(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20240409BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H04N1/60
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2020058482
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177501(JP,A)
【文献】特開平06-333002(JP,A)
【文献】特開2011-248641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46- 1/64
G06T 1/00
G06T 11/60-11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、
前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、前記被処理画像の色を変更する処理を行
い、
画像を表示する表示装置に、前記被処理画像と前記複数の見本色の画像とを並べて表示させ、
ユーザが選択した前記複数の見本色を基に、前記処理を行い、
前記複数の見本色の画像は、各見本色が占める面積により、前記処理を行うときの、当該各見本色を反映させる際の重みを表す
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の見本色の画像は、当該複数の見本色をカラーバーまたはカラーブロックにて表示するものであることを特徴とする
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記面積は、ユーザが変更可能であることを特徴とする
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記各見本色の他に、ユーザがさらに色を追加可能であることを特徴とする
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
画像の印象を表す用語を受け付け、
前記用語を基に前記複数の見本色を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記用語と前記複数の見本色とを予め定められた感性に応じ関連付けられて記憶する記憶手段から、当該複数の見本色を取得することを特徴とする
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、ユーザが、前記被処理画像の中で前記処理を行う領域を指定した結果を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、
前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、前記被処理画像の色を変更する処理を行
い、
前記複数の見本色のそれぞれについて、重み付けをして前記処理を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記処理として、前記複数の見本色の中で、前記被処理画像に最も高頻度で含まれる色に最も近い色について他の色より大きい重み付けをすることを特徴とする
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記処理として、前記重み付けに応じ、前記被処理画像の特徴量を前記複数の見本色の特徴量に合わせ調整することを特徴とする
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記特徴量は、前記被処理画像および前記複数の見本色の平均および散布度であることを特徴とする
請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像を表示する表示装置と、
前記表示装置に表示される被処理画像に対し画像処理を行なう画像処理装置と、
を備え、
前記画像処理装置は、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、
前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行
い、
画像を表示する表示装置に、前記被処理画像と前記複数の見本色の画像とを並べて表示させ、
ユーザが選択した前記複数の見本色を基に、前記処理を行い、
前記複数の見本色の画像は、各見本色が占める面積により、前記処理を行うときの、当該各見本色を反映させる際の重みを表す
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項13】
画像を表示する表示装置と、
前記表示装置に表示される被処理画像に対し画像処理を行なう画像処理装置と、
を備え、
前記画像処理装置は、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、
前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行
い、
前記複数の見本色のそれぞれについて、重み付けをして前記処理を行う
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項14】
コンピュータに、
被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求める機能と、
前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行う機能と、
画像を表示する表示装置に、前記被処理画像と前記複数の見本色の画像とを並べて表示させる機能と、
を実現させ
、
ユーザが選択した前記複数の見本色を基に、前記処理を行い、
前記複数の見本色の画像は、各見本色が占める面積により、前記処理を行うときの、当該各見本色を反映させる際の重みを表す
ことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求める機能と、
