(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ニオブ酸アルカリ金属塩粒子
(51)【国際特許分類】
C01G 33/00 20060101AFI20240409BHJP
C04B 35/495 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C01G33/00 A
C04B35/495
(21)【出願番号】P 2020049536
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】米田 稔
(72)【発明者】
【氏名】浅間 亮太
(72)【発明者】
【氏名】水谷 英人
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241658(JP,A)
【文献】特開2018-115093(JP,A)
【文献】特開2018-197181(JP,A)
【文献】特開2007-098371(JP,A)
【文献】特開2013-224228(JP,A)
【文献】特開2020-083693(JP,A)
【文献】特開2020-083694(JP,A)
【文献】SUKSRI Chavalit et al.,Key Engineering Materials,2016年,vol. 690,pp. 126-130,doi:10.4028/www.scientific.net/kem.690.126.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
C04B 35/495
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
MNbO
3 (1)
(式中、Mは、アルカリ金属元素を表す。)で表され、比表面積が10m
2/g以上であり、比表面積換算粒子径(D
SSA)に対するレーザー回折式粒度分布径(D
50)の比((D
50)/(D
SSA))が1.0~4.0の範囲であることを特徴とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子。
【請求項2】
前記比表面積換算粒子径(D
SSA)に対するレーザー回折式粒度分布径(D
50)が1.0~2.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のニオブ酸アルカリ金属塩粒子。
【請求項3】
前記レーザー回折式粒度分布径(D
50)が0.52μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニオブ酸アルカリ金属塩粒子。
【請求項4】
前記比表面積換算粒子径(D
SSA)が0.13μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のニオブ酸アルカリ金属塩粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子に関する。より詳しくは、圧電セラミックス等の材料として好適に使用することができるニオブ酸アルカリ金属塩粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的エネルギーと電気的エネルギーとを相互に変換することができる圧電セラミックスは、各種センサや超音波振動子といった従来の応用に加えて、最近では、例えば、パーソナルコンピュータの液晶バックライト用トランスやインクジェットプリンタ用ヘッド部品材料として使用されるなど、電子機器の小型化や高性能化に多大な貢献をしている。
【0003】
圧電セラミックスとしては現在、PZT系等の鉛系材料を原料としたものが主流であるが、鉛系材料は有害な酸化鉛を大量に含むことから、例えば廃棄の際における酸化鉛の流出による環境汚染が懸念されている。そこで、無鉛圧電としてニオブ酸アルカリ材料が注目されている。
【0004】
ニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得る方法として、例えば固相法やソルボサーマル法(溶媒中で加熱処理を行う方法)が知られている。固相法ではナノレベルで原料粉体を均一に混合すること、及び、微細な粒子を得ることは困難である。ソルボサーマル法に関して、特許文献1には、特定の構造で表されるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法であって、(a)ニオブ含有溶液と、0.1~30mol/Lの濃度を有するアルカリ溶液とを混合し、懸濁液を調製する工程と、(b)得られた懸濁液を80℃~150℃で12~48時間静置する工程と、(c)静置後の懸濁液を150℃~300℃で1~12時間ソルボサーマル反応させる工程と、(d)ソルボサーマル反応後の反応物からニオブ酸アルカリ金属塩粒子を回収する工程と、を含む、略直方体状ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法が開示されている。特許文献2には、ニオブ酸ナトリウム微粒子の製造方法であって,酸化ニオブと水酸化ナトリウム水溶液と別工程で製造したニオブ酸ナトリウムを含有する混合物を調製する工程と,該混合物に対して水熱処理を施す工程とを含むことを特徴とするニオブ酸ナトリウム微粒子の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、原子換算でナトリウム及びカリウムのモル数の合計に対するカリウムのモル数の比(K/(Na+K))が0.460~0.495であり、且つ、原子換算でニオブのモル数に対するアルカリ金属元素のモル数の合計の比((Li+Na+K)/Nb)が0.995~1.005であるニオブ酸アルカリ化合物粒子であることを特徴とする圧電体材料用フィラーが開示されている。特許文献4には、原子換算で、Nbのモル数に対するアルカリ金属元素のモル数の合計の比((Li+Na+K)/Nb)が0.995~1.005であるニオブ酸アルカリ化合物の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献5には、Nb2O5ゾルと、ナトリウム含有化合物と、を含むNb2O5ゾル溶液を調製することと、前記Nb2O5ゾル溶液を用いてソルボサーマル合成処理を行うことと、を含む、直方体状の単結晶NaNbO3粒子の製造方法であって、前記直方体状の単結晶NaNbO3粒子の粒径分布において個数基準の積算分率における50%径である粒径D50が5nm以上100nm以下であり、かつ粒径分布において個数基準の積算分率における90%径である粒径D90の、前記D50に対する比であるD90/D50が1.01以上1.4以下である、直方体状の単結晶NaNbO3粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-241658号公報
