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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】調光シートおよび調光装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240409BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240409BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240409BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
B32B7/023
B32B9/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020038963
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140076
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上村 龍志
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034612(JP,A)
【文献】国際公開第2020/009443(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1469082(KR,B1)
【文献】特開平04-216524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
B32B 7/023
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合面を有した第1透明被覆基材と、
第2接合面を有した第2透明被覆基材と、
前記第1接合面と前記第2接合面との間に位置する調光フィルムと、を備える調光シートであって
前記調光フィルムは、
第1電極層と、当該第1電極層を支持する第1支持フィルムとを備え、前記第1支持フ
ィルムが前記第1接合面に接合された第1透明電極フィルムと、
第2電極層と、当該第2電極層を支持する第2支持フィルムとを備え、前記第2支持フ
ィルムが前記第2接合面に接合された第2透明電極フィルムと、
前記第1透明電極フィルムと前記第2透明電極フィルムとの間を埋める液晶組成物を備
える液晶層と、を備え、
前記調光フィルムと前記第1接合面間、および前記調光フィルムと前記第2接合面間を
接合する透明粘着層をさらに備え、前記透明粘着層は、厚さ50μm以上100μm以下
であり、
前記調光シートの端面は、前記調光シートの厚さ方向において、前記第1透明被覆基材の端面から前記第2透明被覆基材の端面までにわたり、かつ、前記第1接合面の周縁に沿う切断痕を備え
前記第1透明被覆基材および前記第2透明被覆基材は厚さ100μm以下である
調光シート。
【請求項2】
前記透明粘着層は、ホットメルト型の粘着層である、
請求項1記載の調光シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の調光シートを、
ガラス基板上に、透明粘着層を介して第1透明被覆基材または第2透明被覆基材を接合
してなる後貼り型の形態の調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シートを備えた調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調光フィルムは、第1電極層、第2電極層、および、第1電極層と第2電極層との間に位置する液晶層とを備える。第1電極層と第2電極層とは、可視光を透過する光透過性を有しており、光透過性フィルム上に支持されている。液晶層は、高分子ネットワークと、高分子ネットワークが有する空隙を埋める液晶組成物とを備える。電極層間に印加される電圧の変更は、液晶層の光透過率を変えて、調光フィルムの光透過率を変える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
調光フィルムが使用される環境は、相対湿度が低い乾いた雰囲気に限られず、相対湿度が高い湿潤な雰囲気に広がりつつある。湿潤な雰囲気に置かれた調光フィルムでは、液晶層に水が浸入すると、光透過率の可変機能が液晶層で低下してしまう。
【0004】
LED搭載テープ,有機EL素子,液晶素子,電子ペーパー,フィルムスピーカー,光学センサー等のセンサーなどが挙げられる電子デバイスにラミネート加工(あるいは、パウチ加工)を施して、包埋される電子デバイスの劣化および破損を防止する積層体を得るとういう提案がある。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-40883号公報
