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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04G 9/00 20060101AFI20240409BHJP
   G04C 3/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G04G9/00 301A
G04C3/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020047854
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148565
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】岩浪 慶成
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 章
(72)【発明者】
【氏名】大谷 智彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 丞平
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-186064(JP,A)
【文献】特開2004-271259(JP,A)
【文献】特開平11-38162(JP,A)
【文献】特表2016-503518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00 - 99/00
G04G 3/00 - 99/00
G04B 45/00
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を表示する針と、
前記針の上方に配置され、遮光状態及び透過状態に設定可能な第1表示素子と、
前記第1表示素子の上方に配置され、散乱状態及び透過状態に設定可能な第2表示素子と、
前記第1及び第2表示素子を駆動する駆動回路と、
を具備し、
前記第2表示素子は、第1表示パターンを有する第1表示電極と、前記第1表示パターン以外の領域に設けられた第2表示パターンを有する第2表示電極とを含み、
前記駆動回路は、第1表示モードにおいて、前記第1表示パターンを散乱状態に設定し、前記第2表示パターンを透過状態に設定し、前記第1表示素子を遮光状態に設定する
時計。
【請求項2】
遮光状態及び透過状態に設定可能な第1表示素子と、
前記第1表示素子の上方に配置され、散乱状態及び透過状態に設定可能な第2表示素子と、
前記第2表示素子の上方に配置され、時刻を表示する針と、
前記第1及び第2表示素子を駆動する駆動回路と、
を具備し、
前記第2表示素子は、第1表示パターンを有する第1表示電極と、前記第1表示パターン以外の領域に設けられた第2表示パターンを有する第2表示電極とを含み、
前記駆動回路は、第1表示モードにおいて、前記第1表示パターンを散乱状態に設定し、前記第2表示パターンを透過状態に設定し、前記第1表示素子を遮光状態に設定する
時計。
【請求項3】
前記駆動回路は、第2表示モードにおいて、前記第1表示パターンを透過状態に設定し、前記第2表示パターンを散乱状態に設定し、前記第1表示素子を遮光状態に設定する
請求項1又は2に記載の時計。
【請求項4】
前記駆動回路は、第3表示モードにおいて、前記第1及び第2表示パターンを透過状態に設定し、前記第1表示素子を透過状態に設定する
請求項1乃至3のいずれかに記載の時計。
【請求項5】
前記駆動回路は、第4表示モードにおいて、前記第1及び第2表示パターンを散乱状態に設定し、前記第1表示素子を遮光状態又は透過状態に設定する
請求項1乃至4のいずれかに記載の時計。
【請求項6】
前記第1表示素子は、ゲストホスト型液晶表示素子であり、
前記第2表示素子は、高分子ネットワーク型液晶表示素子である
請求項1乃至のいずれかに記載の時計。
【請求項7】
前記第1表示素子は、前記遮光状態で黒を表示し、
前記第2表示素子は、前記散乱状態で白を表示する
請求項1乃至のいずれかに記載の時計。
【請求項8】
前記第1表示モードを選択する操作を受け付ける入力部をさらに具備する
請求項1乃至7のいずれかに記載の時計。
【請求項9】
前記針の下方に配置された時計用の文字盤をさらに具備する
請求項1に記載の時計。
【請求項10】
前記第1表示素子の下方に配置された時計用の文字盤をさらに具備する
請求項2に記載の時計。
【請求項11】
前記文字盤の下方に配置され、前記針を駆動するムーブメントをさらに具備する
