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特許7468073画像処理方法、画像処理装置および記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】画像処理方法、画像処理装置および記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B41J2/21
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020062457
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160145
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大原 瑛一
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-196830(JP,A)
【文献】特開2007-068001(JP,A)
【文献】特開2008-162176(JP,A)
【文献】特開2003-266749(JP,A)
【文献】特開2017-140700(JP,A)
【文献】特開2012-006385(JP,A)
【文献】米国特許第06595612(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体へ記録可能な記録装置が記録条件の異なる第1領域と第2領域に対して画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理方法であって、
前記第1領域および前記第2領域の別に関係なく第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換工程と、
前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける前記第2領域の画像データを変換する第2変換工程と、
前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成工程と、を有し、
前記インク量を調整する場合に、前記第2変換工程では調整を行わず前記第1変換工程で前記第1変換テーブルを調整することで前記第1領域および前記第2領域の別に関係なく調整を行う、ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記インク量の調整は、色相を変更するための色調整、濃淡を調整するための濃度調整、および、前記記録ヘッドにおけるインクの色毎の吐出ばらつきに応じたインクの色毎の調整の少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体へ記録可能な記録装置が画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理方法であって、
第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換工程と、
前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換工程と、
前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成工程と、を有し、
前記インク量を調整する場合に、前記第2変換工程では調整を行わず前記第1変換工程で調整を行い、
前記第2変換テーブルが変換可能な入力画像データの色域は、前記第1変換テーブルによる変換後の色域よりも広い、ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
前記記録装置が前記記録データに基づいて前記記録ヘッドにより複数の部分画像を記録することにより前記画像を前記記録媒体に再現する場合に、
前記第2領域は、前記画像のうち前記部分画像同士が重なる重複領域に該当し、
前記第1領域は、前記画像のうち前記重複領域を除いた領域に該当する、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記記録装置が、第1方向への前記記録ヘッドの移動と、前記第1方向の逆方向への前記記録ヘッドの移動との夫々で前記記録ヘッドにインクを吐出させ、前記記録媒体を前記第1方向と交差する第2方向へ搬送する場合に、
前記第1領域は、前記画像のうち前記第1方向への前記記録ヘッドの移動により記録が開始される領域であり、
前記第2領域は、前記画像のうち前記逆方向への前記記録ヘッドの移動により記録が開始される領域である、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記記録装置が、第1方向への前記記録ヘッドの移動に伴うインクの吐出と、前記第1方向の逆方向への前記記録ヘッドの移動に伴うインクの吐出とを重ねて、前記画像内の単位領域の記録を行う場合に、
前記単位領域内で前記第1領域と前記第2領域とは前記第1方向における位置が異なる、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項7】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体へ記録可能な記録装置が記録条件の異なる第1領域と第2領域に対して画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理装置であって、
前記第1領域および前記第2領域の別に関係なく第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部と、
前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける前記第2領域の画像データを変換する第2変換部と、
前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部と、を有し、
前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部は調整を行わず前記第1変換部が前記第1変換テーブルを調整することで前記第1領域および前記第2領域の別に関係なく調整を行う、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体へ記録可能な記録装置が画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理装置であって、
第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部と、
前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換部と、
前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部と、を有し、
前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部は調整を行わず前記第1変換部が調整を行い、
前記第2変換テーブルが変換可能な入力画像データの色域は、前記第1変換テーブルによる変換後の色域よりも広い、ことを特徴とする、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
