(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】インクジェット捺染記録装置及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/30 20060101AFI20240409BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240409BHJP
D06P 1/54 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
D06P5/30
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 501
D06P1/54
(21)【出願番号】P 2020040695
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 智史
(72)【発明者】
【氏名】地舘 公介
(72)【発明者】
【氏名】山田 季
(72)【発明者】
【氏名】宮佐 亮太
(72)【発明者】
【氏名】中村 友
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192733(JP,A)
【文献】特開2018-053172(JP,A)
【文献】特開2009-173443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 5/30
B41J 2/01
D06P 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット捺染記録装置であって、
記録媒体を支持するベルトと、
前記ベルトを加熱する加熱部と、
インクジェットインク組成物と、
前記インクジェットインク組成物を吐出するインクジェット記録ヘッドと、
を備え、
前記ベルトが、粘着層を備え、
前記インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、
前記加熱部により、前記ベルトが、前記熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱され
、
前記ベルトの表面の温度は40℃以上である、インクジェット捺染記録装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベルトを洗浄する洗浄部をさらに備える、インクジェット捺染記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記ベルトが無端ベルトである、インクジェット捺染記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記熱架橋成分が、架橋性基を含有するウレタン樹脂である、インクジェット捺染記録装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記ウレタン樹脂がポリカーボネート系ウレタン樹脂であり、破断伸度が200%以上600%以下である、インクジェット捺染記録装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記インクジェットインク組成物が、標準沸点280℃以上の有機溶剤を、前記インクジェットインク組成物の総量に対し、10.0質量%以上30.0質量%以下含有する、
インクジェット捺染記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記熱架橋成分の25℃から前記ベルトの表面の温度までの区間の吸発熱量が4.0mJ/mg以下である、インクジェット捺染記録装置。
【請求項8】
粘着層を備え、記録媒体を支持するベルトを加熱する工程と、
前記ベルトに支持された前記記録媒体に、インクジェットインク組成物をインクジェット記録ヘッドから吐出して付着させる工程と、
を含み、
前記インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、
前記ベルトを加熱する工程では、前記ベルトの温度が、前記熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱され、
前記ベルトの表面の温度は40℃以上である、インクジェット記録方法。
【請求項9】
請求項
8において、
前記ベルトを洗浄する洗浄工程をさらに含む、インクジェット記録方法。
【請求項10】
請求項
8又は請求項
9において、
前記熱架橋成分の反応温度よりも高い温度に、前記記録媒体を加熱する工程をさらに含む、インクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式でインクを布帛等に付着させて捺染を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、捺染の対象である布帛等の媒体を搬送ベルトによって搬送し、当該媒体に対して記録ヘッドからインクを吐出して付着させる印刷装置が開示されている。かかる搬送ベルトは、媒体を安定して搬送する目的で、媒体が密着できる素材で形成される場合がある。また、特許文献1に記載の装置には布帛を加熱する加熱部が備えられており、当該加熱部は、媒体の搬送が停止していても移動でき、媒体の風合いを損ねにくい旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、捺染において、搬送ベルトを加熱する構成は知られている。しかしながら搬送ベルトを加熱するにあたっては、媒体の風合いを損なうことに対処するだけでは不十分であり、それ以外にも様々な事項を考慮しなければならない。しかもこれらの事項は互いに相関する場合があり、例えば一方を向上させると他方が不十分となる場合も多い。
【0005】
このような相関を有する事項としては、例えば、画像の摩擦堅牢性の向上と、搬送ベルトに付着したインクの洗浄性の低下と、が挙げられる。搬送ベルトを加熱する場合、画像の摩擦堅牢性を向上しようとすると、搬送ベルトに付着したインクの洗浄性が低下することがある。そこで、画像の摩擦堅牢性とベルトの洗浄性の両者を良好とすることが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット捺染記録装置の一態様は、
インクジェット捺染記録装置であって、
記録媒体を支持するベルトと、
前記ベルトを加熱する加熱部と、
インクジェットインク組成物を吐出するインクジェット記録ヘッドと、
を備え、
前記ベルトが、粘着層を備え、
前記インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、
前記加熱部により、前記ベルトが、前記熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。
【0007】
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
粘着層を備え、記録媒体を支持するベルトを加熱する工程と、
前記ベルトに支持された前記記録媒体に、インクジェットインク組成物をインクジェット記録ヘッドから吐出して付着させる工程と、
を含み、
前記インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、
前記ベルトを加熱する工程では、前記ベルトの温度が、前記熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る印刷装置の概略全体構成を示す模式図。
【
図2】印刷装置の電気的な構成を示す電気ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0010】
1.インクジェット捺染記録装置
本実施形態に係るインクジェット捺染記録装置は、記録媒体を支持するベルトと、ベルトを加熱する加熱部と、インクジェットインク組成物を吐出するインクジェット記録ヘッドと、を備える。そして、ベルトは、粘着層を備え、インクジェットインク組成物は、熱架橋成分を含有し、加熱部により、ベルトが、熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。
【0011】
以下、本実施形態に係るインクジェット捺染記録装置100について、図面を参照して説明する。なお、図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0012】
また、
図1では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及びZ軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「-側」としている。X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。
