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特許7468087作業機械の旋回フレームおよび作業機械の旋回フレームの組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】作業機械の旋回フレームおよび作業機械の旋回フレームの組立方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20240409BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/36 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020067216
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021160918
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】本山 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小矢畑 章
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-195542(JP,A)
【文献】特開2002-255480(JP,A)
【文献】特開2018-076130(JP,A)
【文献】特開2014-043319(JP,A)
【文献】実開昭57-181789(JP,U)
【文献】特開2016-222373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の下部本体に上下方向に延びる旋回中心軸周りに旋回可能に支持される旋回フレームであって、
前記旋回フレームの前側部分を構成し、前記下部本体に旋回可能に支持される前フレームと、
前記旋回フレームの後側部分を構成し、前記前フレームに着脱可能に連結される後フレームと、
を備え、
前記前フレームは、左右方向に延びる位置決めピンをそれぞれ含み前記前フレームの後端部に左右方向に互いに間隔をおいて配置される左右一対の前連結部を有し、当該左右一対の前連結部のうち前記位置決めピンよりも下方には前記前フレームと前記後フレームとを互いに連結する連結ピンが挿通されることを許容する前側ピン孔が左右方向に沿ってそれぞれ形成され、左右方向から見て前記前側ピン孔と前記位置決めピンとの距離が所定の基準距離に設定されており、
前記後フレームは、左右方向において前記左右一対の前連結部にそれぞれ対向することが可能なように前記後フレームの前端部に左右方向に互いに間隔をおいて配置される左右一対の後連結部を有し、当該左右一対の後連結部は、前記位置決めピンが上下方向に沿って通過することを許容する開口部と当該開口部の上方において前記開口部に連通するピン嵌合部であって前記後フレームの前記位置決めピン周りの回動を可能とするように前記位置決めピンの外周面と嵌合することが可能なピン嵌合部とをそれぞれ画定する内周面をそれぞれ有するとともに、前記左右一対の後連結部の前記ピン嵌合部よりも下方には、前記連結ピンが挿通されることを許容する後側ピン孔が左右方向に沿ってそれぞれ形成され、左右方向から見て前記ピン嵌合部と前記後側ピン孔との距離が前記基準距離に設定されており、
前記前フレームの前記左右一対の前連結部は、前記後フレームが前記位置決めピン周りに下方向に回動することを阻止することが可能な回動阻止部をそれぞれ有し、
前記後フレームの前記左右一対の後連結部は、左右方向と直交し前記回動阻止部を通過する平面上配置され、前記後フレームの回動に伴って前記前側ピン孔と前記後側ピン孔とが左右方向において互いに合致する位置で前記後フレームの更なる回動を阻止するように前記回動阻止部に当接する当接部と、前記ピン嵌合部の下方かつ前記後側ピン孔の上方において、前記ピン嵌合部を画定する前記内周面の後側端部に繋がるように、前記ピン嵌合部が下方に開口した前記後フレームの姿勢において後方に向かって先上がりに傾斜し前記位置決めピンと当接可能な傾斜面と、をそれぞれ有し、
前記内周面は、前記傾斜面の上下方向の全体に亘って前記傾斜面が前方に開放されるように、前記傾斜面の上方かつ前記後側端部の前方に配置される前側端部を有する、作業機械の旋回フレーム。
【請求項2】
前記当接部は、前記後側ピン孔の後方において、左右方向から見て前記ピン嵌合部を中心として前記基準距離を半径とする円周上に配置され、
前記回動阻止部は、前記前側ピン孔の後方において、左右方向から見て前記位置決めピンを中心として前記基準距離を半径とする円周上に配置されている、請求項に記載の作業機械の旋回フレーム。
【請求項3】
前記当接部は、前記後側ピン孔の後方かつ下方に配置され、左右方向から見て前記後側ピン孔の中心に対して径方向外向きに凸状の曲面からなる凹部であり、
前記回動阻止部は、前記前側ピン孔の後方かつ下方に配置され、前記後フレームの前記位置決めピン周りの下方向への回動に伴って前記当接部に面接触するように、左右方向から見て前記前側ピン孔の中心に対して径方向外向きに凸状の曲面からなる凸部である、請求項に記載の作業機械の旋回フレーム。
【請求項4】
作業機械の下部本体に上下方向に延びる旋回中心軸周りに旋回可能に支持される旋回フレームの組立方法であって、
前記旋回フレームの前側部分を構成する前フレームを、前記下部本体に旋回可能に装着する一方、前記旋回フレームの後側部分を構成し前記前フレームに着脱可能に連結されることが可能な後フレームを準備する準備工程と、
前記後フレームの前端部に配置される左右一対の後連結部が、前記前フレームの後端部に配置される左右一対の前連結部に前後方向においてそれぞれ対向するように、前記後フレームを所定の吊り上げ装置によって吊り上げる吊り上げ工程と、
前記吊り上げ装置によって前記後フレームを空中で移動させ、前記左右一対の後連結部にそれぞれ形成されたピン嵌合部を、前記左右一対の前連結部にそれぞれ左右方向に延びるように設けられた位置決めピンにそれぞれ上方から嵌合させる位置決めピン嵌合工程と、
前記後フレームを前記位置決めピン周りに下方に回動させ、前記前フレームに設けられた回動阻止部に前記後フレームの当接部を当接させることで、前記前連結部において前記位置決めピンよりも下方に配置された前側ピン孔と、前記後連結部において前記ピン嵌合部よりも下方に配置された後側ピン孔とを左右方向において互いに合致させるピン孔合致工程と、
左側の前記前連結部および前記後連結部ならびに右側の前記前連結部および前記後連結部のそれぞれにおいて、前記前側ピン孔および前記後側ピン孔に連結ピンを順に挿通し、前記前フレームと前記後フレームとを左右両側で互いに連結する連結工程と、
を備え、
前記位置決めピン嵌合工程は、前記前フレームに近づくように前記後フレームを前後方向に沿って移動させることにより、前記左右一対の後連結部のうちの少なくとも一方の後連結部において前記ピン嵌合部の下方かつ前記後側ピン孔の上方で前記ピン嵌合部に繋がるように後方に向かって先上がりに傾斜し上下方向の全体に亘って前方に開放される傾斜面を、前記位置決めピンに当接させ、前記傾斜面に沿って前記位置決めピンを前記ピン嵌合部まで案内して、前記ピン嵌合部を前記位置決めピンに上方から嵌合させることを含む、作業機械の旋回フレームの組立方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の旋回フレームおよび作業機械の旋回フレームの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械として、下部走行体と、上部旋回体と、ブームなどの起伏部材と、を備えた移動式クレーンが知られている。上部旋回体は上下方向に延びる旋回中心軸周りに旋回可能なように下部走行体に支持される。また、起伏部材は、上部旋回体の前部に起伏可能に取り付けられる。このような移動式クレーンの各部材は重量物であるため、必要に応じて分解され、輸送車両によってそれぞれ輸送される。
