(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】表示装置及びヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G06T 3/18 20240101AFI20240409BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240409BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240409BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240409BHJP
【FI】
G06T3/18
G02B27/01
G09G5/00 530H
G09G5/00 510A
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2020051651
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】石田 兼太郎
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212320(JP,A)
【文献】特開2010-151920(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043041(WO,A1)
【文献】特開2020-003516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 3/18
G02B 27/01
G09G 5/00
B60K 35/23 - 35/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源に照らされることで表示光を出射する表示部と、
前記表示部に表示データを出力し、外部から入力された画像データにマッピング処理を施すことで前記表示データを生成するワーピング処理部と、
前記光源を制御する制御部
を備え、
前記ワーピング処理部は、前記制御部が出力する第一のクロック信号が入力され
、
前記画像データは、デジタル映像信号で構成され、第二のクロック信号を含み、
前記ワーピング処理部は、
前記第二のクロック信号に基づいて処理を実行し、
前記第二のクロック信号に異常が生じた場合に、前記第一のクロック信号に基づいて処理を実行する
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置を備える
ヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置としては、2次元画像を被投影体に投影し、その投影された画像がユーザーに提示されるヘッドアップディスプレイ(HUD)が知られている。被投影体は例えば自動車のフロントガラス等であり、非平面形状であることが多い。このため、画像を非平面に投影したときに、歪んでいない画像がユーザーに提示されるように、ヘッドアップディスプレイコントローラー(HUDC:Head Up Display Controller)が画像のマッピング処理を行う。
【0003】
HUDCとしては、特許文献1に示されるような回路装置が知られている。特許文献1では、回路装置(100)がインターフェース(110)に入力された所定の画像データに所定のマッピング処理を行い、インターフェース(140)からマッピング処理後の画像データを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、画像データの入力自体に不良が生じた場合に、ユーザーを幻惑させることを抑止する構成は開示されていない。
そこで本開示の目的とするところは、上述課題に着目し、画像データ自体に不良が生じた場合であってもユーザーを幻惑させる虞を低減した表示装置及びヘッドアップディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の表示装置は、
光源と、
前記光源に照らされることで表示光を出射する表示部と、
前記表示ドライバに表示データを出力し、外部から入力された画像データにマッピング処理を施すことで前記表示データを生成するワーピング処理部と、
前記光源を制御する制御部と、
を備え、
前記ワーピング処理部は、前記制御部が生成する第一のクロック信号が入力され、
前記画像データは、デジタル映像信号で構成され、第二のクロック信号を含み、
前記ワーピング処理部は、
前記第二のクロック信号に基づいて処理を実行し、
前記第二のクロック信号に異常が生じた場合に、前記第一のクロック信号に基づいて処理を実行する。
【0007】
また、第二の観点として、本開示のヘッドアップディスプレイは、
上記の表示装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ1の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本願発明の表示装置及びヘッドアップディスプレイを、好ましい実施形態を例示しつつ詳細に説明する。
[第一実施形態]
1-1.構成の説明
1-2.挙動の説明
[変形例]
[効果例]
【0010】
[第一実施形態]
<1-1.構成の説明>