【文献】特開2019-42935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロール・ツー・ロール方式によりフレキシブルな調光フィルムを製造する上で、PETなどの樹脂フィルムが光透過性の支持フィルムとして採用される。樹脂フィルムの表面では、完全に平坦な状態は有り得ず、微細な凹凸や波打ち形状を有している。そのような樹脂フィルムに各種部材を成膜,積層するなどして、積層構造の調光フィルムを作製すると、樹脂フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状が他部材にも追従あるいは反映されて(最悪の場合、製造過程において増幅されてしまい)、調光フィルム全体の歪みとなって表れる場合がある。調光フィルムが歪みを持っていると、剛性の高い透明支持基材あるいは建造物のガラスなどに適用してリジッドな調光装置の態様とする際に、歪みに起因する気泡が残存して、適切な貼り合わせ加工が困難となるだけでなく、美観や視認性の低下を招き、製品の品質不良の原因となる。
【0007】
本発明は、ロール・ツー・ロール方式により製造される調光フィルムを用いて、ラミネート加工(あるいは、パウチ加工)を施した調光シートの態様とする際に、樹脂フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状による影響を解消して、歪みが低減されて表面平坦性が向上した調光シートおよびそれを適用してなるリジッドな態様の調光装置の構成を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による調光シートは、
第1接合面を有した第1透明被覆基材と、
第2接合面を有した第2透明被覆基材と、
前記第1接合面と前記第2接合面との間に位置する調光フィルムと、を備え、
前記調光フィルムは、
第1電極層と、当該第1電極層を支持する第1支持フィルムとを備え、前記第1支持フィルムが前記第1接合面に接合された 第1透明電極フィルムと、
第2電極層と、当該第2電極層を支持する第2支持フィルムとを備え、前記第2支持フィルムが前記第2接合面に接合された 第2透明電極フィルムと、
前記第1透明電極フィルムと前記第2透明電極フィルムとの間を埋める液晶組成物を備える液晶層と、を備え、
前記調光フィルムと前記第1接合面間、および前記調光フィルムと前記第2接合面間を接合する透明粘着層をさらに備え、前記透明粘着層は、厚さ50μm以上100μm以下である。
【0009】
前記透明粘着層は、ホットメルト型の粘着層であることが好適である。
【0010】
第1透明被覆基材および第2透明被覆基材は、共に厚さ25μm以上100μm未満であり、
JIS B 0621(1984)に準拠した平面度が、調光フィルムと透明粘着層を含めた全体厚さに対して、+20%以内に収まっていることが好適である。
【0011】
前記第1透明被覆基材と前記透明粘着層、および前記第2透明被覆基材と前記透明粘着層はそれぞれの厚みが100μm以下であることが好適である。
【0012】
リジッドな態様の調光装置とする際には、
上記の調光シートを、
ガラス基板上に、透明粘着層を介して第1透明被覆基材または第2透明被覆基材を接合してなる後貼り型の形態の調光装置とされる。
【発明の効果】
【0013】
フレキシブルな調光フィルムを構成する光透過性の支持フィルムである樹脂フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状による影響を解消して、歪みが低減されて表面平坦性が向上した調光シートおよびそれを適用してなるリジッドな態様の調光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】調光シートをガラス板の表面に適用した調光装置を示す説明図。
図2】調光シートを示す斜視図。
図3図2のII-II線断面図。
図4】本発明を逸脱した構成の調光シートを示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による調光シートおよび調光装置の一実施形態を説明する。調光シートおよび調光装置の主要部である調光シート10は、図2に示すように矩形状を有する。調光フィルム10は、車両や航空機などの移動体が備える窓に貼り付けられて使用されることもある。また、調光シート10は、住宅、駅、空港などの建物が備える窓、オフィスなどに設置されたパーティション、店舗などに設置されたショーウインドウに貼り付けられて使用されることもある。調光シート10が貼り付けられる対象は、平面状、曲面状、不定形状などの各種の形状を有する。調光フィルム20は、粘着層を用いて対象に貼り付けられる。粘着層を構成する材料は、透明で接着性を有する層であれば特に限定されない。粘着層の一例は、OCAフィルム(Optical Clear Adhesiveフィルム)である。フレキシブルで断裁加工が可能な調光フィルム20の形状は、矩形以外の幾何学形状、不定形状などに変更可能である。あるいは、他部材と接合するなどして、厚さや剛性の向上したシート状にも変更可能である。以後、調光フィルム20をシート状に加工した形態について調光シート10と称する。
