(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】捺染インクジェットインク組成物及び記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20240409BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240409BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C09D11/328
B41M5/00 120
B41M5/00 114
D06P5/30
(21)【出願番号】P 2020048806
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕未
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】兼子 博之
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-096562(JP,A)
【文献】特開2015-093957(JP,A)
【文献】特開平10-114865(JP,A)
【文献】特開平10-168151(JP,A)
【文献】特開昭61-138784(JP,A)
【文献】国際公開第18/178890(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B41M 1/00-99/00
D06P 1/00-7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される分散染料と、下記一般式(2)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有する捺染インクジェットインク組成物であって、
前記一般式(2)で表される化合物の含有量をM
2、前記一般式(1)で表される分散染料の含有量をM
1としたときに、質量比(M
2/M
1)が0.001以下であり、
pHが7.0以上8.5以下である、捺染インクジェットインク組成物。
【化1】
【化2】
(上記式(1)及び上記式(2)中、R
1は-Br又は-CNである。R
2は-CN又は-NO
2である。R
3はフェニル基、-CH
3、-OCH
3、-CH
2OH、-CH
2CH
2OH、-CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
3及び-CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
3のいずれかである。R
4は-H、-CH
3、-CH
2OH、-CH
2CH
2OCOCH
3及び-CH
2CH
2CNのいずれかである。R
5は-H又は-CH
3である。R
6は-H、-CH
3又は-OCH
3である。)
【請求項2】
前記質量比(M
2/M
1)が0.00001以上である、請求項1に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される分散染料と前記一般式(2)で表される化合物との合計含有量が、インク組成物の総量に対して、0.4~2.5質量%である、請求項1又は請求項2に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項4】
分散染料の総含有量が、インク組成物の総量に対して、2.0~10.0質量%である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記水の含有量が、インク組成物の総量に対して、40.0~75.0質量%である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記水溶性有機溶剤として、標準沸点が280℃以上のポリオールを、インク組成物の総量に対して、15.0~40.0質量%含有する、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記水溶性有機溶剤として、分子量が180以下であるグリコールエーテル系溶剤を、インク組成物の総量に対して、3.0~15.0質量%含有する、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項8】
さらに、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を、インク組成物の総量に対して、0.1~2.0質量%含有する、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項
8のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物の液滴を、インクジェット法により布帛に付着させる工程と、
前記布帛上に付着した前記液滴を前記布帛に定着させる工程と、
を含む、記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染インクジェットインク組成物及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式が布帛の染色に適用されている。例えば、分散染料を含有するインク(以下、「分散染料インク」ともいう。)は、ポリエステルやアセテート等の化学繊維への印捺が可能である。印捺後、高温スチーム処理で発色させ、画像を化学繊維へ定着させることができる。
【0003】
分散染料インクでは、分散染料粒子が分散状態で存在している。そのため、分散染料粒子の凝集による沈降が大きな問題となる。分散染料粒子の凝集による沈降は、インクジェットヘッドの目詰まりを引き起こす。このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、適切な分散染料の種類を選択することによって、保存中に体積の大きな粒子が成長しにくいインクとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、適切な分散染料の種類を選択するだけでは、分散染料粒子の凝集による沈降を抑制し、分散染料インクの吐出安定性を良好なものとする点では十分とはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物の一態様は、
下記一般式(1)で表される分散染料と、下記一般式(2)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有する捺染インクジェットインク組成物であって、
前記一般式(2)で表される化合物の含有量をM2、前記一般式(1)で表される分散染料の含有量をM1としたときに、質量比(M2/M1)が0.001以下であり、
pHが7.0以上8.5以下である。
【0007】
【0008】
【化2】
(上記式(1)及び上記式(2)中、R
