(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】環状部材の成形装置及び成形方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B29D30/06
(21)【出願番号】P 2020067398
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 公二
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-309790(JP,A)
【文献】特開平10-058554(JP,A)
【文献】特開平10-058913(JP,A)
【文献】特開2008-094059(JP,A)
【文献】特開2009-279961(JP,A)
【文献】特開2012-020611(JP,A)
【文献】特表2017-520461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状部材を環状に成形する環状部材の成形装置であって、
所定の軸心を中心とする周方向に間隔をあけて配置され、前記長尺帯状部材を保持する複数の保持具と、
複数の保持具を前記周方向に移動させる回転機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、次の(a)~(c)の動作を行うように前記保持具及び前記回転機構の動作を制御
し、前記(b)の動作において、前記長尺帯状部材が前記保持具上に位置づけられるたびに前記保持具が一時停止される、環状部材の成形装置。
(a)一の保持具により前記長尺帯状部材の長手方向の一端部を保持する動作;
(b)前記保持具を周方向に移動させ、順次、他の複数の前記保持具上に前記長尺帯状部材を位置づける動作;
(c)前記他の保持具上に位置づけられた前記長尺帯状部材を当該保持具で保持する動作。
【請求項2】
長尺帯状部材を環状に成形する環状部材の成形装置であって、
所定の軸心を中心とする周方向に間隔をあけて配置され、前記長尺帯状部材を保持する複数の保持具と、
複数の保持具を前記周方向に移動させる回転機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、次の(a)~(c)の動作を行うように前記保持具及び前記回転機構の動作を制御し、
(a)一の保持具により前記長尺帯状部材の長手方向の一端部を保持する動作;
(b)前記保持具を周方向に移動させ、順次、他の複数の前記保持具上に前記長尺帯状部材を位置づける動作;
(
c)前記他の保持具上に位置づけられた前記長尺帯状部材を当該保持具で保持する動作;
前記保持具上に位置づけられた長尺帯状部材を前記保持具に押さえ付ける押さえ機構をさらに備える
、環状部材の成形装置。
【請求項3】
長尺帯状部材を環状に成形する環状部材の成形装置であって、
所定の軸心を中心とする周方向に間隔をあけて配置され、前記長尺帯状部材を保持する複数の保持具と、
複数の保持具を前記周方向に移動させる回転機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、次の(a)~(c)の動作を行うように前記保持具及び前記回転機構の動作を制御し、
(a)一の保持具により前記長尺帯状部材の長手方向の一端部を保持する動作;
(b)前記保持具を周方向に移動させ、順次、他の複数の前記保持具上に前記長尺帯状部材を位置づける動作;
(
c)前記他の保持具上に位置づけられた前記長尺帯状部材を当該保持具で保持する動作;
前記長尺帯状部材の長手方向の一端部及び他端部の一方に凸部が形成され、他方に前記凸部が嵌め合わされる凹部が形成されている
、環状部材の成形装置。
【請求項4】
長尺帯状部材を環状に成形する環状部材の成形方法であって、
(a)所定の軸心を中心とする周方向に間隔をあけて配置された複数の保持具のうち一の保持具により前記長尺帯状部材の長手方向の一端部を保持するステップ;
(b)複数の前記保持具を前記周方向に回転させ、順次、複数の前記保持具上に前記長尺帯状部材を位置づけるステップ;
(c)前記各保持具上に位置づけられた前記長尺帯状部材を当該保持具で保持するステップ、を含
み、
前記ステップ(b)において、前記長尺帯状部材が前記保持具上に位置づけられる度に前記保持具を一時停止させる、環状部材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内周面に貼り付けられる環状部材の成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの内腔で生じた共鳴音エネルギー(振動エネルギー)を吸収緩和し、空洞共鳴を抑制することでロードノイズを低減するため、タイヤの内周面には多孔質材料からなるスポンジ材が貼り付けられる場合がある。下記の特許文献1には、タイヤの内周面にスポンジ材(吸音材)を貼り付けてタイヤを製造する製造装置が開示されている。
【0003】
この製造装置は、タイヤの内周面と同一径の円周上に等間隔に配置された複数本の内接シャフトを備え、これらの内接シャフトの外側に長尺帯状のスポンジ材を巻き付けることによって当該スポンジ材が環状に成形される。製造装置は、各内接シャフトを径方向内側に移動させて環状のスポンジ材(以下、「環状部材」ともいう)の外径を収縮し、この環状部材をタイヤの内部に挿入したあと各内接シャフトを径方向外側に移動させ、環状部材を部分的にタイヤの内周面に接着する。そして、製造装置は、複数本の内接シャフトをタイヤの内周面に沿って移動(回転)させることによって、環状部材の全体をタイヤの内周面に接着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、複数本の内接シャフトの外側に長尺帯状のスポンジ材をどのように巻き付けるかについては開示されておらず、この作業を人手によって行った場合には作業者の負担が大きくなる。
【0006】
