IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 不二製油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】着色されたホワイトチョコレート様食品
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A23G1/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020042728
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021141848
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 革
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-235447(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208741(WO,A1)
【文献】日本食品工業学会誌,1986年,vol.33, no.6,pp.456-462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00-1/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件を満たす、着色されたホワイトチョコレート様食品。
1 アスコルビン酸を20~80質量%含有する水相が、500nm以下の粒径で油相中に微分散している。
2 1のアスコルビン酸はホワイトチョコレート様食品中、0.03~1.4質量%相当量含有する。
【請求項2】
以下の工程による、請求項1記載の着色されたチョコレート様食品の製造法。
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として20~55質量%である水相を調製する工程。
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程。
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程。なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する。
工程4.湿度80%未満、温度20~30℃で熟成する工程。
【請求項3】
以下の工程による、請求項1記載の着色されたチョコレート様食品の製造法。
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として1~55質量%である水相を調製する工程。
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程。
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を脱水し、水相におけるアスコルビン酸の濃度を20~80質量%とする工程。
工程4.工程3で得られた、濃縮された油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程。なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する。
工程5.湿度80%未満、温度20~30℃で熟成する工程。
【請求項4】
以下の工程により、ホワイトチョコレート様食品を着色する方法。
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として20~55質量%である水相を調製する工程。
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程。
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程。なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する。
工程4.湿度80%未満、温度10~30℃で熟成する工程。
【請求項5】
以下の工程により、ホワイトチョコレート様食品を着色する方法。
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として1~55質量%である水相を調製する工程。
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程。
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を脱水し、水相におけるアスコルビン酸の濃度を20~80質量%とする工程。
工程4.工程3で得られた、濃縮された油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程。なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する。