【文献】特開2013-224228号公報
【文献】特開2018-198299号公報
【文献】特開2018-197181号公報
【文献】特開2018-115093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ニオブ酸アルカリ金属塩粒子は、圧電セラミックス等の製造において他の添加剤の選択の幅を広げることや製造コストの観点から低温焼結性に優れることが求められている。
上述の通り、従来、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法として種々の方法が開発されているが、従来の方法により得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子は、低温焼結性の点で充分ではなく、従来のものよりも低温焼結性に優れるニオブ酸アルカリ金属塩粒子を開発する余地があった。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、低温焼結性に優れるニオブ酸アルカリ金属塩粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子について種々検討したところ、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積を10m2/g以上とし、比表面積換算粒子径(DSSA)に対するレーザー回折式粒度分布径(D50)の比((D50)/(DSSA))を1.0~4.0の範囲とすることにより、該粒子をより低温で焼結することができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、下記式(1);
MNbO3 (1)
(式中、Mは、アルカリ金属元素を表す。)で表され、比表面積が10m2/g以上であり、比表面積換算粒子径(DSSA)に対するレーザー回折式粒度分布径(D50)の比((D50)/(DSSA))が1.0~4.0の範囲であるニオブ酸アルカリ金属塩粒子である。
【0012】
上記比表面積換算粒子径(DSSA)に対するレーザー回折式粒度分布径(D50)は1.0~2.0の範囲であることが好ましい。
【0013】
上記レーザー回折式粒度分布径(D50)は0.52μm以下であることが好ましい。
【0014】
上記比表面積換算粒子径(DSSA)は0.13μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子は、上述の構成よりなり、低温焼結性に優れるため、圧電セラミックスの材料等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0017】
<ニオブ酸アルカリ金属塩粒子>
本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子は上記式(1)で表され、比表面積が10m2/g以上であり、比表面積換算粒子径(DSSA)に対するレーザー回折式粒度分布径(体積基準の50%粒子径、以下、D50と示す)の比((D50)/(DSSA))が1.0~4.0の範囲である。本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子は、比表面積及び((D50)/(DSSA))が上記範囲であると、粒子の粒径が充分に小さく、かつ、分散性が高いため、低温焼結性に優れ、セラミックス材料の成形性にも優れることとなる。
比表面積、DSSA及びD50は下記の方法により測定することができる。
<比表面積>
比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM-1220)にて、純窒素ガス気流下、230℃で30分間保持して脱気後、窒素30%ヘリウム70%の混合ガスを流通して、BET流動法(1点法)により測定する。
<DSSA>
上記方法により測定される比表面積から次の換算式を用いて算出する。
S=6/(ρ×d)
S=比表面積
ρ=試料粉体の密度
d=比表面積換算粒子径
ただし、ρ(試料粉体の密度)は、KNbO3、NaNbO3とも理論密度(4.6g/cm3)とする。
<D50>
ヘキサメタリン酸ナトリウムを分散剤として使用し、超音波ホモジナイザーで分散し、レーザー回折・散乱式粒度分布計 ((株)堀場製作所製LA-950)により下記条件で測定する。
粒子屈折率:2.26
溶媒屈折率:1.333
【0018】
上記比表面積として好ましくは10~25m2/gである。比表面積が10m2/g以上であると、圧電セラミックス材料として適用するにあたり十分に微細化されているといえる。また、比表面積が25m2/g以下であると、焼結して圧電セラミックスとする際、過度な焼結が抑制され易くなる。より好ましくは12~25m2/gであり、更に好ましくは13~20m2/gである。
【0019】
上記((D50)/(DSSA))として好ましくは1.0~3.0である。D50/DSSAが3以下であると、粒子の分散性がより高くなり、低温焼結性により優れることとなる。より好ましくは1.0~2.5であり、更に好ましくは1.0~2.0であり、特に好ましくは1.0~1.5である。D50/DSSAが1.0に近いほど粒子の分散性は高くなり、さらに低温焼結性に優れる。
【0020】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩粒子は、レーザー回折式粒度分布径(D50)が0.52μm以下であることが好ましい。これにより、得られる圧電素子のドメインがより微細化するため、圧電特性がより向上することが期待できる。D50の下限は特に制限されないが、通常0.05μm以上である。D50としてより好ましくは0.05~0.30μmであり、更に好ましくは0.10~0.20μmである。
【0021】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩粒子は、比表面積換算粒子径(DSSA)が0.13μm以下であることが好ましい。これにより、得られる圧電素子のドメインがより微細化するため、圧電特性がより向上することが期待できる。DSSAの下限は特に制限されないが、通常0.05μm以上である。DSSAとしてより好ましくは0.05~0.11μmであり、更に好ましくは0.06~0.10μmである。
【0022】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩は上記式(1)で表される化合物である。
