(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】搬送装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G03G15/20 505
(21)【出願番号】P 2020050398
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大谷 秀之
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-013279(JP,A)
【文献】特開2010-155682(JP,A)
【文献】特開2013-011683(JP,A)
【文献】実開平03-002367(JP,U)
【文献】特開2014-178481(JP,A)
【文献】特開2009-134207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源を通過した記録材の搬送方向を反転して前記記録材を前記加熱源の上方を通過させて前記加熱源の記録材搬送方向における上流側に向かって再度案内する案内面と、
先端が前記案内面に接し前記加熱源を通過した前記記録材から発生する水蒸気の前記案内面への流入を抑止する
フィルム状の部材からなる抑止手段と、を備えた、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記抑止手段は、前記記録材搬送方向と交差する方向に少なくとも装置に使用可能な最大サイズの前記記録材の幅に亘って設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
記録材に粉体を供給する粉体供給手段と、
前記粉体供給手段により前記記録材上に供給された前記粉体を加熱及び加圧して前記記録材上に固定する加熱源と、
請求項1
又は2に記載の搬送装置と、を備えた、
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱と加圧により未定着の画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置において、装置内から発生する水蒸気を通過させ、かつ水蒸気が結露して落下する水滴を不通過とする水滴保持シートを備えている画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
記録材に未定着像を形成する画像形成部と、記録材を加熱することにより未定着像を定着させる定着装置と、を有し、定着装置を通過した片面画像形成済みの記録材を両面搬送経路を経由させて再び画像形成部と定着装置に導入することにより記録材の両面に画像形成を行なう両面画像形成機能を有する画像形成装置において、定着装置の略直上に位置し、定着装置とともに両面搬送経路を構成する案内部材を設けた外装カバー部材を有し、案内部材と外装カバー部材との間には空洞部が形成されており、空洞部は、記録材搬送方向に直交する方向において、記録材搬送方向の断面形状を両端部より中央部を小さくした凹形状の箱型構造である画像形成装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-134207号公報
【文献】特開2006-322994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水蒸気による搬送経路への水分付着を抑制することができる搬送装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の搬送装置は、
加熱源を通過した記録材の搬送方向を反転して前記記録材を前記加熱源の上方を通過させて前記加熱源の記録材搬送方向における上流側に向かって再度案内する案内面と、
先端が前記案内面に接し前記加熱源を通過した前記記録材から発生する水蒸気の前記案内面への流入を抑止するフィルム状の部材からなる抑止手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において
前記抑止手段は、前記記録材搬送方向と交差する方向に少なくとも装置に使用可能な最大サイズの前記記録材の幅に亘って設けられている、
ことを特徴とする。
【0014】
前記課題を解決するために、請求項3に記載の印刷装置は、
記録材に粉体を供給する粉体供給手段と、
前記粉体供給手段により前記記録材上に供給された前記粉体を加熱及び加圧して前記記録材上に固定する加熱源と、
請求項1又は2に記載の搬送装置と、を備えた、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、水蒸気による記録材の搬送経路への水分付着を抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、搬送経路を通過する記録材への水分付着を抑制することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、反転した記録材の第2面への水分付着を抑制し、画像欠陥を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】画像形成装置1の内部構成を示す断面模式図である。
【
図2】定着装置を含む反転搬送経路を示す断面模式図である。
【
図3】定着装置を含む反転搬送路を断面模式図とともに示す平面模式図である。
【
図4】変形例1に係る定着装置を含む反転搬送経路を示す断面模式図である。
【
図5】変形例2に係る定着装置を含む反転搬送経路を示す断面模式図である。
【
図6】変形例2に係る定着装置を含む反転搬送経路の他の例を示す断面模式図である。
【
図7】フィルム部材のみを有する反転搬送経路を示す断面模式図である。
【
図8】比較例の反転搬送経路における水蒸気の流れを説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
