa・s以下であれば、油脂組成物は10℃において流動性を有する状態となる。そのため、ケーキドーナツ生地の製造温度(10℃)で油脂組成物を投入した際、すばやく均一にケーキドーナツ生地中に分散し効果を発揮する。粘度が100000mPa・sより高い場合には、ケーキドーナツ生地中へ油脂組成物への分散が不十分となり効果が得られない。粘度が100mPa・sより低い場合、ケーキドーナツ生地の物性が低下し、作業性が低下するとともにドーナツの成型不良による歩留まりが低下する。なお、本発明における粘度は、東機産業(株)のB型粘度計により測定した。
【0012】
本発明の油脂組成物は、(A)食用油脂、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、(C)水を含有する油中水型乳化物である。この組み合わせにすることにより、ケーキドーナツフライ時の生地中での乳化耐性を有することができる。
ケーキドーナツは、生地に配合した油脂もしくは乳化油脂がフライ時に溶解もしくは乳化が破壊されることで、油脂もしくは乳化油脂がケーキドーナツ生地に染み込み、ケーキドーナツ生地中に空洞が生じる。その空洞にフライオイルが侵入することでケーキドーナツの吸油量が増加する。一方、本発明の油脂組成物である油中水型乳化物は、フライ時でもケーキドーナツ生地中で乳化状態を保持するため、生地中の空洞が生じず、ケーキドーナツ生地にフライオイルが侵入しにくくなるため、ケーキドーナツの吸油を抑制することができる。ケーキドーナツはフライ時に生地内部の温度が90~95℃に達するため、フライ時間を考慮すると、本発明の油脂組成物は95℃で15分間、乳化状態を保持していることが本発明の効果を得るために必要であり、油脂組成物の各成分を単体でケーキドーナツ生地に添加しても効果は得られない。
【0013】
((A)食用油脂)
本発明で使用する(A)食用油脂は、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米油、トウモロコシ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、月見草油、およびパーム油、シア油、サル脂、イリッペ脂、ボルネオタロー脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の分別油、ならびに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂の分別油、ならびに中鎖脂肪、更には、原料に応じて硬化、分別、エステル交換等の処理を施したものが使用できる。また、これらの油脂を各々単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明の油脂組成物における(A)食用油脂の含有量は、特に制限されないが、好ましくは10~65質量%である。その下限値としては、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。(A)食用油脂の含有量の上限値を65質量%以下とすることにより、本発明に必要な乳化剤および水などを配合することができる。本発明の油脂組成物における食用油脂の含有量が上限値65質量%以下であるとケーキドーナツ生地に本発明の油脂組成物を配合した際の油脂組成物の乳化が安定に保持され、フライオイルがケーキドーナツ生地に染み込みにくくなり、結果としてケーキドーナツの吸油低下効果が向上する。また、本発明の油脂組成物の食用油脂の含有量が下限値10質量%以上であると、ケーキドーナツの口溶けが向上する。
【0015】
((B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)
本発明に使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ひまし油を原料とするリシノレイン酸を縮合したポリリシノレイン酸をポリグリセリンに結合させた油溶性乳化剤である。親油性が強いことから、油中水型乳化に適している。
【0016】
本発明に使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が2~16、リシノレイン酸の縮合度が2~16、HLBは0.5~5のものが好ましく用いられる。この範囲であれば、優れた乳化性が得られ、加熱しても乳化が壊れない安定な乳化物を得ることができる。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、リシノレイン酸を脱水縮合した縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化により得られるが、実際的には市販品を使用するのが簡便で経済的である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの市販品としては、阪本薬品工業(株)のSYグリスターCR-310、CR-500、CR-ED、CRS-75、太陽化学(株)のサンソフトNo.818DG、818SK、818R、818H、理研ビタミン(株)のポエムPR-100、PR-400等が適宜使用できる。
【0017】
