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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240409BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240409BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240409BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20240409BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240409BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20240409BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B7/12
B32B27/36
B32B25/08
B65D30/02
B65D30/16 A
B65D65/40 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020056025
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154565
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】工藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】門屋 春菜
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-214345(JP,A)
【文献】特開平08-053606(JP,A)
【文献】特開2002-370750(JP,A)
【文献】特開2003-326632(JP,A)
【文献】特開2009-233969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 7/12
B32B 27/36
B32B 25/08
B65D 30/02
B65D 30/16
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋を形成するための積層体であって、
基材層と、接着層と、ポリエステルエラストマーを含むシーラント層と、をこの順に備え
前記シーラント層が、前記ポリエステルエラストマーを含む第1シーラント層と、該第1シーラント層を挟むように配置された、ポリエステルエラストマー以外のポリエステル樹脂を含む2つの第2シーラント層とを備え、
2つの前記第2シーラント層がいずれも、前記ポリエステル樹脂として、エチレングリコール及びテレフタル酸の他にその他の共重合モノマーを共重合させてPETの結晶性を低下させた共重合PETレジンを含む、積層体。
【請求項2】
前記基材層が、ポリエステルフィルムを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層が、少なくとも一方の表面に無機酸化物の蒸着層を備える、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
水蒸気透過度が5g/m・day以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
酸素透過度が1cc/m・day以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記包装袋が平パウチ形状の包装袋である、請求項1~のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記包装袋が自立性包装袋である、請求項1~のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。より詳細には、本発明は、包装袋を形成するための積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
環境対応の一環として、ビン、缶からの置き換えのためにプラスチックフィルムからなる軟包袋が普及している。特に、自立性や大容量化の観点から優れた包装袋として、自立性包装袋、いわゆるスタンディングパウチが知られており、液体スープ等の食品や、トイレタリー用の詰替パウチとして広く用いられている。例えば下記特許文献1,2に記載されるように、スタンディングパウチの自立性を確保するために、補強構造や補強部材を設ける方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-270533号公報