前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行う機能と、
を実現させ
、
前記複数の見本色のそれぞれについて、重み付けをして前記処理を行う
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システム、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像コンテンツの配色は、購買意欲の喚起や、ものの売れ行きへ影響する。そのため、例えば、Webデザインやパッケージデザインをはじめ、チラシ、または商品の現物などで、色をどのように組み合わせるかは重要な課題となる。近年、このようなニーズに応えるために、画像コンテンツで使用している配色を分析し、定量化するサービスなども増えており、このようなサービスを活用することで、例えば、売れるデザインを分析したときの画像の色のヒストグラムや、色相・彩度の分布などを分析する試みがなされている。
【0003】
特許文献1には、モデル画像データ、モデル画像データについての複数個の配色領域データ、及び各配色領域データの各代表色データを格納したモデル画像データベースと、モデル画像データを表示するモデル画像表示部と、各代表色データが貼り付けられた所定の色立体を表示する色立体表示部と、感性語によって各代表色データを変更させる指示をする指示部と、変更指示に従ってモデル画像表示部の表示を変更するとともに、色立体表示部の各代表色データの表示を変更させる制御部とを備える配色シミュレーションシステムが開示されている。
特許文献2には、取得された画像上の配色の分布を解析し、色の定義に関する情報を具備する色特性データベースを設け、解析した配色について、色差を解析することによって、上記解析した配色を配色タイプに分類し、上記色差を解析するための情報を具備する色差解析情報データベースを設け、上記分類した配色タイプに応じて、色差を変更することによって、上記取得された画像上の配色を変換し、上記色差の変更に関する規則を具備する変換規則データベースを設け、配色が変換された結果を出力する配色変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-248641号公報
【文献】特開2011-86092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、画像に使用している色の分析をしなくても、人が好ましく感じる配色の基本ルールや調和の理論などが存在する。よって、このような人の認知メカニズムを参照に配色に適用することもできる。例えば、色相の似ている色を組み合わせる類似の調和または、同じ色相を使う同一の調和、高彩度の補色によりお互いの鮮やかさを引き立てあう対比の調和などを実現することができる。
しかしながら、好ましい配色パターンや調和の理論はあっても、実際にさまざまな画像へ適用しようとした場合は、画像の中の1つ1つの構成要素やオブジェクトに対し、色を変える、または置き換えるといった地道な作業が必要となる。そして、全体の調和バランスを考えながらの調整などを含むと、表現したい状態にするまでに多くの作業を必要とする。
本発明は、被処理画像の色とそれぞれの色の変更後の色との調整をユーザが行う場合と比較して、 予め用意された配色パターンに基づき、被処理画像の配色に反映させることによりユーザの作業を低減することができる画像処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、前記被処理画像の色を変更する処理を行い、画像を表示する表示装置に、前記被処理画像と前記複数の見本色の画像とを並べて表示させ、ユーザが選択した前記複数の見本色を基に、前記処理を行い、前記複数の見本色の画像は、各見本色が占める面積により、前記処理を行うときの、当該各見本色を反映させる際の重みを表すことを特徴とする画像処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記複数の見本色の画像は、当該複数の見本色をカラーバーまたはカラーブロックにて表示するものであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記面積は、ユーザが変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記各見本色の他に、ユーザがさらに色を追加可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項5に記載の発明は、前記プロセッサは、画像の印象を表す用語を受け付け、前記用語を基に前記複数の見本色を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項6に記載の発明は、前記プロセッサは、前記用語と前記複数の見本色とを予め定められた感性に応じ関連付けられて記憶する記憶手段から、当該複数の見本色を取得することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置である。
請求項7に記載の発明は、前記プロセッサは、ユーザが、前記被処理画像の中で前記処理を行う領域を指定した結果を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項8に記載の発明は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、前記被処理画像の色を変更する処理を行い、前記複数の見本色のそれぞれについて、重み付けをして前記処理を行うことを特徴とする画像処理装置である。
請求項9に記載の発明は、前記プロセッサは、前記処理として、前記複数の見本色の中で、前記被処理画像に最も高頻度で含まれる色に最も近い色について他の色より大きい重み付けをすることを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置である。
請求項10に記載の発明は、前記プロセッサは、前記処理として、前記重み付けに応じ、前記被処理画像の特徴量を前記複数の見本色の特徴量に合わせ調整することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置である。