請求項9又は10に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデザイン腕時計として、腕時計のケースに内蔵されたムーブメントの動きが透視できるスケルトン腕時計や、EL(electroluminescence)バックライト上にデザイン画を印刷したもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-203213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、時刻表示に重ねてデザイン画を表示することが可能な時計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る時計は、時刻を表示する針と、前記針の上方に配置され、遮光状態及び透過状態に設定可能な第1表示素子と、前記第1表示素子の上方に配置され、散乱状態及び透過状態に設定可能な第2表示素子と、前記第1及び第2表示素子を駆動する駆動回路とを具備する。
【0006】
本発明の一態様に係る時計は、遮光状態及び透過状態に設定可能な第1表示素子と、前記第1表示素子の上方に配置され、散乱状態及び透過状態に設定可能な第2表示素子と、前記第2表示素子の上方に配置され、時刻を表示する針と、前記第1及び第2表示素子を駆動する駆動回路とを具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、時刻表示に重ねてデザイン画を表示することが可能な時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る腕時計の平面図である。
図2図2は、図1に示したA-A´線に沿った腕時計の断面図である。
図3図3は、図2に示したゲストホスト型液晶表示素子の断面図である。
図4図4は、透過状態のゲストホスト型液晶表示素子の断面図である。
図5図5は、図2に示した高分子ネットワーク型液晶表示素子の断面図である。
図6図6は、透過状態の高分子ネットワーク型液晶表示素子の断面図である。
図7図7は、第1表示パターン及び第2表示パターンの一例を示す平面図である。
図8図8は、腕時計のブロック図である。
図9図9は、腕時計の動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、第1実施形態に係る第1乃至第4表示モードを説明する図である。
図11図11は、第2実施形態に係る第1乃至第3表示パターンの一例を示す平面図である。
図12図12は、第5表示モードを説明する図である。
図13図13は、第3実施形態に係る腕時計の断面図である。
図14図14は、第3実施形態に係る第1乃至第4表示モードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
[1] 第1実施形態
本実施形態は、時計に関する構成例である。本実施形態では、時計の一種である腕時計を例に挙げて説明する。
【0011】
[1-1] 腕時計1の構成
図1は、第1実施形態に係る腕時計1の平面図である。図2は、図1に示したA-A´線に沿った腕時計1の断面図である。
【0012】
腕時計1は、ケース2、裏蓋3、カバー4、電池5、ムーブメント6、軸7、短針(時針ともいう)8、長針(分針ともいう)9、時計文字盤10、駆動回路11、ゲストホスト型液晶表示素子12、及び高分子ネットワーク型液晶表示素子13を備える。
【0013】
ケース2は、四角形を有する。ケース2は、上側と下側とが開口した枠形状を有する。ケース2は、例えば樹脂で構成される。
【0014】
裏蓋3は、ケース2の下側の開口部を塞ぐようにして、ケース2に固定される。裏蓋3は、例えば金属で構成される。
【0015】
カバー4は、ケース2の上側の開口部を塞ぐようにして、ケース2に固定される。カバー4は、透明な材料で構成され、例えばガラスで構成される。
【0016】
ケース2、裏蓋3、及びカバー4の内部には、電池5、ムーブメント6、軸7、短針(時針ともいう)8、長針(分針ともいう)9、時計文字盤10、駆動回路11、ゲストホスト型液晶表示素子12、及び高分子ネットワーク型液晶表示素子13が収容される。電池5、ムーブメント6、時計文字盤10、駆動回路11、ゲストホスト型液晶表示素子12、及び高分子ネットワーク型液晶表示素子13は、図6に図示した位置に固定部材(図示せず)で固定される。
【0017】
電池5は、裏蓋3の上方に配置される。電池5は、ムーブメント6及び駆動回路11に電圧を供給する。電池5は、太陽電池で構成してもよい。