【文献】特開2007-261607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大容量化に対応する観点から、包装袋の最内層であるシーラント層には、一般にシール性と耐衝撃性に優れるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムが用いられる。一方、内容物を取り出す際に内容物が包装袋に残りにくく、取り出し性に優れるフィルムとしてはポリエステルフィルムが知られており、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)に非晶性モノマーを共重合させることでシール性を持たせたPETシーラントをシーラント層に用いることが検討されている。しかし、ポリエステルフィルムは、ポリオレフィンフィルムと比較して、落下等の衝撃に対する耐衝撃性に劣るという欠点がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋を形成するための積層体であって、内容物の取り出し性に優れ、更に耐衝撃性にも優れる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、包装袋を形成するための積層体であって、基材層と、接着層と、ポリエステルエラストマーを含むシーラント層と、をこの順に備える、積層体を提供する。
【0007】
シーラント層は、ポリエステルエラストマーを含む第1シーラント層及びポリエステルエラストマー以外のポリエステル樹脂を含む第2シーラント層を備えていてよい。この場合、シーラント層は、第1シーラント層と、該第1シーラント層を挟むように配置された2つの第2シーラント層とを備えていてよい。
【0008】
基材層は、ポリエステルフィルムを含んでいてよい。
【0009】
基材層は、少なくとも一方の表面に無機酸化物の蒸着層を備えていてよい。
【0010】
積層体は、水蒸気透過度が5g/m・day以下であってよい。
【0011】
積層体は、酸素透過度が1cc/m・day以下であってよい。
【0012】
包装袋は、平パウチ形状であっても、自立性包装袋であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、包装袋を形成するための積層体であって、内容物の取り出し性に優れ、更に耐衝撃性にも優れる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る積層体の模式断面図を示す。
図2図2は、一実施形態に係る自立性包装袋の正面図を示す。
図3図3は、図2における破線Cに沿った自立性包装袋の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<積層体>
図1は、一実施形態に係る積層体の模式断面図を示す。一実施形態に係る積層体10は、基材層1、接着層2及びシーラント層3をこの順に備える。
【0017】
[基材層]
基材層は支持体となるフィルム(ベースフィルム)であり、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。中でもポリエステルフィルムを含んでいることが好ましく、ポリエステルフィルムからなるものであってよい。基材層は、これらのフィルムを単独で用いてもよいし、複数を積層して用いてもよい。
【0018】
ポリエステルフィルムは、結晶性ポリエステルフィルムであってよく、延伸フィルムであっても非延伸フィルムであってもよい。
【0019】
結晶性ポリエステルは、例えば、ジオール類とジカルボン酸類とを縮重合させることによって得ることができる。
【0020】
ジオール類としては、脂肪族ジオールや脂環族ジオールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、バイオマス由来のエチレングリコールを用いてもよい。
【0021】
ジカルボン酸類としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n-ドデシルコハク酸、n-デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
包材の基材層としての機能を充分に発現する観点から、結晶性ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。
【0023】
基材層は、環境負荷を減らす観点から、再生ポリエステルを含んでもよい。再生ポリエステルとしてはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をケミカルリサイクルしてなるケミカルリサイクルポリエステル、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル等を挙げることができる。
【0024】
基材層は、例えば水蒸気や酸素に対するガスバリア性向上の観点から、少なくとも一方の表面に無機酸化物の蒸着層を備えるガスバリアフィルムを用いてもよい。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。無機酸化物の蒸着層の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とすることができ、10nm以上50nm以下であってよい。厚さが5nm以上であることでバリア性が良好に発揮され易く、厚さが100nm以下であることで、積層体の可撓性が維持され易い。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0025】