【0013】
<インクジェット捺染記録装置の概略構成>
図1は、実施形態に係るインクジェット捺染記録装置100の概略全体構成を示す模式図である。まず、本実施形態に係るインクジェット捺染記録装置100の全体構成について
図1を参照して説明する。なお、本実施形態では、記録媒体95に画像などを形成することで記録媒体95に捺染を行うインクジェット式のインクジェット捺染記録装置100を例に説明する。
【0014】
図1に示すように、インクジェット捺染記録装置100は、媒体搬送部20、媒体密着部60、ベルト支持部91、印刷部40、加熱ユニット27、洗浄ユニット50などを備えている。インクジェット捺染記録装置100では、媒体密着部60及びベルト支持部91の少なくとも一方がベルトを加熱する加熱部に相当する。そして、これらの各部を制御する制御部1を有している。インクジェット捺染記録装置100の各部は、フレーム部90に取り付けられている。
【0015】
なおベルトを加熱する加熱部は、印刷部40よりも搬送方向の上流側にあればよく、媒体密着部60及びベルト支持部91とは異なる場所に設けられていてもよい。例えば、加熱部は、媒体密着部60よりも搬送方向の上流側であってもよい。このような構成とすることで加熱部は、洗浄の際に濡れたベルトを乾燥させることもできる。また、加熱部は、非接触でベルトを加熱するものであってもよい。
【0016】
媒体搬送部20は、記録媒体95を搬送方向に搬送する。媒体搬送部20は、媒体供給部10、搬送ローラー21,22、ベルト23、ベルト回転ローラー24、駆動ローラーとしてのベルト駆動ローラー25、搬送ローラー26,28、及び媒体回収部30を備えている。
【0017】
まず、媒体供給部10から媒体回収部30に至る記録媒体95の搬送経路について説明する。なお、本実施形態では、重力の作用する方向に沿う方向をZ軸方向とし、印刷部40において記録媒体95が搬送される方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向の双方と交差する記録媒体95の幅方向をY軸方向とする。また、記録媒体95の搬送方向又はベルト23の移動方向に沿う位置関係を「上流側」「下流側」ともいう。
【0018】
媒体供給部10は、画像を形成させる記録媒体95を印刷部40側に供給するものである。記録媒体95としては、例えば、コットン、シルク、ウール、ポリエステルなどの布帛が用いられる。媒体供給部10は、供給軸部11及び軸受部12を有している。供給軸部11は、円筒状又は円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。供給軸部11には、帯状の記録媒体95がロール状に巻かれている。供給軸部11は、軸受部12に対して着脱可能に取り付けられている。これにより、予め供給軸部11に巻かれた状態の記録媒体95は、供給軸部11と共に軸受部12に取り付けできるようになっている。
【0019】
軸受部12は、供給軸部11の軸方向の両端を回転可能に支持している。媒体供給部10は、供給軸部11を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転駆動部は、記録媒体95が送り出される方向に供給軸部11を回転させる。回転駆動部の動作は、制御部1によって制御される。搬送ローラー21,22は、記録媒体95を媒体供給部10からベルト23まで中継する。
【0020】
ベルト23は、ベルト23を回転させる少なくとも2つのローラー間に保持され、ベルト23が回転移動することで記録媒体95を支持しながら搬送方向(+X軸方向)に搬送する。詳しくは、ベルト23は、帯状のベルトの両端部が接続されて形成され、ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25の2つのローラー間に掛けられている。ベルト23としては、無端ベルトすなわちシームレスベルトを採用することにより、より安定した記録媒体95の搬送が可能となる。
【0021】
ベルト23は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間の部分が水平になるように、所定の張力が作用した状態で保持されている。ベルト23の表面(支持面)23aには、記録媒体95を粘着させる粘着剤29が塗布されている。すなわちベルト23は、粘着剤29からなる粘着層を有している。記録媒体95は、粘着剤29を介してベルト23に貼り付けられる。ベルト23は、搬送ローラー22から供給され、後述する媒体密着部60で粘着剤29に密着された記録媒体95を支持(保持)する。これにより、伸縮性のある布帛などを記録媒体95として扱うことができる。
【0022】
粘着剤29は、加熱されることによって粘着性が増大することが好ましい。加熱されることによって粘着性が増大する粘着剤29を用いることで、記録媒体95は粘着層と良好に密着する。このような粘着剤29としては、例えば、熱可塑性エラストマーSISを主成分とするホットメルト系粘着剤などを使用することができる。粘着剤の具体例としては、株式会社横浜ポリマー研究所製「ポリックスレジン」、「ニューダイン」及び「アクアダイン」シリーズ、株式会社村山化学研究所製「MCポリマーシリーズ」、ユニオン化学工業株式会社製「ユニケンゾールRV-30(スクリーンプリント用)」、新中村化学工業株式会社製「プラスターEH」、ATR CHEMICALS社製「ATRASOL GP1(ATR code:ATR1717)」等を例示できる。
【0023】
ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25は、ベルト23の内周面23bを支持する。ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間には、ベルト23を支持する当接部69、ベルト支持部91及びプラテン46が設けられている。当接部69は、ベルト23を介して後述する押圧部61と対向する領域に、プラテン46は、ベルト23を介して印刷部40と対向する領域に、ベルト支持部91は当接部69とプラテン46との間に設けられている。当接部69、ベルト支持部91及びプラテン46がベルト23を支持することにより、ベルト23を移動させることに伴ってベルト23が振動することなどを抑制することができる。
【0024】
当接部69及びベルト支持部91の少なくとも一方には、ベルト23を加熱するヒーターが設けられる。ヒーターは加熱部を構成する。当接部69にヒーターが設けられる場合には、押圧部61によりベルト23に対して押圧力及び熱を付与できるので、ベルト23への記録媒体95の密着性を向上できる点で好ましい。したがって当接部69及びベルト支持部91の一方にヒーターが設けられる場合には、当接部69に設けられるほうがより好ましい。
【0025】
加熱部は、粘着層を加熱することで柔らかくして粘着性を発揮させ、記録媒体と粘着層との密着性を向上させる。これによりベルト上で記録媒体が動くことが抑制され、良好な搬送精度を得ることができる。
【0026】
当接部69及びベルト支持部91の少なくとも一方にヒーターが設けられ、ベルト23が加熱される際、ベルト23の表面23aの温度は、後述する熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。この場合のベルト23の表面23aの温度は、到達する最高温度である。このようにすることで、ベルト23が記録媒体95に接触している全範囲で、ベルト23の全面にわたって後述する熱架橋成分の反応温度以上となる領域が生じないようにすることができる。なお、ベルト23の表面23aの温度の下限は、粘着層の粘着性を発揮するものであればよく、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。
【0027】
すなわち、ベルト23にインクジェットインク組成物が付着する可能性の高い領域において、ベルト23の温度が、インクジェットインク組成物の熱架橋成分の反応温度よりも高い温度に加熱されない。これにより、仮にベルト23にインクジェットインク組成物が付着しても、熱架橋成分の反応が完了しない状態で洗浄部51にベルト23が到達するので、付着したインクジェットインク組成物の洗浄を容易に行うことができる。なお、ベルト23の表面23aの温度は、例えば、輻射型温度計、接触型温度計等により測定することができ、輻射型温度計により測定することがより好ましい。
【0028】
当接部69及びベルト支持部91の少なくとも一方にヒーターが設けられる場合、ベルト23の表面温度を検出する温度検出部(図示せず)を備えてもよい。温度検出部としては、例えば熱電対などを用いることができる。これにより、制御部1は、温度検出部で検出された温度に基づいてヒーターを制御することにより、ベルト23を所定の温度にすることができる。なお、温度検出部は、赤外線を利用した非接触式の温度計を用いてもよい。
【0029】