1は-Br又は-CNである。R
2は-CN又は-NO
2である。R
3はフェニル基、-CH
3、-OCH
3、-CH
2OH、-CH
2CH
2OH、-CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
3及び-CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
3のいずれかである。R
4は-H、-CH
3、-CH
2OH、-CH
2CH
2OCOCH
3及び-CH
2CH
2CNのいずれかである。R
5は-H又は-CH
3である。R
6は-H、-CH
3又は-OCH
3である。)
【0009】
本発明に係る記録方法の一態様は、
前記態様の捺染インクジェットインク組成物の液滴を、インクジェット法により布帛に付着させる工程と、
前記布帛上に付着した前記液滴を前記布帛に定着させる工程と、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0011】
本明細書において、「捺染インクジェットインク組成物」とは、インクジェット記録方式を利用して記録媒体の一種である布帛上に画像を記録するためのインク組成物のことをいう。
【0012】
1.捺染インクジェットインク組成物
本発明の一実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、下記一般式(1)で表される分散染料と、下記一般式(2)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、下記一般式(2)で表される化合物の含有量をM2、下記一般式(1)で表される分散染料の含有量をM1としたときに、質量比(M2/M1)が0.001以下であり、pHが7.0以上8.5以下である。以下、本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物に含有される各成分について説明する。
【0013】
1.1.一般式(1)で表される分散染料
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、下記一般式(1)で表される分散染料を含有する。
【0014】
【0015】
上記式(1)中、R1は-Br又は-CNである。R2は-CN又は-NO2である。R3はフェニル基、-CH3、-OCH3、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH3及び-CH2CH2CH2OCH2CH2OCH3のいずれかである。R4は-H、-CH3、-CH2OH、-CH2CH2OCOCH3及び-CH2CH2CNのいずれかである。R5は-H又は-CH3である。R6は-H、-CH3又は-OCH3である。
【0016】
上記一般式(1)で表される分散染料の具体例としては、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ディスパースブルー165:1、C.I.ディスパースブルー128、C.I.ディスパースブルー183、C.I.ディスパースブルー183:1、C.I.ディスパースブルー281、C.I.ディスパースブルー337、及びC.I.ディスパースブルー366等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ディスパースブルー165及びC.I.ディスパースブルー128から選択される1種以上であることが好ましい。
【0017】
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、分散染料として、上記一般式(1)で表される分散染料を含有するが、上記一般式(1)で表される分散染料以外の分散染料をさらに含有してもよい。このような分散染料としては、アントラキノン系化合物、ナフタレン骨格含有化合物、アジン系化合物、チオフェン系化合物、チアゾール系化合物、チアジン系化合物、アクリジン骨格含有化合物、ベンゾインドール系化合物、クマリン系化合物、キノリン系化合物、ビフェニル系化合物、セントクロマン系化合物、メチン系化合物、キサンセン系化合物、チオキサンセン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フタロシアニン系化合物、ラクトン系化合物が挙げられる。
【0018】
分散染料の総含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.30質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、特に好ましくは2.0質量%以上である。分散染料の総含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以下であり、特に好ましくは8.0質量%以下である。分散染料の総含有量が前記範囲内にあると、分散染料粒子の凝集による沈降を低減できるので、インクの吐出安定性をより良好なものとすることができる場合がある。また、化学繊維に印捺した際に、発色性がより良好となる場合がある。
【0019】
上記一般式(1)で表される分散染料の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.30質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらにより好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは2.0質量%以上である。上記一般式(1)で表される分散染料の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは8.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、特に好ましくは3.0質量%以下である。上記一般式(1)で表される分散染料の含有量が前記範囲内にあると、分散染料粒子の凝集による沈降を低減できるので、インクの吐出安定性をより良好なものとすることができる場合がある。また、化学繊維に印捺した際に、発色性がより良好となる場合がある。
【0020】
1.2.一般式(2)で表される化合物
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、下記一般式(2)で表される化合物を含有する。
【0021】
【0022】
上記式(2)中、R1は-Br又は-CNである。R2は-CN又は-NO2である。R3はフェニル基、-CH3、-OCH3、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH3及び-CH2CH2CH2OCH2CH2OCH3のいずれかである。R4は-H、-CH3、-CH2OH、-CH2CH2OCOCH3及び-CH2CH2CNのいずれかである。R5は-H又は-CH3である。R6は-H、-CH3又は-OCH3である。