基材層は、フィルムを複数層含む場合、各フィルムは同一であっても異なっていてもよい。基材層がポリエステルフィルムを複数層含む場合は、少なくとも一層のポリエステルフィルムが、その表面に無機酸化物の蒸着層を備えてよい。
【0026】
基材層の厚さは、例えば5μm~1mmとすることができ、5~800μmであってよく、5~500μmであってよい。基材層が上記フィルムを複数含む場合は、その合計厚さを上記範囲内としてよい。
【0027】
なお、ガスバリア性及び水蒸気バリア性の観点から、積層体は、無機酸化物の蒸着層に代えて、或いは加えて、金属層(金属箔)を更に備えていてもよい。すなわち、積層体は、基材層及び接着層の間に金属層を更に備えていてもよい。
【0028】
金属層としては、アルミニウム、ステンレス鋼等からなる各種金属箔を使用することができ、これらのうち、防湿性、延展性等の加工性、コスト等の面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般に軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
【0029】
金属箔を設ける場合、その厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性等の点から、7~50μmであってよく、9~15μmであってよい。
【0030】
[接着層]
接着層の接着成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる、2液硬化型ポリウレタン系接着剤が挙げられる。
【0031】
接着層は、接着成分を基材層上に塗工後、乾燥することで形成することができる。ポリウレタン系接着剤を用いる場合、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行なうことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
【0032】
接着層の厚さは、接着性、追随性、加工性等の観点から、2~50μmとすることができ、3~20μmであってよい。
【0033】
[シーラント層]
シーラント層は、積層体においてヒートシールによる封止性を付与する層であり、ポリエステルエラストマーを含む。ポリエステルエラストマーを含むことにより、大容量の包装袋において、耐衝撃性に優れるとともに、内容物の取り出し性に優れる積層体を得ることができる。
【0034】
ポリエステルエラストマーは、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族及び/又は脂環族ジオール類を構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントとで構成されている。
【0035】
ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族及び/又は脂環族ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、バイオマス由来のエチレングリコールを用いてもよい。芳香族ジカルボン酸類としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ソフトセグメントは、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などの脂肪族ポリエーテル、或いはポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、或いはエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ジオール残基からなる脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0037】
シーラント層は、上述したポリエステルエラストマーからなる層であってもよいが、シーラント層としての機能をより充分に発現する観点、また包装袋全体を単一素材に近づけてリサイクル適性を向上させる観点から、ポリエステルエラストマー以外のポリエステル樹脂を含んでいることが好ましい。この場合、シーラント層におけるポリエステルエラストマーの含有量は、例えば、80質量%以下又は60質量%以下であってよい。ポリエステルエラストマーの含有量の下限値は特に制限はないが、本発明の効果を充分に発揮させる観点から、例えば1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上であってよい。
【0038】
ポリエステルエラストマー以外のポリエステル樹脂としては、例えば上記基材層において説明した結晶性ポリエステル及びその好ましい例示物を用いることができる。
【0039】
ただし、これらのポリエステルは一般に融点が高く、例えばエチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合によって得られるホモPETの融点は約260℃であり、包装袋のシーラント層としては融点が高すぎる。そこで種々のモノマーを共重合しポリエステルの結晶化度を低下させることで融点を低下させることが可能である。この場合のモノマーとは、上記基材層において説明したジオール類やジカルボン酸類が例示される。