【0016】
[調光シート]
調光シート10は、第1透明被覆基材11,第2透明被覆基材12,調光フィルム20,電源線31、および、透明粘着層41を備える。薄くフレキシブルな調光フィルム20に第1・第2透明被覆基材を積層(ラミネート加工あるいはパウチ加工)して、剛性,バリア性,機械的強度などを付加した調光シート10の形態とされる。(図3参照)
各透明被覆基材11,12は、フィルム状を有する。各透明被覆基材11,12の厚みは、調光フィルム20に対し防水性を向上可能である観点から、25μm以上であることが好ましい。各透明被覆基材11,12の厚みは、調光装置の光透過性を向上可能である観点から、100μm以下であることが好ましい。また、調光シート10を建造物のガラスなどに適用する形態では、「水貼り」と呼ばれる手法が採用されることもある。水貼りでは、シート粘着面とガラス施工面の両方に洗剤水を吹き掛けた上で、スキージ(へら)を使用してシートを圧着しながら貼り付ける。シートを剥がす前に圧着して水を抜き、施工面とシート間の空気が、完全に抜けるようにスキージで中央から放射状に圧着する、という一連の操作が行なわれる。水貼りでの「水抜け」を確実に行なう上でも、各透明被覆基材11,12の厚みには上限の設定が必要となるため、作業性の向上の観点からも、100μm以下であることが好ましい。
各透明被覆基材11,12は、可視光を透過する無色透明である。各透明被覆基材11,12は、透明樹脂製、あるいは、ガラス製である。各透明被覆基材11,12は、可視光の一部を透過する有色透明に変更可能である。各透明被覆基材11,12は、調光シート20に対し防水性を向上可能である観点から、2%以下の吸水率を有することが好ましい。吸水率は、JIS K 7209(2000)に準拠した値である。
【0017】
各透明被覆基材11,12を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやメタクリルスチレン共重合体であるアクリル系樹脂、6ナイロンや66ナイロンであるナイロン系樹脂、および、ポリウレタンからなる群から選択されるいずれか1種類である。ポリエチレンテレフタレートの吸水率は、0.3%である。ポリエチレンナフタレートの吸水率は、0.3%である。ポリカーボネートの吸水率は、0.2%である。ナイロン系樹脂の吸水率は、1.5%以上1.6%以下である。
【0018】
調光フィルム20の紫外線に対する耐久性を向上させる観点から、各透明被覆基材11、12は紫外線吸収剤を含有可能である。各透明被覆基材11,12を構成する樹脂は、相互に異なる種類に変更可能である。
【0019】
調光フィルム20は、第1透明被覆基材11と、第2透明被覆基材12との間に位置する。調光フィルム20の全体は、第1透明被覆基材11と対向する位置から見た平面視において、第1透明被覆基材11に覆われている。調光フィルム20の全体は、第2透明被覆基材12と対向する位置から見た平面視において、第2透明被覆基材12に覆われている。
【0020】
透明粘着層41は、第2透明被覆基材12と対向する位置から見た平面視において、矩形枠状を有する。透明粘着層41は、第1透明被覆基材11が備える第1接合面11A(図3を参照)の周縁と接合している。透明粘着層41は、第2透明被覆基材12が備える第2接合面12A(図3を参照)の周縁と接合している。透明粘着層41は、調光シート20の外周面(端面)と接合されて、調光シート20の端面全体を覆っている。
【0021】
第1接合面11A側および第2接合面12A側に形成される透明粘着層41は、それぞれ50μm以上100μm以下の粘着剤が用いられる。透明粘着層41の厚さが50μmを下回ると、調光フィルム20の支持フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状を十分に吸収して、その影響を解消して、歪みが低減されて表面平坦性が向上した調光シート10を得る上で好ましくない。また、接合する各透明被覆基材11,12のコシ,ハリの低下に影響して、しわの発生を誘引するだけでなく、施工負荷を増大させてしまうため好ましくない。透明粘着層41の厚さが100μmを上回ると、各透明被覆基材11,12の可撓性に影響して、調光装置とする際、貼着面(ガラス窓等)への追従性が悪くなるため好ましくない。また、過剰な厚さの透明粘着層41は、透明性,透光性の低下につながる。透明粘着層41の厚さを上記範囲に設定することは、水貼り作業の際に、調光フィルム20の支持フィルムに打痕や波打ちの発生を招くことなく、「水抜け」を確実に行なう上でも有利である。