記録データに基づいて、複数色のインクを吐出する記録ヘッドを駆動することにより、記録媒体へ記録条件の異なる第1領域と第2領域に対して画像を記録する記録装置であって、
前記第1領域および前記第2領域の別に関係なく第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部と、
前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける前記第2領域の画像データを変換する第2変換部と、
前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部と、を有し、
前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部は調整を行わず前記第1変換部が前記第1変換テーブルを調整することで前記第1領域および前記第2領域の別に関係なく調整を行う、ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
記録データに基づいて、複数色のインクを吐出する記録ヘッドを駆動することにより、記録媒体へ画像を記録する記録装置であって、
第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部と、
前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換部と、
前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部と、を有し、
前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部は調整を行わず前記第1変換部が調整を行い、
前記第2変換テーブルが変換可能な入力画像データの色域は、前記第1変換テーブルによる変換後の色域よりも広い、ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出可能な記録ヘッドの主走査方向への走査と、主走査方向へ交差する搬送方向への記録媒体の搬送と、を交互に繰り返すことにより記録媒体へ画像を記録するプリンターが知られている。このようなプリンターは、ある走査により記録する部分画像と、次の走査により記録する部分画像とを一部で重複させることにより、各走査で記録する部分画像間に隙間が生じないように記録することが可能である。部分画像同士の重複領域の記録の仕方を、オーバーラップ方式と呼ぶ。以下では、オーバーラップをOLと略す。
【0003】
画像内でOL方式により記録される重複領域と、重複領域以外の通常領域とは、記録のための走査回数が異なり、このような記録条件の相違に起因して、画像の記録結果において色ムラが生じやすい。
このような色ムラを解消するために、RGB色空間における通常領域に対応する画像データを、通常領域ルックアップテーブル(LUT)を用いてCMYKデータに変換する第1変換工程と、RGB色空間におけるつなぎ目領域に対応する画像データを、つなぎ目領域LUTを用いてCMYKデータに変換する第2変換工程と、通常領域およびつなぎ目領域のCMYKデータに基づき印刷データを生成する印刷データ生成工程と、を含む画像処理方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018‐118382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ユーザーの要望やプリンター個体の記録特性等に応じて、インク量を規定するCMYKデータを調整する必要性が生じることがある。このような場合に、通常領域の画像データの色変換のためのLUTと、つなぎ目領域つまり重複領域の画像データの色変換のためのLUTとの夫々を調整すると、各LUTによる出力値同士の比率やバランスが崩れ、各LUTによるCMYKデータに基づく記録結果において、両領域間の色ムラを抑えられないことがある。
また、記録条件が相違するために記録結果において色ムラが生じやすい領域の関係は、上述したような通常領域と重複領域との関係に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体へ記録可能な記録装置が画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理方法は、第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換工程と、前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換工程と、前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成工程と、を有し、前記インク量を調整する場合に、前記第2変換工程では調整を行わず前記第1変換工程で調整を行う。
【0007】
複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いて記録媒体へ記録可能な記録装置が画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理装置は、第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部と、前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換部と、前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部と、を有し、前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部は調整を行わず前記第1変換部が調整を行う。
【0008】
記録データに基づいて、複数色のインクを吐出する記録ヘッドを駆動することにより、記録媒体へ画像を記録する記録装置は、第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部と、前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換部と、前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部と、を有し、前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部は調整を行わず前記第1変換部が調整を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置構成を簡易的に示すブロック図。
図2】記録媒体と記録ヘッドとの関係性を上方からの視点により簡易的に示す図。
図3】記録制御処理を示すフローチャート。
図4】ステップS110~S130の処理の流れを模式的に示す図。
図5】ノズルと画素との割り当ての関係を示す図。
図6】第1変形例における第1領域と第2領域とを説明するための図。
図7】第2変形例における第1領域と第2領域とを説明するための図。
図8】記録媒体と記録ヘッドとの関係性の他の例を上方からの視点により示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
1.装置の概略説明:
図1は、本実施形態にかかるシステム40の構成を簡易的に示している。システム40は、画像処理装置10およびプリンター20を含んでいる。システム40を、記録システム、画像処理システムあるいは印刷システム等と呼んでもよい。システム40の少なくとも一部により、画像処理方法が実現される。