【0003】
特許文献1には、移動式クレーンの上部旋回体が前後に分離可能とされる技術が開示されている。当該技術では、上部旋回体が前側ブロックと後側ブロックとを有する。後側ブロックの前端部には左右方向に延びる位置決めピンが突設されており、前側ブロックの後端部には前記位置決めピンを受け入れ可能な溝部が形成されている。後側ブロックが補助クレーンによって吊り上げられ位置決めピンが溝部に挿通されると、後側ブロックの前端部の上側部分が、前側ブロックの後端部の上側部分に支持される。一方、後側ブロックの前端部の下側部分および前側ブロックの後端部の下側部分にはピン孔がそれぞれ形成されており、各ピン孔に連結ピンが挿入されることで、前側ブロックおよび後側ブロックが互いに連結される。
【0004】
このような技術によれば、後側ブロックが前側ブロックから取り外された状態で個別に輸送されることが可能である一方、上部旋回体の前側ブロックと下部走行体とが互いに連結された状態で輸送可能であるため、上部旋回体と下部走行体とを旋回可能に連結する旋回ベアリングの周辺を分解する必要がなく、移動式クレーンの輸送作業工数が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-195542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、後側ブロックの前端部の上側部分が前側ブロックの後端部の上側部分に支持された際に、後側ブロックおよび前側ブロックにそれぞれ形成されたピン孔同士が合致しておらず、連結ピンの先端に形成されたテーパ部分を各ピン孔に順に強く押し込み後側ブロックを位置決めピン周りに回動させながら連結ピンを各ピン孔に挿入する必要があるため、前側ブロックと後側ブロックとを連結する連結作業に大きな労力と時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、少なくとも前後2つの部材に分離可能とされ当該2つの部材の連結作業を容易に行うことが可能な作業機械の旋回フレームおよび作業機械の旋回フレームの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る作業機械の旋回フレームは、作業機械の下部本体に上下方向に延びる旋回中心軸周りに旋回可能に支持される。当該旋回フレームは、前記旋回フレームの前側部分を構成し、前記下部本体に旋回可能に支持される前フレームと、前記旋回フレームの後側部分を構成し、前記前フレームに着脱可能に連結される後フレームと、を備える。前記前フレームは、左右方向に延びる位置決めピンをそれぞれ含み前記前フレームの後端部に左右方向に互いに間隔をおいて配置される左右一対の前連結部を有し、当該左右一対の前連結部のうち前記位置決めピンよりも下方には前記前フレームと前記後フレームとを互いに連結する連結ピンが挿通されることを許容する前側ピン孔が左右方向に沿ってそれぞれ形成され、左右方向から見て前記前側ピン孔と前記位置決めピンとの距離が所定の基準距離に設定されており、前記後フレームは、左右方向において前記左右一対の前連結部にそれぞれ対向することが可能なように前記後フレームの前端部に左右方向に互いに間隔をおいて配置される左右一対の後連結部を有し、当該左右一対の後連結部は、前記位置決めピンが上下方向に沿って通過することを許容する開口部と当該開口部の上方において前記開口部に連通するピン嵌合部であって前記後フレームの前記位置決めピン周りの回動を可能とするように前記位置決めピンの外周面と嵌合することが可能なピン嵌合部とをそれぞれ画定する内周面をそれぞれ有するとともに、前記左右一対の後連結部の前記ピン嵌合部よりも下方には、前記連結ピンが挿通されることを許容する後側ピン孔が左右方向に沿ってそれぞれ形成され、左右方向から見て前記ピン嵌合部と前記後側ピン孔との距離が前記基準距離に設定されており、前記前フレームの前記左右一対の前連結部は、前記後フレームが前記位置決めピン周りに下方向に回動することを阻止することが可能な回動阻止部をそれぞれ有し、前記後フレームの前記左右一対の後連結部は、左右方向と直交し前記回動阻止部を通過する平面上配置され、前記後フレームの回動に伴って前記前側ピン孔と前記後側ピン孔とが左右方向において互いに合致する位置で前記後フレームの更なる回動を阻止するように前記回動阻止部に当接する当接部をそれぞれ有する。
【0009】
本構成によれば、後フレームの後連結部に配置されたピン嵌合部を前フレームの前連結部に配置された位置決めピンに嵌合させ、後フレームを下方向に回動させると、後連結部の当接部が前フレームの回動阻止部に当接し、前ピン孔と後ピン孔とが互いに合致する位置で下部本体に支持された前フレームによって後フレームの更なる回動を阻止することができる。このため、両ピン孔に連結ピンを容易に挿入することができるため、前側ピン孔と後側ピン孔とが合致していない状態で連結ピンを両ピン孔に強く押し込む場合と比較して、連結ピンの挿入作業に大きな労力および時間を必要とすることがなく、前フレームおよび後フレームの連結作業を容易に行うことができる。また、前側ピン孔と位置決めピンとの距離、および、後側ピン孔とピン嵌合部との距離が、互いに同じ基準距離に設定されているため、前側ピン孔および後側ピン孔の回動方向における相対位置を当接部と回動阻止部との当接によって調整するだけで、両ピン孔同士を精度よく合致させることができる。
【0010】
上記の構成において、前記左右一対の後連結部の各々は、前記ピン嵌合部の下方かつ前記後側ピン孔の上方において、前記ピン嵌合部を画定する前記内周面に繋がるように、前記ピン嵌合部が下方に開口した前記後フレームの姿勢において後方に向かって先上がりに傾斜し前記位置決めピンと当接可能な傾斜面を更に有することが望ましい。
【0011】
本構成によれば、後フレームの後連結部に配置された傾斜面を前フレームの位置決めピンに当接させ、当該傾斜面に沿って位置決めピンを案内することで、位置決めピンをピン嵌合部に容易に嵌合させることができる。
【0012】
上記の構成において、前記当接部は、前記後側ピン孔の後方において、左右方向から見て前記ピン嵌合部を中心として前記基準距離を半径とする円周上に配置され、前記回動阻止部は、前記前側ピン孔の後方において、左右方向から見て前記位置決めピンを中心として前記基準距離を半径とする円周上に配置されていることが望ましい。
【0013】
本構成によれば、当接部および回動阻止部が、後フレームの位置決めピン周りの回動時の後側ピン孔の回動軌跡上に配置されているため、回動阻止部が後フレームの回転モーメントを接線方向に沿って安定して受け止めつつ、その前方に位置する後側ピン孔と前側ピン孔との位置合わせを精度よく行うことができる。
【0014】