尚、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0026】
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の内部構成を示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、画像形成装置1の全体構成及び動作を説明する。
【0027】
(1.1)画像形成装置のシステム構成
画像形成装置1は、制御装置10、給紙装置20、感光体ユニット30、粉体供給手段の一例としての現像装置40、転写装置50、加熱源である定着装置60を備えて構成されている。画像形成装置1の上面(Z方向)には、画像が記録された用紙が排出・収容される排出トレイ1aが形成されている。
また、画像形成装置1は印刷装置の一例であり、他の装置で構成されていてもよい。例えば、各実施の形態における現像剤を塗装用粉体として利用することで、粉体塗装装置を印刷装置の一例として構成してもよい。
【0028】
具体的には、各実施の形態における現像装置40を静電粉体塗装法における粉体塗装ヘッド(粉体供給装置の一例)として利用し、この粉体塗装ヘッドに近接させて導電性のシート状媒体を搬送させる。粉体塗装ヘッドと導電性のシート状媒体との間にバイアス電圧を印可することで、帯電した塗装用粉体(例えば、熱硬化性トナー)がシート状媒体上に塗布される。その後、シート状媒体を加熱すれば、シート状媒体表面が塗装される。
【0029】
制御装置10は、画像形成装置1の動作を制御する画像形成装置制御部11と、印刷処理要求に応じた画像データを準備するコントローラ部12、露光装置LHの点灯を制御する露光制御部13、電源装置14等を有する。電源装置14は、後述する帯電ロール32、現像ロール(粉体供給ロール)42、一次転写ロール52、二次転写ロール53等に電圧を印加するとともに、露光装置LHに電力を供給する。
【0030】
コントローラ部12は、外部の情報送信装置(例えばパーソナルコンピュータ等)から入力された印刷情報を潜像形成用の画像情報に変換して予め設定されたタイミングで、駆動信号を露光装置LHに出力する。
【0031】
(1.2)画像形成部の構成と動作
画像形成装置1の底部には、給紙装置20が設けられている。給紙装置20は、用紙積載板21を備え、用紙積載板21の上面には多数の記録媒体としての用紙Pが積載される。用紙積載板21に積載され、規制板(不図示)で幅方向位置が決められた用紙Pは、上側から1枚ずつ用紙引き出し部22により側方(X方向)に引き出された後、レジストロール対23のニップ部まで搬送される。
【0032】
感光体ユニット30は、給紙装置20の上方(Z方向)に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する像保持体としての感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向にそって、帯電ロール32、露光装置LH、現像装置40、一次転写ロール52、クリーニングブレード34が配置されている。帯電ロール32には、帯電ロール32の表面をクリーニングするクリーニングロール33が接触して配置されている。
【0033】
現像装置40は、内部に現像剤が収容される現像ハウジング41を有する。現像ハウジング41内には、感光体ドラム31に対向して配置された現像ロール42と、この現像ロール42の背面側斜め下方には現像剤を現像ロール42側へ撹拌搬送する一対のオーガ44、45が配設されている。現像ロール42には、現像剤の層厚を規制する層規制部材46が近接配置されている。
現像装置40各々は、現像ハウジング41に収容される現像剤を除いて同様に構成され、それぞれが色材の一例であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナーでトナー像を形成する。
【0034】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電ロール32により帯電され、露光装置LHから出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ロール42によりトナー像として現像される。
【0035】
転写装置50は、各感光体ユニット30の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト51、各感光体ユニット30にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ロール52を備えている。さらに、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール53、とから構成されている。
【0036】
各感光体ユニット30の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、画像形成装置制御部11により制御される電源装置14等から所定の転写電圧が印加された一次転写ロール52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って二次転写ロール53が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて給紙装置20から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、二次転写ロール53には、画像形成装置制御部11により制御される電源装置14等から所定の転写電圧が印加され、レジストロール対23から送り出され、搬送ガイドにより案内された用紙Pに中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0037】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニングブレード34により除去され、廃現像剤収容部(不図示)に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電ロール32により再帯電される。尚、クリーニングブレード34で除去しきれず帯電ロール32に付着した残留物は、帯電ロール32に接触して回転するクリーニングロール33表面に捕捉され、蓄積される。