【0012】
画像処理装置10は、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末、或いはそれらと同程度の処理能力を有する情報処理装置によって実現される。画像処理装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信インターフェイス15、記憶部16等を備える。インターフェイスをIFと略して表記する。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0013】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存されたプログラムに従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行する。制御部11は、プログラム12に従った処理を実行することにより、プログラム12と協働して、画像取得部12a、第1変換部12b、第2変換部12c、記録データ生成部12d、記録制御部12eといった複数の機能を実現する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成としてもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成としてもよい。
【0014】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。表示部13および操作受付部14を含めて、画像処理装置10の操作パネルと呼ぶことができる。
【0015】
表示部13や操作受付部14は、画像処理装置10の構成の一部であってもよいが、画像処理装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。通信IF15は、画像処理装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。制御部11は、通信IF15を介して、例えばプリンター20と通信する。記憶部16は、不揮発性メモリーや、HDDや、その他の記憶装置により実現される。記憶部16は、制御部11の一部と解してもよいし、例えば、RAM11cを記憶部16の一部と解してもよい。
【0016】
画像処理装置10によって制御される記録装置としてのプリンター20は、インク等の液体を吐出して記録を行うインクジェットプリンターである。プリンター20が吐出する液体の滴を、ドットと呼ぶ。インクジェットプリンターについての詳しい説明は省くが、プリンター20は、概略、搬送機構21や、記録ヘッド22や、キャリッジ23を備える。
搬送機構21は、記録媒体を搬送するローラーや、ローラーを駆動するためのモーター等を備え、記録媒体を所定の搬送方向へ搬送する。
【0017】
記録ヘッド22は、図2に例示するように、ドットを吐出可能なノズル25を複数備え、搬送機構21が搬送する記録媒体30に対して各ノズル25からドットを吐出する。プリンター20は、ノズル25が備える不図示の駆動素子への駆動信号の印加を後述の記録データに従って制御することで、ノズル25からドットを吐出させたり吐出させなかったりする。プリンター20は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)といった複数色のインクや、これら以外の色のインクを吐出して記録を行う。
【0018】
図2は、記録ヘッド22と記録媒体30との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。記録ヘッド22を、印刷ヘッド、印字ヘッド、液体吐出ヘッド等と呼んでもよい。記録媒体30は、代表的には用紙であるが、液体の吐出により記録可能な媒体であれば、紙以外の素材の媒体であってもよい。
【0019】
記録ヘッド22は、第1方向D1に沿って往復移動可能なキャリッジ23に搭載されており、キャリッジ23とともに移動する。キャリッジ23は、不図示のキャリッジモーターによる動力で、第1方向D1や第1方向D1の逆方向へ移動可能である。キャリッジ23の第1方向D1への移動を「往路移動」と呼び、第1方向D1の逆方向への移動を「復路移動」と呼ぶ。このような第1方向D1や第1方向D1の逆方向を、主走査方向とも言う。
【0020】
搬送機構21は、記録媒体30を第1方向D1と交差する第2方向D2へ搬送する。第2方向D2は搬送方向である。搬送の上流、下流を単に上流、下流と言う。第1方向D1と第2方向D2との交差は直交と解してよい。ただし、例えば、製品としてのプリンター20における種々の誤差により、第1方向D1と第2方向D2とは厳密には直交していないこともある。
【0021】
符号27は、記録ヘッド22におけるノズル25が開口するノズル面27を示している。図2では、ノズル面27におけるノズル25の配列の一例を示している。ノズル面27内の一つ一つの小さな丸がノズル25である。記録ヘッド22は、プリンター20が搭載するインクカートリッジやインクタンク等と呼ばれる不図示の液体保持手段からCMYK各色のインクの供給を受けてノズル25から吐出する構成において、ノズル列26を複数備える。Cインクを吐出するノズル25からなるノズル列26をノズル列26Cとも記載する。同様に、Mインクを吐出するノズル25からなるノズル列26をノズル列26M、Yインクを吐出するノズル25からなるノズル列26をノズル列26Y、Kインクを吐出するノズル25からなるノズル列26をノズル列26Kと夫々記載する。ノズル列26C,26M,26Y,26Kは、第1方向D1に沿って並んでいる。
【0022】
夫々のノズル列26は、第2方向D2におけるノズル25同士の間隔であるノズルピッチが一定或いはほぼ一定とされた複数のノズル25により構成される。ノズル列26を構成する複数のノズル25が並ぶ方向を、ノズル列方向D3と呼ぶ。図2の例では、ノズル列方向D3は、搬送方向としての第2方向D2と平行である。ノズル列方向D3が第2方向D2と平行な構成においては、ノズル列方向D3と第1方向D1とは直交する。ただし、ノズル列方向D3は、第2方向D2と平行でなく、第1方向D1に対して斜めに交差する構成であってもよい。いずれにしても、ノズル列26を構成する複数のノズル25は、第2方向D2におけるノズルピッチが一定或いはほぼ一定の状態で並んでいることから、第2方向D2に並んでいると言える。第2方向D2におけるノズル列26C,26M,26Y,26Kそれぞれの位置は、互いに一致している。
【0023】
図2の例によれば、プリンター20は、いわゆるシリアル型プリンターであり、第2方向D2への記録媒体30の所定の搬送量(以下、送り量)の搬送と、第1方向D1に沿ったキャリッジ23の移動に伴う記録ヘッド22によるインク吐出とを交互に繰り返すことで、記録媒体30へ画像を記録する。キャリッジ23の往路移動や復路移動に伴い記録ヘッド22がインクを吐出する動作を「走査」や「パス」と呼ぶ。
【0024】
制御部11は、第1方向D1に延在する「ラスターライン」が第2方向D2に複数並んで形成される画像を記録媒体30に記録するように、プリンター20を制御する。
画像処理装置10とプリンター20とは、図示しないネットワークを通じて接続するとしてもよい。プリンター20は、印刷機能に加え、スキャナーとしての機能やファクシミリ通信機能等の複数の機能を兼ね備えた複合機であってもよい。画像処理装置10は、独立した一つの情報処理装置によって実現されるだけでなく、ネットワークを介して互いに通信可能に接続した複数の情報処理装置によって実現されてもよい。