工程5.湿度80%未満、温度20~30℃で熟成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色されたホワイトチョコレート様食品に関するものであり、より具体的には、ホワイトチョコレート様食品の新規着色法と、該着色法を用いたホワイトチョコレート様食品の製造法、および、これらの方法で得られたホワイトチョコレート様食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤いチョコレートに関する出願としては、特許文献1が存在する。ここでは、ココアニブを酸性組成物で処理する、赤いココア製品の製造方法が開示されている。
Lアスコルビン酸からは、所定の条件で赤色色素が生成することが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-502541号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】農化第50巻、第10号,p.R209~R216、1976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡易な方法で、色素や着色素材を用いずに、ホワイトチョコレート様食品に着色する新規な方法を提供すること、該着色法を用いる、着色されたホワイトチョコレート様食品の製造法を提供すること、及び当該方法を用い調製される、着色されたホワイトチョコレート様食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題の解決に向け鋭意検討を行った。
特許文献1に記載の方法は極めて煩雑であり、また、ココア豆にまで遡って処理する必要があり、実用性の乏しいものであった。
非特許文献1はホワイトチョコレート様食品の着色とは全く関係の無い情報であった。
本発明者はさらに検討を行ったところ、所定量のアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が溶解した水相が分散された油中水型乳化物を原料の1つとしてとして調製されたホワイトチョコレート様食品が所定の条件で熟成されることで、好ましく着色されることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)以下の要件を満たす、着色されたホワイトチョコレート様食品、
1 アスコルビン酸を20~80質量%含有する水相が、500nm以下の粒径で油相中に微分散している、
2 1のアスコルビン酸はホワイトチョコレート様食品中、0.03~1.4質量%相当量含有する、
(2)以下の工程による、前記(1)記載の着色されたチョコレート様食品の製造法、
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として20~55質量%である水相を調製する工程、
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程、
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程、なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する、
工程4.湿度80%未満、温度20~30℃で熟成する工程、
(3)以下の工程による、前記(1)記載の着色されたチョコレート様食品の製造法、
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として1~55質量%である水相を調製する工程、
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程、
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を脱水し、水相におけるアスコルビン酸の濃度を20~80質量%とする工程、
工程4.工程3で得られた、濃縮された油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程、なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する、
工程5.湿度80%未満、温度20~30℃で熟成する工程、
(4)以下の工程により、ホワイトチョコレート様食品を着色する方法、
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として20~55質量%である水相を調製する工程、
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程、
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程、なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する、
工程4.湿度80%未満、温度10~30℃で熟成する工程、
(5)以下の工程により、ホワイトチョコレート様食品を着色する方法、
工程1.アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として1~55質量%である水相を調製する工程、
工程2.油相に工程1で得られた水相を500nm以下に微分散して油中水型乳化物とする工程、
工程3.工程2で得られた油中水型乳化物を脱水し、水相におけるアスコルビン酸の濃度を20~80質量%とする工程、