式(1)におけるMは、アルカリ金属元素であり、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。アルカリ金属元素としてはこれらのうち1種を用いても2種以上を用いてもよい。アルカリ金属元素として好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウムであり、特に好ましくはカリウムである。
【0023】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の形状は特に制限されないが、略直方体形状であることが好ましい。これにより、粒子の凝集をより充分に防ぐことができ、取り扱い性等にも優れることとなる。
【0024】
<ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法>
本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法は特に制限されないが、ソルボサーマル反応を行って製造することが好ましい。すなわち、原料を混合する工程(a)及びソルボサーマル反応工程(b)を含むことが好ましい。
ニオブ酸アルカリ金属塩の粒子径と分散性に関して、従来粒径が小さいものほど、凝集が起きやすいことは技術常識として知られており、粒径が小さく、かつ、分散性が高いニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得ることは技術的に難しいが、本発明者らは、原料を混合する工程(a)として、ニオブ含有化合物と、特定の量のアルカリ金属元素含有化合物とニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子と溶媒とを混合する工程(a1)、又は、母材としてのニオブ酸アルカリ金属塩粒子と、該母材粒子が含むアルカリ金属元素とは異なるアルカリ金属元素を含有する化合物と溶媒とを混合する工程(a2)を行い、工程(a1)又は(a2)で得られた混合液を工程(b)においてソルボサーマル反応させることにより、本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子を好適に製造することができることを見出した。このようなニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0025】
1-1.工程(a1)
工程(a1)は、ニオブ含有化合物と、アルカリ金属元素含有化合物と、ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子と溶媒とを混合する工程であることが好ましい。
上記ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子は、後述するソルボサーマル反応工程(b)において、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の成長の核として機能するものである。工程(a)においてニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子を混合することにより、微細なニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得ることができる。
【0026】
上記工程(a1)において、目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積換算粒子径(DSSA)に対する、DSSA値の比が0.05~0.30となるニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子を用いることが好ましい。本発明者らは、原料である種粒子の粒子径と目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子の粒子径とが一定の比率となる関係性があることを見出した。このため、目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子のDSSAに対する比が特定の範囲である種粒子を用いることで所望の粒子径のニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得ることができる。DSSA値の比としてより好ましくは0.10~0.27であり、更に好ましくは0.12~0.25である。
目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子及び種粒子のDSSA値は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0027】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子は、工程(b)においてニオブ酸アルカリ金属塩粒子の成長の核として機能する限り特に制限されないが、上記ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子は、比表面積換算粒子径(DSSA)が0.013~0.09μmであることが好ましい。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子のDSSAをより好適な範囲とすることができ、より微細な粒子を得ることができる。種粒子のDSSAとしてより好ましくは0.014~0.08μmであり、更に好ましくは0.016~0.07μmである。種粒子の比表面積換算粒子径は、種粒子の比表面積と実施例に記載の換算式により算出することができる。
また、種粒子の平均粒子径D50は、0.015~0.15μmであることが好ましい。より好ましくは0.02~0.14μmであり、更に好ましくは0.03~0.12μmである。
種粒子の平均粒子径D50は、実施例に記載の粒度分布計により測定することができる。
【0028】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子は、工程(b)においてニオブ酸アルカリ金属塩粒子の成長の核として機能する限り特に制限されないが、比表面積が15~100m2/gであることが好ましい。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積をより好適な範囲とすることができる。種粒子の比表面積としてより好ましくは17~90m2/gであり、更に好ましくは20~80m2/gである。
上記種粒子の比表面積は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0029】