本発明は、スポンジ材等の長尺帯状部材を環状に成形する作業の省力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、長尺帯状部材を環状に成形する環状部材の成形装置であって、
所定の軸心を中心とする周方向に間隔をあけて配置され、前記長尺帯状部材を保持する複数の保持具と、
複数の保持具を前記周方向に移動させる回転機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、次の(a)~(c)の動作を行うように前記保持具及び前記回転機構の動作を制御する。
(a)一の保持具により前記長尺帯状部材の長手方向の一端部を保持する動作;
(b)前記保持具を周方向に移動させ、順次、他の複数の前記保持具上に前記長尺帯状部材を位置づける動作;
(c)前記他の保持具上に位置づけられた前記長尺帯状部材を当該保持具で保持する動作。
【0008】
以上の構成によれば、複数の保持具によって自動的に長尺帯状部材を環状に成形することができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0009】
(2)好ましくは、前記(b)の動作において、前記長尺帯状部材が前記保持具上に位置づけられるたびに前記保持具が一時停止される。
このような構成によって、安定した状態で保持具により長尺帯状部材を保持することができる。
【0010】
(3)好ましくは、前記成形装置が、前記保持具上に位置づけられた長尺帯状部材を前記保持具に押さえ付ける押さえ機構をさらに備える。
このような構成によって、保持具から長尺帯状部材が浮き上がることがなくなり、確実に保持具によって長尺帯状部材を保持することができる。
【0011】
(4)好ましくは、前記長尺帯状部材の長手方向の一端部及び他端部の一方に凸部が形成され、他方に前記凸部が嵌め合わされる凹部が形成されている。
このような構成により、長尺帯状部材を一端部と他端部との接合強度を高め、確実に環状部材を成形することができる。
【0012】
(5) 本発明は、長尺帯状部材を環状に成形する環状部材の成形方法であって、
(a)所定の軸心を中心とする周方向に間隔をあけて配置された複数の保持具のうち一の保持具により前記長尺帯状部材の長手方向の一端部を保持するステップ;
(b)複数の前記保持具を周方向に回転させ、順次、複数の前記保持具上に前記長尺帯状部材を位置づけるステップ;
(c)前記各保持具上に位置づけられた前記長尺帯状部材を当該保持具で保持するステップ、を含む。
【0013】
以上の貼付方法によれば、複数の保持具によって自動的に長尺帯状部材を環状に成形することができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0014】
(6)好ましくは、前記ステップ(b)において、前記長尺帯状部材が前記保持具上に位置づけられる度に前記保持具を一時停止させる。
このような方法によって、安定した状態で保持具により長尺帯状部材を保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長尺帯状部材を環状に成形する作業の省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の一実施形態における環状部材の貼付システムの概略的な平面図である。
【
図3】貼付システムにおける第1供給装置及び貼付装置を示す側面図である。
【
図4】(a)は貼付装置の平面図、(b)は貼付装置の側面図である。
【
図5】(a)は貼付装置の平面図、(b)は貼付装置の側面図である。
【
図8】環状部材を成形する手順を示す説明図である。
【
図10】第2供給装置を正面側からみた概略的な断面図である。
【
図11】タイヤを第2供給装置にセットする手順を示す上面側からみた説明図である。
【
図12】タイヤに環状部材を貼り付ける手順を示す上面側からみた説明図である。
【
図13】タイヤに環状部材を貼り付ける手順を示す上面側からみた説明図である。
【
図14】タイヤに環状部材を貼り付ける手順を示す側面側からみた説明図である。
【
図15】タイヤに環状部材を貼り付ける手順を示す側面側からみた説明図である。
【
図17】保持具の変形例を示す概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[タイヤの構成]
図1は、タイヤの一例を示す断面図である。
図1において、タイヤ1は、トレッド2、一対のサイドウォール3、一対のビード4、カーカス5、ベルト6、インナーライナー7等を備える。トレッド2は、架橋ゴムからなり、その外面において路面と接触する。一対のサイドウォール3は、架橋ゴムからなり、トレッド2の軸方向の両端からタイヤ半径方向内方に向かって延びている。ビード4は、サイドウォール3よりも径方向内側に位置し、コア4aとエイペックス4bとを備える。
【0018】
カーカス5は、トレッド2及びサイドウォール3の内側に位置し、一方のビード4と他方のビード4との間を架け渡す。ベルト6は、トレッド2とカーカス5との間に位置する。インナーライナー7は、カーカス5の内側に位置する。インナーライナー7は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなり、タイヤ1の内面を構成する。なお、本明細書において、「タイヤ1の内周面1a」とは、トレッド2の径方向内側におけるインナーライナー7の内周面のことをいう。「タイヤ1の内径」とは、ビード4の部分における内径(ビード内径)をいう。
【0019】
タイヤ1の内周面1aには、環状部材10が貼り付けられている。環状部材10は、長尺帯状のスポンジ材の両端部を接合することによって環状に形成されたものである。スポンジ材は、ゴムや合成樹脂を発泡させた連続気泡又は独立気泡を有する多孔質材料によって形成されている。スポンジ材は、防振性又は吸音性を有し、タイヤ1の内部で発生した共鳴音エネルギー(振動エネルギー)を吸収緩和することで空洞共鳴を抑制し、ロードノイズを低減する。以下、環状に形成される長尺帯状のスポンジ材のことを「長尺帯状部材」ともいう。