工程4.工程3で得られた、濃縮された油中水型乳化物を原料の一つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する工程、なお、該ホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸が0.03~1.4質量%相当量含有する、
工程5.湿度80%未満、温度20~30℃で熟成する工程、
に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な方法で、色素や着色素材を用いずに、ホワイトチョコレート様食品に着色することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明においてホワイトチョコレート様食品とは、チョコレート様食品の1つであって、ココア成分を全く含まないか、或いはわずかしか含まない事で、外見が乳白色を示すものをいう。
本発明において、チョコレート様食品とは、一例を挙げると、チョコレート類が該当する。また、ここで言うチョコレート類とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品だけでなく、油脂類を必須成分とし、必要により糖類、粉乳類、カカオ原料(カカオマス、ココア、ココアバター)、果汁粉末、果実粉末、呈味材、乳化剤、香料、着色料等の副原料を任意の割合で配合したものを言う。チョコレート類の代表的な例としては、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、またホワイトチョコレートを列挙できる。
【0010】
本発明でいう、着色されたホワイトチョコレート様食品とは、ピンクから、赤褐色にかけて着色されたホワイトチョコレート様食品のことで有る。より望ましくは、ピンクに着色されたものである。
【0011】
本発明に係る、着色されたホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸を20~80質量%含有する水相が、500nm以下の粒径で油相中に微分散している必要がある。ここでアスコルビン酸の量は、アスコルビン酸塩を水相に溶解した場合には、アスコルビン酸相当量として計算された値である。より具体的には、アスコルビン酸ナトリウムをA質量%含有するのであれば、アスコルビン酸相当量=A×(アスコルビン酸の分子量:176.12)/(アスコルビン酸ナトリウムの分子量:198.11)となる。本発明では、アスコルビン酸相当量も、アスコルビン酸量と表現することがある。
【0012】
本発明では、アスコルビン酸を含む水相が500nm以下の粒径で油相中に微分散していることで、好ましく着色されたホワイトチョコレート様食品を得ることができる。
【0013】
ここで、水相におけるアスコルビン酸のより望ましい量は、アスコルビン酸が溶解した水相を含む油中水型乳化物を脱水する工程を含むか否かによっても、相違する。水相におけるアスコルビン酸の濃度は、20~80質量%である必要があり、脱水工程をとらない場合の水相におけるアスコルビン酸の量は、25~60質量%がより望ましく、30~50質量%が更に望ましい。
一方、脱水工程をとる場合の水相におけるアスコルビン酸の量は、40~80質量%がより望ましく、55~78質量%が更に望ましい。
脱水工程をとることで、使用する油中水型乳化物の量が少なくなり、ホワイトチョコレート様食品における水分量を低く抑えることができる。一方、脱水工程をとらない場合は、脱水工程が不要であり、有利である。
いずれの場合も、ホワイトチョコレート様食品中にアスコルビン酸が適当な量含まれる事で、ホワイトチョコレートが好ましく着色される。
【0014】
本発明で使用するアスコルビン酸塩としては、具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウムを挙げることができ、より望ましくはアスコルビン酸ナトリウムである。適当なアスコルビン酸塩を使用することで、ホワイトチョコレートが好ましく着色される。
【0015】
本発明に係る、着色されたホワイトチョコレート様食品には、アスコルビン酸を0.03~1.4質量%相当量含有する必要があり、この量は、より望ましくは0.04~1.0質量%であり、更に望ましくは0.05~0.5質量%である。適当な量のアスコルビン酸を含むことで、ホワイトチョコレート様食品が好ましく着色される。
【0016】
次に、本発明に係る着色されたホワイトチョコレート様食品の製造法を、例をもって説明する。
本発明では、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩が合計で、アスコルビン酸の濃度として1~55質量%である水相を調製する。アスコルビン酸の濃度が20質量%未満の場合は、その後に調製する油中水型乳化物を脱水することで、アスコルビン酸濃度を20~80質量%とすることを前提とする。
【0017】
水相にはアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸塩以外にも、本発明の効果を妨げない範囲内で、他の水溶性成分を溶解することが出来る。たとえば、糖類を併せて溶解することで、より簡易に該水相を油相中に微分散することができて好ましい。
【0018】