ベルト駆動ローラー25は、ベルト23を回転させることで、記録媒体95を搬送方向に搬送する駆動部であり、ベルト駆動ローラー25を回転駆動させるモーター(図示せず)を有している。ベルト駆動ローラー25は、記録媒体95の搬送方向において印刷部40よりも下流側に設けられ、ベルト回転ローラー24は、印刷部40よりも上流側に設けられている。ベルト駆動ローラー25が回転駆動されるとベルト駆動ローラー25の回転に伴ってベルト23が回転し、ベルト23の回転によりベルト回転ローラー24が回転する。ベルト23の回転により、ベルト23に支持された記録媒体95が搬送方向(+X軸方向)に搬送され、後述する印刷部40で記録媒体95に画像が形成される。
【0030】
本実施形態では、ベルト23の表面23aが印刷部40と対向する側(+Z軸側)において記録媒体95が支持され、記録媒体95がベルト23と共にベルト回転ローラー24側からベルト駆動ローラー25側に搬送される。また、ベルト23の表面23aが洗浄ユニット50と対向する側(-Z軸側)においては、ベルト23のみがベルト駆動ローラー25側からベルト回転ローラー24側に移動する。
【0031】
搬送ローラー26は、画像の形成された記録媒体95をベルト23の粘着剤29から剥離させる。搬送ローラー26,28は、記録媒体95をベルト23から媒体回収部30まで中継する。
【0032】
媒体回収部30は、媒体搬送部20によって搬送された記録媒体95を回収する。媒体回収部30は、巻取り軸部31及び軸受部32を有している。巻取り軸部31は、円筒状又は円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。巻取り軸部31には、帯状の記録媒体95がロール状に巻き取られる。巻取り軸部31は、軸受部32に対して着脱可能に取り付けられている。これにより、巻取り軸部31に巻き取られた状態の記録媒体95は、巻取り軸部31と共に取り外せるようになっている。
【0033】
軸受部32は、巻取り軸部31の軸線方向の両端を回転可能に支持している。媒体回収部30は、巻取り軸部31を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転駆動部は、記録媒体95が巻き取られる方向に巻取り軸部31を回転させる。回転駆動部の動作は、制御部1によって制御される。
【0034】
次に、媒体搬送部20に沿って設けられている印刷部40、加熱ユニット27、洗浄ユニット50について説明する。
【0035】
印刷部40は、ベルト23の配置位置に対して上方(+Z軸側)に配置され、ベルト23の表面23a上に載置された記録媒体95に印刷を行うる。印刷部40は、ヘッドユニット42、ヘッドユニット42が搭載されるキャリッジ43、キャリッジ43を搬送方向と交差する記録媒体95の幅方向(Y軸方向)に移動させるキャリッジ移動部45などを有している。ヘッドユニット42には、ベルト23に載置された記録媒体95に図示しないインク供給部から供給されたインクジェットインク組成物(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックなど(後述する。))を液滴に吐出する複数のインクジェット記録ヘッド(図示せず)が備えられている。
【0036】
キャリッジ移動部45は、ベルト23の上方(+Z軸側)に設けられている。キャリッジ移動部45は、Y軸方向に沿って延在する一対のガイドレール45a,45bを有している。ヘッドユニット42は、キャリッジ43と共にY軸方向に沿って往復移動可能な状態でガイドレール45a,45bに支持されている。
【0037】
キャリッジ移動部45は、図示しない移動機構及び動力源を備えている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などを採用することができる。さらに、キャリッジ移動部45は、キャリッジ43をガイドレール45a,45bに沿って移動させるための動力源として、モーター(図示せず)を有している。モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターを採用することができる。制御部1の制御によりモーターが駆動されると、ヘッドユニット42は、キャリッジ43と共にY軸方向に沿って移動する。
【0038】
加熱ユニット27は、搬送ローラー26と搬送ローラー28との間に設けられている。加熱ユニット27は、記録媒体95上に吐出されたインクジェットインク組成物を加熱する。これにより、インクジェットインク組成物の熱架橋成分の反応を十分に進行させることができる。熱架橋成分が十分に反応することにより、摩擦堅牢性の良好な画像を形成することができる。なお、加熱ユニット27は、記録媒体95を乾燥させる目的で用いられてもよい。加熱ユニット27には、例えば、IRヒーターが含まれ、IRヒーターを駆動させることにより記録媒体95上に吐出されたインクジェットインク組成物を短時間で反応させることができる。これにより、画像などの形成された帯状の記録媒体95を巻取り軸部31に巻き取ることができる。
【0039】
洗浄ユニット50は、X軸方向においてベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25の間に配置されている。洗浄ユニット50は、洗浄部51、押圧部52及び移動部53を有している。移動部53は、床面99に沿って洗浄ユニット50を一体的に移動させて所定の位置に固定させる。
【0040】
押圧部52は、例えば、エアーシリンダー56とボールブッシュ57とで構成された昇降装置であり、その上部に備えられている洗浄部51をベルト23の表面23aに当接させるものである。洗浄部51は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間で所定の張力が作用した状態で掛けられ、ベルト駆動ローラー25からベルト回転ローラー24に向かって移動するベルト23の表面(支持面)23aを下方(-Z軸方向)から洗浄する。
【0041】
洗浄部51は、洗浄槽54、洗浄ローラー58及びブレード55を有している。洗浄槽54は、ベルト23の表面23aに付着したインクや異物の洗浄に用いる洗浄液を貯留する槽であり、洗浄ローラー58及びブレード55は洗浄槽54の内側に設けられている。洗浄液としては、例えば、水や水溶性溶剤(アルコール水溶液など)を用いることができ、必要に応じて界面活性剤や消泡剤を添加させてもよい。
【0042】
洗浄ローラー58が回転すると、洗浄液がベルト23の表面23aに供給されると共に、洗浄ローラー58とベルト23とが摺動する。これにより、ベルト23に付着したインクジェットインク組成物や記録媒体95としての布帛の繊維などが洗浄ローラー58で取り除かれる。
【0043】
ブレード55は、例えば、シリコンゴムなどの可撓性の材料で形成することができる。ブレード55は、ベルト23の搬送方向において洗浄ローラー58よりも下流側に設けられている。ベルト23とブレード55とが摺動することにより、ベルト23の表面23aに残っている洗浄液が除去される。
【0044】
<電気的構成>
図2は、インクジェット捺染記録装置100の電気的な構成を示す電気ブロック図である。次に、インクジェット捺染記録装置100の電気的構成について
図2を参照して説明する。
【0045】
インクジェット捺染記録装置100は、印刷条件などが入力される入力装置6やインクジェット捺染記録装置100の各部の制御を行う制御部1などを備えている。入力装置6としては、デスクトップ型あるいはラップトップ型のパーソナルコンピューター(PC)や、タブレット型端末、携帯型端末等を使用することができる。入力装置6は、インクジェット捺染記録装置100と別体で設けられていてもよい。
【0046】
制御部1は、インターフェイス部(I/F)2、CPU(Central Processing Unit)3、記憶部4、制御回路5などを含んで構成されている。インターフェイス部2は、入力装置6で入力された印刷条件や媒体の種類などの情報を受け付ける受付部である。インターフェイス部2は、入力信号や画像を取り扱う入力装置6と制御部1との間でデータの送受信を行う。CPU3は、温度検出部を含む各種の検出器群7からの入力信号処理や、インクジェット捺染記録装置100の印刷動作の制御を行うための演算処理装置である。記憶部4は、CPU3のプログラムを格納する領域や作業領域などを確保するための記憶媒体であり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの記憶素子を有している。
【0047】