上記の構成において、前記当接部は、前記後側ピン孔の後方かつ下方に配置され、左右方向から見て前記後側ピン孔の中心に対して径方向外向きに凸状の曲面からなる凹部であり、前記回動阻止部は、前記前側ピン孔の後方かつ下方に配置され、前記後フレームの前記位置決めピン周りの下方向への回動に伴って前記当接部に面接触するように、左右方向から見て前記前側ピン孔の中心に対して径方向外向きに凸状の曲面からなる凸部であることが望ましい。
【0015】
本構成によれば、後フレームが位置決めピン周りに回動すると、当接部が回動阻止部に面接触するため、両者の当接に伴う衝撃を低減することができる。また、面接触によって当接部に加わる荷重が分散されるため、当接部の破損や変形が抑止される。更に、当接部と回動阻止部との面接触によって両者の間に摩擦力が生じるため、回動阻止部が当接部の動きをより拘束することができる。
【0016】
本発明の他の局面に係る作業機械の旋回フレームの組立方法は、作業機械の下部本体に上下方向に延びる旋回中心軸周りに旋回可能に支持される旋回フレームの組立方法である。当該組立方法は、前記旋回フレームの前側部分を構成する前フレームを、前記下部本体に旋回可能に装着する一方、前記旋回フレームの後側部分を構成し前記前フレームに着脱可能に連結されることが可能な後フレームを準備する準備工程と、前記後フレームの前端部に配置される左右一対の後連結部が、前記前フレームの後端部に配置される左右一対の前連結部に前後方向においてそれぞれ対向するように、前記後フレームを所定の吊り上げ装置によって吊り上げる吊り上げ工程と、前記吊り上げ装置によって前記後フレームを空中で移動させ、前記左右一対の後連結部にそれぞれ形成されたピン嵌合部を、前記左右一対の前連結部にそれぞれ左右方向に延びるように設けられた位置決めピンにそれぞれ上方から嵌合させる位置決めピン嵌合工程と、前記後フレームを前記位置決めピン周りに下方に回動させ、前記前フレームに設けられた回動阻止部に前記後フレームの当接部を当接させることで、前記前連結部において前記位置決めピンよりも下方に配置された前側ピン孔と、前記後連結部において前記ピン嵌合部よりも下方に配置された後側ピン孔とを左右方向において互いに合致させるピン孔合致工程と、左側の前記前連結部および前記後連結部ならびに右側の前記前連結部および前記後連結部のそれぞれにおいて、前記前側ピン孔および前記後側ピン孔に連結ピンを順に挿通し、前記前フレームと前記後フレームとを左右両側で互いに連結する連結工程と、を備える。
【0017】
本方法によれば、吊り上げ装置によって後フレームを吊り上げた後、後フレームの後連結部のピン嵌合部を前フレームの前連結部の位置決めピンに嵌合させると、後フレームの自重を利用して当該後フレームを回動させ、当接部と回動阻止部との当接によって前側ピン孔と後側ピン孔とを合致させることができる。このため、後フレームと前フレームとの連結作業時に、両ピン孔の位置合わせに要する作業時間を短縮することができるとともに、連結ピンの挿入作業を容易に行うことができる。
【0018】
上記の方法において、前記位置決めピン嵌合工程は、前記左右一対の後連結部のうちの少なくとも一方の後連結部において前記ピン嵌合部の下方かつ前記後側ピン孔の上方で前記ピン嵌合部に繋がるように後方に向かって先上がりに傾斜する傾斜面を前記位置決めピンに当接させ、前記傾斜面に沿って前記位置決めピンを前記ピン嵌合部まで案内して、前記ピン嵌合部を前記位置決めピンに上方から嵌合させることを含むことが望ましい。
【0019】
本方法によれば、後フレームの後連結部に配置された傾斜面を位置決めピンに当接させ、当該傾斜面に沿って位置決めピンを案内することで、位置決めピンをピン嵌合部に容易に嵌合させることができるため、両ピン孔の位置合わせに要する作業時間を更に短縮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも前後2つの部材に分離可能とされ当該2つの部材の連結作業を容易に行うことが可能な作業機械の旋回フレームおよび作業機械の旋回フレームの組立方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る作業機械の下部フレームおよび旋回フレームの側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回フレームの分解側面図である。
図4図3の旋回フレームの一部を拡大した分解側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回フレームの分解平面図である。
図6図5の旋回フレームの一部を拡大した分解平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回フレームの組立手順を示すための側面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回フレームの組立手順を示すための側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回フレームの組立手順を示すための側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回フレームの組立手順を示すための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10(作業機械)の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本発明に係るクレーン10の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、クレーン10の移動方向や使用態様などを限定するものではない。
【0023】
クレーン10は、クレーン本体に相当する上部旋回体12と、この上部旋回体12を旋回可能に支持する下部走行体14と、ブーム16及びジブ18を含む起伏部材と、ブーム起伏用部材であるマスト20と、を備える。また、上部旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト13が積載されている。また、上部旋回体12の前端部には、キャブ15が備えられている。キャブ15は、クレーン10の運転席に相当する。
【0024】
図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、基端側部材16Aと、一または複数(図例では2個)の中間部材16B,16Cと、先端側部材16Dとから構成される。先端側部材16Dの先端部に、後述のようにジブ18を回動させるためのリアストラット21及びフロントストラット22が回動可能に連結される。ブーム16は、下端部に備えられたブームフットピン16Sを支点として上部旋回体12に回動可能に軸支される。
【0025】
ただし、本発明ではブームの具体的な構造は限定されない。例えば、当該ブームは、中間部材がないものでもよく、また、上記とは中間部材の数が異なるものでもよい。更に、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。
【0026】
ジブ18も、その具体的な構造は限定されないが、図例ではラチス型の構造を有する。そして、このジブ18の基端部は、ブーム16の先端側部材16Dの先端部に回動可能に連結(軸支)されており、ジブ18の回動中心軸は、上部旋回体12に対するブーム16の回動中心軸(ブームフットピン16S)と平行な横軸になっている。