上記工程(a1)におけるニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子の添加量は、工程(b)において種粒子がニオブ酸アルカリ金属塩粒子の成長の核として機能する限り特に制限されないが、工程(a1)で用いるニオブ含有化合物におけるニオブ原子100モル%に対して1~15モル%であることが好ましい。ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子の添加量が1モル%を下回るときは、10m2/g以上の比表面積を有するニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得ることが難しくなる。また、ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子の添加量が15モル%を超えても、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積に変化はなく、かくして、種粒子をこのように多量に加えても、それに見合う効果が得られない。より好ましくは2~13モル%であり、更に好ましくは5~10モル%である。
【0030】
上記工程(a1)におけるアルカリ金属元素含有化合物は、アルカリ金属元素を含むものであれば特に制限されないが、塩基性の化合物であることが好ましい。より好ましくはアルカリ金属元素の水酸化物である。
上記工程(a1)における混合液中のアルカリ金属元素含有化合物の濃度は、3~30mol/Lである。アルカリ金属元素含有化合物の濃度を3mol/L以上とすることにより、混合液中のニオブ含有化合物の濃度を高めても、充分に反応させることができるため、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子を効率よく得ることができる。一方、アルカリ溶液の濃度が30mol/Lを超えると、通常アルカリ溶液は飽和濃度に達する。従ってアルカリ溶液の濃度の上限は、事実上はアルカリ飽和濃度であり、この上限はアルカリの性質に応じて変動しうる。上記アルカリ金属元素含有化合物濃度として好ましくは5~20mol/Lであり、より好ましくは6~14mol/Lである。
【0031】
上記ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子及びアルカリ金属元素含有化合物におけるアルカリ金属元素として具体的には、ナトリウム及びカリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。中でも好ましくはカリウムである。
【0032】
上記混合工程(a1)における界面活性剤の使用量は、ニオブ含有化合物の使用量100質量%に対して0.1質量%未満であることが好ましい。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の粒子径を好適な範囲とすることができ、略立方体状の粒子(異方性が少ない粒子)が得られやすくなる。より好ましくは0.05質量%未満であり、更に好ましくは0.01質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。
【0033】
上記混合工程(a1)における混合液中のニオブ含有化合物由来のニオブ濃度は、0.4~2.0mol/Lであることが好ましい。これによりニオブ酸アルカリ金属塩粒子をより効率よく得ることができる。ニオブ濃度としてより好ましくは0.5~1.5mol/Lであり、更に好ましくは0.8~1.2mol/Lである。
【0034】
上記混合工程(a1)における混合液中のニオブ含有化合物由来のニオブの量は、混合液中のアルカリ金属元素含有化合物由来のアルカリ金属元素100モル%に対して4~50モル%であることが好ましい。これによりニオブ酸アルカリ金属塩粒子をより効率よく得ることができる。より好ましくは5~20モル%であり、更に好ましくは6~15モル%である。
【0035】
上記ニオブ含有化合物は、ニオブ元素を含むものであれば特に制限されないが、好ましくは酸化ニオブ及びハロゲン化ニオブである。
ハロゲン化ニオブとしては、フッ化ニオブ、塩化ニオブ、臭化ニオブ、ヨウ化ニオブが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
ニオブ含有化合物としてより好ましくは酸化ニオブである。
【0036】
上記工程(a1)において、ニオブ含有化合物と、アルカリ金属元素含有化合物と、ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子と溶媒とを混合する方法は特に制限されず、これらを添加する順序や、上記成分を添加する際の形態も制限されない。ニオブ含有化合物、アルカリ金属元素含有化合物、ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子を固体の形態で混合してもよいが、これらを溶液又は懸濁液(スラリー)の形態で混合することが好ましい。これらの成分を溶液又は懸濁液をとする際の溶媒は、特に限定されないが、水;アルコール、ジオール、トリオール、アセトン等の親水性有機溶媒;水と親水性有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。これらのなかでも水が好ましい。
上記成分を溶液又は懸濁液の形態で混合する場合、アルカリ金属元素含有化合物の溶液に対して、ニオブ含有化合物の溶液又は懸濁液とニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子とを添加することが好ましい。
【0037】
上記工程(a1)において混合する溶媒は、特に制限されず、上述の溶媒が挙げられる。好ましくは水である。
上記工程(a1)において混合する溶媒の量は、特に制限されないが、混合液中のニオブ及びアルカリ金属元素含有化合物の濃度が上記好ましい範囲となるように溶媒の量を調整することが好ましい。上記工程(a1)において溶媒を単独で添加してもよいが、ニオブ含有化合物、アルカリ金属元素含有化合物、ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子を溶液又は懸濁液として混合することにより、溶媒を添加することが好ましい。
【0038】
上記工程(a1)において上記成分を混合する際の温度や圧力は特に限定されず、通常は常温(15℃~30℃)、常圧(約1気圧)の条件にて混合することができる。
【0039】
(ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子の製造方法)
