(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】植物栽培設備
(51)【国際特許分類】
A01D 46/00 20060101AFI20240409BHJP
A01G 9/12 20060101ALI20240409BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A01D46/00 A
A01G9/12 B
A01G9/14 W
(21)【出願番号】P 2020044939
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義明
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017396(JP,A)
【文献】特開2019-097448(JP,A)
【文献】特開昭52-024860(JP,A)
【文献】特開平09-037636(JP,A)
【文献】特開平07-194254(JP,A)
【文献】実開平07-030637(JP,U)
【文献】特開2019-097447(JP,A)
【文献】特開2011-115044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243696(US,A1)
【文献】特開2016-010375(JP,A)
【文献】特許第3503207(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 46/00-43/16
A01G 9/12- 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培ベッド(5)に所定間隔で上下方向の誘引部材(17)を設けて植物(P)を栽培した植物栽培設備において、
栽培ベッド(5)の長手方向に沿って設定間隔で、かつ、左右方向に延びる横桟(28a)を設け、隣接する横桟(28a)の間隔部を果実垂れ下げ可能空間(29)として形成し、
果実垂れ下げ可能空間(29)を隔てて横桟(28a)に葉受体としての葉受ネット(30)を設け、
栽培ベッド(5)間を前記長手方向に移動する移動作業車(3)に、果房毎に収穫する果房収穫装置(40)と、果房収穫装置(40)で収穫した果実を収容する果実収容バケット(b)を搭載し、
果房収穫装置(40)は果房を切断する切断装置であって、該切断装置のカッタ刃は横桟(28a)より下位置であることを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
移動作業車(3)には、果房を挟持する挟持搬送ベルト(42)と、収穫した果房を果実収容バケット(b)に案内する案内シュート(43)を設け、挟持搬送ベルト(42)で挟持した状態で果房収穫装置(40)の切断装置で果房を切断することを特徴とする請求項1記載の植物栽培設備。
【請求項3】
栽培ベッド(5)は、昇降フレーム(18)に載置状に設けられ、昇降フレーム(18)は昇降連動手段(19)により水平姿勢を維持したままで上下に昇降する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の植物栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培設備において、栽培ベッドの上側には、該栽培条に沿う誘引ワイヤを設け、栽培される植物の栽培株は、誘引ワイヤにより誘引される構成としている(特許文献1)。そして、収穫ロボットが栽培ベッド間を走行して植物の側方から収穫用アームを伸ばして果実を収穫する技術がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-10375号公報
【文献】特許第3503207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、植物が生長して果実を収穫するにつれ、果実は段々上方に実るので誘引紐を下ろして果実位置を低くする必要があり収穫作業が煩わしい。また、特許文献2の構成によると、果実を一個ずつ挟持して収穫するものであるから、効率的でなく、さらに果実周辺に茂る葉が邪魔となって果実を認識し難い。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、収穫作業を効率良く行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、