【0018】
ムーブメント6は、電池5の上方に配置される。ムーブメント6は、時計の針を駆動するための機構である。ムーブメント6は、時刻に合わせて、時計の針を機械的に駆動する。
【0019】
軸7は、ムーブメント6に取り付けられる。短針8及び長針9は、軸7に取り付けられる。軸7は、ムーブメントによって回転する。短針8及び長針9は、視角的に時刻を表示する。
【0020】
時計文字盤10は、ムーブメント6と短針8との間に配置される。時計文字盤10の上面には、時刻用の文字が印刷される。
【0021】
ゲストホスト型液晶表示素子12は、長針9の上方に配置される。ゲストホスト型液晶表示素子12は、ホストとしての液晶層を有し、液晶層内にゲストとしての二色性色素が溶解される。ゲストホスト型液晶表示素子12をGH液晶表示素子と表記する。GH液晶表示素子12の具体的な構成については後述する。
【0022】
高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)表示素子13は、GH液晶表示素子12の上方に配置される。高分子ネットワーク型液晶表示素子13は、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)表示素子であってもよい。高分子ネットワーク型液晶表示素子13をPN液晶表示素子13と表記する。PN液晶表示素子13は、液晶材料と高分子材料とを有する液晶層を含む。PN液晶表示素子13の具体的な構成については後述する。
【0023】
[1-2] GH液晶表示素子12の構成
図3は、GH液晶表示素子12の断面図である。GH液晶表示素子12は、下側基板20、上側基板21、下側電極22、上側電極23、ゲストホスト型液晶層24、及びシール材25を備える。
【0024】
下側基板20及び上側基板21はそれぞれ、透明基板で構成され、例えば、ガラス基板、又はプラスチック基板で構成される。
【0025】
下側基板20上(液晶層24側)には、下側電極22が設けられる。下側電極22は、GH液晶表示素子12の表示領域全体に平面状に形成される。上側基板21上(液晶層24側)には、上側電極23が設けられる。上側電極23は、GH液晶表示素子12の表示領域全体に平面状に形成される。下側電極22及び上側電極23はそれぞれ、透明電極で構成され、すなわち、光透過性及び導電性を有する材料からなる。下側電極22及び上側電極23はそれぞれ、例えばITO(インジウム錫酸化物)から構成される。
【0026】
液晶層24は、下側基板20及び上側基板21間に充填される。具体的には、液晶層24は、下側基板20、上側基板21、及び枠状のシール材25によって包囲された領域内に封入される。
【0027】
液晶層24は、液晶24A、及び二色性色素24Bを含む。液晶24Aは、例えば、正の誘電率異方性を有するP型のネマティック液晶から構成される。液晶層24の初期配向は、下側電極22及び上側電極23上にそれぞれ形成された配向膜(図示せず)によって制御される。
【0028】
二色性色素24Bは、光吸収率に異方性を有する色素である。二色性色素24Bに含まれる色素分子の長軸は、液晶分子と同じ配向に設定される。二色性色素24Bは、例えば黒の染料で構成される。
【0029】
液晶層24は、遮光状態及び透過状態のいずれかに設定される。図3は、遮光状態のGH液晶表示素子12の断面図に対応する。図4は、透過状態のGH液晶表示素子12の断面図である。遮光状態とは、液晶層24に、液晶の閾値電圧より低い電圧が印加された状態であり、下側電極22と上側電極23とに例えば0Vが印加されたオフ状態である。透過状態とは、液晶層24に、液晶の閾値電圧以上の正電圧が印加されたオン状態である。液晶の閾値電圧とは、液晶分子が水平配向から垂直配向に切り替わる電圧である。なお、例えば、液晶層24は、所定時間ごとに電圧の極性が反転する反転駆動が行われる。
【0030】
図3に示すように、遮光状態では、液晶24Aに含まれる液晶分子の長軸は、基板の面に対してほぼ水平方向に配向する。二色性色素24Bに含まれる色素分子の長軸は、液晶分子と同じく水平方向に配向する。遮光状態では、二色性色素24Bの光吸収率が高くなり、液晶層24は、黒を表示する。遮光状態は、色表示状態ともいう。
【0031】
図4に示すように、透過状態では、液晶24Aに含まれる液晶分子の長軸(ダイレクタ)は、基板の面に対して垂直方向に配向する。二色性色素24Bに含まれる色素分子の長軸は、液晶分子と同じく垂直方向に配向する。透過状態では、二色性色素24Bの光吸収率が低くなり、液晶層24は、透明になる。
【0032】