上記工程(a1)において用いられるニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子の製造方法は特に制限されないが、ニオブ含有化合物とアルカリ金属元素含有化合物と溶媒とを混合する工程と、該混合工程により得られた混合液をソルボサーマル反応させる工程と、ソルボサーマル反応工程後の混合液に含まれる粒子を粉砕する工程とを含むことが好ましい。
上記種粒子の製造方法における好ましい形態は、以下に記載する以外は上記ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法において述べたとおりである。
【0040】
上記混合工程における混合溶液中のアルカリ金属元素含有化合物の濃度は特に制限されないが、0.5~30mol/Lであることが好ましい。より好ましくは0.75~20mol/Lであり、更に好ましくは1~10mol/Lである。
上記混合液中のニオブ濃度は、0.1~2.0mol/Lであることが好ましい。より好ましくは0.15~1.5mol/Lであり、更に好ましくは0.2~1.2mol/Lである。
【0041】
上記混合工程において混合する溶媒は、特に制限されず、上述の溶媒が挙げられる。好ましくは水である。
上記混合工程において混合する溶媒の量は、特に制限されないが、混合液中のニオブ及びアルカリ金属元素含有化合物の濃度が好ましい範囲となるように溶媒の量を調整することが好ましい。
【0042】
上記ソルボサーマル反応工程における反応温度は、80~300℃であることが好ましい。
反応時間は1~48時間であることが好ましい。
また、ソルボサーマル反応工程は、反応温度を一定に1段階で行っても、反応温度を変化させて2段階以上で行ってもよいが、2段階で行うことが好ましい。
1段目の反応温度としては、80~140℃であることが好ましく、より好ましくは90~120℃である。1段目の反応時間は1~48時間であることが好ましく、より好ましくは15~30時間である。
2段目の反応温度としては、140~300℃であることが好ましく、より好ましくは180~220℃である。2段目の反応時間は1~12時間であることが好ましく、より好ましくは2~5時間である。
上記ソルボサーマル反応工程における反応系内の圧力、及び、ソルボサーマル反応に用いられる好ましい装置は、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法に述べたとおりである。
【0043】
上記粉砕工程は、ソルボサーマル反応工程後の混合液に含まれる粒子を粉砕することができる限り特に制限されないが、遊星ミル、ビーズミル、振動ミル、メディアレス粉砕機等を用いることができる。中でもビーズミルを用いる方法が好ましい。
ビーズミルに使用するビーズとしては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、窒化珪素ビーズ等が挙げられる。好ましくはジルコニアビーズである。
ビーズミルを用いる場合、使用するビーズの大きさは、直径0.03~0.5mmのものを用いることが好ましい。
1-2.工程(a2)
工程(a2)は、母材としてのニオブ酸アルカリ金属塩粒子と、該ニオブ酸アルカリ金属塩粒子におけるアルカリ金属元素M2とは異なるアルカリ金属元素M1を含む化合物(以下、アルカリ金属元素含有化合物ともいう。)と溶媒とを混合する工程であることが好ましい。
【0044】
上記アルカリ金属元素M1は目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子におけるアルカリ金属元素であり、M1の好ましいアルカリ金属元素は上述のとおりである。
上記M2は、M1以外のアルカリ金属元素であればよく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。上記式M1がカリウムであって、M2がナトリウムである形態や、M1がナトリウムであって、M2がカリウムである形態がより好ましく、これらの形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0045】
本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法は、母材であるニオブ酸アルカリ金属塩粒子(以下、母材粒子ともいう。)におけるM2をアルカリ金属元素含有化合物のM1に置換することができる。
本発明の製造方法では、母材粒子中のアルカリ金属の少なくとも一部が置換されればよいが、母材粒子中の全M2100モル%に対して60~100モル%がM1に置換されることが好ましい。より好ましくは70~100モル%であり、更に好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%であり、最も好ましくは100モル%である。
得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子の結晶構造は、実施例に記載のX線回折測定により評価することができる。また、実施例に記載の元素分析により置換の割合を見積もることができる。
【0046】
上記母材粒子は、比表面積換算粒子径(DSSA)が0.04~1.3μmであることが好ましい。本発明の製造方法では、母材粒子の粒子径に対して、目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積換算粒子径が、一定の幅の範囲に収まることとなる。このため、DSSAが特定の範囲である母材粒子を用いることにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の粒子径を所望の範囲にしやすくなる。母材粒子のDSSAとしてより好ましくは0.05~1.0μmであり、更に好ましくは0.05~0.65μmである。
母材粒子のDSSAが0.05~0.65μmである場合、混合液中のニオブ酸アルカリ金属塩粒子の濃度をより高濃度とすることができ、かつ、アルカリ金属元素含有化合物の濃度をより低濃度にすることができるため、より安全に、効率よくニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得ることができる。
上記DSSAは、比表面積の値と実施例に記載の換算式により算出することができる。
【0047】
上記母材粒子は、比表面積が1.0~32m2/gであることが好ましい。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積をより好適な範囲とすることができる。母材粒子のニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積としてより好ましくは1.3~26m2/gであり、更に好ましくは2.0~26m2/gである。