【0020】
[貼付システムの構成]
図2は、本発明の一実施形態における長尺帯状部材11の貼付システム20の概略的な平面図である。
本実施形態の貼付システム20は、貼付装置23、第1供給装置21、第2供給装置22、及び制御装置24を備える。貼付装置23は、長尺帯状部材11を環状に成形する機能(環状部材10の成形機能)と、環状に形成された環状部材10をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける機能(貼付機能)とを有する。したがって、以下の説明では、貼付装置23のことを、「成形装置23」ということがある。第1供給装置21は、貼付装置23に長尺帯状部材11を供給する。第2供給装置22は、貼付装置23へタイヤ1を供給する。
【0021】
制御装置24は、貼付装置23、第1供給装置21、第2供給装置22の動作を制御する。制御装置24は、例えばCPU等の演算部、RAM及びROM等の記憶部を備え、記憶部にインストールされたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。制御装置24は、各種センサの信号やスイッチの信号が入力され、その入力信号等に基づいて貼付装置23、第1供給装置21、第2供給装置22などに設けられたモータやアクチュエータの動作を制御する。
【0022】
貼付装置23と第2供給装置22とは、水平な第1方向Xに隣接して配置されている。貼付装置23は、当該貼付装置23が成形する環状部材10の軸心(中心)を第1方向Xに沿わせるように配置されている。第2供給装置22は、当該第2供給装置22が支持しているタイヤ1の軸心を第1方向Xに沿わせるように配置されている。貼付装置23が成形する環状部材10の軸心と、第2供給装置22が支持しているタイヤ1の軸心とは一致している。以下、これらの軸心を符号C1で示す。
【0023】
貼付装置23と第1供給装置21とは、水平な第2方向Yに隣接して配置されている。第2方向Yは第1方向Xに直交している。第1供給装置21は、長尺帯状部材11の長手方向を第2方向Yに沿わせた状態で長尺帯状部材11を支持し、当該長尺帯状部材11を貼付装置23に向けて第2方向Yに供給する。
【0024】
[第1供給装置21]
図3は、貼付システム20における第1供給装置21及び貼付装置23を示す側面図である。
図2及び
図3に示すように、第1供給装置21は、第2方向Yに沿って水平に配置されたローラコンベアにより構成されている。第1供給装置21のローラ21aは、フリーローラから構成され、後述する貼付装置23の保持具31が長尺帯状部材11を引っ張ることで、第1供給装置21上の長尺帯状部材11が貼付装置23へ供給される。第1供給装置21は、後述する最上位の保持具31に対応した高さに配置されている。第1供給装置21のローラ21aは、駆動ローラ、又は、フリーローラと駆動ローラとの組み合わせにより構成されていてもよい。この場合、第1供給装置21自身が長尺帯状部材11を貼付装置23に向けて移動させることができる。第1供給装置21は、ベルトコンベアにより構成されていてもよい。第1供給装置21は、長尺帯状部材11を巻き取ったリールにより構成されていてもよい。
【0025】
[貼付装置23]
図4及び
図5は、(a)は貼付装置23の平面図、(b)は貼付装置23の側面図である。
図3~
図5に示すように、貼付装置23は、複数の保持具31と、移動機構32と、回転機構33と、押さえ機構34とを有している。複数の保持具31は、第1方向Xに沿った軸心C1回りに等間隔をあけて配置されている。本実施形態の貼付装置23は、8個の保持具31を備えている。
【0026】
(保持具31)
図6は、保持具31の斜視図である。
図7は、保持具31の概略的な正面図である。
各保持具31は、保持部材36と、ローラ37a、37bと、支持枠38とを有している。
保持部材36は、長尺帯状部材11の一方の表面(下面)又は環状部材10の内周面を保持するものである。本実施形態の保持部材36は、ケーシング36aと、ケーシング36aに出退自在に設けられた複数のニードル36bとを有する。ケーシング36aは、直方体の箱形状に形成され、支持枠38に支持されている。ケーシング36a内には、ニードル36bを出退させるためのエアシリンダ等のアクチュエータ(図示省略)が内蔵されている。
【0027】
各ニードル36bは、ケーシング36aの上面(保持面)36a1から突出し、上面36a1よりも下方に退避する。複数のニードル36bは、第1方向Xにおいて2列に配置されている。各列における複数のニードル36bは、ケーシング36aの保持面36a1に対して同じ方向に傾斜した姿勢で設けられている。一方の列のニードル36bと他方の列のニードル36bとは互いに逆向きに傾斜し、ケーシング36a内で退避している突起に互いにクロスし、ケーシング36aから突出しているときに互いに離反する。保持部材36は、長尺帯状部材11に対してニードル36bを斜めに突き刺すことで長尺帯状部材11を保持する。保持部材36は、ニードル36bを突き刺して長尺帯状部材11を保持するので、バキューム式の保持具を用いることができないスポンジ材であっても保持可能となっている。なお、保持部材36としては、シュマルツ製のニードルグリッパー(SNG-M)等の公知の装置を適用することができる。
【0028】
ローラ37a,37bは、第1ローラ37aと、第2ローラ37bとを有する。第1ローラ37aは、第1方向Xに関してケーシング36aの両側に隣接して配置されている。第1ローラ37aは、保持部材36の第1方向Xの各側に2個ずつ設けられている。第1ローラ37aは、第1方向Xに沿った軸心回りに支持枠38に回転自在に設けられている。
【0029】