制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によってヘッドユニット42に備えられている吐出ヘッドの駆動を制御して、記録媒体95に向かってインクを吐出させる。制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によってキャリッジ移動部45に備えられているモーターの駆動を制御して、ヘッドユニット42が搭載されているキャリッジ43を主走査方向(Y軸方向)に往復移動させる。制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によってベルト駆動ローラー25に備えられているモーターの駆動を制御して、ベルト23を回転移動させる。これにより、ベルト23上に載置された記録媒体95が搬送方向(+X軸方向)に移動される。
【0048】
制御部1は、当接部69やベルト支持部91等に設けられた図示せぬ温度検出部で検出された温度に基づいて制御回路5から出力する制御信号によって各ヒーター等に加える電圧を制御しヒーターの発熱量を制御する。また制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によって図示しない各装置類を制御する。
【0049】
2.インクジェットインク組成物
本実施形態のインクジェット捺染記録装置に用いられるインクジェットインク組成物は、少なくとも熱架橋成分を含有する。以下、実施形態のインクジェットインク組成物について説明する。
【0050】
2.1.熱架橋成分
インクジェットインク組成物に含まれる熱架橋成分としては、加熱により分子間及び分子内の少なくとも一方に橋架けされた分子構造を形成する成分のことをいう。熱架橋成分の例としては、反応することによりウレタン結合を生じる成分が挙げられる。このような熱架橋成分としては、水酸基を2つ以上有する化合物と、イソシアネート基を2つ以上有する化合物と、の混合物や、水酸基とイソシアネート基の両方を1分子中に有する化合物が挙げられる。当該混合物は、未反応であってもよいしインクジェットインク組成物の粘度が適切となる範囲で反応が進んでいてもよい。すなわち、高分子化がある程度進んだ状態のウレタン樹脂を用いてもよく、その場合には、熱架橋成分が、架橋性基を含有するウレタン樹脂であると表現することができる。また、イソシアネート基は、ブロック剤によってブロックされたものであってもよい。
【0051】
水酸基を2つ以上有する化合物の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族分岐グリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能グリコール、が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用することもできる。
【0052】
また、水酸基を2つ以上有する化合物としてポリエステルポリオールを用いることもできる。ポリエステルポリオールは、例えば以下に挙げるグリコール類やエーテル類と2価のカルボン酸やカルボン酸無水物とを脱水縮合させる等公知の方法により得ることができる。
【0053】
ここでは、インクジェットインク組成物に使用可能なポリエステルポリオールの作製に使用される具体的な化合物を挙げる。飽和もしくは不飽和のグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族分岐グリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能グリコール等の各種グリコール類が挙げられる。
【0054】
エーテル類としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類が挙げられる。
【0055】
2価のカルボン酸や酸無水物としては、例えば、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸又はこれらに対応する酸無水物やダイマー酸、ひまし油及びその脂肪酸等が挙げられる。これらを用いて脱水縮合により得られるポリエステルポリオール類の他に、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類も挙げられる。
【0056】
ポリエステルポリオールの具体例としては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とを脱水縮合させたポリ[3-メチル-1,5-ペンタンジオール]-alt-(アジピン酸)](クラレポリオールP2010、クラレ社製)等が市販されている。
【0057】
また、水酸基を2つ以上有する化合物としてポリカーボネートポリオールを用いてもよい。ポリカーボネートポリオールは、一般に多価アルコールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、多価アルコールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、又は、多価アルコールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経て生成される。これらの反応で使用される多価アルコールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4-シクロヘキサンジグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0058】
このようなポリカーボネートポリオールに由来する構造を有するウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂と呼ぶことができる。ポリカーボネートポリオールを用いる場合には、反応後に精製するポリウレタン(ウレタン樹脂)の機械的物性のうちの破断伸度が200%以上600%以下となりやすい。破断伸度が150%以上800%以下、好ましくは200%以上600%以下であると、インクジェットインク組成物による記録物(捺染物)の摩擦堅牢性がさらに良好となる。
【0059】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、1,6-ヘキサンジオールを主成分としたもの(PES-EXP815、日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。さらに、本発明において用いることができるポリオールとして、例えば、アクトコールEP3033(三井化学ウレタン社製)、PREMINOL7003(旭硝子社製)、PREMINOL7001(旭硝子社製)、アデカポリエーテルAM302(旭電化社製)等が市販されている。
【0060】
イソシアネート基を2つ以上有する化合物としては、例えば、ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,6-ビス(イソシアナトメチル)デカヒドロナフタレン、リジントリイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、3-(2'-イソシアネートシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,2'-ビス(4-イソシアネートエニル)プロパン、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビス(ジイソシアネートトリル)フェニルメタン、4,4',4”-トリイソシアネート-2,5-ジメトキシフェニルアミン、3,3'-ジメトキシベンジジン-4,4'-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトビフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、1,1'-メチレンビス(4-イソシアナトベンゼン)、1,1'-メチレンビス(3-メチル-4-イソシアナトベンゼン)、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス((2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナトメチル)ジシクロペンタジエン、ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアネートメチルノルボルネン、ビス(イソシアナトメチル)アダマンタン、3,4-ジイソシアネートセレノファン、2,6-ジイソシアネート-9-セレナビシクロノナン、ビス(イソシアナトメチル)セレノファン、3,4-ジイソシアネート、-2,5-ジセレノラン、ダイマー酸ジイソシアネート、1,3,5-トリ(1-イソシアナトヘキシル)イソシアヌル酸、2,5-ジイソシアナトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル-4-イソシアネート-2-チアブチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-イソシアネート-2-チアプロピル)1,4-ジチアン、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、1,5-ジイソシアネート-2-イソシアナトメチル-3-チアペンタン、1,2,3-トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、1,2,3-(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,1,6,6-テトラキス(イソシアナトメチル)-2,5-ジチアヘキサン、1,1,5,5-テトラキス(イソシアナトメチル)-2,4-ジチアペンタン、1,2-ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアネート-3-イソシアナトメチル-2,4-ジチアペンタン等が挙げられる。また、これらポリイソシアネート類のビュレット型反応による2量体、これらポリイソシアヌレート類の環化3量体及びこれらのポリイソシアネート類とアルコールもしくはチオールの付加物等を用いてもよい。さらには、上記ポリイソシアネート類のイソシアネート基の一部又は全部をイソチオシアネート基に変えた化合物を用いてもよい。そしてこれらは単独でも2種類以上を混合して用いることができる。