【0025】
あるいは、画像処理装置10およびプリンター20は、それらが一体の記録装置であってもよい。つまり、システム40は、実態として記録制御装置10およびプリンター20を含んだ一台の記録装置40であってもよい。従って、以下に説明する画像処理装置10が実行する処理は、記録装置40が実行する処理と解してもよい。
【0026】
2.画像処理方法の説明:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行する記録制御処理をフローチャートにより示している。この記録制御処理により、本実施形態の画像処理方法が実現される。制御部11は、入力画像の記録指示を受け付けたことを契機として、記録制御処理を開始する。
【0027】
ステップS100では、画像取得部12aは入力画像を取得する。ユーザーは、例えば、表示部13に表示されたUI画面を視認しつつ操作受付部14を操作することにより、入力画像を任意に選択し、入力画像の記録指示を行う。UIはユーザーインターフェイスの略である。画像取得部12aは、このように選択された入力画像を、所定のメモリー等の保存元から取得する。
【0028】
ステップS100で取得する入力画像は、文字や写真やイラスト等の何らかの画像を所定の第1色空間により表現するビットマップ形式の画像データである。第1色空間は、後述の第2色空間とは異なる色空間であり、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)色空間である。この場合、入力画像は、画素毎にRGB毎の階調値の組み合わせであるRGB値を有する。階調値は、例えば、1色が0~255の256階調範囲で表される。入力画像としての画像データは「第1画像データ」に該当する。画像取得部12aは、入力画像の縦横それぞれの解像度を、プリンター20による縦横それぞれの記録解像度に合わせるための解像度変換処理を必要に応じて実行してもよい。
【0029】
ステップS110では、第1変換部12bは、入力画像の色変換処理を実行する。つまり、入力画像を、プリンター20が記録に用いる複数色のインク量を示す第2色空間により表される画像データへ変換する。上述したようにプリンター20がCMYKインクを使用する機種であり、入力画像の画像データが画素毎にRGB値を有する場合、第1変換部12bは、画像データの画素毎にRGB値をCMYK毎の階調値の組み合わせであるCMYK値に変換する。CMYK値は、CMYK毎のインク量である。ステップS110は、第1変換工程に該当する。
【0030】
図4は、ステップS110~S130の処理の流れを模式的に示している。符号50は、入力画像の画像データ50である。ステップS110においては、第1変換部12bは、色変換LUT17を参照して画像データ50の色変換処理を行う。色変換LUT17は予め記憶部16に記憶されている。色変換LUT17は、複数のRGB値について、CMYK値との対応関係を規定したテーブルであり、第1色空間と第2色空間との変換関係を規定した「第1変換テーブル」に該当する。この場合、CMYK色空間が第2色空間に該当する。第1変換部12bは、色変換LUT17を参照し、補間演算等を適宜用いて、画像データ50を構成する各画素を色変換すればよい。ステップS110の結果、画像データ50は、各画素がCMYK値を有する画像データ51へ変換される。画像データ51は「第2画像データ」に該当する。
【0031】
本実施形態においては、ステップS110の色変換処理は、インク量調整処理(ステップS111)を伴う。つまり、ステップS111は、ステップS110の一部である。
インク量調整処理は、例えば、色相を変更するための色調整である。ユーザーは、UI画面を視認しつつ操作受付部14を操作することにより、例えば、画像を全体的に赤味が強い画像としたり、青味が強い画像としたりする色調整指示を、上述の記録指示と共に入力することができる。従って、ステップS111において第1変換部12bは、入力された色調整指示に応じて色変換LUT17を調整する。例えば、赤味を強くする色調整指示を受けたとき、第1変換部12bは、色変換LUT17が(R,G,B)=(10,10,10)に対応して規定しているCMYK値を、色変換LUT17が(R,G,B)=(15,10,10)に対応して規定しているCMYK値で置換する。このように、色変換LUT17が各RGB値に対応して規定するCMYK値を、全体的に赤味を強めた色に調整する。
【0032】
また、インク量調整処理は、例えば、濃淡を調整するための濃度調整である。ユーザーは、UI画面を視認しつつ操作受付部14を操作することにより、例えば、画像を全体的に濃くしたり淡くしたりする濃度調整指示を、上述の記録指示と共に入力することができる。従って、ステップS111において第1変換部12bは、入力された濃度調整指示に応じて色変換LUT17を調整する。例えば、画像を濃くする濃度調整指示を受けたとき、第1変換部12bは、色変換LUT17が各RGB値に対応して規定しているCMYK夫々の階調値を一律に1.1倍する。
【0033】
また、インク量調整処理は、例えば、記録ヘッド22におけるインクの色毎の吐出ばらつきに応じたインクの色毎の調整である。記録ヘッド22には、製造された機体毎に固有のばらつきが有る。例えば、Cインクを吐出するノズル列26Cによるインク吐出量は他のノズル列26M,26Y,26Kと比べて少なく、Kインクを吐出するノズル列26Kによるインク吐出量は他のノズル列26C,26M,26Yと比べて多い、といったようなばらつきである。プリンター20が有する不図示のメモリーには、このようなインク色毎の吐出ばらつきの情報が記憶されている。
【0034】
従って、ステップS111において第1変換部12bは、プリンター20からインク色毎の吐出ばらつきの情報を取得し、この情報に応じて色変換LUT17を調整する。上述の例のように、ノズル列26Cによるインク吐出量が他のノズル列26M,26Y,26Kと比べて少ないのであれば、第1変換部12bは、色変換LUT17が各RGB値に対応して規定しているCMYK夫々の階調値のうちCの階調値を前記ばらつきの情報に応じて一律に増加させる。また、上述の例のようにノズル列26Kによるインク吐出量が他のノズル列26C,26M,26Yと比べて多いのであれば、第1変換部12bは、色変換LUT17が各RGB値に対応して規定しているCMYK夫々の階調値のうちKの階調値を前記ばらつきの情報に応じて一律に減少させる。
【0035】
むろん、ステップS111において、第1変換部12bは、上述したような複数種類のインク量調整処理を実行することができる。
ステップS110において、第1変換部12bは、図4に示すようにインク量調整処理を施した色変換LUT17を参照して、画像データ50の色変換処理を行う。
【0036】
あるいは、ステップS110において、第1変換部12bは、インク量調整処理を施していない色変換LUT17を参照して画像データ50の色変換処理を行い、色変換処理により画像データの画素毎に得たCMYK値に対して、図4に破線の矢印で示すようにインク量調整処理を施してもよい。
いずれにしても、インク量調整処理を伴うステップS110の色変換処理によれば、インク量調整処理が適用されたCMYK値を各画素が有する画像データ51が生成される。
【0037】