なお、液晶24Aとして、負の誘電率異方性を有するN型のネマティック液晶を用いてもよい。この場合、液晶分子の長軸は、無電界時には基材の面に対してほぼ垂直方向に配向し、電界印加時には基材の面に対して水平方向に傾く。オフ状態では、二色性色素24Bの光吸収率が低くなり、液晶層24は、透過状態となる。オン状態では、二色性色素24Bの光吸収率が高くなり、液晶層24は、遮光状態となる。
【0033】
[1-3] PN液晶表示素子13の構成
図5は、PN液晶表示素子13の断面図である。PN液晶表示素子13は、下側基板30、上側基板31、液晶層32、シール材33、複数の配線34、絶縁層35、複数のコンタクト36複数の第1表示電極37、複数の第2表示電極38、及び共通電極39を備える。
【0034】
下側基板30及び上側基板31はそれぞれ、透明基板で構成され、例えば、ガラス基板、又はプラスチック基板で構成される。
【0035】
液晶層32は、下側基板30及び上側基板31間に充填される。具体的には、液晶層32は、下側基板30、上側基板31、及び枠状のシール材33によって包囲された領域内に封入される。
【0036】
液晶層32は、液晶材料32A及び高分子材料32Bを備える。液晶層32は、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、又は高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)から構成される。高分子ネットワーク型液晶は、高分子材料からなる3次元網目構造(高分子ネットワーク)中に連続相を有する液晶材料を満たした複合体からなる。高分子分散型液晶は、高分子材料からなるマトリックス中に液晶材料を分散させた複合体からなり、すなわち、マトリックス中において液晶が相分離した構造を有する。高分子材料としては光硬化樹脂を用いることができる。例えば、PNLCは、光重合型の高分子前駆体(モノマー)に液晶材料を混合させた溶液に紫外線を照射し、モノマーを重合させてポリマーを形成し、そのポリマーからなるマトリックス中に液晶が分散される。
【0037】
下側基板30上(液晶層32側)には、複数の配線34が設けられる。下側基板30上かつ複数の配線34上には、絶縁層35が設けられる。
【0038】
絶縁層35上には、第1表示パターンを表示するための複数の第1表示電極37と、第2表示パターンを表示するための複数の第2表示電極38とが設けられる。第1表示パターン及び第2表示パターンの一例については後述する。PN液晶表示素子13の表示画面は、複数の第1表示電極37と複数の第2表示電極38とで隙間なく埋め尽くされる。また、複数の第1表示電極37及び複数の第2表示電極38は、所定の間隔を空けて互いに電気的に分離される。この所定の間隔は、人間が目視できない細さであり、製造工程による加工寸法に起因する。
【0039】
複数の第1表示電極37は、複数のコンタクト36を介して、複数の配線34に電気的に接続される。複数の第2表示電極38は、複数のコンタクト36を介して、複数の配線34に電気的に接続される。すなわち、複数の第1表示電極37は、個別に電圧制御が可能であり、また、複数の第2表示電極38は、個別に電圧制御が可能である。全ての配線34は、PN液晶表示素子13の外側まで引き出される。
【0040】
上側基板31上(液晶層32側)には、共通電極39が設けられる。共通電極39は、PN液晶表示素子13の表示画面全体に平面状に形成される。
【0041】
配線34、コンタクト36、第1表示電極37、第2表示電極38、及び共通電極39は、透明な導電材料で構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)で構成される。絶縁層35としては、透明な絶縁材料が用いられ、例えばシリコン窒化物(SiN)が用いられる。
【0042】
液晶層32は、散乱状態及び透過状態のいずれかに設定される。図5は、散乱状態のPN液晶表示素子13の断面図に対応する。図6は、透過状態のPN液晶表示素子13の断面図である。散乱状態とは、液晶層32に、液晶の閾値電圧より低い電圧が印加された状態であり、第1表示電極37と共通電極39とに例えば0Vが印加されたオフ状態である。透過状態とは、液晶層32に、液晶の閾値電圧以上の正電圧が印加されたオン状態である。なお、例えば、液晶層32は、所定時間ごとに電圧の極性が反転する反転駆動が行われる。
【0043】
液晶層32において、液晶材料の常光屈折率と高分子材料の屈折率とは概略同じに設定される。液晶材料としては、正の誘電率異方性を有するポジ型(P型)のネマティック液晶が用いられる。