【0061】
熱架橋成分は、架橋性基を含有するウレタン樹脂であることが好ましい。このような熱架橋成分の市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製、ETANACOLL(登録商標)UWシリーズが挙げられ、型番としてUW-1527F、UW-1614AF、UW-2201AF等が市販されている。熱架橋成分が、架橋性基を含有するウレタン樹脂である場合、画像の摩擦堅牢性を良好なものとすることができる。
【0062】
上記した各モノマーを重合することにより得られるポリウレタン(ウレタン樹脂)は、ガラス転移温度が30℃以下であることが好ましい。30℃以下のガラス転移温度を有するポリウレタン(ウレタン樹脂)とすることにより、耐擦性やドライクリーニング性に優れるとともに、吐出安定性にも優れるインクジェットインク組成物を実現できる。より好ましいガラス転移温度は25℃以下である。なお、ガラス転移温度は、JISK6900に準拠して測定される値を意味する。
【0063】
また、熱架橋成分として用いられるポリウレタン(ウレタン樹脂)は、その酸価が100mgKOH/g以下である。酸価が100mgKOH/g以下のポリウレタン(ウレタン樹脂)を用いることにより、耐擦性やドライクリーニング性に優れるとともに、吐出安定性にも優れるインクジェットインク組成物を実現できる。好ましい酸価は60mgKOH/g以下である。
【0064】
ポリウレタン(ウレタン樹脂)の平均粒径は20~300nmであることが好ましく、このような平均粒径を有するポリウレタン(ウレタン樹脂)を用いることにより、耐擦性やドライクリーニング性に優れるとともに、吐出安定性にも優れるインクジェットインク組成物を実現できる。より好ましいポリウレタン(ウレタン樹脂)の平均粒径は30~200nmである。なお、平均粒径は動的光散乱法により測定することができる体積平均粒子径であり、例えば、マイクロトラックUPA150(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
【0065】
上記した各モノマーの重合に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒を挙げることができる。しかし、水系の顔料分散であるため、後に溶媒は除去可能なものであることが好ましい。このような溶媒としては、次のものを用いることができる。すなわち、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0066】
ポリウレタン(ウレタン樹脂)は、質量基準において、顔料分散体よりも多く含まれていることが好ましい。質量単位で顔料分散体よりも多くのポリウレタン(ウレタン樹脂)を添加することにより、とりわけテキスタイル用インクジェット記録インクとして、顔料の定着性が向上する。
【0067】
以上説明したように、熱架橋成分としてはポリウレタン(ウレタン樹脂)のモノマー、前駆体等が好ましいが、熱による刺激で架橋構造を形成することができる範囲で、その他の化合物を熱架橋成分としてもよい。そのような熱架橋成分としては、熱重合開始剤及び熱硬化型のモノマー類が挙げられる。
【0068】
2.2.その他の成分
インクジェットインク組成物は、上記熱架橋成分の他に、以下の(1)水、(2)色材、(3)有機溶剤、(4)その他成分を含有してもよい。
【0069】
(1)水
インクジェットインク組成物は、水を含有してもよい。インクジェットインク組成物は水系であることが好ましい。水系組成物とは主要な溶媒成分の1つとして水を含有する組成物である。水は主となる溶媒成分として含んでもよく、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。水の含有量はインクジェットインク組成物の総量に対して好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以上95質量%以下である。
【0070】
(2)色材
インクジェットインク組成物は、色材を含んでもよい。色材としては、カーボンブラック、チタンホワイトを含む無機顔料、有機顔料、油溶染料、分散染料等を用いることができる。本実施形態のインクジェットインク組成物では、色材が分散樹脂により分散されていてもよい。
【0071】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができる。
【0072】
有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
【0073】
インクジェットインク組成物に用いられる有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
【0074】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0075】
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物、又は固溶体を例示できる。
【0076】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を例示できる。
【0077】
これ以外の色の顔料も使用可能である。例えば、オレンジ顔料、グリーン顔料などがあげられる。
【0078】
上記例示した顔料は、好適な顔料の例であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらの顔料は一種又は二種以上の混合物として用いてよいし、染料と併用しても構わない。
【0079】
また、顔料は、水溶性樹脂、水分散性樹脂、界面活性剤等から選ばれる分散剤を用いて分散して用いてもよく、あるいはオゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して自己分散顔料として分散して用いてもよい。
【0080】
本実施形態のインクジェットインク組成物において、顔料を分散樹脂により分散させる場合には、顔料と分散樹脂との比率は10:1~1:10が好ましく、4:1~1:3がより好ましい。また、分散時の顔料の体積平均粒子径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
【0081】
(3)有機溶剤
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、有機溶剤を含んでもよい。有機溶媒を含むことにより、例えば、記録物の乾燥性を高めることや、画像の堅牢性を高めることができる場合がある。また、有機溶剤を含むことで、インクジェットインク組成物の吐出安定性を向上できる。有機溶剤は水溶性の有機溶剤であることが好ましい。
【0082】
また、有機溶剤の機能の一つとしては、記録媒体に対するインクジェットインク組成物の濡れ性を向上させることや、インクジェットインク組成物の保湿性を高めることが挙げられる。また、インクジェットインク組成物の表面張力を下げ、インクジェットヘッドから吐出する場合に液滴としてノズルから分離して飛翔しやすくさせ、記録媒体での濡れ性を向上させインク滴の広がりを優れたものにできる。
【0083】
有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0084】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0085】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0086】
含窒素溶剤としては、例えば、非環状アミド類、環状アミド類などを上げることができる。非環状アミド類としては、アルコキシアルキルアミド類を挙げることができる。