ステップS120では、第2変換部12cは、第2色空間で表される入力画像データを第2色空間で表される出力画像データへ変換する「第2変換テーブル」を用いて、第2画像データにおける「第1領域」と第1領域とは記録装置による記録条件が異なる「第2領域」とのうちの第2領域の画像データを変換する。ステップS120は、第2変換工程に該当する。
【0038】
ここでは、図3の記録制御処理について、制御部11はプリンター20に、画像の一部領域である重複領域をOL方式で記録する部分OL記録を実行させることを前提として、説明を続ける。重複領域が第2領域に該当する。
ステップS120の詳細を説明する前に、部分OL記録の概要を説明する。
【0039】
図5は、部分OL記録を実行するためのノズル25と画素との割り当ての対応関係を示している。図5には、第2画像データである画像データ51の一部を示している。画像データ51を構成する各矩形が、画像データ51の各画素である。図5では、画像データ51と方向D1,D2との対応関係も併せて示している。符号RLは、複数の画素が第1方向D1に並ぶ1つの画素列、つまり1つのラスターラインを例示している。
【0040】
図5には、1色のインクを吐出する複数のノズル25からなるノズル列26を示している。図5では、ノズル列26は80個のノズル25が第2方向D2に並ぶことにより構成されている。図5では、参考までにノズル列26を構成する80個のノズル25について、下流から上流に向けて#1~#80のノズル番号を順に付与している。むろん、ノズル列26のノズル数が80個である構成は一例に過ぎない。上述したように記録ヘッド22は、複数色のインクの夫々に対応して複数のノズル列26を有する。図5で説明する1色のインクに対応するノズル列26と画像データ51との位置関係は、各ノズル列26に共通である。
【0041】
図5に示すノズル列26は全て同じノズル列26である。つまり図5では、記録ヘッド22のパス毎に第2方向D2におけるノズル列26と画像データ51との相対的な位置関係が変化することを示している。図5において、符号26と共に括弧書きで示す1,2,3…といった数字は、そのときのノズル列26が何回目のパスに対応しているかを表している。図5では、パスの回数が増える度にノズル列26が上流へ移動しているように見える。実際には、パスとパスとの間に搬送機構21が記録媒体30を下流へ送り量だけ搬送することにより、図5に示すようなパス毎のノズル列26と画像データ51との位置関係が記録媒体30上で記録結果として再現される。図5では、パス毎のノズル列26を第1方向D1にずらして記載しているが、これは図を見易くするためであり、パス毎のノズル列26の第1方向D1における位置の違いに意味は無い。
【0042】
図5の例では、パス間の搬送機構21による送り量は、ノズルピッチの72倍の距離である。これにより、ある回のパスにおけるノズル列26のうち上流のノズル番号#73~#80の各ノズル25で記録した各ラスターラインRLは、次の回のパスにおけるノズル列26のうち下流のノズル番号#1~#8の各ノズル25で記録することができる。つまり、ノズル番号#1~#8の各ノズル25およびノズル番号#73~#80の各ノズル25は、共通のラスターラインRLを記録することが可能な位置関係にあり、OL方式の記録を実現する。図5から解るように、例えば、ある回のパスでノズル番号#73のノズル25で記録するラスターラインRLは、次の回のパスでノズル番号#1のノズル25で記録することができる。
【0043】
図5において、画像データ51のうちハッチングを付した領域52,53,54は重複領域の具体例であり、このような重複領域に該当しない画像データ51内の領域が、通常領域である。通常領域が第1領域に該当する。重複領域を形成する各ラスターラインRLはOL方式で記録される。OL方式によれば、1色のインクによる1つのラスターラインの記録に注目した時、当該ラスターラインを当該1色のインクを吐出する複数のノズル25で分担して記録する。プリンター20がシリアル型プリンターであれば、重複領域内の1つのラスターラインRLは複数回のパスで記録され、通常領域内の1つのラスターラインRLは1回のパスで記録される。画像データ51内のハッチングは、重複領域52,53,54を通常領域と識別するための便宜上の記載であり、画像データ51の画素毎のインク量とは全く関係ない。
【0044】
第2変換部12cは、このような部分OL記録を実行するためのノズル25と画素との対応関係を予め認識しており、ステップS120では、この対応関係に基づいて画像データ51内で通常領域と重複領域とを特定する。図4の画像データ51内には、複数の細長い矩形により複数の重複領域52,53…を例示している。ステップS120では、第2変換部12cは、画像データ51における重複領域の画像データのみを、インク量変換LUT18を参照して変換する。インク量変換LUT18は予め記憶部16に記憶されており、第2変換テーブルに該当する。
【0045】
インク量変換LUT18は、記録結果における第1領域と第2領域との色ムラを解消するためのインク量の変換関係を規定したテーブルである。
上述したように、通常領域と重複領域とは記録に必要なパス回数が異なるため、記録結果において両領域間に濃度差が生じやすい。具体的には、重複領域の記録においては、記録のための先のパスと後のパスとの間に先のパスで記録したドットの乾燥時間が確保されたり、1回のパスで記録媒体に吐出されるドット数が通常領域と比べて少なかったりする。このような記録条件の相違により、通常領域と重複領域とが同じ内容の絵を記録媒体へ再現する場合であっても、記録結果において通常領域と重複領域とには濃度差が生じる。従って、例えば通常領域よりも重複領域の方が記録結果の色が濃くなる傾向があるのであれば、インク量変換LUT18は、入力したCMYK値を、その階調値を低減させる変換をした上で出力するテーブルである。
【0046】
記録結果において生じる通常領域と重複領域との濃度差の程度は、記録媒体30の種別や、気温や湿度といった環境に応じて、異なる。そのため、記憶部16には、記録媒体30の種別や環境に応じた、通常領域と重複領域との色ムラを解消するための複数のインク量変換LUT18が記憶されているとしてもよい。そして、ステップS120では、第2変換部12cは、プリンター20にセットされている記録媒体30の種別の情報や、不図示の温度・湿度センサーによる気温や湿度の情報に応じ、現在の状況に対して最適なインク量変換LUT18を記憶部16から選択して、使用するとしてもよい。
【0047】
第2変換部12cは、画像データ51における重複領域に含まれる各画素について、CMYK値をインク量変換LUT18に入力し、インク量変換LUT18による変換後の出力値としてのCMYK値を取得する。インク量変換LUT18を参照したCMYK値からCMYK値への変換においても、補間演算等を適宜用いて変換を行えばよい。
【0048】
ステップS130では、第2変換部12cは、第2画像データにおける第1領域の画像データと、ステップS120の変換処理による変換後の第2領域の画像データとを、マージして「第3画像データ」を生成する。つまり、画像データ51における通常領域の画像データと、インク量変換LUT18により変換した後の重複領域の画像データとを、結合して第3画像データを生成する。図4に示す画像データ55が第3画像データである。画像データ55内には、画像データ51内の重複領域52,53…をインク量変換LUT18により変換した後の重複領域52´,53´…を示している。画像データ55における、重複領域以外の領域のデータは、画像データ51のままである。