上記比表面積は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0048】
上記母材粒子は、平均粒子径D50が0.04~3.0μmであることが好ましい。より好ましくは0.05~2.5μmであり、更に好ましくは0.05~1.0μmである。
【0049】
上記工程(a2)におけるアルカリ金属元素含有化合物は、アルカリ金属元素を含むものであれば特に制限されないが、塩基性の塩であることが好ましい。より好ましくはアルカリ金属元素の水酸化物である。
上記工程(a2)における混合液中のM1の濃度は特に制限されないが、1~9mol/Lであることが好ましい。混合液中のM1の濃度を9mol/L以下とすることにより、作業環境の安全性をより高めることができる。上記M1の濃度としてより好ましくは1.3~5mol/Lであり、更に好ましくは1.5~3mol/Lである。
【0050】
上記混合工程(a2)における混合液中のニオブ酸アルカリ金属塩粒子由来のニオブ濃度は、0.1~2mol/Lであることが好ましい。これによりニオブ酸アルカリ金属塩粒子をより効率よく得ることができる。ニオブ濃度としてより好ましくは0.2~1.5mol/Lであり、更に好ましくは0.25~1.2mol/Lである。
【0051】
上記工程(a2)における混合液中のM1と母材粒子由来のM2の比(M1/M2)は、1より大きいことが好ましい。これにより、母材粒子におけるM2のM1への置換反応がより充分に進行し、M2がM1に置換される割合をより高めることができる。上記混合液中のM1とM2の比としてより好ましくは1.1~40であり、更に好ましくは1.1~10である。
【0052】
上記工程(a2)において、上記母材粒子と、アルカリ金属元素含有化合物と溶媒とを混合する方法は特に制限されず、これらを添加する順序や、上記成分を添加する際の形態も制限されない。上記母材粒子、アルカリ金属元素含有化合物を固体の形態で混合してもよいが、これらを溶液又は懸濁液(スラリー)の形態で混合することが好ましい。これらの成分を溶液又は懸濁液をとする際の溶媒は、特に限定されず、工程(a1)で述べた溶媒が挙げられ、好ましくは水である。
上記成分を溶液又は懸濁液の形態で混合する場合、アルカリ金属元素含有化合物の溶液に対して、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の溶液又は懸濁液を添加することが好ましい。
【0053】
上記工程(a2)において混合する溶媒は、特に制限されず、上述の溶媒が挙げられる。好ましくは水である。
上記工程(a2)において混合する溶媒の量は、特に制限されないが、混合液中のニオブ及びM1の濃度が上記好ましい範囲となるように溶媒の量を調整することが好ましい。上記工程(a2)において溶媒を単独で添加してもよいが、上記母材粒子、アルカリ金属元素含有化合物を溶液又は懸濁液として混合することにより、溶媒を添加することが好ましい。
【0054】
上記工程(a2)において上記成分を混合する際の温度や圧力は特に限定されず、通常は常温(15℃~30℃)、常圧(約1気圧)の条件にて混合することができる。
【0055】
(母材として用いるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造)
工程(a2)において母材として用いるニオブ酸アルカリ金属塩粒子(母材粒子)の製造方法は特に制限されないが、ニオブ含有化合物とアルカリ金属元素含有化合物と溶媒とを混合する工程と、該混合工程により得られた混合液をソルボサーマル反応させる工程とを含むことが好ましい。上記母材粒子の製造方法における好ましい形態は、以下に記載する以外は上記工程(a1)における種粒子の製造方法において述べたとおりである。
【0056】
上記アルカリ金属元素含有化合物は、目的とするニオブ酸アルカリ金属塩粒子におけるアルカリ金属元素M1と異なるアルカリ金属元素を含むものであれば特に制限されないが、塩基性の化合物であることが好ましい。より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0057】
上記母材粒子の製造において、ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子を用いてもよい。ニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子は、ソルボサーマル反応工程において、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の成長の核として機能するものであり、これを用いることにより、より微細なニオブ酸アルカリ金属塩粒子を得ることができる。
上記種粒子を用いる場合、上記混合工程において、種粒子を混合することが好ましい。
【0058】
上記母材粒子の製造に用いるニオブ酸アルカリ金属塩の種粒子は、比表面積換算粒子径が0.013~0.09μmであることが好ましい。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の比表面積換算粒子径をより好適な範囲とすることができる。種粒子の比表面積換算粒子径としてより好ましくは0.014~0.08μmであり、更に好ましくは0.016~0.07μmである。
また、上記母材粒子の製造に用いる種粒子は、平均粒子径D50が0.015~0.15μmであることが好ましい。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の粒子径をより好適な範囲とすることができる。種粒子の平均粒子径D50としてより好ましくは0.02~0.14μmであり、更に好ましくは0.03~0.12μmである。
種粒子の平均粒子径は、実施例に記載の粒度分布計により測定することができる。
【0059】
上記母材粒子の製造に用いる種粒子は、比表面積が15~100m2/gであることが好ましい。これにより、得られる母材粒子の比表面積をより好適な範囲とすることができる。種粒子の比表面積としてより好ましくは17~90m2/gであり、更に好ましくは20~80m2/gである。
上記種粒子の比表面積は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0060】
上記混合工程における種粒子の添加量は、混合工程で用いるニオブ含有化合物におけるニオブ原子100モル%に対して0~15モル%であることが好ましい。より好ましくは2~13モル%であり、更に好ましくは5~10モル%である。