本発明では、油相を調製する。油相は、油脂及び油脂に溶解する成分からなるが、本発明では、最低限、油脂が必要である。ここで用いる油脂に特に制限はなく、たとえば、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、コーン油、パーム油、ごま油、綿実油、魚油、豚脂、牛脂、乳脂の他、これらから選ばれる1以上を分別、硬化、エステル交換から選ばれる1以上の加工を施した油脂を使用することが出来る。なお、より望ましくは、大豆油、菜種油から選ばれる1以上である。適当な油脂を使用することで、効率的に本発明に係る着色されたホワイトチョコレート様飾品を製造することができる。
油相が油脂のみである場合は、該油脂のみを称して油相という。
【0019】
油相には、本発明に係る効果を妨げない範囲で、適宜各種成分を用いることが出来る。具体的には油溶性乳化剤や、油溶性抗酸化剤を挙げる事ができるが、油溶性乳化剤を配合することが望ましい。油溶性乳化剤とは、油脂に溶解する乳化剤であり、レシチンの他、HLBが7以下の乳化剤をいう。使用する油溶性乳化剤としては、ポリグリセリン縮合リシノレート、シュガーエステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチンを挙げることが出来、より望ましくはポリグリセリン縮合リシノレートである。なおポリグリセリン縮合リシノレートはPGPRと略称されることがある。適当な油溶性乳化剤を使用することで、ホワイトチョコレート様食品を好ましく着色することが出来る。
【0020】
本発明では、該油相に該水相を添加し、油中水型に乳化する。この乳化物は、以下油中水型乳化物と称する。なお、乳化する際、油相の油脂は融解状態であることは言うまでも無い。
油中水型へ乳化するためには、各種の乳化装置を用いることができる。具体的には高圧ホモゲナイザーを用いることが望ましい。これにより、水相を粒子径500nm以下の微分散状態とすることが必要である。このような微分散状態とすることにより、ホワイトチョコレート様食品を好ましく着色することができる。
【0021】
次に、必要に応じ、油中水型乳化物の脱水を行う。脱水には真空ポンプやアスピレーターを用いることができ、真空ポンプを用いるのが効率的である。脱水を行う事で、油中水型乳化物の、ホワイトチョコレート様食品への添加量を減らすことができる。一方、脱水を行うには、上記の通り真空ポンプ等を準備しなければならず煩雑であり、求める着色の程度等によっては、脱水工程を省略することも可能である。
【0022】
なお、脱水により、計算上では水相におけるアスコルビン酸の量が、その溶解度の上限を超えているように見える場合がある。しかしこのような場合であっても、本発明におけるように、一旦アスコルビン酸を水溶液として油相に微分散した後に脱水した場合は、アスコルビン酸を粉体で添加した場合とは異なり、水溶液として添加した場合と同様の効果が認められる。
脱水により、水相におけるアスコルビン酸の濃度を20~80質量%にする必要が有り、この濃度は、より望ましくは40~80質量%であり、、更に望ましくは55~78質量%である。
【0023】
本発明では、脱水工程の有無を問わず、上記油中水型乳化物を原材料の1つとして、ホワイトチョコレート様食品を調製する。調製方法は一般的なホワイトチョコレート様食品の調製法に従うことができるし、また、市販のホワイトチョコレートを融解し、そこへ該油中水型乳化物を添加し、混合することでもよい。この場合、該油中水型乳化物の量は、ホワイトチョコレート様食品中のアスコルビン酸量として、0.03~1.4質量%となるように調整するが、該油中水型乳化物の必要量はわずかである。そのため、融解したホワイトチョコレート様食品に該油中水型乳化物を添加して混合することで、容易に均質化することが可能である。
その後、該ホワイトチョコレート様食品は必要に応じテンパリング操作を行った後、型へ流し込み、冷却する。冷却後、型抜きする。
【0024】
次に、型抜きされた該ホワイトチョコレート様食品は、湿度80%未満、温度10~30℃で保持する。この工程を本発明では熟成と称する。熟成時の湿度は、より望ましくは60%以下であり、更に望ましくは50%以下である。また、温度はより望ましくは15~28℃であり、更に望ましくは17~25℃である。
湿度と温度の条件を適当な範囲とすることで、ホワイトチョコレート様食品を好ましく着色することが出来る。
【0025】
なお熟成期間は任意に定める事ができるが、概ね10~20日である。ただしこれは、熟成時の条件によっても変わりうるし、また、必要とする着色程度によっても変え得る。よって、当業者であれば、どのような色調のホワイトチョコレート様食品を得たいかを考慮して、適宜設定することが出来る。
【0026】
本発明は、ホワイトチョコレート様食品を着色する方法に係る発明ととらえることも出来る。すなわち、上記の着色されたホワイトチョコレート様食品の製造法に係る発明の工程を採用することで、該ホワイトチョコレート様食品を好ましく着色することができるのである。
以下、実施例を示す。
【実施例
【0027】
検討1 油中水型乳化物の調製
表1-1の配合に従い、油中水型乳化物を調製した。調製法は、「○油中水型乳化物の調製法」に従った。
【0028】
表1-1 油中水型乳化物の配合
・乳化剤1には、阪本薬品工業株式会社製ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル「CRS-75」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