【0044】
散乱状態では、液晶層32に電界が印加されていない。図5に示すように、散乱状態では、液晶材料32Aに含まれる液晶分子は、一様に特定の方向には配向せず、ランダムな状態である。この場合、液晶材料の屈折率と高分子材料の屈折率とが異なる状態となり、入射光は高分子材料の界面で散乱する。すなわち、液晶分子が配向されていない状態において、液晶層32は高ヘイズ状態となる。このとき、液晶層32は、不透明な状態となり、また白濁した状態となる。散乱状態の液晶層32は、観察者から白表示として視認される。
【0045】
透過状態では、液晶層32に電界が印加される。図6に示すように、透過状態では、液晶分子の長軸(ダイレクタ)は、基板の面に対して概略垂直方向に配向する。この場合、液晶材料の屈折率と高分子マトリックスの屈折率とが概略同じ状態になり、入射光は、液晶層32内でほとんど散乱されず、液晶層32を透過する。すなわち、液晶分子が垂直方向に配向されている状態において、液晶層32は低ヘイズ状態となる。このとき、液晶層32は、透明状態となる。
【0046】
[1-4] 第1表示パターン及び第2表示パターンの一例
図7は、第1表示パターン及び第2表示パターンの一例を示す平面図である。図7は、富士山と、2個の雲とを表現している。第1表示パターンは、第1表示電極37で表現され、第2表示パターンは、第2表示電極38で表現される。
【0047】
第1表示電極37は、富士山と、富士山の山頂に存在する雪の輪郭と、2個の雲の輪郭とを表示するためのパターンを有する。
【0048】
複数の第2表示電極38は、表示画面のうち第1表示電極37以外の領域に配置される。複数の第2表示電極38は、第2表示電極38-1~38-4を含む。第2表示電極38-1~38-4は、第1表示電極37の隙間を埋め尽くすように配置される。第2表示電極38-1は、富士山の山頂に存在する雪を表示するためのパターンを有する。第2表示電極38-2は、一方の雲を表示するためのパターンを有する。第2表示電極38-3は、他方の雲を表示するためのパターンを有する。第2表示電極38-4は、富士山及び2個の雲の周囲を覆うパターンを有する。
【0049】
第1表示電極37、及び第2表示電極38-1~38-4はそれぞれ、複数のコンタクト36を介して、配線34-1~34-5に電気的に接続される。配線34-1~34-5は、PN液晶表示素子13の外側まで引き出される。
【0050】
図7では、各表示電極が接して図示されているが、複数の表示電極は、互いに間隔GPを空けて配置され、互いに電気的に分離される。図7には、第1表示電極37と第2表示電極38-4とが間隔GPを空けて配置される様子を部分的に拡大して示している。
【0051】
[1-5] 腕時計1のブロック構成
図8は、腕時計1のブロック図である。腕時計1は、電池5、駆動回路11、GH液晶表示素子12、PN液晶表示素子13、及び入力部14を備える。
【0052】
駆動回路11は、電池5から電圧の供給を受ける。駆動回路11は、GH液晶表示素子12、及びPN液晶表示素子13を駆動する。
【0053】
具体的には、駆動回路11は、GH液晶表示素子12に含まれる下側電極22、及び上側電極23に電気的に接続される。駆動回路11は、下側電極22、及び上側電極23の電圧を制御する。そして、駆動回路11は、GH液晶表示素子12の遮光状態及び透過状態を制御する。
【0054】
駆動回路11は、PN液晶表示素子13に含まれる第1表示電極37、第2表示電極38、及び共通電極39に電気的に接続される。駆動回路11は、第1表示電極37、第2表示電極38、及び共通電極39の電圧を制御する。そして、駆動回路11は、PN液晶表示素子13の散乱状態及び透過状態を制御する。
【0055】
入力部14は、ユーザの操作を受け付ける。入力部14は、例えば押しボタンで構成される。駆動回路11は、入力部14からユーザの操作に関する情報を受ける。駆動回路11は、入力部14の情報に基づいて、表示モードを制御する。
【0056】
[1-6] 動作
次に、上記のように構成された腕時計1の動作について説明する。腕時計1は、第1乃至第4表示モードを実行することが可能である。
【0057】
図9は、腕時計1の動作を説明するフローチャートである。図10は、第1実施形態に係る第1乃至第4表示モードを説明する図である。
【0058】
図9に示すように、駆動回路11は、第1表示モードを実行する(ステップS100)。続いて、駆動回路11は、入力部14がユーザによって操作されたか否かを監視している(ステップS101)。
【0059】