【0027】
マスト20は、基端及び回動端を有し、その基端が上部旋回体12に回動可能に連結される。マスト20の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつ当該ブーム16の回動軸のすぐ後方に位置している。すなわち、このマスト20はブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。一方、このマスト20の回動端は左右一対のブーム用ガイライン24を介してブーム16の先端に連結される。この連結は、マスト20の回動とブーム16の回動とを連携させる。
【0028】
ブーム16の基端側部材16Aには左右一対のバックストップ23が設けられる。これらのバックストップ23は、ブーム16が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で上部旋回体12上の左右両側部に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
【0029】
リアストラット21およびフロントストラット22は、ブーム16の先端に回動可能に軸支される。リアストラット21は、先端側部材16Dの先端からブーム起立側(図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。この姿勢を保持する手段として、リアストラット21とブーム16との間に左右一対のバックストップ25及び左右一対のガイリンク26が介在する。バックストップ25は、先端側部材16Dとリアストラット21の中間部位との間に介在し、リアストラット21を下から支える。ガイリンク26はリアストラット21の先端部とブーム16の基端側部材16Aとを接続するように張設され、その張力によってリアストラット21の位置を規制する。なお、他の実施形態において、リアストラット21およびフロントストラット22は、ジブ18の基端部に回動可能に軸支されてもよい。また、リアストラット21がブーム16の先端部に回動可能に軸支され、フロントストラット22がジブ18の基端部に回動可能に軸支されてもよい。
【0030】
フロントストラット22は、ジブ18と連動して(一体的に)回動するようにこのジブ18に連結される。詳しくは、このフロントストラット22の先端部とジブ18の先端部とを結ぶように左右一対のジブ用ガイライン28が張設される。従って、このフロントストラット22の回動駆動によってジブ18も回動駆動される。なお、前述のリアストラット21は、図1に示すようにフロントストラット22の後側に配置され、フロントストラット22との間で略二等辺三角形形状を形成する。
【0031】
クレーン10には、各種ウインチが搭載される。具体的には、ブーム16を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ30と、ジブ18を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ32と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36とが搭載される。本実施形態に係るクレーン10では、ブーム起伏用ウインチ30がマスト20の基端近傍部位に据え付けられる。また、ジブ起伏用ウインチ32、主巻用ウインチ34、及び補巻用ウインチ36がいずれもブーム16における基端側部材16Aに据え付けられる。これらのウインチ30,32,34,36は上部旋回体12に搭載されていてもよい。
【0032】
ブーム起伏用ウインチ30は、ブーム起伏用ロープ38の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取り及び繰り出しによりマスト20が回動するようにブーム起伏用ロープ38が配索される。具体的には、マスト20の回動端部及び上部旋回体12の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック40,42が設けられ、ブーム起伏用ウインチ30から引き出されたブーム起伏用ロープ38がシーブブロック40,42間に掛け渡される。従って、ブーム起伏用ウインチ30がブーム起伏用ロープ38の巻き取りや繰り出しを行うことにより、両シーブブロック40,42間の距離が変化し、これによってマスト20さらにはこれと連動するブーム16が起伏方向に回動する。
【0033】
ジブ起伏用ウインチ32は、リアストラット21とフロントストラット22との間に巻き回されたジブ起伏用ロープ44の巻き取り及び繰り出しを行う。そして、この巻き取りや繰り出しによってフロントストラット22が回動するようにジブ起伏用ロープ44が配索される。具体的には、リアストラット21の長手方向中間部にはガイドシーブ46が設けられるとともに、リアストラット21の回動端部及びフロントストラット22の回動端部にそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック47,48が設けられている。そして、ジブ起伏用ウインチ32から引き出されたジブ起伏用ロープ44がガイドシーブ46に掛けられ、かつ、シーブブロック47,48間に掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ32によるジブ起伏用ロープ44の巻き取りや繰り出しは、両シーブブロック47,48間の距離を変え、フロントストラット22さらにはこれと連動するジブ18を起伏方向に回動させる。
【0034】
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ50(巻き取り用ロープ)による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、リアストラット21の基端近傍部位、フロントストラット22の基端近傍部位、及びジブ18の先端部にはそれぞれ主巻用ガイドシーブ52,53,54が回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブ54に隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブ56が幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ50が主巻用ガイドシーブ52,53,54に順に掛けられ、かつ、シーブブロックの主巻用ポイントシーブ56と、吊荷用の主フック57(フック)に設けられたシーブブロックのシーブ58との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34(巻き取り用ウインチ)が主巻ロープ50の巻き取りや繰り出しを行うと、両シーブ56,58間の距離が変わって、ジブ18の先端から垂下された主巻ロープ50に連結された主フック57の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0035】