【0023】
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物において、上記一般式(2)で表される化合物の含有量をM2、上記一般式(1)で表される分散染料の含有量をM1としたときに、質量比(M2/M1)は、0.001以下であり、好ましくは0.0008以下であり、より好ましくは0.0005以下である。また、質量比(M2/M1)は、好ましくは0.00001以上であり、より好ましくは0.00005以上であり、特に好ましくは0.0001以上である。質量比(M2/M1)が前記範囲内にあると、分散染料粒子の凝集による沈降を効果的に抑制し、インクの吐出安定性を良好なものとすることができる。
【0024】
分散染料粒子の凝集による沈降を抑制する発現機構は明らかではないが、以下のように推測される。一般的に、上記一般式(1)で表される分散染料の表面は、分散染料の分散安定性を確保するための分散剤によって覆われている。この分散剤が分散染料粒子同士の衝突などによって分散染料粒子の表面から剥がれてしまうことがある。そうすると、分散染料の分散が不安定となり、分散染料の凝集を引き起こし、沈降が発生する。たとえば、分散剤が剥がれた部分から分散染料がインク組成物中に溶出し始め、その溶出した分散染料が再析出する際に、分散染料粒子の凝集を引き起こし、沈降が発生すると考えられる。
【0025】
これに対し、本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、上記一般式(1)で表される分散染料と、上記一般式(1)で表される分散染料と構造が類似している上記一般式(2)で表される化合物と、を所定の割合で含有している。この上記一般式(2)で表される化合物は、微量であるためインク組成物中に溶解した状態で存在している。この場合、分散剤が分散染料粒子の表面から剥がれたとしても、上記一般式(2)で表される化合物がインク組成物中に既に溶解して存在するので、上記一般式(1)で表される分散染料はインク組成物中に溶出しづらい。その結果、分散染料の再析出を抑制できるので、分散染料粒子の凝集の発生を抑制できると推測される。
【0026】
上記一般式(2)で表される化合物の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは1.0×10-5質量%以上であり、より好ましくは2.0×10-5質量%以上であり、さらにより好ましくは5.0×10-5質量%以上であり、特に好ましくは1.0×10-4質量%以上である。上記一般式(2)で表される化合物の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは5.0×10-3質量%以下であり、より好ましくは3.0×10-3質量%以下であり、特に好ましくは1.0×10-3質量%以下である。上記一般式(2)で表される化合物の含有量が前記範囲内にあると、上記一般式(2)で表される化合物がインク組成物中に溶解した状態を保持することができ、上記一般式(1)で表される分散染料の再析出を抑制できるので、分散染料粒子の凝集の発生を抑制できる。
【0027】
上記一般式(1)で表される分散染料と上記一般式(2)で表される化合物との合計含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.4質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらにより好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは2.0質量%以上である。上記一般式(1)で表される分散染料と上記一般式(2)で表される化合物との合計含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、特に好ましくは2.5質量%以下である。上記一般式(1)で表される分散染料と上記一般式(2)で表される化合物との合計含有量が前記範囲内にあると、分散染料の再析出による異物の発生を低減できるので、インクの吐出安定性をより良好なものとすることができる場合がある。
【0028】
1.3.水溶性有機溶剤
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、水溶性有機溶剤を含有する。水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオール、グリコールエーテル系溶剤が挙げられる。
【0029】
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、分子内の炭素数が2以上6以下であり、かつ、分子内にエーテル結合を1つ有してもよいポリオール等が挙げられる。具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。ポリオールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
これらの中でも、標準沸点が280℃以上のポリオールを1種以上含有することが好ましい。標準沸点が280℃以上のポリオールを含有することで、上記一般式(2)で表される化合物のインク組成物中への溶解性を確保できるとともに、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式に適した値に調整しやすくすることができる。
【0031】
標準沸点が280℃以上のポリオールの含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは15.0質量%以上40.0質量%以下であり、より好ましくは18.0質量%以上35.0質量%以下であり、特に好ましくは20.0質量%以上30.0質量%以下である。
【0032】
グリコールエーテル系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びトリプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。グリコールエーテル系溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
これらの中でも、分子量が180以下であるグリコールエーテル系溶剤を1種以上含有することが好ましい。分子量が180以下であるグリコールエーテル系溶剤を含有することで、上記一般式(2)で表される化合物のインク組成物中への溶解性を確保できる一方で、上記一般式(1)で表される分散染料のインク組成物中への溶解性を低減することができる。なお、分子量が180を超えるグリコールエーテル系溶剤は、上記一般式(1)で表される分散染料のインク組成物への溶解性を向上させてしまう場合がある。
【0034】