ヘッドアップディスプレイ1(HUD、表示装置)は、例えば車両の前側の端部が低くなるように傾斜した自由曲面形状を為すウインドシールド(反射透過部材)に車両情報を表す表示光を投影することで虚像を映し出す。HUD1は、例えば車両後ろ方向斜め上に向けて表示光を出射する。HUD1に出射された表示光は、ウインドシールドに反射される。ウインドシールドに反射された表示光を視認する利用者(例えば車両Cの乗員)は、映し出された虚像をウインドシールドの奥に浮遊した表示像として視認できる。
【0011】
虚像には例えば速度やエンジン回転数と言った車両情報や、ターンバイターンや地図などの経路案内表示、ブラインドスポットモニターや制限速度超過警告などの警告表示など、乗員(利用者、ユーザ)へ注意喚起する必要性が高い情報が表示される。これにより視点移動及び眼の焦点距離調整の必要が低減された運転環境が提供される。虚像にはこれら情報を示す文字やアイコンの他、背景部分も含まれており、乗員からの平面視ではこれは例えば矩形状を為している。
【0012】
図1に示される通り、HUD1は、ローカルエリアネットワーク(LAN)90に接続される。LAN90は、CAN(Controller Area Network)や電力供給線、電気信号線等で構成される。HUD1は、LAN90を介して車載電装品と接続される。車載電装品としては、例えばイグニッションスイッチなどで構成される操作部SWや、バッテリBAT、メータ2などが含まれても良い。
【0013】
操作部SWは、車両の乗員などのユーザーの操作を電気信号に変換し、車載電装品へ操作情報を送信する。操作部SWには例えばイグニッションスイッチが含まれる。イグニッションスイッチの操作状態は車両の動力の起動と停止に対応しており、乗員はイグニッションスイッチを操作することで車両の動作始動や動作停止を切り替えることが可能である。
【0014】
バッテリBATは、車両に搭載される各種電装品に電力を供給する電源装置である。
【0015】
メータ2は、LAN90を介して接続された車載電装品と電気的に接続され、LAN90を介して入力された車両情報を電子ディスプレイや警告灯、指針式計器など公知の態様を用いて乗員に表示する。また、メータ2は、画像データ生成部の一例でもある。メータ2は、画像データ生成部として、当該車両情報に基づいてHUD1で表示を行うための画像データを生成し、HUD1(ワーピングIC20)へ出力する。
【0016】
HUD1は、制御部10、ワーピングIC20、モーター33、照度センサー35、LED37、TFT39を備える。
【0017】
制御部10は、所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いる図示しないROMやRAM等の記憶部と、前記所定プログラムに従って演算処理するためのCPUと、入出力インターフェース等を設けたマイクロコンピュータを適用できる。制御部10は、HUD1全体の動作を制御しており、HUD1全体の起動や停止をLAN90から入力された操作情報に応じて切り替える。
【0018】
また制御部10は、LAN90を介して車載電装品と電気的に接続されており、HUD1の内部ではワーピングIC20、モーター33、照度センサー35、LED37、TFT39と電気的に接続されている。制御部10は、HUD1の外部の車載電装品から受信した車両情報に基づき、HUD1内の電子機器を制御する。例えば制御部10は、後述のLED37を制御することで表示光の輝度を調整したり、後述のモーター33を制御することで反射部の回転を行う。
【0019】
ワーピング処理部の一例であるワーピングIC20は、映像コントローラである。ワーピングIC20は、映像入力端子と、映像処理部と、映像出力端子を有する。映像入力端子と映像出力端子は、デジタル映像信号を入力または出力できる端子であり、メータ2から画像データとして入力された映像は、映像処理部でワーピング処理を施された後で、TFT39へ表示データとして出力される。デジタル映像信号の送受信方式には、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)など公知の方式を適用できる。
【0020】
ここでワーピング処理とは、一種のマッピング処理を指す。車両に搭載されるヘッドアップディスプレイなどでは、非投射面が自由曲面である場合、歪んでいない画像がユーザーに提示されるように画像データにマッピング処理を施してから、映像が表示素子に表示される。
【0021】
モーター33は、反射部を回転する。ヘッドアップディスプレイは、乗員の視点の高さに応じて表示光の光路を調節する手段が備わっていることが望ましい。この手段の一例として、表示光は反射部で反射され、この反射部が回転することで、光路を調節することができる。モーター33は、反射部の回転軸に直接モーター33の回転軸を接続する態様や、変速ギアを介して接続する態様、リードスクリューやウォームギアを用いて接続する態様を以て、反射部を回転させることができる。
【0022】
照度センサー35は、車両前方の外界の輝度を測定する。特に望ましくは、照度センサー35は、乗員の視点から虚像を視認した場合に、その背景となりうる外界の輝度を測定することが望ましい。当該輝度が虚像の輝度より大きい場合、虚像は乗員にとって視認しづらくなる。これを防ぐため、照度センサー35は制御部10へ輝度情報を出力し、制御部10は外界の輝度に応じて後述のLED37の輝度を増減することで視認性を高く保つ。
【0023】
光源の一例であるLED(Light Emitting Diode)37は、表示素子を照らす光源である。LED37は、制御部10と電気的に接続される。制御部10は、PWM制御等の公知の手段でLED37の輝度を調節する。LED37の輝度に応じて、虚像の輝度が決定される。