・試験1-1の油中水型乳化物における水相粒子の大きさは、「○水相粒子径の測定法」で測定したところ500nm以下であった。
【0029】
○油中水型乳化物の調製法
1.配合に従い、水相の成分を水に溶解した。
2.配合に従い、油相の成分を油に溶解した。
3.油相に水相を入れ、ホモミキサーにて混合した。
4.さらに、高圧ホモゲナイザー(37MPa、20パス)にて油中水型乳化物に乳化した。
なお、配合において水相のないものは、水相のない状態で3,4の工程のみ行った。
【0030】
○水相粒子径の測定法
測定する油中水型乳化物2μlをヘキサン2mlに希釈し、測定した。
装置名:ゼータサイザーナノS、製造元:マルバーン
温度: 20.0℃
平衡時間: 240秒
セル:ガラスセル
測定角度: 173°
ポジショニング法:最適ポジション選択
自動減衰の選択:有
【0031】
検討2 アスコルビン酸添加態様と効果
表2-1の配合に従い、ホワイトチョコレート様食品を調製した。調製法は「○ホワイトチョコレート様食品の調製法」に従った。
その後着色を評価した。評価法は「○官能による着色評価法」に従った。結果を表2-2に示した。
【0032】
表2-1 ホワイトチョコレート様食品の配合
・ホワイトチョコレートには、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
【0033】
○ホワイトチョコレート様食品の調製法
1 ホワイトチョコレートを50℃の湯せんで融解した。
2 表2-1の配合に従い、比較例2-1ではアスコルビン酸ナトリウム粉体を添加した。比較例2-2及び実施例2-1では、各乳化物ないし組成物を添加した。
3 よく攪拌し、均一にした。
4 31℃まで温調し、全体に対し0.2質量%のチヨコシードLT(不二製油株式会社製)を添加した。
5 モールドに流し込み成形し、冷蔵庫(5℃)で30分間固化した。
6 冷却固化後、モールドから剥離した。
その後、各サンプルを20℃、湿度60%以下の環境下、20日間熟成し、その後評価に供した。
【0034】
○官能による着色評価法
熟成後のホワイトチョコレート様食品を切断し、ホワイトチョコレートの開発に携わる熟練したパネラー4名の合議により、以下の基準で色調の評価を行った。比較対象は、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
A 比較対象と比べ、色調の変化がほとんど感じられないもの。
B 比較対象に対し、わずかながらピンク色の着色が感じられるもの。
C 比較対象に対し、明確なピンク色の着色が感じられるもの。
D 比較対象に対し、明確な着色が感じられるものの、やや褐色がかったもの。
B,C,Dを、着色効果有りと判断した。このうち、Cを最も好ましい色調と判断した。
【0035】
表2-2 結果
【0036】
考察
ホワイトチョコレートへ、本発明に係る方法でアスコルビン酸を含有させることで、ピンク色の着色が得られることが確認された。そして、この着色は本発明に係る方法ではない方法で同量のアスコルビン酸を含有させた場合、即ちアスコルビン酸を固体(粉体)で添加した場合には、得られないことが確認された。
【0037】
検討3 アスコルビン酸量の検討
表3-1の配合に従い、アスコルビン酸の量を変えたホワイトチョコレート様食品を調製した。方法は、「○ホワイトチョコレート様食品の調製法2」に従った。
得られたホワイトチョコレート様食品は、上記「○官能による着色評価法」に従い、評価を行った。結果を表3-2に示した。
【0038】
表3-1 配合
・ホワイトチョコレートには、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
【0039】
○ホワイトチョコレート様食品の調製法2
1 ホワイトチョコレートを50℃の湯せんで融解した。
2 表3-1の配合に従い、原材料を混合した。
3 よく攪拌し、均一にした。
4 31℃まで温調し、全体に対し0.2質量%のチヨコシードLT(不二製油株式会社製)を添加した。
5 モールドに流し込み成形し、冷蔵庫(5℃)で30分間固化した。
6 冷却固化後、モールドから剥離した。
その後、各サンプルを20℃、湿度60%以下の環境下、20日間熟成し、その後評価に供した。
【0040】
表3-2 結果
【0041】
考察
表3-2に示されたように、ホワイトチョコレート様食品中にアスコルビン酸相当量として0.03~1.4質量%含有したものが、ホワイトチョコレート様食品において着色が得られることが確認された。
【0042】
検討4 熟成条件の検討~湿度の検討~
表4-1の配合の配合に従い、ホワイトチョコレート様食品を調製した。方法は、「○ホワイトチョコレート様食品の調製法3」に従った。
得られたホワイトチョコレート様食品を、表4-2の各条件で熟成した。熟成後のホワイトチョコレート様食品を「○官能による着色評価法」により評価を行い、結果を表4-3に記載した。
【0043】
表4-1 配合
・ホワイトチョコレートには、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
【0044】
○ホワイトチョコレート様食品の調製法3
1 ホワイトチョコレートを50℃の湯せんで融解した。
2 表4-1の配合に従い、原材料を混合した。