【0049】
ステップS140では、記録データ生成部12dは、ステップS130で生成された画像データ55にハーフトーン処理を施す。ハーフトーンをHTと略す。HT処理の具体的手法は特に問わず、ディザ法や誤差拡散法等を採用可能である。HT処理により、画像データは、画素毎にCMYKの各インクのドットの吐出(ドットオン)又は非吐出(ドットオフ)の情報を有する状態となる。HT処理後の画像データを、記録データと呼ぶ。むろん、記録データにおけるドットオンの情報は、例えば大ドット、中ドット、小ドットといった互いにサイズが異なる複数種類のドットのうちどれを吐出するかを規定した情報であってもよい。ステップS140は、第3画像データに基づいて記録データを生成する記録データ生成工程に該当する。
【0050】
ステップS150では、記録制御部12eは、記録データを上述の部分OL記録を実行するためのノズル25と画素との対応関係に従ってプリンター20に転送すべき順に並べ替えた上でプリンター20へ転送する、出力処理を実行する。この並べ替えの処理を、ラスタライズ処理とも呼ぶ。記録制御部12eは、ラスタライズ処理の中で、記録データを構成するラスターラインのうち重複領域を構成するラスターラインについては、これらを構成する各画素を複数回のパスに分けて割り当てる。重複領域を構成するラスターラインを記録するための複数回のパスのうち先行のパスを先行パスと呼び、後行のパスを後行パスと呼ぶ。ラスタライズ処理により、記録データが規定するインクのドットは、その画素位置および色に応じて、いずれのノズル25によって、どのパスのどのタイミングで吐出されるかが確定される。記録制御部12eは、ラスタライズ処理後の記録データや送り量の指示を、プリンター20へ送信する。プリンター20は画像処理装置10から送信された記録データや送り量の指示等に基づいて搬送機構21、記録ヘッド22およびキャリッジ23を駆動することにより、記録媒体30へ、記録データが表現する画像を記録する。
【0051】
図5を参照して、ステップS150の処理を補足説明する。なお、図5に示す画像データ51は、ステップS110による色変換処理後の画像データであるが、画素とノズル25との対応関係は、画像データ51もステップS140で画像データ55から生成した記録データも同じである。そのため、図5を参照するステップS150の補足説明においては、画像データ51を、便宜上、記録データとして扱う。
【0052】
図5において、ノズル番号#1~#8のノズル範囲を「下流OLノズル範囲」と呼び、ノズル番号#73~#80のノズル範囲を「上流OLノズル範囲」と呼ぶ。記録制御部12eは、記録データのうち、重複領域52を構成する各ラスターラインRLについて、1回目のパスのノズル列26における上流OLノズル範囲の各ノズル25と、2回目のパスのノズル列26における下流OLノズル範囲の各ノズル25とに画素を割り当てる。例えば、重複領域52内で最も下流のラスターラインRLについては、このラスターラインRLを構成する一部の画素を1回目のパスのノズル番号#73のノズル25に割り当て、このラスターラインRLを構成する残りの画素を2回目のパスのノズル番号#1のノズル25に割り当てる。ラスターラインを構成する各画素の先行パス、後行パスそれぞれへの割り当ての仕方は様々である。記録制御部12eは、例えば、重複領域に含まれる1つのラスターラインにおいて第1方向D1に並ぶ各画素を、このラスターラインを記録するための先行パスのノズル25と後行パスのノズル25とに1つずつ交互に割り当てればよい。
【0053】
同様に図5によれば、記録制御部12eは、重複領域53を構成する各ラスターラインRLについて、2回目のパスのノズル列26における上流OLノズル範囲の各ノズル25と、3回目のパスのノズル列26における下流OLノズル範囲の各ノズル25とに画素を割り当てる。同様に、記録制御部12eは、重複領域54を構成する各ラスターラインRLについて、3回目のパスのノズル列26における上流OLノズル範囲の各ノズル25と、4回目のパスのノズル列26における下流OLノズル範囲の各ノズル25とに画素を割り当てる。図5では、4回目以降のパスのノズル列26は紙面の都合上記載していない。
【0054】
記録制御部12eは、記録データのうち通常領域を構成する各ラスターラインRLについては、1つのラスターラインRLを1回のパスで記録するために、ラスターラインRL内の全画素を対応する1つのノズル25に割り当てる。図5によれば、記録制御部12eは、例えば、重複領域52に対して下流の位置で隣接するラスターラインRLについては、このラスターラインRLを構成する全画素を1回目のパスのノズル番号#72のノズル25に割り当てる。また、例えば、重複領域53に対して下流の位置で隣接するラスターラインRLについては、このラスターラインRLを構成する全画素を2回目のパスのノズル番号#72のノズル25に割り当てる。このような割り当ての処理を含むステップS150の結果、記録データのうち、重複領域の各ラスターラインRLがOL方式で記録媒体30に記録され、通常領域の各ラスターラインRLは夫々が1回のパスで記録媒体30に記録される。
【0055】
3.まとめ:
このように本実施形態によれば、複数色のインクを吐出する記録ヘッド22を用いて記録媒体30へ記録可能な記録装置が画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理方法を開示する。画像処理方法は、第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換工程と、前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換工程と、前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成工程と、を有する。そして、画像処理方法によれば、前記インク量を調整する場合に、前記第2変換工程では調整を行わず前記第1変換工程で調整を行う。
【0056】
前記構成によれば、第1変換工程において、前記画像に対する必要なインク量調整処理を伴う第1画像データから第2画像データへの色変換処理が、第1領域や第2領域の別に関係無く実行される。その上で、第2変換工程により、第2画像データの第2領域に関する、第2変換テーブルを用いた変換処理が行われる。そのため、画像に対する必要なインク量調整が反映され、かつ第1領域と第2領域との色ムラも適切に抑制された記録結果を得ることが可能となる。つまり本実施形態によれば、各領域の特性を考慮した、第1領域の色変換処理に適した色変換LUTと第2領域の色変換処理に適した色変換LUTとの夫々にインク量調整を施したとき、各LUTによる出力値同士の比率やバランスが崩れ、却って両領域間の色ムラが抑えられなくなる、という不都合を解消する。
【0057】
また、本実施形態によれば、前記インク量の調整は、色相を変更するための色調整、濃淡を調整するための濃度調整、および、記録ヘッド22におけるインクの色毎の吐出ばらつきに応じたインクの色毎の調整の少なくとも1つである。
前記構成によれば、ユーザーの要望や記録ヘッド22に固有の特性に応じたインク量調整が反映され、かつ第1領域と第2領域との色ムラも適切に抑制された記録結果を得ることが可能となる。
【0058】
本実施形態においては、第2変換テーブルが変換可能な入力画像データの色域は、第1変換テーブルによる変換後の色域よりも広い。