本発明の油脂組成物中におけるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は特に制限されないが、好ましくは0.2~8.0質量%である。下限値として、より好ましくは0.5質量%以上である。一方、上限値として、より好ましくは5.0質量%以下であり、更に好ましくは2.0質量%以下である。0.2質量%以上の場合には、加熱しても乳化が壊れない優れた乳化物を得ることができる。また、8.0質量%以下の場合には乳化剤特有の好ましくない風味を感じることなく、加熱しても乳化が壊れない優れた乳化物を得ることができ、ケーキドーナツの吸油低下効果が向上する。
【0018】
((C)水)
本発明に使用する水の含有量は特に制限されないが、好ましくは34~89質量%である。特に、本発明の油脂組成物に含まれる水がケーキドーナツの口溶けをよくし、しっとりとした食感にするという点で、より好ましくは70質量%以上である。加熱しても乳化が壊れず、本発明の油脂組成物中の水がフライ後のケーキドーナツ中に存在することで口溶けがよく、しっとりとした食感になる。
【0019】
(その他の成分)
本発明においては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル以外の公知の乳化剤、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを本発明の効果を損ねない程度に併用してもよい。また水溶性成分として砂糖などの糖類、食塩やアミノ酸などの水溶性調味料、醤油が食酢などの液体調味料、ブイヨンなどの動物および植物から抽出したエキス、脱脂粉乳やホエーなどの乳たんぱく類、キサンタンガムなどの増粘多糖類を用いることができる。
【0020】
本発明の油脂組成物は、食用油脂に乳化剤および必要に応じてその他油溶性分を加熱溶解、混合し、その後水もしくはその他水溶性成分を溶解した水を食用油脂中に投入しながら攪拌、冷却することで得られる。
【0021】
[ケーキドーナツ用穀粉生地]
本発明のケーキドーナツ用穀粉生地は、穀粉に、上記のケーキドーナツ用油脂組成物を含有することを特徴とするものである。
【0022】
穀粉は、特に制限されないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉)、米粉、とうもろこし粉、馬鈴薯粉、タピオカ粉、甘藷粉などが挙げられる。穀粉100質量部に対するケーキドーナツ用油脂組成物の含有量は、例えば、1~20質量部である。ケーキドーナツ用油脂組成物の含有量が1質量部以上の場合には、吸油が少なく、食感に優れたケーキドーナツを得ることができる。また、ケーキドーナツ用油脂組成物の含有量が20質量部以下の場合には、乳化剤特有の好ましくない風味の影響が小さいため、風味に優れたケーキドーナツを得ることができる。
【0023】
ケーキドーナツ用穀粉生地には、その他の成分として、乳成分、糖類、卵、食塩、酵素、水、乳化剤、香料などを添加することができる。乳成分としては、例えば、牛乳、クリーム、脱脂乳、バターミルク、脱脂粉乳、全脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエー蛋白質、カゼイン蛋白質、乳清ミネラル、加糖練乳、無糖練乳、チーズなどが挙げられる。糖類としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、異性化糖、オリゴ糖、水あめ、糖アルコール類などが挙げられる。卵としては、例えば、鶏卵であり、生の全卵、加塩全卵、加塩卵黄、加糖全卵、乾燥全卵、凍結全卵、凍結加糖全卵、酵素処理全卵などが挙げられる。食塩としては、例えば、精製塩、上質塩、内地白塩、原塩、粉砕塩などが挙げられる。酵素としては、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、γ-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼなどが挙げられる。
【実施例】
【0024】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
[油脂組成物の製造]
(実施例1)
表1の配合組成(質量%)で以下の方法により油脂組成物を製造した。油相部として菜種油(融点0℃以下)2300gに、菜種極度硬化油(融点67℃)100g、ポリグリセリン縮合リシノイン酸エステル100gを添加し、プロペラ攪拌にて攪拌しながら70℃に加熱し5分間保持して溶解させたのち、70℃で15分間加熱殺菌した水7500gを油相部へ徐々に添加しプロペラ攪拌にて乳化させたのち、リアクテーターを用いて冷却捏和することで本発明の油脂組成物を得た。
【0025】
実施例2~7および比較例1~3は表1に示した配合で、実施例1に準じて油脂組成物を製造した。なお、ハイエルシン酸菜種極度硬化油の融点は61℃、パームステアリンの融点は51℃、パーム油の融点は34℃である。
【0026】
〔油脂組成物の加熱後乳化状態評価方法〕
実施例1~7、比較例1~3の油脂組成物を使用して、95℃で15分間後の乳化状態(耐熱性)を評価した。すなわち、100mlビーカーに各油脂組成物を50g入れ湯煎にて加熱し、95℃で15分間加熱した後、15℃まで冷却を行い、乳化状態を目視により評価した。水の分離が見られないものを良好とし、分離が見られるものを分離と評価した。