第2ローラ37bは、第1方向Xに直交する方向に関して、ケーシング36aの両側に配置されている。第2ローラ37bは、第1方向Xに沿った軸心回りに支持枠38に回転自在に設けられている。第2ローラ37bは、第1方向Xに関して第1ローラ37aよりも長く形成されている。具体的に、第2ローラ37bは、第1方向Xに関して保持部材36と第1ローラ37aとに渡る長さを有している。以上より、保持部材36は、第1,第2ローラ37a,37bにより囲まれている。
【0030】
第1ローラ37a及び第2ローラ37bは、後述するようにタイヤ1の内周面1aに貼り付けられた環状部材10の内周面上を転動する。第1ローラ37a及び第2ローラ37bは、保持部材36の保持面36a1よりも突出している。したがって、保持面36a1を環状部材10の内周面に接触させない状態で、環状部材10の内周面上で第1ローラ37a及び第2ローラ37bを転動させることができる。
【0031】
(移動機構32)
図3~
図5に示すように、移動機構32は、一対のリンク機構40と、一対のリンク機構40を支持する支持フレーム41とを有する。一対のリンク機構40は、第1方向Xにおける保持具31の両側に配置されている。各リンク機構40は、シリンダ42と、リンク部材43とを有する。シリンダ42は、電動シリンダ、流体圧シリンダ等により構成されている。シリンダ42は、第1方向Xに沿って配置され、同方向Xに伸縮する。シリンダ42の本体部分は、支持フレーム41に固定される。シリンダ42のロッド部分は、第1方向Xに移動可能である。ロッド部分の先端42aは、支持フレーム41に設けられたガイド41aにより案内されている。
【0032】
リンク部材43は、一端がシリンダ42の先端42aに回動可能に連結された第1リンク部材43aを有する。第1リンク部材43aの他端は、第2リンク部材43bの一端に回動可能に連結されている。第2リンク部材43bの他端は、保持具31に固定されている。
【0033】
第1方向Xにおいて、保持具31の一方側に配置されたリンク機構40と、他方側に配置されたリンク機構40とは、第1方向Xにおける保持具31の中心線Oを基準として対称に配置されている。一対のリンク機構40のシリンダ42は、互いに同期して伸縮する。両シリンダ42が伸長すると、
図4に示すように、各保持具31が径方向外側に移動する。両シリンダ42が収縮すると、
図5に示すように、各保持具31が径方向内側に移動する。このとき、保持具31は、第1方向Xにおける位置が変化することなく径方向に移動する。
【0034】
以下、
図4に示す保持具31の位置を「成形位置」又は「貼付位置」ともいい、
図5に示す保持具31の位置を「第1退避位置」ともいう。また、後述するように、本実施形態の移動機構32は、成形位置と第1退避位置との間に位置する「第2退避位置」に保持具31を位置づけることができる。
【0035】
なお、リンク機構40におけるシリンダ42は、その本体部分が支持フレーム41内に配置され、ロッド部分が本体部分から軸方向の外側へ向けて突出する構成を採用してもよい。ただし、この場合、支持フレーム41内にシリンダ42の本体部分を収容するスペースが必要となり、その分、支持フレーム41の外径が大きくなる。そのため、後述するようにタイヤ1の内部への環状部材10の挿入が困難になり、特に小径のタイヤ1への適用ができなくなる可能性がある。したがって、本実施形態のように、シリンダ42の本体部分が支持フレーム41の軸方向外側に配置され、ロッド部分が本体部分から軸方向内側(保持具31側)に突出する構成を採用することが、支持フレーム41を小型化するうえで好適である。
【0036】
(回転機構33)
図3~
図5に示すように、回転機構33は、保持具31及び移動機構32を軸心C1回りに回転させる。回転機構33は、移動機構32の支持フレーム41を回転自在に支持する筐体33aを有する。筐体33a内には、支持フレーム41を回転させるためのモータや動力伝達機構等の駆動部が設けられている。
【0037】
(押さえ機構34)
図3に示すように、押さえ機構34は、最上位に配置された保持具31の上方に配置されている。押さえ機構34は、押さえ部材34aと、アクチュエータ34bとを有する。押さえ部材34aは、例えば第1方向Xに沿った軸心回りに回転するローラからなる。アクチュエータ34bは、上下方向に伸縮するシリンダからなる。シリンダとしては、流体圧シリンダ又は電動シリンダ等を採用することができる。押さえ部材34aは、アクチュエータ34bの下端に設けられ、アクチュエータ34bの伸縮によって上下に移動する。押さえ部材34aは、下方に移動したときに、最上位の保持具31上に配置された長尺帯状部材11を上方から押さえ付ける。
【0038】
[環状部材10の成形手順]
図8は、環状部材10を成形する手順を示す説明図である。
以下、第1供給装置21及び貼付装置23を用いて環状部材10を成形する手順について説明する。以下の説明における貼付装置23の動作は、制御装置24の制御によるものである。
【0039】
環状部材10を成形するには、まず、
図8(a)に示すように、第1供給装置21上の長尺帯状部材11を、作業者が貼付装置23側へ引き出し、成形位置にある最上位の保持具31上に長尺帯状部材11の先端部11aを位置づける。その後、押さえ機構34における押さえ部材34aによって長尺帯状部材11の先端部11aを保持具31上に押さえ付け、保持部材36のニードル36b(
図7参照)を突出させて長尺帯状部材11に突き刺す。これにより、長尺帯状部材11の先端部11aが最上位の保持具31によって保持される。
【0040】
次いで、貼付装置23の回転機構33によって複数の保持具31を矢印a方向に回転させ、順次、最上位に位置づけられた保持具31により長尺帯状部材11を保持していく。なお、回転機構33は、各保持具31が最上位に位置するたびに一時停止する。回転機構33が停止した状態で、保持具31は、保持部材36のニードル36bを突出させ、ニードル36bを長尺帯状部材11に突き刺す。したがって、保持具31は、安定した状態で長尺帯状部材11を保持することができる。
【0041】