【0087】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、等を例示することができる。
【0088】
また、非環状アミド類として、下記一般式(1)で表される化合物であるアルコキシアルキルアミド類を用いることも好ましい。
【0089】
R1-O-CH2CH2-(C=O)-NR2R3 ・・・(1)
【0090】
上記式(1)中、R1は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0091】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。これらは後述する樹脂粒子の皮膜化を促進させる点で好ましく、特に2-ピロリドンがより好ましい。
【0092】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0093】
アルキレングリコールエーテル類を構成するアルキレングリコールは、炭素数2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。アルキレングリコールエーテル類を構成するアルキレングリコールは、アルキレングリコールが分子間で水酸基同士が縮合したものでもよい。アルキレングリコールの縮合数は、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。
【0094】
アルキレングリコールエーテル類を構成するエーテルは、アルキルエーテルが好ましく、炭素数1~4のアルキルのエーテルが好ましく、炭素数2~4のアルキルのエーテルがより好ましい。
【0095】
アルキレングリコールエーテル類は、浸透性に優れインクの記録媒体での濡れ性に優れることで画質が優れる点で好ましい。この点で、特に、モノエーテルが好ましい。
【0096】
多価アルコールとしては、1,2-アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2-アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(別名:1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
【0097】
多価アルコール類は、アルカンジオール類とポリオール類に分けることができる。
【0098】
アルカンジオール類は、炭素数5以上のアルカンのジオールである。アルカンの炭素数は好ましくは5~15であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは6~8である。好ましくは1,2-アルカンジオールである。
【0099】
ポリオール類は、炭素数4以下のアルカンのポリオールか、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物か、である。アルカンの炭素数は好ましくは2~3である。ポリオール類の分子中の水酸基数は2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ポリオール類が上記の分子間縮合物である場合、分子間縮合数は2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。多価アルコール類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
【0100】
アルカンジオール類及びポリオール類は、主に浸透溶剤及び/又は保湿溶剤として機能することができる。しかし、アルカンジオール類は浸透溶剤としての性質が強い傾向があり、ポリオール類は保湿溶剤としての性質が強い傾向がある。
【0101】
アルカンジオール類は、浸透溶剤としての性質が強く、インクの記録媒体での濡れ性に優れることでインクの広がりが優れ、画質が優れる点で好ましい。
【0102】
インクジェットインク組成物は、上記例示した有機溶剤を一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上の場合は、有機溶剤の含有量は、それらの合計の含有量である。
【0103】
インクジェットインク組成物は、有機溶剤の合計の含有量が、インクジェットインク組成物全量に対し、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましい。一方、下限は、10.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましく、25.0質量%以上がさらに好ましい。
【0104】
さらに、インクジェットインク組成物が含む有機溶剤は、標準沸点が280.0℃以下のものが好ましく、150.0℃以上280.0℃以下のものがより好ましく、170.0℃以上280.0℃以下のものがよりさらに好ましく、180.0℃以上280.0℃以下のものがさらに好ましく、190.0℃以上270.0℃以下のものがさらに好ましく、200.0℃以上250.0℃以下のものがことさらに好ましい。
【0105】
また、インクジェットインク組成物は、標準沸点が280.0以上の有機溶剤を、10.0質量%以上30.0質量%以下、好ましくは10.0質量%以上20.0質量%以下含むことがさらに好ましい。これにより、特に下限値以上であることで、ベルトが加熱されていてもインクジェットインク組成物の乾燥が抑制される。そのためインクジェットインク組成物がベルトに付着した場合であってもベルトへの固着が抑制され、ベルトの洗浄が容易である。また、下限値以上であることで、インクジェットインク組成物がノズル中で乾燥することが抑制され、吐出安定性を良好なものとすることができる。また、特に上限値以下であることで、記録媒体に付着させたインクジェットインク組成物を加熱し乾燥する際の乾燥性が良好となり記録媒体に対する密着性を良好なものとすることができる。なお標準沸点が280.0℃超の有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0106】
(4)その他
インクジェットインク組成物は、さらに以下の成分を含んでもよい。
(界面活性剤)
インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、インクジェットインク組成物の表面張力を低下させ記録媒体や下地との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0107】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0108】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0109】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(商品名、ネオス社製)等が挙げられる。
【0110】
インクジェットインク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。インクジェットインク組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.3質量%以上1.0質量%以下である。
【0111】
(pH調整剤)
本実施形態のインクジェットインク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、インクジェットインク組成物の洗浄性を調節することができる。pH調整剤としては、例えば、尿素類、アミン類、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、を例示できる。具体的には、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等、及び、ベタイン類(トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、N,N,N-トリメチルアラニン、N,N,N-トリエチルアラニン、N,N,N-トリイソプロピルアラニン、N,N,N-トリメチルメチルアラニン、カルニチン、アセチルカルニチン等)等が挙げられる。アミン類としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0112】
ここでpH調整剤として例示した化合物は、いずれも上述の有機溶剤ではないものとして扱う。例えば、トリエタノールアミンは常温のとき液体で、標準沸点が208℃程度であるが、これは上述の有機溶剤としては扱わない。
【0113】
(防かび剤、防腐剤)
本実施形態のインクジェットインク組成物は、防腐剤を含有してもよい。
【0114】