分子量が180以下であるグリコールエーテル系溶剤の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは3.0質量%以上15.0質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以上10.0質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以上8.0質量%以下である。
【0035】
水溶性有機溶剤の合計含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは20.0質量%以上60.0質量%以下であり、より好ましくは25.0質量%以上55.0質量%以下であり、特に好ましくは30.0質量%以上50.0質量%以下である。
【0036】
1.4.水
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、水を含有する。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生がより防止される傾向にある。
【0037】
水の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは40.0質量%以上75.0質量%以下であり、より好ましくは45.0質量%以上72.0質量%以下であり、特に好ましくは50.0質量%以上70.0質量%以下である。水の含有量が前記上限値以下であることで、特に上記一般式(2)で表される化合物が水との親和性が低いことによる析出物の発生を抑制することができる。水の含有量が前記下限値以下であることで、上記一般式(1)で表される分散染料が溶解してしまうことを防ぐことができる。
【0038】
1.5.その他の成分
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、界面活性剤、pH調整剤、分散剤、キレート剤、防腐剤、防黴剤、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤等の、種々の添加剤を適宜添加してもよい。以下、主な添加剤について説明する。
【0039】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。アニオン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、ペレックスSS-H、ペレックスSS-L(以上商品名、花王株式会社製)などが挙げられる。1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、アルキルジエタノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0042】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0043】
界面活性剤の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上1.8質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。界面活性剤の含有量が前記範囲内にあることで、分散染料の分散性が改善され、インクの吐出安定性が向上する場合がある。
【0044】
<pH調整剤>
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、インク組成物のpHを7.0以上8.5以下に調整する目的で、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、特に限定されないが、酸、塩基、弱酸、弱塩基、それらの適宜の組み合わせが挙げられ、例えば、クエン酸、コハク酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸及びその塩;リン酸;モルホリン類;ピペラジン類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。pH調整剤を含有する場合には、pH調整剤の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下である。
【0045】
<分散剤>
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物が分散剤を含有することにより、インク組成物における分散染料の分散安定性がより優れる傾向にあり、インク組成物の保存安定性、インクジェット方式による吐出安定性等がより優れる傾向にある。分散剤としては、特に限定されないが、例えばアニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、高分子分散剤が挙げられる。
【0046】
アニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、及び、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物が挙げられる。
【0047】
ノニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0048】
高分子分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリル酸塩、スチレン-アクリル酸共重合物、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物等が挙げられる。
【0049】
分散剤の含有量は、捺染インクジェットインク組成物に含まれる分散染料100質量部に対して、好ましくは50~150質量部であり、より好ましくは75~125質量部である。分散剤の含有量が上記範囲であることにより、分散染料の分散安定性がより向上する傾向にある。
【0050】
<キレート剤>
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、キレート剤を含有してもよい。キレート剤は、イオンを捕捉する機能を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩またはメタリン酸塩等が挙げられる。
【0051】
<防腐剤・防黴剤>
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、防腐剤・防黴剤を含有してもよい。防腐剤・防黴剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ロンザジャパン株式会社から販売されるプロキセルCRL、BDN、GXL、XL-2、TN、LV等の1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、バイエルホールディング株式会社から販売されるプリベントール(登録商標)CMK等の4-クロロ-3-メチルフェノール等が挙げられる。