【0022】
ホットメルト型の粘着剤を用いる場合、樹脂分,ワックス類,可塑剤,粘着付与剤,酸化防止剤,熱安定化剤,充填剤などを成分として構成されるものであり、樹脂分としては、ポリエチレン,ポリアミド,ポリビニルブチラール,ポリ酢酸ビニル,エチレン-酢酸ビニル共重合体などが、ワックス類としては、石油系(パラフィンワックスなど) のものや、植物系(木蝋,白蝋,密蝋など)のものなどが、可塑剤にはフタル酸ジフェニル,フタル酸ジヘキシル,フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系や、リン酸エステル系のもの、塩化パラフィン,石油系可塑剤などを挙げることができる。粘着付与剤には、ブチラール樹脂,ポリイソブチレン,アクリロニトリル樹脂や石油系樹脂など、また酸化防止剤には、ジラウリルチオジプロピオネート,2,6-t-クレゾール,p-オクチルフェノール,安息香酸ソーダ,ステアリン酸カルシウムなど、そして充填剤としては、タルク,クレー,炭酸カルシウム,炭酸バリウム,バライタなどをそれぞれ具体例として挙げることができる。
【0023】
電源線(図示せず)は、調光フィルム20が備える第1電極層22M(図3を参照)と、調光フィルム20が備える第2電極層23M(図3を参照)とに、別々に接続されている。電源線は、各電極層22M,23Mに接合された別々の異方性導電フィルムなどの導電性接着層と、各導電性接着層に接合された単一のフレキシブルプリント基材とを備える。電源線は、各電極層22M,23Mに接合された別々の導電ペースト層と、各導電ペースト層に接合された別々の導電テープと、各導電テープに接合された別々のリード線と、を備えた構成に変更可能である。
【0024】
第1電極層22Mと電源線との接続部は、第1透明被覆基材11に覆われている。第2電極層23Mと電源線との接続部は、第2透明被覆基材12に覆われている。電源線は、透明粘着層41の一部を通じて、調光装置の外部に位置する駆動装置と、調光シート20とに接続される。電源線は、調光装置を駆動するための駆動電圧を、駆動装置から、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間に印加する。
【0025】
図3が示すように、第1透明被覆基材11は、第1接合面11Aを備える。第2透明被覆基材12は、第2接合面12Aを備える。調光フィルム20は、第1透明被覆基材11の第1接合面11Aと、第2透明被覆基材12の第2接合面12Aとの間に位置する。第1接合面11Aと調光シート20とは、透明粘着剤で接合されている。第2接合面12Aと調光フィルム20もまた、透明粘着剤で接合されている。
【0026】
透明粘着層41は、第1接合面11A、第2接合面12A、および、調光フィルム20の端面20E(図3の部分拡大図を参照)に接合されている。第1接合面11Aと調光シート20とを接合する透明粘着剤、および、第2接合面12Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤は、透明粘着層41に接合されている。第1接合面11Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤、および、第2接合面12Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤は、透明粘着層41と一体である。第1接合面11Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤の主成分、および、第2接合面12Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤の主成分は、透明粘着層41を構成する透明粘着剤の主成分と同一種類の樹脂である。なお、主成分とは、当該成分が構成する部材の構成成分のなかで最も高い配合比を有する成分である。
【0027】
第1接合面11Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤、および、第2接合面12Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤は、透明粘着層41と別体に変更可能である。第1接合面11Aと調光シート20とを接合する透明粘着剤、第2接合面12Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤、および、透明粘着層41を構成する透明粘着剤は、相互に異なる種類の樹脂に変更可能である。なお、第1接合面11Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤の主成分、第2接合面12Aと調光フィルム20とを接合する透明粘着剤の主成分、および、透明粘着層41を構成する透明粘着剤の主成分が、相互に同一種類の樹脂であれば、これらの間での密着性を高めることが可能ともなる。