請求項11に記載の発明は、前記特徴量は、前記被処理画像および前記複数の見本色の平均および散布度であることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置である。
請求項12に記載の発明は、画像を表示する表示装置と、前記表示装置に表示される被処理画像に対し画像処理を行なう画像処理装置と、を備え、前記画像処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、前記被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行い、画像を表示する表示装置に、前記被処理画像と前記複数の見本色の画像とを並べて表示させ、ユーザが選択した前記複数の見本色を基に、前記処理を行い、前記複数の見本色の画像は、各見本色が占める面積により、前記処理を行うときの、当該各見本色を反映させる際の重みを表すことを特徴とする画像処理システムである。
請求項13に記載の発明は、画像を表示する表示装置と、前記表示装置に表示される被処理画像に対し画像処理を行なう画像処理装置と、を備え、前記画像処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、前記被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求め、前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行い、前記複数の見本色のそれぞれについて、重み付けをして前記処理を行うことを特徴とする画像処理システムである。
請求項14に記載の発明は、コンピュータに、被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求める機能と、前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行う機能と、画像を表示する表示装置に、前記被処理画像と前記複数の見本色の画像とを並べて表示させる機能と、を実現させ、ユーザが選択した前記複数の見本色を基に、前記処理を行い、前記複数の見本色の画像は、各見本色が占める面積により、前記処理を行うときの、当該各見本色を反映させる際の重みを表すことを特徴とするプログラムである。
請求項15に記載の発明は、コンピュータに、被処理画像の色分布と予め組として用意された複数の見本色の色分布とを求める機能と、前記被処理画像の色分布と前記複数の見本色の色分布との関係に基づき、当該被処理画像の色を変更する処理を行う機能と、を実現させ、前記複数の見本色のそれぞれについて、重み付けをして前記処理を行うことを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、被処理画像の色とそれぞれの色の変更後の色との調整をユーザが行う場合と比較して、予め用意された配色パターンに基づき、被処理画像の配色に反映させることによりユーザの作業を低減することができる画像処理装置を提供することができる。
請求項2の発明によれば、見本色の組み合わせを、ユーザが把握するのを容易にすることができる。
請求項3の発明によれば、各見本色の重みを、ユーザが設定するのを容易にすることができる。
請求項4の発明によれば、見本色を、ユーザが設定することができる。
請求項5の発明によれば、用語に結びつけられた印象に応じた色調整を行うことができる。
請求項6の発明によれば、用語として、ユーザの感性に対応したものを取得しやすくなる。
請求項7の発明によれば、色調整を行う領域を、ユーザが選択することができる。
請求項8の発明によれば、被処理画像の色とそれぞれの色の変更後の色との調整をユーザが行う場合と比較して、予め用意された配色パターンに基づき、被処理画像の配色に反映させることによりユーザの作業を低減することができる画像処理装置を提供することができる。
請求項9の発明によれば、被処理画像の配色に合わせた重み付けを行うことができる。
請求項10、11の発明によれば、色調整の処理がより容易になる。
請求項12、13の発明によれば、被処理画像の色とそれぞれの色の変更後の色との調整をユーザが行う場合と比較して、予め用意された配色パターンに基づき、被処理画像の配色に反映させることによりユーザの作業を低減することができる画像処理システムを提供することができる。
請求項14、15の発明によれば、被処理画像の色とそれぞれの色の変更後の色との調整をユーザが行う場合と比較して、予め用意された配色パターンに基づき、被処理画像の配色に反映させることによりユーザの作業を低減することができる機能をコンピュータにより実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態における画像処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態における画像処理装置の機能構成例を示したブロック図である。
【
図3】(a)~(c)は、配色画像の例を示した図である。
【
図5】(a)~(b)は、各見本色の重み付けを、面積の大小として表示する場合について示した図である。
【
図6】色調整を行う際に表示装置の表示画面に表示される画面の第1の例を示した図である。
【
図7】色調整を行う際に表示装置の表示画面に表示される画面の第2の例を示した図である。
【
図8】第2の実施形態における画像処理装置の機能構成例を示したブロック図である。
【
図9】(a)~(b)は、感性用語と複数の見本色からなる配色画像との関係を示した図である。
【
図10】嗜好モデルと配色画像とを関連付けた例として他の例を示した図である。
【
図11】マップ上で、ユーザが、感性用語を選択するときに行われる処理の第1の例について示した図である。
【
図12】マップ上で、ユーザが、感性用語を選択するときに行われる処理の第2の例について示した図である。
【
図13】マップ上で、ユーザが、感性用語を選択するときに行われる処理の第3の例について示した図である。
【
図14】マップ上で、ユーザが、感性用語を選択するときに行われる処理の第4の例について示した図である。