第2変換テーブルであるインク量変換LUT18は、第2色空間であるCMYK色空間における複数の入力格子点である複数のCMYK値の夫々に対して、出力値としてのCMYK値を対応付けたテーブルである。従って、第2変換テーブルが変換可能な入力画像データの色域とは、インク量変換LUT18の複数の入力格子点である複数のCMYK値による色再現範囲(以下、第2色再現範囲)である。一方、第1変換テーブルである色変換LUT17は、第1色空間であるRGB色空間における複数の入力格子点の夫々に対して、出力値としてのCMYK値を対応付けたテーブルである。従って、第1変換テーブルによる変換後の色域とは、色変換LUT17の複数の入力格子点に対応付けられた複数のCMYK値による色再現範囲(以下、第1色再現範囲)である。また、第1色再現範囲は、インク量調整処理による調整後の色変換LUT17による色再現範囲である。色再現範囲は、例えば、機器非依存色空間において定義することができる。
本実施形態では、第1色再現範囲<第2色再現範囲、としている。このような構成により、ステップS110の色変換処理後の第2画像データにおける第2領域の画像データを、確実に第2変換テーブルにより変換することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、記録装置が記録データに基づいて記録ヘッド22により複数の部分画像を記録することにより前記画像を記録媒体30に再現する場合に、第2領域は、前記画像のうち部分画像同士が重なる重複領域に該当し、第1領域は、前記画像のうち重複領域を除いた領域に該当する、としてもよい。
これまでの説明によれば、部分画像とは、記録ヘッド22の複数回のパスによって記録される画像のうちの、1回のパスによって記録される画像領域である。例えば、図5では、重複領域52と、重複領域53と、これら重複領域52,53で挟まれた通常領域と、からなる画像領域が1つの部分画像である。
このような構成によれば、通常領域と重複領域とからなる画像に対する必要なインク量調整が反映され、かつ通常領域と重複領域との色ムラも適切に抑制された記録結果を得ることが可能となる。
【0060】
本実施形態は、画像処理方法以外にも装置やプログラムといった各種カテゴリーの発明を開示する。
複数色のインクを吐出する記録ヘッド22を用いて記録媒体30へ記録可能な記録装置が画像の記録を実行するための記録データを生成する画像処理装置10は、第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部12bと、前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換部12cと、前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部12dと、を有し、前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部12cは調整を行わず前記第1変換部12bが調整を行う。
【0061】
また、記録データに基づいて、複数色のインクを吐出する記録ヘッド22を駆動することにより、記録媒体30へ画像を記録する記録装置40は、第1色空間と前記複数色のインク量を示す第2色空間との変換関係を規定した第1変換テーブルを用いて、前記画像を第1色空間により表現する第1画像データを、前記第2色空間で表される第2画像データへ変換する第1変換部12bと、前記第2色空間で表される入力画像データを前記第2色空間で表される出力画像データへ変換する第2変換テーブルを用いて、前記第2画像データにおける第1領域とは前記記録装置による記録条件が異なる第2領域の画像データを変換する第2変換部12cと、前記第2画像データにおける前記第1領域の画像データと、前記第2変換テーブルによる変換後の前記第2領域の画像データとを有する第3画像データに基づいて前記記録データを生成する記録データ生成部12dと、を有し、前記インク量を調整する場合に、前記第2変換部12cは調整を行わず前記第1変換部12bが調整を行う。
【0062】
4.変形例:
本実施形態が想定する、記録条件が異なる第1領域と第2領域との組み合わせは、部分OL記録によって記録される画像を構成する通常領域と重複領域との組み合わせに限定されない。
【0063】
第1変形例:
プリンター20は、第1方向D1への記録ヘッド22の移動と、第1方向D1の逆方向への記録ヘッド22の移動との夫々で記録ヘッド22にインクを吐出させ、記録媒体30を第1方向D1と交差する第2方向D2へ搬送する。このような構成において、第1領域は、記録対象としての画像のうち第1方向D1への記録ヘッド22の移動により記録が開始される領域であり、第2領域は、前記画像のうち前記逆方向への記録ヘッド22の移動により記録が開始される領域である、としてもよい。
【0064】
図6は、第1変形例における第1領域と第2領域とを説明するための図である。図6では、記録ヘッド22のパス毎に第2方向D2において記録ヘッド22と画像データ56との相対的な位置関係が変化する様子を示している。図6は概ね、図5に示したノズル列26と画像データ51との第2方向D2における相対的な位置変化と同様に理解すればよい。ただし図6は、図5と比べてかなり簡略化しており、ノズル列26を有する記録ヘッド22を単なる矩形で表している。画像データ56は、ステップS110により生成された第2画像データの一種と解してよい。
【0065】
図6において、符号D1と共に右を向く矢印を示した記録ヘッド22は、第1方向D1への移動、つまり往路移動を行う記録ヘッド22である。また、符号-D1と共に左を向く矢印を示した記録ヘッド22は、第1方向D1の逆方向への移動、つまり復路移動を行う記録ヘッド22である。図6において、符号22と共に括弧書きで示した“n”や“n+1”は、そのときの記録ヘッド22が、画像データ56を記録するための何回目のパスに対応しているかを表している。
【0066】
図5は部分OL記録の具体例を説明する図であるが、図6は、フルOL記録を説明する図である。フルOL記録とは、1ページ分の画像を形成する全てのラスターラインをOL方式で記録することを指す。具体的には、図6によれば、記録ヘッド22のパスとパスとの間の送り量は、第2方向D2におけるノズル列26の長さの約半分の距離とされている。また、画像データ56内で区切られた第1方向D1に長尺な各領域をバンド領域と呼び、1つのバンド領域は、記録ヘッド22の1回の往路移動によるパスと、記録ヘッド22の1回の復路移動によるパスとにより記録される。
【0067】
例えば、画像データ56のうちのバンド領域57は、n-1回目のパスである記録ヘッド22の復路移動と、n回目のパスである記録ヘッド22の往路移動とによってOL方式で記録される。なお、図6ではn-1回目のパスに対応する位置の記録ヘッド22は記載していない。バンド領域57に対して上流で隣接するバンド領域は、n回目のパスである記録ヘッド22の往路移動と、n+1回目のパスである記録ヘッド22の復路移動とによって記録される。同様に、バンド領域58は、n+1回目のパスである記録ヘッド22の復路移動と、n+2回目のパスである記録ヘッド22の往路移動とによって記録される。バンド領域58に対して上流で隣接するバンド領域は、n+2回目のパスである記録ヘッド22の往路移動と、n+3回目のパスである記録ヘッド22の復路移動とによって記録される。バンド領域59は、n+3回目のパスである記録ヘッド22の復路移動と、n+4回目のパスである記録ヘッド22の往路移動とによって記録される。図6では、n+4回目のパスに対応する位置の記録ヘッド22は記載していない。