【0028】
[調光シート]
調光フィルム20は、第1支持フィルム22T、第1電極層22M、液晶層21、第2支持フィルム23T、および、第2電極層23Mを備える。第1支持フィルム22Tと第1電極層22Mとは、第1透明電極フィルムを構成する。第2支持フィルム23Tと第2電極層23Mとは、第2透明電極フィルムを構成する。
第1支持フィルム22Tは、第1接合面11Aに透明粘着剤で接合されている。第1支持フィルム22Tは、第1接合面11Aとは反対側に位置する側面で、第1電極層22Mを支持する。第2支持フィルム23Tは、第2接合面12Aに透明粘着剤で接合されている。第2支持フィルム23Tは、第2接合面12Aとは反対側に位置する側面で、第2電極層23Mを支持する。
【0029】
各支持フィルム22T,23Tは、各透明被覆基材11,12よりも薄いフィルム状を有する。各支持フィルム22T,23Tの厚みは、調光フィルム20の取り扱い性が向上可能である観点から、20μm以上であることが好ましい。各支持フィルム22T,23Tの厚みは、光透過性が向上可能である観点から、200μm以下であることが好ましい。各支持フィルム22T,23Tは、可視光の一部を透過する有色透明、あるいは、可視光を透過する無色透明である。
【0030】
各支持フィルム22T,23Tは、透明樹脂製である。各支持フィルム22T,23Tを構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロースからなる群から選択されるいずれか1種類である。各支持フィルム22T,23Tを構成する樹脂は、相互に異なる種類に変更可能である。
【0031】
各電極層22M,23Mは、可視光透過性と電気伝導性とを備える。各電極層22M,23Mは、別々の支持フィルム22T,23Tの側面全体に位置する。各電極層22M,23Mの厚みは、電気伝導性が向上可能である観点から、0.1μm以上であることが好ましい。各電極層22M,23Mの厚みは、光透過性が向上可能である観点から、10μm以下であることが好ましい。
【0032】
各電極層22M,23Mを構成する材料は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化ス
ズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、銀合金薄膜からなる群から選択されるいずれか1種である。
【0033】
液晶層21は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間に位置する。液晶層21は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間の全体を埋める。液晶層21の端面は、各電極層22M,23Mの端面、および、各支持フィルム22T,23Tの端面と面一である。液晶層21が有する厚みは、液晶層21の不透明性が向上可能である観点から、10μm以上であることが好ましい。液晶層21が有する厚みは、液晶層21の透明性が向上可能である観点から、100μm以下であることが好ましい。
【0034】
液晶層21は、液晶組成物を含む。液晶組成物に含まれる液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される1種である。なお、液晶層21は、所定の色を有する色素であって、液晶層21への電圧印加の有無に応じた液晶分子の運動を妨げない色素を含有可能である。
【0035】
液晶層21は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間の全体を埋める高分子ネットワークを備える。液晶組成物は、高分子ネットワークが有する空隙に保持されている。液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか一種である。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備えて、高分子ネットワークが有する空隙に液晶組成物を保持する。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を高分子ネットワークのなかに備えて、高分子ネットワークに分散した空隙に液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子ネットワークのなかに保持する。
【0036】