栽培ベッド(5)に所定間隔で上下方向の誘引部材(17)を設けて植物(P)を栽培した植物栽培設備において、
栽培ベッド(5)の長手方向に沿って設定間隔で、かつ、左右方向に延びる横桟(28a)を設け、隣接する横桟(28a)の間隔部を果実垂れ下げ可能空間(29)として形成し、
果実垂れ下げ可能空間(29)を隔てて横桟(28a)に葉受体としての葉受ネット(30)を設け、
栽培ベッド(5)間を前記長手方向に移動する移動作業車(3)に、果房毎に収穫する果房収穫装置(40)と、果房収穫装置(40)で収穫した果実を収容する果実収容バケット(b)を搭載し、
果房収穫装置(40)は果房を切断する切断装置であって、該切断装置のカッタ刃は横桟(28a)より下位置であることを特徴とする植物栽培設備である。
第2の本発明は、
移動作業車(3)には、果房を挟持する挟持搬送ベルト(42)と、収穫した果房を果実収容バケット(b)に案内する案内シュート(43)を設け、挟持搬送ベルト(42)で挟持した状態で果房収穫装置(40)の切断装置で果房を切断することを特徴とする第1の本発明の植物栽培設備である。
第3の本発明は、
栽培ベッド(5)は、昇降フレーム(18)に載置状に設けられ、昇降フレーム(18)は昇降連動手段(19)により水平姿勢を維持したままで上下に昇降する構成としたことを特徴とする第1又は第2の本発明の植物栽培設備である。
本発明に関連する第1の発明は、栽培ベッド5に所定間隔で上下方向の誘引部材17を設けて植物Pを栽培した植物栽培設備において、果房毎に収穫する果房収穫装置40を設けてなる。
【0007】
本発明に関連する第2の発明は、本発明に関連する第1の発明において、葉欠き処理装置47を設ける。
【0008】
本発明に関連する第3の発明は、本発明に関連する第2の発明において、葉欠き処理装置47を移動作業車3Fの前方に、果房収穫装置40をその後方に位置させる。
【0009】
本発明に関連する第4の発明は、本発明に関連する第2又は第3の発明において、栽培ベッド5の左右側方に果実垂下げ可能空間29と葉受体30を形成し、果房収穫装置40を葉受体30よりも下位置に、葉欠き処理装置47を葉受体30よりも上位置に設ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、果実を果房毎に収穫することが確実かつ容易にできる。
本発明に関連する第1の発明によると、果実を果房毎に収穫することができ作業が迅速である。
【0011】
本発明に関連する第2および第3の発明によると、本発明に関連する第1の発明の効果に加え、葉欠きした後で果房を収穫できるので葉が邪魔にならない。
【0012】
本発明に関連する第4の発明によると、本発明に関連する第2又は第3の発明の効果に加え、葉欠き処理装置47で果実fを損傷する恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる植物栽培設備の概要図である。
【
図2】(A)(B)同栽培設備の一部の概要を示す側面図である。
【
図3】(A)(B)同栽培設備の一部の概要を示す正面図である。
【
図4】同栽培設備の一部の概要と移動作業車の正面図である。
【
図5】同栽培設備の一部の概要と移動作業車の平面図である。
【
図6】(A)同栽培設備の一部の概要を示す正面図と、(B)その平面図である。
【
図7】同栽培設備の一部の概要と移動作業車の正面図である。
【
図8】(A)(B)同栽培設備の一部の概要を示す正面図である。
【
図9】(A)(B)同栽培設備の一部の概要を示す正面図である。
【
図10】(A)同栽培設備の一部の概要と果房収穫装置を示す正面図、(B)その平面図である。
【
図11】(A)同栽培設備の一部の概要と果房収穫装置を示す正面図、(B)その平面図である。
【
図12】(A)(B)(C)同果房収穫装置の果房案内手段の作用を示す正面図である。
【