【0061】
上記種粒子の製造方法は特に制限されないが、上述の工程(a1)において述べたとおりである。
【0062】
2.工程(b)
工程(b)は、混合工程(a)で得られた混合液をソルボサーマル反応させる工程(以下、ソルボサーマル反応工程ともいう)である。ソルボサーマル反応は、溶媒の存在下で加熱する反応であれば特に制限されない。上記溶媒として水を用いる場合、ソルボサーマル反応を水熱反応ともいう。
工程(b)における反応温度としては、130~300℃である。これにより、得られるニオブ酸アルカリ金属塩粒子の粒子径を好適な範囲とすることができる。反応温度が300℃を超えると粒子の成長が促進され、微粒子が得られない恐れがある。更に、反応温度を300℃以下とすることにより、製造コストを充分に抑制することができる。また、反応温度を130℃以上とすることにより、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子の精製を充分に行うことができる。
反応温度としてより好ましくは130~250℃であり、更に好ましくは140~220℃である。
【0063】
工程(b)における反応系内の圧力は、特に制限されないが、0.10~10.0MPaであることが好ましい。より好ましくは0.2~5.0MPaであり、更に好ましくは0.3~4.0MPaである。
【0064】
工程(b)における反応時間は、特に制限されないが、1~12時間であることが好ましく、より好ましくは1~8時間であり、更に好ましくは2~5時間である。
【0065】
工程(b)のソルボサーマル反応に用いられる装置としては特に制限されないが、オートクレーブ等が挙げられる。
【0066】
3.工程(a)及び工程(b)以外のその他の工程
本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子の製造方法は、上記工程(a)及び工程(b)以外のその他の工程を含んでいてもよい。
その他の工程としては、工程(b)で得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子を回収する工程(以下、回収工程ともいう)、回収したニオブ酸アルカリ金属塩粒子を洗浄する工程(以下、洗浄工程ともいう)、乾燥する工程(以下、乾燥工程ともいう)等が挙げられる。
【0067】
上記回収工程は、工程(b)で得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子を回収することができる限り特に制限されないが、ろ過や遠心分離により工程(b)で得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子を含む懸濁液からニオブ酸アルカリ金属塩粒子を回収することが好ましい。
【0068】
上記洗浄工程は、工程(b)で得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子を洗浄することができる限り特に制限されないが、ニオブ酸アルカリ金属塩粒子を水等の溶媒に分散させた後、加圧ろ過や遠心沈降やデカンテーションにより分散液からニオブ酸アルカリ金属塩粒子を分離することにより行うことが好ましい。
洗浄工程を行う回数は特に制限されず、通常1~10回である。
【0069】
上記乾燥工程は、工程(b)で得られたニオブ酸アルカリ金属塩粒子から溶媒が蒸発し、乾燥することができる限り特に制限されないが、例えば、箱型乾燥機等を用いて乾燥することが好ましい。
乾燥温度は特に制限されず、50℃~150℃で行うことができる。
乾燥時間は特に制限されず、通常3~24時間であり、好ましくは5~15時間である。
【0070】
<圧電セラミックス材料>
本発明はまた、本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子を含む圧電セラミックス材料でもある。
圧電セラミックス材料の製造方法は特に限定されないが、通常はニオブ酸アルカリ金属塩粒子を乾燥させたものと、有機バインダー、分散剤、可塑剤、溶媒等の必要な添加物等を混練した組成物を、公知の成型方法により成型し、高温(1000℃程度)で焼結させることにより得ることができる。公知の成型方法としては、プレス成型や金型成型等が挙げられる。
また、圧電セラミックス材料から得られる成型体に電極を形成することにより、圧電ブザー、圧電振動子などの圧電素子を得ることができる。
本発明のニオブ酸アルカリ金属塩粒子は微細であるため、圧電セラミックス材料の薄膜化が容易となり、小型で薄層の圧電素子を得ることができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0072】
各種測定は以下のようにして行った。
<比表面積>
比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM-1220)にて、純窒素ガス気流下、230℃で30分間保持して脱気後、窒素30%ヘリウム70%の混合ガスを流通して、BET流動法(1点法)により測定した。
【0073】
<粒度分布>
粒度分布は、ヘキサメタリン酸ナトリウムを分散剤として使用し、超音波ホモジナイザーで分散し、レーザー回折・散乱式粒度分布計 ((株)堀場製作所製LA-950)により下記条件で測定した。
粒子屈折率:2.26
溶媒屈折率:1.333
【0074】
<X線回折パターン>
X線回折装置((株)リガク製、RINT TTRIII、線源CuKα、モノクロメータ使用、管電圧50kV、電流300mA、長尺スリットPSA200(全長200mm、設計開口角度0.057度))を用いて、下記条件で回折パターンを取得した。
測定方法:平行法(連続)
スキャンスピード:5度/分
サンプリング幅:0.04度
【0075】
<比表面積換算粒子径>
上述の方法により測定された比表面積から、次の換算式を用いて比表面積換算粒子径を算出した。
S=6/(ρ×d)
S=比表面積
ρ=試料粉体の密度
d=比表面積換算粒子径
ただし、ρ(試料粉体の密度)は、KNbO3、NaNbO3とも理論密度(4.6g/cm3)とした。
【0076】
<単分散性指標>
上記の通り求める粒度分布の中央値D50を、比表面積換算粒子径DSSAで除した値(D50/DSSA)を単分散性指標とした。この値が1に近いほど粒子の独立性が高いことを示す指標である。特に本指標が4.0以下、より好ましくは2.5以下である時、粒子の独立性が高く、圧電体用途に好適に用いることができる。
【0077】
<元素分析>
元素分析は、ICP発光分光分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製、SPS310