ステップS101において入力部14が操作された場合、駆動回路11は、第2表示モードを実行する(ステップS102)。続いて、駆動回路11は、入力部14がユーザによって操作されたか否かを監視している(ステップS103)。
【0060】
ステップS103において入力部14が操作された場合、駆動回路11は、第3表示モードを実行する(ステップS104)。続いて、駆動回路11は、入力部14がユーザによって操作されたか否かを監視している(ステップS105)。
【0061】
ステップS105において入力部14が操作された場合、駆動回路11は、第4表示モードを実行する(ステップS106)。続いて、駆動回路11は、入力部14がユーザによって操作されたか否かを監視している(ステップS107)。
【0062】
ステップS107において入力部14が操作された場合、駆動回路11は、第1表示モードを実行する(ステップS100)。
【0063】
次に、図10を参照して、第1乃至第4表示モードの詳細について説明する。図10には、GH液晶表示素子12の動作状態、PN液晶表示素子13の動作状態、及び腕時計1をユーザが見た表示を示している。
【0064】
(第1表示モード)
第1表示モードでは、駆動回路11は、PN液晶表示素子13の全面を散乱状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、全ての第1表示電極37、全ての第2表示電極38、及び共通電極39に0Vを印加する。これにより、PN液晶表示素子13は、全面が白表示となる。
【0065】
駆動回路11は、GH液晶表示素子12を透過状態又は遮光状態に設定する。PN液晶表示素子13が全面散乱であるので、GH液晶表示素子12は、ユーザによって視認されない。よって、GH液晶表示素子12の表示は何でもよい。例えば、駆動回路11は、下側電極22、及び上側電極23に0Vを印加する。これにより、GH液晶表示素子12は、遮光状態に設定され、全面が黒表示となる。
【0066】
第1表示モードでは、腕時計1は、全面が白を表示する。時刻表示は、ユーザに視認されない。
【0067】
(第2表示モード)
第2表示モードでは、駆動回路11は、GH液晶表示素子12を遮光状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、下側電極22、及び上側電極23に0Vを印加する。これにより、GH液晶表示素子12は、遮光状態に設定され、全面が黒表示となる。
【0068】
駆動回路11は、PN液晶表示素子13の第1表示パターンを透過状態に設定し、第2表示パターンを散乱状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、全ての第1表示電極37に正電圧を印加し、全ての第2表示電極38に0Vを印加し、共通電極39に0Vを印加する。これにより、第1表示パターンが透明になり、第2表示パターンが白表示となる。
【0069】
第2表示モードでは、腕時計1は、第1表示パターンを黒で表示し、第2表示パターンを白で表示する。時刻表示は、ユーザに視認されない。
【0070】
(第3表示モード)
第3表示モードでは、駆動回路11は、GH液晶表示素子12を遮光状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、下側電極22、及び上側電極23に0Vを印加する。これにより、GH液晶表示素子12は、遮光状態に設定され、全面が黒表示となる。
【0071】
駆動回路11は、PN液晶表示素子13の第1表示パターンを散乱状態に設定し、第2表示パターンを透過状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、全ての第1表示電極37に0Vを印加し、全ての第2表示電極38に正電圧を印加し、共通電極39に0Vを印加する。これにより、第1表示パターンが白表示となり、第2表示パターンが透明になる。
【0072】
第3表示モードでは、腕時計1は、第1表示パターンを白で表示し、第2表示パターンを黒で表示する。すなわち、第3表示モードは、第2表示モードの白黒を反転した表示である。時刻表示は、ユーザに視認されない。
【0073】
(第4表示モード)
第4表示モードでは、駆動回路11は、PN液晶表示素子13の全面を透過状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、全ての第1表示電極37に正電圧を印加し、全ての第2表示電極38に正電圧を印加し、共通電極39に0Vを印加する。これにより、PN液晶表示素子13は、全面が透明となる。