押さえ機構34は、長尺帯状部材11の先端部11aを保持具31で保持するとき以外、押さえ部材34aを上昇させ、退避させている。複数の保持具31の外周側に長尺帯状部材11を巻き付けることで、自然に最上位の保持具31上に長尺帯状部材11が押さえ付けられるからである。ただし、各保持具31が最上位に位置するたびに押さえ部材34aを下降させて長尺帯状部材11を押さえ付けてもよい。
【0042】
一番初めに最上位にあった保持具31が再び最上位に位置すると、長尺帯状部材11の終端部11bが当該保持具31上に配置される。長尺帯状部材11の先端部11aと終端部11bとは、作業者によって接着剤により接合され、これによって長尺帯状部材11が環状部材10に成形される。
【0043】
環状部材10を成形したあと、移動機構32は、複数の保持具31を径方向内側の第1退避位置へ移動させる(
図5参照)。これにより、環状部材10が収縮し、その外径がタイヤ1の内径よりも縮小され、タイヤ1の内部に挿入可能な形状となる。
【0044】
図9は、環状部材10の接合部分を示す説明図である。
長尺帯状部材11の先端部11a及び終端部11bは、
図9に示す形状に形成することができる。
図9(a)に示す例では、長尺帯状部材11の先端部11a及び終端部11bの一方に複数の凹部11cが形成され、他方に複数の凸部11dが形成されている。複数の凹部11cは互いに同一形状であり、複数の凸部11dは互いに同一の形状である。長尺帯状部材11の先端部11a及び終端部11bに形成された凹部11cと凸部11dとは、互いに嵌め合わされる。
【0045】
凹部11cと凸部11dとを互いに嵌め合わせることで、長尺帯状部材11の先端部11aと終端部11bとの軸方向(第1方向X)の位置ずれが抑制される。また、各凹部11cの軸方向両側の側面、及び、各凸部11dの軸方向両側の側面は、周方向に対して傾斜している。凹部11cと凸部11dとを嵌め合わせたとき、これらの軸方向側面が互いに接触することによって、長尺帯状部材11の先端部11aと終端部11bとの周方向の離反が抑制される。凹部11c及び凸部11dは、全体が湾曲した形状であり、角張った部分を有していない。そのため、応力集中が発生し難くなり、凹部11c及び凸部11dの損傷を抑制することができる。また、長尺帯状部材11の先端部11aと終端部11bとに凹部11c及び凸部11dを形成することで、先端部11aと終端部11bとの接着面積を拡大することができ、先端部11aと終端部11bとをより強固に接着することができる。
【0046】
図9(b)に示す例は、長尺帯状部材11の先端部11a及び終端部11bの一方に1つの凹部11cが形成され、他方に1つの凸部11dが形成されている。凹部11cの軸方向両側の側面及び凸部11dの軸方向側面は、周方向に対して傾斜している。凹部11cと凸部11dとを嵌め合わせたとき、それらの軸方向側面が互いに接触することによって、先端部11aと終端部11bとの軸方向の位置ずれ及び周方向の離反が抑制される。本例の凹部11c及び凸部11dは、
図9(a)に示すものよりも構造が簡単であるが、接着面積が若干小さくなる。また、凹部11c及び凸部11dの外形は直線の組み合わせにより形成され、形状の変化が急激であるため、応力集中による損傷が生じやすくなっている。したがって、これらの点においては、
図9(a)に示す例の方が有利である。
【0047】
図9(c)に示す例は、長尺帯状部材11の先端部11a及び終端部11bの一方に1つの凹部11cが形成され、他方に1つの凸部11dが形成されている。凹部11cの軸方向両側の側面及び凸部11dの軸方向側面は、周方向に沿って配置されている。凹部11cと凸部11dとを嵌め合わせたとき、それらの軸方向側面が互いに接触することによって軸方向の位置ずれが抑制される。ただし、先端部11aと終端部11bとの周方向の離反は抑制されない。また、本例の凹部11c及び凸部11dは、
図9(b)に示すものと同様に、構造が簡単であるが、接着面積が若干小さくなり、形状の変化が急激であるために応力集中による損傷が生じやすくなっている。したがって、これらの点では、
図9(a)に示す例の方が有利である。
【0048】
[第2供給装置22]
図10は、第2供給装置22を正面側からみた概略的な断面図である。
図2及び
図10に示すように、第2供給装置22は、ベース部材51と、可動フレーム52と、把持機構53とを有する。ベース部材51には、第1方向Xに沿って延びる第1ガイドレール51aが設けられている。可動フレーム52は、ベース部材51の第1ガイドレール51aに沿って移動する。可動フレーム52は、図示しない駆動部によって駆動される。可動フレーム52上には、第1方向Xに沿って延びる第2ガイドレール52aが設けられている。
【0049】
把持機構53は、一対の移動台54と、一対の移動台54を連結する連結具55と、駆動部56とを有する。一対の移動台54は、第2ガイドレール52aに沿って移動する。連結具55は、第1方向Xに沿って延びるねじ軸55aを有する。ねじ軸55aは、モータやベルト伝導機構等からなる駆動部56(
図2参照)によって回転駆動される。ねじ軸55aには、軸方向両側には、互いに逆ねじとなるねじ山が形成され、各ねじ山にそれぞれ一対の移動台54に螺合されている。
【0050】
ねじ軸55aが一方向に回転すると、一対の移動台54は、互いに接近する方向に移動し、ねじ軸55aが他方向に回転すると、一対の移動台54は、互いに離反する方向に移動する。
【0051】
把持機構53は、一対の移動台54のそれぞれに設けられた把持フレーム57を有する。把持フレーム57の中央部には開口57aが形成されている。把持フレーム57には、複数の把持部材58が第1方向Xに沿った軸心C1周りに間隔をあけて配置されている。各把持部材58は、軸心C1を中心として径方向に移動可能に把持フレーム57に設けられている。各把持部材58は、流体圧シリンダ等の駆動部59によって径方向に移動し、互いに接近又は離反する。各把持部材58は、第1方向Xに沿って突出する爪部58aを有し、この爪部58aによってタイヤ1を把持する。
【0052】