【0052】
1.6.pH
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物のpHは、7.0以上8.5以下であり、好ましくは7.0以上8.0以下であり、より好ましくは7.5以上8.0以下である。インク組成物のpHが前記範囲内にあると、上記一般式(2)で表される化合物がインク組成物に溶解した状態で存在するため、上記一般式(1)で表される分散染料はインク組成物中に溶出しづらくなる。その結果、分散染料の再析出を抑制できるので、分散染料粒子の凝集の発生を抑制できると推測される。インク組成物のpHが8.5を超えると、上記一般式(2)で表される化合物が増加して析出することがあり、異物化するため好ましくない。一方、インク組成物のpHが7.0未満であると、上記一般式(1)で表される分散染料がインク組成物中に溶出しやすくなり、分散染料が再析出する際に分散染料粒子の凝集が発生するため好ましくない。
【0053】
1.7.捺染インクジェットインク組成物の調製方法
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、上述の各成分を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過等を行って不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、フィルターろ過等を必要に応じて行うことができる。
【0054】
2.記録方法
本発明の一実施形態に係る記録方法は、上述の捺染インクジェットインク組成物の液滴を、インクジェット法により布帛に付着させる工程(以下、「インク付着工程」ともいう。)と、前記布帛上に付着した前記液滴を前記布帛に定着させる工程(以下、「インク定着工程」ともいう。)と、を含む。
【0055】
インク付着工程におけるインクジェット法としては、インク組成物を微細なノズル孔より液滴として吐出して、該液滴を布帛に付着させることができれば、特に制限されない。例えば、インクジェット法としては、静電吸引方式、ポンプ圧力により液滴を噴射させる方式、圧電素子を用いる方式、液滴を微小電極で加熱発泡させ液滴を噴射させる方式、などを挙げることができる。
【0056】
インク付着工程で用いられるインクジェット記録装置には、例えば、加熱ユニット、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を採用することができる。
【0057】
インク定着工程は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えばヒートプレスや蒸気加熱のような加熱処理の他、薬品処理を行うことにより、布帛にインク組成物を定着させてもよい。また、インク定着工程では、上述の捺染インクジェットインク組成物をインクジェット法により布帛に付着させた後、又は付着させる時に、上記のような加熱処理により前記布帛にインク組成物を定着させてもよい。
【0058】
なお、分散染料が加熱により昇華する性質を有する昇華性染料である場合には、インク付着工程には昇華転写も含まれる。このような昇華転写を利用した染色方法としては、例えば、紙等のシート状の中間転写媒体に昇華性染料を含むインクを用いてインクジェット方式による印刷を行った後、布帛に中間転写媒体を重ねて加熱により昇華転写する方法や、剥離可能なインク受容層が設けられたフィルム等のインク受容層に昇華性染料を含むインクを用いてインクジェット方式による印刷を行い、その後、そのまま加熱して下層側に昇華拡散染色を行い、更にその後、インク受容層を剥離する方法等がある。
【0059】
3.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0060】
3.1.捺染インクジェットインク組成物の製造
各材料を下表1又は下表2に示す組成で混合し、1時間攪拌してから、メンブレンフィルター(孔径5μm)を用いて濾過することで、各インク組成物を得た。なお、下表1及び下表2中、各材料の数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。
【0061】
3.2.評価方法
3.2.1.異物評価
上記で得られたインク組成物をインクパックに入れ、室温で5日間放置したものと60℃で5日間放置したものをそれぞれ用意した。その後、10μmのオムニポアメンブレンフィルターにて保存後のインク組成物10mLを濾過し、メンブレンフィルターを光学顕微鏡にて観察することにより異物の有無を確認した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
A:異物個数が0個。
B:異物個数が1個~5個。
C:異物個数が6個~20個(許容できないレベル)。
D:異物個数が21個以上(許容できないレベル)。
【0062】
3.2.2.吐出安定性評価
上記で得られたインク組成物を充填したインクカートリッジを、インクジェットプリンター(製品名「SC-F6000」、セイコーエプソン社製)のシアンインクカートリッジ装着部に装着した。このインクジェットプリンターにてインク組成物を10時間連続吐出し、評価を行った。なお、クリーニングは2時間毎に行った。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
A:吐出中に不吐出や吐出乱れは生じない。
B:吐出中に不吐出や吐出乱れ等が生じるが、吐出中に復帰する。
C:吐出中に不吐出や吐出乱れ等が生じ、吐出中には復帰しないが、クリーニングにて復帰する。
D:吐出中に不吐出や吐出乱れが生じ、吐出中に復帰せず、クリーニングによっても復帰しない(許容できないレベル)。
【0063】
3.2.3.初期充填性
インクジェットプリンター(製品名「SC-F6000」、セイコーエプソン社製)の記録ヘッドにインク組成物が存在しない状態にした後、上記で得られたインク組成物を用いて、インクジェットプリンターの標準シーケンスにてインク組成物を記録ヘッドに導入させた。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
A:クリーニング1回のみで全ノズルを充填できた。
B:クリーニング2~3回で全ノズルを充填できた。
C:クリーニング4~9回で全ノズルを充填できた。
D:クリーニングを10回行っても全ノズルを充填できない(許容できないレベル)。
【0064】
3.3.評価結果
下表1及び下表2に、実施例、比較例で使用した各捺染インクジェットインク組成物の組成、及び評価結果を示す。
【0065】
【0066】
【0067】
上表1及び上表2に示す各材料について、説明を補足する。
<一般式(1)で表される分散染料>
・Disperse Blue 165:下記式(3)で表される分散染料
【化5】
・Disperse Blue 128:下記式(4)で表される分散染料
【化6】
<一般式(2)で表される化合物>
・化合物A:下記式(5)で表される化合物