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ60による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、主巻用ガイドシーブ52,53,54とそれぞれ同軸に補巻用ガイドシーブ62,63,64が回転可能に設けられ、補巻用ガイドシーブ64に隣接する位置に不図示の補巻用ポイントシーブが回転可能に設けられている。補巻用ウインチ36から引き出された補巻ロープ60は、補巻用ガイドシーブ62,63,64に順に掛けられ、かつ、補巻用ポイントシーブから垂下される。従って、補巻用ウインチ36が補巻ロープ60の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ60の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
【0036】
図2は、本実施形態に係るクレーン10の下部フレーム140および旋回フレーム120の側面図である。図3は、本実施形態に係るクレーン10の旋回フレーム120の分解側面図であり、図4は、図3の旋回フレーム120の一部を拡大した分解側面図である。
また、図5は、本実施形態に係るクレーン10の旋回フレーム120の分解平面図であり、図6は、図5の旋回フレーム120の一部を拡大した分解平面図である。なお、以下の説明では、上部旋回体12(旋回フレーム120)を基準に、上下、左右および前後方向をそれぞれ示している。
【0037】
下部走行体14は、下部フレーム140を有する。下部フレーム140は、下部走行体14の各部材を支持するフレーム本体であって、上部旋回体12の後記の旋回フレーム120を上下方向に延びる旋回中心軸CL周りに旋回可能に支持する。より詳しくは、下部フレーム140は、上部旋回体12を旋回可能に支持する不図示のカーボディと当該カーボディの左右両側面にそれぞれ装着される左右一対のクローラボディとを含む。クローラボディには、周回可能にクローラが支持されている。図3には、クローラボディの前側でクローラを周回可能に支持する前側ローラの回転軸である前クローラ軸140A、クローラボディの後側でクローラを周回可能に支持する後側ローラの回転軸である後クローラ軸140Bがそれぞれ図示されている。
【0038】
上部旋回体12は、旋回フレーム120を有する。旋回フレーム120は、上部旋回体12の各部材を支持するフレーム本体である。旋回フレーム120は、下部走行体14の下部フレーム140に旋回ベアリング10Sを介して上下方向に延びる旋回中心軸CL周りに旋回可能に支持される。旋回フレーム120は、前フレーム121と、後フレーム122と、を有し、前後2つの部材に分割可能とされている。
【0039】
また、クレーン10は、旋回ベアリング10Sを更に有する。旋回ベアリング10Sは、上記の前フレーム121が旋回中心軸CL周りに旋回可能なように、前フレーム121と下部フレーム140の前記カーボディとを連結する。
【0040】
前フレーム121は、上部旋回体12の旋回フレーム120の前側部分を構成し、旋回ベアリング10Sを介して下部走行体14に旋回可能に支持される。特に、前フレーム121の固定面120Sが、旋回ベアリング10S上に配置されている。前フレーム121は、前フレーム121の左右両側面を画定する左右一対の前側板121A(図5)と、当該左右一対の前側板121Aの下側部分を左右方向において連結する底板(不図示)と、前記左右一対の前側板121Aの上側部分を左右方向においてそれぞれ連結する複数の横連結部材(不図示)と、を有する。
【0041】
左右一対の前側板121Aは、それぞれ、上下方向に所定の高さを有し前後方向に長く延びている。また、左右一対の前側板121Aの前端部には、左右一対のブームフット軸支部121Sがそれぞれ設けられ、当該ブームフット軸支部121Sの直後方には左右一対のマストフット軸支部121Tがそれぞれ設けられている。ブームフット軸支部121Sは、ブーム16のブームフットを起伏可能に支持する。また、マストフット軸支部121Tは、マスト20のマストフットを起伏可能に支持する。また、図5に示すように、前フレーム121の後側部分には、ラジエータ81、エンジン82およびタンク83がそれぞれ支持されている。更に、前フレーム121は、左右一対の前側板121Aの後端部に左右方向に間隔をおいてそれぞれ配置された、左右一対の前連結部123を有する。当該左右一対の前連結部123は、前フレーム121と後フレーム122とを連結するために設けられている。
【0042】
後フレーム122は、上部旋回体12の旋回フレーム120の後側部分を構成し、前フレーム121に着脱可能に連結される。後フレーム122は、後フレーム122の左右両側面を画定する左右一対の後側板122A(図5)と、後フレーム122の後端部を画定する後横板122Bと、前後一対のロープ取付部122Pと、を有する。
【0043】
左右一対の後側板122Aは、それぞれ、上下方向に所定の高さを有し前後方向に長く延びている。なお、後側板122Aの前後方向の長さは、前側板121Aの前後方向の長さよりも短い。後横板122Bは、左右一対の後側板122Aの後端部同士を左右方向において連結している。当該後横板122Bの中央部には、左右一対のシーブ軸支部122Sが配置されている。当該シーブ軸支部122Sは、前述のシーブブロック42の各シーブを回転可能に支持している。また、左右一対の後側板122Aの間には不図示の底板が配置されており、図5に示すように前記底板はブーム起伏用ウインチ30などを支持している。更に、後フレーム122は、左右一対の後側板122Aの前端部に左右方向に間隔をおいてそれぞれ配置された、左右一対の後連結部124を有する。当該左右一対の後連結部124は、前フレーム121と後フレーム122とを連結するために設けられている。
【0044】
また、クレーン10は、左右一対のピンシリンダ71を有する。当該左右一対のピンシリンダ71は、前フレーム121と後フレーム122とを連結するための左右一対の連結ピン72(図10参照)をそれぞれ左右方向に沿って移動させることで、前フレーム121と後フレーム122との連結および当該連結の解除とを切り換えることが可能な治具であって、伸縮可能な油圧シリンダから構成されている。
【0045】
なお、左右一対の前連結部123は互いに同じ構造を有しており、左右一対の後連結部124も互いに同じ構造を有している。このため、以下では、図4および図6を参照して、それぞれ左側の前連結部123および左側の後連結部124の構造について説明する。
【0046】
前連結部123は、左右方向において互いに対向して配置される左右一対の前連結板73と、左右方向に延びる位置決めピン731と、を有する。位置決めピン731は、左右一対の前連結板73の上端部同士を左右方向において互いに接続する、円柱状のピンである。また、左右一対の前連結板73のうち、位置決めピン731よりも下方かつ位置決めピン731よりも僅かに前方に位置には、円形の前孔部73A(前側ピン孔)がそれぞれ左右方向に沿って開口(形成)されている。なお、各前連結板73に開口されている前孔部73Aは左右方向において互いに合致する位置に配置されている。前孔部73Aは、前フレーム121と後フレーム122とを互いに連結する連結ピン72が挿通されることを許容する。なお、左右方向から見て前孔部73Aの中心と位置決めピン731の中心との距離は、所定の基準距離L(図4)に設定されている。
【0047】
また、図4に示すように、左右一対の前連結板73の下端部かつ後端部には、回動阻止部732が配置されている。回動阻止部732は、前孔部73Aよりも下方かつ後方に配置され、前孔部73Aと後孔部74Aとが左右方向において互いに合致する回動角度を超えて後フレーム122が位置決めピン731周りに下方向に回動することを阻止する。