図13】(A)同果房収穫装置の果房ばらし作用を示す正面図、(B)(C)はその側面図である。
【
図14】(A)同栽培設備の一部の概要と葉欠き処理装置を示す正面図、(B)その側面図である。
【
図15】同栽培設備の一部の概要と葉欠き処理装置を示す正面図である。
【
図16】(A)同栽培設備の一部の概要と葉欠き処理装置の作用を示す側面図、(B)同栽培設備の一部の概要と果房収穫装置の作用を示す側面図である。
【
図17】同栽培設備の一部の概要、果房収穫装置及び葉欠き処理装置を示す正面図である。
【
図18】(A)(B)同栽培設備の一部の概要を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の植物栽培設備について以下説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態にかかる植物栽培設備の栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、暖房機や加湿機等により温度及び湿度等の室内環境が管理される温室である栽培室1と、該栽培室1に隣接する出荷室2とを備えている。前記栽培室1内の中央には作業者又は移動作業車(作業台車)3あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路4を設けており、このメイン通路4は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路4の両側の側方位置には、栽培ユニットとなる栽培ベッド5を多数列配置した、作物を栽培するための栽培スペース6を構成している。尚、前記栽培ベッド5は培地となるロックウールで形成された栽培床部であり、出荷室2内の養液供給装置7から各栽培ベッド5へ養液が供給される構成となっている。
【0016】
また、メイン通路4の両端には開閉扉を備える栽培室1への出入り口8を設け、一方の出入り口8を介して隣接する出荷室2へ行き来できる構成となっている。尚、他方の出入り口8は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、移動作業車3をメイン通路4から各々の栽培ベッド5の間のサブ通路9に移動させ、該サブ通路9で栽培ベッド5に沿って移動作業車3を移動させながら栽培する植物に対する各種作業を行うことができる。サブ通路9は、各々の栽培ベッド5の左右間で前後方向に形成される通路となる。尚、移動作業車3は、サブ通路9上に敷設された温室全体を暖房する左右の暖房用管を走行用のレール13として走行する(
図2参照)。
【0017】
前記出荷室2内には、前述した養液供給装置7と、収穫されたトマト等の収穫物(果実)を重量や大きさあるいは等級別に選別する選別装置10とを備えている。尚、該選別装置10が、栽培された作物を出荷前に処理する前処理装置となる。選別装置10は、収穫物を搬送して選別する選別コンベア11と、該選別コンベア11の両側の側方に設けられた各階級毎の収穫物収容部12とを備えて構成され、選別コンベア11から各収穫物収容部12へ収穫物を供給して各階級に選別する構成となっている。尚、前記選別コンベア11は、平面視でL字状に屈曲した構成となっている。また、各々の収穫物収容部12には収穫物を収容する収容箱を設けて、この収容箱ごとに収穫物を出荷すればよい。
【0018】
図2に示すように、栽培ベッド5の上側には、該栽培条に沿う誘引ワイヤ15を設け、栽培される植物Pの栽培株は、誘引ワイヤ15から誘引フック16を介して垂れ下がる誘引部材としての誘引紐17により誘引される。尚、誘引フック16は、誘引ワイヤ15に吊り下げられる構成であり、巻き付けた誘引紐17を適宜繰り出して下方に垂れ下がらせる周知の構成となっている。また、植物が所定の高さ(誘引フック16の近く)まで成長した以降は、誘引フック16から誘引紐17を繰り出しながら、順次誘引紐17を前記複数の栽培株の配列方向、すなわち栽培ベッド5の長手方向にずらせて植物の高さを低下させ、植物を継続的に栽培する。従って、例えばトマトを栽培する場合、トマトの茎cが栽培ベッド5から誘引紐17を伝って伸長することになる。
【0019】