【0040】
PETの結晶性を低下させる場合、例えば、テレフタル酸40~95mol%に対し、共重合させるその他のジカルボン酸類を60~5mol%とすることができ、また、例えば、エチレングリコール40~95mol%に対し、共重合させるその他のジオール類を60~5mol%とすることができる。ジカルボン酸類とジオール類の両方に共重合成分を用いてもよいし、どちらか一方でもよい。また、その他のポリエステルについても主となるモノマーに対して共重合モノマーの割合は同様に考えることができる。
【0041】
上記共重合モノマーの種類と割合のほか、ポリエステル樹脂を成膜する際の冷却温度を変えることで、結晶化の進行の程度を調整し、結晶化度を調整することができる。さらに、成膜したポリエステル樹脂に熱処理を施すことによっても、結晶化度を調整することができる。その他、熱固定温度や延伸倍率等の成膜条件を変えることで、結晶化度を調整することができる。
【0042】
ポリエステル樹脂の結晶化度が50%以下であることにより、ヒートシールによる充分なシール強度を得ることができる。また、結晶化度が15%以下であると、ガラス転移温度以上に加熱された際にポリエステルフィルムが充分に流動性を有することになるため、シーラント層としての低温シール性が向上し、高速度での製袋、充填に適したシール特性を得ることができる。
【0043】
シーラント層は、単層からなるものであってもよいし、2層以上の層を含むものであってもよい。2層以上の層を含む場合、そのうちの少なくとも1層に上述したポリエステルエラストマーが含まれていればよい。2層以上の層を含むシーラント層としては、例えば、ポリエステルエラストマーを含む第1シーラント層及びポリエステルエラストマー以外のポリエステル樹脂を含む第2シーラント層を備えるものであってもよく、この場合の第2シーラント層には、ポリエステルエラストマーが含まれていても含まれていなくともよい。また、シーラント層は、第1シーラント層と、第1シーラント層を挟むように配置された2つの第2シーラント層とを備えていてもよい。この場合、2つの第2シーラント層は、互いに同種のものであっても異種のものであってもよい。特に柔らかい層である第1シーラント層を、硬い層である第2シーラント層で挟むことにより、より高い剛性を得ることができる。
【0044】
上述した基材層及びシーラント層を、接着層を介してドライラミネート等により積層することで積層体を得ることができる。シーラント層が上記第1シーラント層及び第2シーラント層からなる場合、基材層とシーラント層における第1シーラント層側とが接着層を介して積層されてもよいし、基材層とシーラント層における第2シーラント層側とが接着層を介して積層されてもよい。特に基材層とシーラント層における第2シーラント層側とが接着層を介して積層されることが好ましい。これにより、積層体をシーラント層が対向するように重ねてシールを行い、包装体を形成した際のシーラント層の構造が、柔らかい層である第1シーラント層が、硬い層である第2のシーラント層で覆われる形となり、より高い剛性を得ることができる。
【0045】
積層体の水蒸気透過度は5g/m・day以下とすることができる。また、積層体の酸素透過度は1cc/m・day以下とすることができる。これにより内容物を水蒸気や酸素による劣化から保護し、長期的に品質を保持し易くなる。この観点から、水蒸気透過度は、1g/m・day以下であってよく、0.5g/m・day以下であってよい。また、酸素透過度は、0.5cc/m・day以下であってよく、0.2cc/m・day以下であってよい。
【0046】
[包装袋]
本実施形態に係る積層体は、内容物を包装するための包装袋を形成するために好適に用いることができる。内容物としては、液体調味料、トイレタリー用品、スープ、液体洗剤等の液状物、煮物等の固形物、カレー等の液状物と固形物の固液混合物などが挙げられる。上記積層体を用いた包装袋であれば、内容物の取り出し性に優れ、更に耐衝撃性にも優れる包装袋とすることができる。
【0047】
包装袋としては、例えば、平パウチ形状の包装袋や、自立性包装袋(スタンディングパウチ)などが挙げられる。
【0048】
平パウチ形状の包装袋は、1枚の上記積層体をシーラント層が対向するように二つ折りにした後、3方をヒートシールすることによって袋形状にしたものであってもよく、2枚の上記積層体をシーラント層が対向するように重ねた後、4方をヒートシールすることによって袋形状としたものであってもよい。
【0049】
図2は、一実施形態に係る自立性包装袋の正面図であり、図3は、図2における破線Cに沿った自立性包装袋の断面図である。自立性包装袋20は、胴部4と折込部5とを備え、胴部4及び折込部5は、縦方向縁部6、船底型の底部7及び上部シール部8によりシールされている。自立性包装袋20は、胴部4を形成する2枚のフィルム41,42のシーラント層を対向させ、フィルム41,42の間に折込部5を形成するフィルム51をシーラント層が外面を向くように二つ折りにして挿入し、縦方向縁部6と、船底型の底部7、及び上部シール部8を加熱、加圧することにより形成される。上述した本実施形態に係る積層体は、上記胴部4におけるフィルム41及び/又は42に用いられてもよく、折込部5におけるフィルム51に用いられてもよく、耐衝撃性を向上させる観点からは、胴部4及び折込部5の両方に上記積層体が用いられることが好ましい。