【0027】
[ケーキドーナツの製造]
〔生地製造・フライ〕
薄力粉240g、強力粉60g、砂糖120g、食塩3g、脱脂粉乳15g、ショートニング(日油(株)製:アンビションショート)50g、ベーキングパウダー12g、全卵75g、水130gをミキサーボウルに投入し、低速2分、中低速2分攪拌し、ケーキドーナツ生地を製造した。ケーキドーナツ生地を30gに分割し、5Lのフライ油(パーム油)を入れた電気式フライヤーを用いて1回にドーナツを2つづつ、180℃の油で3分間フライした。フライ後、室温にて20分放冷し袋に入れた。このようにして得られたケーキドーナツをコントロールとし、吸油量評価、食感評価をする際の比較対象品とした。
一方、実施例1~7、比較例1~3を使用したケーキドーナツはショートニング(日油(株)製:アンビションショート)35g、各油脂組成物15gとし、ショートニングの一部を各油脂組成物で置き換えて使用した。その他はコントロールであるケーキドーナツと同様の方法で製造した。
【0028】
〔ケーキドーナツの評価〕
評価項目としては、ケーキドーナツの吸油量、口溶け、しっとり感の3つを評価項目として設けた。それぞれの評価項目について、評価方法を下記に記す。
〔吸油量評価方法〕
ケーキドーナツを20個フライした際のフライヤー中のフライオイルの減少量から吸油量を測定した。
吸油量=(フライ前フライオイル重量-フライ後フライオイル重量)
コントロールの吸油量を100とした際の、吸油量が80未満を「◎」、80以上~95未満を「〇」、95以上~100未満を「△」、100以上を「×」として評価した。「◎」、「○」を合格とした。
【0029】
〔口溶け評価方法〕
フライ後、室温で1日保管したのち、ケーキドーナツを食した際の口溶けを10人のパネラーにて評価した。本願における口溶けとは、ケーキドーナツを摂食した際、口の中でさらっとドーナツがほぐれる状態をいう。コントロールの口溶けを基準とし、口溶けが良好(3点)、コントロールと同等(2点)、口溶けが悪い(咀嚼してもドーナツの細かい塊がほぐれずに口に残る)(1点)として評価した。10人のパネラーの評価の平均値が2.5点以上である場合を「◎」、平均値が2.0点超であり2.5点未満である場合を「○」、平均値が2.0点以下である場合を「×」とし、「◎」、「○」を合格とした。
【0030】
〔しっとり感評価方法〕
フライ後1日目のケーキドーナツを食した際のしっとり感を10人のパネラーにて評価した。本願におけるしっとり感とは、ケーキドーナツを摂食した際、口の中で粉っぽく感じることがない状態をいう。コントロールのしっとり感を基準とし、しっとり感が良好(3点)、コントロールと同等(2点)、しっとり感が劣る(咀嚼してた際、口の中がパサつく)(1点)として評価した。10人のパネラーの評価の平均値が2.5点以上である場合を「◎」、平均値が2.0点超であり2.5点未満である場合を「○」、平均値が2.0点以下である場合を「×」とし、「◎」、「○」を合格とした。
【0031】
【0032】
表1を見ると、実施例1~7の油脂組成物は、加熱後の乳化状態(高温下での乳化安定性)に優れるため、フライ時に乳化が壊れることが抑制され、吸油の抑制および食感改良効果が認められる。一方、比較例1~2の油脂組成物では、加熱後の乳化状態が分離(高温下で分離)した状態、あるいは比較例3では油中水型乳化油脂ではない油脂(ショートニング)であるため、フライ時には生地中で乳化状態が維持されていない。そのため、比較例1~3の油脂組成物を練りこんだケーキドーナツ生地は、フライオイルが生地に馴染みやすくなり、フライオイルがケーキドーナツ生地へ染み込み、ケーキドーナツの吸油量を増加している。
【0033】
また、実施例1~7の油脂組成物は、高温下で油中水型乳化物の状態を維持していることから、ケーキドーナツ生地の全体に微細な水滴として水分を保持することができる。これにより、口溶けに優れ、しっとりとした食感を実現することができる。
【0034】
また、実施例1~7の油脂組成物は、10℃において粘度が100mPa・s以上、100000mPa・s以下であり、ケーキドーナツ生地への分散性に優れており、ケーキドーナツ生地の全体に油脂組成物が分散している。これにより、ケーキドーナツの吸油を抑制する効果や、口溶けに優れ、しっとりとした食感を得る効果を一層高めることができる。
【0035】
実施例に使用した原料を以下に示す。
(乳化剤)
*「サンソフト818H」(太陽化学(株)製):ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
*「ポエムPR400」(理研ビタミン(株)製):ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
*「エマルジーMS」(理研ビタミン(株)製):モノグリセリン脂肪酸エステル
*「リケマールPB-100」(理研ビタミン(株)製):プロピレングリコール脂肪酸エステル
*「日清レシチンDX」(日清オイリオグループ(株)製):大豆レシチン
*「サンエース」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製):キサンタンガム
*「WPC392」(Fonterra Limited製):乳たんぱく