【0024】
表示部(表示素子)の一例であるTFT(Thin Film Transistor)39は、LED37に照らされることで表示光を出射する表示素子である。TFT39は、表示駆動に必要なドライバなどを含み、制御部10とワーピングIC20に電気的に接続される。制御部10はTFT39の動作開始や動作停止などを制御し、動作中はワーピングIC20から入力された表示データに基づいて表示を行う。
【0025】
なお、光源と表示素子の態様として、LEDとTFTを適用した構成が示されたが、他の構成であっても良い。光源としては、レーザーであってもよく、照明方式はフィールドシーケンシャル方式やスキャン方式であっても良い。また表示素子としては、DMD(Digital Micro-mirror Device)やLCOS(Liquid cristal on silicon)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いた構成や、セグメントLCD(Liquid Cristal Display)を用いた構成など、照明光を空間変調し表示光とする公知の構成を適用可能である。
【0026】
<1-2.挙動の説明>
ワーピングIC20は、入力されるクロック信号に基づいてマッピング処理を実行する。ワーピングIC20には、制御部10が出力する周辺モジュールクロック信号(第一のクロック信号)と、メータ2が出力するデジタル映像信号で構成された画像データ内に含まれるクロック信号(第二のクロック信号)とが入力される。
【0027】
ワーピングIC20は、制御部10からの起動信号に応じて起動し、所定の初期動作後、マッピング処理を開始する。ワーピングIC20は、通常動作ではこの処理を第二のクロック信号に基づいて行う。
【0028】
しかしながら、画像生成部であるメータ2に何かしらの不具合が生じた場合、異常な画像データが入力される虞がある。異常な画像データとしては、クロック信号部分が停止した画像データや、ノイズを含む画像データや、一面一色の画像を表す画像データなどが挙げられる。これら異常な画像データがワーピングIC20に入力され、マッピング処理後にTFT39へ出力されると、乗員は乱れた虚像を視認することになる。
【0029】
こういった事態を防ぐために、本開示のHUD1では、ワーピングIC20が制御部10から入力されるクロック信号に基づいて処理を実行することができる。ワーピングIC20は、第一のクロック信号に基づいて処理を実行することにより、映像コントローラでありながら画像データに不良が生じた場合であっても映像コントローラとしての機能を維持する事ができる。
【0030】
ワーピングIC20は画像データの異常の有無を検出可能であって、異常を検出した場合に制御部10へ異常を表す電気信号(エラー信号)を送信することで異常を報知しても良い。制御部10は、このエラー信号を受信した場合、直ちにワーピングIC20の表示データの出力を停止することが望ましい。
【0031】
ワーピングIC20は、通常時には第二のクロック信号に基づいて処理を実行し、ワーピングIC20が画像データに異常を検出した場合か、画像生成部(メータ2)から動作不良を表す電気信号を受信した際に、第一のクロック信号に切り替えるよう動作しても良い。
【0032】
また、クロック信号は高速で装置全体の動作に関わる信号であるためノイズ等の影響を受けにくいように接続されているとよい。しかしながら、ワーピングIC20と制御部10の実装上の距離は、設計上の都合で大きく離間せざるを得ない場合がある。
その場合は、回路基板レイアウト上、制御部10よりワーピングIC20へ近い箇所に、発振子を実装し、ジャンパー抵抗を用いて制御部10と発振子のどちらにでもワーピングIC20を選択的に接続できるよう設計すると良い。このような構成であれば、設計段階や試作段階において、ノイズの影響を測定しながら、制御部10と発振子、どちらのクロック信号を用いればよいかを少ないコストで検証することができる。もしその検証の後に、発振子が発するクロック信号を用いる場合は、第一のクロック信号を出力する部材は発振子となる。
【0033】
[変形例]
なお、本発明の表示装置及びヘッドアップディスプレイを上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。
【0034】
[効果例]
第一に本開示の表示装置は、
LED37と、
LED37に照らされることで表示光を出射するTFT39と、
TFT39に表示データを出力し、外部(メータ2)から入力された画像データにマッピング処理を施すことで表示データを生成するワーピングIC20と、
LED37を制御する制御部10
を備え、
ワーピングIC20は、制御部10が出力する第一のクロック信号が入力され、第一のクロック信号に基づいて処理を実行する。
【0035】
第二に本開示の表示装置は、
前記画像データは、第二のクロック信号を含み、
前記ワーピング処理部は、
前記第二のクロック信号に基づいて処理を実行し、
前記第二のクロック信号に異常が生じた場合に、第一のクロック信号に基づいて処理を実行する。
【0036】
第三に、本開示のヘッドアップディスプレイは、
上記表示装置を備える。
【符号の説明】
【0037】
C 車両
SW 操作部
1 ヘッドアップディスプレイ(表示装置)
10 制御部
20 ワーピングIC(ワーピング処理部)
33 モーター
35 照度センサー
37 LED
39 TFT
2 メータ(画像データ生成部)