【実施例
【0050】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0051】
[シーラントフィルムの作製]
(共重合PETレジンの作製)
モル比として、テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコールが100/70/19/9/2であるモノマー混合物を出発原料とする共重合PETレジンを得た。
【0052】
(エラストマーレジンの作製)
モル比として、テレフタル酸/1,4-ブタンジオール/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(PTMG;数平均分子量1500)が100/80/20であるモノマー混合物を出発原料とするエラストマーレジンを得た。このエラストマーの融点は180℃、ショア高度は30度であった。
【0053】
シーラントフィルムA:
共重合PETレジンとエラストマーレジンを質量比1:1でドライブレンドし、キャスト法により押し出した後、フォルム搬送方向(以下、「MD」という)に延伸倍率3倍で延伸することで、シーラントフィルムAを得た。延伸後の厚さは50μmであった。
【0054】
シーラントフィルムB:
2種2層の共押出しで、共重合PETレジンとエラストマーレジンとをそれぞれキャスト法により押し出した後、MD方向に延伸倍率3倍で延伸することで、エラストマーレジンからなる第1シーラント層と、共重合PETレジンからなる第2シーラント層とを備えるシーラントフィルムBを得た。延伸後の厚さは、第1シーラント層及び第2シーラント層ともに25μmであった。
【0055】
シーラントフィルムC:
2種3層の共押出しで、共重合PETレジン/エラストマーレジン/共重合PETレジンをそれぞれキャスト法により押し出した後、MD方向に延伸倍率3倍で延伸することで、エラストマーレジンからなる第1シーラント層と、第1シーラント層を挟むように配置された、共重合PETレジンからなる第2シーラント層とを備える、シーラントフィルムCを得た。延伸後の厚さは、第2シーラント層/第1シーラント層/第2シーラント層がそれぞれ15μm/20μm/15μmであった。
【0056】
シーラントフィルムD:
共重合PETレジン単体をキャスト法により押し出した後、MD方向に延伸倍率3倍で延伸することで、シーラントフィルムDを得た。延伸後の厚さは50μmであった。
【0057】
シーラントフィルムE:
密度0.92g/cmのLLDPEをキャスト法により押し出すことによりシーラントフィルムEを得た。厚さは50μmであった。
【0058】
[積層体及びスタンディングパウチの作製]
(実施例1)
積層体の基材層として結晶性ポリエステルフィルムである厚さ25μmの延伸PETフィルム、シーラント層としてシーラントフィルムAを準備し、これらをドライラミネート法により貼り合わせて積層体を得た。ドライラミネートに用いる接着剤には、一般的なウレタン樹脂系接着剤を用いた。ウレタン樹脂系接着剤の乾燥後の塗布量は3g/m(厚さ3μm)となるように調整した。
【0059】
得られた積層体を用いて胴部及び折込部を形成し、図2に示す構造を有するスタンディングパウチを得た。スタンディングパウチの幅(図2のW)は130mm、高さ(図2のH)は220mm、折込量(図2のa-b間の距離)は40mmとした。また、製袋時のシール条件は、シール温度200℃、シール時間3秒、シール圧0.4MPaとした。
【0060】
(実施例2)
積層体の基材層として結晶性ポリエステルフィルムである厚さ25μmの延伸PETフィルム、シーラント層としてシーラントフィルムBを準備し、シーラントフィルムBの第2シーラント層側と基材層とをドライラミネート法により貼り合わせて積層体を得た。ドライラミネートに用いる接着剤には、一般的なウレタン樹脂系接着剤を用いた。ウレタン樹脂系接着剤の乾燥後の塗布量は3g/m(厚さ3μm)となるように調整した。得られた積層体を用いて、実施例1と同様にして、スタンディングパウチを得た。
【0061】
(実施例3)
シーラント層としてシーラントフィルムCを用いた以外は、実施例1と同様にしてスタンディングパウチを得た。
【0062】
(実施例4)
スタンディングパウチの胴部に用いる積層体のシーラント層としてシーラントフィルムDを用い、折込部に用いる積層体のシーラント層としてシーラントフィルムCを用いた以外は、実施例1と同様にしてスタンディングパウチを得た。
【0063】
(実施例5)
2層の厚さ12μmの延伸PETフィルムを積層して基材層を得た。続いてこの基材層の一方の表面に、バリア層としてシリカ蒸着膜を設けることでバリアフィルムとし、このバリアフィルムのシリカ蒸着面と、シーラント層とをドライラミネートして積層体を得ること以外は、実施例4と同様にしてスタンディングパウチを得た。
【0064】
(比較例1)