【
図15】マップ上で、ユーザが、感性用語を選択するときに行われる処理の第5の例について示した図である。
【
図16】(a)~(b)は、新たなカラーバーを生成した例を示した図である。
【
図17】第3の実施形態における画像処理装置の機能構成例を示したブロック図である。
【
図18】マスクの第1の例について示した図である。
【
図19】
図18のマスクを使用して色調整を行った結果を示した図である。
【
図20】マスクの第2の例について示した図である。
【
図22】配色画像を選択する際に表示装置の表示画面に表示される画面の第1の例を示した図である。
【
図23】配色画像を選択する際に表示装置の表示画面に表示される画面の第2の例を示した図である。
【
図24】配色画像Mを選択する際に表示装置の表示画面に表示される画面の第3の例を示した図である。
【
図25】画像処理システムの動作について説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
<画像処理システム全体の説明>
図1は、本実施の形態における画像処理システム1の構成例を示す図である。
図示するように本実施の形態の画像処理システム1は、表示装置20に表示される画像の画像情報に対し画像処理を行う画像処理装置10と、画像処理装置10により作成された画像情報が入力され、この画像情報に基づき画像を表示する表示装置20と、画像処理装置10に対しユーザが種々の情報を入力するための入力装置30とを備える。
【0011】
画像処理装置10は、例えば、所謂汎用のパーソナルコンピュータ(PC)である。そして、画像処理装置10は、OS(Operating System)による管理下において、各種アプリケーションソフトウェアを動作させることで、画像情報の作成等が行われるようになっている。
【0012】
画像処理装置10は、演算手段であるCPUと、記憶手段であるメインメモリ、およびHDDやSSD(Solid State Drive)等のストレージを備える。ここで、CPUは、プロセッサの一例であり、OS(基本ソフトウェア)やアプリケーションソフトウェア(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアを実行する。また、メインメモリは、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、ストレージは、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
さらに、画像処理装置10は、外部との通信を行うための通信インタフェース(以下、「通信I/F」と表記する)と、キーボード、マウス、タッチパネル、スタイラスペン等の入力デバイスとを備える。
【0013】
表示装置20は、表示画面21に画像を表示する。表示装置20は、例えばPC用の液晶ディスプレイ、液晶テレビあるいはプロジェクタなど、加法混色にて画像を表示する機能を備えたもので構成される。したがって、表示装置20における表示方式は、液晶方式に限定されるものではない。なお、
図1に示す例では、表示装置20内に表示画面21が設けられているが、表示装置20として例えばプロジェクタを用いる場合、表示画面21は、表示装置20の外部に設けられたスクリーン等となる。
【0014】
入力装置30は、キーボードやマウス等で構成される。入力装置30は、画像処理を行うためのアプリケーションソフトウェアの起動、終了や、詳しくは後述するが、画像処理を行う際に、ユーザが画像処理装置10に対し画像処理を行うための指示を入力するのに使用する。
【0015】
画像処理装置10および表示装置20は、DVI(Digital Visual Interface)を介して接続されている。なお、DVIに代えて、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)やDisplayPort等を介して接続するようにしてもかまわない。
また画像処理装置10と入力装置30とは、例えば、USB(Universal Serial Bus)を介して接続されている。なお、USBに代えて、IEEE1394やRS-232C等を介して接続されていてもよい。
【0016】
詳しくは後述するが、本実施の形態では、被処理画像の色分布を見本色の色分布に合わせる画像処理が行われる。これにより、見本色の配色が被処理画像の配色に反映され、被処理画像の印象を見本色の印象に近いものとなる。
このような画像処理システム1において、表示装置20には、まず最初に画像処理を行う前の画像である被処理画像、および見本色が表示される。そしてユーザが入力装置30を使用して、画像処理装置10に対し画像処理を行うための指示を入力すると、画像処理装置10により被処理画像の画像情報に対し画像処理がなされる。この画像処理の結果は、表示装置20に表示される画像に反映され、画像処理後の被処理画像の画像が描画されて表示装置20に表示されることになる。この場合、ユーザは、表示装置20を見ながら画像処理を行うことができる。
【0017】
なお本実施の形態における画像処理システム1は、
図1の形態に限られるものではない。例えば、画像処理システム1としてタブレット端末を例示することができる。この場合、タブレット端末は、タッチパネルを備え、このタッチパネルにより画像の表示を行うとともにユーザの指示が入力される。即ち、タッチパネルが、表示装置20および入力装置30として機能する。また同様に表示装置20および入力装置30を統合した装置として、タッチモニタを用いることもできる。これは、上記表示装置20の表示画面21としてタッチパネルを使用したものである。この場合、画像処理装置10により画像情報が作成され、この画像情報に基づきタッチモニタに画像が表示される。そしてユーザは、このタッチモニタをタッチ等することで画像処理を行うための指示を入力する。
【0018】
既存の技術では、例えば、よい画像の特徴となる分布を解析し、定量化したデータとする。この場合、ユーザは、定量化したデータとして参考にすることができても、その特徴を別の画像に反映し、画像の印象を再現できるものではなかった。