栽培ベッド5は、昇降フレーム18に載置状に設けられ、この昇降フレーム18は昇降連動手段19によって水平姿勢を維持したままで上下に昇降することができるよう構成している。すなわち、昇降連動手段19としては、昇降フレーム18を連結するワイヤ19aをウインチ等の巻取手段19bで巻取りながら昇降フレーム18を上昇し、巻取り解除すると昇降フレーム18の自重で降下できる構成である。なお、昇降フレーム18が水平姿勢維持のまま昇降動作できるように、四隅に複数の昇降手段19を構成するもので、複数の昇降手段19は制御部の昇降出力を受けて同時に昇降作動するよう構成するものである。
【0020】
昇降フレーム18の上昇によって、
図2(B),
図3(B)に示すように、下方側から適熟するトマトfは昇降フレーム18の上昇高さによって昇降フレーム18部の下方に垂れ下がり状に露出させることができる。
【0021】
移動作業車3は、
図4に示すように、前後左右の走行車輪20と、作業者が搭乗するステップ21と、収穫アーム22を備え、この収穫アーム22は、駆動機構を内装した機構本体23の上部において、縦軸回りに360度回動可能でかつ長さを伸縮制御可能な第1アーム22aと、この第1アーム22aに連結され昇降高さを変更制御できる第2アーム22bと、トマト等の果実を把持して収穫するハンド部22cとからなる。
【0022】
第1アーム22a、第2アーム22b及びハンド部22cの作動を制御しながら果実を収穫するが、その制御出力は、後述の撮像カメラ25の撮像出力に基づく。すなわち、移動作業車3のステップ21には、進行方向の前後一側又は両側に撮像カメラ25を備え、移動作業車3を移動させながら果実fの撮像データによって存在位置情報、着色情報を移動作業車制御部26に送信できるよう構成している。制御部26は、着色情報に基づいて収穫適期か否か判定し収穫適期の果実の位置情報に基づいて、収穫アーム22に収穫指令信号を出力して、アーム回動、伸縮及び収穫作動を実行させることができる。なお、撮像カメラ25を搭載する移動作業車と収穫アーム22を搭載する移動作業車は別々の作業車としてもよい。
【0023】
そして、前記走行車輪20は、機体の左右方向外側に配置される大径部と機体の左右方向内側に配置される小径部が一体に形成され、大径部と小径部との段差で前記レール13に沿って移動できるよう構成する。
【0024】
前記のように収穫アーム22は、第1アーム22aの180度近い回動によって隣接する栽培ベッド5の収穫も可能である。また、撮像カメラ25によって収穫対象のトマトを撮像するが、昇降フレーム18の高さを変更調整できるので、果実の垂れ下がりで明確に果実を捉えて撮影することができる。果実を下方から収穫することができるため、収穫アーム22の構成を簡素化できる。
【0025】
昇降フレーム18又は栽培ベッド5の延長部材に、茎受枠28を構成する。例えば、
図5に示すように、栽培ベッド5の長手方向に沿って適宜間隔で横桟28aを配置する。栽培ベッド5に沿わせて伸張するトマト茎は、前後複数の横桟28aで受けることができ、前後の横桟28aの間隔部は、果実垂下げ可能空間29となる。すなわち栽培ベッド5の左右側方に果実垂下げ可能空間29が形成される。更に
図6に示すように、この空間29を隔てて上記横桟28aに葉受体としての葉受ネット30を設けてなる。こうして、植物としてのトマトの成長に伴い茎cが栽培ベッド5に沿うように誘引すると、茎c近くに付く果実(トマト)fは果実垂下げ可能空間29から垂れ下がり、葉の先端部は葉受体としての帯状葉受ネット30で支えられる。したがって、葉が垂れ下がって果実を覆い撮像の際に影になるなどの支障を来さない。葉受体としては、葉受ネット30に代替して葉受板や葉受棒等を採用してもよい。
【0026】
なお、
図4の移動作業車3の機構本体23の上部に収穫アーム22を縦軸回りに360度回動可能に設ける場合、栽培ベッド5の左右両側方に果実(トマト)fが垂れ下がるよう植物Pの茎を伸張させるものであるから、隣接するサブ通路9,9をそれぞれ通過することで所定単一の栽培ベッド5の垂れ下がり果実(トマト)fを収穫できるもので、隣接のサブ通路9,9を移動させなければならない。所定のサブ通路9を通過するだけで、栽培ベッド5の左右両側方の果実(トマト)fを収穫するため、