3 よく攪拌し、均一にした。
4 31℃まで温調し、全体に対し0.2質量%のチヨコシードLT(不二製油株式会社製)を添加した。
5 モールドに流し込み成形し、冷蔵庫(5℃)で30分間固化した。
6 冷却固化後、モールドから剥離した。
その後の熟成は、別途設定された条件に従った。
【0045】
表4-2 熟成条件~湿度~
各条件下、124日間熟成した。
【0046】
表4-3 結果
【0047】
考察
表4-3のとおり、熟成時の湿度は80%未満とする必要が有ることが示された。
【0048】
検討5 熟成条件の検討~温度の検討~
表5-1の配合の配合に従い、ホワイトチョコレート様食品を調製した。方法は、「○ホワイトチョコレート様食品の調製法3」に従った。
得られたホワイトチョコレート様食品を、表5-2の各条件で熟成した。熟成後のホワイトチョコレート様食品を「○官能による着色評価法」により評価を行い、結果を表5-3に記載した。
【0049】
表5-1 配合
・ホワイトチョコレートには、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
【0050】
表5-2 熟成条件~温度~
各条件下、42日間熟成した。
【0051】
表5-3 結果
【0052】
考察
表5-3に示されたように、熟成の温度は20~30℃が好ましいものであった。
なお、本品は30℃を超える温度で熟成した場合は融解してしまい、チョコレート様食品を製造することは困難である。
【0053】
検討6 色調の装置による測定
ピンク色に着色したホワイトチョコレート様食品(実施例3-5)を、表6-1に従いホワイトチョコレートで希釈した。方法は、「○ホワイトチョコレートの希釈法」に従った。
得られたサンプルを色彩色差計で測定した。方法は「○色彩色差計での測定法」に従った。結果を表6-2に記載した。
【0054】
表6-1 希釈配合
・ホワイトチョコレートには、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
【0055】
○ホワイトチョコレートの希釈法
1 ホワイトチョコレート及び実施例3-1のホワイトチョコレート様食品のそれぞれを、50℃の湯せんで融解した。
2 表6-1の配合に従い、両者を混合した。
3 よく攪拌し、均一にした。
4 31℃まで温調し、全体に対し0.2質量%のチヨコシードLT(不二製油株式会社製)を添加した。
5 アルミ容器に流し込み成形し、冷蔵庫(5℃)で30分間固化した。
【0056】
○色彩色差計での測定法
1 各サンプルを、ホワイトチョコレートの開発に携わる熟練したパネラー4名の合議により、目視による色調の評価を行った。結果は表6-2に記載した。
2 各サンプルを50℃で融解した。
3 色彩色差計CR-400(コニカミノルタオプティクス株式会社製)の検出器へ、融解した各サンプルを接触させ、L*a*bを3回測定し、平均値を算出した。
【0057】
表6-2 結果
【0058】
考察
・赤方向を示すaと、希釈の程度に相関がみられた。
・目視において、着色が確認されるのは検討6-2以上であり、この際のa値が-1.1であることから、本発明でいう着色とは、ホワイトチョコレート様食品を色彩色差計で測定した場合に、a値が-1以上の場合であることが判断される。
【0059】
検討7 アスコルビン酸濃度の高い油中水型乳化物による検討
「○油中水型乳化物の調製法2」に従い、表7-1の組成となるように油中水型乳化物を調製した。
得られた油中水型乳化物を用い、表7-2の配合に従い、ホワイトチョコレート様食品を調製した。調製法は「○ホワイトチョコレート様食品の調製法」に従った。その後着色を評価した。評価法は「○官能による着色評価法」に従った。結果を表7-3に示した。
【0060】
表7-1 配合
・乳化剤1には、阪本薬品工業株式会社製ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル「CRS-75」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
【0061】
○油中水型乳化物の調製法2
1.「油中水型乳化物の調製法」により、表1-1,試験1-1の油中水型乳化物を調製した。
2.1の油中水型乳化物を真空ポンプにて真空度6mmHgにて加温(40℃)しながら脱水し、カールフィッシャー水分計(831型KFクーローメーター メトローム)にて乳化物中の水分が試験7-1記載の通りとなるようにした。
なお上記の水相においては、アスコルビン酸ナトリウムの溶解度を超えているが、このような、一旦溶液とした後に、微分散状態で脱水した場合には、溶液として存在する場合と同様の効果が得られるため、本発明では、溶解状態と判断した。
【0062】
表7-2 配合
・ホワイトチョコレートには、不二製油株式会社製「ホワイトチョコレート」を使用した。
・大豆油には、不二製油株式会社製「大豆白絞油」を使用した。
【0063】
表7-3 結果
【0064】
考察
水相におけるアスコルビン酸濃度の高い油中水型乳化物を用いても、ホワイトチョコレート様食品が好ましく着色されることが分かった。
水相におけるアスコルビン酸濃度が高いほうが、チョコレート様食品に対する油中水型乳化物の添加量が少なくすることができ、工業的に本発明に係る着色されたホワイトチョコレート様食品を製造する上では、好ましいと考えられる。