【0048】
更に、前フレーム121は、左右一対の前連結板73の上端部同士を左右方向において連結する前ブロック121Rを有する。前ブロック121Rは、平面視で矩形形状を有する板部材である。前ブロック121Rは、位置決めピン731の上方かつ前方に配置される。
【0049】
一方、後連結部124は、左右一対の前連結板73の間に進入することが可能な厚さを有する1つの後連結板74を有する。後連結板74は、左右一対の前連結板73の間に進入することで前記左右一対の前連結板73に左右方向において対向することが可能である。図4を参照して、後連結部124は、位置決めピン731が上下方向に沿って通過することを許容する開口部74Hと、当該開口部の上方において前記開口部に連通するピン嵌合部742であって後フレーム122の位置決めピン731周りの回動を可能とするように位置決めピン731の外周面と嵌合することが可能なピン嵌合部742と、をそれぞれ画定する円弧状の内周面74Kを有する。
【0050】
また、後連結板74のピン嵌合部742よりも下方かつピン嵌合部742よりも僅かに前方に位置には、円形の後孔部74A(後側ピン孔)が左右方向に沿って開口(形成)されている。後孔部74Aは、前フレーム121と後フレーム122とを互いに連結する連結ピン72が挿通されることを許容する。なお、後孔部74Aは、左右方向から見てピン嵌合部742の中心から前記基準距離Lだけ離れた中心を有する。
【0051】
また、後連結部124は、ガイド面741(傾斜面)を有する。ガイド面741は、後連結板74の前側の端面から構成されている。ガイド面741は、ピン嵌合部742が下方に開口した後フレーム122の姿勢において、ピン嵌合部742の下方かつ後孔部74Aの上方において、ピン嵌合部742を画定する内周面74Kに繋がるように後方に向かって先上がりに傾斜しており、前フレーム121と後フレーム122との連結作業時に位置決めピン731と当接することが可能とされている。
【0052】
また、図4に示すように、後連結部124は、左右一対の位置決めブロック743を有する。当該左右一対の位置決めブロック743は、後連結板74の左右両側面のうち後孔部74Aの下側かつ後側部分から左右方向にそれぞれ突設されている。位置決めブロック743は、前孔部73Aと後孔部74Aとが左右方向において互いに合致する位置で後フレーム122の更なる回動を阻止するように回動阻止部732に当接する。
【0053】
具体的に、位置決めブロック743は、当接面743A(当接部)を有する。当接面743Aは、後孔部74Aの後方かつ下方に配置され、左右方向から見て後孔部74Aと同心で径方向外向きに凸状の円弧形状を有する曲面(円周面)からなる凹部である。当接面743Aは、左右方向と直交し回動阻止部732を通過する平面上に配置されている。
【0054】
なお、図4図6を参照して、前述の回動阻止部732は、前孔部73Aの後方かつ下方に配置されている。そして、回動阻止部732は、前連結板73の下側角部において左右方向から見て前孔部73Aと同心で径方向外向きに凸状の円弧形状を有する曲面(円周面)からなる凸部である。回動阻止部732は、後フレーム122の位置決めピン731周りの下方向への回動に伴って位置決めブロック743の当接面743Aに当接する(面接触する)ことで後フレーム122の回動を阻止することが可能とされる。
【0055】
更に、後連結部124は、後連結板74の上端部に配置される後ブロック122Rを有する。後ブロック122Rは、平面視でL字形状を有する板部材である(図6)。後ブロック122Rは、ピン嵌合部742の上方かつ前方に配置される先端部122R1を有する。後フレーム122の後連結部124が前フレーム121の前連結部123に連結されると(図6)、後ブロック122Rの先端部122R1は、前ブロック121Rの上面部に当接する。この結果、クレーン10が組み立てられた後の作業時に、旋回フレーム120の後フレーム122の後端部に上方向の力が掛かった際に、その力を後ブロック122Rから前ブロック121Rに分配し、前フレーム121と後フレーム122とで協同して上記の力を受けることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、図6に示すように、左右の後ブロック122Rが、前フレーム121に向かって突出した凸型の部材から構成されている。ここで、このような構成とは逆に、凹型に形成された後ブロックを想定する。この場合、凹型の後ブロックは左右方向に間隔をおいて配置される一対の板材などによって構成され、当該一対の板材の間に、前フレーム121側の1枚の部材を受け入れる。クレーン10のフレームのように大型の製缶では溶接歪みの影響や取り付け精度の問題から、左右方向においてズレが生じやすくなる。上記のような凹型の場合には、左右の後連結部124のそれぞれに左右の板材が備えられているため、作業者は左右の後連結部124のそれぞれにおいて左右の板材と前フレーム121側の部材との位置関係を調整しながら連結作業を行わなければならない。このため、各連結部の精度を向上するためにその製造が困難になるとともに、作業者による取り付け作業も困難になる。一方、本実施形態では、左右の前連結部123および左右の後連結部124を互いに連結するにあたって、作業者は、右側の連結部では右側の後ブロック122Rだけを、左側の連結部では左側の後ブロック122Rだけを視認しながら、両者を位置合わせすることができるため、製造誤差の影響が少なくなるとともに、取り付け時の作業性も向上される。また、本実施形態に係る後ブロック122Rおよび前ブロック121Rのようなガイド機構が存在することなく、前連結部および後連結部を互いに連結する場合には、数トン~十数トンもある後フレーム122を吊り下げた状態で、2枚の板に挟まれた数センチ~十数センチのピンを所定の溝部に嵌め込まなければならないため、連結作業が困難になりやすい。
【0057】
次に、本実施形態における旋回フレーム120の組立方法について説明する。図7乃至図10は、本実施形態に係るクレーン10の旋回フレーム120の組立手順を示すための側面図である。
【0058】
図7に示すように、下部走行体14(下部フレーム140)に前フレーム121が旋回可能に支持された状態で、不図示の補助クレーン(吊り上げ装置)のフック100に掛けられたスリング101が、後フレーム122の前後一対のロープ取付部122Pに取り付けられ、後フレーム122が吊上げられる。この際、スリング101の長さが調整されることで、後フレーム122の前側部分が後側部分よりも僅かに下方に下がるような姿勢とされる(矢印D71)。一方、前フレーム121は、旋回ベアリング10Sから後方に延びる形状を有し片持ち梁の構造となっているため、その後端部は自重によってわずかに下方に撓んでいる(下がっている)。
【0059】