第2供給装置22の可動フレーム52上には、タイヤ1を載せるための載置台60が設けられている。把持機構53の一対の移動台54は、載置台60に載せられたタイヤ1に対して接近又は離反する。把持機構53の把持部材58は、載置台60に載せられたタイヤ1の内部に挿入され、タイヤ1を把持する。
【0053】
[環状部材10の貼付手順]
(基本手順)
次に、環状部材10をタイヤ1に貼り付ける動作の基本的な手順について詳細に説明する。以下の説明において、第2供給装置22及び貼付装置23の動作は、制御装置24により制御される。
【0054】
図11は、タイヤ1を第2供給装置22にセットする手順を示す上面側からみた説明図である。
図12及び
図13は、タイヤ1に環状部材10を貼り付ける手順を示す上面側からみた説明図である。
【0055】
まず、環状部材10をタイヤ1に貼り付けるに先立ち、タイヤ1が第2供給装置22にセットされる。具体的に、貼付システム20は、
図2に示すように、内周面1aに接着剤が塗布されたタイヤ1を準備しておく準備台25を第2供給装置22の近傍に備えており、作業者は、準備台25と第2供給装置22との間の位置A3において、準備台25から第2供給装置22の載置台60へタイヤ1を運び、載置台60上にタイヤ1を載せる(
図11(a)参照)。
【0056】
次いで、
図11(b)に示すように、第2供給装置22の一対の移動台54が互いに接近する方向に移動し、複数の把持部材58がタイヤ1の内部に挿入される。その後、各把持部材58は径方向外側へ移動し、タイヤ1を把持する。
【0057】
その後、
図12(a)に示すように、第2供給装置22の可動フレーム52が貼付装置23へ向けて移動する。このとき、把持機構53の把持フレーム57に形成された開口57a(
図10参照)に、貼付装置23の移動機構32及び保持具31が挿入され、保持具31に保持された環状部材10がタイヤ1の内部に挿入される。
そして、
図12(b)に示すように、移動機構32により保持具31が径方向外側の貼付位置に移動し、環状部材10をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける。
【0058】
タイヤ1の内周面1aに環状部材10が貼り付けられると、
図13(a)に示すように、移動機構32により保持具31が再び第1退避位置に移動し、
図13(b)に示すように、可動フレーム52が貼付装置23から離れる方向に移動する。
【0059】
その後、環状部材10が貼り付けられたタイヤ1の把持機構53による把持が解除され、作業者は、当該タイヤ1を載置台60から次工程に運搬する。
【0060】
(具体的手順)
次に、
図12(a)~
図13(a)に示した手順をより具体的に説明する。
図14及び
図15は、タイヤ1に環状部材10を貼り付ける手順を示す側面側からみた説明図である。
図14(a)に示すように、貼付装置23が環状部材10を成形した後、複数の保持具31が「第1退避位置」に移動することによって、環状部材10をタイヤ1の内径よりも小さく収縮させており、タイヤ1の内部に環状部材10を挿入可能な状態となっている。
【0061】
貼付装置23は、
図14(b)に示すように、複数の保持具31を径方向外側の「貼付位置」に移動させることで、タイヤ1の内周面1aに環状部材10を貼り付ける。このとき、環状部材10は、保持部材36で保持されている部分のみがタイヤ1の内周面1aに接着され、他の部分は、タイヤ1の内周面1aから浮いた状態か又は僅かに接着された状態となる。
【0062】
次に、貼付装置23は、保持具31による環状部材10の保持を解除し、
図14(c)に示すように、保持具31を第2退避位置に移動させる。第2退避位置は、環状部材10をタイヤ1の内部に挿入するときの第1退避位置よりも径方向外側にあり、タイヤ1の内周面1aに貼り付けられた環状部材10から径方向内側に離れる程度の位置である。したがって、保持具31を第1退避位置まで移動させる場合に比べて短いストロークで保持具31を移動させることができ、貼り付け作業のサイクルタイムを短縮することができる。
【0063】
その後、貼付装置23は、
図15(a)に示すように、回転機構33により保持具31を矢印b方向に回転させ、環状部材10のうちタイヤ1の内周面1aに貼り付けられていない部分の径方向内側に保持具31を位置づける。本実施形態では、8個の保持具31が設けられているので、保持具31の周方向の間隔は、軸心C1を中心として22.5°の角度間隔となる。そのため、貼付装置23は、各保持具31を軸心C1回りに22.5°回転させる。
【0064】
その後、貼付装置23は、
図15(b)に示すように、移動機構32により保持具31を径方向外側に移動させ、各保持具31によって環状部材10を径方向内側から押さえ付け、タイヤ1の内周面1aに貼り付ける。
【0065】
次いで、貼付装置23は、
図15(c)に示すように、回転機構33により各保持具31を軸心C1回りに矢印b方向に回転させる。これにより保持具31の第1、第2ローラ37a,37bが環状部材10の内周面上を走行し、タイヤ1の内周面1aに環状部材10を押さえ付ける。以上の動作により、タイヤ1の内周面1aに対する環状部材10の貼付が完了する。
【0066】
[タイヤ1の変形例]
図16は、タイヤ1の変形例を示す断面図である。
本変形例のタイヤ1は、内周面1aにシーラント材61が塗布されている。シーラント材61は、タイヤ1の内周面1aに設けられることによって、トレッド2側から釘などが突き刺さったときに生じる孔を塞ぎ、パンクを防止する。シーラント材61は、従来公知のものが適用され、例えばゴム成分と液状ポリマーと架橋剤とを含み、粘着性を有する。
【0067】
シーラント材61の径方向内側には、環状部材10が設けられている。この環状部材10は、シーラント材61の粘着性によってシーラント材61に直接貼り付けられている。したがって、シーラント材61は環状部材10をタイヤ1の内周面1aに貼り付けるための接着剤として機能している。
【0068】