また、既存の技術では、直感的な操作が行えるシステム、または、HTMLの色コードを効率的に置き換えるなどの手法を取る場合がある。この場合、部分的に厳密に配色対象となる複数の領域を定めて、対象となる領域の色を変更し、その組み合わせに対して、感性と色の対応データベースなどが支援するという仕組みであった。
そこで、本実施の形態では、画像の印象を表す複数の見本色を予め用意し、被処理画像の画質を、この見本色に反映させる処理を行う。
以下、これを実現するための画像処理装置10の説明を行う。
【0019】
<画像処理装置10の構成の説明>
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について説明を行う。
第1の実施形態では、配色パターンが予め用意され、ユーザがこの配色画像を選択すると、この配色画像の配色が被処理画像の配色に反映される。
【0020】
図2は、第1の実施形態における画像処理装置10の機能構成例を示したブロック図である。
図示するように画像処理装置10は、被処理画像を取得する被処理画像取得部11と、配色画像を取得する配色画像取得部12と、被処理画像および配色画像の色分布を解析する色分布解析部13と、配色画像の配色を被処理画像の配色に反映させる色調整部14と、表示装置20で表示する表示画像を作成する表示画像作成部15とを備える。
【0021】
被処理画像取得部11は、被処理画像を取得する。本実施の形態で、被処理画像とは、画像処理として色調整を行う対象となる画像である。被処理画像は、ユーザが、色調整を行う画像を選択することで決定され、被処理画像取得部11は、ユーザが選択した被処理画像を取得する。
【0022】
配色画像取得部12は、配色画像を取得する。本実施の形態で、配色画像とは、予め組として用意された複数の見本色からなる画像である。また、複数の見本色は、予め定められた複数の色の組である。よって、配色画像は、予め定められた配色パターンを有する、と言うこともできる。
そして、この見本色の組み合わせは、例えば、「寒い(COOL)」、「暖か(WARM)」、「やさしい(SOFT)」、「硬い(HARD)」など特定の印象と結びつけられたものとなっている。この組み合わせは、例えば、これらの印象を有する画像に使用されやすい複数の色が選択される。また、これらの印象に結びつく色として、経験的に選択されたものであってもよい。
配色画像取得部12についても、ユーザが、選択することで決定され、配色画像取得部12は、ユーザが選択した配色画像を取得する。
【0023】
図3(a)~(c)は、配色画像の例を示した図である。
ここでは、配色画像Mを、カラーバーCbaで表示した場合を示している。このカラーバーCbaは、複数の見本色Mcを一方向に向かい順に並べて表示するものであり、例示したカラーバーCbaは、それぞれ3つの見本色Mc1~Mc3を並べたものとなっている。
このように、配色画像Mを、カラーバーCbaで表示することで、ユーザが直感的に理解しやすくなる。
【0024】
色分布解析部13は、被処理画像の色分布と配色画像Mの色分布とを求める。色分布は、被処理画像や配色画像Mの特徴量であると考えることができる。画像を構成する色成分毎の平均、散布度、ヒストグラム等で表すことができる。ここでは、色分布として、平均の一例である相加平均および散布度の一例である標準偏差を使用する。
【0025】
色分布解析部13は、まず、表示装置20で被処理画像および配色画像Mを表示するための画像情報(入力画像データ)に対し、色変換を行う。画像情報は、この場合、RGB(Red、Green、Blue)のビデオデータ(RGBデータ)である。そして、RGBデータを例えば、Lαβデータに変換する。即ち、RGB色空間の色度をLαβ色空間の色度に変換する。Lαβ色空間は、自然画像に対するLMS錯体応答性を主成分分析することで、統計的に直交するように設計された色空間であり、人の知覚を基に考案された色空間である。この場合、L、α、βは、それぞれ明度(L)、黄-青軸(α)、赤-緑軸(β)に対応する。
ここでは、被処理画像の画素値を、(Ls、αs、βs)とし、配色画像Mの画素値を、(Lt、αt、βt)とする。
【0026】
色分布解析部13は、被処理画像の画素値である(Ls、αs、βs)の相加平均、および配色画像Mの画素値である(Lt、αt、βt)の相加平均を算出する。これらは、下記数1式で表される、数1式で上側の式は、(Ls、αs、βs)の相加平均であり、下側の式は、(Ls、αs、βs)の相加平均である。
【0027】
【0028】
また、色分布解析部13は、被処理画像の画素値である(Ls、αs、βs)の標準偏差(σs、L、σs、α、σs、β)、および配色画像Mの画素値である(Lt、αt、βt)の標準偏差(σt、L、σt、α、σt、β)を算出する。
【0029】
図2に戻り、色調整部14は、配色画像Mの配色を被処理画像の配色に反映させる色調整を行う。ここでは、色調整部14は、被処理画像の色分布と見本色Mcの色分布との関係に基づき、被処理画像の色を変更する処理を行う。
具体的には、被処理画像の画素値(L
s、α
s、β
s)を、色変換後の画素値(L
O、α
O、β
O)とするのに、上述した、相加平均および標準偏差を用い、以下の数2式を用いて行う。
【0030】
【0031】
表示画像作成部15は、色調整部14により色調整がなされた後の画像情報を作成し、出力する。色調整がなされた後の画像情報は、表示装置20に送られる。そして表示装置20にてこの画像情報に基づき画像が表示される。
【0032】
以上の処理により、配色画像Mの配色を被処理画像の配色に反映させることができる。これにより、被処理画像の印象を配色画像Mに基づく印象に変更する色調整を行うことができる。本実施の形態では、色分布解析部13および色調整部14において、RGB色空間の色度で表現された画像情報を、Lαβ色空間に変換し、Lαβ色空間の色度を用いて処理を行う場合として説明したが、これに限定されるものではなく、RGB色空間からRGB色空間への変換や、L*a*b*色空間の色度を用いた処理として構成するようにしてもよい。
【0033】
なお、配色画像Mは、
図3に示した場合に限られるものではない。
図4は、配色画像Mの他の例を示した図である。