この状態で、補助クレーンによって後フレーム122が前方に移動され、前フレーム121に近づけられる。詳しくは、後フレーム122の左右一対の後連結部124が、前フレーム121の左右一対の前連結部123に近づくように後フレーム122が移動される。そして、図8に示すように、後連結部124のガイド面741が前連結部123の位置決めピン731に当接される。そして、補助クレーンによって後フレーム122が更に前方に移動されると、位置決めピン731が相対的にガイド面741に沿って上方に移動し、図9に示すように位置決めピン731がピン嵌合部742に嵌合する。この際、左右両側において、後ブロック122Rの先端部122R1が前ブロック121Rの上方に配置される。なお、図8の状態は、後連結部124のガイド面741が前連結部123の位置決めピン731に単に当接しているだけではなく、後フレーム122の重量の一部を位置決めピン731に預けるように後フレーム122が移動されている。このように後フレーム122の重量の一部を位置決めピン731に預けることで、後フレーム122には位置決めピン731に対して前フレーム121側かつ下側の向きに力が働くため、作業者がスリング101の張力を抜くと(フックを下げると)後フレーム122は前フレーム121側かつ下側に向かって動き、位置決めピン131がガイド面741から離れることなくガイド面741の傾きに沿って動くことができる。なお、この際も後フレーム122が位置決めピン731にその重量の一部を預けながら、ガイド面741が位置決めピン731に対して相対的に滑っていく。このように、ガイド面741の傾きは、前フレーム121および後フレーム122の連結における重要な要素として機能する。
【0060】
次に、作業者がスリング101の張力を抜くことで、図10の矢印D10のように後フレーム122の後端側が下方に移動するように、後フレーム122がその自重で位置決めピン731を中心に下方向に回動する。やがて、左右両側において、後連結部124の位置決めブロック743の当接面743Aが前連結部123の回動阻止部732に当接することで、後フレーム122の回動が阻止され停止する。この結果、前連結部123の前孔部73Aと後連結部124の後孔部74Aとが左右方向に沿って合致する。
【0061】
そして、作業者の操作または作業者によって操作される不図示の制御部からの指令信号によって図5の左右一対のピンシリンダ71が連結ピン72(図10)を左右方向外側に向かってそれぞれ移動させる。この結果、左右方向の内側から連結ピン72が外側の前孔部73A、後孔部74Aおよび内側の前孔部73Aに順に挿入され、左右両側において前フレーム121と後フレーム122とが互いに連結される。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る旋回フレーム120では、当該旋回フレーム120が前フレーム121と後フレーム122とに分離可能とされているため、クレーン10の分解後に各部材が輸送時の質量制限を超えることが抑止される。特に、下部走行体14上に前フレーム121が支持された構造体を輸送可能な輸送車両を用いた場合には、前フレーム121を下部走行体14(下部フレーム140)から取り外す必要がないため、旋回ベアリング10Sの周囲の複雑な構造(スイベルユニット、油圧配管、電気配線)などを取り外す必要が低減され、クレーン10の分解輸送作業の作業性を向上させることができる。また、前フレーム121を下部走行体14から分離させて輸送する場合であっても、下部走行体14の下部フレーム140よりも前後方向に長い寸法を有する旋回フレーム120を分離可能であるため、旋回フレーム120を分離せずに輸送する場合と比較して、より小さな寸法制限の輸送車両を使用することができる。
【0063】
また、本実施形態では、後フレーム122の後連結部124に配置されたピン嵌合部742を前フレーム121の前連結部123に配置された位置決めピン731に嵌合させ後フレーム122を下方向に回動させると、前孔部73Aと後孔部74Aとが合致する位置で、後連結部124の位置決めブロック743の当接面743Aが前フレーム121の回動阻止部732に当接し、前孔部73Aと後孔部74Aとが合致する位置で後フレーム122の更なる回動を阻止することができる。この際、前フレーム121は下部走行体14に支持されているため、後フレーム122の回動を安定して阻止することができる。この結果、両ピン孔に連結ピン72を容易に挿入することができるため、前孔部73Aと後孔部74Aとが合致していない状態で連結ピン72を強く押し込む場合と比較して、連結ピン72の挿入作業に大きな労力および時間を必要とすることがなく、前フレーム121および後フレーム122の連結作業を容易に行うことができる。特に、前孔部73Aと位置決めピン731との距離、および、後孔部74Aとピン嵌合部742との距離がいずれも所定の基準距離Lに設定されているため、回動阻止部732およびピン嵌合部742(当接面742A)が前孔部73Aおよび後孔部74Aの回動方向における相対位置をあわせるだけで、両ピン孔同士を精度よく合致させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、後フレーム122の後連結部124に配置されたガイド面741を位置決めピン731に当接させ、当該ガイド面741に沿って位置決めピン731を案内することで、位置決めピン731をピン嵌合部742に容易に嵌合させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、位置決めブロック743の当接面743Aは、後孔部74Aの後方において、左右方向から見てピン嵌合部742を中心として前記基準距離Lを半径とする円周上に配置され、回動阻止部732は、前孔部73Aの後方において、左右方向から見て前記位置決めピン731を中心として前記基準距離Lを半径とする円周上に配置されている。このため、位置決めブロック743の当接面743Aおよび回動阻止部732が、後フレーム122の位置決めピン731周りの回動時の後孔部74Aの回動軌跡上に配置されているため、回動阻止部732と後孔部74Aとが半径方向において互いに異なる位置に配置されている場合と比較して、回動阻止部732が後フレーム122の回転モーメントを接線方向に沿って安定して受け止めつつ、その前方に位置する後孔部74Aと前孔部73Aとの位置合わせを精度よく行うことができる。
【0066】
また、本実施形態では、後フレーム122が位置決めピン731周りに回動すると、凸状の曲面からなる回動阻止部732に対して、窪んだ曲面からなる当接面743Aが面接触するため、両者の当接に伴う衝撃を低減することができる。また、面接触によって当接部743Aに加わる荷重が分散されるため、当接部743Aの破損や変形が抑止される。更に、当接部743Aと回動阻止部732との面接触によって両者の間に摩擦力が生じるため、回動阻止部732が当接部743Aの動きをより拘束することができる。
【0067】
また、本実施形態では、下部走行体14に支持された前フレーム121の前連結部123には、2枚の前連結板73が配置される一方、前フレーム121に連結される後フレーム122の後連結部124には、1枚の後連結板74が配置される。そして、後連結板74が2枚の前連結板73の間に進入することで、ピン嵌合部742が位置決めピン731に嵌合する。この結果、位置決めピン731に対するピン嵌合部742の左右方向における相対位置を容易に調整することができる。また、後フレーム122の位置決めピン731周りの回転モーメントを、2枚の前連結板73によって受けることができるため、前フレーム121と後フレーム122との連結作業を安定かつ確実に行うことができる。この際、回動阻止部732は、板状の前連結板73の下端部によって構成されるため、前連結板73に他の部材を装着することで回動阻止部732を構成する場合と比較して、回動阻止部732の剛性を高く維持することができる。