【0074】
駆動回路11は、GH液晶表示素子12を透過状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、下側電極22に正電圧を印加し、上側電極23に0Vを印加する。これにより、GH液晶表示素子12は、全面が透明となる。
【0075】
第4表示モードでは、腕時計1は、短針8、長針9、及び時計文字盤10で表現される時刻を表示する。
【0076】
[1-7] 第1実施形態の効果
以上詳述したように第1実施形態では、腕時計1は、時計文字盤10と、時計文字盤10の上方に配置され、時刻を表示する短針8及び長針9と、短針8及び長針9の上方に配置され、遮光状態及び透過状態に設定可能なGH液晶表示素子12と、GH液晶表示素子12の上方に配置され、散乱状態及び透過状態に設定可能なPN液晶表示素子13と、GH液晶表示素子12及びPN液晶表示素子13を駆動する駆動回路11とを備える。駆動回路11は、GH液晶表示素子12及びPN液晶表示素子13の動作の組み合わせで、第1表示パターン(デザイン画)を表示することが可能なように構成される。
【0077】
従って第1実施形態によれば、短針8及び長針9を用いて時刻を表示することに加えて、複数種類のデザイン画を表示することが可能な腕時計1を実現できる。また、高級感のある腕時計1を実現できる。
【0078】
また、PN液晶表示素子13は、第1表示パターン用の第1表示電極37と、第2表示パターン用の第2表示電極38とを備える。そして、第1表示電極37及び第2表示電極の形状を適宜加工することで、様々な種類のデザイン画を表示させることができる。
【0079】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、時刻表示を行うとともに、時刻表示の邪魔にならない領域に、第3表示パターンを表示するようにしている。
【0080】
図11は、第2実施形態に係る第1乃至第3表示パターンの一例を示す平面図である。第3表示パターンは、電池の残量を表示する。第3表示パターンは、複数の第3表示電極40-1~40-4で表現される。
【0081】
第3表示電極40-1~40-3は、それぞれが四角形であり、電池の残量を表している。第3表示電極40-4は、電池の外枠を表している。第2表示電極38-5は、第3表示電極40-1~40-4の隙間を埋めるための電極である。第3表示電極40-4の周囲には、前述した第2表示電極38-4が設けられる。
【0082】
図12は、第5表示モードを説明する図である。第5表示モードでは、駆動回路11は、PN液晶表示素子13の第1表示パターンを透過状態に設定し、第2表示パターンを透過状態に設定し、第3表示パターンを散乱状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、全ての第1表示電極37に正電圧を印加し、全ての第2表示電極38に正電圧を印加し、全ての第3表示電極40に0Vを印加し、共通電極39に0Vを印加する。なお、電池の残量に応じて、複数の第3表示電極40の一部は透明状態に設定される。これにより、第1及び第2表示パターンが透明になり、第3表示パターンが白表示となる。
【0083】
駆動回路11は、GH液晶表示素子12を透過状態に設定する。すなわち、駆動回路11は、下側電極22に正電圧を印加し、上側電極23に0Vを印加する。これにより、GH液晶表示素子12は、全面が透明となる。
【0084】
第5表示モードでは、腕時計1は、時刻表示を行い、時刻表示の邪魔にならない領域に、電池残量などの第3表示パターンを表示する。
【0085】
なお、第1乃至第4表示モードでは、第3表示電極40-1~40-5は、第2表示電極38-4と同じ制御が実行される。
【0086】
駆動回路11は、第4表示モードを実行中に、入力部14がユーザによって操作された場合、第5表示モードを実行する。さらに、第5表示モードを実行中に、入力部14がユーザによって操作された場合、第1表示モードを実行する。
【0087】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、GH液晶表示素子12及びPN液晶表示素子13を時計用の針の下方に配置するようにしている。
【0088】
図13は、第3実施形態に係る腕時計1の断面図である。腕時計1の平面図は、図1と同じである。
【0089】
時計文字盤10の上方には、GH液晶表示素子12が配置される。GH液晶表示素子12の上方には、PN液晶表示素子13が配置される。PN液晶表示素子13の上方には、短針8及び長針9が配置される。軸7は、GH液晶表示素子12及びPN液晶表示素子13を貫通し、短針8及び長針9に接続される。すなわち、GH液晶表示素子12及びPN液晶表示素子13は、軸7が貫通するための開口部を有する。