ここでは、配色画像Mを、カラーブロックCbrで表示した場合を示している。このカラーブロックCbrは、複数の見本色Mcを縦横に組み合わせて表示するものであり、例示したカラーブロックCbrは、それぞれ4つの見本色Mc1~Mc4を組み合わせたものとなっている。
【0034】
また、見本色Mcを配色画像Mとして表示せず、画像情報として、ユーザに提示することもできる。この場合、表示装置20の表示画面21に、例えば、RGB=(0、50、100)、(50、50、200)、(200、100、0)のような画像情報を表示する。
【0035】
また、配色画像Mの配色を被処理画像の配色に反映させる際に、配色画像Mを構成する複数の見本色Mcのそれぞれについて、重み付けをして色調整を行うようにしてもよい。このとき、例えば、複数の見本色Mcの中で、被処理画像に最も高頻度で含まれる色に最も近い色について他の色より大きい重み付けをすることができる。この場合、色調整後の画像がより自然となりやすい。
【0036】
また、各見本色Mcの重み付けは、予め定められていてもよい。そして、重みを面積の大小として表した配色画像Mを表示することもできる。複数の見本色Mcの画像は、各見本色Mcが占める面積により、上記処理を行うときの、各見本色Mcを反映させる際の重みを表す。この場合、ユーザは、重み付けを直感的に把握することができる。
【0037】
図5(a)~(b)は、各見本色Mcの重み付けを、面積の大小として表示する場合について示した図である。
このうち、
図5(a)は、カラーバーCbaの場合について示している。この場合、見本色Mc1~Mc3は、見本色Mc1の重みが最も小さく、見本色Mc3の重みが最も大きく、見本色Mc2の重みは、これらの中間であることを表している(Mc1<Mc2<Mc3)。
また、
図5(b)は、カラーブロックCbrの場合について示している。この場合、見本色Mc1~Mc4の重みは、Mc4<Mc1<Mc2<Mc3であることを表している。
なお、これらの面積を、ユーザが変更可能とし、これに応じて重みを変更できるようにしてもよい。また、予め用意された各見本色Mcの他に、ユーザがさらに色を追加可能であるようにしてもよい。
【0038】
図6は、色調整を行う際に表示装置20の表示画面21に表示される画面の第1の例を示した図である。
図示する画面は、図中左側に、被処理画像Hが表示される。また、図中中央に、
図3(b)で示した配色画像Mが表示される。これらの被処理画像Hおよび配色画像Mは、ユーザが選択できる。そして、図中右側に色調整後の被処理画像H’が表示される。
このように、本実施の形態では、画像を表示する表示装置20に、被処理画像Hと複数の見本色Mcの画像である配色画像Mとを並べて表示し、ユーザが選択した配色画像Mを基に、色調整を行う。
【0039】
また、
図7は、色調整を行う際に表示装置20の表示画面21に表示される画面の第2の例を示した図である。
図示する画面における被処理画像H、配色画像M、色調整後の被処理画像H’の配置は、
図6の場合と同様である。だだし、配色画像Mが、
図5(a)で示したものに変更され、上述した重み付けをした色調整がなされる。その結果、
図6とは異なる色調整がなされた色調整後の被処理画像H’が表示される。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明を行う。
第2の実施形態では、ユーザに画像の印象を表す感性用語を選択させ、この用語を基に複数の見本色Mcを取得する。
【0041】
図8は、第2の実施形態における画像処理装置10の機能構成例を示したブロック図である。
図示するように画像処理装置10は、
図2に図示する画像処理装置10に比較して、用語変換部16が加わる点で異なる。そして、他の被処理画像取得部11、配色画像取得部12、色分布解析部13、色調整部14、表示画像作成部15の機能は、双方とも同様である。よって、以下、用語変換部16について中心に説明を行う。
【0042】
用語変換部16は、ユーザが選択した感性用語を複数の見本色Mcに変換する。感性用語は、用語の一例であり、画像等に対する印象を表現する言葉である。この場合、感性用語と複数の見本色Mcとは、予め定められた感性に応じ関連付けられ、この関係を記憶する記憶手段に格納される。この記憶手段は、画像処理装置10が備えてもよく、例えば、クラウドサーバ等の外部装置が備え、用語変換部16が、ここから取得してもよい。
【0043】
図9(a)~(b)は、感性用語Kyと複数の見本色Mcからなる配色画像Mとの関係を示した図である。
このうち、
図9(a)は、嗜好モデルについて図示している。
嗜好モデルとは、人の好みや何らかの対象物に対して保有するイメージを類型化したものである。ここでは、嗜好モデルとして、富士ゼロックス テクニカルレポートNo.23 2014の「嗜好モデルを活用した消費者理解とデザイン支援」に掲載のものを例示して挙げている。この嗜好モデルは、このイメージを、WARM←→COOL、SOFT←→HARDの2軸の直行座標で形成されたマップMpで表現する、そして、このマップMp上に、「可憐」、「ロマンチック」、「キュート」などの感性用語Kyを配置する。即ち、これらの感性用語Kyが配置される位置は、これらの感性用語Kyと嗜好モデルが表すイメージとが合致した箇所となる。なお、上記2軸は、どのような基準で決めてもよい。
【0044】
図9(b)は、嗜好モデルと配色画像Mとを関連付けた図である。
この場合、嗜好モデルを表すマップMp上に、感性用語Kyと対応して配色画像Mが配される。
図9(b)の関係を利用することで、ユーザが選択した感性用語Kyに対応する複数の見本色Mcを取得することができる。
【0045】
図10は、嗜好モデルと配色画像Mとを関連付けた例として他の例を示した図である。
ここでは、感性用語Kyとして、「穏やかな感じの」と、「○○な印象の」に対し、配色画像Mが対応する例を示している。このうち、「穏やかな感じの」については、配色画として1つのカラーバーCba1が対応する。対して、「○○な印象の」については、配色画像Mとして2つのカラーバーCba2、Cba3が対応する。このように、1つの感性用語Kyに対し、複数の配色画像Mが対応してもよい。そして、複数の配色画像Mを使用して、色調整が行われる。
なお、
図9(b)に示したような配色画像Mは、ユーザに提示する必要は、必ずしもなく、