液晶層21は、液晶層21の全体に分散されたスペーサ21Pを含む。スペーサ21Pは、液晶層21の厚みを一定に保つ機能を有する。スペーサ21Pは、液晶層21の厚みとほぼ等しい平均粒径を有した球形状を有する。スペーサ21Pを構成する材料は、酸化珪素などの透明無機材料、アクリル系樹脂などの透明樹脂材料のいずれかである。スペーサ21Pが有する圧縮破壊強度は、各透明被覆基材11,12と調光フィルム20との接合時に液晶層21の厚みを保てる観点から、1MPa以上が好ましい。
【0037】
調光フィルム20は、液晶層21、各電極層22M,23M、および、各支持フィルム22T,23T以外の機能層を有してもよい。
【0038】
機能層の一例は、ガスバリア層や紫外線バリア層のように、液晶層21や各電極層22M,23Mを保護する。ガスバリア層は、各支持フィルム22T,23Tと各透明被覆基材11,12との間、あるいは、各支持フィルム22T,23Tと各電極層22M,23Mとの間に位置する。
【0039】
機能層の一例は、配向層や偏光層のように、光透過性の制御に寄与する。配向層は、各電極層22M,23Mと液晶層21の間に位置する。偏光層は、各支持フィルム22T,23Tと各透明被覆基材11,12との間、あるいは、各支持フィルム22T,23Tと各電極層22M,23Mとの間に位置する。
【0040】
機能層の一例は、ハードコート層などのように、調光フィルム20の強度や耐熱性などを高める。ハードコート層は、各支持フィルム22T,23Tと各透明被覆基材11,12との間に位置する。さらに、機能層の一例は、調光シート20のなかの層間での接着性を高める。
【0041】
調光フィルム20の型式は、ノーマル型とリバース型とのいずれか1種である。ノーマル型は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間への電圧の印加によって、高い透過率を実現する。ノーマル型は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間への電圧の印加停止によって、低い透過率を実現する。これに対して、リバース型は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間への電圧の印加によって、低い透過率を実現する。リバース型は、第1電極層22Mと第2電極層23Mとの間への電圧の印加停止によって、高い透過率を実現する。
【0042】
第1透明被覆基材11の端面、第2透明被覆基材12の端面、および、透明粘着層41の端面(外側面)は、調光シート10の端面を構成する。調光シートの端面は、調光シート10の外側に露出している。調光シート10の端面は、切断痕を備える。調光シート10の端面が備える切断痕は、第1透明被覆基材11、第2透明被覆基材12、および、透明粘着層41を一体として、調光シート10を厚み方向に切断した痕である。切断痕の一例は、第1透明被覆基材11の端面と透明粘着層41の外側面とに連続する。切断痕の一例は、第2透明被覆基材12の端面と透明粘着層41の外側面とに連続する。透明粘着層41が備える切断痕の一例は、調光シート10の周方向、調光シートの厚さ方向、あるいは、これらと交差する方向に延在する筋を備える。
【0043】
調光シート10の端面は、第1接合面11Aの法線方向、および、第2接合面12Aの法線方向に対し傾斜している。透明粘着層41の外側面は、第1接合面11Aの法線方向と交差してもよいし、第2接合面12Aの法線方向と交差してもよい。なお、図3が示す例では、調光シート10の端面は、調光フィルム20が広がる方向に向けて凸となる曲面状を有する。調光シート10の端面は、調光シートの断面視において、台形の斜辺状を有する。
【0044】
透明粘着層41の外側面が切断痕を備えるため、透明粘着層の厚みを切断によって調整することが可能ともなる。例えば、透明粘着剤を調光シートの端面として硬化させた後に、硬化物の一部を切断し、それによって、透明粘着層41を形成することが可能ともなる。
【0045】
調光フィルム20の端面である端面20Eは、各支持フィルム22T,23Tの端面、各電極層22M,23Mの端面22E,23E、および、液晶層21の端面21Eを備える。透明粘着層41は、端面20Eの全体を覆う透明粘着剤の硬化物である。透明粘着層41の吸水率は、2%以下である。透明粘着層41の吸水率は、JIS K 7209(2000)に準拠した値である。第1透明被覆基材11と第2透明被覆基材12とは、調光フィルム20に対し防水性が向上可能である観点から、透明粘着層41によって相互に接合されて透明粘着層41を覆うことが好ましい。
【0046】
調光フィルム20が広がる方向での透明粘着層41の厚み41Tは、調光フィルム20に対し防水性が向上可能である観点から、1mm以上であることが好ましい。透明粘着層41の厚み41Tが、透明粘着層41の厚み方向で一定でない場合、透明粘着層41の厚み41Tの最小値が1mm以上であることが好ましい。
【0047】