防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。これにより、例えば、インクジェットインク組成物を、長期的にプリンターを使用せず保守する際のメンテナンス液として使用しやすくなる。防腐剤の好ましい例としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。
【0115】
(その他)
インクジェットインク組成物は、必要に応じて、キレート剤、防錆剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
【0116】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
【0117】
2.3.インクジェットインク組成物の物性等
インクジェットインク組成物は、記録媒体にインクジェット法により付着される(インク付着工程)。そのため、インクジェットインク組成物の粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15.0mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7.0mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。インクジェットインク組成物は、インクジェットヘッドから吐出されて記録媒体に付着されるので、所定の画像を効率的に記録媒体に形成することが容易である。
【0118】
本実施形態のインクジェット記録方法で使用するインクジェットインク組成物は、記録媒体への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25.0℃における表面張力は、40.0mN/m以下、好ましくは38.0mN/m以下、より好ましくは35.0mN/m以下、さらに好ましくは30.0mN/m以下であることが好ましい。
【0119】
2.4.インクジェットインク組成物の製造方法
本実施形態のインクジェットインク組成物の製造方法は特に制限されないが、例えば、上述の各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより製造することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
【0120】
3.熱架橋成分の反応温度
上記インクジェットインク組成物の熱架橋成分の反応温度を以下のように定義する。反応温度は、DSC(示差走査熱量測定)により決定する。熱架橋成分の反応は、吸熱、発熱を伴うので、DSCチャートには、明確な発熱ピークや吸熱ピークが現れにくく、複雑な形状となることが多い。そのため、DSCチャートのベースラインからのずれ量の絶対値を積算し、積算値が4mJ/mgとなる温度を、熱架橋成分の反応温度と定義する。
【0121】
より具体的には、熱架橋成分を試料パンに封じ、例えば-40℃の低温から、例えば160℃の高温まで、例えば5℃/分の昇温速度で昇温する。このようにして昇温過程における反応前のベースラインを得る。その後、低温側からみて、反応前のベースラインを延長し、該ベースライン(基準線)の熱量に対するDSCチャートの熱量の差分の絶対値を低温側から高温側に向かって積算する。その熱量の積算値が、4mJ/mgとなる温度を求め、これを熱架橋成分の反応温度とする。なお、ベースラインが定めにくいチャートの場合には、チャートの例えば25℃における熱量を基準とし、これとの差分を高温側に向かって積算して求める。
【0122】
反応温度においては、熱架橋成分は、わずかに反応していると考えられるが、架橋密度は低い状態であると考えられる。したがってこの温度よりも低い温度では、熱架橋成分の分子が柔軟な状態にあると考えられる。この状態の熱架橋成分は、溶解、膨潤等を起こしやすく、上述の洗浄部51で付与される水やアルコールによる洗浄作用を強く受けることができる。
【0123】
本実施形態のインクジェット捺染記録装置では、加熱部によってベルト23の表面23aが熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。このことから、ベルト23に意図せず或いは意図的であってもインクジェットインク組成物が付着した場合に、ベルト23からインクジェットインク組成物を洗浄部51により容易に除去できる。
【0124】
なお、記録媒体95に付着されたインクジェットインク組成物は、熱架橋成分の反応が十分に進行すると、記録媒体95に対して強固に付着することができ、摩擦堅牢性の高い画像を形成することができる。
【0125】
例えば熱架橋成分としてイソシアネート基のような架橋性基を含有するウレタン樹脂を用いる場合には、加熱温度は80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。このような加熱温度であれば、熱架橋成分の反応温度よりも低くなりやすく、ベルト23にインクジェットインク組成物が付着した場合に、ベルト23からインクジェットインク組成物を洗浄部51により容易に除去できる傾向がある。即ち、ベルト23の表面23aの温度は、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。
【0126】
4.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述したインクジェット捺染記録装置100により容易に実現できる。すなわち、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、粘着層を備え、記録媒体95を支持するベルト23を加熱する工程と、ベルト23に支持された記録媒体95に、上述のインクジェットインク組成物をインクジェット記録ヘッドから吐出して付着させる工程と、を含み、インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、ベルト23を加熱する工程では、ベルト23の温度が、熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。
【0127】
本実施形態のインクジェット記録方法によれば、インクジェットインク組成物が熱架橋成分を含むことにより、形成される画像の摩擦堅牢性を高めることができる。その上、加熱工程における加熱でインクジェットインク組成物の熱架橋成分の反応が抑制されるので、インクジェットインク組成物がベルトに付着した場合であってもベルトへの固着が抑制され、ベルトの洗浄が容易である。
【0128】
また、本実施形態のインクジェット記録方法は、ベルト23を洗浄する洗浄工程をさらに含んでもよい。洗浄工程は、例えば上述したインクジェット捺染記録装置100の洗浄部51により実施できる。
【0129】
さらに、本実施形態のインクジェット記録方法は、熱架橋成分の反応温度よりも高い温度に、記録媒体を加熱する工程をさらに含んでもよい。かかる加熱は、例えば上述したインクジェット捺染記録装置100の加熱ユニット27を用いて行うことができる。
【0130】
5.実施例等
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお評価は、特に断りが無い場合は、温度25.0℃、相対湿度40.0%の環境下で行った。
【0131】
5.1.インク組成物の調製
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5.0μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、実施例、参考例及び比較例に係るインク組成物を得た。表1中の数値は、質量%を示す。水はイオン交換水を用い、各インク組成物の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。なお、表中、UW-1527F、W6010の含有量は固形分換算量である。
【0132】
【0133】
表1に示す成分のうち、UW-1527Fは、宇部興産株式会社製、ETANACOLL(登録商標)UWシリーズ、型番:UW-1527Fを示す。また、W6010は、三井化学株式会社製、タケラック(登録商標)、型番:W6010を示す。TEGは、トリエチレングリコール(試薬)、BTGは、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、E1010は、日信化学工業社製、オルフィン(登録商標)E1010(アセチレングリコール系界面活性剤)を、TEAは、トリエタノールアミン(試薬)をそれぞれ示す。また、PB15:3は、C.I.Pigment Blue15:3を示す。なお、UW-1527Fは熱架橋反応性を示すウレタン樹脂であり、W6010は熱架橋反応性を示さないウレタン樹脂である。
【0134】
5.2.DSC測定