[保持具31の変形例]
図17は、保持具31の変形例を示す概略的な正面図である。
図17に示す変形例は、第1ローラ37aが、第2ローラ37bよりも、保持部材36の保持面36a1から大きく突出するように位置づけられている。具体的に、
図17(a)に示す例では、第1ローラ37aの軸心の位置が、第2ローラ37bの軸心の位置よりも保持面36a1側に位置している。
図17(b)に示す例では、第1ローラ37aの軸心と第2ローラ37bの軸心とが一直線上に位置しているが、第2ローラ37bが第1ローラ37aよりも小径に形成されている。
【0069】
以上のように第1ローラ37aを第2ローラ37bよりも保持面36a1から大きく突出させることで、円弧状に湾曲する環状部材10及びタイヤ1の内周面1aに第1、第2ローラ37bをより沿わせやすくすることができる。
【0070】
[実施形態の作用効果]
(1)以上に説明した実施形態の貼付装置23は、所定の軸心C1を中心とする周方向に間隔をあけて配置され、環状部材10の内周面を保持する複数の保持具31と、複数の保持具31を、軸心C1を中心とした径方向に移動させる移動機構32と、複数の保持具31を、前記周方向に移動させる回転機構33と、制御装置24と、を備える。そして、制御装置24は、次の(a)~(f)の動作を行うように、保持具31、移動機構32及び回転機構33の動作を制御する。
(a)保持具31によって環状部材10の内周面を保持する動作;
(b)環状部材10を保持している保持具31を所定の貼付位置へ向けて前記径方向の外側へ移動させ、環状部材10の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける動作;
(c)保持具31による環状部材10の保持を解除する動作;
(d)保持具31を、貼付位置よりも前記径方向の内側の退避位置に移動させ、当該保持具31を環状部材10から離反させる動作;
(e)保持具31を前記周方向に移動させる動作;及び
(f)保持具31を貼付位置に移動させ、環状部材10の他の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける動作。
【0071】
そのため、貼付装置23は、複数の保持具31によって環状部材10の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付け、一旦、保持具31を環状部材10から離してから保持具31の周方向の位置をずらし、再度、環状部材10の他の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける。これにより、環状部材10に皺を生じさせることなく環状部材10の略全体を均一にタイヤ1の内周面1aに貼り付けることができる。
【0072】
(2)上記実施形態の制御装置24は、動作(f)の後、保持具31によって環状部材10をタイヤ1の内周面1aに押さえ付けたまま、保持具31を前記周方向に移動させるように回転機構33の動作を制御する。そのため、環状部材10の全周をタイヤ1の内周面1aから浮かないように貼り付けることができる。
【0073】
(3)保持具31は、環状部材10を保持する保持部材36と、環状部材10の内周面上を転動可能な第1,第2ローラ37a,37bとを備える。そのため、保持具31によって環状部材10をタイヤ1の内周面1aに押さえ付けたまま保持具31を周方向に移動させたときに、第1,第2ローラ37a,37bが環状部材10の内周面上を転動し、保持具31の移動の抵抗を少なくすることができる。なお、保持具31は、第1ローラ37aと第2ローラ37bの一方のみを備えていてもよい。
【0074】
(4)保持具31の退避位置は、保持具31で保持された環状部材10をタイヤ1の内径よりも小さく収縮させる第1退避位置と、第1退避位置と貼付位置との径方向の間に位置しかつタイヤ1の内周面1aに貼り付けられた環状部材10から保持具31を離反させる第2退避位置とを含む。そのため、環状部材10の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける動作(b)から、保持具31を周方向に移動させて再び環状部材10の他の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける動作(f)までのサイクルタイムを短縮することができる。
【0075】
(5)移動機構32は、軸心C1上に配置され当該軸心C1に沿った軸方向に伸縮するシリンダ42と、シリンダ42に一端が連結され他端が保持具31に連結されたリンク部材43とを有するリンク機構40を一対備え、一対のリンク機構40が保持具31の前記軸方向の両側に備えている。そのため、シリンダ42の伸縮によって保持具31を軸方向の位置を変えることなく径方向に移動させることができ、保持具31を第1退避位置から貼り付け位置へ移動させるときに、保持具31をタイヤ1の内周面1aに向けてスムーズに移動させることができる。
【0076】
(6)上記実施形態の貼付システム20は、長尺帯状部材11を環状部材10に成形し、かつ、環状部材10をタイヤ1の内周面1aに貼り付ける貼付装置23と、長尺帯状部材11を貼付装置23に供給する第1供給装置21と、貼付装置23にタイヤ1を供給する第2供給装置22と、を備えている。そのため、環状部材10の成形からタイヤ1への環状部材10の貼り付けまでの作業を一貫して行うことができる。
【0077】
(7)貼付装置23と第2供給装置22とは、貼付装置23で成形される環状部材10の軸方向に沿った第1方向Xに隣接して配置され、貼付装置23と第1供給装置21とが第1方向Xに直交する第2方向Yに沿って隣接して配置される。
図2において、作業者は、第1供給装置21の近傍の位置A1と、貼付装置23の近傍の位置A2と、第2供給装置22の近傍の位置A3との間で移動しながら環状部材10の成形作業と貼付作業とを行うことができ、第1供給装置21と貼付装置23との間、及び、貼付装置23と第2供給装置22との間の作業者の移動をスムーズに行うことができる。