図7に示すように、移動作業車3Aの本体部には収穫果実を収容する収容バケットbを載置できる空間を形成し、バケットフレーム部32から側方に張り出し状にアーム載置フレーム33を構成し、その上部に収穫アーム22Aを縦軸回りに回動可能に構成するものである。このように構成すると、同じ栽培ベッド5の左右側に垂れ下がる果実(トマト)fを単一の収穫アーム22Aで収穫できる。隣接するサブ通路6のレール13,13には予備バケット用台車31を待機させている。
【0027】
前記実施例では、移動作業車3を左右栽培ベッド5間の通路9に配置したが、
図8に示すように、栽培ベッド5の下方に配置することができるようレール34を追加配置する。昇降フレーム18がある程度上昇すると、下方空間に収穫アーム22Bや撮像カメラ25Bを搭載した移動作業車3Bにより、果実撮像とともに収穫を行う。このように構成すると、撮像カメラ25Bや収穫アーム22Bは至近距離で撮像し収穫作動できるもので、検出範囲を一定範囲に縮小化し、また収穫アーム22Bの作動範囲を縮小できて、構成を簡素化できる。
【0028】
上記の移動作業車3Bの両側には果実収容バケットbを積載できるバケット積載移動車36L,36Rを配置している。なお、移動作業車3Bには収穫果実を受けて左右横方向に搬送できる搬送コンベア37を設ける。搬送コンベア37は正逆転に切替駆動されるベルトコンベア形態とされ、収穫アーム22Bで把持された果実を受けてバケット積載移動車36L,36Rで待機するバケットbに向けて搬送し得る。また搬送コンベア37は左右に移動可能に設けられ、左右のバケット積載移動車36L又は36Rに待機するバケットb,bに向けて果実を搬送できる構成としている。したがって、バケットbの左側端から右側端に亘って移動しながら果実を搬送したり、左側バケット積載移動車36Lから右側バケット積載移動車36R側へ切り替えて果実搬送すべく設けられる。
【0029】
図8のバケット積載移動車36L,36Rは、バケットbを一段載置の構成であるが、多段に載置できる構成としてもよい。
図9のバケット積載移動車36L,36Rには上下二段のバケットb,bを載置できる構成としており、搬送コンベア37は上下に位置変更できる構成としてこれら二段のバケットb,bに対応させるものとしている。
【0030】
ところで、例えばトマトの場合には、
図4に示すように複数の果実がぶどうのように房となって実り成長する。これを果房といい、以下果房の収穫方法について説明する。栽培ベッド5の左右側方に形成される前記果実垂下げ可能区間29には果房に対応してその空間が形成されるものである。
図10において、移動作業車3Cには多段のバケットbを積載するとともに、本発明の果房収穫装置の一例としての切断装置40を備える。切断装置40は、果房の根元茎部を挟んで対向する一対のカッタ刃のせん断作用で切断できる構成とし、根元茎部が垂直方向になるのに対し一対のカッタ刃は左右方向から接近してせん断できる構成としている。なお、切断装置40のカッタ刃の作動は人為的なレバー操作や伝動モータのスイッチ形態に構成するものである。レール13が栽培ベッド5の左右に配設する茎受枠28と平行状態に維持されるものであると、果房の根元茎部はほぼ高さが揃うから移動作業車3Cを前進させることで切断装置40の切断圏内に根元茎部を導入でき、撮像カメラを不要にできる。ただし、撮像カメラを配置することによって正確に切断対象の果房の根元茎部を認識でき、精度良く切断装置40を接近させることができる。切断装置40は移動作業車3Cとの接続連繋箇所41において、適宜範囲で前後左右及び高さ方向に自由度を持たせて構成するものとする。
【0031】
さて、切断された果房は、左右一対の挟持搬送ベルト42と傾斜案内シュート43によってバケットbに排出案内される構成としている。なお、挟持搬送ベルト42は切断直前の果房の根元茎部を挟持できる構成とすると安定良く切断装置40による切断処理が行える。
【0032】
図11~
図13は切断装置40による切断後の果房の処理を示す。
図11において、移動作業車3Dには、切断装置40の背後に接近して果房の姿勢を傾斜姿勢とする姿勢強制板44と果房を受けて水平移送する案内ベルト45を備えている。このように果房状態で搬送できる構成とすると、バケットb内に果房を整列収容できる。