エマルション状態のUW-1527を、広口容器に10g入れ、室温(23℃)にて固化するまで1昼夜以上乾燥させた。乾燥した固化物10mg~15mgを容器から取り出し、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、示差走査熱量計(EXSTAR6000 DSC6220)を用い5℃/分の昇温速度で、-40℃から160℃まで測定を行った。得られたDSCチャートから25℃から50℃、60℃、90℃までのそれぞれの熱量を付属の解析ソフトを用いて積算して算出した。各例において、ベルトを加熱した温度までの積算熱量が、反応温度である4.0mJ/mgの積算熱量を超えたか否かを判定し、表1に記載した。
【0135】
5.3.洗浄性の評価
上記実施形態で説明したインクジェット捺染記録装置100と同様の装置を用いた。記録媒体95として、綿100%の白色綿ブロードを用いた。また、粘着剤29として、ATR CHEMICALS社製「ATRASOL GP1(ATR code:ATR1717)」を用いた。記録媒体95がキャリッジ移動部45(ヘッドユニット)に到達する前から各例のインクジェットインク組成物をベルト23に対して吐出して付着させた。その後、インクジェットインク組成物が付着したベルト23の部位が、洗浄部51を通過し、媒体密着部60に到達して新しい記録媒体95に密着されたときに、記録媒体95の記録面とは反対側の面に、インクジェットインク組成物が付着した程度を以下の基準で評価して、結果を表1に記載した。評価結果がB以上の場合、良好な洗浄性が得られているといえる。
A:ベルト上にインクジェットインク組成物の付着が無い
B:ベルト上にインクジェットインク組成物の付着は目視で確認されないが、ベルトを指でこするとインクジェットインク組成物が指に付着する
C:ベルト上にインクジェットインク組成物の付着がある(目視で分かる)
【0136】
5.4.摩擦堅牢性の評価
学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製、製品名「AB-301」)を用いて、得られた捺染物の摩擦堅牢性の評価を行った。なお、印捺後の加熱乾燥は165℃で行った。摩擦堅牢性の評価では、記録媒体95の表面に、白綿布を取り付けた摩擦子で荷重200gをかけて100往復擦ることにより行った。その後、白綿布の汚れ、及び捺染物からのインクジェットインク組成物の剥がれ具合を目視で観察した。評価結果がC以上の場合、良好な摩擦堅牢性が得られているといえる。
A:白綿布に汚れが認められず、捺染物の剥がれも認められなかった
B:白綿布に汚れが認められるが、捺染物の剥がれは認められなかった
C:白綿布に汚れが認められ、捺染物に20面積%以内の若干の剥がれが認められた
D:白綿布全面に汚れが認められ、記録物に20面積%を超える剥がれが認められた
【0137】
5.5.評価結果
記録媒体を支持するベルトと、ベルトを加熱する加熱部と、インクジェットインク組成物を吐出するインクジェット記録ヘッドと、を備え、ベルトが、粘着層を備えた例であって、インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、加熱部により、ベルトが、熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱された各実施例では、ベルトの洗浄性及び摩擦堅牢性の両者を良好とできることが判明した。熱架橋反応性を有しない樹脂を用いた参考例では、ベルトの洗浄性が良好である反面、摩擦堅牢性が不足することが分かった。他方、加熱部により、ベルトが、熱架橋成分の反応温度以上の温度に加熱された比較例1ではベルトの洗浄性が得られないことが分かった。
【0138】
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0139】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0140】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0141】
インクジェット捺染記録装置の一態様は、
インクジェット捺染記録装置であって、
記録媒体を支持するベルトと、
前記ベルトを加熱する加熱部と、
インクジェットインク組成物を吐出するインクジェット記録ヘッドと、
を備え、
前記ベルトが、粘着層を備え、
前記インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、
前記加熱部により、前記ベルトが、前記熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。
【0142】
このインクジェット捺染記録装置によれば、インクジェットインク組成物が熱架橋成分を含むことにより、形成される画像の摩擦堅牢性を高めることができる。その上、加熱部による加熱によるインクジェットインク組成物の熱架橋成分の反応が抑制されるので、インクジェットインク組成物がベルトに付着した場合であってもベルトへの固着が抑制され、ベルトの洗浄が容易である。
【0143】
前記インクジェット捺染記録装置の態様において、
前記ベルトを洗浄する洗浄部をさらに備えてもよい。
【0144】
このインクジェット捺染記録装置によれば、ベルトを効率よく洗浄することができる。
【0145】
前記インクジェット捺染記録装置の態様において、
前記ベルトが無端ベルトであってもよい。
【0146】
このインクジェット捺染記録装置によれば、記録媒体をより安定して搬送することができる。
【0147】
前記インクジェット捺染記録装置の態様において、
前記熱架橋成分が、架橋性基を含有するウレタン樹脂であってもよい。
【0148】
このインクジェット捺染記録装置によれば、摩擦堅牢性のより良好な画像を記録することができる。
【0149】
前記インクジェット捺染記録装置の態様において、
前記ウレタン樹脂がポリカーボネート系ウレタン樹脂であり、破断伸度が200%以上600%以下であってもよい。
【0150】
このインクジェット捺染記録装置によれば、摩擦堅牢性のさらに良好な画像を記録することができる。
【0151】
前記インクジェット捺染記録装置の態様において、
前記インクジェットインク組成物が、標準沸点280℃以上の有機溶剤を、前記インクジェットインク組成物の総量に対し、10.0質量%以上30.0質量%以下含有してもよい。
【0152】
このインクジェット捺染記録装置によれば、標準沸点が高く揮発し難い有機溶剤を一定量以上含有することで、加熱部による加熱によるインクジェットインク組成物の乾燥が抑制され、インクジェットインク組成物がベルトに付着した場合であってもベルトへの固着が抑制され、ベルトの洗浄が容易である。
【0153】
インクジェット記録方法の一態様は、
粘着層を備え、記録媒体を支持するベルトを加熱する工程と、
前記ベルトに支持された前記記録媒体に、インクジェットインク組成物をインクジェット記録ヘッドから吐出して付着させる工程と、
を含み、
前記インクジェットインク組成物が、熱架橋成分を含有し、
前記ベルトを加熱する工程では、前記ベルトの温度が、前記熱架橋成分の反応温度よりも低い温度に加熱される。
【0154】
このインクジェット記録方法によれば、インクジェットインク組成物が熱架橋成分を含むことにより、形成される画像の摩擦堅牢性を高めることができる。その上、加熱工程における加熱でインクジェットインク組成物の熱架橋成分の反応が抑制されるので、インクジェットインク組成物がベルトに付着した場合であってもベルトへの固着が抑制され、ベルトの洗浄が容易である。
【0155】
前記インクジェット記録方法の態様において、
前記ベルトを洗浄する洗浄工程をさらに含んでもよい。
【0156】
このインクジェット記録方法によれば、より効率よく摩擦堅牢性の良好な画像を形成できる。
【0157】
前記インクジェット記録方法の態様において、
前記熱架橋成分の反応温度よりも高い温度に、前記記録媒体を加熱する工程をさらに含んでもよい。
【0158】
このインクジェット記録方法によれば、より効率よく摩擦堅牢性の良好な画像を形成できる。
【符号の説明】
【0159】
1…制御部、2…インターフェイス部、3…CPU、4…記憶部、5…制御回路、6…入力装置、7…検出器群、10…媒体供給部、11…供給軸部、12…軸受部、20…媒体搬送部、21…搬送ローラー、22…搬送ローラー、23…ベルト、23a…表面、23b…内周面、24…ベルト回転ローラー、25…ベルト駆動ローラー、26…搬送ローラー、27…加熱ユニット、28…搬送ローラー、29…粘着剤、30…媒体回収部、31…巻取り軸部、32…軸受部、40…印刷部、42…ヘッドユニット、43…キャリッジ、45…キャリッジ移動部、45a…ガイドレール、45b…ガイドレール、46…プラテン、50…洗浄ユニット、51…洗浄部、52…押圧部、53…移動部、54…洗浄槽、55…ブレード、56…エアーシリンダー、57…ボールブッシュ、58…洗浄ローラー、60…媒体密着部、61…押圧部、69…当接部、90…フレーム部、91…ベルト支持部、95…記録媒体、99…床面、100…インクジェット捺染記録装置