【0078】
(8)上記実施形態の貼付方法は、次の(a)~(f)のステップを含む。
(a)所定の軸心C1を中心とする周方向に間隔をあけて配置された複数の保持具31により環状部材10の内周面を保持するステップ、
(b)環状部材10を保持している保持具31を所定の貼付位置へ向けて前記軸心C1を中心とする径方向に移動させ、環状部材10の一部をタイヤ1の内周面に貼り付けるステップ;
(c)保持具31による環状部材10の保持を解除するステップ;
(d)保持具31を貼付位置よりも前記径方向の内側の退避位置に移動させ、保持具31を環状部材10から離反させるステップ;
(e)保持具31を前記周方向に移動させるステップ;及び
(f)保持具31を貼付位置に移動させ、環状部材10の他の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付けるステップ。
【0079】
そのため、複数の保持具31によって環状部材10の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付け、一旦、保持具31を環状部材10から離してから保持具31の周方向の位置をずらし、再度、環状部材10の他の一部をタイヤ1の内周面1aに貼り付けることができ、環状部材10の略全体を均一にタイヤ1の内周面1aに貼り付けることができる。
【0080】
(9)上記実施形態の貼付方法は、ステップ(f)の後、保持具31によって環状部材10をタイヤ1の内周面1aに押さえ付けたまま、保持具31を前記周方向に移動させるステップをさらに含む。そのため、環状部材10の全体をタイヤ1の内周面1aから浮かないように貼り付けることができる。
【0081】
(10)上記実施形態の貼付方法は、ステップ(b)より前に、タイヤ1の内周面1aに、環状部材10を接着するためのシーラント材61を塗布する工程をさらに含む。そのため、タイヤ1のパンクを防止するためのシーラント材61を接着剤として用い、環状部材10をタイヤ1の内周面1aに貼り付けることができる。
【0082】
(11)上記実施形態(変形例)のタイヤ1は、内周面1aに設けられたシーラント材61と、シーラント材61の径方向内側に設けられた環状部材10とを備えている。そのため、タイヤ1のパンクを防止するためのシーラント材61を接着剤として用い、環状部材10をタイヤ1の内周面1aに貼り付けることができる。
【0083】
(12)上記実施形態の環状部材10の成形装置(貼付装置)23は、所定の軸心C1を中心とする周方向に間隔をあけて配置され、長尺帯状部材11を保持する複数の保持具31と、複数の保持具31を前記周方向に移動させる回転機構33と、保持具31及び回転機構33の動作を制御する制御装置24とを備える。制御装置24は、次の(a)~(c)の動作を行うように保持具31及び回転機構33の動作を制御する。
(a)一の保持具31により長尺帯状部材11の長手方向の一端部11aを保持する動作;
(b)保持具31を前記周方向に移動させ、順次、他の複数の保持具31上に長尺帯状部材11を位置づける動作;
(c)他の保持具31上に位置づけられた長尺帯状部材11を当該保持具31で保持する動作。
【0084】
そのため、複数の保持具31によって自動的に長尺帯状部材11を環状に成形することができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0085】
(13)上記実施形態では、動作(b)において、長尺帯状部材11が保持具31上に位置づけられるたびに保持具31が一時停止される。そのため、安定した状態で保持具31により環状部材10を保持することができる。
【0086】
(14)上記実施形態の成形装置(貼付装置)23は、保持具31上に位置づけられた長尺帯状部材11を保持具31に押さえ付ける押さえ機構34をさらに備える。そのため、保持具31から長尺帯状部材11が浮き上がることがなくなり、確実に保持具31によって長尺帯状部材11を保持することができる。
【0087】
(15)上記実施形態の長尺帯状部材11は、
図9に示すように、長手方向の一端部及び他端部の一方に凸部11dが形成され、他方に凸部11dが嵌め合わされる凹部11cが形成されている。そのため、長尺帯状部材11の一端部と他端部との接合強度を高め、確実に環状部材10を成形することができる。
【0088】
(16)上記実施形態の環状部材10の成形方法は、
(a)所定の軸心C1を中心とする周方向に間隔をあけて配置された複数の保持具31のうち最上位に配置された一の保持具31により長尺帯状部材11の長手方向の一端部11aを保持するステップ;
(b)複数の保持具31を周方向に移動させ、順次、複数の保持具31上に長尺帯状部材11を位置づけるステップ;
(c)各保持具31上に位置づけられた長尺帯状部材11を当該保持具31で保持するステップ、を含む。
【0089】
そのため、複数の保持具31によって自動的に長尺帯状部材11を環状に成形することができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0090】
(17)上記実施形態の貼付方法では、ステップ(b)において、長尺帯状部材11が保持具31上に位置づけられる度に保持具31を一時停止させる。そのため、安定した状態で保持具31により長尺帯状部材11を保持することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
本発明は、防振用又は吸音用のスポンジ材に限らず、タイヤ1の内周面1aに貼り付けることによって所定の機能を発揮するあらゆる環状部材10に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 :環状部材
11 :長尺帯状部材
11a :先端部
11c :凹部
11d :凸部
23 :貼付装置(成形装置)
24 :制御装置
31 :保持具
33 :回転機構
34 :押さえ機構
C1 :軸心