【0068】
また、本実施形態では、図4に示すように、前孔部73Aよりも位置決めピン731が後方に配置され、ピン嵌合部742が後孔部74Aよりも後方に配置されている。このため、後フレーム122を吊り上げた後、当該後フレーム122を前方に向かって先下がりに傾けるだけで、ピン嵌合部742(ガイド面741)を位置決めピン731に容易に近づけることができる。
【0069】
また、本実施形態では、図4に示すように、後連結板74の下側部分が後孔部74Aの外周に沿った円弧形状を有しており、当該円弧形状から接線方向に延びるようにガイド面741が配置されている。更に、そのガイド面741の上端部が、ピン嵌合部742を画定する内周面74Kに接続される。このような構成によれば、前フレーム121および後フレーム122の周囲に位置する作業者は、後連結部124において前方に突出している円弧形状を視認することによって後孔部74Aの位置を容易に把握することができる。このため補助クレーンを操作する作業者にその位置を明確に伝えると、その上方に位置するガイド面741を位置決めピン731に容易に近づけ、ガイド面741によって位置決めピン731をピン嵌合部742に案内することができる。なお、前連結部123および後連結部124の側方に位置する補助クレーンの操作者によって上記の視認作業が行われてもよい。
【0070】
また、本実施形態に係る旋回フレーム120の組立方法は、準備工程と、吊り上げ工程と、位置決めピン嵌合工程と、ピン孔合致工程と、連結工程とを備える。
【0071】
準備工程では、旋回フレーム120の前側部分を構成する前フレーム121を、下部走行体14(下部フレーム140)に旋回ベアリング10Sを介して旋回可能に装着する一方、旋回フレーム120の後側部分を構成し前フレーム121に着脱可能に連結されることが可能な後フレーム122を準備する。
【0072】
また、吊り上げ工程では、後フレーム122の前端部に配置される左右一対の後連結部124が、前フレーム121の後端部に配置される左右一対の前連結部123に前後方向においてそれぞれ対向するように、後フレーム122を補助クレーン(所定の吊り上げ装置)によって吊り上げる。
【0073】
また、位置決めピン嵌合工程では、補助クレーンによって後フレーム122を空中で移動させ、左右一対の後連結部124にそれぞれ形成されたピン嵌合部742を、左右一対の前連結部123にそれぞれ左右方向に延びるように設けられた位置決めピン731にそれぞれ上方から嵌合させる。
【0074】
更に、ピン孔合致工程では、補助クレーンによって後フレーム122の後側部分を下降させることで、後フレーム122を位置決めピン731周りに下方に回動させ、前フレーム121に設けられた回動阻止部732に後フレーム122の当接面743Aを当接させることで、前連結部123において位置決めピン731よりも下方に配置された前孔部73Aと、後連結部124においてピン嵌合部742よりも下方に配置された後孔部74Aとを左右方向において互いに合致させる。
【0075】
そして、連結工程では、左右の前連結部123および後連結部124のそれぞれにおいて、前孔部73Aおよび後孔部74Aに連結ピン72を順に挿通し、前フレーム121と後フレーム122とを左右両側で互いに連結する。
【0076】
このような方法によれば、補助クレーンによって後フレーム122を吊り上げた後、後フレーム122の後連結部124のピン嵌合部742を前フレーム121の前連結部123の位置決めピン731に嵌合させ当該後フレーム122を下方に回動させることで、当接面743Aと回動阻止部732との当接によって前孔部73Aと後孔部74Aとを合致させることができる。このため、後フレーム122と前フレーム121との連結作業時に、両ピン孔の位置合わせに要する作業時間を短縮することができるとともに、連結ピン72の挿入作業を容易に行うことができる。
【0077】
また、上記の旋回フレームの組立方法の前記位置決めピン嵌合工程は、左右一対の後連結部124のうちの少なくとも一方の後連結部124においてピン嵌合部742の下方かつ後孔部74Aの上方でピン嵌合部742に繋がるように後方に向かって先上がりに傾斜するガイド面741を位置決めピン731に当接させ、ガイド面741に沿って位置決めピン731をピン嵌合部742まで案内して、ピン嵌合部742を位置決めピン731に上方から嵌合させる。
【0078】
このような方法によれば、位置決めピン731をピン嵌合部742に容易に嵌合させることができるため、両ピン孔の位置合わせに要する作業時間を更に短縮することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態に係るクレーン10の旋回フレーム120および旋回フレーム120の組立方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
【0080】
(1)上記の実施形態では、本発明の作業機械は、上記のクレーン10に限定されるものではなく、破砕機、タワークレーンなどの他の構造からなる作業機械であってもよい。また、地上を移動可能な作業機械に限定されるものではない。また、クレーン10の構造は図1に示されるものに限定されず、ジブを有さない構造などその他の構造でもよい。
【0081】
(2)上記の実施形態では、前連結部123が2枚の板状部材からなり、後連結部124が1枚の板状部材からなる態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。後連結部124が2枚の板状部材からなり、前連結部123が1枚の板状部材からなる態様でもよし、前連結部123、後連結部124ともに、1枚または複数の板状部材からなる態様などその他の態様でもよい。
【0082】
(3)また、上記の実施形態では、後連結部124の後連結板74に位置決めブロック743(当接部)が突設される一方、前連結部123の前連結板73の下端部に回動阻止部732が配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。2枚の前連結板73の間に回動阻止部に相当する部材が配置され、後連結板74の下端部が当接部として前記部材に当接するものでもよく、その他の配置、構造からなるものでもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 クレーン
10S 旋回ベアリング
12 上部旋回体
120 旋回フレーム
121 前フレーム
121A 前側板
121R 前ブロック
122 後フレーム
122A 後側板
122B 後横板
122R 後ブロック
123 前連結部
124 後連結部
13 カウンタウエイト
14 下部走行体
140 下部フレーム
71 ピンシリンダ
72 連結ピン
73 前連結板
731 位置決めピン
732 回動阻止部
73A 前孔部(前側ピン孔)
74 後連結板
741 ガイド面(傾斜面)
742 ピン嵌合部
743 位置決めブロック
743A 当接面(当接部)
74A 後孔部(後側ピン孔)
74K 内周面
74H 開口部
100 フック
101 スリング
CL 旋回中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10