図9(a)の嗜好モデルだけを提示してもよい。
【0046】
そして、ユーザが、マップMp上で、これらの感性用語Kyの何れかを選択すると、配色画像Mが確定し、色調整がなされる。
図11は、マップMp上で、ユーザが、感性用語Kyを選択するときに行われる処理の第1の例について示した図である。
ここでは、感性用語KyがマップMp上で占める領域を、タッチすることで選択を行う。この領域を
図11では、点線で示している。また、図示する例では、配色画像Mは表示されず、マップMp上の「○○のような」の箇所をタッチした場合を示している。なお、感性用語KyがマップMp上で占める領域内の位置により、配色画像Mを構成する複数の見本色Mcのそのぞれの重みを決定し、上述した重み付けをした色調整を行うこともできる。
【0047】
図12は、マップMp上で、ユーザが、感性用語Kyを選択するときに行われる処理の第2の例について示した図である。
ここでは、
図10で示したような、2つのカラーバーCba2、Cba3のように複数の配色画像Mが表示されるときに、それぞれの配色画像Mにより、色調整を行った後の被処理画像H1’、および被処理画像H2’を、ユーザに提示する場合を示している。そして、ユーザは、この2つの画像の何れかを選ぶことが可能である。
【0048】
図13は、マップMp上で、ユーザが、感性用語Kyを選択するときに行われる処理の第3の例について示した図である。
ここでは、配色画像Mとして、2つのカラーバーCba4、Cba5が表示されるときに、ユーザが何れかを選べる場合を示している。複数の配色画像Mは、予め表示されていてもよく、ユーザがタッチしたときに表示するようにしてもよい。
【0049】
図14は、マップMp上で、ユーザが、感性用語Kyを選択するときに行われる処理の第4の例について示した図である。
ここでは、マップMp中に、複数の見本色Mcから構成される配色画像Mではなく、1つの見本色Mcから構成される配色画像Mが含まれる場合を示している。つまり、この配色画像Mは、単色であり、例えば、セピア調などの色調と紐付けることができる。またこの場合、上述した相加平均および標準偏差を求めるときは、この単色画像が、多少のグラデ-ションを有するようにすることで、計算を行うことができる。また、単純にこの単色の色度を適用するようにしてもよい。
【0050】
図15は、マップMp上で、ユーザが、感性用語Kyを選択するときに行われる処理の第5の例について示した図である。
ここでは、「○○のような」と「○○な印象の」の2つの感性用語Kyを選択した場合を示している。
この場合、
図16(a)に示すように、2つの感性用語Kyに対応する配色画像MであるカラーバーCba6およびカラーバーCba7について、それぞれの見本色Mc5、Mc6、Mc7、および見本色Mc8、Mc9、Mc10の間で、平均を求め、新たなカラーバーCba8を生成した例を示している。ここでは、見本色Mc5と見本色Mc8との平均、見本色Mc6と見本色Mc9との平均、見本色Mc7と見本色Mc10との平均を、それぞれ求めている。その結果、見本色Mc11、Mc12、Mc13が生成する。なお、カラーバーCba6、Cba7を構成する、それぞれの見本色Mc5、Mc6、Mc7は、重みを付けずに平均を求めている。ただし、重みを付けて加重平均を求めるようにしてもよい。
また、
図16(b)に示すように、カラーバーCba6、Cba7を構成する見本色Mc5、Mc6、Mc7、Mc8、Mc9、Mc10を、単に連結して、新たなカラーバーCba9を生成してもよい。この場合、カラーバーCba9は、6つの見本色Mcよりなる。
【0051】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明を行う。
第3の実施形態では、ユーザが、被処理画像Hの中で色調整を行いたい領域を指定できる。
【0052】
図17は、第3の実施形態における画像処理装置10の機能構成例を示したブロック図である。
図示するように画像処理装置10は、
図2に図示する画像処理装置10に比較して、領域指定部17が加わる点で異なる。そして、他の被処理画像取得部11、配色画像取得部12、色分布解析部13、色調整部14、表示画像作成部15の機能は、双方とも同様である。よって、以下、領域指定部17について中心に説明を行う。
【0053】
領域指定部17は、ユーザの指示により、被処理画像Hの中で色調整を行いたい領域または色調整を行いたくない領域を指定する。つまり、ユーザが、被処理画像Hの中で色調整を行いたい領域を指定したときは、この領域については、色調整がされるが、他の領域については、色調整がされない。また、ユーザが、被処理画像Hの中で色調整を行いたくない領域を指定したときは、この領域については、色調整がされないが、他の領域については、色調整がされる。ここでは、このうち後者について説明を行うが、前者についても色調整がされる領域とされない領域が逆になるだけで、同様の処理が適用できる。
【0054】
ユーザが、被処理画像Hの中で色調整を行いたくない領域を指定する場合、例えば、表示画面21に表示された被処理画像Hに対し、マウス等の入力装置30を用いて、この領域を指定する。そして、領域指定部17は、ユーザが指定した領域について、マスクを生成する。
【0055】
図18は、マスクの第1の例について示した図である。また、
図19は、
図18のマスクを使用して色調整を行った結果を示した図である。
図18で示すマスクMa1は、
図19の図中左側の被処理画像Hに対し適用されるものである。この場合、マスクMa1は、被処理画像Hの背景領域Bkについて、色調整を行わないようにする。そして、その結果、図中右側の色調整後の被処理画像H’は、背景領域Bkについては、色調整がされず、他の領域は、色調整がされる。
【0056】
図20は、マスクの第2の例について示した図である。また、
図21は、
図18および
図20のマスクを使用して色調整を行った結果を示した図である。
図20で示すマスクMa2は、
図21の図中左側の被処理画像Hに対し適用されるものである。この場合、マスクMa2は、被処理画像Hの文字領域Mjについて、適用される。そして、文字領域Mjに色調整を行わないようにすることができる。一方、