透明粘着層41の厚み41Tは、調光フィルム20と対向する位置から見た意匠性が向上可能である観点から、5mm以下であることが好ましい。透明粘着層41の厚み41Tが、透明粘着層41の厚み方向で一定でない場合、透明粘着層41の厚み41Tの最大値が5mm以下であることが好ましい。例えば、図3が示す例では、透明粘着層41の厚み41Tのなかで、最小値を示す部位は、第1透明被覆基材11と接し、1mm以上の厚み
を有することが好ましい。透明粘着層41の厚み41Tのなかで、最大値を示す部位は、第1透明被覆基材11と接し、5mm以下の厚みを有することが好ましい。
【0048】
[調光シートのガラスへの施工]
透明粘着層41を介して、第1透明被覆基材11および第2透明被覆基材12により、調光フィルム20にラミネート加工(あるいは、パウチ加工)を施してなる積層体(調光シート)10を、図1に示すように、建造物のガラス30表面に適用して、調光装置100の態様とする。
この際、ガラス30表面に接合する側の調光シート10における一方の透明被覆基材(ここでは、第1透明被覆基材11とする),透明粘着層41の適正な厚さ範囲を逸脱した関係にあたる構成を模式的に図4に示す。
【0049】
透明粘着層41の適正な厚さ範囲は50~100μmであり、第1透明被覆基材11の適正な厚さ範囲は25~100μmである。
【0050】
第1透明被覆基材11,透明粘着層41の厚さが全て適性範囲を下回る場合を示す同図(a)では、調光フィルム20の支持フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状を透明粘着層41で十分に吸収出来ない上に、第1透明被覆基材11も薄く、歪みが低減されずに表面平坦性の悪い調光シート10となり、防水性と美観でのダメージが大きい。
【0051】
透明粘着層41の厚さが適性範囲を下回り、第1透明被覆基材11の厚さが適性範囲を上回る場合を示す同図(b)では、調光フィルム20の支持フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状を透明粘着層41で十分に吸収出来ないが、第1透明被覆基材11が過剰に厚いため、歪みは低減されて表面平坦性の低下しない調光シート10が得られる。反面、調光シート10の透過性の低下,材料のコストアップ,ガラス30表面に接合する際の作業効率の低下を招くことになる。
【0052】
透明粘着層41の厚さが適性範囲を上回り、第1透明被覆基材11の厚さが適性範囲を下回る場合を示す同図(c)では、調光フィルム20の支持フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状を透明粘着層41で十分に吸収することが可能であり、歪みが低減されて表面平坦性の低下しない調光シート10が得られる。しかし、ガラス30表面に接合した調光装置としての使用にあたり、耐候性(特に、防水性)での不安を抱え、長期的な信頼性には欠けることになる。
【0053】
第1透明被覆基材11,透明粘着層41の厚さが全て適性範囲を上回る場合を示す同図(d)では、調光フィルム20の支持フィルムが元々有している微細な凹凸や波打ち形状を透明粘着層41および第1透明被覆基材11で十分に吸収することが可能であり、歪みが低減されて表面平坦性の低下しない調光シート10が得られる。反面、調光シート10の透過性の低下,材料のコストアップ,ガラス30表面に接合する際の作業効率の低下を招くことになる。特に、調光シート10の適用対象となる貼着面への追従性が悪くなるため好ましくなく、非平坦な曲面を有する表面への適用が困難である。
【0054】
本発明においては、ガラス30表面への接合に伴う調光シート10の変形の評価指標として、JIS B 0621(1984)に準拠した「平面度」を採用する。平面度には、対象の平面において、できるだけ離れた3点を通過する平面をそれぞれ設定し、それらの偏差の最大値から算出される「最大ふれ式平面度」と、対象となる平面を、平行な平面ではさんだときにできる隙間の値を平面度として算出する「最大傾斜式平面度」があり、前者は「反りの値」、後者は「反りの形状」を示す指標となる。本発明においては、後者の隙間の値が目標値内に収まることを合格基準とする。目標値は、調光シート10の総厚(第1透明被覆基材11,第2透明被覆基材12,調光フィルム20,電源線31,透明粘着層41が積層一体化された状態)の120%以内(変形量が20%以内)に設定する。
【符号の説明】
【0055】
10…調光シート
11…第1透明被覆基材
11A…第1接合面
12…第2透明被覆基材
12A…第2接合面
20…調光フィルム
20E…シート端面
21…液晶層
21P…スペーサ
22E,23E…端面
22M…第1電極層
22T…第1支持フィルム
23M…第2電極層
23T…第2支持フィルム
31…電源線
41…透明粘着層
100…調光装置
図1
図2
図3
図4