図12に果房の傾斜案内の詳細を示す。そして、果房の切断後、果実を個別分離する分離手段46を設けることで人手による作業を省力化する。分離手段46は、切断後の果房の根元茎部を挟持搬送しながら移送方向後方側ほど下位として一対のロッドによって構成される。一対のロッド間に根元茎部は通過させるが果実は通過できない間隙を設けておくことで、果房の果実は根元茎部から分離され個別にされる構成である(
図13)。
【0033】
次いで
図14に示す葉欠きの構成について、葉欠き処理装置としての切断装置(以下、葉欠き用切断装置)47は、上下一対のカッタ刃を備え、移動作業車3Eのテーブル上に立設するマスト部材48に上下調節可能に設けられる。上下一対のカッタ刃で切断対象の葉の茎部を挟みせん断作用で切断できる。上下一対のカッタ刃の作動は、前記果房の切断装置40と同様に、人為的なレバー操作や伝動モータのスイッチ形態による。移動作業車3Eを前進しながら撮像カメラ49で撮影された画像に基づいて、必要に応じて葉欠き用切断装置47を上下調整しながら適切な高さ位置から葉を切断することができる。切断された葉は、案内シュート50を経てバケットb2に収容される構成である。
【0034】
なお、葉欠き切断において移動作業車3Eの移動中の切断実施を効率的に行うために、植物Pの前記誘引紐17あるいは代替する支柱部材に植物Pの茎cをクリップ50留めするよう構成している。このように構成すると、移動作業車3Eの移動中であっても植物Pを安定させ得て切断装置40による果房切断、葉欠き用切断装置47による葉欠き切断も安定良く実施できる(
図15)。さらに、誘引具17を縦軸まわりに回動操作可能に構成すると、移動作業車が通過するサブ通路9に面しない内側で生長する果実や葉を該サブ通路9側にのぞませることができ、容易に果房切断や葉欠きを行うことができる(
図16)。
【0035】
図17,
図18は、果房切断装置40と葉欠き用切断装置47の両方を備えた移動作業車3Fとしている。葉欠き用切断装置47を移動作業車3Fの前方に、果房切断装置40をその後方に位置させる。このように構成すると、まず葉欠きを行うことができて果房を覆う葉を欠いて果房露出状態とでき、カメラ撮像、果房切断に都合が良い。なお、
図18は果房切断装置40に代えて果実アーム22を配置するものであるが、機能的には、果房の根元茎部を判断して切断できる果房収穫装置としてある。
【0036】
また、葉欠き切断は迅速に行い得、果房切断には時間を要するので、同一進行方向で同時的に作業を行う場合には葉欠きと果房切断の繰り返しの際に待ち時間を要して時間が無駄になる。このため、両切断装置40,47を備える場合には、往行程で葉欠き作業を行い、復行程で果房収穫を行う。すなわち、前進しながら葉欠きを行うが、葉欠きのみなので効率的に作業でき(
図18(A))、次いで後進しながら近傍に葉のない状態で後方に向けて撮像カメラ25で果房を撮影しながら果房の根元茎部を判定して収穫アーム22がこの根元茎部を切断することで収穫できる(同(B))。このように構成すると、葉欠き作業を先に行うことができ、果房切断に支障ありの葉を予め除去することができて、果房収穫を効率的に行い得る。実施例の場合は、葉欠き切断装置47を視野に入れないで撮像カメラ25の画像を取り込み得て果実認識が容易となる。
【0037】
なお、前記果実垂下げ可能空間29を構成する茎受枠28や葉受体としての葉受ネット30との高さ関係は、果房切断装置40は茎受枠28や葉受ネット30よりも下位に、葉欠き用切断装置47は茎受枠28や葉受ネット30よりも上位に設けられている。
【0038】
前記実施例では、果実検出手段として撮像カメラ25を設け、着色状況及び位置情報を取得できる構成としたが、レーザー出力等によって位置のみを検出できる構成でもよく、成熟度のみを検出できる形態でもよい。また、葉欠き対象の葉を認識する撮像カメラ49においても同様である。
【符号の説明】
【0039】
3F 移動作業車
5 栽培ベッド
17 誘引部材
29 果実垂下げ可能空間
30 葉受ネット(葉受体)
40 果房切断装置(果房収穫装置)
47 葉欠き用切断装置(葉欠き処理装置)
P 植物
f 果実