【0038】
定着装置60は、加熱モジュール61と加圧モジュール62を有し、加熱モジュール61と加圧モジュール62の圧接領域によって定着ニップ部N(定着領域)が形成される。
【0039】
転写装置50においてトナー像が転写された用紙Pは、トナー像が未定着の状態で搬送ガイド54を経由して定着装置60に搬送される。定着装置60に搬送された用紙Pは、一対の加熱モジュール61と加圧モジュール62により、加熱と圧着の作用でトナー像が定着される。
定着トナー像が形成された用紙Pは、搬送ロール対68を介して排出ロール対69から画像形成装置1上面の排出トレイ1aに排出される。
【0040】
用紙Pの両面に画像を印刷するときは、用紙Pの後端が搬送ロール対68を通過した時点で、排出ロール対69を逆回転させて、用紙Pの搬送方向を反転させて反転搬送路70に送り込む。用紙Pは、搬送ロール対74で反転搬送路70内をレジストロール対23に向けて搬送される。そして、中間転写ベルト51上の重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されるタイミングに合わせてレジストロール対23から二次転写部Tに送り出され、中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0041】
(2)搬送装置
図2は定着装置60を含む反転搬送路70を示す断面模式図、
図3は定着装置60を含む反転搬送路70を断面模式図とともに示す平面模式図、
図8は比較例の反転搬送路700における水蒸気の流れを説明する断面模式図、
図9は画像欠陥の模式図である。
以下、図面を参照しながら画像形成装置における搬送装置の構成と作用について説明する。
【0042】
(2.1)定着装置
図2に示すように、加熱源の一例としての定着装置60は、加熱モジュール61と加圧モジュール62が圧接して配置され、トナー像が未定着の状態で搬送ガイド54を経由して搬送される用紙Pを加熱、圧着する定着ニップ部N(定着領域)が形成されている。
【0043】
加熱モジュール61は、定着ニップ部Nを通過する用紙Pに接触して加熱する加熱ロール610、加熱ロール610の内部に加熱ロール610の内周面と間隔をあけて配置された定着ランプQ、画像形成装置1の駆動部(不図示)から回転駆動力を受けて加熱ロール610を回転させるギアG(不図示)からなる。
【0044】
加圧モジュール62は、加圧ベルト620、第1加圧部材621、第2加圧部材622、パッド部材623、を備え、第1加圧部材621によって内周面側から加圧され、第2加圧部材622によって内周面側から支持された加圧ベルト620が加熱ロール610との接触部で定着ニップ部Nを形成している。
【0045】
(2.2)搬送経路
定着装置60の定着ニップ部Nの出口側には、搬送ロール対68が設けられ、定着装置60の定着ニップ部Nを通過した定着後の用紙Pを排出ロール対69に向かって搬送する。
排出ロール対69は、搬送ロール対68の用紙搬送方向における下流側に配置され、定着後の用紙Pを排出トレイ1aに排出する。また、排出ロール対69は逆回転可能であり、用紙Pの後端が搬送ロール対68を通過したした時点で逆回転して第1面に画像が形成された用紙Pを反転して再び二次転写部Tに向かって搬送する。
【0046】
排出ロール対69による用紙Pの反転搬送方向における下流側には、反転搬送路70が設けられている。反転搬送路70は、反転された用紙Pを定着装置60の用紙搬送方向における上流側に向かって再度案内する上側案内面71と、定着装置60の上方で上側案内面71と向かい合う第1下側案内面72、第1下側案内面72の反転搬送方向における下流側で上側案内面71と向かい合う第2下側案内面73からなる。
排出ロール対69で反転して送り込まれる用紙Pは、画像が形成される第2面が主として上側案内面71に沿いながら搬送ロール対74に向かって搬送される。
【0047】
第1下側案内面72の上方には、抑止手段の一例としての流入防止部材75が上側案内面71に向かって突出して設けられている。
【0048】
図8には、流入防止部材75を備えていない比較例の反転搬送路700における水蒸気の流れを示している。
定着装置60においては、湿度が高い高湿環境において、用紙Pが定着ニップ部Nを通過する際に、用紙Pに含まれる水分が加熱によって蒸発して水蒸気が発生することが知られている。この水蒸気は、
図8中に矢印で示すように、上方に拡散する。反転搬送路700には、第1下側案内面72が配置され、第1下側案内面72には、定着装置60で発生する熱で温められた空気を逃がすための複数のベント孔72aが設けられている。このため、用紙Pから発生する水蒸気もベント孔72aを通って上昇することになる。
【0049】
この水蒸気の一部は反転搬送路700に流れ込んで、上側案内面71、第2下側案内面73に付着して結露する。そして、両面印刷時に反転して搬送される用紙Pが反転搬送路700に入り込むと、上側案内面71、第2下側案内面73に接触して、結露した水分が用紙Pに付着する。特に、排出ロール対69で反転して送り込まれる用紙Pは、画像が形成される第2面が主として上側案内面71に沿いながら搬送されるために、上側案内面71に付着して結露した水分が用紙Pに付着すると、二次転写部Tにおける第2面へのトナー像の転写の際に
図9に一例として示すような転写不良の縦筋Hが現れることがある。
【0050】
本実施形態に係る搬送装置である反転搬送路70は、第1下側案内面72の上方に流入防止部材75が上側案内面71に向かって突出して設けられている。
【0051】