図20に示したマスクMa2を使用することで、文字領域Mjに対し、直接指定した色にするなど、他の領域と異なる色調整を行うこともできる。
図21に示した色調整後の被処理画像H’は、マスクMa1を使用することで、
図19と同様の色調整を行うとともに、マスクMa2を使用することで文字領域Mjについては、他の領域と異なる色調整を行ったことを示している。
【0057】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明を行う。
第4の実施形態では、実際に色調整を行う際のユーザインタフェース(UI)について説明を行う。
【0058】
図22は、配色画像Mを選択する際に表示装置20の表示画面21に表示される画面の第1の例を示した図である。
ここでは、表示画面21の上部左側に被処理画像H(ここでは、原画像として図示)が表示され、表示画面21の上部右側に色調整後の被処理画像H’ (ここでは、再現画像として図示)が表示される。そして、表示画面21の下部には、感性用語Kyの一覧が表示される。そして、ユーザがラジオボタンRbを押下すると、何れかの感性用語Kyが選択でき、これに対応した配色画像Mが選択される。なお、ここでは、配色画像Mは、表示されない。また、ラジオボタンRbではなく、チェックボタンであってもよい。
【0059】
図23は、配色画像Mを選択する際に表示装置20の表示画面21に表示される画面の第2の例を示した図である。
ここでは、
図22の場合と比較して、表示画面21の下部に、配色画像MであるカラーバーCbaやカラーブロックCbrが表示される点で相違する。そして、ユーザが何れかのカラーバーCbaやカラーブロックCbrをタッチすると、この配色画像Mが選択される。
【0060】
図24は、配色画像Mを選択する際に表示装置20の表示画面21に表示される画面の第3の例を示した図である。
ここでは、
図22の場合と比較して、表示画面21の下部に、嗜好モデルを表すマップMp上に、感性用語Kyが表示される点で相違する。そして、ユーザが何れかの感性用語Kyの領域をタッチすると、これに対応した配色画像Mが選択される。なお、ここでは、配色画像Mは、表示されない。
【0061】
<画像処理システム1の動作の説明>
次に、画像処理システム1の動作について説明する。
図25は、画像処理システム1の動作について説明したフローチャートである。
まず、被処理画像取得部11が、被処理画像Hの画像情報を取得する(ステップ101)。この場合、ユーザが被処理画像Hを選択し、この画像情報を被処理画像取得部11が取得する。またこの際、第3の実施形態のように、ユーザが、被処理画像Hの中で色調整を行いたい領域や行いたくない領域を指定し、領域指定部17が、マスクを生成してもよい。
【0062】
次に、配色画像取得部12が、配色画像Mの画像情報を取得する(ステップ102)。これは、第1の実施形態では、配色画像MであるカラーバーCbaやカラーブロックCbrを、ユーザが選択することで行われる。また、第2の実施形態では、感性用語Kyを、ユーザが選択することで行われる。この場合、用語変換部16が、感性用語Kyを基に配色画像Mを記憶手段から取得し、これを配色画像取得部12に渡す。
【0063】
そして、色分布解析部13が、被処理画像Hおよび配色画像Mについて、色分布を求める(ステップ103)。この場合、色分布解析部13は、色分布として、例えば、上述した相加平均や標準偏差を求める。
【0064】
さらに、色調整部14が、配色画像Mの配色を被処理画像Hの配色に反映させる色調整を行う(ステップ104)。
そして、表示画像作成部15が、色調整部14により色調整がなされた後の画像情報を作成し、出力する(ステップ105)。
【0065】
以上説明した画像処理装置10によれば、第1の実施形態では、複数の見本色が配される配色画像Mを選択することで、ユーザは、被処理画像Hの色調整を容易に行うことができる。また、第2の実施形態では、ユーザが感性用語Kyを選択することで、ユーザは、被処理画像Hの色調整を容易に行うことができる。
これは、被処理画像Hの色とそれぞれの色の変更後の色との調整をユーザが行う場合と比較して、 予め用意された配色パターンに基づき、被処理画像Hの配色に反映させることによりユーザの作業を低減することができる、と言うこともできる。
【0066】
<プログラムの説明>
なお本実施の形態における画像処理装置10が行う処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、画像処理装置10の内部に設けられた図示しないCPUが、画像処理装置10の各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。
【0067】
よって画像処理装置10が行う処理は、コンピュータに、被処理画像Hの色分布と予め組として用意された複数の見本色Mcの色分布とを求める機能と、 被処理画像Hの色分布と複数の見本色Mcの色分布との関係に基づき、被処理画像Hの色を変更する処理を行う機能と、を実現させるためのプログラムとして捉えることもできる。
【0068】
なお上述した例では、平均として相加平均を使用したが、これに限られるものではなく、相乗平均等であってもよい。また上述した例では、散布度として標準偏差を使用したが、これに限られるものではなく、二乗平均平方根、分散など種々の指標を用いてもよい。
【0069】
さらに上述した例では、色分布解析部13で、RGBデータをLαβデータに変換したが、色度成分と輝度成分に分離できる色空間での色度データであれば、これに限られるものではない。例えば、Lαβデータの代わりにCIEL*a*b*データ、IPTデータ、CAMO2データ、HSVデータ等に変換してもよい。
【0070】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0071】
1…画像処理システム、10…画像処理装置、11…被処理画像取得部、12…配色画像取得部、13…色分布解析部、14…色調整部、15…表示画像作成部、16…用語変換部、17…領域指定部、20…表示装置、Cba…カラーバー、Cbr…カラーブロック、H…被処理画像、M…配色画像、Mc…見本色、Ma1、Ma2…マスク