0-24HV)および原子吸光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製、Z-2300
)を用いた。
【0078】
<焼結密度・相対密度>
下記の要領にてニオブ酸カリウム粒子とニオブ酸ナトリウム粒子を所定の配合で混合し、焼結することでニオブ酸カリウムナトリウムの焼結密度を求めた。
(1)必要量のニオブ酸カリウム粒子とニオブ酸ナトリウム粒子を秤量し、さらにニオブ酸カリウムナトリウムに対して、一酸化銅として1.0wt%となる量の酢酸銅(富士フィルム和光純薬(株)製、和光一級)と25wt%となるポリビニルアルコール(富士フィルム和光純薬(株)製、和光一級)の水溶解液(8wt%)を添加し、加熱しながら乳鉢で混合する。
(2)(1)の試料を直径20mmの金型にて2T/cm2の圧力でプレスし、成形体を作成する。
(3)(2)の成形体を大気雰囲気にて100℃/時の速度で400℃まで昇温し、3時間保持してポリビニルアルコールを除去する。その後、100℃/時の速度で目的の温度まで昇温し、目的の温度で2時間保持する。
(4)降温後、焼成品の直径、厚み、重量を測定し、焼結密度を求めた。また、相対密度は、理論密度4.6g/cm3に対する焼結密度の割合から求めた。
【0079】
<製造例1>
五酸化ニオブ(富士フィルム和光純薬(株)製、0.81Kg)、水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製、5.92Kg)を秤量した。容器に五酸化ニオブを添加し、イオン交換水5Lを投入し、30分間攪拌した。ついで、テフロン(登録商標)製容器にイオン交換水15Lを投入し、その後、水酸化ナトリウムを投入した。ここに五酸化ニオブスラリーを添加し、総液量を25Lとし、混合液を得た(ニオブ濃度0.25M、水酸化ナトリウム濃度6.0M)。得られた混合液をオートクレーブを用いて100℃で24時間加熱し、更に200℃で3時間加熱した。得られた縣濁液から固体をろ過・水洗してニオブ酸ナトリウムスラリー(1)を得た。
ニオブ酸ナトリウムスラリーの濃度を250g/Lに調整し、ウルトラアペックスミル(広島メタル&マシナリー製UAM-015)にて、直径0.05mmのジルコニアビーズを粉砕メディアとして使用し、スラリーの粒度分布の中央値が0.04μmとなるまで運転し、種粒子スラリー(1)を得た。得られた種粒子の比表面積は、63m2/gであり、種粒子の比表面積換算粒子径DSSAは、0.02μmであった。
【0080】
<実施例1>
五酸化ニオブ(富士フィルム和光純薬(株)製、3.33Kg)、水酸化カリウム(純度85%、富士フィルム和光純薬(株)製、19.8Kg)、種粒子スラリー(1)(濃度174g/Kg、1.92Kg)を秤量した。
容器に五酸化ニオブを添加し、イオン交換水5Lを投入し、30分間攪拌した。ついで、テフロン(登録商標)製容器にイオン交換水15Lを投入し、その後、水酸化カリウムを添加し、ここに五酸化ニオブスラリーと種粒子スラリー(1)を投入し、総液量を25Lとし、混合液を得た(ニオブ濃度1.0M、水酸化カリウム濃度12.0M)。得られた混合液をオートクレーブを用いて150℃で3時間加熱し、得られた縣濁液から固体をろ過・水洗してニオブ酸カリウムスラリー(1)を得、乾燥してニオブ酸カリウム粒子(1)を得た。
【0081】
<実施例2>
実施例1で得たニオブ酸カリウムスラリー(1)(濃度500g/Kg、9.0Kg)と水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製、1.5Kg)を秤量した。
テフロン(登録商標)製容器にイオン交換水15Lを投入し、その後、水酸化ナトリウムを添加し水酸化ナトリウム水溶液を得、ここにニオブ酸カリウムスラリー(1)を投入し、総液量を25Lとした(ニオブ濃度1.0M、水酸化ナトリウム濃度1.5M)。オートクレーブにて、140℃で3時間加熱して得られた縣濁液から固体をろ過・水洗後、乾燥してニオブ酸ナトリウム粒子(2)を得た。
【0082】
<比較例1>
五酸化ニオブ(富士フィルム和光純薬(株)製、0.81Kg)、水酸化カリウム(純度85%、富士フィルム和光純薬(株)製、13.18Kg)を秤量した。
容器に五酸化ニオブを添加し、イオン交換水5Lを投入し、30分間攪拌した。ついで、テフロン(登録商標)製容器にイオン交換水15Lを投入し、その後、水酸化カリウムを投入した。ここに五酸化ニオブスラリーを添加し、総液量を25Lとした(ニオブ濃度0.25M、水酸化カリウム濃度8.0M)。オートクレーブにて、100℃で24時間加熱を経て、200℃で3時間加熱した。得られた縣濁液から固体をろ過・水洗して比較ニオブ酸カリウムスラリー(1)を得、乾燥して比較ニオブ酸カリウム粒子(1)を得た。
【0083】
<比較例2>
比較例1で得た比較ニオブ酸カリウムスラリー(1)(濃度500g/Kg、9.0Kg)と水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製、1.5Kg)を秤量した。
テフロン(登録商標)製容器にイオン交換水15Lを投入し、その後、水酸化ナトリウムを添加し水酸化ナトリウム水溶液を得、ここに比較ニオブ酸カリウムスラリー(1)を投入し、総液量を25Lとした(ニオブ濃度1.0M、水酸化ナトリウム濃度1.5M)。オートクレーブにて、200℃で3時間加熱して得られた縣濁液から固体をろ過・水洗後、乾燥して比較ニオブ酸ナトリウム粒子(2)を得た。
【0084】
【0085】
【0086】
実施例1のニオブ酸カリウム粒子と実施例2のニオブ酸ナトリウム粒子を1:1のモル比で混合し、960℃(実施例3)、980℃(実施例4)及び1000℃(実施例5)にてそれぞれ焼結してニオブ酸カリウムナトリウムの焼結密度と相対密度を求めた。また、比較例1のニオブ案カリウム粒子と比較例2のニオブ酸ナトリウム粒子を1:1のモル比で混合し、960℃(比較例3)、980℃(比較例4)及び1000℃(比較例5)にてそれぞれ焼結してニオブ酸カリウムナトリウムの焼結密度と相対密度を求めた。実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、実施例5と比較例5をそれぞれ比較すると、いずれも実施例の方が比較例と比べて高い焼結密度と高い相対密度を示した。特に、低温ほど焼結密度と相対密度の差異が顕著であった。よって、比表面積が10m2/g以上であって、D50/DSSAが4.0以下であるニオブ酸アルカリ塩粒子は、比表面積、D50/DSSAが上記範囲を満たさない粒子と比較して、低温域での焼結密度・相対密度が高く、より低温で焼結することが分かった。焼結密度が高いことから、高い圧電特性が期待できる。