【0068】
つまり、図6によれば、画像データ56内でハッチングを付したバンド領域57,58,59が、記録ヘッド22の復路移動により記録が開始される第2領域であり、画像データ56内のバンド領域57,58,59以外のバンド領域が、記録ヘッド22の往路移動により記録が開始される第1領域である。記録ヘッド22の往路移動により記録が開始される第1領域と、記録ヘッド22の復路移動により記録が開始される第2領域とには、記録結果において濃度差が生じやすい。濃度差が生じる1つの理由は、記録媒体30におけるインクの重なり順の違いである。図2のノズル列26の並びの例を参照すると、往路移動→復路移動の順番で記録される第1領域は、K,Y,M,C,C,M,Y,Kという順でインクが吐出されて記録媒体30に記録される。一方、復路移動→往路移動の順番で記録される第2領域は、C,M,Y,K,K,Y,M,Cという順でインクが吐出されて記録媒体30に記録される。このようにインクの重なり順が異なると、第1領域と第2領域との記録結果には、濃度差つまり色ムラが発生する。インクの重なり順の違い以外にも、往路移動と復路移動とでは、例えば、記録ヘッド22内のインク流路に発生する圧力が違ったり、キャリッジ23と記録媒体30との間に発生する気流が異なったりして、記録結果において濃度差が発生し易い。
【0069】
このような状況を鑑みて、第1変形例では、画像のうち記録ヘッド22の往路移動により記録が開始される領域を第1領域とし、記録ヘッド22の復路移動により記録が開始される領域を第2領域として扱い、図3の記録制御処理を実行する。この結果、画像に対する必要なインク量調整が反映され、かつ第1領域と第2領域との色ムラも適切に抑制された記録結果を得ることが可能となる。
なお、記録ヘッド22の往路移動により記録が開始される領域、記録ヘッド22の復路移動により記録が開始される領域とは、それぞれ1回のパスだけで記録される領域であってもよいし、それぞれ3回以上のパスで記録される領域であってもよい。
【0070】
第2変形例:
プリンター20が、第1方向D1への記録ヘッド22の移動に伴うインクの吐出と、第1方向D1の逆方向への記録ヘッド22の移動に伴うインクの吐出とを重ねて、画像内の単位領域の記録を行う場合に、単位領域内で、第1領域と第2領域とは、第1方向D1における位置が異なる、としてもよい。
【0071】
図7は、第2変形例における第1領域と第2領域とを説明するための図である。図7は、図6とほぼ同じ図であり、第1領域および第2領域だけが、図6と異なる。図7では、各バンド領域におけるハッチングを付した領域が第2領域であり、それ以外が第1領域である。第2変形例の単位領域とは、バンド領域のことである。バンド領域内で、第1領域と第2領域とは、第1方向D1における位置が異なる。第2変形例において第2領域は、先行パスと後行パスとの時間差がある基準よりも短い領域である。例えば、符号60で示す第2領域60は、n+1回目のパスである記録ヘッド22の復路移動によって記録された後、わずかな時間を置いて、n+2回目のパスである記録ヘッド22の往路移動によって記録される。先行パスと後行パスとの時間差が短いと、先行パスで吐出したドットの乾燥時間が殆ど確保されず、先行パスと後行パスとの時間差が長い領域と比較したとき、記録結果において濃度差が生じる。
【0072】
このような状況を鑑みて、第2変形例では、往路移動のパスと復路移動のパスとでOL方式で記録される単位領域内で、第1領域と第2領域とは、第1方向D1における位置が異なるとし、図3の記録制御処理を実行する。この結果、画像に対する必要なインク量調整が反映され、かつ第1領域と第2領域との色ムラも適切に抑制された記録結果を得ることが可能となる。
【0073】
なお、第2変形例では、各単位領域において、先行パスと後行パスとの時間差がある基準よりも長い領域を第2領域としてもよい。さらに、第2変形例では、各単位領域において、先行パスと後行パスとの時間差が第1時間よりも短い領域を第2領域とし、先行パスと後行パスとの時間差が第2時間よりも長い領域を第3領域とし、先行パスと後行パスとの時間差が第1時間から第2時間に収まる領域を第1領域としてもよい。なお、第1時間<第2時間である。このような構成とすれば、ステップS120では、第2領域の画像データ、第3領域の画像データの夫々を、記録結果における第1領域との色ムラを解消するための別々の変換テーブルで変換し、ステップS130で、第1領域と、変換後の第2領域と、変換後の第3領域とをマージすることができる。
【0074】
本実施形態で使用するプリンター20は、シリアル型プリンターではなく、以下に述べるような、いわゆるラインプリンターであってもよい。
図8は、ラインプリンターであるプリンター20における記録ヘッド80と記録媒体30との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。ラインプリンターであるプリンター20は、記録ヘッド22の替わりに記録ヘッド80を有し、かつ、キャリッジ23を有さない。
【0075】
方向D1,D2,D3の関係性は、これまでに説明した通りである。ただし、プリンター20がラインプリンターである場合、第2方向D2を、搬送方向ではなく、主走査方向や記録媒体30の幅方向と呼び、第1方向D1を、主走査方向ではなく、搬送方向と呼ぶ。搬送機構21は、記録媒体30を第1方向D1へ搬送する。記録ヘッド80は、同じ構成のノズルチップ81を第2方向D2に沿って複数連結することにより、記録媒体30の幅をカバー可能な長さの長尺な構成となり、記録媒体30の搬送経路の所定位置に配設される。記録ヘッド80を構成する個々のノズルチップ81は、図2に示した記録ヘッド22と同様の構成と解してよい。記録ヘッド80は、第1方向D1へ搬送される記録媒体30へ各ノズル25からドットを吐出する。
【0076】
つまり、ノズル列26C,26M,26Y,26Kを有するノズルチップ81が第2方向D2に複数連結することにより、記録ヘッド80の全体として、記録媒体30の幅をカバー可能な長さ且つCMYKインク毎のノズル列を有する構成となる。図8の構成によれば、ラスターラインは、搬送方向に延在するラインである。連結し合うノズルチップ81同士は、ノズル列方向D3において互いのノズル列の一部が重複するように連結されている。このようにノズルチップ81同士のノズル列の一部が重複するノズル範囲82のノズル25を用いて、OL方式の記録が実行される。つまり、画像のうちノズル範囲82のノズル25で記録されるラスターラインからなる領域が重複領域であり、画像のうちノズル範囲82以外のノズル25で記録されるラスターラインからなる領域が通常領域である。また、図8の構成においては、1つのノズルチップ81により記録される画像領域が、部分画像に該当する。
【符号の説明】
【0077】
10…画像処理装置、11…制御部、12…プログラム、13…表示部、14…操作受付部、15…通信IF、16…記憶部、17…色変換LUT、18…インク量変換LUT、20…プリンター、21…搬送機構、22…記録ヘッド、23…キャリッジ、25…ノズル、26,26C,26M,26Y,26K…ノズル列、30…記録媒体、40…システム・記録装置、50,51,55,56…画像データ、52,53,54…重複領域、80…記録ヘッド、81…ノズルチップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8