流入防止部材75は、吸水性又は吸湿性の材料で構成されている。吸水性又は吸湿性の材料としては、ゴム材料(たとえばポリウレタン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、およびシリコーン等)ポリウレタン、EPDM、シリコーン等)、樹脂材料(例えばポリエチレン)等の発泡スポンジが挙げられる。また、発泡構造としては、吸水した水蒸気(結露して水分となる)の保持力という観点から、気泡同士がつながっている連続気泡体(連泡)が好ましい。尚、吸水性又は吸湿性の材料としては、発泡スポンジに限られず、多孔質セラミックや不織布等であってもよい。
【0052】
図3に示すように、このような流入防止部材75は、反転搬送方向(図中 矢印で示す)と交差する方向に少なくとも装置に使用可能な最大サイズの用紙Pの幅(図中 点線で示す)に亘って設けられている。これにより、反転搬送路70を通過する用紙Pへの水分付着を抑制することができる。
【0053】
このように用紙Pの最大サイズ幅に亘って、第1下側案内面72の上方に上側案内面71に向かって突出して設けられている流入防止部材75は、
図2に示すように、その断面形状は、用紙Pの反転搬送方向における上流側が厚みが薄くなるように形成されている。これにより、反転搬送路70を通過する用紙Pの詰まりを抑制することができる。
特に、定着装置60で定着された用紙Pは、加熱モジュール61側にカールしやすく、反転して搬送される際には、用紙Pの先端が第1下側案内面72側にカール(ダウンカール)している場合が多く、流入防止部材75の反転搬送方向における上流側を薄くすることで用紙Pの先端の流入防止部材75への衝突を抑制することができる。
【0054】
第1下側案内面72の上面側には、流入防止部材75が設けられている領域に凹部72bが設けられている。凹部72bは、流入防止部材75から滴下する水分を一時的に貯留することで、流入防止部材75を一定のサイズ以下としている。流入防止部材75に保持された水分及び凹部72bに貯留された水分は、定着装置60の熱で蒸発し、流入防止部材75の水蒸気吸収力は一定のレベルで維持される。
【0055】
このように、反転搬送路70の第1下側案内面72の上方に、流入防止部材75を上側案内面71に向かって突出して設けることで、定着装置60で発生する水蒸気による反転搬送路70への水分付着を抑制し、両面印刷時の第2面の転写不良を抑えることができる。
【0056】
「変形例1」
図4は変形例1に係る定着装置60を含む反転搬送路70Aを示す断面模式図である。
図4に示すように、反転搬送路70Aは、第1下側案内面72と上側案内面71の間に流入防止部材75Aが配置されている。流入防止部材75Aは、ロール状で反転搬送方向と交差する方向に少なくとも装置に使用可能な最大サイズの用紙Pの幅に亘って設けられている。
【0057】
流入防止部材75Aは、発泡スポンジ75Aaがシャフト75Abの周りに被覆されたロール体であり、第1下側案内面72と上側案内面71の間で反転搬送される用紙Pの搬送を阻害しない大きさになっている。また、流入防止部材75Aは、シャフト75Abの両側を固定して配置してもよいが、シャフト75Abを軸受で支持して、回転可能に配置してもよい。回転可能に支持することで、反転搬送される用紙Pの先端部が流入防止部材75Aに接触した場合に、回転して用紙Pのジャムを抑えることができる。
【0058】
「変形例2」
図5は変形例2に係る定着装置60を含む反転搬送路70Bを示す断面模式図、
図6は変形例2に係る定着装置60を含む反転搬送路70Bの他の例を示す断面模式図、
図7はフィルム部材のみを有する反転搬送経路70Cを示す断面模式図である。
【0059】
図5に示すように、反転搬送路70Bには、第1下側案内面72の上方に上側案内面71に向かって突出して設けられた流入防止部材75の反転搬送方向における下流側に、先端が上側案内面71に接するように抑止手段の一例としてのフィルム部材76が設けられている。フィルム部材76は、流入防止部材75と同様に、反転搬送方向と交差する方向に少なくとも装置に使用可能な最大サイズの用紙Pの幅に亘って設けられている。
【0060】
フィルム部材76は、例えば、厚みが0.1mm程度のPETシート、厚みが0.2~0.3mm程度のオレフィン系シート等からなり、反転搬送される用紙Pの通過は許容して、反転搬送路70Bに流れ込む水蒸気の通過を阻止する。
これにより、上側案内面71への水分付着を抑制し、反転搬送路70Bを通過する用紙Pの第2面への水分付着を抑制することができる。
【0061】
尚、フィルム部材76は、
図6に示すように、第1下側案内面72と上側案内面71の間に配置されたロール状の流入防止部材75Aの反転搬送方向における下流側に設けてもよい。
また、
図7に示すように、流入防止部材75、75Aを設けることなく、フィルム部材76のみを先端が上側案内面71に接するように抑止手段の一例として設けてもよい。
【0062】
以上、本発明に係る実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。
例えば、本実施形態においては、印刷装置の一例として、記録としての用紙上にトナー像を形成する画像形成装置の搬送装置について説明したが、印刷装置としては、インク乾燥のための加熱源を備えて両面印刷を行うインクジェット印刷装置であってもよい。加熱源の上方で、両面印刷時に記録材を再度プリントヘッド部へ引き込む搬送経路の引き込み方向における加熱源の下流側に抑止手段の一例としての流入防止部材を配置することで搬送経路への水分付着を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・画像形成装置
10・・・制御装置
20・・・給紙装置
30・・・感光体ユニット
40・・・現像装置
50・・・転写装置
60・・・定着装置
61・・・加熱モジュール
62・・・加圧モジュール
70、70A、70B・・・反転搬送路
71・・・上側案内面
72・・・第1下側案内面
73・・・第2下側案内面
75、75A・・・流入防止部材
76・・・フィルム部材