【0090】
次に、上記のように構成された腕時計1の動作について説明する。図14は、第3実施形態に係る第1乃至第4表示モードを説明する図である。
【0091】
(第1表示モード)
第1表示モードでは、駆動回路11は、PN液晶表示素子13の全面を散乱状態に設定する。これにより、PN液晶表示素子13は、全面が白表示となる。駆動回路11は、GH液晶表示素子12を透過状態又は遮光状態に設定する。
【0092】
第1表示モードでは、腕時計1は、全面が白表示の中に、短針8及び長針9で表現される時刻を表示する。
【0093】
(第2表示モード)
第2表示モードでは、駆動回路11は、GH液晶表示素子12を遮光状態に設定する。これにより、GH液晶表示素子12は、全面が黒表示となる。
【0094】
駆動回路11は、PN液晶表示素子13の第1表示パターンを透過状態に設定し、第2表示パターンを散乱状態に設定する。これにより、第1表示パターンが透明になり、第2表示パターンが白表示となる。
【0095】
第2表示モードでは、腕時計1は、第1表示パターンを黒で表示し、第2表示パターンを白で表示する。さらに、腕時計1は、短針8及び長針9で表現される時刻を表示する。
【0096】
(第3表示モード)
第3表示モードでは、駆動回路11は、GH液晶表示素子12を遮光状態に設定する。これにより、GH液晶表示素子12は、全面が黒表示となる。
【0097】
駆動回路11は、PN液晶表示素子13の第1表示パターンを散乱状態に設定し、第2表示パターンを透過状態に設定する。これにより、第1表示パターンが白表示となり、第2表示パターンが透明になる。
【0098】
第3表示モードでは、腕時計1は、第1表示パターンを白で表示し、第2表示パターンを黒で表示する。さらに、腕時計1は、短針8及び長針9で表現される時刻を表示する。
【0099】
(第4表示モード)
第4表示モードでは、駆動回路11は、PN液晶表示素子13の全面を透過状態に設定する。これにより、PN液晶表示素子13は、全面が透明となる。駆動回路11は、GH液晶表示素子12を透過状態に設定する。これにより、GH液晶表示素子12は、全面が透明となる。
【0100】
第4表示モードでは、腕時計1は、短針8、長針9、及び時計文字盤10で表現される時刻を表示する。
【0101】
第3実施形態によれば、常時時計を表示しつつ、時計の下のデザイン画を変化させることができる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0102】
なお、第3実施形態に第2実施形態を適用してもよい。すなわち、第4表示モードにさらにPN液晶表示素子13で表現される第3表示パターンを表示するようにしてもよい。
【0103】
なお、上記各実施形態では、腕時計を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態は、腕時計以外の時計にも適用可能である。
【0104】
上記各実施形態では、散乱状態及び透過状態に設定可能な表示素子として高分子ネットワーク型液晶表示素子13を例に挙げて説明したが、同様の表示を行うことが可能な他の種類の表示素子を用いてもよい。
【0105】
上記各実施形態では、遮光状態及び透過状態に設定可能な表示素子としてゲストホスト型液晶表示素子12を例に挙げて説明したが、同様の表示を行うことが可能な他の種類の表示素子を用いてもよい。
【0106】
上記各実施形態では、ゲストホスト型液晶表示素子12が遮光状態で黒を表示する例を説明したが、黒以外の色を表示するようにしてもよい。
【0107】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0108】
1…腕時計、2…ケース、3…裏蓋、4…カバー、5…電池、6…ムーブメント、7…軸、8…短針、9…長針、10…時計文字盤、11…駆動回路、12…ゲストホスト型液晶表示素子、13…高分子ネットワーク型液晶表示素子、14…入力部、20…下側基板、21…上側基板、22…下側電極、23…上側電極、24…ゲストホスト型液晶層、25…シール材、30…下側基板、31…上側基板、32…液晶層、33…シール材、34…配線、35…絶縁層、36…コンタクト、37…第1表示電極、38…第2表示電極、39…共通電極、40…第3表示電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14