【化7】
・化合物B:下記式(6)で表される化合物
【化8】
<水溶性有機溶剤>
・TEG:トリエチレングリコール、分子量150
・TEGmME(MTG):トリエチレングリコールモノメチルエーテル、分子量164
・TEGmBE(BTG):トリエチレングリコールモノブチルエーテル、分子量206
<pH調整剤>
・TEA:商品名「Triethanolamine [Matrix for FABMS and liquid SIMS]」、東京化成工業社製、トリエタノールアミン
<界面活性剤>
・ペレックス SS-L:商品名、花王社製、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤
・コータミン 60W:商品名、花王社製、塩化セチルトリメチルアンモニウム、カチオン性界面活性剤
・オルフィン EXP4123:商品名、日信化学工業社製、アセチレン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤
<キレート剤>
・EDTA:エチレンジアミン四酢酸
<防腐剤>
・Proxel XL-2:商品名、Lonza社製、ベンゾイソチアゾリン-3-オン
【0068】
上記の評価結果より、本発明の構成要件を満たす捺染インクジェットインク組成物を用いた実施例1~14では、異物の発生、すなわち分散染料粒子の凝集による沈降が抑制され、吐出安定性が確保されていることがわかる。
【0069】
これに対し、比較例1では、インク組成物のpHが8.9であることにより、60℃保存において分散染料が溶解、再析出し、分散染料粒子の凝集による沈降の発生が認められた。これにより、吐出安定性を確保することができなかった。
【0070】
比較例2では、インク組成物のpHが6.6(弱酸性)であることにより、室温及び60℃保存の両方において分散染料が溶解、再析出し、分散染料粒子の凝集による沈降の発生が認められた。これにより、吐出安定性を確保することができなかった。
【0071】
比較例3のインク組成物には一般式(2)で表される化合物が添加されていないので、60℃保存において分散染料が溶解、再析出し、分散染料粒子の凝集による沈降の発生が認められた。これにより、吐出安定性を確保することができなかった。
【0072】
比較例4のインク組成物は、分散染料の含有量に対して一般式(2)で表される化合物の含有量が多すぎるので、室温及び60℃保存の両方において、一般式(2)で表される化合物が再析出することによる分散染料粒子の凝集の発生が認められた。これにより、吐出安定性を確保することができなかった。
【0073】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0074】
捺染インクジェットインク組成物の一態様は、
下記一般式(1)で表される分散染料と、下記一般式(2)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有する捺染インクジェットインク組成物であって、
前記一般式(2)で表される化合物の含有量をM2、前記一般式(1)で表される分散染料の含有量をM1としたときに、質量比(M2/M1)が0.001以下であり、
pHが7.0以上8.5以下である。
【0075】
【0076】
【化10】
(上記式(1)及び上記式(2)中、R
1は-Br又は-CNである。R
2は-CN又は-NO
2である。R
3はフェニル基、-CH
3、-OCH
3、-CH
2OH、-CH
2CH
2OH、-CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
3及び-CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
3のいずれかである。R
4は-H、-CH
3、-CH
2OH、-CH
2CH
2OCOCH
3及び-CH
2CH
2CNのいずれかである。R
5は-H又は-CH
3である。R
6は-H、-CH
3又は-OCH
3である。)
【0077】
前記捺染インクジェットインク組成物の一態様において、
前記質量比(M2/M1)が0.00001以上であってもよい。
【0078】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
前記一般式(1)で表される分散染料と前記一般式(2)で表される化合物との合計含有量が、インク組成物の総量に対して、0.4~2.5質量%であってもよい。
【0079】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
分散染料の総含有量が、インク組成物の総量に対して、2.0~10.0質量%であってもよい。
【0080】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
前記水の含有量が、インク組成物の総量に対して、40.0~75.0質量%であってもよい。
【0081】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
前記水溶性有機溶剤として、標準沸点が280℃以上のポリオールを、インク組成物の総量に対して、15.0~40.0質量%含有してもよい。
【0082】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
前記水溶性有機溶剤として、分子量が180以下であるグリコールエーテル系溶剤を、インク組成物の総量に対して、3.0~15.0質量%含有してもよい。
【0083】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
さらに、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を、インク組成物の総量に対して、0.1~2.0質量%含有してもよい。
【0084】
前記捺染インクジェットインク組成物のいずれかの態様において、
前記一般式(1)で表される分散染料が、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ディスパースブルー165:1、C.I.ディスパースブルー128、C.I.ディスパースブルー183、C.I.ディスパースブルー183:1、C.I.ディスパースブルー281、C.I.ディスパースブルー337、及びC.I.ディスパースブルー366から選択される1種以上を含有してもよい。
【0085】
記録方法の一態様は、
前記いずれかの態様の捺染インクジェットインク組成物の液滴を、インクジェット法により布帛に付着させる工程と、
前記布帛上に付着した前記液滴を前記布帛に定着させる工程と、
を含む。
【0086】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成、を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。