シーラント層としてシーラントフィルムDを用いた以外は、実施例1と同様にしてスタンディングパウチを得た。
【0065】
(比較例2)
シーラント層としてシーラントフィルムEを用いた以外は、実施例1と同様にしてスタンディングパウチを得た。
【0066】
[積層体又はスタンディングパウチの評価]
上記で得られた積層体又はスタンディングパウチについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(落袋試験)
実施例1~5及び比較例1~2で作製したスタンディングパウチに内容物として水を200ml、300ml又は400mlいれ、パウチの上部をヒートシールすることにより内容物入りのスタンディングパウチを得た。次に内容物入りのスタンディングパウチを5℃の環境下で24時間保管後、高さ1mから折込部が下になるように垂直落下させ、破袋するまでの落下回数を数えた。同一条件で20サンプルを評価し、下記の評価基準に従って評価した。
A:20回落下時点でのパウチ残存率(破袋せずに残ったパウチの割合)が90%以上
B:20回落下時点でのパウチ残存率が50%以上90%未満
C:20回落下時点でのパウチ残存率が50%未満
【0068】
(自立性試験)
上記落袋試験と同様の方法で作製した内容物入りのスタンディングパウチを静置し、垂直方向からのパウチ上部の折れ曲がり角度(お辞儀の角度)を計測した。
A:角度0度(直立)以上10度未満
B:角度10度以上30度未満
C:角度30度以上又は自立不可
【0069】
(内容物排出性試験)
スタンディングパウチの内容物としてシャンプー300mlを充填しパウチの上部をヒートシールすることにより内容物入りのスタンディングパウチを得た。次に図2の一点鎖線で示したパウチ上部をカットし注ぎ口を設けた。カット方向は角度が水平方向から45度、開口幅が20mmとなるようにした。次にパウチを傾けて一般的なシャンプーボトルに詰め替え作業を行い、30秒経過後の内容物の残量を計測した。同様の作業を10回繰り返し、残量の平均値を算出した。
【0070】
(酸素透過度及び水蒸気透過度測定)
JIS K7126Bに準拠して、積層体の酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
[積層体及び平パウチの作製]
(実施例6)
基材層として、実施例5と同様のバリアフィルムを用意し、このバリアフィルムのシリカ蒸着面と、シーラント層としてのシーラントフィルムAとをドライラミネート法により貼り合わせて積層体を得た。積層体を120mm×180mmで2枚切り出し、シーラント層同士を対面させて外周3辺をシールすることで平パウチを得た。シール条件はシール温度200℃、シール時間3秒、シール圧0.4MPaとした。
【0073】
(実施例7)
シーラント層としてシーラントフィルムBを準備し、シーラントフィルムBの第2シーラント側と基材層とをドライラミネート法により貼り合わせること以外は、実施例6と同様にして平パウチを得た。
【0074】
(実施例8)
シーラント層としてシーラントフィルムCを準備した以外は、実施例6と同様にして平パウチを得た。
【0075】
(比較例3)
シーラント層としてシーラントフィルムDを準備した以外は、実施例6と同様にして平パウチを得た。
【0076】
(比較例4)
シーラント層としてシーラントフィルムEを準備した以外は、実施例6と同様にして平パウチを得た。
【0077】
[平パウチの評価]
上記で得られた平パウチについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
(落袋試験)
実施例6~8及び比較例3~4で作製した平パウチに内容物として粘度の高い食品を想定しケチャップ200gを入れ、パウチの残りの1辺をシールすることにより、内容物入りの平パウチを得た。次に内容物入りの平パウチをパウチ短辺が下になるように垂直落下させ、破袋するまでの落下回数を数えた。同一条件で20サンプル評価し、下記の評価基準に従って評価した。
A:20回落下時点でのパウチ残存率が90%以上
B:20回落下時点でのパウチ残存率が50%以上90%未満
C:20回落下時点でのパウチ残存率が50%未満
【0079】
(内容物排出性試験)
上記落袋試験と同様の方法で作製した内容物入りの平パウチの短辺の一方をカットし、カットした辺を下に向け、10秒間保持して内容物を排出させ、内容物の残量を計測した。その際、パウチの折り曲げは行わず、指の上下動による扱きのみを行った。同様の作業を10回繰り返し、残量の平均値を算出した。
【0080】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る積層体を用いることで、内容物の取り出し性に優れ、更に耐衝撃性にも優れる包装袋を得ることが可能となる。また、その構成フィルムを実質的に全てポリエステルフィルムとすることも可能であり、そのような積層体は、単一素材からなる(モノマテリアルの)包装材料ということができ、優れたリサイクル性が期待される。
【符号の説明】
【0082】
1…基材層、2…接着層、3…シーラント層、4…胴部、5…折込部、6…縦方向縁部、7…底部、8…上部シール部、10…積層体、20…自立性包装袋、41,42,51…フィルム。
図1
図2
図3